以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、患者の関節を人工関節に置換する手術において用いられる、人工関節用コンポーネントとして広く適用することができる。
図1は、本発明の一実施の形態に係る人工関節用コンポーネントを含む人工股関節1を示す断面図である。図1では、人工股関節1が患者に設置された状態を、骨盤101の一部及び大腿骨102の一部とともに示している。図1に示すように、人工股関節1は、骨盤101の臼蓋101aに対する大腿骨102の相対変位を許容するための人工関節として設けられている。
人工股関節1は、骨盤100の臼蓋101aに設置されたシェル2及びライナー3と、大腿骨102に設置されたステム4及び骨頭ボール5と、を備えて構成されている。
シェル2及びライナー3は、骨盤101に保持され、且つ、骨頭ボール5と協働して球面継手を形成しており、骨盤101に対する大腿骨102の運動を許容する。シェル2は、カップ状に形成された、窪みを有する部材であり、骨盤101の臼蓋101aに固定されている。シェル2に、ライナー3が固定されている。
ライナー3は、合成樹脂、金属、セラミックス等を用いて形成されている。ライナー3は、カップ状に形成された、窪みを有する部材である。ライナー3の内側面に、骨頭ボール5が摺動可能に接触している。
骨頭ボール5は、半球状に形成されている。骨頭ボール5の材料としては、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼等の金属材料、ポリエチレン等の高分子材料、及びアルミナ、ジルコニア等のセラミックス材料を例示することができる。骨頭ボール5には、挿通孔5aが形成されている。挿通孔5aは、骨頭ボール5の表面から当該骨頭ボール5の内部に延びており、ステム4の後述するネック部7に挿通されている。
尚、本実施形態では、骨頭ボール5がステム4に連結される構成を例にとって人工股関節を説明しているが、この通りでなくてもよい。例えば、骨頭ボール5がステム4に一体に形成されていてもよい。また、シェル2が無くてもよい。
ステム4は、人工関節用コンポーネントとして設けられている。また、ステム4は、骨頭ボール5を支持し、且つ、患者の大腿骨102に固定される部分として設けられている。ステム4の材料としては、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン、チタン合金、コバルトクロム合金、及びステンレス鋼等の金属材料を例示することができる。ステム4の材料は、上記例示した金属材料のうちの1種類のみであってもよいし、複数種類であってもよいし、上記例示した以外の、生体親和性を有する1又は複数種類の金属材料であってもよい。
本実施形態では、ステム4は、粉末状の金属材料としてのチタン合金の粉末を焼結することにより形成された焼結体である。また、ステム4は、単一の部品として構成されており、当該ステム4の全体が一体に形成されている。
ステム4は、細長い板状(ステム状)に形成されており、当該ステム4の途中部が屈曲した形状を有している。ステム4は、ステム本体6と、ネック部7と、を備えて構成されている。
ステム本体6は、大腿骨102の髄腔部102aに形成された孔部102bに挿入されており、大腿骨102に固定されている。本実施形態では、ステム本体6は、骨セメント等の接着剤を用いることなく大腿骨102の孔部102bに固定されている。即ち、ステム4は、セメントレス型のステムである。ステム本体6は、大腿骨102の長手方向に沿う所定の長手方向Z1に沿って延びており、当該ステム本体6の近位部8から遠位部9に向かって先細りとなる長尺形状を有している。尚、ステム本体6は、先細り形状でなくてもよい。また、本実施形態では、ステム本体6の長手方向を、ステム4の長手方向Z1として説明する。
本実施形態では、ステム本体6の厚み(図1の紙面に直交する方向に関するステム本体6の長さ)は、略一定とされている。尚、ステム本体6の厚みは、ステム本体6の近位部から遠位部9に向かうに従い小さくなっていてもよい。ステム本体6の詳細については、後述する。ステム本体6は、ネック部7を支持している。
ネック部7は、ステム本体6の近位部8の近位端8aから突出する部分として設けられている。ネック部7は、ステム4の長手方向Z1に対しては傾斜するように延びている。ネック部7は、先細り形状に形成されている。ネック部7は、骨頭ボール5の挿通孔5aを挿通している。ネック部7と骨頭ボール5とは、例えば、圧入固定されており、ネック部7から骨頭ボール5が外れないようにされている。
上記の構成により、骨頭ボール5がライナー3の内側面に対して摺動することにより、大腿骨102が臼蓋101aに対して変位する。
[ステムの詳細]
図2(a)は、ステム4の側面図である。図2(b)は、ステム4の断面図であって、ステム4を側方から見た状態を示している。図3(a)は、図2(b)のステム4の遠位部9の拡大図である。図3(b)は、ステム4の遠位部9を、ステム4の長手方向Z1と直交する切断面で切断した断面図である。
