以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る差動トランス式磁気センサーを適用することができる画像形成装置1の内部構造の概略を示す図である。画像形成装置1は例えば、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリの機能を有するデジタル複合機に適用することができる。画像形成装置1は装置本体100、原稿読取部200及び原稿給送部300を備える。
装置本体100の上に原稿読取部200が配置されており、原稿読取部200の上に原稿給送部300が配置されている。
原稿給送部300は自動原稿送り装置として機能し、原稿載置部301に置かれた複数枚の原稿を連続的に原稿読取部200に送ることができる。
原稿読取部200は露光ランプ等を搭載したキャリッジ、ガラス等の透明部材により構成された原稿台、CCD(Charge Coupled Device)センサー及び原稿読取スリット(いずれも不図示)を備える。CCDセンサーは読み取った原稿を画像データとして出力する。
装置本体100は用紙貯留部101、画像形成部103及び定着部105を備える。用紙貯留部101は装置本体100の最下部に配置されており、用紙の束を貯留することができる複数の用紙カセットを備える。図1には、一番上に位置する用紙カセット107aだけが表れている。
用紙カセット107aを含む複数の用紙カセットのうち、選択されたカセットに貯留された用紙の束において、最上位の用紙がピックアップローラー(不図示)の駆動により、装置本体100の用紙搬送路107へ向けて送出される。用紙は用紙搬送路107を通って、画像形成部103へ搬送される。
用紙搬送路107は装置本体100の一方の側面(図1において右側の側面)に沿って下方から上方に向かって略垂直方向に延設され、上方で他方の側面(図1において左側の側面)に向かうように湾曲して、原稿読取部200の下方に沿って略水平方向に延びている。そして、その端部に排出トレイ131が設けられている。
画像形成部103は搬送されてきた用紙にトナー画像を形成する。画像形成部103はトナー画像を転写ベルト113に転写する順番に従って配置された、イエロー画像形成部111Y、マゼンタ画像形成部111M、シアン画像形成部111C、ブラック画像形成部111BKを備える。これらのユニットは同様の構成を有しており、イエロー画像形成部111Yを例にして説明する。
イエロー画像形成部111Yは感光体ドラム115及び露光装置117を備える。感光体ドラム115の周りには帯電装置119、現像装置121及びクリーニング装置123が配置されている。現像装置121内には、イエロートナーとキャリアとが混合された2成分現像剤が収容されている。帯電装置119は感光体ドラム115の周面を一様に帯電させる。露光装置117は画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリ受信の画像データ等)に対応して変調された光を生成し、一様に帯電された感光体ドラム115の周面に照射する。これにより、感光体ドラム115の周面にはイエローの画像データに対応する静電潜像が形成される。この状態で感光体ドラム115の周面に現像装置121からイエロートナーを供給することにより、周面にはイエローの画像データに対応するトナー画像が形成される。
転写ベルト113は感光体ドラム115と1次転写ローラー125により挟まれた状態で反時計周りに動くことができる。イエローのトナー画像は感光体ドラム115から転写ベルト113に転写される。感光体ドラム115の周面に残っているイエロートナーはクリーニング装置123によって除去される。以上がイエロー画像形成部111Yの説明である。
イエロー画像形成部111Y、マゼンタ画像形成部111M、シアン画像形成部111C、ブラック画像形成部111BKの上方には、対応する色のトナーを収容したコンテナー、すなわち、イエロートナーコンテナー127Y、マゼンタトナーコンテナー127M、シアントナーコンテナー127C、ブラックトナーコンテナー127BKが配置されている。各色の現像装置121には、対応するコンテナーからトナーが補給される。
上述したように転写ベルト113にはイエローのトナー画像が転写され、このトナー画像に重ねてマゼンタのトナー画像が転写され、同様に、シアンのトナー画像、ブラックのトナー画像が重ねて転写される。これにより転写ベルト113にカラーのトナー画像が形成される。このように各色のパターンのトナー画像を転写ベルト113に重畳して転写することにより、転写ベルト113にカラーのトナー画像が形成される。カラーのトナー画像は2次転写ローラー129によって、先ほど説明した用紙貯留部101から搬送されてきた用紙に転写される。
カラーのトナー画像が転写された用紙は、定着部105に送られる。定着部105は加熱ローラーと定着ローラーとを備える。これらのローラーによって、カラーのトナー画像が転写された用紙が挟まれる。これにより、カラーのトナー画像と用紙に熱と圧力が加えられて、カラーのトナー画像を用紙に定着させる。用紙は排紙トレイ131に排紙される。
図2は、図1に示す画像形成装置1の構成を示すブロック図である。画像形成装置1は装置本体100、差動トランス式磁気センサー3、トナー用コンテナー127Y,127M,127C,127BK、原稿読取部200、原稿給送部300、操作部400、制御部500及び通信部600がバスによって相互に接続された構成を有する。装置本体100、トナー用コンテナー127Y,127M,127C,127BK、原稿読取部200及び原稿給送部300に関しては既に説明したので、説明を省略する。
