以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下において上下左右とは、図7中の上下左右方向を表す。本発明のサッシの種類は、障子が面内方向に摺動するものであればよく、引き違い窓や片引き窓などが挙げられるが、ここでは一例として、図6及び図7に示すように、枠体1に内障子2と外障子3を引き違いに収めた引き違い窓のアルミサッシの例を挙げる。枠体1は、上枠1aと、下枠1bと、左右の竪枠1cとを四周枠組みしたものであり、上枠1aの下面側には、図17に示すように、見込方向の略中央部に中間片41を設けてあり、中間片41の室外側にガイドレール42を設けてあり、室内側端に室内側片43を設けてある。一方、下枠1bの上面側には、図14に示すように、平行する二本のレール4a,4bを設けてある。そして、内障子2及び外障子3は、何れも上框2a,3aと、下框2b,3bと、召合框(内召合框2c、外召合框3c)と、戸先框2d,3dとを四周框組みしてパネル2e,3eを嵌め込んだものである。内障子2及び外障子3の下框2b,3bの下面側には樹脂製の戸車31を取り付けてあって、戸車31がレール4a,4b上を転動する。内障子2の上端部は上枠1aの中間片41と室内側片43に挟まれており、外障子3の上端部には溝3gが設けてあって、溝3gがガイドレール42を呑み込んでいる。内障子2及び外障子3を閉鎖すると、図6に示すように、内召合框2cと、外召合框3cが室内外方向に重なる。そして、サッシの上下方向中央部には、クレセント5を取り付けてある。クレセント5は、内召合框2cに設けた鎌部(図示省略)と、外召合框3cに設けた受け具(図示省略)とを有し、鎌部が受け具に係合して内召合框2cと外召合框3cとを拘束するものである。
第一に、内召合框2cと外召合框3cの対向面部分の構成について詳述する。
内召合框2cと外召合框3cの対向面、すなわち、内召合框2cの室外側面2fと外召合框3cの室内側面3fには、それぞれ煙返し部(内煙返し部11、外煙返し部12)を設けてある。内煙返し部11及び外煙返し部12は、図1、図2及び図4に示すように、何れも略L字形で、室内外方向に延びる見込片111,121と、見込片111,121の先端から各障子の閉鎖方向(内障子2については右側方向、外障子3については左側方向)に延びる見付片112,122からなる。そして、内煙返し部11の見付片112の先端の室内側と、外煙返し部12の見付片122の先端の室外側には、見付片112,122が先細形状となる向きに傾斜した傾斜面113,123が形成されており、内障子2及び外障子3を閉鎖すると、内煙返し部11の傾斜面113と外煙返し部12の傾斜面123とが当接して、内召合框2cと外召合框3cとを拘束する。なお、内召合框2cの室外側面2fの左側端には、タイト材ホルダ13を設けてあり、タイト材ホルダ13に不燃樹脂からなるタイト材14を嵌め込んである。タイト材14は、内障子2及び外障子3を閉鎖した際に、外召合框3cの室内側面3fに当接する。また、外召合框3cの室内側面3fの右側端には、室内側に向けて突出する突出片15を設けてある。
そして、内召合框2cの室外側面2fには、拘束部材16を取り付けてある。拘束部材16は、ステンレス製であって、図3に示すように、略矩形平板形状の係合片161と、略直方体形状で係合片161の室内側の左端に位置する基部162からなり、係合片161と基部162とを貫通するネジ孔163が形成されている。これを内召合框2cの室外側面2fに取り付ける際には、図1及び図2に示すように、基部162を、内煙返し部11の見込片111とタイト材ホルダ13との間の溝状部分に納めてネジ止めする。すると、係合片161は、ネジ止め部分から内障子2の閉鎖方向(右側方向)に向けて延びる向きとなる。基部162の見込方向長さは、内煙返し部11の見込片111の見込方向長さと同じであり、係合片161は内煙返し部11の見付片112に当接する。そして係合片161の見付方向長さは見付片112の見付方向長さよりも長く、係合片161の先端は見付片112の先端よりも内障子2の閉鎖方向(右側方向)に突出している。なお、係合片161と基部162とは、別部材であっても、一体に形成されたものであっても、どちらでもよい。