図1、図2(a)、図2(b)及び図3(a)に示すように、ステム本体6は、緻密体と、ポーラス体とを有している。前述したように、ステム4は、金属粉末を焼結することによって形成されており、ステム4の材料としての金属粉末の溶融量を異ならせることにより、ステム4に、緻密体と、ポーラス体とが形成されている。
より具体的には、ステム4のネック部7は、緻密体によって形成されている。本実施形態において、緻密体とは、内部に実質的に気孔が設けられていない部分をいい、例えば、気孔率が数%未満(ゼロ%を含む)である部分をいう。即ち、本実施形態では、ネック部7には、ポーラス構造が設けられていない。本実施形態では、ネック部7の表面は、金属粉末の溶融によって形成された焼結金属に機械加工が施されることで形成されている。即ち、緻密体の外表面は仕上げ処理を施されている。上記の機械加工として、旋削加工、研削加工、及び研磨加工の少なくとも1つを例示することができる。このような機械加工が行われることにより、緻密体の外表面、即ち、ネック部7におけるステム4の外表面は、鏡面とされていてもよい。尚、ネック部7におけるステム4の外表面には、機械加工が施されていなくてもよい。ネック部7に隣接するように、ステム本体6が配置されている。
ステム本体6は、近位部8と、遠位部9と、を有している。
近位部8は、ネック部7に連続する部分として設けられている。また、近位部8は、大腿骨102に固定される部分として設けられている。近位部8は、長手方向Z1に沿って遠位部9側に進むに従い、長手方向Z1と直交する幅方向X1の長さが連続的に小さくなる形状を有している。より具体的には、近位部8は、幅方向X1に向かい合う一対の側部10,11を有している。一方の側部10は、他方の側部11側に向けて凹となる湾曲形状に形成されている。他方の側部11は、長手方向Z1と略平行に延びているが、一方の側部10と同じように湾曲状に形成されていてもよいし、角度をつけてもよい。
近位部8は、緻密部12と、結合部13と、を有している。
緻密部12は、ネック部7を構成する緻密体と同様の構成を有しており、近位部8の内部を構成している。緻密部12を側方から取り囲むようにして、結合部13が配置されている。
結合部13は、患者の大腿骨102の近位部の孔部102bと機械的に結合するために設けられている。結合部13は、近位部8の外表面部に配置されている。本実施形態では、結合部13は、近位部8の外表部の全域に配置されており、全体として、無端の帯状である。尚、結合部13は、近位部8の外表面部のうちの一部にのみ配置されていてもよい。結合部13は、一方の側部10から他方の側部11に向かうに従い、長手方向Z1の長さが小さくなっていてもよい。
結合部13は、所定の気孔率を有するポーラス構造を含む。本実施形態では、ポーラス構造を示す部分の断面を、クロスハッチングで図示している。結合部13のポーラス構造は、ステム4の材料である金属粉末の溶融量を所定量以下にすることで形成されており、多数の気孔を有している。本実施形態では、気孔率は、単位体積Aにおける気孔(空間)の体積Bを、単位体積Aで除した値に100を乗じた値として定義される。即ち、気孔率=(B/A)×100として表すことができる。
本実施形態では、結合部13における気孔率は、ステム4の遠位端4a側に向かうに従い小さくされている。即ち、結合部13は、ステム4の遠位端4aに向かうに従い密度が高くなる構成である。結合部13における気孔率は、ステム4の遠位端4aに向かうに従い連続的に小さくされていてもよいし、段階的に小さくされていてもよい。
上記の構成により、結合部13の気孔内には、患者の大腿骨102の骨組織が進入し、結合部13が大腿骨102に結合される。より詳細には、結合部13の近位端寄りの部分は、大腿骨102の骨組織との結合量が大きく、大腿骨102との結合強度が相対的に大きい。一方、結合部13の遠位端寄りの部分は、大腿骨102の骨組織との結合量が小さく、大腿骨102との結合強度が相対的に小さい。このような構成を有する近位部8に対して隣接する位置に、遠位部9が配置されている。
遠位部9は、大腿骨102の孔部102bへステム本体6を挿入する際に、ステム本体6を孔部102bに案内するためのガイド部として設けられている。このように、遠位部9が設けられていることにより、孔部102bへのステム本体6の挿入作業、及びステム本体6の位置決め作業が容易とされている。また、遠位部9は、大腿骨102には固定されない部分として設けられている。即ち、ステム本体6と大腿骨102との間の荷重の伝達は、結合部13で行われる。遠位部9は、ステム4と大腿骨102との間の荷重の伝達に積極的に関与することが意図されていない。
本実施形態では、遠位部9は、長手方向Z1に沿って延びる円柱状の部分として設けられている。尚、遠位部9の形状は、長手方向Z1に細長ければよく、特に限定されない。本実施形態では、長手方向Z1に関して、遠位部9の長さが、近位部8の長さよりも長くされている。尚、長手方向Z1に関して、遠位部9の長さは、近位部8の長さと同じでもよいし、近位部8の長さより短くてもよい。本実施形態では、遠位部9は、長手方向Z1に沿って延びる円柱状に形成されている。
