JP5863641B2 - 濃縮肥満細胞安定化用薬学的調合物 - Google Patents
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Description
喘息の正確な原因は完全には判明していないが、それは空気路の炎症と呼吸機能の低下により特徴づけられることが知られている。喘息では、好酸球およびCD4+T−リンパ球を含む多くの炎症細胞がこの病気の発病に寄与していると考えられている。さらに、重要な特徴は空気路壁改変、空気路平滑筋の過形成/肥大、基底膜下への増加したコラーゲン沈着、増加した粘液産生、血管形成および細胞外基質での変質が存在することである(非特許文献1)。さらに、小児の重篤なウイルス性感染が後の人生における空気路過反応および気管支喘息の危険因子であることを示唆する報告が存在する(非特許文献2)。
ジナトリウムクロモグリケート(DSCG)は気管支喘息、アレルギー鼻炎および結膜炎の発作の予防用の安全且つ汎用されている薬剤である。それはグローバル イニシャティブ フォア アズマ(GINA)から出版されたガイドラインの如き喘息処置の現在のガイドラインでは、標準推奨グルココルチコステロイド、長期作用β2−アゴニスト、テオフィリンとロイコトリエンの改良剤のための別の治療法として推奨されている。
DSCGが頻繁に用いられる他の分野は眼の病気の処置である。この化合物は、アレルギー性眼症状、春の結膜炎、アトピー性角結膜炎および巨大乳頭様結膜炎に用いられたとき有効な効果を持つことが示されている。ここでも、作用機序は肥満細胞の安定化に基づいている。
DSCGが喘息の別の処置として推奨されているだけであるという事実は2つのメタ分析の結果に主として基づいている(非特許文献5、および非特許文献6)。メタ分析は、入手可能な臨床試験の一般に小さい試料サイズを、小児喘息の処置のためのDSCGにより解消するためになされた。両研究とも、DSCGがプラセボと比較して喘息の小児の維持処置として有益な効果を持つという十分な証拠が存在しないことを結論している。しかしながら、これらの分析における結果の説明について幾つかの関心事が持ち上がった(例えば、非特許文献7)。小児喘息における幾つかの治療ガイドライン中の臨床的有効性評価は、限定された試料サイズと次善の策、未知の吸入装置仕様およびガイドラインのベースとして用いられた2つのDSCGメタ分析からの議論の余地ある結論を持つ初期臨床試験の導入が主な寄与であることによって身動きがとれなくなったと結論することができる。
現在、吸入用DSCGは、薬剤の短い半減期のために、1日に4回用いられることが多くの場合求められる。この多回投与は、一般に処置の貧弱なコンプライアンスと減少された効果とを導く。DSCGの投与される投与量は調合タイプに大きく依存する。MDIを用いると、2mg投与量が用いられたが、DPIまたは噴霧器を用いると、投与量は40mgまで増やすことができる。DSCGは速やかに肺から取り除かれることも注目されねばならない。吸入された投与量の75%は2時間後に除去され、98%以上が24時間以内で除去される(非特許文献14)。
DSCG溶液について見い出された1つの重要な問題は、沈殿に対する感度である。特許文献2は、DSCGとN−アセチル−1−システインの如き粘液破壊剤の合溶液を記載している。そこでは、DSCGの沈殿への感度が比較的高いpH(7〜9)と他の溶質の存在とに関連していた。2価および多価金属イオンの量を最小限に抑え且つキレート化剤を添加することによって安定な溶液が調製された。後者はクロモグリケートアニオンの金属塩の沈殿が起らないことを確実とする。キレート化剤の濃度は存在する金属イオンの濃度に依存する。後者の濃度が0.40ppmより低い場合には、キレート化剤は省略できる。キレート化剤を導入した場合でも、金属イオンの濃度は10ppmより低くすべきである。この溶液はさらに塩化ナトリウム、デキストローズもしくはマンニトール、および緩衝剤の如き慣用賦形剤を含有していてもよい。
特許文献4は、薬学的ガラスに起因する金属イオン、またはバイアルのゴムもしくはプラスチック栓によって、あるいはベンザルコニウムクロライドの如き保存剤の存在によって起こされる、点眼液中のDSCG沈殿は、一般に、EDTAを添加することによって防止される、と述べている。しかしながら、EDTAに対するアレルギーがしばしば存在するので、この文献はDSCGをソルビトール(等張化剤として)とクロルブタノール(保存剤として)を用いて調製した別溶液を提供している。
