EUTRAの移動局装置は、シングルキャリア通信方式が適用されたため、チャネル測定用の参照信号とデータ信号を同時に送信することができなかった。そのため、基地局装置が電力許容値に余裕のある移動局装置に対して移動局装置の送信電力に無駄のない最適なリソース割り当てを行なうことに限界があった。これに対して、Advanced EUTRAの移動局装置にはシングルキャリア通信方式だけでなく、マルチキャリア通信方式が適用できるため、電力許容値に余裕のない移動局装置に対してチャネル測定用の参照信号とデータ信号を同じ時間シンボルに同時に割り当てられることが考えられる。
しかしながら、Advanced EUTRAの移動局装置において、チャネル測定用の参照信号とデータ信号とでは、それぞれ異なるリソース割り当て方法が適用されているため、移動局装置の最大送信電力を超えたリソース割り当てが行なわれるという問題が生じる。基地局装置は、このような場合に対応するために、移動局装置から通知される電力許容値を基に、最適なリソース割り当て制御を行なう必要がある。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、各移動局装置の電力許容値などを使用した送信電力制御に合わせたリソース割り当て制御を行なうことにより、チャネル測定用の参照信号とデータ信号を、これらを送信するチャネルの品質を維持しながら同時送信することができる無線通信システム、基地局装置、移動局装置、無線通信システムの制御方法、基地局装置の制御プログラムおよび移動局装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の無線通信システムは、基地局装置および前記基地局装置に対してデータ信号とチャネル測定用の参照信号とを送信する移動局装置から構成される無線通信システムであって、前記基地局装置は、前記移動局装置で前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能とするか否かを示す同時送信制御情報を設定する同時送信設定部と、前記設定した同時送信制御情報を前記移動局装置に対して送信する送信部と、を備え、前記移動局装置は、前記基地局装置から送信された同時送信制御情報を受信する受信部と、前記データ信号および前記参照信号が同じ時間シンボルに割り当てられ場合、前記受信した同時送信制御情報に基づいて、前記データ信号および前記参照信号を前記基地局装置に対して同時に送信するか否かを判定する同時送信制御部と、前記判定の結果、前記データ信号および前記参照信号を同時に送信する場合、前記データ信号および前記参照信号を前記基地局装置に対して同時に送信する移動局側送信部と、を備えることを特徴としている。
このように、移動局装置が、データ信号および参照信号が同じ時間シンボルに割り当てられ場合、受信した同時送信制御情報に基づいて、データ信号および参照信号を基地局装置に対して同時に送信するか否かを判定するので、基地局装置は、移動局装置の電力許容値に対応した最適なリソース割り当て制御をすることが可能となる。
(2)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記同時送信制御部は、前記同時送信制御情報が、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能とすることを示す場合、前記参照信号を配置する時間シンボルに前記データ信号を配置する制御を行なう一方、前記同時送信制御情報が、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能としないことを示す場合、前記参照信号を配置する時間シンボルに前記データ信号を配置しないように前記データ信号のリソース割り当てを変更する制御を行なうことを特徴としている。
このように、同時送信制御情報が、データ信号および参照信号の同時送信を可能としないことを示す場合、参照信号を配置する時間シンボルにデータ信号を配置しないようにデータ信号のリソース割り当てを変更する制御を行なうので、基地局装置は、常にチャネル測定用の参照信号のチャネル品質を保証することができる。また、基地局装置は、移動局装置の移動速度が速い、チャネル品質がすぐに変わってしまう環境においてはチャネル測定の頻度を多くすることで移動局装置のチャネル品質に合わせた上りリンク信号のリソース割り当ての制御を行なうことができる。
(3)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記同時送信制御部は、前記同時送信制御情報が、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能とすることを示す場合、前記参照信号を配置する時間シンボルに前記データ信号を配置する制御を行なう一方、前記同時送信制御情報が、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能としないことを示す場合、前記データ信号を送信する時間フレームでは前記参照信号を送信しない制御を行なうことを特徴としている。
このように、同時送信制御情報が、データ信号および参照信号の同時送信を可能としないことを示す場合、データ信号を送信する時間フレームでは参照信号を送信しない制御を行なうので、基地局装置は、常にデータ信号の通信速度などの通信品質を保証することができる。データ信号を多く送信したい場合や、移動局装置が全く移動しない場合すなわちチャネル品質が変化しない環境における場合に有効である。
(4)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記同時送信制御部は、前記同時送信制御情報が、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能としないことを示す場合、前記参照信号の設定情報に1回送信が設定されているときは、前記参照信号を配置する時間シンボルに前記データ信号を配置しないように前記データ信号のリソース割り当てを変更する制御を行なう一方、前記参照信号の設定情報に1回送信が設定されていないときは、前記同時送信制御情報に基づいた制御を行なうことを特徴としている。
このように、移動局装置が、参照信号の設定情報に1回送信が設定されているときは、参照信号を配置する時間シンボルにデータ信号を配置しないようにデータ信号のリソース割り当てを変更する制御を行なうので、基地局装置は、チャネル測定を優先させることができる。
(5)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記同時送信設定部は、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能としないことを示す同時送信制御情報を設定した場合、更に、前記データ信号と同じ時間フレームで前記参照信号を送信しない制御を行なうこと、または前記参照信号を配置する時間シンボルに前記データ信号を配置しないように前記データ信号のリソース割り当てを変更する制御を行なうことを示す情報を前記同時送信制御情報に含めて前記送信部を介して前記移動局装置に対して通知する一方、前記同時送信制御部は、前記同時送信制御情報が、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能としないことを示す場合、前記データ信号と同じ時間フレームで前記参照信号を送信しない制御、または前記参照信号を配置する時間シンボルに前記データ信号を配置しないように前記データ信号のリソース割り当てを変更する制御のいずれか一方を切り替えて行なうことを特徴としている。
