JP5869241B2 - Hdd用ガラス基板、hdd用ガラス基板の製造方法、及びhdd用磁気記録媒体 - Google Patents

Hdd用ガラス基板、hdd用ガラス基板の製造方法、及びhdd用磁気記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、HDD用ガラス基板、HDD用ガラス基板の製造方法、及びHDD用磁気記録媒体に関する。
従来、情報記憶装置に搭載される情報記録媒体の1つとして、ハードディスクドライブ(HDD)に搭載されるHDD用磁気記録媒体が知られている。近年、HDD用磁気記録媒体は、記録容量の増大が強く要請されている。そのため、記録領域の拡大や、記録密度の増大が急務となっている。記録密度の増大のためには、磁気ヘッドの浮上量の低減や、ヘッドスライダーの位置決め精度の向上が必要となる。
一般に、磁気記録媒体は、ハードディスクドライブへの搭載時、例えば特許文献1に記載されるように、ハブ及びクランプを用いてスピンドルモータの回転軸に組み付けられる。まず、スピンドルモータの回転軸に一体に設けられたハブに、磁気記録媒体の中心部に形成された円孔が嵌合される。これにより、磁気記録媒体の円孔の周囲の内周端部(以下、基板端面近傍の領域を端部と表現する)の一面側がハブに当接して支持される。次に、ハブの軸心に螺合されるネジによってクランプがハブ及びスピンドルモータの回転軸に一体に締結される。これにより、磁気記録媒体の円孔の周囲の内周端部の他面側がクランプでハブ側に押圧されて支持される。磁気記録媒体の内周端部は、ハードディスクドライブへの搭載時の被クランプ部であり、この部分がハブとクランプとで挟持されることにより、磁気記録媒体がスピンドルモータの回転軸に一体に結合される。
ところが、このハードディスクドライブへの搭載時に磁気記録媒体が変形することがある。この変形は、磁気ヘッドの浮上量の低減や、ヘッドスライダーの位置決め精度の向上の妨げとなり、記録密度の増大、ひいては記録容量の増大の妨げとなる。
そこで、例えば特許文献1に開示されるように、磁気記録媒体を挟持するドライブ側の機械的構造を改良して、ハードディスクドライブへの搭載時の磁気記録媒体の変形を抑制することが提案されている。
特開2007−66476号公報
昨今、高密度記録化が益々進行し、将来、例えば2.5インチの記録媒体1枚で、記録容量が500GB、面記録密度が630Gb/平方インチ以上というようなHDD用磁気記録媒体が出現すると予想されている。また、記録媒体のトラックピッチ幅も減少が続き、現に、トラックピッチ幅が250kTPI以上というようなHDD用磁気記録媒体も出現している。このような高密度記録化の進行に伴い、ハードディスクドライブへの搭載時の磁気記録媒体の変形の許容量が益々厳しくなっている。前記のようなドライブ側の機械的構造の改良だけでは対応できない現状である。
そこで、本発明の目的は、磁気記録媒体の面記録密度が630Gb/平方インチ以上あるいはトラックピッチ幅が250kTPI以上というような高密度記録化にも十分対応可能な程度にハードディスクドライブへの搭載時の磁気記録媒体の変形が抑制され得る、HDD用ガラス基板、HDD用ガラス基板の製造方法、及びHDD用磁気記録媒体を提供することである。
ハードディスクドライブへの搭載時に磁気記録媒体が変形する原因として、特許文献1にも記載があるように、被クランプ部である円孔の周囲の内周端部がハブ及びクランプ側から不均一に荷重を受けることが理由の1つであることが知られている。従来は、内周端部に荷重が不均一に作用しないように、例えばハブやクランプの機械的精度を上げる等、ドライブ側の改良を図るものが主であった。
本発明者は、従来行われているドライブ側の改良は、記録媒体側の被クランプ部である内周端部が十分平坦であることを前提としていることに着目した。しかし、磁気記録媒体の内周端部は必ずしも常に十分平坦であるとは限らない。磁気記録媒体の内周端部の厚みがばらついていると、たとえハブとクランプとで内周端部を平行に挟んでも、内周端部に荷重が不均一に作用し、その結果、記録媒体が変形する場合がある。本発明者は、以上のようなことを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明の一局面は、中心部に円孔を有するHDD用ガラス基板であって、円孔の半径をr、半径がr+0.30mmである、円孔と同心の第1の円と、半径がr+4mmである、円孔と同心の第2の円との間にある、円孔と同心の円に沿って計測したガラス基板の厚みの最大値をtmax、最小値をtmin、平均値をtaveとしたときに、tmax≦tave+0.05μmであり、かつ、tmin≧tave−0.05μmであり、内周端部をハブとクランプとで挟持してハードディスクドライブに搭載したときに前記円孔の中心から28mmの位置における周方向1周分のTIRが0.9μm以下であることを特徴とするHDD用ガラス基板である。
