JP5858280B2 - Rf電力増幅器 - Google Patents

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Description

本発明は、RF電力増幅器に関し、特にRF電力増幅器により生成されるRF送信出力信号の複数の送信RF周波数の複数の二次高調波の終端動作を共通の二次高調波周波数終端回路によって実行する際に、共通の二次高調波周波数終端回路の終端動作の終端インピーダンスを低減するのに有効な技術に関する。
移動通信を可能とする携帯電話はGSM方式と呼ばれる第2世代(2G)からW−CDMA方式やCDMA2000の第3世代(3G)に進歩しており、更に第3世代(3G)と将来登場する第4世代(4G)との間の方式としてのLTE方式に進歩している。尚、GSMは、Global System for Mobile Communicationの略である。また、W−CDMAは、Wideband Code Multiplex Accessの略である。更に、LTEは、Long Term Evolutionの略である。
第2世代(2G)のGSM方式には、GSM850とGSM900とDCS1800とPCS1900の4つの方式が含まれている。GSM850方式は主として北米で普及している方式であり、携帯電話端末から基地局への送信(アップリンク)には824〜849MHzの無線周波数(RF)が使用される。GSM900方式は主としてアジア、アフリカ、オセアニア、欧州、中南米で普及している方式であり、携帯電話端末から基地局への送信(アップリンク)には880〜915MHzの無線周波数(RF)が使用される。またDCS1800方式も主としてアジア、アフリカ、オセアニア、欧州、中南米で普及している方式であり、携帯電話端末から基地局への送信(アップリンク)には1710〜1785MHzの無線周波数(RF)が使用される。また更に、PCS1900方式は主として北米、中南米で普及している方式であり、携帯電話端末から基地局への送信(アップリンク)には1850〜1910MHzの無線周波数(RF)が使用される。一般に、GSM850方式とGSM900方式はGSM方式のローバンドと呼ばれ、DCS1800方式とPCS1900方式はGSM方式のハイバンドと呼ばれる。
3GPPによって作成されたLTE方式の技術仕様書によれば、極めて多数の周波数帯域(バンド)が利用可能とされている。その代表的なものは、バンド1とバンド2とバンド3とバンド5とバンド8とである。バンド1の携帯電話端末から基地局への送信(アップリンク)には、1920〜1980MHzの無線周波数(RF)が使用される。バンド2の携帯電話端末から基地局への送信(アップリンク)には、1850〜1910MHzの無線周波数(RF)が使用される。バンド3の携帯電話端末から基地局への送信(アップリンク)には、1710〜1785MHzの無線周波数(RF)が使用される。バンド5の携帯電話端末から基地局への送信(アップリンク)には、824〜915MHzの無線周波数(RF)が使用される。バンド8の携帯電話端末から基地局への送信(アップリンク)には、880〜915MHzの無線周波数(RF)が使用される。尚、3GPPは、Third Generation Partnership Projectの略である。
一方、下記特許文献1には、RF電力増幅器の効率を改善するためには二次高調波周波数の終端は重要な要素であることが記載され、単一の送信RF周波数を有するRF送信信号を増幅することが可能なシングルバンドRF電力増幅器では1個のインダクタと1個の容量の直列接続によって構成された偶数高調波共振器を増幅トランジスタの出力端子と接地電位の間に接続することが記載されている。この偶数高調波共振器は、二次高調波に対してゼロインピーダンスを示すとしている。
更に下記特許文献1には、複数の送信RF周波数を有するRF送信信号を増幅することが可能なデュアルバンドRF電力増幅器において、2個のインダクタと2個の容量と1個のスイッチを含む二次高調波周波数終端回路を増幅トランジスタの出力端子と接地電位の間に接続することが記載されている。二次高調波周波数終端回路の第1のインダクタと第1の容量の第1直列接続が増幅トランジスタの出力端子と接地電位の間に接続され、二次高調波周波数終端回路の第2のインダクタと第2の容量と1個のスイッチの第2直列接続が増幅トランジスタの出力端子と接地電位の間に接続される。ハイバンド周波数において、第1のインダクタと第1の容量とを含んだ第1直列接続がハイバンド周波数の二次高調波に対して低いローインピーダンスを示すとしている。ローバンド周波数において、1個のスイッチとしてのダイオードが導通状態とされ、第2のインダクタと第2の容量と1個のスイッチとを含んだ第2直列接続がローバンド周波数の二次高調波に対して低いローインピーダンスを示すとしている。