このように、基地局装置が、データ信号と同じ時間フレームで参照信号を送信しない制御を行なうこと、または参照信号を配置する時間シンボルにデータ信号を配置しないようにデータ信号のリソース割り当てを変更する制御を行なうことを示す情報を同時送信制御情報に含めるので、移動局装置は、データ信号および参照信号の同時送信を可能としない場合に、同時送信制御情報を基に、制御することができる。
(6)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記同時送信制御部は、前記同時送信制御情報が、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能とすることを示す場合、同じ時間フレームに前記データ信号および前記参照信号を配置する制御を行なう一方、前記同時送信制御情報が、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能としないことを示す場合、前記データ信号の情報の種類に応じて、前記データ信号を送信する時間フレームで前記参照信号を送信しない制御、または前記参照信号を配置する時間シンボルに前記データ信号を配置しないように前記データ信号のリソース割り当てを変更する制御のいずれか一方を切り替えて行なうことを特徴としている。
このように、同時送信制御情報が、データ信号および参照信号の同時送信を可能としないことを示す場合、データ信号の情報の種類に応じて、データ信号を送信する時間フレームで参照信号を送信しない制御、または参照信号を配置する時間シンボルに前記データ信号を配置しないようにデータ信号のリソース割り当てを変更する制御のいずれか一方を切り替えて行なうので、データ信号に通信を行なう上で重要な情報が割り当てられる場合、移動局装置は、データ信号と同じ時間フレームにチャネル測定用の参照信号を送信しない(ドロップする)ように制御することができる。
(7)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記同時送信制御部は、前記同時送信制御情報が、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能としないことを示す場合、同じ時間シンボルに前記データ信号および前記参照信号が割り当てられ、前記データ信号にメッセージ3が割り当てられるときは、前記データ信号と同じ時間フレームでは前記参照信号を送信しない制御を行なう一方、前記データ信号にメッセージ3が割り当てられないときは、前記参照信号を配置する時間シンボルに前記データ信号を配置しないように前記データ信号のリソース割り当てを変更する制御を行なうことを特徴としている。
このように、同時送信制御情報が、データ信号および参照信号の同時送信を可能としないことを示す場合、同じ時間シンボルにデータ信号および参照信号が割り当てられ、データ信号にメッセージ3が割り当てられるときは、データ信号と同じ時間フレームでは参照信号を送信しない制御を行なう一方、データ信号にメッセージ3が割り当てられないときは、参照信号を配置する時間シンボルにデータ信号を配置しないようにデータ信号のリソース割り当てを変更する制御を行なうので、基地局装置は、移動局装置のメッセージ3の送信段階において、どの移動局装置からメッセージ3を送信されたか認識していない状態で、移動局装置からリソース割り当てを変更して送信された場合に、データ信号を復調できないという状況を回避することができる。
(8)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記同時送信設定部は、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能することを示す同時送信制御情報を設定し、同じ時間シンボルに前記データ信号および前記参照信号を割り当てる場合、前記データ信号および前記参照信号の送信電力の合計が最大送信電力以上となる移動局装置に対して、前記データ信号の送信電力のみを低減する制御を行なうことを示す情報を前記同時送信制御情報に含めて前記送信部を介して前記移動局装置に対して通知する一方、前記同時送信制御部は、前記同時送信制御情報が、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能とすることを示す場合、前記データ信号および前記参照信号の送信電力の合計が最大送信電力未満であれば、同じ時間シンボルに前記データ信号および前記参照信号を配置する制御を行なう一方、前記データ信号および前記参照信号の送信電力の合計が最大送信電力以上であれば、前記データ信号の送信電力を低減して前記データ信号および前記参照信号の合計が最大送信電力未満となる制御を行なって、前記データ信号および前記参照信号を同時に送信することを特徴としている。
このように、基地局装置は、同じ時間シンボルにデータ信号および参照信号を割り当てる場合、データ信号および参照信号の送信電力の合計が最大送信電力以上となる移動局装置に対して、データ信号の送信電力のみを低減する制御を行なうことを示す情報を同時送信制御情報に含めるので、チャネル測定用の参照信号を優先することで、移動局装置が現在使用している帯域より通信状態のよい帯域があるか否かを判断することができる。また、チャネル測定の結果、基地局装置が移動局装置のデータ信号を通信状態のよい帯域に割り当てることができるようなスケジューリングを行なうことができれば、移動局装置のデータ信号の通信品質の改善を行なうことができる。
(9)また、本発明の無線通信システムにおいて、前記同時送信設定部は、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能することを示す同時送信制御情報を設定し、同じ時間シンボルに前記データ信号および前記参照信号を割り当てる場合、前記データ信号および前記参照信号の送信電力の合計が最大送信電力以上となる移動局装置に対して、前記参照信号の送信電力のみを低減する制御を行なうことを示す情報を前記同時送信制御情報に含めて前記送信部を介して前記移動局装置に対して通知する一方、前記同時送信制御部は、前記同時送信制御情報が、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能とすることを示す場合、前記データ信号および前記参照信号の送信電力の合計が最大送信電力未満であれば、同じ時間シンボルに前記データ信号および前記参照信号を配置する制御を行なう一方、前記データ信号および前記参照信号の送信電力の合計が最大送信電力以上であれば、前記参照信号の送信電力を低減して前記データ信号および前記参照信号の合計が最大送信電力未満となる制御を行なって、前記データ信号および前記参照信号を同時に送信することを特徴としている。
このように、基地局装置は、同じ時間シンボルにデータ信号および参照信号を割り当てる場合、データ信号および参照信号の送信電力の合計が最大送信電力以上となる移動局装置に対して、参照信号の送信電力のみを低減する制御を行なうことを示す情報を同時送信制御情報に含めるので、データ信号の送信電力を維持することによって、データ信号の通信速度などの通信品質を保証することができる。
(10)また、本発明の基地局装置は、データ信号およびチャネル測定用の参照信号を送信する移動局装置と通信を行なう基地局装置であって、前記移動局装置で前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能とするか否かを示す同時送信制御情報を設定する同時送信設定部と、前記設定した同時送信制御情報を前記移動局装置に対して送信する送信部と、を備えることを特徴としている。