一方、外召合框3cの室内側面3fには、受け部材17を取り付けてある。受け部材17は、アルミ製であって、図5に示すように、略直方体形状で、外障子3の閉鎖方向側の面(左側面)に、凹部171が形成されている。凹部171は、室内側の面を残して掘り込んだ形状であり、上下方向幅は拘束部材16の係合片161の上下方向幅よりも長くなっている。また、凹部171の上下には、室内外方向に貫通するネジ孔172が形成されている。これを外召合框3cの室内側面3fに取り付ける際には、図1及び図4に示すように、受け部材17自体を、外煙返し部12の見込片121と突出片15の間の溝状部分に納めてネジ止めする。なお、受け部材17が接する外煙返し部12の見込片121には、外障子3の摺動方向(左右方向)に貫通する貫通孔18を形成してあり、貫通孔18は略矩形で凹部171と連通していて、受け部材17が貫通孔18を右側から塞いでいる。
なお、拘束部材16及び受け部材17は、図7に示すように、クレセント5とサッシの上端部の中間位置と、クレセント5とサッシの下端部の中間位置の二箇所に取り付けてある。
このような拘束部材16及び受け部材17を取り付けたサッシにおいては、内障子2と外障子3を閉鎖すると、拘束部材16の係合片161が、貫通孔18を貫通して、受け部材17の凹部171に挿入される(図1(b)の状態)。また、内障子2と外障子3を開放すると、係合片161が受け部材17の凹部171及び貫通孔18から引き抜かれる(図1(a)の状態)。よって、拘束部材16及び受け部材17が、内障子2及び外障子3の開閉動作に影響することはない。
そして、拘束部材16の係合片161が、貫通孔18を貫通してさらに受け部材17の凹部171に挿入されることにより、内召合框2cと外召合框3cが室内外方向に拘束される。この際、通常の障子の閉鎖動作以外に特別な操作は必要なく、また構造自体も極めて簡易である。そして、係合片161は、外煙返し部12の見込片121の左右方向厚さと、受け部材17の凹部171の左右方向深さを合わせた長さ分だけ、貫通孔18及び受け部材17と係合することになるので、係り代が深く、確実に内召合框2cと外召合框3cとが拘束される。よって、火災時にサッシが炎熱にさらされて召合框に伸びや捩れが生じた場合であっても、召合框が変形して隙間が生じることを抑え、サッシの性能を維持することができる。また、拘束部材16及び受け部材17は、クレセント5とサッシの上下端のそれぞれの中間位置に取り付けてあり、クレセント5と、拘束部材16及び受け部材17の両方で内召合框2cと外召合框3cを拘束するので、より確実に隙間の発生を抑えることができる。さらに、外煙返し部12に形成された貫通孔18は、受け部材17によって塞がれているので、この部分の気密性や水密性は維持されている。
なお、内召合框と外召合框の対向面部分の構成については、上記の実施形態に限定されない。たとえば、上記の実施形態とは逆に、内召合框に貫通孔を設けて受け部材を取り付け、外召合框に拘束部材を取り付けてもよい。また、一つのサッシに取り付ける拘束部材及び受け部材の個数はいくつであってもよい。たとえば、高さの低いサッシには一つだけ取り付けたり、より高さの高いサッシには三つ以上取り付けたりするなど、サッシの形状などに応じて自由に設定できる。さらに、この構成は、内障子と外障子の何れかが嵌め殺しとなっている片引きサッシにも適用できる。
第二に、内召合框2c及び外召合框3cの上下端部分の構成について詳述する。