このような構成のHDD用ガラス基板によれば、円孔の周囲の内周端部(本発明では円孔の外周を規定するガラス基板の内周端面から半径方向外側に4mmの範囲)におけるガラス基板の厚みのバラツキ(=│(厚みt)−(厚みの平均値tave)│)が極めて小さく(最大で0.05μm)、ガラス基板の内周端部の厚みの差は、最大でも、プラス側の0.05μmとマイナス側の0.05μmとの和で100nmしかないから、被クランプ部であるガラス基板の内周端部は、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に平坦である。したがって、本発明のHDD用ガラス基板は、内周端部がハブとクランプとで挟持されたときに、内周端部に荷重が均一に作用し、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に記録媒体の変形が抑制され得る、高品質のHDD用ガラス基板である。
本発明のHDD用ガラス基板においては、面記録密度が630Gb/平方インチ以上のHDD用磁気記録媒体又はトラックピッチ幅が250kTPI以上のHDD用磁気記録媒体の基板に用いられることが好ましい。
このような構成のHDD用ガラス基板によれば、将来出現が予想されている高密度記録化されたHDD用磁気記録媒体の実現、あるいは現に出現している高密度記録化されたHDD用磁気記録媒体の安定生産に寄与することができる。
本発明の他の一局面は、前記HDD用ガラス基板の製造方法であって、ガラス基板を上定盤と下定盤との間に挟んで研磨する研磨工程と、研磨工程の後、上定盤と下定盤との平行度を矯正する平行度矯正工程とを含むことを特徴とするHDD用ガラス基板の製造方法である。
このような構成のHDD用ガラス基板の製造方法によれば、研磨工程が終了する度に、研磨工程で用いられる上定盤と下定盤との平行度が矯正されるから、製造されるガラス基板の両主表面間の平行度が常に良好な状態に維持される。そのため、製造されるガラス基板の厚みのバラツキが常に極めて小さくなり、ハードディスクドライブへの搭載時の被クランプ部である内周端部の平坦度が常に良好な状態に維持される。したがって、内周端部がハブとクランプとで挟持されたときに、内周端部に荷重が均一に作用し、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に記録媒体の変形が抑制され得る、高品質のHDD用ガラス基板を常に安定生産することができる。
本発明の他の一局面は、前記HDD用ガラス基板の製造方法であって、第1の円と第2の円との間のガラス基板の内周端部を研磨する内周端部研磨工程を含むことを特徴とするHDD用ガラス基板の製造方法である。
このような構成のHDD用ガラス基板の製造方法によれば、半径がr+0.30mmである円孔と同心円(第1の円)と、半径がr+4mmである円孔と同心円(第2の円)との間のガラス基板の内周端部が研磨されるから、ハードディスクドライブへの搭載時の被クランプ部分である内周端部の平坦度が改善される。したがって、内周端部がハブとクランプとで挟持されたときに、内周端部に荷重が均一に作用し、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に記録媒体の変形が抑制され得る、高品質のHDD用ガラス基板を安定生産することができる。
本発明のさらに他の一局面は、前記HDD用ガラス基板の主表面の上に記録層が設けられたことにより製造されたことを特徴とするHDD用磁気記録媒体である。
このような構成のHDD用磁気記録媒体によれば、ハードディスクドライブへの搭載時の被クランプ部分である内周端部が、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に平坦であり、内周端部がハブとクランプとで挟持されたときに、内周端部に荷重が均一に作用し、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に記録媒体の変形が抑制され得る、高品質のHDD用ガラス基板が基板として用いられているから、ハードディスクドライブへの搭載時の変形が、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に抑制され得る、高品質のHDD用磁気記録媒体である。そのため、磁気ヘッドの浮上量の低減や、ヘッドスライダーの位置決め精度の向上が促進され、記録密度の増大、ひいては記憶容量の増大に寄与することができるHDD用磁気記録媒体である。