差動トランス式磁気センサー3は、現像装置121内のトナーとキャリアとの混合比率の計測に利用される。すなわち、2成分現像方式では、現像装置121において、トナー(非磁性体)が少なくなると、キャリア(磁性体)の比率が増える。これにより、差動トランス式磁気センサー3の検出面付近では、単位体積中の磁性体量が増える。一方、現像装置121において、トナーが多くなると、キャリアの比率が減る。これにより、差動トランス式磁気センサー3の検出面付近では、単位体積中の磁性体量が減る。この磁性体量の変化を、差動トランス式磁気センサー3で検出することにより、現像装置121内のトナーとキャリアとの混合比を制御する。差動トランス式磁気センサー3については、後で詳細に説明する。
なお、本実施形態では、2成分現像方式で説明しているが、磁性体を含んだトナーを使用する1成分現像方式においても、差動トランス式磁気センサー3は使用可能である。この場合、現像装置やトナーコンテナに差動トランス式磁気センサー3を取り付けることによって、現像装置内やトナーコンテナ内の磁性トナーの残量を測定する。
操作部400は操作キー部401と表示部403を備える。表示部403はタッチパネル機能を有しており、ソフトキーを含む画面が表示される。ユーザーは画面を見ながらソフトキーを操作することによって、コピー等の機能の実行に必要な設定等をする。
操作キー部401にはハードキーからなる操作キーが設けられている。具体的にはスタートキー、テンキー、ストップキー、リセットキー、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリを切り換えるための機能切換キー等が設けられている。
スタートキーはコピー、ファクシミリ送信等の動作を開始させるキーである。テンキーはコピー部数、ファクシミリ番号等の数字を入力するキーである。ストップキーはコピー動作等を途中で中止させるキーである。リセットキーは設定された内容を初期設定状態に戻すキーである。
機能切換キーはコピーキー及び送信キー等を備えており、コピー機能、送信機能等を相互に切り替えるキーである。コピーキーを操作すれば、コピーの初期画面が表示部403に表示される。送信キーを操作すれば、ファクシミリ送信及びメール送信の初期画面が表示部403に表示される。
制御部500はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び画像メモリ等を備える。CPUは画像形成装置1を動作させるために必要な制御を、装置本体100等の画像形成装置1の上記構成要素に対して実行する。ROMは画像形成装置1の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMはソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶及びアプリケーションソフトの記憶等に利用される。画像メモリは画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリ受信の画像データ等)を一時的に記憶する。
通信部600はファクシミリ通信部601及びネットワークI/F部603を備える。ファクシミリ通信部601は相手先ファクシミリとの電話回線の接続を制御するNCU(Network Control Unit)及びファクシミリ通信用の信号を変復調する変復調回路を備える。ファクシミリ通信部601は電話回線605に接続される。
ネットワークI/F部603はLAN(Local Area Network)607に接続される。ネットワークI/F部603はLAN607に接続されたパソコン等の端末装置との間で通信を実行するための通信インターフェイス回路である。
図3は、本発明の一実施形態に係る差動トランス式磁気センサー3(以下、磁気センサー3と記載する場合もある)の回路図の一例を示す図である。差動トランス式磁気センサー3は、第1の駆動コイル4、第2の駆動コイル5、第1の差動コイル6、第2の差動コイル7、発振回路11、増幅回路12、抵抗13及びコンデンサー14を備える。
発振回路11は、第1の駆動コイル4及び第2の駆動コイル5を駆動させる高周波電流を生成する。第1の駆動コイル4と第2の駆動コイル5とは、直列に接続されている。第1の駆動コイル4及び第2の駆動コイル5に高周波電流が流れた際に、第1の駆動コイル4で生成される磁束と第2の駆動コイル5で生成される磁束とが同じ向きになるように、第1の駆動コイル4の一端と第2の駆動コイル5の一端とが接続されている。これにより、第1の駆動コイル4で生成される磁束と第2の駆動コイル5で生成される磁束とが打ち消し合わないようにしている。第1の駆動コイル4の他端及び第2の駆動コイル5の他端は、発振回路11に接続されている。
第1の差動コイル6は第1の駆動コイル4と磁気的に結合されている。第2の差動コイル7は第2の駆動コイル5と磁気的に結合されている。第1の差動コイル6と第2の差動コイル7とは、直列に接続されている。第1の差動コイル6及び第2の差動コイル7に誘導電流が流れた際に、第1の差動コイル6で生成される磁束と第2の差動コイル7で生成される磁束とが逆向きになるように、第1の差動コイル6の一端と第2の差動コイル7の一端とが接続されている。これにより、差動電圧V0(=第1の差動コイル6の起電圧V1−第2の差動コイル7の起電圧V2)が増幅回路12に入力される。
第1の差動コイル6の他端は抵抗13を介して、第2の差動コイル7の他端はコンデンサー14を介して、増幅回路12に接続されている。抵抗13は、増幅回路12内のバイポーラトランジスタのベースに接続されており、増幅回路12の増幅率の設定に用いられる。
コンデンサー14は差動電圧V0のうち、直流成分をカットする機能を有する。これにより、増幅回路12には差動電圧V0の交流成分だけが入力される。