まず、内障子2の内召合框2cの見込面の上端部には、図8に示すように、円形のビスホール22を形成してある。ビスホール22は、内召合框2cに対して上框2aを連結する際に、ネジ及びドライバーを挿入するための孔である。そして、このビスホール22を塞ぐようにして、アルミ製の遮断板21をネジ止めしてある。遮断板21は、略矩形であって、室外側の上部を切り欠いた形状である。そして遮断板21には上下二箇所にネジ孔212を形成してあり、このネジ孔212は上下に長い長孔となっていて、遮断板21の上下位置が調整可能となっている。遮断板21の上端部は、内召合框2cの上端よりも上側に突出しており、上枠1aの中間片41と室内側片43の間に位置している。また、遮断板21の内召合框2cに接する側の面は、上部が削られて薄くなっており、薄くなった分と同じ厚さの難燃シリコンのシートを貼り付けてある。このシートは、遮断板21の上側辺、室内側辺及び室外側辺から飛び出しており、この飛び出した部分がヒレ片211となっている。また、上枠1aの、障子閉鎖時の内召合框2cに対向する位置には、アルミ製の上側対向部材23を取り付けてある。上側対向部材23は、図10に示すように、上側対向片231と室内側対向片232からなる略L字形のものであり、上側対向片231にネジ孔233を形成してあって、上枠1aの中間片41と室内側片43の間にネジ止めしてある。そして、ヒレ片211は、上側については上側対向片231に摺接し、室内側については室内側対向片232に摺接し、室外側については中間片41に摺接する。
一方、内障子2の内召合框2cの見込面の下端部には、図9に示すように、上下に長い長円形のビスホール22を形成してある。ビスホール22は、内召合框2cに対して下框2bを連結する際に、ネジ及びドライバーを挿入するための孔である。そして、このビスホール22を塞ぐようにして、アルミ製の遮断板21をネジ止めしてある。遮断板21は、略矩形であって、室内側のレール4aを跨ぐように切り欠いた形状である。そして遮断板21には上下二箇所にネジ孔212を形成してあり、このネジ孔212は上下に長い長孔となっていて、遮断板21の上下位置が調整可能となっている。遮断板21の下端部は、内召合框2cの下端よりも下側に突出している。また、遮断板21の内召合框2cに接する側の面は、下部が削られて薄くなっており、薄くなった分と同じ厚さの難燃シリコンのシートを貼り付けてある。このシートは、遮断板21の下側辺及び室外側辺から飛び出しており、この飛び出した部分がヒレ片211となっている。また、下枠1bの、障子閉鎖時の内召合框2cに対向する位置には、アルミ製の下側対向部材を取り付けてある。下側対向部材は、内下側対向部材24と、外下側対向部材25の二部材からなるものであり、図11に示すように、何れの部材も上面には内障子2の閉鎖方向に向けて上向きに傾斜する傾斜面241,251を形成してあり、上下方向に貫通するネジ孔242,252を有している。内下側対向部材24は、室内側のレール4aの室内側の下枠1bの内周側面にネジ止めしてあり、外下側対向部材25は、室内側のレール4aの室外側から水平に延びる水平片35の上面にネジ止めしてある。そして、ヒレ片211は、下側については内下側対向部材24及び外下側対向部材25に摺接し、室外側については外障子3に摺接する。
このように遮断板21を設けることにより、ヒレ片211が上枠1a及び下枠1bに当接し、枠体1と内召合框2cの上下端との間の隙間を塞いで、風の侵入、音もれや水の流入を防ぐ。これにより、枠体1に風止板や止水板といった樹脂製部品を設ける必要がなくなり、それらが溶解することに起因する延焼のおそれがなくなる。また、遮断板21により内召合框2cのビスホール22を塞ぐことで、樹脂キャップが不要となる。そして遮断板21は、火炎や可燃性ガスが框の内部からビスホール22を通って室外から室内へ、またはその逆へ流れて延焼することを防ぐ。さらに、枠体1側に上側対向部材23及び下側対向部材(内下側対向部材24及び外下側対向部材25)を設けたことにより、遮断板21との間の隙間を小さくして、樹脂製のヒレ片211の量を最小限にとどめるとともに、室内外を確実に遮断して気密性・水密性を高めている。なお、内下側対向部材24及び外下側対向部材25については、上面に内障子2の閉鎖方向に向けて上向きに傾斜する傾斜面241,251を形成してあるので、ヒレ片211が滑らかに摺接する。また、遮断板21、上側対向部材23、内下側対向部材24及び外下側対向部材25は、何れもアルミ製であって、内障子2及び外障子3の框や枠体1と同じ素材からなるので、外観に統一感があり意匠性が良好である。