特許文献6においては、DSCGの沈殿はベンザルコニウムクロライドと金属イオンの存在に関連している。これを防止する公知の方法は、その発明者によれば、キレート化剤、ソルビタン、キャスターオイルおよび非イオン界面活性剤の使用である。ここに記載された発明は沈殿を防止するために2−アミノエタノールまたはトコフェロールを使用することをベースとしている。この活性化剤の濃度は一般に約1.5〜4重量%である。塩化ナトリウムとグリセリンが等張化剤として記載されている。
特許文献1は、比較的少量のキシリトールまたはトレハロースと共に塩化ナトリウムを含有する調合を含む、吸入用DSCG溶液を記載している。この文献はそのような賦形剤の組合せの理論的説明や効果については全く記載していない。
吸入用DSCG溶液についてのさらに重要な要求は、呼吸路中で十分な耐性と非刺激性であることである。特許文献7は、DSCGは眼の中の強い熱い感覚によって表現される、眼刺激を起すことを記載している。これは、呼吸路の粘膜表面の刺激も起りうることを示唆している。それ故、新規DSCG溶液の開発中には可能性のある刺激効果について注意を払うべきである。
この溶液は、活性剤と最良の賦形剤混合物とが分散された液体相の液滴中に含有されている、エアゾールとして上部および下部呼吸路に投与される。他の側面では、この溶液は、眼、耳および皮膚の状態の予防もしくは処置のためにも用いられる。
この実施態様において、本発明は上記調合の効果的な(すなわち大部分のエアゾールが目標とする場所に到達する)且つ速やかな噴霧化のための、エアゾール発生器および方法を提供する。高濃度、効果的且つ速やかな噴霧化は上部および下部呼吸路に治療学的投与量を届けるために必要とされる吸入時間を短くすることを可能とする。これは、コルチコステロイドに比較してその優れた安全性プロフィールの観点から特に魅力的である、小児におけるDSCGのエアゾール配給のために特に有利である。
組成物という用語は化合物の混合物のことを云う。組成物と同義語は調合物(formulation)または調製剤(preparation)である。より具体的には、本発明の組成物は、液体担体もしくは溶媒が主としてまたは完全に水からなる液体単相系のことである水性溶液である。特別なケースでは、液体担体は、少なくとも部分的に水混和性である液体の1種またはそれ以上を小割合で含有していてもよい。
本発明の組成物は、好ましくは殺菌組成物である。殺菌という用語は通常の薬学的意味の中にあると理解されるべきである。細菌の数を特定濃度よりも低く低減されているので、細菌が貯蔵中に薬学的組成物中に再生されても、組成物を生物に施用したときそれらが感染を起すことない。殺菌は関連する薬局方に定義されている適当な試験によって検査されているべきである。
活性化合物という用語は、動物特に人間の病気、状態または徴候の診断、予防、管理または処置のために有用な、天然の、生物工学由来の、もしくは合成の化合物または化合物の混合物のことを云う。活性化合物の同義語として用いられる他の用語は、例えば活性成分、活性剤、活性薬学的成分、治療学的化合物、薬品基質、薬品等を包含する。活性化合物という用語は、塩、溶媒化合物(solvates)、異性体、接合体(conjugates)、プロドラッグまたは誘導体の如き、活性化合物の可能な種々の形態も包含する。
さらにDSCGは、インフルエンザおよび呼吸性シンシチウムウイルス誘発病の如きウイルス感染の処置においてもプラス効果がある。これらの抗炎症性および抗感染性効果の故に、本発明の調合は、例えば慢性閉塞性肺病(COPD)の如き、炎症性および/または感染性過程が関与する、喘息以外の呼吸路病状の予防または処置のためにも適切である。
さらに、請求された調合は、肥満細胞安定化効果に基づいて、肺腫瘍および転移の吸入(保持的)処置のために使用することもできる。何人かの著者は肥満細胞は発育中の腫瘍内の血管形成および腫瘍拡散と転移において重要な役割を演じていることを示唆していた。これは、健全な組織と悪性組織との間の境界に蓄積される肥満細胞によって放出されるメディエーターに関係している。それ故、肥満細胞安定化剤によるこれらのメディエーターの放出の防止は腫瘍退行をもたらす。