抵抗13は位置P1〜位置P5のいずれかの位置に取り付けられる。コンデンサー14は位置P6〜位置P10のいずれかの位置に取り付けられる。抵抗13が取り付けられる位置を調整する箇所を、第1の選択部15と称する。コンデンサー14が取り付けられる位置を調整する箇所を、第2の選択部16と称する。抵抗13が取り付けられる位置及びコンデンサー14が取り付けられる位置を調整して、磁気センサー3の差動トランスのゼロ調整をする。これについては、後で説明する。
磁気センサー3の動作を簡単に説明する。発振回路11で生成された高周波電流が、第1の駆動コイル4及び第2の駆動コイル5に流れると、第1の差動コイル6に起電圧V1、第2の差動コイル7に起電圧V2が生じる。第1の差動コイル6は基準コイルの機能を有し、第2の差動コイル7は検知コイルの機能を有する。第2の差動コイル7の付近において、磁性体(キャリア)の比率が増えると、起電圧V2は起電圧V1よりも大きくなるので、差動電圧V0は0Vにならない。差動電圧V0を増幅回路12で増幅し、増幅回路12から出力された信号を用いて、トナーとキャリアとの混合比(1成分現像方式ではトナー残量)トナー残量が検出される。
次に、本実施形態に係る差動トランス式磁気センサー3の構成を詳細に説明する。図4は、磁気センサー3が形成される基板21の一例の第1の面31を示す平面図である。図5は、磁気センサー3が形成される基板21の一例の第2の面41を示す平面図である。図5は、第1の面31側から見た第2の面41を示している。基板21は絶縁性の一層のプリント基板であり、第1の面31と、第1の面31と反対側に位置する第2の面41と、を含む。
基板21は、長方形の1つの角を含む部分を切り欠いた形状を有する。基板21は、縦方向の寸法が一定の部分21aと、この部分21aと連続し、縦方向の寸法が徐々に小さくなる部分21bと、この部分21bと連続し、縦方向の寸法が一定の部分21cと、に分けられる。部分21a,21bには、次に説明するように、磁気センサー3のコイル等が配置される。部分21cには、磁気センサー3の各種回路(発振回路11、増幅回路12等)が配置される。
図3及び図4を参照して、第1の面31は、第1の内側領域32、第1の外側領域33及び選択部領域34を有する。これらの領域は、基板21の部分21a,21bに位置している。第1の内側領域32には第1の差動コイル6が配置される。第1の外側領域33は第1の内側領域32を囲んでいる。第1の外側領域33には第1の差動コイル6及び第1の駆動コイル4が配置される。選択部領域34は第1の外側領域33の一部と隣接している。選択部領域34には、磁気センサー3の差動トランスのゼロ点を調整するための第1の選択部15及び第2の選択部16が配置される。
図3及び図5を参照して、第2の面41は、第2の内側領域42及び第2の外側領域43を有する。これらの領域は、基板21の部分21a,21bに位置している。第2の内側領域42には第2の差動コイル7が配置される。第2の外側領域43は第2の内側領域42を囲んでいる。第2の外側領域43には第2の差動コイル7及び第2の駆動コイル5が配置される。
図6は、第1の駆動コイル4、第1の差動コイル6及び接続パターン10a,10b,10c,10d,10e,10f,10gのレイアウトの一例を示す平面図である。第1の駆動コイル4、第1の差動コイル6及び接続パターン10a〜10gは、基板21の第1の面31に配置されている。第1の差動コイル6は基準コイルとして機能するので、第1の面31は基準コイル面と称することができる。
まず、第1の駆動コイル4から説明する。図7は、図6に示す第1の駆動コイル4、第1の差動コイル6及び接続パターン10a〜10gから第1の駆動コイル4を抜き出した状態を示す平面図である。図4及び図7を参照して、第1の駆動コイル4は、第1の外側領域33に配置された平面状のコイルを含む。詳しくは、第1の駆動コイル4は八角形状に巻かれた線材4aにより構成され、端子4bを始点とし、反時計回りの方向において、八角形の寸法が徐々に大きくなるように、線材4aがパターニングされている。
次に、第1の差動コイル6を説明する。図8は、図6に示す第1の駆動コイル4、第1の差動コイル6及び接続パターン10a〜10gから第1の差動コイル6を抜き出した状態を示す平面図である。図4及び図8を参照して、第1の差動コイル6は、第1の駆動コイル4と同じ向きに巻かれて、第1の内側領域32及び第1の外側領域33に配置された平面状のコイルを含む。詳しくは、第1の差動コイル6は八角形状に巻かれた線材6aにより構成され、端子6bを始点とし、反時計回りの方向において、八角形の寸法が徐々に大きくなるように、線材6aがパターニングされている。
図4及び図6を参照して、第1の外側領域33において、第1の差動コイル6を構成する線材と第1の駆動コイル4を構成する線材とが交互に配置されている。第1の差動コイル6は、第1の差動コイル6の最外周を構成する線材が分岐された5本(複数の一例)の第1の分岐線6c1,6c2,6c3,6c4,6c5を含む。第1の分岐線6c1〜6c5を区別する必要がなければ、第1の分岐線6cと記載する。5本の第1の分岐線6cは、第1の駆動コイル4が駆動された場合に、第1の分岐線6cのそれぞれを通る磁束量が異なるように配置されている。第1の分岐線6cの詳細は後で説明する。
図9は、図6に示す第1の駆動コイル4、第1の差動コイル6及び接続パターン10a〜10gから接続パターン10a〜10gを抜き出した状態を示す平面図である。接続パターン10a〜10gは、第2の差動コイル7を構成する線材との接続に用いられる。接続パターン10a〜10gについては、第2の差動コイル7と一緒に後で説明する。
図10は、第2の駆動コイル5及び第2の差動コイル7のレイアウトの一例を示す平面図である。この図は第1の面31側から見た図である。第2の駆動コイル5及び第2の差動コイル7は、基板21の第2の面41に配置されている。第2の差動コイル7は検知コイルとして機能するので、第2の面41は検知コイル面と称することができる。