そして、外障子3の外召合框3cの見込面の上下端部にも、ビスホール22を形成してある。上端部のビスホール22は、図12に示すように円形のものであり、下端部のビスホール22は、図13に示すように上下に長い長円形のものである。そして、これらのビスホール22を塞ぐようにして、外召合框3cの見込面の上下端部のそれぞれにアルミ製の閉塞板26をネジ止めしてある。閉塞板26は、何れも略矩形のもので、上下二箇所にネジ孔を有している。閉塞板26は、遮断板のように外召合框3cの上下端から突出しておらず、ビスホール22を塞ぐだけのものである。このような閉塞板26により外召合框3cのビスホール22を塞ぐことで、樹脂キャップが不要となる。そして閉塞板26は、火炎や可燃性ガスが框の内部からビスホール22を通って室外から室内へ、またはその逆へ流れて延焼することを防ぐ。
なお、内召合框及び外召合框の上下端部分の構成については、上記の実施形態に限定されない。たとえば、遮断板の形状は、枠体の形状などに合わせて自由に設定できる。また、上側対向部材や下側対向部材は、必ずしも必要なものではなく、ヒレ片を枠体の内周側面に直接摺接させてもよい。さらに、遮断板は、内召合框の上下端のみならず、外召合框の上下端や、戸先框の上下端に設けてもよい。
第三に、下枠1b及び下框2b,3b部分の構成について詳述する。
図14に示すように、下枠1bは、室内側端に設けた室内側片34と、室内側のレール4aの室外側から水平に延びる水平片35とを有しており、室内側片34の室外側面と、水平片35の室外側端面には、不燃樹脂からなるタイト材33を設けてある。タイト材33は、それぞれ内障子2と外障子3の下框2b,3bの室内側面に摺接している。また、内障子2及び外障子3の下框2b,3bは、下側に向けて開口する溝2h,3hを有しており、溝2h,3hの上下方向中間部には仕切面2i,3iを形成してあり、仕切面2i,3iには孔を形成してあって、この孔に戸車31を納めてある。戸車31は、図7に示すように、内障子2と外障子3のそれぞれの左右両端部に設けてある。
そして、仕切面2i,3iの下面側には、引寄せ部材32を取り付けてある。引寄せ部材32は、図15に示すように、仕切面2i,3iに当接する設置面322と、設置面322から下方に延びる垂下面323とを有する略L字形のものである。設置面322にはネジ孔324を形成してあって、仕切面2i,3iにネジ止めしてある。また、垂下面323は見込方向に平行する面であって、垂下面323の下端は、室内側に向かって下向きに傾斜しており、レール4a,4bに対向する下端面を傾斜面部321とする。この引寄せ部材32は、内障子2と外障子3のそれぞれの左右方向中央部及び両端部(戸車31よりも内側)に取り付けてある。なお、傾斜面部321は戸車31の下端部(レール4a,4bに接触する点)よりも上側に位置しているので、引寄せ部材32は、通常時(図16(a)の状態)には内障子2及び外障子3の動作に影響しない。
このような引寄せ部材32を設けたサッシにおいては、火災時(図16(b)の状態)に戸車31が溶解すると、引寄せ部材32の傾斜面部321がレール4a,4bに当接して、内障子2及び外障子3が下方に移動することを防ぐ。そして、傾斜面部321は室内側に向かって下向きに傾斜しているから、下框2b,3bは傾斜面部321に案内されて室内側に引寄せられる。すると、下框2b,3bの室内側面が、下枠1bの室内側片34の室外側面及び水平片35の室外側端面に設けたタイト材33に密接する。これにより、枠体1と内障子2及び外障子3との間に隙間が生じることがなく、火炎や可燃性ガスの流通を確実に遮断して、延焼を防ぐことができる。また、タイト材33が不燃樹脂からなるものであるから、溶解して可燃性ガスを生じることもない。