本発明によれば、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な、HDD用ガラス基板、HDD用ガラス基板の製造方法、及びHDD用磁気記録媒体が提供されるから、HDD用磁気記録媒体の記録容量の増大に寄与できる。
本発明の実施形態に係るHDD用ガラス基板の斜視図である。 従来のHDD用ガラス基板の製造工程図である。 2次研磨工程で用いられる両面研磨機の主要部の構成を示す概略側面図である。 本発明の実施形態に係るガラス基板の厚みについて説明するためのガラス基板の部分拡大縦断面図である。 本発明の実施形態に係るHDD用ガラス基板の製造工程図である。 本発明の実施形態に係る別のHDD用ガラス基板の製造工程図である。 内周端部研磨工程で用いられる内周端部研磨機の主要部の構成を示す概略縦断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
<HDD用ガラス基板の製造方法>
図1に示すガラス基板50及び図2に示す製造工程図を参照して、HDD用ガラス基板の製造方法を説明する。
本実施形態においては、HDD用ガラス基板50は、円盤加工工程、ラップ工程、1次研磨(粗研磨)工程、2次研磨(精密研磨)工程、化学強化工程、最終洗浄工程、検査工程等を経て製造される。
ガラス基板50に用いられるガラス素材は、二酸化ケイ素(SiO)を主成分とするガラス組成物で構成される。ガラス組成物は、マグネシウム、カルシウム及び/又はセリウムを含んでも含まなくてもよい。代表的なガラス組成物は、例えば、SiO、Al、B、LiO、NaO、KO、MgO、CaO、BaO、SrO、ZnO等を含んだものである。
[円盤加工工程]
円盤加工工程では、溶融したガラス素材を金型に流し込んでプレス成形することにより円盤状のガラス基板(ブランクス)を作製する。このときのガラス基板の大きさとしては、例えば、外径が2.5インチ、1.8インチ、1.0インチ、0.8インチ等、板厚が、2mm、1mm、0.8mm、0.63mm等である。得られたガラス基板の中心部に、例えばダイヤモンドコアドリル等を用いて円孔50a(図1参照)を形成し、環状のガラス基板とする。
[ラップ工程]
ラップ工程は、第1ラップ工程と第2ラップ工程とを含む。第1ラップ工程では、ガラス基板の表裏両面を研削し、ガラス基板の全体形状、すなわちガラス基板の平行度、平坦度及び厚み等を予備調整する。第2ラップ工程では、第1ラップ工程に続いて、ガラス基板の表裏両面を再び研削し、ガラス基板の全体形状、すなわちガラス基板の平行度、平坦度及び厚み等をさらに微調整する。ラップ工程では、例えばダイヤモンドペレットが貼り付けられた上下定盤を備える両面研削機が用いられる。
[1次研磨工程]
1次研磨工程では、次の2次研磨工程で最終的に求められるガラス基板の表面粗さ、平行度、平坦度及び厚み等が効率よく得られるように、ガラス基板の表裏両面を粗研磨する。この1次研磨工程では、例えば研磨パッドとして発泡ウレタンパッドが貼り付けられた上下一対の定盤を備える両面研磨機が用いられ、研磨液として例えば酸化セリウムを研磨砥粒として含む研磨液(スラリー)が用いられる。ただし、これに限定されるものではない。
[2次研磨工程]
2次研磨工程では、1次研磨工程に続いて、最終的に求められるガラス基板の表面粗さ、平行度、平坦度及び厚み等が得られるように、ガラス基板の表裏両面を精密研磨する。この2次研磨工程では、図3に示すように、ガラス基板50の表裏両面を同時研磨することが可能な両面研磨機10が用いられる。
両面研磨機10は、相互に平行になるように上下に間隔をおいて配置され、相互に逆方向に回転可能な円盤状の上定盤11と下定盤12とを備えている。この上下一対の定盤11,12の各対向面にガラス基板50の表裏両面を研磨するための研磨パッド(本実施形態ではポリウレタン製のスウェードパッド)Pが貼り付けられている。定盤11,12の間には、回転可能な複数のキャリア13が配置され、各キャリア13には、複数のガラス基板50が嵌め込まれてセットされている。キャリア13は、ガラス基板50を保持した状態で、自転しながら定盤11,12の回転中心に対して公転する。このような動作をしている上下定盤11,12及びキャリア13に対して、砥粒(本実施形態ではコロイダルシリカ)を含む研磨液(スラリー)が上定盤11の研磨パッドPとガラス基板50との間、及び、下定盤12の研磨パッドPとガラス基板50との間にそれぞれ供給され、これにより、ガラス基板50が上定盤11と下定盤12との間に挟まれて表裏両面の精密研磨が実行される。