まず、第2の駆動コイル5から説明する。図11は、図10に示す第2の駆動コイル5及び第2の差動コイル7から第2の駆動コイル5を抜き出した状態を示す平面図である。図5及び図11を参照して、第2の駆動コイル5は、第1の面31側から見て第1の駆動コイル4と逆向きに巻かれて、第2の外側領域43に配置された平面状のコイルを含む。詳しくは、第2の駆動コイル5は八角形状に巻かれた線材5aにより構成され、端子5bを始点とし、時計回りの方向において、八角形の寸法が徐々に大きくなるように、線材5aがパターニングされている。
第2の駆動コイル5は第1の駆動コイル4と接続されている。これを、図13で説明する。図13は、第1の外側領域33と第2の外側領域43とに配置されるコイルを示す斜視図である。第1の接続部材51は、導電性を有しており、基板21に形成されたスルーホール(不図示)に埋め込まれている。第1の駆動コイル4の一端である端子4bと第2の駆動コイル5の一端である端子5bとは、第1の接続部材51により接続されている。
次に、第2の差動コイル7を説明する。図12は、図10に示す第2の駆動コイル5及び第2の差動コイル7から第2の差動コイル7を抜き出した状態を示す平面図である。図5及び図12を参照して、第2の差動コイル7は、第2の駆動コイル5と逆向きに巻かれて、第2の内側領域42及び第2の外側領域43に配置された平面状のコイルを含む。詳しくは、第2の差動コイル7は八角形状に巻かれた線材7aにより構成され、端子7bを始点とし、反時計回りの方向において、八角形の寸法が徐々に大きくなるように、線材7aがパターニングされている。
第2の差動コイル7は第1の差動コイル6と接続されている。これを、図14で説明する。図14は、第1の内側領域32と第2の内側領域42とに配置されるコイルを示す斜視図である。第2の接続部材52は、導電性を有しており、基板21に形成されたスルーホール(不図示)に埋め込まれている。第1の差動コイル6の一端である端子6bと第2の差動コイル7の一端である端子7bとは、第2の接続部材52により接続されている。
図12を参照して、第2の差動コイル7は、第2の差動コイル7の最外周を構成する線材が分岐された5本(複数の一例)の第2の分岐線7c1,7c2,7c3,7c4,7c5を含む。第2の分岐線7c1〜7c5を区別する必要がなければ、第2の分岐線7cと記載する。5本の第2の分岐線7cは、第2の駆動コイル5が駆動された場合に、第2の分岐線7cのそれぞれを通る磁束量が異なるように配置されている。第2の分岐線7cの詳細は後で説明する。
図6及び図10を参照して、第1の駆動コイル4の線材の幅、第2の駆動コイル5の線材の幅、第1の差動コイル6の線材の幅、第2の差動コイル7の線材の幅及び各接続パターン10a〜10gの幅は、例えば、0.15mmである。隣り合う線材の間隔は、例えば、0.15mmである。第1の差動コイル6及び第2の差動コイル7の外形寸法は、例えば24.0mmである。第1の駆動コイル4及び第2の駆動コイル5の外形寸法は、例えば23.4mmである。
磁気センサー3の精度を高めるには、差動電圧V0の出力範囲(例えば、0.2〜3.3V)で、差動電圧V0を大きく変化させる必要がある。このためには、磁気センサー3の付近に磁性体が存在しない状態で、第1の差動コイル6により生じる起電圧V1と第2の差動コイル7により生じる起電圧V2とが釣り合っていることが好ましい。起電圧V1と起電圧V2とが釣り合うようにするために、次のようにされている。第1の差動コイル6のターン数と第2の差動コイル7のターン数とを同じにし、第1の差動コイル6のパターンと第2の差動コイル7のパターンとが基板21を介して可能な限り重なるように、第1の差動コイル6が第1の面31に配置され、第2の差動コイル7が第2の面41に配置されている。同様に、第1の駆動コイル4のターン数と第2の駆動コイル5のターン数とを同じにし(例えば、ターン数7)、第1の駆動コイル4のパターンと第2の駆動コイル5のパターンとが基板21を介して可能な限り重なるように、第1の駆動コイル4が第1の面31に配置され、第2の駆動コイル5が第2の面41に配置されている。
図5及び図10を参照して、第2の外側領域43において、第2の差動コイル7を構成する線材と第2の駆動コイル5を構成する線材とが交互に配置されている。第2の駆動コイル5は、端子5bを始点にし、時計回りに巻かれている。第2の差動コイル7は、端子7bを始点にし、反時計回りに巻かれている。第2の差動コイル7は第2の駆動コイル5と逆向きに巻かれているので、第2の外側領域43において、第2の差動コイル7と第2の駆動コイル5とが交差する。第2の差動コイル7と第2の駆動コイル5とが接触するのを防止するために、図9に示す接続パターン10a〜10gを利用して、第2の差動コイル7と第2の駆動コイル5とを立体交差させている。この立体交差について説明する。
図12を参照して、第2の差動コイル7は、端子7bを始点にし、反時計回りに巻かれて、端子7d1に至る。端子7d1から第2の外側領域43となる。第2の差動コイル7は、第2の外側領域43において、第2の差動コイル7の各周で線材の一部が欠落したパターンを有する。このパターンは、第2の外側領域43において、第2の差動コイル7の一周目が端子7d2を始点とし、端子7d3を終点にしており、第2の差動コイル7の二周目が端子7d4を始点とし、端子7d5を終点にしており、第2の差動コイル7の三周目が端子7d6を始点とし、端子7d7を終点にしており、第2の差動コイル7の四周目が端子7d8を始点とし、端子7d9を終点にしており、第2の差動コイル7の五周目が端子7d10を始点とし、端子7d11を終点にしており、第2の差動コイル7の六周目が端子7d12を始点とし、端子7d13を終点にしており、第2の差動コイル7の七周目が端子7d14を始点とし、5本の第2の分岐線7cに至る。