このように、基地局装置は、移動局装置でデータ信号および参照信号の同時送信を可能とするか否かを示す同時送信制御情報を設定するので、移動局装置の電力許容値に対応した最適なリソース割り当て制御をすることが可能となる。
(11)また、本発明の基地局装置において、前記移動局装置から通知され、前記移動局装置の最大送信電力値と上りリンクの送信用に見積もられる所定の電力値との差である電力許容値に基づいて、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能とするか否かを判定する無線リソース制御部を更に備えることを特徴としている。
このように、基地局装置は、移動局装置の最大送信電力値と上りリンクの送信用に見積もられる所定の電力値との差である電力許容値に基づいて、データ信号および参照信号の同時送信を可能とするか否かを判定するので、移動局装置の電力許容値に対応した最適なリソース割り当て制御をすることができる。
(12)また、本発明の移動局装置は、基地局装置に対してデータ信号とチャネル測定用の参照信号とを送信する移動局装置であって、前記基地局装置から、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能とするか否かを示す同時送信制御情報を受信する受信部と、前記データ信号および前記参照信号が同じ時間シンボルに割り当てられた場合、前記受信した同時送信制御情報に基づいて、前記データ信号および前記参照信号を前記基地局装置に対して同時に送信するか否かを判定する同時送信制御部と、前記判定の結果、前記データ信号および前記参照信号を同時に送信する場合、前記データ信号および前記参照信号を前記基地局装置に対して同時に送信する移動局側送信部と、を備えることを特徴としている。
このように、移動局装置が、データ信号および参照信号が同じ時間シンボルに割り当てられた場合、受信した同時送信制御情報に基づいて、データ信号および参照信号を基地局装置に対して同時に送信するか否かを判定するので、基地局装置は、移動局装置の電力許容値に対応した最適なリソース割り当て制御をすることができる。
(13)また、本発明の無線通信システムの制御方法は、基地局装置および前記基地局装置に対してデータ信号とチャネル測定用の参照信号とを送信する移動局装置から構成される無線通信システムの制御方法であって、前記基地局装置において、前記移動局装置で前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能とするか否かを示す同時送信制御情報を設定するステップと、前記設定した同時送信制御情報を前記移動局装置に対して送信するステップと、前記移動局装置において、前記基地局装置から送信された同時送信制御情報を受信するステップと、前記データ信号および前記参照信号が同じ時間シンボルに割り当てられた場合、前記受信した同時送信制御情報に基づいて、前記データ信号および前記参照信号を前記基地局装置に対して同時に送信するか否かを判定するステップと、前記判定の結果、前記データ信号および前記参照信号を同時に送信する場合、前記データ信号および前記参照信号を前記基地局装置に対して同時に送信するステップと、を少なくとも含むことを特徴としている。
このように、基地局装置は、移動局装置でデータ信号および参照信号の同時送信を可能とするか否かを示す同時送信制御情報を設定するので、移動局装置の電力許容値に対応した最適なリソース割り当て制御をすることができる。
(14)また、本発明の基地局装置の制御プログラムは、データ信号およびチャネル測定用の参照信号を送信する移動局装置と通信を行なう基地局装置の制御プログラムであって、無線リソース制御部において、前記移動局装置から通知され、前記移動局装置の最大送信電力値と上りリンクの送信用に見積もられる所定の電力値との差である電力許容値に基づいて、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能とするか否かを判定する処理と、同時送信設定部において、前記移動局装置で前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能とするか否かを示す同時送信制御情報を設定する処理と、送信部において、前記設定した同時送信制御情報を前記移動局装置に対して送信する処理と、の一連の処理がコンピュータに読み取り可能および実行可能にコマンド化されたことを特徴としている。
このように、基地局装置は、移動局装置の最大送信電力値と上りリンクの送信用に見積もられる所定の電力値との差である電力許容値に基づいて、データ信号および参照信号の同時送信を可能とするか否かを判定するので、移動局装置の電力許容値に対応した最適なリソース割り当て制御をすることが可能となる。
(15)また、本発明の移動局装置の制御プログラムは、基地局装置に対してデータ信号とチャネル測定用の参照信号とを送信する移動局装置の制御プログラムであって、受信部において、前記基地局装置から、前記データ信号および前記参照信号の同時送信を可能とするか否かを示す同時送信制御情報を受信する処理と、同時送信制御部において、前記データ信号および前記参照信号が同じ時間シンボルに割り当てられ場合、前記受信した同時送信制御情報に基づいて、前記データ信号および前記参照信号を前記基地局装置に対して同時に送信するか否かを判定する処理と、前記判定の結果、前記データ信号および前記参照信号を同時に送信する場合、移動局側送信部において、前記データ信号および前記参照信号を前記基地局装置に対して同時に送信する処理と、の一連の処理がコンピュータに読み取り可能および実行可能にコマンド化されたことを特徴としている。
このように、移動局装置が、データ信号および参照信号が同じ時間シンボルに割り当てられ場合、受信した同時送信制御情報に基づいて、データ信号および参照信号を基地局装置に対して同時に送信するか否かを判定するので、基地局装置は、移動局装置の電力許容値に対応した最適なリソース割り当て制御をすることが可能となる。
本発明によれば、基地局装置は、電力許容値に余裕のある移動局装置に対しては、チャネル測定用の参照信号とデータ信号とを同時に送信することを指示することができる。これにより、基地局装置は、移動局装置の送信電力に無駄のない最適なリソース割り当てを行なうことが可能となる。また、基地局装置は、電力許容値に余裕がないか、もしくは、チャネル測定用の参照信号とデータ信号を同時送信することで電力許容値が負になる移動局装置に対しては、チャネル測定用の参照信号とデータ信号とを同時に送信しないで、チャネル測定用の参照信号とデータ信号のいずれか一方を送信するように設定することができる。これにより、チャネル測定用の参照信号を送信するように設定した場合には、常にチャネル測定用の参照信号のチャネル品質を保証することができる。また、データ信号を送信するように設定した場合には、常にデータ信号の通信速度などの通信品質を保証することができる。
各実施形態の具体的な説明に入る前に、本発明で用いられる通信技術の概要について簡単に説明する。
(1)物理チャネル