なお、下枠及び下框部分の構成については、上記の実施形態に限定されない。たとえば、引寄せ部材は、室内側に向かって下向きに傾斜する傾斜面部を有するものであればよく、L字形のもののほか、ブロック状のものなどでもよい。また、傾斜面部が曲面状であってもよい。さらに、引寄せ部材の個数や取り付けの左右方向位置は、サッシの形状や大きさ及び戸車の位置などに合わせて自由に設定できる。
第四に、上枠1a及び上框2a,3a部分の構成について詳述する。
図17に示すように、内障子2の上端部には溝2gが設けてあって、溝2gの室外側の壁面の上端部に、樹脂製の内振れ止め部材44と、金属製の間隔保持具45を設けてある。内振れ止め部材44は、図20に示すように、略U字形であって、溝2gの室外側の壁面の上端部を挟むように取り付けてあり、上框2aの室外側に露出する部分を対向部441としてある。上框2aは、上枠1aの中間片41と室内側片43に挟まれているから、対向部441は、中間片41の室内側面に対向する。この内振れ止め部材44は、図7に示すように、内障子2の左右両端部に設けてある。一方、間隔保持具45は、図18に示すように、略平板形状で上框2aの室外側に露出する部分を挟込部451としてあって、上端部が室内側に突出している。挟込部451には見込方向に貫通するネジ孔452を有していて、上框2aの室外側面の上端部にネジ止めしてある。間隔保持具45の挟込部451も、内振れ止め部材44の対向部441と同様に、中間片41の室内側面に対向する。ただし、挟込部451は見込寸法を対向部441より小さくしてある。この間隔保持具45は、内障子2の左右方向中央部及び両端部(内振れ止め部材44よりも内側)に取り付けてある。なお、上枠1aの室内側片43の室外側面の下端部には、不燃樹脂からなるタイト材48を取り付けてあり、タイト材48は内障子2の上框2aの室内側面に摺接している。
また、外障子3の上端部の溝3g内には、樹脂製の外振れ止め部材46と、金属製の倒れ防止具47を設けてある。外振れ止め部材46は、図20に示すように、溝3gに嵌め込んで取り付けてあり、ガイドレール42の室内側面に対向する内側対向部461と、室外側面に対向する外側対向部462を有している。この外振れ止め部材46は、図7に示すように、外障子3の左右両端部に設けてある。一方、倒れ防止具47は、図19に示すように、略L字形であって、溝3gの底面に当接する支持部472と、支持部472から上向きに延びる当接部471からなり、支持部472には上下方向に貫通するネジ孔473を有していて、支持部472を溝3gの底面にネジ止めしてある。倒れ防止具47の当接部471は、ガイドレール42の室内側面に対向する。ただし、当接部471は、外振れ止め部材46の内側対向部461よりも、ガイドレール42の室内側面から離隔している。この倒れ防止具47は、外障子3の左右方向中央部及び両端部(外振れ止め部材46よりも内側)に取り付けてある。なお、上枠1aの中間片41の室外側面の下端部には、不燃樹脂からなるタイト材48を取り付けてあり、タイト材48は外障子3の上框3aの室内側面に摺接している。
このように構成したサッシにおいて、内障子2の間隔保持具45の挟込部451は、内振れ止め部材44の対向部441よりも見込寸法が小さいので、通常時(図16(a)の状態)には中間片41に接することはなく、内振れ止め部材44の対向部441が中間片41の室内側面に摺接する。また、外障子3の倒れ防止具47の当接部471は、外振れ止め部材46の内側対向部461よりもガイドレール42の室内側面から離隔しているので、こちらも通常時にはガイドレール42に接することはなく、外振れ止め部材46の内側対向部461及び外側対向部462がガイドレール42に摺接する。よって、通常時には、樹脂製の内振れ止め部材44及び外振れ止め部材46がアルミ製の上枠1aに接することで、傷が付くことや大きな衝突音が生じることを防いでおり、間隔保持具45及び倒れ防止具47は、通常時のサッシの機能及び動作にはまったく影響しない。