なお、図3において、符号14は研磨液回収装置、符号15は研磨液貯留タンク、符号16は研磨液供給管、符号17は潤滑液貯留タンク、符号18は潤滑液供給管である。
[化学強化工程]
化学強化工程では、ガラス基板の表面に化学強化層を形成する。例えば、ガラス基板をナトリウムイオンやカリウムイオンの存在する化学強化処理液に浸漬することにより、ガラス基板の表層に存在するリチウムイオンやナトリウムイオンが化学強化処理液中のナトリウムイオンやカリウムイオンと置換され、ガラス基板の表層が化学強化層となる。化学強化層には圧縮応力がかかっている。このような化学強化層を形成することにより、最終的に得られるガラス基板50の耐衝撃性、耐振動性及び耐熱性等が向上する。
[最終洗浄工程]
最終洗浄工程では、ガラス基板に付着している異物を、例えば、フィルタリングした純水、イオン交換水、超純水、酸性洗剤、中性洗剤、アルカリ性洗剤、有機溶剤、界面活性剤等を含んだ各種洗浄液を用いて、洗浄し、除去する。その後、ガラス基板を乾燥する。
[検査工程]
検査工程では、ガラス基板の平坦度や厚み、あるいは表面粗さや欠陥の有無等を検査する。そして、検査に合格したガラス基板のみが、異物等が表面に付着しないように、清浄な環境の中で、専用収納カセットに収納され、真空パックされた後、HDD用ガラス基板として出荷される。
<従来の問題点>
以上のようにして製造されたHDD用ガラス基板50を基板として用いたHDD用磁気記録媒体をハードディスクドライブに搭載したときに磁気記録媒体が変形することがあった。その原因として、磁気記録媒体の被クランプ部である内周端部の平坦度が不十分で、内周端部における記録媒体の厚みがばらついて、内周端部をハブとクランプとで挟持したときに、内周端部に荷重が不均一に作用し、その結果、記録媒体が変形することが見出された。
<本実施形態の改良点>
そこで、本実施形態においては、図1に示すように、中心部に円孔50aを有するHDD用ガラス基板50であって、円孔50aの半径をr、半径がr+0.30mmである、円孔50aと同心の第1の円c1と、半径がr+4mmである、円孔50aと同心の第2の円c2との間にある、円孔50aと同心の円Cに沿って計測したガラス基板50の厚みの最大値をtmax、最小値をtmin、平均値をtaveとしたときに、tmax≦tave+0.05μmであり、かつ、tmin≧tave−0.05μmであるHDD用ガラス基板50を製造するように改良した。
なお、図1において、符号Cは、内周端部内にある円孔と同心円、符号c1は、半径がr+0.30mmである円孔と同心円(第1の円)、符号c2は、半径がr+4mmである円孔と同心円(第2の円)、符号c3は、記録領域内にある円孔と同心円である。また、符号Oは、ガラス基板50の中心、符号Rは、前記円Cの半径(つまりr+0.30mm以上、r+4mm以下)、符号r1は、前記第1の円c1の半径(つまりr+0.30mm)、符号r2は、前記第2の円c2の半径(つまりr+4mm)である。
図4を参照して、本実施形態に係るガラス基板50の厚みtについて説明する。図4において、符号50b、50cは、ガラス基板50の主表面である。本実施形態においては、ガラス基板50の一方の主表面(図例では50b)に基準面Sを定義する。基準面Sとしては、例えば、ハードディスクドライブに搭載されたときにスピンドルモータの回転軸に垂直な面が挙げられる。より具体的には、最小二乗法を用いて算出される、主表面に最もフィットする面である。そして、その基準面Sに対して垂直に計測したときの厚みtを採用する。
このような厚みtは、例えば、被計測物の片面側から被計測物にレーザー光を照射して反射光を解析することにより被計測物の厚みを計測する、キーエンス社製の「SI−F80R」を用いて計測することができる。他にも、被計測物の両面側から被計測物にレーザー光を同時に照射して反射光や散乱光を検出することにより被計測物の厚みを計測する方法を用いてもよい。
<改良されたHDD用ガラス基板>