図3(a)及び図3(b)に示すように、遠位部9は、ポーラス部14と、ポーラス部14を取り囲む囲繞部15と、を含んでいる。
囲繞部15は、ネック部7を構成する緻密体と同様の構成を有しており、遠位部9の外表面部と、遠位部9の内部の一部と、を構成している。囲繞部15は、前述した機械加工と同様の機械加工を経て完成した外表面を有している。これにより、囲繞部15の外表面は平滑であり、囲繞部15の外表面には、大腿骨102の骨組織が固定されない。即ち、遠位部9は、大腿骨102とは接触しているものの、大腿骨102には固定されない。
また、囲繞部15は、結合部13の遠位端からステム4の遠位端4aに向かって延びている。囲繞部15は、結合部13の遠位端の近傍では、遠位部9の外表面部、及び遠位部9の内部の一部を構成しており、遠位部9の中間部では、遠位部9の外表面部を構成している。本実施形態では、長手方向Z1に関する囲繞部15の中間部は、円筒状に形成されている。また、囲繞部15の遠位端部は、本実施形態では、長手方向Z1の一方(図3(a)、図3(b)における下方向)に向けて凸となる半球形状に形成されており、ステム4の遠位端4aを形成している。囲繞部15の厚みは、囲繞部15の中間部及び遠位端において、略一定であってもよい。囲繞部15に取り囲まれるようにして、ポーラス部14が配置されている。ポーラス部14の全体が、囲繞部15に取り囲まれている。
ポーラス部14は、遠位部9の弾力性及び可撓性を増すために設けられている。ポーラス部14が設けられていることにより、遠位部9は、外力を受けた際に弾性変形可能とされており、遠位部9の折れによる破損を抑制することができる。ポーラス部14は、多数の気孔を有する多孔質体である。図2(b)及び図3(b)に示すように、ポーラス部14は、ステム本体6の内部のうち、遠位部9の少なくとも一部に設けられている。ポーラス部14は、遠位部9の近位端の近傍から、当該遠位部9の遠位端の近傍にかけて延びている。
ポーラス部14は、長手方向Z1に細長い形状に形成されている。ポーラス部14は、近位部及び遠位部がそれぞれ中実の半球形状に形成され、中間部が、長手方向Z1に細長い円柱形状に形成されている。また、本実施形態では、図3(b)に示すように、長手方向Z1と直交する断面において、ポーラス部14の中間部は、円形に形成されている。
図3(a)及び図3(b)に示すように、本実施形態では、ポーラス部14は、気孔率が異なる複数の部分を有している。具体的には、ポーラス部14は、第1部分21と、第2部分22と、第3部分23と、を有している。第1部分21と、第2部分22と、第3部分23とは、それぞれ、気孔率が異なっている。これにより、ポーラス部14の気孔率は、長手方向Z1と直交する方向に沿って変化している。長手方向Z1と直交する方向とは、長手方向Z1及び幅方向X1の双方に直交する厚み方向Y1と、幅方向X1と、を含む。換言すれば、長手方向Z1と直交する方向とは、ステム本体6の中心軸線L1と直交する方向としての径方向である。
第1部分21は、ポーラス部14の内層として設けられている。第1部分21は、ポーラス部14のうち、気孔率が最も大きい部分である。これにより、第1部分21は、ポーラス部14のうち最も弾性係数の小さい部分とされている。第1部分21は、幅方向X1に関する遠位部9の中央に配置されており、また、厚み方向Y1の中央に配置されている。
第1部分21は、長手方向Z1に細長い形状に形成されている。第1部分21は、近位部及び遠位部がそれぞれ中実の半球形状に形成され、中間部が、長手方向Z1に細長い円筒形状に形成されている。また、本実施形態では、長手方向Z1と直交する断面において、長手方向Z1に関する第1部分21の中間部は、円形形状である。第1部分21を取り囲むようにして、第2部分22が配置されている。
第2部分22は、ポーラス部14の中間層として設けられている。第2部分22の気孔率は、第1部分21の気孔率よりも小さい。これにより、第2部分22の弾性係数は、第1部分21の弾性係数よりも大きい。第2部分22は、第1部分21を収容している。第2部分22の近位部は、半球形状に形成されており、第1部分21の近位部を収容している。また、第2部分22の中間部は、円筒状に形成されており、第1部分21の中間部を収容している。第2部分22の遠位部は、半球形状に形成されており、第2部分22の遠位部を収容している。上記の構成により、第2部分22は、第1部分21を長手方向Z1に挟んでおり、且つ、幅方向X1に挟んでおり、且つ、厚み方向Y1に挟んでいる。第2部分22は、第1部分21に溶融により接着されている。第2部分22を取り囲むようにして、第3部分23が配置されている。