図9及び図10を参照して、端子7d1と端子7d2とは、接続パターン10aと接続されている。端子7d3と端子7d4とは、接続パターン10bと接続されている。端子7d5と端子7d6とは、接続パターン10cと接続されている。端子7d7と端子7d8とは、接続パターン10dと接続されている。端子7d9と端子7d10とは、接続パターン10eと接続されている。端子7d11と端子7d12とは、接続パターン10fと接続されている。端子7d13と端子7d14とは、接続パターン10gと接続されている。接続パターン10a〜10gは、第2の差動コイル7の一部を構成する。接続パターン10a〜10gは、第2の駆動コイル5を構成する線材と立体交差する位置に、第1の外側領域33に配置されている。
これらの一対の端子(例えば、端子7d1と端子7d2)と接続パターン10a〜10gとの接続には、第3の接続部材が用いられる。図13を参照して、第3の接続部材53a,53b,53c,53dは、導電性を有しており、基板21に形成されたスルーホール(不図示)に埋め込まれている。端子7d1と接続パターン10aの一端とは、第3の接続部材53aにより接続されている。接続パターン10aの他端と端子7d2とは、第3の接続部材53bにより接続されている。端子7d3と接続パターン10bの一端とは、第3の接続部材53cにより接続されている。接続パターン10bの他端と端子7d4とは、第3の接続部材53dにより接続されている。残りの端子7d5〜7d14及び残りの接続パターン10c〜10gについては図示していないが、同様の方法で接続されている。以上が、第2の差動コイル7と第2の駆動コイル5との立体交差の説明である。
先ほど述べたように、図8に示す5本の第1の分岐線6cは、第1の駆動コイル4が駆動された場合に、第1の分岐線6cのそれぞれを通る磁束量が異なるように配置されている。図12に示す5本の第2の分岐線7cは、第2の駆動コイル5が駆動された場合に、第2の分岐線7cのそれぞれを通る磁束量が異なるように配置されている。第1の分岐線6cと第2の分岐線7cとは、その配置の仕方が同様なので、第1の分岐線6cを用いて説明する。
図6及び図8を参照して、第1の差動コイル6及び第1の駆動コイル4は、八角形の形状に巻き回されている。第1の駆動コイル4の最外周において、八角形の連続する二辺に沿って、第1の分岐線6c1,6c2,6c3が配置されている。上記二辺のうち最初の辺に沿って、第1の分岐線6c4,6c5が配置されている。第1の分岐線6c1の外側に第1の分岐線6c2が配置され、第1の分岐線6c2の外側に第1の分岐線6c3が配置され、第1の分岐線6c3の外側に第1の分岐線6c4が配置され、第1の分岐線6c4の外側に第1の分岐線6c5が配置されている。5本の第1の分岐線6cの長さは、それぞれ異なり、第1の分岐線6c1が一番長く、その次が第1の分岐線6c2であり、その次が第1の分岐線6c3であり、その次が第1の分岐線6c4であり、その次が第1の分岐線6c5である。
上記二辺のうち最初の辺において、隣り合う第1の分岐線6c間の距離は、第1の差動コイル6を構成する線材が5本の第1の分岐線6cに分岐する前の第1の差動コイル6の隣り合う線材間の距離より大きくされている。例えば、第1の分岐線6c1と第1の分岐線6c2との間の距離dは、第1の差動コイル6の隣り合う線材間の距離Dより大きくされている。よって、隣り合う第1の分岐線6c間の距離を比較的大きくすることができる。これにより、第1の駆動コイル4が駆動された場合に、5本の第1の分岐線6cのそれぞれを通る磁束量が異なるようにすることができる。
第1の駆動コイル4が駆動された場合、第1の分岐線6cを通る磁束量は、第1の駆動コイル4の最外周に沿って延びる第1の分岐線6cの部分の長さ、及び、第1の駆動コイル4の最外周と第1の分岐線6cとの距離に影響される。第1の駆動コイル4の最外周に沿って延びる第1の分岐線6cの部分の長さが小さければ、第1の分岐線6cを通る磁束量が少なくなり、上記部分の長さが大きければ、第1の分岐線6cを通る磁束量が多くなる。また、第1の駆動コイル4の最外周と第1の分岐線6cとの距離が大きければ、第1の分岐線6cを通る磁束量が少なくなり、上記距離が小さければ、第1の分岐線6cを通る磁束量が多くなる。
例えば、図15に示すように、第1の駆動コイル4が駆動された場合に、環状の磁力線ML1,ML2,ML3,ML4が発生したとする。磁力線ML3と磁力線ML4とは同心円とする。第1の分岐線6c1は、全ての磁力線ML1〜ML4の中を通る。しかし、第1の分岐線6c2は磁力線ML2,ML4の中を通るが、磁力線ML1,ML3の中を通らない。よって、第1の分岐線6c1を通る磁束量は、第1の分岐線6c2を通る磁束量より多くなる。
従って、第1の駆動コイル4が駆動された場合、第1の分岐線6c1、第1の分岐線6c2、第1の分岐線6c3、第1の分岐線6c4、第1の分岐線6c5の順で、第1の分岐線6cを通る磁束量が少なくなる。同様の理由で、第2の駆動コイル5が駆動された場合、第2の分岐線7c1、第2の分岐線7c2、第2の分岐線7c3、第2の分岐線7c4、第2の分岐線7c5の順で、第2の分岐線7cを通る磁束量が少なくなる。
第1の分岐線6c1と第2の分岐線7c1とは、ほぼ同じ長さを有し、対向している。同様に、第1の分岐線6c2と第2の分岐線7c2とは、ほぼ同じ長さを有し、対向している。第1の分岐線6c3と第2の分岐線7c3とは、ほぼ同じ長さを有し、対向している。第1の分岐線6c4と第2の分岐線7c4とは、ほぼ同じ長さを有し、対向している。第1の分岐線6c5と第2の分岐線7c5とは、ほぼ同じ長さを有し、対向している。