前記のように改良されたHDD用ガラス基板50によれば、図1に示すように、円孔50aの周囲の内周端部(本実施形態では円孔50aの外周を規定するガラス基板50の内周端面から半径方向外側に4mmの範囲)におけるガラス基板50の厚みのバラツキ(=│(厚みt)−(厚みの平均値tave)│)が極めて小さく(最大で0.05μm)、ガラス基板50の内周端部の厚みの差は、最大でも、プラス側の0.05μmとマイナス側の0.05μmとの和で100nmしかないから、被クランプ部であるガラス基板50の内周端部は、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に平坦である。したがって、本実施形態に係る改良されたHDD用ガラス基板50は、内周端部がハブとクランプとで挟持されたときに、内周端部に荷重が均一に作用し、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に記録媒体の変形が抑制され得る、高品質のHDD用ガラス基板50である。
本実施形態に係る改良されたHDD用ガラス基板50においては、面記録密度が630Gb/平方インチ以上のHDD用磁気記録媒体又はトラックピッチ幅が250kTPI以上のHDD用磁気記録媒体の基板に用いられることが好ましい。HDD用ガラス基板50が、将来出現が予想されている高密度記録化されたHDD用磁気記録媒体の実現、あるいは現に出現している高密度記録化されたHDD用磁気記録媒体の安定生産に寄与することができるからである。
なお、前記ガラス基板50の厚みのバラツキ(=│(厚みt)−(厚みの平均値tave)│)が0.05μmを超えると、内周端部の平坦度が不十分となる。好ましくは、tmax≦tave+0.03μmであり、かつ、tmin≧tave−0.03μmである(厚みのバラツキが0.03μm以下である)。より好ましくは、tmax≦tave+0.02μmであり、かつ、tmin≧tave−0.02μmである(厚みのバラツキが0.02μm以下である)。
また、円Cの半径の最大値をr+4mmとしたのは、これを超えて磁気記録媒体がハブとクランプとで挟持されることは稀であるからである。
<具体的製造方法の1>
図5を参照して、前記のように、内周端部における厚みtのバラツキが極めて小さく、内周端部の平坦度が極めて良好なガラス基板50を製造する具体的方法の1例を説明する。ただし、図2の製造工程図と同じ又は類似の工程は説明を省略し、特徴的な工程のみ説明する。
図5に示すように、この具体的製造方法の1においては、2次研磨工程の後、平行度矯正工程を行う。平行度矯正工程では、2次研磨工程でガラス基板50を間に挟んでガラス基板50の表裏両面を同時研磨する上定盤11と下定盤12との平行度を矯正する。
より詳しくは、感圧紙を用いて荷重分布を確認しつつ、十分な平行度が達成されるまで、ドレッサーによる研磨パッドP表面の切削処理を繰り返す。また、定期的に、研磨パッドPを上定盤11及び下定盤12から剥がし、上定盤11及び下定盤12の表面をドレッサーにより切削し、感圧紙を用いて荷重分布を確認しつつ、十分な平行度が達成されるまで、切削処理を繰り返した後、新たな研磨パッドPを上定盤11及び下定盤12に貼り付ける。このようなことをすることにより、上定盤11と下定盤12との平行度が矯正され、維持される。
この具体的製造方法の1によれば、2次研磨工程が終了する度に、2次研磨工程で用いられる上定盤11と下定盤12との平行度が矯正されるから、製造されるガラス基板50の両主表面間の平行度が常に良好な状態に維持される。そのため、製造されるガラス基板50の厚みtのバラツキが常に極めて小さくなり、ハードディスクドライブへの搭載時の被クランプ部である内周端部の平坦度が常に良好な状態に維持される。したがって、内周端部がハブとクランプとで挟持されたときに、内周端部に荷重が均一に作用し、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に記録媒体の変形が抑制され得る、高品質のHDD用ガラス基板50を常に安定生産することができる。
<具体的製造方法の2>
図6を参照して、前記のように、内周端部における厚みtのバラツキが極めて小さく、内周端部の平坦度が極めて良好なガラス基板50を製造する具体的方法の別の例を説明する。ただし、図2の製造工程図と同じ又は類似の工程は説明を省略し、特徴的な工程のみ説明する。
図6に示すように、この具体的製造方法の2においては、2次研磨工程の後、内周端部研磨工程を行う。内周端部研磨工程では、半径がr+0.30mmである、円孔と同心の第1の円c1(図1参照)と、半径がr+4mmである、円孔と同心の第2の円c2(図1参照)との間のガラス基板50の内周端部を研磨する。