第3部分23は、ポーラス部14の外層として設けられている。第3部分23の気孔率は第2部分22の気孔率よりも小さく、ポーラス部14のうちで気孔率が最も小さい部分である。これにより、第3部分23の弾性係数は、第2部分22の弾性係数よりも大きく、ポーラス部14のうち弾性係数が最も大きい部分とされている。第3部分23は、第1部分21及び第2部分22を収容している。第3部分23の近位部は、半球形状に形成されており、第1部分21の近位部及び第2部分22の近位部を収容している。また、第3部分23の中間部は、円筒状に形成されており、第1部分21の中間部及び第2部分22の中間部を収容している。第3部分23の遠位部は、半球形状に形成されており、第1部分21の遠位部及び第2部分22の遠位部を収容している。上記の構成により、第3部分23は、第1部分21及び第2部分22を長手方向Z1に挟んでおり、且つ、幅方向X1に挟んでおり、且つ、厚み方向Y1に挟んでいる。第3部分23は、第2部分22に溶融によって接着されており、且つ、囲繞部15に溶融によって接着されている。上記の構成を有するポーラス部14は、囲繞部15によって長手方向Z1に挟まれ、且つ、幅方向X1に挟まれ、且つ、厚み方向Y1に挟まれている。
図1及び図3(b)を参照して、上記の構成により、ステム本体6の遠位部9に、大腿骨102からの荷重が作用した場合には、ポーラス部14を含む遠位部9の全体が、弾性的に撓む。即ち、例えば、大腿骨102の孔部102bにステム4の遠位部9を挿入する際に、遠位部9が弾性的に撓むことができる。これにより、遠位部9が近位部8に対して折れて破損することを抑制できる。
[ステムの製造システム]
図4は、ステム4を製造するための製造システム30の模式図である。図4に示すように、製造システム30は、CAD(Computer Aided Design)装置31と、データ変換装置32と、製造装置33と、を備えて構成されている。
CAD装置31は、例えば、画面上で画像を3次元的に表示することが可能な3D−CAD装置である。本実施形態では、CAD装置31は、コンピュータと、当該コンピュータにインストールされたソフトウェアと、を含んでいる。ステム4(図2(a)参照)の設計者は、CAD装置31を操作することにより、ステム4を作成するためのCADデータ(画像データ)を作成する。CAD装置31で作成されたCADデータは、データ変換装置32へ出力される。
データ変換装置32は、CADデータを、製造装置33を動作させるためのデータに変換する装置として設けられている。本実施形態では、データ変換装置32は、コンピュータと、当該コンピュータにインストールされたソフトウェアとを含んでいる。データ変換装置32は、例えば、CADデータによって特定されるステム4の3次元画像を、長手方向Z1に沿って所定の間隔毎にスライスして得られる複数のレイヤー画像(2次元画像)に分割し、当該複数のレイヤー画像のデータを保持する。上記所定の間隔は、製造装置33において、積層される金属粉末1層分の厚みに相当し、例えば、30μm程度である。上記複数のレイヤー画像のデータは、製造装置33へ与えられる。
製造装置33は、金属粉末を溶融及び焼結するための装置である。本実施形態では、製造装置33は、選択的レーザー溶融法(Selective Laser Melting)法によって製品、即ち、ステム4を形成する。本実施形態では、製造装置33は、レーザー光源34と、制御部35と、可動台36と、粉末供給部37と、を備えて構成されている。
レーザー光源34は、金属粉末に熱エネルギーを与えるために設けられている。本実施形態では、レーザー光源34は、Yb(イッテルビウム)ファイバーレーザー光源である。尚、レーザー光源34からのレーザー光線は、レーザー光源34自体が図示しない駆動装置を用いて変位させられることにより、金属粉末の所望の位置に照射されてもよいし、レーザー光源34は固定された状態で、ガルバノメーターミラーを用いて所望の位置に照射されてもよい。レーザー光源34は、制御部35によって制御される。
制御部35は、CPU、RAM及びROM等を含んでおり、データ変換装置32からデータを与えられる。制御部35は、レーザー光源34、可動台36及び粉末供給部37を制御する。より具体的には、制御部35は、データ変換装置32から与えられた画像データを基に、金属粉末の所定箇所へのレーザー光線の照射量を決定し、決定した照射量に基づいて、金属粉末の所定箇所へレーザー光線を照射する。尚、レーザー光線の照射量は、データ変換装置32で設定されてもよい。
図5は、1つのレイヤー画像における各部のレーザー光線の照射量の設定値を示す模式図である。図5では、ステム本体6の遠位部9の一部を示すレイヤー画像を示している。図3(b)及び図5に示すように、レイヤー画像は、複数の画素によって構成されている。各画素は、例えば、レーザー光線で一度に照射することのできる最小単位面積に相当する大きさとされている。前述したように、ステム4は、金属粉末の溶融量を場所によって異ならせることで形成される。このため、レイヤー画像のデータにおいては、画素毎に、レーザー光線の照射量が設定されている。