米国特許 第6、236、274 B1号 明細書
本発明者等は本発明に先立って、LTE方式のバンド1とバンド2とバンド3とバンド5とバンド8とのマルチバンドの送信RF周波数を有するRF送信信号を増幅することが可能なマルチバンドRF電力増幅器の開発に従事した。上述したLTE方式では、バンド1の送信RF周波数は1920〜1980MHであり、バンド2の送信RF周波数は1850〜1910MHzであり、バンド3の送信RF周波数は1710〜1785MHzである。更に、LTE方式では、バンド5の送信RF周波数は824〜849MHzであり、バンド8の送信RF周波数は880〜915MHzである。尚、本願明細書では、LTE方式のバンド1とバンド2とバンド3とをLTE方式のハイバンドと呼び、LTE方式のバンド5とバンド8とをLTE方式のローバンドと呼ぶ。
一方、本発明に先立って本発明者等は、LTE方式のバンド1とバンド2とバンド3とバンド5とバンド8のマルチバンドの送信RF周波数と、第2世代(2G)のGSM方式の各種方式の送信RF周波数とを比較した。その結果、下記の事項が判明した。
すなわち、LTE方式のバンド2の送信RF周波数(1850〜1910MHz)は、GSM方式のPCS1900方式の送信RF周波数(1850〜1910MHz)と一致している。また、LTE方式のバンド3の送信RF周波数(1710〜1785MHz)は、GSM方式のDCS1800方式の送信RF周波数(1710〜1785MHz)と一致している。更に、LTE方式のバンド5の送信RF周波数(824〜849MHz)は、GSM方式のGSM850方式の送信RF周波数(824〜849MHz)と一致している。また更に、LTE方式のバンド8の送信RF周波数(880〜915MHz)は、GSM方式のGSM900方式の送信RF周波数(880〜915MHz)と一致している。しかしながら、LTE方式のバンド1の送信RF周波数(1920〜1980MHz)は、GSM方式のいずれの方式にも存在しない極めて高い周波数である。
一方、本発明に先立って本発明者等は、LTE方式のバンド1とバンド2とバンド3とバンド5とバンド8のマルチバンドの各送信RF周波数の二次高調波を下記のように算出した。
バンド1の二次高調波:3840〜3960MHz
バンド2の二次高調波:3700〜3820MHz
バンド3の二次高調波:3420〜3570MHz
バンド5の二次高調波:1648〜1698MHz
バンド8の二次高調波:1760〜1830MHz
一方、本発明に先立った本発明者等によるマルチバンドRF電力増幅器の開発において、第1パス上の第1多段RF増幅回路と第2パス上の第2多段RF増幅回路とを具備するデュアルアンプ・アーキテクチャーが採用されることとなった。
すなわち、第1パス上の第1多段RF増幅回路がLTE方式のバンド1とバンド2とバンド3のLTE方式のハイバンドの送信RF周波数(1710〜1980MHz)を有するハイバンド送信周波数の増幅を実行する一方、第2パス上の第2多段RF増幅回路がLTE方式のバンド5とバンド8のLTE方式のローバンドの送信RF周波数(824〜915MHz)を有するローバンド送信周波数の増幅を実行するものである。従って、第1パス上の第1多段RF増幅回路がLTE方式のバンド1とバンド2とバンド3のLTE方式のハイバンドであるトリプルバンド送信RF周波数を有するハイバンド送信周波数の増幅を実行する一方、第2パス上の第2多段RF増幅回路がLTE方式のバンド5とバンド8のLTE方式のローバンドであるデュアルバンド送信RF周波数を有するローバンド送信周波数の増幅を実行するものである。
一方、第1パス上の第1多段RF増幅回路に必要な第1の二次高調波周波数終端回路は上述したトリプルバンド送信RF周波数の二次高調波の終端動作を実行する必要がある一方、第2パス上の第2多段RF増幅回路に必要な第2の二次高調波周波数終端回路も上述したデュアルバンド送信RF周波数の二次高調波の終端動作を実行する必要がある。
第1の二次高調波周波数終端回路が上述のトリプルバンド送信RF周波数の二次高調波の終端動作を実行するために、上記特許文献1に記載された複数の直列接続を具備する二次高調波周波数終端回路を使用することが本発明に先立って本発明者等によって検討された。しかし、この方式を採用した場合には、3系統の直列接続が第1の二次高調波周波数終端回路に必要となり、第1の二次高調波周波数終端回路の受動部品の部品数が増大すると言う問題が、本発明に先立った本発明者等による検討によって明らかとされた。更に、この方式を採用した場合には、二次高調波周波数終端回路に含まれた1個のスイッチに起因する挿入損失が無視されることができず、電力付加効率(PAE:Power Added Efficiency)が低下すると言う問題も、本発明に先立った本発明者等による検討によって明らかとされた。