具体的には、図7に示すような内周端部研磨機20を用いる。この内周端部研磨機20は、相対向する一対の回転体21,22を有する。回転体21,22は、回転軸心が相互に精密に一致するように調整されている。回転体21,22にそれぞれ環状の研磨パッド(本実施形態では、2次研磨工程と同様、ポリウレタン製のスウェードパッド)23,24が取り付けられている。研磨パッド23,24は、少なくとも、第1の円c1と第2の円c2との間のガラス基板50の内周端部を研磨できる大きさに形成されている。ガラス基板50は、外周端部支持装置25で外周端部が支持される。
回転体21,22によって回転している研磨パッド23,24と、ガラス基板50の円孔50aの周囲の内周端部の両面との間に、砥粒(本実施形態では、2次研磨工程と同様、コロイダルシリカ)を含む研磨液(スラリー)が供給され、これにより、ガラス基板50の内周端部が相対向する一対の研磨パッド23,24の間に挟まれて表裏両面が研磨される。
この具体的製造方法の2によれば、半径がr+0.30mmである円孔50aと同心円(第1の円)c1と、半径がr+4mmである円孔50aと同心円(第2の円)c2との間のガラス基板50の内周端部が研磨されるから、ハードディスクドライブへの搭載時の被クランプ部分である内周端部の平坦度が改善される。したがって、内周端部がハブとクランプとで挟持されたときに、内周端部に荷重が均一に作用し、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に記録媒体の変形が抑制され得る、高品質のHDD用ガラス基板50を安定生産することができる。
<HDD用磁気記録媒体>
次に、前記HDD用ガラス基板50を用いて製造されたHDD用磁気記録媒体について説明する。本実施形態に係るHDD用磁気記録媒体は、前記HDD用ガラス基板50の主表面の上に記録層としての磁性膜が設けられたことにより製造されたものである。磁性膜は主表面の上に直接に又は間接に形成されてよい。磁性膜はガラス基板50の片面に又は両面に形成されてよい。
磁性膜の形成方法としては従来公知の方法を用いることができ、例えば磁性粒子を分散させた熱硬化性樹脂をガラス基板50上にスピンコートして形成する方法や、スパッタリングや無電解めっきにより形成する方法等が挙げられる。スピンコート法での膜厚は約0.3μm〜1.2μm程度、スパッタリング法での膜厚は0.04μm〜0.08μm程度、無電解めっき法での膜厚は0.05μm〜0.1μm程度であり、薄膜化及び高密度化の観点からは、スパッタリング法や無電解めっき法による膜形成が好ましい。
磁性膜に用いる磁性材料としては特に限定はなく、従来公知のものが使用できる。なかでも、高い保持力を得るために結晶異方性の高いCoを基本材料とし、残留磁束密度を調整する目的でNiやCrを加えたCo系合金等が好適である。具体的には、Coを主成分とするCoPt、CoCr、CoNi、CoNiCr、CoCrTa、CoPtCr、CoNiPt、CoNiCrPt、CoNiCrTa、CoCrPtTa、CoCrPtB、CoCrPtSiO等が好ましい。
磁性膜は、非磁性膜(例えば、Cr、CrMo、CrV等)で分割し、ノイズの低減を図った多層構成(例えば、CoPtCr/CrMo/CoPtCr、CoCrPtTa/CrMo/CoCrPtTa等)としてもよい。
前記磁性材料の他、フェライト系や鉄−希土類系のものや、SiO、BN等からなる非磁性膜中に、Fe、Co、FeCo、CoNiPt等の磁性粒子を分散させた構造のグラニュラー等でもよい。
磁性膜は、内面型及び垂直型のいずれの記録形式であってもよい。
磁気ヘッドの滑りをよくするために磁性膜の表面に潤滑剤を薄くコーティングしてもよい。潤滑剤としては、例えば液体潤滑剤であるパーフロロポリエーテル(PFPE)をフレオン系等の溶媒で希釈したもの等が挙げられる。
本実施形態では、必要に応じて、記録層としての磁性膜の他に、下地層や保護層を設けてもよい。HDD用磁気記録媒体における下地層は磁性膜に応じて選択される。下地層の材料としては、例えば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Al、Ni等の非磁性金属からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の材料が挙げられる。Coを主成分とする磁性膜の場合は、磁気特性の向上等の観点から、Cr単体やCr合金であることが好ましい。下地層は単層とは限らず、同一又は異種の層を積層した複数層構造としても構わない。例えば、Cr/Cr、Cr/CrMo、Cr/CrV、NiAl/Cr、NiAl/CrMo、NiAl/CrV等の多層下地層とすることができる。