好ましくは、活性化合物すなわちDSCGの濃度は、2〜6.5(w/v)の範囲にあり、好ましくは4.0〜6.5%(w/v)の範囲にある。例えば、約4.0、5.0、5.5、6.0、6.5%(w/v)の如くである。特に好ましい濃度は約6.0%(w/v)である。
本発明者は、最も普通に用いられる等張性調節用賦形剤、塩化ナトリウムの使用はDSCGを組合せると問題があることを見い出した。特に、高DSCG濃度が望ましいとき、塩化ナトリウムは粘度の強い増加を来す。この粘度増加は調合物の滅菌濾過中および噴霧中に問題を起す。さらに、本発明者は、高い粘度は高濃度溶液からDSCGが沈殿する危険性が増大される可能性と関連するファクターであると信じている。
しかしながら、塩化ナトリウムの代わりに糖アルコールの如き別々の等張性調節用賦形剤を用いたときには、本発明者は得られる溶液は、エアロゾール化形態で投与したとき、粘膜表面の刺激と咳誘発を一層生み出したことを見つけた。
この予期されなかった有益な性質は非イオン性等張性調節用賦形剤のモル濃度がイオン性等張性調節用賦形剤のそれと比較して比較的高いときのみに存在するように見える。より具体的には、非イオン性等張性調節用賦形剤対イオン性等張性調節用賦形剤のモル比(以後、“比”と略記することがある)が少なくとも約1:1である。さらなる実施態様では、この比は、約3:1のように、少なくとも約2:1である。非イオン性等張性調節用賦形剤が1種より多くおよび/またはイオン性等張性調節用賦形剤が1種より多く用いられる場合には、この比は、複数の非イオン性等張性調節用賦形剤のモル濃度の合計対複数のイオン性等張性調節用賦形剤のモル濃度の合計を表わしている。
イオン性等張性調節用賦形剤は、例えばナトリウム塩およびカリウム塩の如き、アルカリ金属塩から選択することができる。そのような塩の例は、塩化ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウムおよび塩化カリウムである。イオン性等張性調節剤を単一でまたは混合物で用いることができる。これらの塩は、添加されても、あるいは塩生成法によりその場で(in situ)形成されてもよい。
上記したとおり、吸入用液体組成物の動粘度は、あまりにも高い粘度は滅菌濾過中および調合物の噴霧中に問題を起すので、重要である。滅菌濾過に関して、高粘度はフィルターの孔を液体が通過するのを困難とする。噴霧に関しては、粘度はエアゾールの粒径分布と噴霧効率とに対し明らかな影響を持つことが明らかとなった。さらに、高粘度は高濃度溶液からDSCGが沈殿する危険性を増すことと関係している。それ故、粘度は好ましくは約10mPa・s未満であるべきである。好ましくは、粘度は約8mPa・sを超えないように調節すべきである。さらなる実施態様によれば、粘度は約2〜約6mPa・sの範囲で選ばれる。動粘度は室温で測定されたものと理解されるべきである。
高粘度は、眼に適用する調合物に負の影響も有している。また、これらの調合物は、滅菌濾過により最も経済的に得られる、滅菌されていることを必要とする。さらに、粘度が比較的高いときにDSCGの沈殿する危険性が増加することが予測され、それは眼に適用する調合物についても同様である。高濃度であることが眼に滞留する時間が一般に短くなるので好ましいような、眼の炎症状態にDSCGが適用されることがよくあるので、本発明の調合物は、それらがエアゾール化されず、眼に滴下されるものであるが、眼の状態の処置または予防とも関係がある。
等張性調節用賦形剤の次に、薬学的組成物は、抗酸化剤、界面活性剤、放出保持もしくは延長された局所滞留用賦形剤、pHの調節または緩衝用賦形剤、味覚隠蔽剤、甘味剤およびフレーバーの如き、さらなる賦形剤を含有することができる。これらの賦形剤は、最良のpH、粘度、表面張力および味を得るために用いられ、調合物安定性、エアロゾル化および/または吸入による調合物の耐性を与える。
好ましくは、調合物のpH値は、弱酸性ないし中性域にある。すなわち、溶液は好ましくは約4〜約7の間の範囲のpH値を有する。約5〜約7のpHは特に好ましい。
この組成物は、2成分からなる緩衝系を含有することもできる。最も好ましい緩衝系の1つは、クエン酸とクエン酸ナトリウムを含有する。それでも、他の緩衝系も同様に用いられる。