従って、これらの問題を解消するために、第1の二次高調波周波数終端回路が上述のトリプルバンド送信RF周波数の二次高調波の終端動作を実行するために、二次高調波周波数終端回路を第1のインダクタと第1の容量とを含んだ第1直列接続のみによって構成する方式が、本発明に先立って本発明者等によって検討された。しかし、この方式を採用した場合には、二次高調波周波数終端回路を構成する第1直列接続は、上述したLTE方式のバンド1とバンド2とバンド3とのトリプルバンドの送信RF周波数の全ての二次高調波の終端動作を実行する必要がある。
従って、二次高調波周波数終端回路を構成する第1直列接続は、バンド3の二次高調波の最低周波数3420MHzからバンド1の二次高調波の最高周波数3960MHzまでの540MHz(=3960MHz−3420MHz)と言う極めて広い周波数帯域を持つ全ての二次高調波の終端動作を実行する必要がある。一方、上述したLTE方式のバンド5とバンド8とのデュアルバンドの送信RF周波数の全ての二次高調波の周波数帯域は、バンド5の二次高調波の最低周波数1648MHzからバンド8の二次高調波の最高周波数1824MHzまでの170MHz(=1824MHz−1648MHz)と比較的狭い周波数帯域である。
しかし、本発明に先立った本発明者等による検討によって、バンド3の二次高調波の最低周波数3420MHzからバンド1の二次高調波の最高周波数3960MHzまでの540MHzと言う極めて広い周波数帯域を持つ全ての二次高調波の終端動作を実行する際に、終端動作の終端インピーダンスを十分に低い値に設定することが困難であると言う問題が明らかとされた。二次高調波周波数終端回路の終端動作の終端インピーダンスが高いと言うことによって、二次高調波周波数を十分減衰することが不可能となるものである。
一方、それとは反対に、本発明に先立った本発明者等による検討によって、二次高調波周波数終端回路の終端動作の終端インピーダンスが過度に低い場合には、電力付加効率(PAE)の特性は良好であるが、隣接チャネル漏洩レシオ(ACLR:Adjacent Channel Leakage Ratio)と呼ばれる歪み特性が劣化すると言う問題が明らかとされた。
本発明は、以上のような本発明に先立った本発明者等による検討の結果、なされたものである。
従って、本発明の目的とするところは、RF電力増幅器により生成されるRF送信出力信号の複数の送信RF周波数の複数の二次高調波の終端動作を共通の二次高調波周波数終端回路によって実行する際に、共通の二次高調波周波数終端回路の終端動作の終端インピーダンスを低減することにある。
また本発明の他の目的とするところは、RF電力増幅器により生成されるRF送信出力信号の複数の送信RF周波数の複数の二次高調波の終端動作を共通の二次高調波周波数終端回路によって実行する際に、電力付加効率(PAE)と隣接チャネル漏洩レシオ(ACLR)の両特性を良好とすることにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
本願において開示される発明のうちの代表的なものについて簡単に説明すれば下記のとおりである。
すなわち、本発明の代表的な実施の形態は、RF増幅回路(100)と、二次高調波終端回路(102)とを具備するRF電力増幅器である。
前記RF増幅回路(100)の入力端子に複数のRF周波数帯域を有するRF入力信号が供給されることによって、前記RF増幅回路(100)は前記RF入力信号の電力増幅を実行する。
前記複数のRF周波数帯域は、所定の周波数帯域を有する第1周波数帯域(バンド3)と、前記所定の周波数帯域よりも高い周波数の周波数帯域を有する第2周波数帯域(バンド1)とを少なくとも含む。
前記二次高調波終端回路(102)は、前記RF増幅回路(100)の出力端子と接地電位(GND)との間に直列接続された容量(C5)とインダクタ(L3)とを含む。
前記二次高調波終端回路(102)の前記容量(C5)の容量値と前記インダクタ(L3)のインダクタンス値によって決定される直列共振周波数(f)は、前記第1周波数帯域の実質的に2倍の周波数を有する第1の二次高調波成分の最低周波数(3420Hz)と前記第2周波数帯域の実質的に2倍の周波数を有する第2の二次高調波成分の最高周波数(3960Hz)との間の設定周波数(3495Hz)に設定される。