EUTRAおよびAdvanced EUTRAで使用される物理チャネルには、物理報知チャネル、下りリンクデータチャネル、下りリンク制御チャネル、下りリンク参照信号、上りリンクデータチャネル、上りリンク制御チャネル、ランダムアクセスチャネル、上りリンク参照信号などが含まれる。EUTRAおよびAdvanced EUTRAにおいて、物理チャネルの種類が今後追加されたり、または、チャネル構造が変更されたりする可能性もあるが、このような変更がなされた場合でも、後述する本発明の各実施形態を適用可能である。
物理報知チャネル(PBCH:Physical Broadcast Channel)は、40ミリ秒間隔で報知チャネル(BCH:Broadcast Channel)をマッピングする。40ミリ秒のタイミングは、ブラインド検出(blind detection)される。すなわち、タイミング提示のために、明示的なシグナリングを行なわない。また、物理報知チャネル(PBCH)を含むサブフレームは、そのサブフレームだけで復号できる(自己復号可能:self-decodable)。物理下りリンク制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)は、基地局装置から移動局装置へ送信される下りリンクチャネルであり、複数の移動局装置に対して共通に使用される。基地局装置は、送信タイミング情報やスケジューリング情報(上りリンク/下りリンクリソース割り当て情報)の送信に下りリンク制御チャネルを用いる。物理下りリンクデータチャネル(PDSCH:Physical Downlink Shared Channel)は、下りリンクデータまたはページング情報を送信するために使用されるチャネルである。
下りリンク参照信号(DL-RS:Downlink Reference Signal、またはCell-specific Reference Signal)は、基地局装置から移動局装置へ下りリンクチャネルを利用して送信される。移動局装置は下りリンク参照信号を測定することで下りリンクの受信品質を判定する。受信品質は、品質情報指標であるCQI(Channel Quality Indicator:チャネル品質識別子)として物理上りリンク制御チャネル(PUCCH:Physical Uplink Control Channel)を用いて基地局装置へ通知される。基地局装置は移動局装置から通知されたCQIに基づいて、移動局装置に対する下りリンク通信のスケジューリングを行なう。なお、受信品質としては、SIR(Signal-to-Interference Ratio:信号対干渉電力比)、SINR(Signal-to-Interference plus Noise Ratio:信号対干渉雑音電力比)、SNR(Signal-to-Noise Ratio:信号対雑音電力比)、CIR(Carrier-to-Interference Ratio:搬送波対干渉電力比)、BLER(Block Error Rate:ブロック誤り率)、パスロスなどを使用することができる。
物理上りリンクデータチャネル(PUSCH:Physical Uplink Shared Channel)は、主に上りリンクデータ(UL-SCH:Uplink Shared Channel)を送信するために使用されるチャネルである。基地局装置が、移動局装置をスケジューリングした場合には、チャネル状態情報(下りリンクのチャネル品質識別子CQI、プレコーディングマトリックス識別子(PMI:Precoding Matrix Indicator)、ランク識別子(RI:Rank Indicator))や下りリンク送信に対するハイブリッド自動再送要求(HARQ:Hybrid Automatic Repeat Request)の肯定応答(ACK:Acknowledgement)/否定応答(NACK:Negative Acknowledgement)も物理上りリンクデータチャネル(PUSCH)を使用して送信される。ここで、上りリンクデータ(UL-SCH)とは、例えば、ユーザデータの送信を示しており、UL−SCHは、トランスポートチャネルである。UL−SCHでは、HARQ、動的適応無線リンク制御がサポートされ、また、ビームフォーミングが利用可能である。UL−SCHは、動的なリソース割り当て、および、準静的なリソース割り当てがサポートされる。
物理上りリンク制御チャネル(PUCCH:Physical Uplink Control Channel)は、制御データを送信するために使用されるチャネルである。ここで制御データとは、例えば、移動局装置から基地局装置へ送信(フィードバック)されるチャネル状態情報(CQI、PMI、RI)、移動局装置が、上りリンクデータを送信するためのリソースの割り当てを要求する(UL-SCHでの送信を要求する)スケジューリング要求(SR:Scheduling Request)、下りリンク送信に対するHARQのACK/NACKなどが含まれる。
上りリンク参照信号(UL-RS:Uplink Reference Signal)は、移動局装置から基地局装置へ送信される。UL−RSには、サウンディング参照信号(SRS:Sounding Reference Signal)とデモジュレーション参照信号(DM-RS:Demodulation Reference Signal)とがある。チャネル測定用の参照信号であるサウンディング参照信号は、基地局装置が測定することで、移動局装置の上りリンク無線送信信号の受信品質の判断をし、受信品質に基づく上りリンクのスケジューリングや、上りリンクタイミング同期の調整に用いられる上りリンク受信品質測定用参照信号である。また、デモジュレーション参照信号は、上りリンクデータチャネルと共に送信され、上りリンク共用チャネルの信号の振幅、位相や周波数の変動量を計算し、上りリンクデータチャネルを利用して送信された信号を復調するための参照信号としても使用される。SRSのためのチャネルの帯域幅は、基地局装置の帯域幅に応じて決定される。また、SRSには、時間軸リンクに対して周波数ホッピングが適用される。この周波数ホッピングを用いることで、周波数ダイバーシティ効果と干渉の平均化効果が得られる。
物理ランダムアクセスチャネル(PRACH:Physical Random Access Channel)は、ランダムアクセスプリアンブルを送信するために使用される物理チャネルであり、ガードタイムを持つ。PRACHは、移動局装置が基地局装置と同期をとることを最大の目的とし、その他に、初期アクセス、ハンドオーバ、再接続要求、およびスケジューリング要求に用いられる。
(2)上りリンク信号の構成
上りリンク信号の構成について説明する。図9は、上りリンク信号の概略構成を示す図である。同図において横軸は時間であり、縦軸は周波数である。同図の例において、時間軸方向に14個のシンボルが並んでいる。7個のシンボルが1スロットに相当し、1スロットの長さは0.5ミリ秒(ms)である。また、14個のシンボル(2スロットに相当)が1サブフレームに相当し、1サブフレームの長さは1ミリ秒である。
このように1サブフレームが14シンボルで構成される上りリンク信号において、SRSは14番目のシンボルに割り当てられる。14番目のシンボルに割り当てられるSRSのリソース(周波数方向の帯域幅)は、上りリンクシステム帯域幅や移動局装置の送信電力に応じて、設定される。また、PRACHは送信するメッセージの種類やフォーマットに応じて、帯域幅や時間シンボル長を変更して割り当てることができる。EUTRAの移動局装置では、シングルキャリア送信であったため、1つの移動局装置から複数のPUSCHとSRSが同時に送信されることはなかったが、Advanced EUTRAでは、上りリンク通信においてもマルチキャリア通信が可能となったため、基地局装置は、送信電力に余裕のある移動局装置に対してPUSCHとSRSの同時送信を行なうように設定することもできる。