経口または経鼻吸入のための溶液中の界面活性剤の総含有量は、粘膜刺激を避けるために約5%(w/v)を最大として制限されるべきである。特に好ましい濃度は約0.01〜約2.0%(w/v)の間であり、そして約0.02〜約1%(w/v)の間である。
等張性調節用成分が、塩化ナトリウムの如き塩と糖もしくは糖アルコールの組合せであるとき、中庸且つ十分に受け入れられる味が、本発明のこの特別な実施態様のさらなる利点を提供して、達成される。この場合、さらなる味覚隠蔽剤または味覚改善賦形剤の導入は不必要と思われる。
特に、本発明の組成物は、喘息および慢性閉塞性肺病(COPD)の如き、喘息や炎症および/または感染が関与する呼吸病態の処置のための薬剤として有用である。活性成分の高濃度のために、組成物は、活性化合物としてDSCGを用いるエアゾール治療におけるように、投与間隔を減少させるために有用である。この場合、投与間隔は、1日当り1回または2回の投与計画に減らすことができる。
上記したとおり、本発明により提供される組成物は、好ましい実施態様では、エアロゾールとして投与される。エアロゾールは、連続ガス相と、その中に分散された液体および/または固体粒子の不連続なまたは分散された相を有する系として、ここでは定義される。分散された液体相と連続ガス相を有するエアゾールは、しばしば“液体エアゾール”または恐らくさらに適切には“エアゾール化された液体”と云われる。
エアゾールの連続ガス相は薬学的に許容されるガスまたはガスの混合物から選ばれる。例えば、ガスは、単にエアゾール発生器としての噴霧器を用いる吸入治療に最も普通に用いられる、空気または圧縮空気であってよい。また、酸素、二酸化炭素または窒素と酸素の混合物で富化された空気の如き、他のガスまたはガス混合物も用いられる。本発明のために最も好ましいのは、連続ガス相として空気を用いることである。
エアゾールの分散された相を記載している他のパラメーターは、エアゾール化された液体粒子または液滴の粒径分布である。幾何標準偏差(GSD)は、生成されたエアゾール粒子もしくは液滴の粒子もしくは液滴のサイズ分布の広さ用のしばしば用いられる尺度である。
上記範囲内の正確なMMADの選択はエアゾールの沈着のための目標となる場所や組織を考慮すべきである。例えば、最適な液滴直径は、経口もしくは経鼻吸入が望まれているかどうか、および中咽頭の、気管支の、肺の、鼻のおよび/または副鼻腔洞の配給が焦点とされているかどうか、により異なる。さらに患者の年齢やその呼吸パターンは肺の薬物配給のための最良の粒径を決定する重要な因子に属する。
(a)ジナトリウムクロモグリケート少なくとも40mgの名目投与量が3分未満でエアゾール化される;
(b)噴霧器のマウスピースから実際に配給される投与量はジナトリムクロモグリケートの名目投与量の50%を超える;
(c)直径3.3μm未満の微粒子として配給されるジナトリウムクロモグリケートの投与量の一部は名目投与量の30%を超える;そして
(d)1回の単位投与量を含有する溶液の容積は1.5mlを超えない。
一実施態様において、次の特徴が同様に存在する:
(e)15ml/min、23℃±5℃の温度および30%と99%の相対温度で操作されたネクストジェネレーションインパクター(Next Generation Impactor)で測定された、空気力学液滴サイズ分布パターンは20%以上でははずれない。
場合により、この方法はさらなる工程を包含することができ、そして工程(a)〜(d)は複数の副工程を有することができる。例えば、滅菌形態で成分を提供するために、先ず、1つまたはそれ以上の成分を滅菌することは有用である。このようにして、滅菌濾過工程(c)が設計するのに問題が少なくなるような効果とともにして生物負担を比較的低く維持する。
滅菌溶液の最終容器への引き続く充填は、無菌条件下で行われる。予め滅菌されたガラス小瓶が容器として選ばれる。さらに好ましくは、特に製品が約0.2〜約5mlの範囲の投与量容積で単一投与量単位として包装される場合には、吸込み充填シール法設計(blow−fill−seal process design)を用いてインラインで製造される滅菌プラスチック小瓶が用いられる。