本実施形態では、ステム本体6の遠位部9では、囲繞部15は、緻密体によって形成されており、実質的に気孔が形成されていない。したがって、囲繞部15を形成するためには、金属粉末を、気孔が形成されない程度に十分に溶融する必要がある。このため、図5に示すレイヤー画像では、囲繞部15に相当する領域44へのレーザー光線の照射量(単位時間当たりの照射エネルギー)が、レイヤー画像中で最も大きい値に設定されている。なお、レイヤー画像中においては、レーザー光線を照射する画素にハッチングを付しており、ハッチングの間隔が短いほど、レーザー光線の照射量の設定値が大きいことを示している。
また、ポーラス部14の第3部分23は、ポーラス部14のうちで、最も気孔率が小さい部分である。このため、第3部分23を形成する際の金属粉末の溶融量は、囲繞部15を形成する際の金属粉末の溶融量に次いで大きくする必要がある。このため、図5に示すレイヤー画像では、第3部分23に相当する領域43へのレーザー光線の照射量の設定値が、領域44に次いで大きくされている。
また、ポーラス部14の第2部分22は、ポーラス部14のうちで、第3部分23に次いで気孔率が小さい部分である。このため、第2部分22を形成する際の金属粉末の溶融量は、第3部分23を形成する際の金属粉末の溶融量に次いで大きくする必要がある。このため、図5に示すレイヤー画像では、第2部分22に相当する領域42へのレーザー光線の照射量の設定値が、領域43に次いで大きくされている。
また、ポーラス部14の第1部分21は、ポーラス部14のうちで、最も気孔率が大きい部分である。このため、第1部分21を形成する際の金属粉末の溶融量は、遠位部9のなかで最も小さくする必要がある。このため、図5に示すレイヤー画像では、第1部分21に相当する領域41へのレーザー光線の照射量の設定値が、最も小さくされている。
尚、図5に示すレイヤー画像において、ハッチングが付されていない画素は、レーザー光線が照射されない領域を示している。図5では、1つのレイヤーについて説明したけれども、各レイヤー画像においても、上記と同様に、画素毎にレーザー光線の照射量が適宜設定されている。
図4を参照して、レーザー光線が照射される金属粉末は、可動台36に載置される。可動台36は、金属粉末を保持するために設けられている。可動台36は、例えば、略水平な上面を有しており、当該上面に金属粉末が載置される。また、可動台36は、図示しない駆動機構を有しており、上面と直交する上下方向に沿って変位することが可能である。可動台36には、粉末供給部37から金属粉末が供給される。
粉末供給部37は、金属粉末を収容する収容部と、金属粉末を可動台36上に供給する供給部と、を有している。粉末供給部37は、前述した所定の間隔に相当する厚み(本実施形態において、30μm)の金属粉末層を可動台36上に形成する。
[ステムの製造工程]
次に、ステム4を製造する工程について、図6等を参照しながら説明する。図6は、ステム4の製造工程について説明するためのフローチャートである。ステム4を製造する際には、まず、設計者が、CAD装置31を用いて、ステム4のCADデータを作成する(ステップS1)。
ステム4のCADデータは、例えば、設計者がCAD装置31を操作することに応じて、データ変換装置32へ出力される(ステップS2)。データ変換装置32は、CADデータによって特定されるステム4の画像を、所定の厚み毎に複数のレイヤーに分割し、各レイヤーの画像データを、製造装置33の制御部35へ出力する(ステップS3)。制御部35は、各レイヤーの画像データを読み込み、各レイヤーの各画素に、レーザー光線の照射量を設定する(ステップS4)。
次に、制御部35は、粉末供給部37を駆動させる。これにより、粉末供給部37は、図7(a)に示すように、可動台36の上面に、前述した所定厚み(本実施形態において、30μm)の金属粉末層51を形成する(ステップS5)。即ち、金属粉末が準備される。次いで、制御部35は、レーザー光源34を駆動させる。これにより、レーザー光源34は、制御部35で設定されたレーザー光線の照射量に従って、金属粉末層51の所定箇所に、レーザー光線を所定量照射する(ステップS6)。これにより、図7(b)に示すように、金属粉末層51の一部が溶融されることで、当該一部が焼結される。
次に、制御部35は、全てのレイヤーに関連して焼結作業が行われたか否かを判定する(ステップS7)。焼結作業が完了していない場合(ステップS7でNO)、制御部35は、可動台36を駆動させ、金属粉末層51の厚みと同じ値だけ、可動台36を下方に変位させる(ステップS8)。
制御部35は、再び、粉末供給部37を駆動させる。これにより、粉末供給部37は、再び金属粉末層を形成する(ステップS5)。次いで、制御部35は、レーザー光源34を駆動させる。これにより、レーザー光源34は、制御部35で設定されたレーザー光線の照射量に従って、金属粉末層の所定箇所に、レーザー光線を所定量照射する(ステップS6)。これにより、金属粉末層の一部が溶融されることで、当該一部が焼結される。このように、金属粉末の溶融量を場所によって異ならせることで、ステム4を形成する。