そして、火災時(図16(b)の状態)には、炎熱にさらされて樹脂製の内振れ止め部材44及び外振れ止め部材46が溶解した場合でも、金属製の間隔保持具45及び倒れ防止具47が内障子2及び外障子3のガタツキの発生や脱落を防ぐ。すなわち、内障子2の内振れ止め部材44が溶解した際には、間隔保持具45の挟込部451が中間片41の室内側面に当接し、両上框2a,3aの間隔を保持することで、クレセント5の施錠時のガタツキを抑える。また、外障子3の外振れ止め部材46が溶解した際には、倒れ防止具47がガイドレール42の室内側面に当接し、外障子3が室外側に倒れることを防ぐ。さらに、間隔保持具45及び倒れ防止具47が内障子2及び外障子3の上框2a,3aの室外側への移動を規制するので、上框2a,3aの室内側面にタイト材48が当接した状態を維持することができる。そしてこのように上框2a,3aの見込方向の動きが規制されていれば、内障子2及び外障子3が脱落することもない。
なお、上枠及び上框部分の構成については、上記の実施形態に限定されない。たとえば、内振れ止め部材、間隔保持具、外振れ止め部材及び倒れ防止具は、上記の要件を満たすものであれば、何れも、形状や上框への取付方法などはどのようなものであってもよい。また、内振れ止め部材、間隔保持具、外振れ止め部材及び倒れ防止具の個数や取り付けの左右方向位置は、サッシの形状や大きさなどに合わせて自由に設定できる。
第五に、竪枠1c及び戸先框2d,3d部分の構成について詳述する。
図21に示すように、枠体1の竪枠1cの内周側面には、上下に延びる突条51を形成してある。突条51は、障子の戸先側の見込面に対向する位置に設けてあり、図21に示す右側の竪枠1cにおいては、内障子2の戸先框2dの見込面に対向している。左側の竪枠1cにおいては、図6に示すように、外障子3の戸先框3dの見込面に対向するように、突条51を設けてある。以下、右側の竪枠1c及び内障子2の戸先部分について説明するが、左側の竪枠1c及び外障子3についても同様である。
内障子2の戸先框2dの見込面には、竪枠1cの突条51を呑み込む溝2jを形成してある。そして、溝2j内に、樹脂製の引寄せ具52(図23)と、金属製の外れ止め具53(図21)とを設けてある。外れ止め具53は、図22に示すように、上面視して略L字形であり、溝2jの底面に当接する設置部532と、設置部532の室内側端から右側に向けて延びる係止面531とを備える。係止面531は、右側方向(内障子2の閉鎖方向)に向かって室内側向きに傾斜しており、内障子2を閉鎖した際には突条51の室内側面に対向する。また、設置部532の上下方向中央部には、左右方向に貫通するネジ孔533を設けてあり、このネジ孔533にネジを挿入して、戸先框2dにネジ止めしてある。一方、引寄せ具52は、外れ止め具53と略同一の形状で、設置部522と、当接面521とを備えており、当接面521は、右側方向(内障子2の閉鎖方向)に向かって室内側向きに傾斜している。ただし、図24に示すように、当接面521は、外れ止め具53の係止面531よりも室外側に位置している。また、ネジ孔は有しておらず、戸先框2dに接着してある。なお、図7に示すように、引寄せ具52及び外れ止め具53は、戸先框2dにそれぞれ三個ずつ取り付けてある。何れも、戸先框2dの上下方向中央部と、上部及び下部に取り付けてあるが、上側の引寄せ具52は上側の外れ止め具53よりも下側に、下側の引寄せ具52は下側の外れ止め具53よりも上側に位置している。また、戸先框2dの溝2jの底面には、引寄せ具52及び外れ止め具53を取り付けた部分を除いて、耐火材54を取り付けてある。この耐火材54は、エポキシ系の素材からなり、約200℃で発泡して厚さ方向(取付面に対して垂直方向)に膨張するものである。さらに、外れ止め具53の設置部532の表面にも、同じ耐火材54を取り付けてある。なお、竪枠1cの室内側端には室内側片55を設けてあり、室内側片55の室外側面に、不燃樹脂からなるタイト材56を取り付けてある。内障子2を閉鎖すると、タイト材56が戸先框2dの室内側面に当接する。