前記最低周波数での前記二次高調波終端回路(102)の前記容量(C5)と前記インダクタ(L3)の第1直列接続インピーダンス(Z2HD_L)と前記最高周波数での前記二次高調波終端回路(102)の前記容量(C5)と前記インダクタ(L3)の第2直列接続インピーダンス(Z2HD_H)が所定の値よりも小さくなるように、前記容量(C5)の前記容量値の大きさが設定されたことを特徴とする(図1参照)。
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、本発明によれば、RF電力増幅器により生成されるRF送信出力信号の複数の送信RF周波数の複数の二次高調波の終端動作を共通の二次高調波周波数終端回路によって実行する際に、共通の二次高調波周波数終端回路の終端動作の終端インピーダンスを低減することができる。
図1は、本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器の基本的な構成を示す図である。 図2は、図1に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器の具体的な構成を示す図である。 図3は、図1と図2とに示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器の二次高調波周波数終端回路102の直列共振インピーダンスと二次高調波周波数終端回路102の容量C5の容量値との関係を示す図である。 図4は、図1と図2とに示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器の二次高調波周波数終端回路102の特性を説明するスミスチャートを示す図である。 図5は、本発明の実施の形態2によるRF電力増幅器の基本的な構成を示す図である。
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面の参照符号は、それが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
〔1〕本発明の代表的な実施の形態は、RF増幅回路(100)と、二次高調波終端回路(102)とを具備するRF電力増幅器である。
前記RF増幅回路(100)の入力端子に複数のRF周波数帯域を有するRF入力信号が供給されることによって、前記RF増幅回路(100)は前記RF入力信号の電力増幅を実行する。
前記複数のRF周波数帯域は、所定の周波数帯域を有する第1周波数帯域(バンド3)と、前記所定の周波数帯域よりも高い周波数の周波数帯域を有する第2周波数帯域(バンド1)とを少なくとも含む。
前記二次高調波終端回路(102)は、前記RF増幅回路(100)の出力端子と接地電位(GND)との間に直列接続された容量(C5)とインダクタ(L3)とを含む。
前記二次高調波終端回路(102)の前記容量(C5)の容量値と前記インダクタ(L3)のインダクタンス値によって決定される直列共振周波数(f)は、前記第1周波数帯域の実質的に2倍の周波数を有する第1の二次高調波成分の最低周波数(3420Hz)と前記第2周波数帯域の実質的に2倍の周波数を有する第2の二次高調波成分の最高周波数(3960Hz)との間の設定周波数(3495Hz)に設定される。
前記最低周波数での前記二次高調波終端回路(102)の前記容量(C5)と前記インダクタ(L3)の第1直列接続インピーダンス(Z2HD_L)と前記最高周波数での前記二次高調波終端回路(102)の前記容量(C5)と前記インダクタ(L3)の第2直列接続インピーダンス(Z2HD_H)が所定の値よりも小さくなるように、前記容量(C5)の前記容量値の大きさが設定されたことを特徴とする(図1参照)。
前記実施の形態によれば、RF電力増幅器により生成されるRF送信出力信号の複数の送信RF周波数の複数の二次高調波の終端動作を共通の二次高調波周波数終端回路によって実行する際に、共通の二次高調波周波数終端回路の終端動作の終端インピーダンスを低減することができる。
好適な実施の形態によるRF電力増幅器は、出力整合回路(101)を更に具備する。
前記出力整合回路(101)の入力端子は前記RF増幅回路(100)の出力端子と接続され、前記出力整合回路(101)の出力端子はフロントエンドモジュールを介してアンテナと接続可能とされ、前記出力整合回路(101)は前記RF増幅回路(100)の前記出力端子のインピーダンスから前記フロントエンドモジュールのインピーダンスへのインピーダンス変換を実行する。