製造装置33では、全てのレイヤーに関連して焼結作業が行われるまで、ステップS5〜ステップS8が繰り返される。これにより、図7(c)に示すように、金属粉末層n、n+1、n+2、…、(nは正の整数)が積層され、ステム本体6が形成されていくこととなる。これにより、ステム本体6の内部のうち、遠位部9を含む少なくとも一部にポーラス部14が形成される。また、ステム本体6の近位部8の外表面部にポーラス構造を形成することで、結合部13が形成される。
全てのレイヤーについて焼結作業が行われたと制御部35で判定された場合(ステップS7でYES)、焼結作業が完了し、後処理が行われる(ステップS9)。本実施形態では、後処理は、可動台36上に形成されたステム4を可動台36から取り外し、ステム4に付着している不要な金属粉末をステム4から除去する処理を含む。この除去処理は、例えば、2−プロパノール及び純水等を用いてステム4を超音波洗浄する処理を含む。また、本実施形態では、後処理工程は、上記の除去処理の後に行われる機械加工工程を含む。この機械加工工程では、ステム4の緻密体のうち、ステム4の外側に露出している部分が、研削又は研磨される。即ち、ステム4のネック部7の外表面、及び、ステム本体6の遠位部9の外表面が、研削又は研磨される。これらの後処理工程を経ることにより、ステム4が完成する。
以上説明したように、本実施形態のステム4は、生体親和性を有する金属材料を用いて形成される。このため、医療用材料として既に実用化されている金属材料を、人工関節用コンポーネントの材料として用いることができる。したがって、ステム4を製造及び販売する際に、材料について、新たに厚生労働省の認可を受ける必要が無く、製造にかかる手間及び費用が少なくて済む。
また、ステム4は、焼結金属を用いて一体に形成される。このため、ステムを複数の異種材料からなる複合材料で形成した場合と比べて、ステム4の一部が剥離することを、確実に抑制することができる。その結果、剥離した部材が患者の組織を刺激することを抑制できるので、患者の負担が少なくて済む。
また、ステム本体6の内部のうち、遠位部9を含む少なくとも一部は、ポーラス部14を有している。これにより、ステム本体6のうち、ポーラス部14、及びポーラス部14の周辺の弾性率を小さくすることができる。これにより、ステム本体6の遠位部9及び遠位部9の周辺部分を弾性変形させ易くすることができる。その結果、ステム本体6を患者の大腿骨102の孔部102bに挿入する際に、ステム本体6の遠位部9が孔部102bの周面と接触しても、当該遠位部9は、弾性変形することができる。その結果、ステム本体6を、患者の大腿骨102の孔部102bに弾性変形しつつスムーズに挿入することができ、ステム本体6を、過度に大きい力によって孔部102bに挿入する必要がない。このため、ステム本体6の遠位部9が孔部102bの周面に強く押圧されて固定されることを抑制できる。これにより、患者の大腿骨102からの荷重がステム本体6の遠位部9、即ち先端部に作用することを抑制でき、ステム本体6の折れによる破損を抑制できる。また、ステム本体6の遠位部9及び遠位部9の周辺部分が可撓性を有していることにより、ステム本体6の遠位部9に生じる応力を小さくすることができる。よって、ステム本体6の動揺を防ぐことができ、ステム本体6の近位部8が皮質骨で固定され、ステム本体6の折れによる破損をより確実に抑制できる。
また、ステム本体6の遠位部9の折れによる破損を抑制している結果、ステム本体6をより長くすることができる。その結果、ステム本体6と患者の大腿骨102とが結合する部分の面積をより広く確保することができ、ステム本体6と患者の大腿骨102との結合強度をより高くすることができる。しかも、ポーラス部14が設けられていることにより、ステム本体6を、患者の大腿骨102の孔部102bに弾性変形しつつスムーズに挿入することができるので、ステム本体6が長くても、孔部102bへのステム本体6の挿入作業を容易に行うことができ、患者に与える負担を少なくできる。
また、ステム4によると、金属粉末の溶融量を異ならせることで、ステム本体6の内部にポーラス部14を形成する。このため、金属を切削してステム4を形成する必要が無い。したがって、医療用器具の材料として多く流通しているチタン合金等の難切削材であっても、切削条件の制限無く、ステム4を形成することができる。したがって、ステム4の製造にかかる手間をより少なくすることができる。
従って、製造にかかる手間及び費用が少なくて済み、患者の負担が少なくて済み、折れ等の破損を抑制することができ、且つ、患者の骨との結合力を高くすることのできる、ステム4を提供することができる。
また、ステム4によると、ポーラス部14の気孔率は、ステム本体6の長手方向Z1と直交する方向に沿って変化している。即ち、ポーラス部14において、ステム本体6の長手方向Z1と直交する方向(幅方向X1及び厚み方向Y1)に沿って気孔率を変化させている。これにより、ポーラス部14と、囲繞部15との境界部分において、ステム本体6の組織構造が急激に変化することを抑制している。これにより、当該境界部分における応力集中を抑制でき、ポーラス部14が囲繞部15から剥離することを抑制できる。