第1の分岐線6c及び第2の分岐線7cは、磁気センサー3の差動トランスのゼロ調整に使用される。これについて、図6及び図10を参照して説明する。先ほど説明したように、第2の駆動コイル5を構成する線材と第2の差動コイル7を構成する線材とが接触しないように、第2の駆動コイル5と第2の差動コイル7とを立体交差させている。このため、第2の外側領域43に配置された第2の差動コイル7のパターンを、第1の外側領域33に配置された第1の差動コイル6とパターンと対称にすることができない。その結果、第1の差動コイル6に生じる起電圧V1と第2の差動コイル7に生じる起電圧V2との差が生じる。
第1の分岐線6c1と第2の分岐線7c1とを標準とする。磁気センサー3の近くに磁性体(例えば、磁性トナー)がない状態で、第1の差動コイル6に生じる起電圧V1>第2の差動コイル7に生じる起電圧V2であれば、起電圧V1を小さくするために、第1の分岐線6c1の換わりに、第1の分岐線6c2〜6c5のいずれかを選択する。起電圧V1を一番小さくできるのは、第1の分岐線6c5であり、その次が第1の分岐線6c4であり、その次が第1の分岐線6c3であり、その次が第1の分岐線6c2である。
一方、磁気センサー3の近くに磁性体がない状態で、起電圧V1<起電圧V2であれば、起電圧V2を小さくするために、第2の分岐線7c1の換わりに、第2の分岐線7c2〜7c5のいずれかを選択する。起電圧V2を一番小さくできるのは、第2の分岐線7c5であり、その次が第2の分岐線7c4であり、その次が第2の分岐線7c3であり、その次が第2の分岐線7c2である。
次に、5本の第1の分岐線6cのいずれか一つを選択する第1の選択部15(図3)について説明する。図6を参照して、第1の分岐線6c1の端部は位置P1に配置され、端子6d1として機能する。第1の分岐線6c2の端部は位置P2に配置され、端子6d2として機能する。第1の分岐線6c3の端部は位置P3に配置され、端子6d3として機能する。第1の分岐線6c4の端部は位置P4に配置され、端子6d4として機能する。第1の分岐線6c5の端部は位置P5に配置され、端子6d5として機能する。
第1の面31には、増幅回路12(図3)と接続される第1の配線8が配置されている。第1の配線8は、5本の第1の分岐線6cと接続可能にされている。第1の配線8は、第1の分岐線6c1との接続に用いられる端子8a1、第1の分岐線6c2との接続に用いられる端子8a2、第1の分岐線6c3との接続に用いられる端子8a3、第1の分岐線6c4との接続に用いられる端子8a4、及び、第1の分岐線6c5との接続に用いられる端子8a5を有する。
5本の第1の分岐線6cのいずれか一つが、図3で説明した抵抗13を介して第1の配線8と接続される。これについて図6及び図16を用いて説明する。図16は、図4に示す選択部領域34の付近の基板21を示す斜視図である。例えば、抵抗13を位置P1に配置して、端子6d1と端子8a1とを接続すると、第1の分岐線6c1が第1の配線8と接続されることになる。すなわち、第1の分岐線6c1を選択することができる。位置P1の端子6d1,8a1、位置P2の端子6d2,8a2、位置P3の端子6d3,8a3、位置P4の端子6d4,8a4及び位置P5の端子6d5,8a5、並びに、抵抗13によって、第1の選択部15が構成される。第1の選択部15は、磁気センサー3の差動トランスのゼロ調整に用いられ、5本の第1の分岐線6cのいずれか一つを選択できる。
5本の第2の分岐線7c1のいずれかを選択する第2の選択部16(図3)について説明する。図10を参照して、第2の分岐線7c1の端部は端子7e1として機能する。第2の分岐線7c2の端部は端子7e2として機能する。第2の分岐線7c3の端部は端子7e3として機能する。第2の分岐線7c4の端部は端子7e4として機能する。第2の分岐線7c5の端部は端子7e5として機能する。
第2の面41には、増幅回路12(図3)と接続される第2の配線9が配置されている。第2の配線9は、5本の第2の分岐線7cと接続可能にされている。第2の配線9は、第2の分岐線7c1との接続に用いられる端子9a1、第2の分岐線7c2との接続に用いられる端子9a2、第2の分岐線7c3との接続に用いられる端子9a3、第2の分岐線7c4との接続に用いられる端子9a4、及び、第2の分岐線7c5との接続に用いられる端子9a5を有する。
図6に示す第1の面31の位置P6,P7,P8,P9,P10のいずれかで、第2の分岐線7cと第2の配線9とが接続される。図6及び図16を参照して、位置P6は位置P1に隣接しており、端子7f1及び端子9b1が配置されている。端子7f1と第2の分岐線7c1の端子7e1とは、第4の接続部材54aにより接続されている。端子9b1と第2の配線9の端子9a1とは、第4の接続部材54bにより接続されている。
位置P7は位置P2に隣接しており、端子7f2及び端子9b2が配置されている。端子7f2と第2の分岐線7c2の端子7e2とは、第4の接続部材54cにより接続されている。端子9b2と第2の配線9の端子9a2とは、第4の接続部材54dにより接続されている。
位置P8は位置P3に隣接しており、端子7f3及び端子9b3が配置されている。端子7f3と第2の分岐線7c3の端子7e3とは、第4の接続部材54eにより接続されている。端子9b3と第2の配線9の端子9a3とは、第4の接続部材54fにより接続されている。
位置P9は位置P4に隣接しており、端子7f4及び端子9b4が配置されている。端子7f4と第2の分岐線7c4の端子7e4とは、第4の接続部材54gにより接続されている。端子9b4と第2の配線9の端子9a4とは、第4の接続部材54hにより接続されている。
位置P10は位置P5に隣接しており、端子7f5及び端子9b5が配置されている。端子7f5と第2の分岐線7c5の端子7e5とは、第4の接続部材54iにより接続されている。端子9b5と第2の配線9の端子9a5とは、第4の接続部材54jにより接続されている。
第4の接続部材54a〜54jは、基板21に形成されたスルーホール(不図示)に埋め込まれている。