前記出力整合回路(101)は、フィルタインダクタ(L2)とフィルタ容量(C3)とを少なくとも含んだローパスフィルタ型出力整合回路である。
前記ローパスフィルタ型出力整合回路(101)は、前記RF増幅回路(100)の前記出力端子から生成される前記第2の二次高調波成分を前記接地電位(GND)にバイパスする機能を有することを特徴とするものである(図1参照)。
他の好適な実施の形態では、前記RF入力信号は、LTE方式の携帯電話端末から基地局への送信信号である。
前記所定の周波数帯域を有する前記第1周波数帯域は、LTE方式のバンド3である。
前記所定の周波数帯域よりも高い周波数の周波数帯域を有する前記第2周波数帯域は、LTE方式のバンド1である。
前記RF入力信号の前記複数のRF周波数帯域は、LTE方式のバンド2である周波数帯域を有する第3周波数帯域を更に含む。
前記出力整合回路(101)は、前記第3周波数帯域の実質的に2倍の周波数を有する第3の二次高調波成分の終端処理を実行することを特徴とするものである(図1参照)。
更に他の好適な実施の形態においては、前記二次高調波終端回路(102)の前記容量(C5)の前記容量値と前記インダクタ(L3)の前記インダクタンス値によって決定される前記直列共振周波数(f)は、前記第1の二次高調波成分の周波数帯域(3420〜3570Hz)の実質的に中間の周波数(3495MHz)を有する他の設定周波数に設定されたことを特徴とするものである(図1参照)。
より好適な実施の形態では、前記直列共振周波数(f)を前記他の設定周波数(3495MHz)に設定するための前記インダクタ(L3)の前記インダクタンス値よりも所定の大きさ(ΔL3)分大きなインダクタンスを、前記二次高調波終端回路(102)の前記インダクタ(L3)に使用したことを特徴とする(図1参照)。
他のより好適な実施の形態では、前記所定の大きさ(ΔL3)分大きなインダクタンスを、前記二次高調波終端回路(102)の前記インダクタ(L3)に使用したことによって、前記直列共振周波数(f)での前記二次高調波終端回路(102)の前記容量(C5)と前記インダクタ(L3)の直列共振インピーダンス(Z)は、スミスチャートの第1動作点(P)から第2動作点(P)に移動する。
前記第1動作点と前記第2動作点とは、それぞれ、前記スミスチャートで抵抗値が実質的にゼロの点(P)と、前記スミスチャートで抵抗値が実質的にゼロの定レジスタンス円と前記スミスチャートでリアクタンスが実質的にj4Ωの定リアクタンス円弧の交点と前記抵抗値が実質的にゼロの前記点との間に位置する動作点(P)であることを特徴とするものである(図4参照)。
更に他のより好適な実施の形態によるRF電力増幅器は、他のRF増幅回路(100_L)と、他の二次高調波終端回路(102_L)と、他の出力整合回路(101_L)を更に具備する。
前記他のRF増幅回路(100_L)の入力端子に他の複数のRF周波数帯域を有する他のRF入力信号が供給されることによって、前記他のRF増幅回路は前記他のRF入力信号の電力増幅を実行する。
前記複数のRF周波数帯域は、LTE方式のバンド5の周波数帯域とLTE方式のバンド8の周波数帯域とを含む。
前記他の二次高調波終端回路(102_L)は、前記他のRF増幅回路(100_L)の出力端子と前記接地電位(GND)との間に直列接続された他の容量(C5L)と他のインダクタ(L3L)とを含む。
前記他の出力整合回路(101_L)の入力端子は前記他のRF増幅回路(100_L)の前記出力端子と接続され、前記他の出力整合回路(101)の出力端子は前記アンテナと接続可能とされ、前記他の出力整合回路(101_L)は前記他のRF増幅回路(100_L)の前記出力端子のインピーダンスから前記アンテナのインピーダンスへのインピーダンス変換を実行することを特徴とするものである(図5参照)。
具体的な実施の形態では、前記他の出力整合回路(101_L)は、他のフィルタインダクタ(L2L)と他のフィルタ容量(C3L)とを少なくとも含んだ他のローパスフィルタ型出力整合回路であることを特徴とするものである(図5参照)。
2.実施の形態の詳細
次に、実施の形態について更に詳述する。尚、発明を実施するための最良の形態を説明するための全図において、前記の図と同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
[実施の形態1]
《RF電力増幅器の基本的な構成》
図1は、本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器の基本的な構成を示す図である。