(3)ランダムアクセス方法
PRACHには、競合ベースランダムアクセス(Contention based Random Access)と非競合ベースランダムアクセス(Non-contention based Random Access)のアクセス方法がある。競合ベースランダムアクセスは、移動局装置間で衝突する可能性のあるランダムアクセスであり、通常行なわれるランダムアクセスのアクセス方法である。一方、非競合ベースランダムアクセスは、移動局装置間で衝突が発生しないランダムアクセスであり、迅速に移動局装置−基地局装置間の上りリンクの同期をとるためにハンドオーバ等の特別な場合に、基地局装置が主導で行なわれる。なお、基地局装置は、移動局装置に非競合ベースランダムアクセスを実行させることができない場合、競合ベースランダムアクセスを移動局装置に実行させる場合もある。
図10は、競合ベースランダムアクセスの手順の一例を示すシーケンスチャートである。まず、移動局装置が、ランダムID、下りリンクのパスロス情報などから、ランダムアクセスプリアンブルを選択し、PRACHでランダムアクセスプリアンブルのみ送信する(メッセージ1(Msg1)(ステップL101))。
基地局装置は、移動局装置からのランダムアクセスプリアンブルを受信すると、ランダムアクセスプリアンブルから移動局−基地局間の同期タイミングずれを算出し、L2/L3メッセージを送信するためのスケジューリングを行ない、一時セル無線ネットワーク一時識別子(Temporary Cell-Radio Network Temporary Identity、以降Temporary C-RNTIと称する)を割り当て、PDCCHに対してPDSCHにランダムアクセスプリアンブルを送信した移動局装置宛の応答を含むということを示すRA−RNTI(Random Access-Radio Network Temporary Identity)を配置し、PDSCHに同期タイミングずれ情報(Timing Advance)、スケジューリング情報、Temporary C−RNTIおよび受信したランダムアクセスプリアンブルのランダムアクセスプリアンブル番号(またはランダムID)を含んだランダムアクセス応答を送信する(メッセージ2(Msg2)(ステップL102))。なお、異なるPRACHに対して異なるRA−RNTIが用いられる。
移動局装置は、PDCCHにRA−RNTIがあることを確認すると、PDSCHに配置されたランダムアクセス応答の中身を確認し、送信したランダムアクセスプリアンブル番号(またはランダムID)が含まれる応答を抽出し、同期タイミングずれ情報を取得して上りリンクの送信タイミングを補正し、スケジューリングされた無線リソースで少なくともC−RNTI(またはコンテンションレゾリューションID(初期アクセス用のランダム値またはs−TMSI(System Architecture Evolution-Temporary Mobile Subscriber Identity)などのUEID(移動局装置ID)))を含むL2/L3メッセージを送信する(メッセージ3(Msg3)(ステップL103))。
基地局装置は、移動局装置からのL2/L3メッセージを受信すると、受信したL2/L3メッセージに含まれるC−RNTI(またはTemporary C-RNTI)を使用して移動局装置間で衝突が起こっているかどうか判断するためのコンテンションレゾリューションを移動局装置に送信する(メッセージ4(Msg4)(ステップL104))。移動局装置は、メッセージ3でコンテンションレゾリューションIDを送信した場合(メッセージ3が共通制御チャネル(CCCH:Common Control Channel)の場合)は、コンテンションレゾリューションで受信したL2/L3メッセージに含まれるコンテンションレゾリューションIDが自身で送信したものかどうかによりランダムアクセス処理が成功か否かを判断する。移動局装置は、メッセージ3でC−RNTIを送信した場合、基地局装置からのPDCCHでC−RNTIを検出することによってランダムアクセス処理が成功か否かを判断する。
ここで、コンテンションレゾリューションとは、移動局装置ID(C-RNTIまたはコンテンションレゾリューションID)をメッセージ3(L2/L3メッセージ)に含めて基地局装置に送信し、基地局装置はそれに対する応答としてメッセージ4(コンテンションレゾリューション)を移動局装置に送信する。この時、基地局装置はメッセージ3に対する応答に移動局装置から送信された移動局装置IDを含めて送信する。移動局装置はメッセージ4の中から自身のIDを確認することで基地局装置とアクセスできたことを確認することができる。また、移動局装置がメッセージ2の受信、またはコンテンションレゾリューションが失敗した場合にはメッセージ1からやり直す。以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
第1の実施形態について以下に説明する。第1の実施形態では、サウンディング参照信号(チャネル測定用の参照信号)と物理上りリンクデータチャネル(データ信号)を同時送信するか否かを切り替える同時送信制御情報を設定し、移動局装置に対して送信する。移動局装置は、基地局装置でデータ信号とチャネル測定用の参照信号を同時送信してもよいと設定された場合、同じ時間シンボルでチャネル測定用の参照信号とデータ信号が送割り当てられた時でもデータ信号とチャネル測定用の参照信号を同時に送信することができる。また、第1の実施形態では、基地局装置がデータ信号とチャネル測定用の参照信号を同時送信してはいけないと設定した場合にデータ信号をチャネル測定用の参照信号と同じ時間シンボルに送信しないようにリソース割り当てを変更する、という情報が同時送信制御情報に設定できる。
第1の実施形態では、チャネル測定用の参照信号とデータ信号が同時送信してもよい場合と、同時送信してはいけない場合にデータ信号のリソース割り当てを変更することを切り替えるための同時送信制御情報を基地局装置で設定でき、移動局装置は同時送信制御情報を基に、同時送信するか否かを切り替えることができる。ここで、同時送信制御情報は、予めシステムで一意に決定されていても良いし、報知情報として基地局装置から移動局装置に一斉に通知されても良いし、基地局装置から個別の移動局装置へ通知されても良い。
図1は、本発明の基地局装置1の概略機能構成を示すブロック図である。基地局装置1は、送信部101と、受信部103と、スケジューリング部105と、上位層(無線リソース制御部)107と、アンテナ109とを含んでいる。送信部101は、データ制御部1011と、変調部1013と、無線送信部1015とを含んでいる。また、受信部103は、無線受信部1031と、復調部1033と、データ抽出部1035とを含んでいる。データ制御部1011は、ユーザデータと制御データとを入力し、スケジューリング部105からの指示により、制御データをPDCCHに配置し、各移動局装置3に対する送信データや制御データをPDSCHに配置する。変調部1013は、データ変調、入力信号の直列/並列変換、IFFT、CP挿入、フィルタリングなどの信号処理を行ない、送信信号を生成する。無線送信部1015は、変調されたデータを無線周波数にアップコンバードした後に、アンテナ109を介して、移動局装置3に送信する。