5本の第2の分岐線7cのいずれかが、図3で説明したコンデンサー14を介して第2の配線9と接続される。図16を参照して、例えば、コンデンサー14を位置P6に配置して、端子7f1と端子9b1とを接続すると、第2の分岐線7c1が第2の配線9と接続されることになる。位置P6の端子7f1,9b1、位置P7の端子7f2,9b2、位置P8の端子7f3,9b3、位置P9の端子7f4,9b4及び位置P10の端子7f5,9b5並びにコンデンサー14によって、第2の選択部16が構成される。第2の選択部16は、磁気センサー3の差動トランスのゼロ調整に用いられ、5本の第2の分岐線7cのいずれか一つを選択できる。
本実施形態の主な効果を説明する。
図6、図10及び図13を参照して、第1の駆動コイル4、第1の差動コイル6、第2の駆動コイル5及び第2の差動コイル7を備えた差動トランスでは、第1の駆動コイル4と第1の差動コイル6とが同じ向きに巻かれ、第2の駆動コイル5と第2の差動コイル7とが逆向きに巻かれた構成となる。本実施形態では、第1の外側領域33(図5)において、第1の駆動コイル4を構成する線材と第1の差動コイル6を構成する線材とを交互に配置しているので、これらのコイルの磁気結合を大きくすることができる。また、第2の外側領域43(図5)において、第2の駆動コイル5を構成する線材と第2の差動コイル7を構成する線材とを交互に配置しているので、これらのコイルの磁気結合を大きくすることができる。
第2の駆動コイル5と第2の差動コイル7とは、逆向きに巻かれているので、第2の駆動コイル5を構成する線材と第2の差動コイル7を構成する線材との交差が不可避となる。第2の駆動コイル5と第2の差動コイル7とが接触すると、これらのコイルの間でショートが発生する。そこで、本実施形態では、第2の駆動コイル5を構成する線材と第2の差動コイル7を構成する線材とを、接続パターン10a〜10gと第3の接続部材53a〜53dを用いて立体交差させている。これにより、第2の駆動コイル5を構成する線材と第2の差動コイル7を構成する線材とを交差させつつ、第2の駆動コイル5と第2の差動コイル7との接触を防いでいる。
そして、本実施形態では、基板21の第1の面31に第1の駆動コイル4及び第1の差動コイル6を配置し、第1の面31の反対側の第2の面41に第2の駆動コイル5及び第2の差動コイル7を配置している。このように、第1の駆動コイル4、第1の差動コイル6、第2の駆動コイル5及び第2の差動コイル7を、一枚の基板21に配置しているので、磁気センサー3の小型化を図れる。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の駆動コイル4と第1の差動コイル6との磁気結合及び第2の駆動コイル5と第2の差動コイル7との磁気結合を大きくし、かつ、磁気センサー3を小型化することができる。また、第1の駆動コイル4、第1の差動コイル6、第2の駆動コイル5及び第2の差動コイル7を、複数層の基板でなく、一層の基板21に配置しているので、磁気センサー3のコストを下げることが可能となる。
なお、本実施形態では、接続パターン10a〜10gを第2の差動コイル7の一部にすることによって立体交差させている。すなわち、図13に示すように、接続パターン10a〜10gは、第3の接続部材53a〜53dによって第2の差動コイル7を構成する線材と接続されることにより、第2の差動コイル7を構成する線材と第2の駆動コイル5を構成する線材とを立体交差させている。しかしながら、接続パターン10a〜10gを第2の駆動コイル5の一部にすることによって立体交差させてもよい。すなわち、接続パターン10a〜10gは、第3の接続部材53a〜53dによって第2の駆動コイル5を構成する線材と接続されることにより、第2の差動コイル7を構成する線材と第2の駆動コイル5を構成する線材とを立体交差させるのである。
本実施形態では、第1の差動コイル6を基準コイル、第2の差動コイル7を検知コイルとしたが、第1の差動コイル6を検知コイル、第2の差動コイル7を基準コイルとしてもよい。
図8及び図12を参照して、本実施形態によれば、5本の第1の分岐線6cは、第1の駆動コイル4が駆動された場合に、5本の第1の分岐線6cのそれぞれを通る磁束量が異なるように配置されている。このため、第1の選択部15によって5本の第1の分岐線6cのいずれか一つを選択することで、第1の差動コイル6に生じる起電圧V1の大きさを調整することができる。同様に、5本の第2の分岐線7cは、第2の駆動コイル5が駆動された場合に、5本の第2の分岐線7cのそれぞれを通る磁束量が異なるように配置されている。このため、第2の選択部16によって5本の第2の分岐線7cのいずれか一つを選択することで、第2の差動コイル7に生じる起電圧V2の大きさを調整することができる。以上より、本実施形態によれば、基板21に配置された平面コイルを駆動コイル及び差動コイルとする場合に、基板21上で磁気センサー3の差動トランスのゼロ調整することができる。
本実施形態では、第1の選択部15及び第2の選択部16の両方を備える構成で説明したが、第1の選択部15及び第2の選択部16のいずれか一方を備える構成でもよい。これを第1の選択部15を例に説明する。図10に示す第2の分岐線7c1〜7c5は、第2の分岐線7c3の1本とする。図6に示す第1の分岐線6c3を基準にし、第1の差動コイル6に生じる起電圧V1>第2の差動コイル7に生じる起電圧V2であれば、起電圧V1を小さくするために、第1の分岐線6c3の換わりに、第1の分岐線6c4,6c5のいずれかを選択する。これに対して、起電圧V1<起電圧V2であれば、起電圧V1を大きくするために、第1の分岐線6c3の換わりに、第1の分岐線6c1,6c2のいずれかを選択する。