図1に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器は、RF増幅回路100、負荷回路・出力整合回路101、二次高調波周波数終端回路102によって構成されている。
《RF増幅回路》
RF増幅回路100の入力端子InputにLTE方式のバンド1とバンド2とバンド3とを含むLTE方式のハイバンドであるトリプルバンド送信RF周波数を有するハイバンド送信周波数入力信号が供給され、RF増幅回路100はこのハイバンド送信周波数入力信号の電力増幅を実行する。
《負荷回路・出力整合回路》
負荷回路・出力整合回路101は、3個のインダクタL1、L2、L4と4個の容量C1、C2、C3、C4とを含んでいる。インダクタL1はRF増幅回路100の負荷としてのRFチョークコイルとして機能して、容量C1はインダクタL1の一端に供給される電源電圧Vccに含まれる電源リップル成分を減衰するためのデカップリング容量として機能する。
インダクタL4は、RF増幅回路100の出力端子とインダクタL1の他端とを接続する配線の寄生インダクタンスを示している。インダクタL2と寄生インダクタンスL4と2個の容量C2、C3は、ローパスフィルタ(LPF)型の出力整合回路を構成している。このLPF型の出力整合回路は、RF増幅回路100の数Ωの低い出力インピーダンスから図1のRF電力増幅器が搭載される携帯電話端末のアンテナの50Ωと接続されるフロントエンドモジュールへのインピーダンス変換を実行する。容量C4は、出力端子Outputにフロントエンドモジュールを介して接続される携帯電話端末のアンテナに電源電圧Vccの直流電圧が供給されないようにする一方、RF増幅回路100のRF増幅出力信号をこのアンテナに供給するための結合容量として機能する。
《二次高調波周波数終端回路》
二次高調波周波数終端回路102は、RF増幅回路100の出力端子と接地電位GNDとの間に直列接続された容量C5とインダクタL3とによって構成される。容量C5とインダクタL3とによって決定される直列共振周波数における低い直列共振インピーダンスによって、RF増幅回路100のRF増幅出力信号の二次高調波成分は接地電位GNDにバイパスされ、出力端子Outputに伝達される二次高調波出力成分を減衰することが可能となる。
二次高調波周波数終端回路102は、上述したLTE方式のバンド1とバンド2とバンド3とのトリプルバンドの送信RF周波数の全ての二次高調波の終端動作を実行する共通の二次高調波周波数終端回路として機能する。LTE方式のバンド1の送信RF周波数は1920〜1980MHで、LTE方式のバンド2の送信RF周波数は1850〜1910MHzで、LTE方式のバンド3の送信RF周波数は1710〜1785MHzである。従って、LTE方式のバンド1の二次高調波周波数は3840〜3960MHzで、LTE方式のバンド2の二次高調波周波数は3700〜3820MHzで、LTE方式のバンド3の二次高調波周波数は3420〜3570MHzである。
更に、二次高調波周波数終端回路102は、以下に説明する独特の構成によって、バンド3の二次高調波の最低周波数3420MHzからバンド1の二次高調波の最高周波数3960MHzまでの540MHzと言う極めて広い周波数帯域を持つ全ての二次高調波の終端動作を実行する際に、終端動作の終端インピーダンスを十分に低い値に設定することが可能なものである。
《RF電力増幅器の具体的な構成》
図2は、図1に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器の具体的な構成を示す図である。
図2に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器は、RFパワーモジュール配線基板200とマイクロウエーブモノリシック集積回路チップ(MMIC:Microwave Monolithic Integrated Circuit)201とによって構成されている。
《マイクロウエーブモノリシック集積回路チップ》
マイクロウエーブモノリシック集積回路チップ201は、多段増幅回路によって構成されたRF増幅回路100の最終段増幅素子としてのヘテロ接合バイポーラトランジスタQと二次高調波周波数終端回路102の容量C5とを含んでいる。例えば、容量C5は、半導体製造プロセスによってマイクロウエーブモノリシック集積回路チップ201に集積化された金属・絶縁体・金属(MIM:Metal Insulator Metal)の積層構造によって構成されている。
《RFパワーモジュール配線基板》