無線受信部1031は、移動局装置3からの上りリンクの信号を受信し、ベースバンド信号にダウンコンバートして、受信データを復調部1033に出力する。データ抽出部1035は、受信データの正誤を確認し、確認結果をスケジューリング部105に通知する。データ抽出部1035は、受信データが正しい場合、受信データをユーザデータと制御データに分離する。データ抽出部1035は、制御データの中で下りリンクのチャネル品質指示情報、下りリンクデータの成/否(ACK/NACK)などの第2層の制御データはスケジューリング部105に出力し、その他の第3層等の制御データとユーザデータは上位層(無線リソース制御部)107に出力する。データ抽出部1035は、受信データが誤りの場合、再送データと合成するために保存しておき、再送データを受信した時に合成処理を行なう。
スケジューリング部105は、ユーザデータや制御データをPDSCHやPDCCHに配置するためのスケジューリングを行なう。また、スケジューリング部105は、同時送信設定部1051を備え、上位層(無線リソース制御部)107から送られる、移動局装置3がデータ信号とチャネル測定用の参照信号の同時送信を行なってもよいか否かについての判定結果を同時送信制御情報に含めて、同時送信の設定を行ない、移動局装置3に通知することができる。
上位層(無線リソース制御部)107は、媒体メディア制御(MAC:Medium Access Control)層、無線リンク制御(RLC:Radio Link Control)層、パケットデータ収束プロトコル(PDCP:Packet Data Convergence Protocol)層、無線リソース制御(RRC:Radio Resource Control)層の処理を行なう。上位層(無線リソース制御部)107は、下位層の処理部を統合して制御するため、上位層(無線リソース制御部)107と、スケジューリング部105、アンテナ109、送信部101、受信部103との間のインターフェースが存在する(ただし、図示しない)。また、上位層(無線リソース制御部)107は、移動局装置3から送信された上りリンク信号の電力許容値から移動局装置3がデータ信号とチャネル測定用の参照信号の同時送信を行なってもよいか否かを判定し、同時送信制御情報に含めるよう同時送信設定部1051に指示することができる。
上位層(無線リソース制御部)107は、上りリンク信号の電力許容値が正で、かつ同時送信のために追加するデータ信号(もしくはチャネル測定用の参照信号)の無線リソース数が所定の閾値より小さい場合には、電力許容値に余裕があると判断し、移動局装置3がデータ信号とチャネル測定用の参照信号の同時送信を行なってもよいと判定する。上位層(無線リソース制御部)107は、上りリンク信号の電力許容値が負の場合には、移動局装置3の最大送信電力値を超える送信電力を移動局装置3に要求していた(移動局装置3の電力許容値に余裕がない)と判断し、移動局装置3に対して同時送信してはいけないと設定する。上位層(無線リソース制御部)107は、電力許容値と、移動局装置3のデータ信号の帯域幅(無線リソース数)やパスロスから、当該移動局装置3にあとどれくらい無線リソース数が割り当てられるかを推定できる。
チャネル測定用の参照信号の帯域幅(無線リソース数)が電力許容値から推定した無線リソース数未満の場合には、上位層(無線リソース制御部)107は、移動局装置3がデータ信号とチャネル測定用の参照信号の同時送信を行なってもよいと判定する。ここで、所定の閾値とは、電力許容値から推定できる移動局装置3に追加可能なデータ信号やチャネル測定用の参照信号の無線リソース数のことである。例えば、10MHzのデータ信号を送信する移動局装置3の電力許容値から推定できる当該移動局装置3に追加可能な無線リソース数が5MHzであった場合に、予め移動局装置3に設定された10MHzの無線リソース数を有するチャネル測定参照信号を10MHzのデータ信号と同時送信しようとすれば、移動局装置3の最大送信電力値を超えることは明白であるため、上位層(無線リソース制御部)107は、移動局装置3に対して同時送信を行なってはいけないと判定する。
ここで、電力許容値とは、移動局装置3の最大送信電力値と上りリンク信号の送信用に見積もられる所定の送信電力値との差のことである。また、移動局装置3の最大送信電力値は、移動局装置3が送信することのできる電力値の限界値を示し、移動局装置3内の増幅器の性能や基地局装置1の上位層(無線リソース制御部)107から指定されることによって決定される。すなわち、移動局装置3の最大送信電力値は、予めシステムで一意に決定されていても良いし、報知情報として基地局装置1から移動局装置3に一斉に通知されても良いし、基地局装置1から個別の移動局装置3へ通知されても良い。
図2は、本発明の移動局装置3の概略機能構成を示すブロック図である。移動局装置3は、送信部(移動局側送信部)201と、受信部203と、スケジューリング部205と、上位層(無線リソース制御部)207と、アンテナ209とを含んでいる。送信部201は、データ制御部2011と、変調部2013と、無線送信部2015とを含んでいる。また、受信部203は、無線受信部2031と、復調部2033と、データ抽出部2035とを含んでいる。
ユーザデータと制御データは、上位層(無線リソース制御部)207からデータ制御部2011に入力される。データ制御部2011は、入力されたデータをスケジューリング部205からの指示により、PUSCHやPUCCHに配置する。また、この時、上りリンク参照信号も配置される。変調部2013は、データ変調を行ない、離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform、以降DFTと称する)、サブキャリアマッピング、逆高速フーリエ変換(Inverse Fast Fourier Transform、以降IFFTと称する)、CP(Cyclic Prefix)挿入、フィルタリングなどの信号処理を行ない、送信信号を生成する。そして、変調部2013は、変調された信号を無線送信部2015に出力する。無線送信部2015は、変調されたデータを無線周波数にアップコンバートした後に、アンテナ209を介して、基地局装置1に送信する。
無線受信部2031は、基地局装置1からの下りリンク信号を受信し、ベースバンド信号にダウンコンバートして、受信信号を復調部2033に出力する。復調部2033は、受信データを復調する。データ抽出部2035は、受信データをユーザデータと制御データに分離する。また、データ抽出部2035は、スケジューリング情報、ランダムアクセス応答メッセージや間欠受信制御に関する制御データやその他の第2層の制御データはスケジューリング部205に出力し、ユーザデータを上位層(無線リソース制御部)207に出力する。
スケジューリング部205は、データ抽出部2035から入力された制御データを解析し、上りリンクのスケジューリング情報を生成し、そのスケジューリング情報を基に、ユーザデータや制御データをPUSCHやPUCCHに割り当てることをデータ制御部2011に指示する。また、スケジューリング部205は、同時送信制御部2051を有し、上位層(無線リソース制御部)207からのスケジューリング情報に基づいて、データ信号とチャネル測定用の参照信号の同時送信を制御する。
上位層(無線リソース制御部)207は、媒体メディア制御(MAC:Medium Access Control)層、無線リンク制御(RLC:Radio Link Control)層、パケットデータ収束プロトコル(PDCP:Packet Data Convergence Protocol)層、無線リソース制御(RRC:Radio Resource Control)層の処理を行なう。上位層(無線リソース制御部)207は、下位層の処理部を統合して制御するため、上位層(無線リソース制御部)207と、スケジューリング部205、アンテナ209、送信部201、受信部203との間のインターフェースが存在する(ただし、図示しない)。