1回もしくはそれ以上の主要な包装手段は厚紙製箱の如き1つの2次包装手段中に包装される。
下記実施例は本発明を説明するためのものであるが、これれは本発明の範囲を限定するものと理解されるべきではない。
次の実施例はDSCG溶液の粘度に対するイオン(塩化ナトリウムの形態で)の存在の影響を示している。この例は比較例である。
この実施例では、増加するDSCG濃度と等張性調節用賦形剤の種類の得られる溶液の動粘度への影響が示されている。表2は、DSCGと各種の賦形剤を種々の濃度で含有する調合物の組成が、それらの動粘度とともに、表示している。全ての溶液は活性剤と賦形剤を秤量しそしてこれらの化合物を注射用水に溶解することによって調製された。これらの溶液は滅菌濾過されそしてテフロン被覆栓で閉じられたガラス小瓶中に充填された。増加した動粘度が増加する薬物濃度と増加するイオン性賦形剤濃度と関連性があることは明白である。
図1は、DSCG溶液の動粘度は、DSCG濃度が増加すると大きく増加することをさらに説明している。イオン性等張性調節剤(塩化ナトリウム)の添加は動粘度を一層強く増加させる。非イオン性対イオン性の等張性調節剤のモル比が2.88であるように、イオン性等張性調節剤の一部を非イオン性等張性調節剤で置き換えると、高濃度DSCG溶液を許容し得る動粘度で調製することが可能となる。これは8%(w/v)未満のDSCG濃度について特に明瞭である。6%(w/v)DSCG溶液用等張化剤としてNaClをマンニトールとNaClの混合物で置き換えたとき、粘度はそれぞれ26.45から5.53mPa・sに減少する。
この実施例では、DSCG溶液の粘度に対する他のナトリウム塩の影響が示されている。6.0%(w/v)DSCGを2.95%(w/v)(すなわち0.135mol/l)ナトリウムグルコネートとともに注射用水中に含有する第1溶液が調製された。5%(w/v)DSCGを2.65%(w/v)マンニトール(0.145mol/l)と1.0%(w/v)(すなわち0.046mol/l)ナトリウムグルコネートを注射用水中に含有する第2溶液が調製された。非イオン性等張性調節用賦形剤対イオン性等張性調節用賦形剤のモル比は3.17である。驚くべきことに、ナトリウムグルコネートのみを含有する溶液の粘度はイオン性と非イオン性の等張化剤の混合物を含有する溶液の粘度よりもかなり高く、それぞれ53.41mPa・sおよび2.50mPa・sである。
もう一つの実験では、別のアルカリ金属塩が用いられる。実施例3と同様にして、塩化カリウムで等張化されるかまたはマンニトールと塩化カリウムの混合物で等張化された6.0%(w/v)DSCG溶液が調製された。第1溶液は6.0%(w/v)DSCGと1.15%(w/v)(すなわち0.154mol/l)塩化カリウムを含有し、一方第2溶液は6.0%(w/v)DSCG、2.25%(w/v)マンニトール(0.124mol/l)および0.319%(w/v)(すなわち0.043mol/l)塩化カリウムを含有していた。イオン性等張性調節用賦形剤対イオン性等張性調節用賦形剤のモル比は2.89である。前の予期しない発見と同様に、第1溶液の粘度は、塩と非イオン性賦形剤の賦形剤混合物を用いている第2溶液の粘度と比較してかなり高かった(22.65mPa・s対3.81mPa・s)。
3.75%(w/v)マンニトールを含有する6%(w/v)DSCG溶液(実施例2の調合物2)の吸入後の耐性が、2.25%(w/v)マンニトールおよび0.25%(w/v)塩化ナトリウムを含む6%(w/v)DSCG溶液(実施例2の調合物11:モル比2.89)と比較された。これらの溶液のモル浸透圧濃度はそれぞれ300mOsm/kgおよび288mOsm/kgであった。すなわち、このモル浸透圧濃度は生理学的液体のモル浸透圧濃度(290mOsm/kg)と近似していた。両者の吸入セションのために、1mlの溶液がPARI eFlow振動膜噴霧器の受器に充填され、志願者によって吸入された。塩化ナトリウムのない溶液は、マンニトールと塩化ナトリウムからなる賦形剤混合物が用いられた溶液よりも吸入すると、より刺激的であることが見い出された。これは、溶液が似たようなモル浸透圧濃度を有していたので、予期できなかった。