RFパワーモジュール配線基板200は、負荷回路・出力整合回路101の3個のインダクタL1、L2、L4と4個の容量C1、C2、C3、C4と、二次高調波周波数終端回路102のインダクタL3とを含んでいる。負荷回路・出力整合回路101の2個のインダクタL1、L2は表面実装部品(SMD:Surface Mount Device)であるチップインダクタによって構成され、負荷回路・出力整合回路101の4個の容量C1、C2、C3、C4は表面実装部品(SMD)であるチップコンデンサによって構成されている。また、2個のインダクタL3、L4は、マイクロウエーブモノリシック集積回路チップ201のパッドとRFパワーモジュール配線基板200のパッドとの間に接続されたボンディングワイヤの寄生インダクタンスによって構成されている。
《二次高調波周波数終端回路の詳細》
次に、図1と図2に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器の二次高調波周波数終端回路102に関して、詳細に説明する。
上述したように、二次高調波周波数終端回路102は、RF増幅回路100の出力端子と接地電位GNDとの間に直列接続された容量C5とインダクタL3とによって構成される。従って、容量C5とインダクタL3とによって決定される直列共振周波数fは、下記(1)式によって示される。
Figure 0005858280
従って、この直列共振周波数fに対応する直列共振角周波数ωは、下記(2)式によって示される。
Figure 0005858280
従って、上記(2)式からインダクタL3は、下記(3)式によって示される。
Figure 0005858280
その結果、容量C5とインダクタL3とによって決定される直列共振インピーダンスZは、下記(4)式によって示される。
Figure 0005858280
従って、上記(4)式から、直列共振角周波数ωと等しい角周波数ωに対応する周波数fにおいて、二次高調波周波数終端回路102の直列共振インピーダンスZは、ゼロとなることが理解される。
一方、バンド3の二次高調波の最低周波数3420MHzの周波数と角周波数とを、それぞれf2HD_Lとω2HD_Lとする。
一例として、二次高調波周波数終端回路102の容量C5とインダクタL3によって決定される直列共振周波数fを、LTE方式のバンド3の二次高調波周波数は3420〜3570MHzの中間周波数3495MHzとする。バンド3の二次高調波の最低周波数3420MHzの周波数f2HD_Lと二次高調波周波数終端回路102の3495MHzの直列共振周波数fとの間に、f2HD_L<fの関係が成立する。
従って、バンド3の二次高調波の最低周波数3420MHzの周波数f2HD_Lにおける二次高調波周波数終端回路102の容量C5とインダクタL3によって決定される直列共振インピーダンスZ2HD_Lは、下記(5)式によって示される。
Figure 0005858280
従って、上記(5)式で与えられるバンド3の二次高調波の最低周波数3420MHzの周波数f2HD_Lにおける二次高調波周波数終端回路102の直列共振インピーダンスZ2HD_Lが、例えば、0.5Ωの所定のインピーダンス以下となるように、二次高調波周波数終端回路102の容量C5の容量値を十分大きな値に設定する。その結果、容量C5の容量値を十分大きな値に設定することによって、上記(3)式より二次高調波周波数終端回路102のインダクタL3のインダクタンス値は十分小さな値に設定されるものである。
一方、バンド1の二次高調波の最高周波数3960MHzの周波数と角周波数とを、それぞれf2HD_Hとω2HD_Hとする。従って、バンド1の二次高調波の最高周波数3960MHzの周波数f2HD_Hにおける二次高調波周波数終端回路102の容量C5とインダクタL3によって決定される直列共振インピーダンスZ2HD_Hは、下記(6)式によって示される。
Figure 0005858280
従って、上記(6)式で与えられるバンド1の二次高調波の最高周波数3960MHzの周波数f2HD_Hにおける二次高調波周波数終端回路102の直列共振インピーダンスZ2HD_Hが、例えば、0.5Ωの所定のインピーダンス以下となるように、二次高調波周波数終端回路102の容量C5の容量値を十分大きな値に設定する。尚、容量C5の容量値を十分大きな値に設定した結果、上記(3)式より、二次高調波周波数終端回路102のインダクタL3のインダクタンス値は十分小さな値に設定されるものである。
《二次高調波周波数終端回路の直列共振インピーダンスの容量値依存性》
図3は、図1と図2とに示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器の二次高調波周波数終端回路102の直列共振インピーダンスと二次高調波周波数終端回路102の容量C5の容量値との関係を示す図である。