また、ステム4によると、ステム本体6の囲繞部15は、緻密体である。このように、囲繞部15を緻密体としていることにより、ステム本体6の遠位部9の外表面を平滑にすることができる。これにより、ステム4の遠位部9は、患者の骨組織と結合し難くされている。したがって、ステム4の遠位部9が患者の大腿骨102に固定されることを抑制できる。その結果、ステム4の遠位部9に荷重が作用することをより確実に抑制できるので、ステム4の折れによる破損をより確実に抑制できる。
また、ステム4によると、ステム本体6の近位部8の内部は、緻密体によって形成されている。これにより、ステム本体6の近位部8の強度を高くすることができる。このため、骨盤101の臼蓋101aから、骨頭ボール5を介してネック部7に作用する荷重を、ステム本体6の近位部8で堅固に受けることができる。したがって、人工股関節1の許容伝達荷重をより大きくすることができる。
また、ステム4によると、ポーラス構造を有する結合部13が患者の骨組織と結合することにより、結合部13と患者の大腿骨102とを、強固に結合することができる。しかも、結合部13をステム本体6の近位部8に設けることにより、ネック部7からの荷重は、ステム本体6の近位部8で受けられ、遠位部9には伝わらないようにすることができる。これにより、ステム本体6の遠位部9に作用する負荷をより小さくすることができ、その結果、ステム本体6の折れによる破損をより確実に抑制できる。
また、ステム4によると、結合部13の気孔率は、ステム4の遠位端4aに向かうに従い小さくされている。結合部13においては、気孔率が約50%〜70の場合に、患者の骨組織がより多く気孔内に進入してくるので、大腿骨102との結合強度が高くなる。このように、気孔率は、結合部13と患者の骨組織との間の結合強度に影響する要素である。この気孔率を、例えば、ステム本体6の近位部8では約50%〜70%に設定し、ステム本体6の遠位部9に向かうに従い小さくしている。これにより、結合部13のうち、ステム本体6の遠位部9から遠い箇所では、患者の大腿骨102との結合強度を大きくすることができる。また、ステム本体6の遠位部に近い箇所では、患者の大腿骨102との結合強度を小さくすることができる。その結果、結合部13の周辺に作用する荷重がステム本体6の遠位部に伝わることを抑制できる。これにより、ステム本体6の遠位部9の折れによる破損をより確実に抑制できる。
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のように変更して実施してもよい。
[変形例]
(1)前述の実施形態では、ポーラス部の気孔率を、長手方向と直交する方向に沿って変化させる構成を説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、図8に示すステム4Aの遠位部9Aにおいて、ポーラス部14Aの気孔率を、長手方向Z1に沿って変化させてもよい。尚、以下では、上記実施形態と異なる点について主に説明し、同様の構成には図に同一の符号を付して説明を省略する。
ポーラス部14Aは、囲繞部15に溶融により接合している。ポーラス部14Aは、第1部分21Aと、第2部分22Aと、第3部分23Aと、を有している。
第1部分21Aは、ポーラス部14Aの遠位端側の一部として設けられている。第1部分21Aの気孔率は、ポーラス部14Aの気孔率のなかで最も大きい。これにより、第1部分21Aの弾性係数は、ポーラス部14Aの弾性係数のなかで最も小さく、第1部分21Aは、高い可撓性を有している。第1部分21Aは、長手方向Z1の一方(図8の下側)に向けて凸となる形状の近位端と、この近位端から長手方向Z1に沿って延びる柱状の部分と、を有している。第1部分21Aには、第2部分22Aが連続している。
第2部分22Aは、長手方向Z1に関するポーラス部14Aの中間部の一部として設けられている。第2部分22Aの気孔率は、第1部分21Aの気孔率よりも小さい。これにより、第2部分22Aの弾性係数は、第1部分21Aの弾性係数よりも大きい。第2部分22Aは、長手方向Z1に沿って延びる柱状に形成されている。第2部分22Aには、第3部分23Aが連続している。
第3部分23Aは、ポーラス部14Aの近位端側の一部として設けられている。第3部分23Aの気孔率は、ポーラス部14Aの気孔率のなかで最も小さい。これにより、第2部分22Aの弾性係数は、ポーラス部14Aの弾性係数のなかで最も大きい。第3部分23Aは、第2部分22の近位端から長手方向Z1に沿って延びる柱状の部分と、長手方向Z1の他方(図8の上側)に向けて凸となる形状の近位端と、を有している。
以上説明したように、ステム4Aによると、ポーラス部14Aの気孔率は、長手方向Z1に沿って変化している。これにより、ポーラス部14Aにおいて、高剛性の第3部分23Aと、可撓性の高い第1部分21Aとを設けることができるので、剛性の確保と、可撓性の確保とを両立することができる。
(2)前述の実施形態及び変形例では、ポーラス部の気孔率を、長手方向と直交する方向、又は、長手方向に沿って変化させる構成を説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、図9に示すように、ステム4Bにおいて、ポーラス部14Bの気孔率を、長手方向と直交する方向に沿って変化させ、且つ、長手方向に沿って変化させてもよい。