保護層は、磁性膜の摩耗や腐食を防止するために設けられる。保護層としては、例えば、Cr層、Cr合金層、カーボン層、水素化カーボン層、ジルコニア層、シリカ層等が挙げられる。これらの保護層は、下地層や磁性膜等と共に、インライン型スパッタ装置で連続して形成できる。また、これらの保護層は、単層としてもよく、あるいは、同一又は異種の層からなる多層構造としてもよい。
前記保護層上に、あるいは前記保護層に代えて、他の保護層を形成してもよい。例えば、前記保護層に代えて、Cr層の上にテトラアルコキシシランをアルコール系の溶媒で希釈した中に、コロイダルシリカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成することにより、二酸化ケイ素(SiO)層を形成してもよい。
以上のように、基板として本実施形態に係るHDD用ガラス基板50を用いて製造されたHDD用磁気記録媒体をHDDに用いることで、HDDの高速回転時の磁気ヘッドの動作を安定にすることができる。
また、本実施形態に係るHDD用磁気記録媒体は、ハードディスクドライブへの搭載時の被クランプ部分である内周端部が、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に平坦であり、内周端部がハブとクランプとで挟持されたときに、内周端部に荷重が均一に作用し、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に記録媒体の変形が抑制され得る、高品質のHDD用ガラス基板50が基板として用いられているから、ハードディスクドライブへの搭載時の変形が、昨今の高密度記録化にも十分対応可能な程度に抑制され得る、高品質のHDD用磁気記録媒体である。そのため、磁気ヘッドの浮上量の低減や、ヘッドスライダーの位置決め精度の向上が促進され、記録密度の増大、ひいては記憶容量の増大に寄与することができるHDD用磁気記録媒体である。
なお、本実施形態では、研磨工程は、2回に分けて行ったが、これに限らず、1回のみ行ってもよい。また、化学強化工程を研磨工程の後に行ったが、状況に応じて研磨工程の前に行ってもよい。また、状況に応じて化学強化工程を省略することもできる。
さらに、落下強度対策として、ガラス基板の主表面以外の外周端面や内周端面の強化を行ってもよいし、ガラス基板に生じたキズのエッジ緩和処理として、ガラス基板をHF浸漬処理に供してもよい。
本実施形態に係るHDD用ガラス基板は、HDD用磁気記録媒体の製造用途に限定されるものではなく、例えば、光磁気ディスクや光ディスク等の製造用途にも用いることができる。
以下、実施例及び比較例を通して、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
<HDD用ガラス基板の製造>
実施例1は、図6に示した製造工程(図7に示した内周端部研磨機20を用いた)に従い、実施例2は、図5に示した製造工程に従い、比較例1及び2は、図2に示した製造工程に従い、それぞれ、下記の組成(質量%)のガラス素材を用いて、外径が約65mm(2.5インチ)、内径(円孔の径)が20mm、板厚が約0.63mmの環状のアルミノシリケート製ガラス基板を作製した。
(ガラス素材の組成)
・SiO:50〜70%
・Al:0.1〜20%
・B:0〜5%
ただし、SiO+Al+B=50〜85%であり、また、LiO+NaO+KO=0.1〜20%であり、また、MgO+CaO+BaO+SrO+ZnO=2〜20%である。
<HDD用ガラス基板の評価>
[内周端部の板厚の計測]
得られたガラス基板の内周端部の厚みを、キーエンス社製の「SI−F80R」を用いて計測した。厚みを計測した円は、半径が円孔の半径r(10mm)+0.30mmである、円孔と同心の第1の円c1(半径10.30mm)と、半径が円孔の半径r(10mm)+4mmである、円孔と同心の第2の円c2(半径14mm)と、半径が円孔の半径r(10mm)+2mmである、円孔と同心の内周端部内にある円C(半径12mm)との3つの円とした。そして、各円において、板厚バラツキ(=│(厚みt)−(厚みの平均値tave)│)を算出し、その最大値を記録し、平均値を求めた。サンプル数は、実施例1及び2、比較例1及び2において、それぞれ100枚とした。結果を表1に示す。値は100枚の平均値である。
<HDD用磁気記録媒体の製造>
得られたガラス基板の主表面の上に磁性膜(記録層)を設けて磁気記録媒体とした。すなわち、ガラス基板側から、Ni−Alからなる下地層(厚み約100nm)、Co−Cr−Ptからなる記録層(厚み20nm)、DLC(Diamond Like Carbon)からなる保護膜(厚み5nm)を順次積層した。
<HDD用磁気記録媒体の評価>
[ドライブ搭載時の変形量の計測]