図16を参照して、本実施形態によれば、差動電圧V0が増幅回路12で増幅される増幅率の設定に用いられる抵抗13を、5本の第1の分岐線6cのいずれかと第1の配線8との接続に用いる接続部材にしている。差動電圧V0の直流成分をカットするコンデンサー14を、5本の第2の分岐線7cのいずれかと第2の配線9との接続に用いる接続部材にしている。従って、これらの接続部材を新たに設ける必要がなくなる。なお、コンデンサー14を、5本の第1の分岐線6cのいずれかと第1の配線8との接続に用いる接続部材にし、抵抗13を、5本の第2の分岐線7cのいずれかと第2の配線9との接続に用いる接続部材にしてもよい。また、抵抗13やコンデンサー14の換わりに、基板21の表面に実装可能なゼロオーム抵抗器を接続部材にすることもできる。また、抵抗13、コンデンサー14、ゼロオーム抵抗器の換わりに、機械式又は電子式スイッチを用いることもできる。この場合、第1のスイッチによって、5本の第1の分岐線6cのいずれかと第1の配線8とを接続できるようにし、第2のスイッチによって、5本の第2の分岐線7cのいずれかと第2の配線9とを接続できるようにする。
図6を参照して、本実施形態によれば、第1の選択部15及び第2の選択部16を、第1の差動コイル6(基準コイル)が配置される第1の面31に配置している。よって、第2の差動コイル7(検知コイル)が配置される第2の面41(検知コイル面)には、第1の選択部15や第2の選択部16のような突起物が配置されていないので、第2の面41と磁性体との距離を短くできる。従って、高精度な差動トランス式磁気センサーを実現することができる。
なお、5本の第1の分岐線6cと5本の第2の分岐線7cのうち、ゼロ調整に用いる第1の分岐線6cと第2の分岐線7cとの組み合わせが既に分かっている場合、不要な分岐線を削除した構成でもよい。例えば、第1の分岐線6c2と第2の分岐線7c5との組み合わせでゼロ調整ができることが既に分かっている場合、第1の分岐線6c1、6c3〜6c5及び第2の分岐線7c1〜7c4を備えない構成でもよい。この構成は、第1の駆動コイル4が駆動された場合に第1の差動コイル6の最外周を構成する線材(第1の分岐線6c2)を通る磁束量と、第2の駆動コイル5が駆動された場合に第2の差動コイル7の最外周を構成する線材(第2の分岐線7c5)を通る磁束量とが異なるようにされている、と表現することができる。
本実施形態では、第1の差動コイル6を第1の内側領域32及び第1の外側領域33に配置し、第2の差動コイル7を第2の内側領域42及び第2の外側領域43に配置している。しかしながら、第1の差動コイル6の感度に問題がなければ、第1の差動コイル6は第1の内側領域32に必ずしも配置していなくてもよい。同様に、第2の差動コイル7の感度に問題がなければ、第2の差動コイル7は第2の内側領域42に必ずしも配置していなくてもよい。
本実施形態では、1層の絶縁層を有する基板21を例に説明したが、複数の絶縁層を有する基板についても、本発明を適用することができる。これを本実施形態の変形例として説明する。図17は、本実施形態の変形例に係る差動トランス式磁気センサー60が形成された基板61の断面図である。基板61は、三層の絶縁層、すなわち、絶縁層62、その上に位置する絶縁層63、及び、その上に位置する絶縁層64を備える。
絶縁層64の上面には、平面コイル状の第1の差動コイル65が配置されている。第1の差動コイル65は、図8に示す第1の差動コイル6と同様に、第1の差動コイル65の最外周を構成する線材が分岐された複数の第1の分岐線を含む。
絶縁層64の下面と絶縁層63の上面との間に、平面コイル状の第1の駆動コイル66が配置されている。絶縁層63の下面と絶縁層62の上面との間に、平面コイル状の第2の駆動コイル67が配置されている。第1の駆動コイル66及び第2の駆動コイル67に高周波電流が流れた際に、第1の駆動コイル66で生成される磁束と第2の駆動コイル67で生成される磁束とが同じ向きになるように、第1の駆動コイル66の一端と第2の駆動コイル67の一端とが、接続部材68を用いて接続されている。接続部材68は、絶縁層63に形成されたスルーホールに埋め込まれている。
絶縁層62の下面には、平面コイル状の第2の差動コイル69が配置されている。第2の差動コイル69は、図12に示す第2の差動コイル7と同様に、第2の差動コイル69の最外周を構成する線材が分岐された複数の第2の分岐線を含む。
第1の差動コイル65及び第2の差動コイル69に誘導電流が流れた際に、第1の差動コイル65で生成される磁束と第2の差動コイル69で生成される磁束とが逆向きになるように、第1の差動コイル65の一端と第2の差動コイル69の一端とが、接続部材70を用いて接続されている。接続部材70は、絶縁層62,63,64を貫通するスルーホールに埋め込まれている。
絶縁層64の上面には、差動トランスのゼロ調整に用いられ、複数の第1の分岐線のいずれか一つを選択できる第1の選択部15(図3)が配置されている。絶縁層62の下面には、差動トランスのゼロ調整に用いられ、複数の第2の分岐線のいずれか一つを選択できる第2の選択部16(図3)が配置されている。なお、第2の選択部16を絶縁層64の上面に配置してもよい。
本実施形態では、第1の駆動コイル4が第1の差動コイル6と対応し、第2の駆動コイル5が第2の差動コイル7と対応している構成を説明した。しかしながら、駆動コイルと差動コイルとが一対一に対応している構成でなくてもよい。例えば、絶縁層が2つの場合、第1の絶縁層の上面に第1の差動コイルを配置し、第1の絶縁層の下面と第2の絶縁層の上面との間に駆動コイルを配置し、第2の絶縁層の下面に第2の差動コイルを配置した構成でもよい。
本実施形態及びその変形例では、画像形成装置1のキャリアとトナーとの混合比(1成分現像方式ではトナー残量)を検知するセンサーを例にして、差動トランス式磁気センサー3を説明したが、本発明に係る差動トランス式磁気センサーの用途は、画像形成装置1のトナー残量の検知に限定されない。