ポーラス部14Bは、第1部分21Bと、第2部分22Bと、第3部分23Bと、を有している。
第1部分21Bは、長手方向Z1に並ぶ第1領域61、第2領域62、及び第3領域63を有しており、近位端4a側から長手方向Z1に沿って第1領域61、第2領域62、及び第3領域63がこの順に並んでいる。第1領域61の気孔率は、第2領域62の気孔率よりも大きい。また、第2領域62の気孔率は、第3領域63の気孔率よりも大きい。即ち、第1領域61の気孔率>第2領域62の気孔率>第3領域63の気孔率である。
第2部分22Bは、長手方向Z1に並ぶ第1領域71、第2領域72、及び第3領域73を有しており、近位端4a側から長手方向Z1に沿って第1領域71、第2領域72、及び第3領域73がこの順に並んでいる。第1領域71の気孔率は、第2領域72の気孔率よりも大きい。また、第2領域72の気孔率は、第3領域73の気孔率よりも大きい。即ち、第1領域71の気孔率>第2領域72の気孔率>第3領域73の気孔率である。
第3部分23Bは、長手方向Z1に並ぶ第1領域81、第2領域82、及び第3領域83を有しており、近位端4a側から長手方向Z1に沿って第1領域81、第2領域82、及び第3領域83がこの順に並んでいる。第1領域81の気孔率は、第2領域82の気孔率よりも大きい。また、第2領域82の気孔率は、第3領域83の気孔率よりも大きい。即ち、第1領域81の気孔率>第2領域82の気孔率>第3領域83の気孔率である。
本実施形態では、第1部分21Bの何れの領域においても、気孔率は、第2部分22Bの何れの領域の気孔率よりも大きい場合もある。また、第2部分22Bの何れの領域においても、気孔率は、第3部分23Bの何れの領域の気孔率よりも大きい場合もある。
以上説明したように、ステム4Bによると、ポーラス部14Bの気孔率は、長手方向Z1と直交する方向に沿って変化している。これにより、ポーラス部14Bと、囲繞部15との境界部分において、ステム4Bの組織構造が急激に変化することを抑制している。これにより、当該境界部分における応力集中を抑制でき、ポーラス部14Bが囲繞部15との間で剥離が生じることを抑制できる。
更に、ステム4Bによると、ポーラス部14Bの気孔率は、長手方向Z1に沿って変化している。これにより、ポーラス部14Bにおいて、高剛性の部分と、可撓性の高い部分とを設けることができるので、剛性の確保と、可撓性の確保とを両立することができる。
(3)前述の実施形態及び変形例では、ポーラス部において、気孔率が段階的に変化する形態を例にとって説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、ポーラス部内において、気孔率は、連続的に変化してもよい。これにより、ポーラス部内における応力集中をより低減することができる。
(4)ポーラス部において、気孔率が異なる部分の数は、前述した実施形態及び変形例で説明した数と異なっていてもよい。
(5)前述の実施形態及び変形例では、ステムの全体を同時に形成する構成を例にとって説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、ステムのうち、結合部と、結合部以外の部分とを別個に形成し、その後、結合部と、結合部以外の部分とを、金属粉末を用いて一体に結合してもよい。
(6)前述の実施形態及び変形例では、金属材料としてチタン合金1種類を用いる形態を例にとって説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、チタン合金と、生体親和性に関してチタン合金よりも優れているチタンとを用いてステムを形成してもよい。この場合、チタンによって結合部を形成し、強度に関してチタンよりも優れているチタン合金を用いて、ステムのうち結合部以外の部分を形成することが好ましい。また、金属表面にフッ素樹脂を形成することで、ステム本体の遠位部の外表面をフッ素樹脂によって形成してもよい。フッ素樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を例示することができる。これにより、ステム本体の遠位部が大腿骨の骨組織と接着することを、より確実に抑制できる。
(7)前述の実施形態及び変形例では、長手方向に沿って金属粉末層を積層することでステムを形成する形態を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。ステムを形成する際に金属粉末層を積層する方向は、特に限定されない。
(8)前述の実施形態及び変形例では、人工関節用コンポーネントとして、人工股関節に用いられるステムを例にとって説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、本発明の人工関節用コンポーネントを、例えば、人工肘関節、及び人工肩関節の少なくとも一方に適用してもよい。