得られた磁気記録媒体の内周端部をハブとクランプとで挟持してハードディスクドライブに搭載した。搭載した磁気記録媒体の変形の度合いを調べるため、磁気記録媒体の周方向のTIR(Total Indicated Runout)を計測した。TIRは、表面の平坦度の指標であり、磁気記録媒体の周方向のTIRとは、磁気記録媒体の主表面に最適にフィットした平面を最小二乗法で求め、磁気記録媒体の高さを周方向に計測し、高さが前記平面よりも上方にある最高点(P)と下方にある最低点(V)との差の絶対値(P−V値)をいう。
このような周方向のTIRは、例えば、白色光の干渉を利用して表面形状を測定する方式(例えば、Phase Shift Technology社製の「Optiflat」)や、被測定面に対して斜めにレーザー光を入射することで垂直入射方式に比べて高い反射率を得ることができ、粗い面形状においても測定が可能な方式(例えば、TROPEL社製の「Flat Master FM100XRA」)等により計測することができる。
周方向のTIRを計測した円は、半径が28mmである、円孔と同心の記録領域内にある円c3(図1参照)とした。サンプル数は、実施例1及び2、比較例1及び2において、それぞれ100枚とした。結果を表1に示す。値は100枚の平均値である。
[リードライト試験]
得られた磁気記録媒体について、DFH機構を搭載した磁気ヘッドで、リードライト試験を行い、エラーの発生枚数を記録し、下記基準で評価した。サンプル数は、実施例1及び2、比較例1及び2において、それぞれ10000枚とした。結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:エラー発生枚数が0〜5(申し分のない優良品質)
○:エラー発生枚数が6〜10(良品)
△:エラー発生枚数が11〜20(使用できないことはないが品質不良率が高い)
×:エラー発生枚数が21以上(不良品)
Figure 0005869241
<結果の考察>
ガラス基板の内周端部の板厚バラツキが0.05μm以下であった実施例1及び2は、それが0.05μmを超えていた比較例1及び2に比べて、ハードディスクドライブへの搭載時の磁気記録媒体の変形量が少なく、また、リードライトエラー枚数も少なかった。
10 研磨機
11 上定盤
12 下定盤
20 内周端部研磨機
21、22 回転体
23、24 研磨パッド
25 外周端部支持装置
50 ガラス基板
50a 円孔
50b、50c 主表面
C 内周端部内の円
c1 半径がr+0.30mmの第1の円
c2 半径がr+4mmの第2の円
c3 記録領域内の円
O ガラス基板中心
P 研磨パッド
R Cの半径
r 円孔の半径
r1 c1の半径
r2 c2の半径
S 基準面
t ガラス基板の厚み

Claims (5)

  1. 中心部に円孔を有するHDD用ガラス基板であって、
    円孔の半径をr、半径がr+0.30mmである、円孔と同心の第1の円と、半径がr+4mmである、円孔と同心の第2の円との間にある、円孔と同心の円に沿って計測したガラス基板の厚みの最大値をtmax、最小値をtmin、平均値をtaveとしたときに、tmax≦tave+0.05μmであり、かつ、tmin≧tave−0.05μmであり、
    内周端部をハブとクランプとで挟持してハードディスクドライブに搭載したときに前記円孔の中心から28mmの位置における周方向1周分のTIRが0.9μm以下であることを特徴とするHDD用ガラス基板。
  2. 面記録密度が630Gb/平方インチ以上のHDD用磁気記録媒体又はトラックピッチ幅が250kTPI以上のHDD用磁気記録媒体の基板に用いられることを特徴とする請求項1に記載のHDD用ガラス基板。
  3. 請求項1に記載のHDD用ガラス基板の製造方法であって、
    ガラス基板を上定盤と下定盤との間に挟んで研磨する研磨工程と、
    研磨工程の後、上定盤と下定盤との平行度を矯正する平行度矯正工程とを含むことを特徴とするHDD用ガラス基板の製造方法。
  4. 請求項1に記載のHDD用ガラス基板の製造方法であって、
    第1の円と第2の円との間のガラス基板の内周端部を研磨する内周端部研磨工程を含むことを特徴とするHDD用ガラス基板の製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載のHDD用ガラス基板の主表面の上に記録層が設けられたことにより製造されたことを特徴とするHDD用磁気記録媒体。
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