図3は、本発明の第1の実施形態において、チャネル測定用の参照信号とデータ信号を同時送信してもよい場合と同時送信してはいけない場合の上りリンク信号のリソース割り当てを示す図である。基地局装置1の同時送信設定部1051でチャネル測定用の参照信号とデータ信号の同時送信してもよいと設定した場合、移動局装置3の同時送信制御部2051は同時送信制御情報に基づいて、チャネル測定用の参照信号とデータ信号を基地局装置1に対して同時送信する。また、基地局装置1の同時送信設定部1051でチャネル測定用の参照信号とデータ信号の同時送信してはいけないと設定した場合、移動局装置3の同時送信制御部2051は同時送信制御情報に基づいて、チャネル測定用の参照信号が配置される時間シンボルに割り当てないようにデータ信号のリソース割り当てを変更して、基地局装置1に対して送信する。すなわち、移動局装置3は、第14番目のシンボルにチャネル測定用の参照信号のみを割り当てて送信する。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る基地局装置1と移動局装置3の同時送信制御情報の設定手順を示すシーケンスチャートである。基地局装置1は、移動局装置3に対して下りリンク信号を送信する(ステップS101)。移動局装置3の無線リソース制御部は、下りリンク信号に含まれている情報を基に、電力許容値を算出する(ステップS102)。移動局装置3は、算出した電力許容値を基地局装置1に対して通知する(ステップS103)。基地局装置1の同時送信設定部1051は、通知された電力許容値を基に、データ信号とチャネル測定用の参照信号の同時送信を行なってもよいか否かを設定する(ステップS104)。基地局装置1は、同時送信制御情報を移動局装置3に対して通知する(ステップS105)。
移動局装置3の同時送信制御部2051は、通知された同時送信制御情報を設定し(ステップS106)、データ信号とチャネル測定用の参照信号が同じ時間シンボルで割り当てられた時には、同時送信制御情報に基づいて上りリンク信号のリソース割り当てを行なう(ステップS107)。移動局装置3は基地局装置1に対して上りリンク信号を送信する(ステップS108)。
基地局装置1の同時送信設定部1051は、移動局装置3から送信された電力許容値を基に、シングルキャリアおよびマルチキャリアを含んだ広帯域の通信を行なうか否かを判断することができる。基地局装置1の同時送信設定部1051は、移動局装置3の電力許容値に余裕があると判断すると、基地局装置1の同時送信設定部1051では予めPUSCHとSRSが同時送信できるように同時送信制御情報を移動局装置3に送信する。移動局装置3の同時送信制御部2051はその同時送信制御情報を受けて、PUSCHとSRSの同時送信を行なう。
基地局装置1の同時送信設定部1051が同時送信をしてはいけないと設定した場合に、チャネル測定用の参照信号を配置する時間シンボルにデータ信号を配置しないようにデータ信号のリソース割り当てを変更するよう制御することによって、常にチャネル測定用の参照信号のチャネル品質を保証することができる。移動局装置3の移動速度が速い、チャネル品質がすぐに変わってしまう環境においてはチャネル測定の頻度を多くすることで移動局装置3のチャネル品質に合わせた上りリンク信号のリソース割り当ての制御を行なうことができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態における機器の機能構成は、第1の実施形態において示したものと同様であるので、ここではその説明を省略する。第2の実施形態では、基地局装置1は、チャネル測定用の参照信号とデータ信号が同時送信してはいけないと設定した場合に、チャネル測定用の参照信号を送信しない(ドロップする)ように制御する。
図5は、本発明の第2の実施形態において、チャネル測定用の参照信号とデータ信号を同時送信してもよい場合と同時送信してはいけない場合の上りリンク信号のリソース割り当てを示す図である。基地局装置1の同時送信設定部1051でチャネル測定用の参照信号とデータ信号の同時送信してもよいと設定した場合、移動局装置3の同時送信制御部2051は同時送信制御情報に基づいて、チャネル測定用の参照信号とデータ信号を基地局装置1に対して同時送信する。また、基地局装置1の同時送信設定部1051がチャネル測定用の参照信号とデータ信号の同時送信してはいけないと設定した場合、移動局装置3の同時送信制御部2051は同時送信制御情報に基づいて、データ信号と同じ時間フレームに割り当てないようにチャネル測定用の参照信号を送信しない(ドロップする)よう制御して、データ信号のみを基地局装置1に対して送信する。
ただし、例外処理として、チャネル測定用の参照信号の設定情報に1回送信(Single Transmission)が設定された場合、移動局装置3は、チャネル測定を優先させるため、チャネル測定用の参照信号が配置される時間シンボルに割り当てないようデータ信号のリソース割り当てを変更することができる。基地局装置1が同時送信をしてはいけないと設定した場合に、データ信号を送信する時間フレームでチャネル測定用の参照信号を送信しない(ドロップする)よう制御することによって、常にデータ信号の通信速度などの通信品質を保証することができる。データ信号を多く送信したい場合にはこの方法を使用する。例えば、移動局装置3が全く移動しない場合、すなわちチャネル品質が変化しない環境における通信において有効である。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態における機器の機能構成は、第1の実施形態において示したものと同様であるので、ここではその説明を省略する。
図6は、本発明の第3の実施形態において、同時送信してはいけないと設定された場合の上りリンク信号のリソース割り当てを示す図である。基地局装置1の同時送信設定部1051でチャネル測定用の参照信号とデータ信号を同時送信しないと設定され、移動局装置3でチャネル測定用の参照信号とデータ信号が同じ時間シンボルに割り当てられる場合に、移動局装置3の同時送信制御部2051は基地局装置1の同時送信設定部1051で設定された同時送信制御情報に基づいて、チャネル測定用の参照信号が配置される時間シンボルに割り当てないようにデータ信号のリソース割り当てを変更するか、データ信号と同じ時間フレームにチャネル測定用の参照信号を送信しないようにするかを、切り替えることができる。
第3の実施形態では、チャネル測定用の参照信号とデータ信号の同時送信してはいけないと設定された移動局装置3の同時送信制御部2051が、データ信号の情報の種類に応じて、チャネル測定用の参照信号が配置される時間シンボルに割り当てないようにデータ信号のリソース割り当てを変更するか、データ信号と同じ時間フレームにチャネル測定用の参照信号を送信しないようにするかを切り替えることができる。
例えば、データ信号にメッセージ3が割り当てられる場合、移動局装置3の同時送信制御部2051は、データ信号と同じ時間フレームにチャネル測定用の参照信号を送信しない(ドロップする)ように制御することができる。メッセージ3の送信段階では、基地局装置1は、どの移動局装置3から送信されたかを認識していないため、リソース割り当てを変更して送信されても基地局装置1で復調できない可能性がある。そのような状況を回避するため、メッセージ3が割り当てられたデータ信号を優先して送信する必要がある。