このように構成したサッシにおいては、通常時は、障子(内障子2及び外障子3)を開放した状態から閉鎖した際に、樹脂製の引寄せ具52の当接面521が竪枠1cの突条51に当接して障子が室内側に引寄せられ、ガタツキの発生を防ぐとともに、戸先框2dの室内側面にタイト材56を当接させて隙間が生じることを防ぐ。また、樹脂製の引寄せ具52が竪枠1cに接触することで、傷が付くことや大きな衝突音が生じることを防いでいる。そして、火災時にサッシが炎熱にさらされ、樹脂製の引寄せ具52が溶解した場合は、障子を閉鎖した状態において、金属製の外れ止め具53の係止面531が竪枠1cの突条51の室内側面に当接して、障子を室内側に引寄せかつタイト材56が戸先框2dに当接した状態を維持し、ガタツキや隙間の発生を防ぐ。そしてこのように障子の戸先の見込方向の動きが規制されていれば、障子が枠体1から外れることもない。なお、引寄せ具52の当接面521は、外れ止め具53の係止面531よりも室外側に位置しているので、通常時は引寄せ具52が竪枠1cの突条51に接し、外れ止め具53は突条51に接することがない。よって、外れ止め具53は、通常時のサッシの機能及び動作にはまったく影響しない。また、火災時においては、戸先框2d,3dに取り付けた耐火材54が発泡して竪枠1cに当接するので、より確実に隙間が塞がれる。
なお、竪枠及び戸先框部分の構成については、上記の実施形態に限定されない。たとえば、引寄せ具及び外れ止め具は、上記の要件を満たすものであれば、何れも、形状や戸先框への取付方法などはどのようなものであってもよい。また、引寄せ具及び外れ止め具の個数や取り付けの上下方向位置は、サッシの形状や大きさなどに合わせて自由に設定できる。
以上のように、本実施形態のサッシは、内召合框と外召合框の対向面部分、内召合框及び外召合框の上下端部分、下枠及び下框部分、上枠及び上框部分、竪枠及び戸先框部分の各部分に、火災時において障子同士又は障子と枠体との間に隙間が生じることを防ぐための構造を備えている。すなわち、火災時においては、炎熱により障子の各框に伸びや捩れが生じ得るとともに、各所に設けた樹脂製の部品(下框の戸車、上框の振れ止め部材及び戸先框の引寄せ具)が溶解してしまう。その際、内障子の内召合框と外障子の外召合框は、クレセントと拘束部材により室内外方向に確実に拘束されるので、内障子と外障子の間に隙間が生じない。また、下框に設けた引寄せ部材により、障子が下方に移動することを防ぎ、かつ障子の下部を室内側に引寄せる。さらに、内障子と外障子の両上框の間に上枠の中間片が位置していて、内障子の上框に設けた間隔保持具が中間片に当接することより、両上框の間隔が保持されてクレセントの施常状態におけるガタツキを抑える。また、外障子の上框に設けた倒れ防止具が上枠のガイドレールに当接することにより、障子の上部が室外側へ移動することを防ぐ。なお、下框の引寄せ部材により障子の下方への移動を防ぐことで、上框が上枠から外れることを防ぎ、間隔保持具及び倒れ防止具を確実に上枠に当接させている。さらに、戸先框に設けた外れ止め具により、障子の戸先部が室内側に引寄せられた状態を維持する。そして、上枠、下枠及び竪枠には、それぞれ障子の各框の室内側面に対向する位置に不燃樹脂からなるタイト材を設けてあり、上述のとおり室内側に引寄せられた各框がタイト材と密接して、枠体の四周において障子との間に隙間が生じることを防ぐ。なお、このタイト材は障子の各框と枠体との間に位置するものであればよく、障子と枠体のどちらに取り付けてあってもよい。また、遮断板及び閉塞板により障子の召合框のビスホールを塞いであるので、火炎や可燃性ガスが框の内部からビスホールを通って室内外に流れ出すことを防ぐ。このように、本実施形態のサッシは、枠体の四周及び内障子と外障子の召合部において隙間が生じることを防ぎ、さらに框の内部を経由して室内外が連通することを防いでいるので、火炎や可燃性ガスを確実に遮断して延焼を防ぐことができる。