もう一つの実施例において、複数のDSCG溶液(DSCG濃度:6%w/v)の等張化のための異なる非イオン性等張性調節用賦形剤が、それらの動粘度への影響について比較された。比較のため、塩化ナトリウムで等張化された溶液も調製された。これらの溶液は、これらの化合物を秤量し且つそれらの注射用水中に溶解することによって調製された。その後、これらの溶液は滅菌濾過されそしてポリスチレン小瓶に充填された。これらの溶液は5℃、25℃および40℃で貯蔵された。いずれの組成物も見た目の不安定性を示さなかった。全ての調合物は3ヶ月の貯蔵期間中化学的に安定である。
5%(w/v)DSCG、2.21%(w/v)(すなわち0.145mol/l)キシリトールおよび1%(w/v)(すなわち0.091mol/l)ピルビン酸ナトリウムを含有する調合物が調製された(モル比:1.6)。この溶液は滅菌濾過されそして5℃、25℃および40℃での貯蔵用滅菌ポリスチレン小瓶中に充填された。調製後直ちに測定された動粘度は2.20mPa・sであった。この溶液はeFlow噴霧器で吸入したとき志願者により良好に許容され且つ如何なる刺激も味感作も生じなかった。
さらなる実験において、錯化剤の効果が評価された。調合物の組成は表4に示されている。DSCG溶液の動粘度が調製後直ちに測定された。結果は表4に示されている。
非イオン性等張性調節用賦形剤としてポリプロピレングリコールの使用が示されている。4%(w/v)DSCG、1.46%(w/v)プロピレングリコール、0.225%(w/v)塩化ナトリウムおよび0.25%(w/v)クエン酸ナトリウムを含む溶液(モル比:4.08)が調製された。この溶液のモル浸透圧濃度は375mOsm/kgであり、動粘度は1.28mPa・sであった。
PARI LC(登録商標)SPRINT ジュニアジェット噴霧器、カスタマイズされたeFlow 30Sおよびカスタマイズされた研究eFlow閉止系(CS)で噴霧化された6%(w/v)DSCG調合物のエアゾール特性が検討された。調合物は2.25%(w/v)マンニトールおよび0.25%(w/v)NaCl(モル比:2.89)を含有していた。噴霧化容積はジェット噴霧器では2ml(DSCG120mg含有)および両方の振動膜噴霧器では0.75ml(DSCG 45mg含有)であった。空気力学粒径分布は15L/minの流速で操作された次世代インパクター(Next Generation Impactor)(NGI)を用いて評価された。NGIは、液滴の蒸発を避けるために18℃±0.5℃に冷却された。吸気用空気は23℃±2℃および50%±5%相対湿度または23℃±2℃および95%±5%相対湿度に調整された。このテストは各噴霧器について3回実施された。インパクターの異なる段階でのDSCGの量は確認されたHPLC法によって定量化された。微粒子投与量(FPD)≦5μm、FPD≦3.3μm、質量メディアン空気力学的直径(MMAD)および幾何液滴サイズ分布(GSD)がコプレイ(Copley)C.I.T.D.A.S.バージョン2.00ソフトウエアを用いて計算された。FPDはmgで得られた。結果は表5に示されている。
実施例10に記載したのと同様にして、NGIが、1%(w/v)DSCG溶液(NaClで等張化)と6%(w/v)DSCG溶液(0.25%(w/v)NaClと2.25%(w/v)マンニトールで等張化)を、PARI LC(登録商標)SPRINT ジュニアジェット噴霧器およびeFlow 30S振動膜噴霧器で噴霧化するときの違いを評価するために用いられた。23℃±2℃および50%±5%相対湿度に調整された吸気用空気での噴霧化についての結果は、表6に示されている。一方、23℃±2℃および95%±5℃相対湿度に調整された吸気用空気での噴霧化についての結果は表7に示されている。
実施例6に記載した調合物2(すなわち、6%(w/v)DSCG、0.25%(w/v)NaClおよび2.25%(w/v)マンニトール)の噴霧効率も呼吸刺激試験を適用して評価された。呼吸刺激試験はCOMPAS(登録商標)呼吸刺激器(PARI GmbH、シュタルンベルク、ドイツ国)を用いて行われた。それらの溶液が、3才児の代表的な呼吸パターン(1回呼吸量:125ml/1分間の呼吸数:24/吸気対呼気の比:40:60)および10才児の代表的な呼吸パターン(1回呼吸量:225ml/1分間の呼吸数:16/吸気対呼気の比:40:60)を適用して、PARI eFlow 30S振動膜噴霧器およびRARI研究eFlow閉止系(CS)振動膜噴霧器を用いて噴霧化された。