第3の実施形態は、基地局装置1の同時送信設定部1051が、チャネル測定用の参照信号とデータ信号の同時送信してはいけないと設定された時に、移動局装置3の同時送信制御部2051が、データ信号の情報の種類に応じて、チャネル測定用の参照信号が配置される時間シンボルに割り当てないようにデータ信号のリソース割り当てを変更するか、データ信号と同じ時間フレームにチャネル測定用の参照信号を送信しないようにするかを、切り替えることができる。
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態における機器の機能構成は、第1の実施形態において示したものと同様であるので、ここではその説明を省略する。基地局装置1でデータ信号とチャネル測定用の参照信号を同時送信してもよいと設定したが、移動局装置3で、実際に同時送信する際に、パスロスなどが変化することによって基地局装置1が予想している以上に多くの電力をデータ信号とチャネル測定用の参照信号に割り当てることができ、その結果、データ信号と参照信号の送信電力の合計が移動局装置3の最大送信電力以上になる場合があることが予想される。第4の実施形態と後述する第5の実施形態では、そのような状況が発生した場合を考慮して、データ信号とチャネル測定用の参照信号の送信電力の合計が移動局装置3の最大送信電力以上になった場合には、基地局装置1は、事前にどちらの信号の送信電力を低減するかを設定することができる。
第4の実施形態において、基地局装置1より同時送信してもよいと設定された移動局装置3は、パスロスなどが変化することにより、移動局装置3でデータ信号とチャネル測定用の参照信号の送信電力の合計が最大送信電力以上になる場合には、データ信号とチャネル測定用の参照信号の送信電力の合計が最大送信電力未満になるようにデータ信号の送信電力だけ低減して送信することでチャネル測定用の参照信号とデータ信号の同時送信を可能にする。
第4の実施形態では、基地局装置1の同時送信設定部1051が、データ信号とチャネル測定用の参照信号の同時送信をしてもよいと設定した場合、データ信号とチャネル測定用の参照信号の送信電力の合計が移動局装置3の最大送信電力以上になる場合には、データ信号の送信電力を低減して、データ信号とチャネル測定用の参照信号の送信電力の合計が移動局装置3の最大送信電力未満になるように制御することを同時送信制御情報に含める。移動局装置3の同時送信制御部2051は、同時送信制御情報を基に、データ信号とチャネル測定用の参照信号の送信電力の合計が最大送信電力以上になる場合には、データ信号とチャネル測定用の参照信号の送信電力の合計が最大送信電力未満になるようにデータ信号の送信電力だけ低減してから基地局装置1にデータ信号とチャネル測定用の参照信号を同時に送信する。
図7は、本発明の第4の実施形態に係る移動局装置3の上りリンク信号の時間シンボルの送信電力分布の概略図である。縦軸は移動局装置3の送信電力を表し、横軸は時間を表している。図7左側部分のように、データ信号(CC1のPUSCH)とチャネル測定用の参照信号(CC2のSRS)を同時送信する場合に、最大送信電力(点線)を超える場合がある。そのため、移動局装置3は、基地局装置1から送信された同時送信制御情報に基づいて、チャネル測定用の参照信号が配置される時間シンボルのデータ信号の送信電力を低減する場合(図7右上部分)とCC1のすべてのシンボルの送信電力を低減する場合(図7右下部分)があり、どちらを使用するかは通信状況や低減する送信電力の大きさによって決定される。
データ信号の送信電力を低減することで、データ信号の通信品質は劣化するかもしれないが、チャネル測定用の参照信号を優先することで、基地局装置1は、移動局装置3が現在使用している帯域より通信状態のよい帯域があるか否かを判断することができる。また、チャネル測定の結果、基地局装置1のスケジューリング部105が移動局装置3のデータ信号を通信状態のよい帯域に割り当てることができるようスケジューリングを行なうことができれば、移動局装置3のデータ信号の通信品質の改善を行なうことができる。
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態における機器の機能構成は、第1の実施形態において示したものと同様であるので、ここではその説明を省略する。第5の実施形態では、基地局装置1より同時送信してよいと設定された移動局装置3は、パスロスなどが変化することにより移動局装置3側でデータ信号とチャネル測定用の参照信号の送信電力の合計が最大送信電力以上になる場合に、データ信号とチャネル測定用の参照信号の送信電力の合計が最大送信電力未満になるようにチャネル測定用の参照信号の送信電力だけ低減して送信することでチャネル測定用の参照信号とデータ信号の同時送信を可能にする。
第5の実施形態では、基地局装置1の同時送信設定部1051は、データ信号とチャネル測定用の参照信号の同時送信をしてもよいと設定した場合で、データ信号とチャネル測定用の参照信号の送信電力の合計が移動局装置3の最大送信電力以上になる場合には、チャネル測定用の参照信号の送信電力を低減して、データ信号とチャネル測定用の参照信号の送信電力の合計が移動局装置3の最大送信電力未満になるように制御することを同時送信制御情報に含める。移動局装置3の同時送信制御部2051は、同時送信制御情報を基に、データ信号とチャネル測定用の参照信号の送信電力の合計が最大送信電力以上になる場合には、データ信号とチャネル測定用の参照信号の送信電力の合計が最大送信電力未満になるようにチャネル測定用の参照信号の送信電力だけ低減してから基地局装置1にデータ信号とチャネル測定用の参照信号を同時に送信する。
図8は、本発明の第5の実施形態に係る移動局装置3の上りリンク信号の時間シンボルの送信電力分布の概略図である。縦軸は移動局装置3の送信電力を表し、横軸は時間を表している。図8左側部分のように、データ信号(CC1のPUSCH)とチャネル測定用の参照信号(CC2のSRS)を同時送信する場合に、最大送信電力(点線)を超える場合がある。そのため、移動局装置3は、基地局装置1から送信された同時送信制御情報に基づいて、データ信号と同じ時間フレームに割り当てられるチャネル測定用の参照信号の送信電力を低減してデータ信号とチャネル測定用の参照信号の同時送信を行なうことができる。さらに、データ信号の送信電力を維持することによって、データ信号の通信速度などの通信品質を保証することができる。
なお、第4の実施形態、第5の実施形態では、基地局装置1から移動局装置3に送信される同時送信制御情報に、移動局装置3の電力許容値に応じた、チャネル測定用の参照信号またはデータ信号の電力低減量(あまりに余裕のない場合はどちらかを送信しないことも含む)、を記載した設定表を含めてもよい。
なお、上述した実施形態における基地局装置1と移動局装置3の一部の機能をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
また、上述した実施形態における移動局装置3および基地局装置1の一部、または全部を典型的には集積回路であるLSIとして実現してもよい。移動局装置3および基地局装置1の各機能ブロックは個別にチップ化してもよいし、一部、または全部を集積してチップ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能である。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。