試験は、各噴霧器の3台の装置を用いて2回行われた。これらの装置は、6%の本発明のDSCG溶液0.75mlを充填されそして呼吸刺激器に結ばれた。放出投与量マウスピースに相当する吸気フィルターで集められた試料中のDSCGの量は、確認されたHPLC法によって定量化された。この仕事は、配給投与量(DD)、噴霧時間、薬物配給速度(DDR)を測定することおよび液滴サイズに関する空気力学データを参照して呼吸に適した投与量(RD)および呼吸に適した薬物配給速度(RDDR)を計算すること、を可能とする。それ故、データは、本発明の6%DSCG溶液の噴霧効率が、3才児および10才児の代表的呼吸パターンがまねられるとき、どの程度まで影響されるかを結論することを可能とする。これらの呼吸刺激試験の結果は表8に示されている。
異なるDSCG濃度と、非イオン性等張性調節剤対イオン性等張性調節剤の異なる濃度比とを持つさらなる調合物が調製された。これらの溶液は表9と表10に記載された化合物を秤量しそしてそれらを注射用水に溶解することによって調製された。それぞれの調合物について表9と表10に示されている動粘度は、全ての場合において、質量比が1より大きいにもかかわらず、非イオン性等張調節剤対イオン性等張性調節剤のモル比が1より小さい調合物についてかなり高くなっている。これは、質量比よりもモル比が許容し得る粘度の高濃度DSCG溶液を得ることに関連性があることを示している。
Claims (17)
- 2〜6.5%(w/v)のジナトリウムクロモグリケートと等張性調節用成分を含有し、等張性調節用成分が少なくとも1種の非イオン性等張性調節用賦形剤と少なくとも1種のイオン性等張性調節用賦形剤との組合せでありそして非イオン性等張性調節用賦形剤対イオン性等張性調節用賦形剤のモル比が少なくとも1:1である、液体水性薬学的溶液。
- 非イオン性等張性調節用賦形剤対イオン性等張性調節用賦形剤のモル比が溶液の動粘度が10mPa・sよりも小さくなるように選ばれる請求項1による薬学的溶液。
- 非イオン性等張性調節用賦形剤の濃度が少なくとも0.1モル/lである請求項1または2による薬学的溶液。
- イオン性等張性調節用賦形剤の濃度が0.1モル/lを超えない、請求項1〜3のいずれかによる薬学的溶液。
- 等張性調節用成分の濃度がモル浸透圧濃度が250〜350mOsm/kgとなるように選ばれる、請求項1〜4のいずれかによる薬学的組成物。
- ジナトリウムクロモグリケートの濃度が4%〜6.5%(w/v)である、請求項1〜5のいずれかによる薬学的溶液。
- 非イオン性等張性調節用賦形剤が炭水化物または糖アルコールである請求項1〜6のいずれかによる薬学的溶液。
- 炭水化物または糖アルコールがグルコース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マンニトール、キシリトール、ソルビトールおよびこれらの混合物から選ばれる、請求項7による薬学的溶液。
- イオン性等張性調節用賦形剤がアルカリ金属塩である請求項1〜8のいずれかによる薬学的溶液。
- アルカリ金属塩が塩化ナトリウム、ナトリウムグルコネート、ナトリウムピルベート、塩化カリウムおよびこれらの混合物から選ばれる、請求項9による薬学的溶液。
- 抗酸化剤をさらに含有する請求項1〜10のいずれかによる薬学的溶液。
- 抗酸化剤がナトリウムグルコネート、ナトリウムピルベート、ナトリウムEDTAおよびこれらの混合物から選ばれる、請求項11による薬学的溶液。
- 薬剤として使用するための請求項1〜12のいずれかに記載の薬学的溶液。
- 喘息または、炎症および/または感染に関する他の呼吸病を処置するための薬剤として使用するための、請求項1〜12のいずれかによる薬学的溶液。
- 1日に1回または2回投与するための薬剤として使用するための請求項1〜12のいずれかによる薬学的溶液。
- 吸入可能なエアゾールの形態で投与するための薬剤として使用するための、請求項1〜12のいずれかによる薬学的溶液。
- エアゾールが有孔膜型噴霧器によって生成される、請求項16による薬学的溶液。
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