図3の縦軸は二次高調波周波数終端回路102の直列共振インピーダンスの値を示す一方、図3の横軸は二次高調波の周波数を示している。
図3に示したように、周波数3.5GHzに近い周波数3495MHzの直列共振周波数fにおいて、二次高調波周波数終端回路102の直列共振インピーダンスの値は略ゼロオームとなっている。周波数3.5GHzに近似している周波数3495MHzの直列共振周波数fは、二次高調波周波数終端回路102の容量C5とインダクタL3とによって決定され、LTE方式のバンド3の二次高調波周波数は3420〜3570MHzの中間周波数3495MHzとされている。
図3に示したように、二次高調波周波数終端回路102の容量C5の容量値が6pF、8pF、10pF、12pFと小さな場合には、周波数3495MHzの直列共振周波数fを中心とした広い周波数帯域で、二次高調波周波数終端回路102の直列共振インピーダンスの値は十分に低い値にならない。
しかし、図3に示したように、二次高調波周波数終端回路102の容量C5の容量値が14pFと大きな場合には、周波数3495MHzの直列共振周波数fを中心とした広い周波数帯域において、二次高調波周波数終端回路102の直列共振インピーダンスの値は十分に低い値に設定することが可能となる。
《LPF型出力整合回路による二次高調波の減衰》
図1と図2に示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器の負荷回路・出力整合回路101のインダクタL2と寄生インダクタンスL4と2個の容量C2、C3は、ローパスフィルタ(LPF)型の出力整合回路を構成している。
このLPF型出力整合回路はRF増幅回路100の数Ωの低出力インピーダンスから図1のRF電力増幅器が搭載される携帯電話端末のアンテナの50Ωと接続されるフロントエンドモジュールへのインピーダンス変換を実行することで出力整合動作を実行するとともに、ローパスフィルタ(LPF)のフィルタ特性によって二次高調波の減衰動作を実行する。すなわち、このLPF型出力整合回路のカットオフ周波数は、LTE方式のバンド3の二次高調波周波数の3420〜3570MHzの高い方の周波数3570MHzとバンド2の二次高調波周波数3700〜3820MHzの低い方の周波数3700MHzとの中間値に設定されている。従って、このLPF型出力整合回路は、RF増幅回路100の出力信号に含まれるバンド2の二次高調波周波数3700〜3820MHzの成分とバンド1の二次高調波周波数3840〜3960MHzの成分とを接地電位GNDにバイパスする機能も有している。その結果、このLPF型出力整合回路によって、出力端子Outputに伝達されるバンド1とバンド2の二次高調波出力成分を減衰することが可能となる。
《ACLR特性の改善》
図4は、図1と図2とに示した本発明の実施の形態1によるRF電力増幅器の二次高調波周波数終端回路102の特性を説明するスミスチャートを示す図である。
図4に示したスミスチャートで抵抗値がゼロ(0)の点と抵抗値が無限大(∞)の点とを結ぶ直線の中間点での正規化(1)の点が4Ωとなっている。通常のスミスチャートでは抵抗値がゼロ(0)の点と抵抗値が無限大(∞)の点とを結ぶ直線の中間点での正規化(1)の点が50Ωとなっているのと、図4に示したスミスチャートは相違しているので注意されたい。
図4に示したスミスチャートの動作点Pは、上記(4)式に従って直列共振角周波数ωと等しい角周波数ωに対応する周波数fにおいて、二次高調波周波数終端回路102の直列共振インピーダンスZがゼロとなる動作点を示している。
本発明者等による検討によって、図4に示したスミスチャートの動作点Pでは、電力付加効率(PAE)は良好であるが、歪み特性を示す隣接チャネル漏洩レシオ(ACLR)の特性が良好でないことが明らかとされたものである。W−CDMA方式、CDMA2000方式またはLTE方式等を採用する携帯電話端末に搭載されるRF電力増幅器は、基地局に送信される送信信号の転送レートを向上するために、位相変調信号と振幅変調信号とを送信する必要がある。従って、この種のRF電力増幅器は高い線形性を有する線形増幅動作を実行する必要があるので、歪み特性を示した隣接チャネル漏洩レシオ(ACLR)の特性が良好である必要がある。
一方、第2世代(2G)であるGSM方式においては、EDGE方式でなければ、位相変調信号のみを送信すれば良く、振幅変調信号を送信する必要が無い。尚、EDGEは、Enhanced Data rate for GSM Evolutionの略である。その結果、通常のGSM方式を採用する携帯電話端末に搭載されるRF電力増幅器は位相変調信号のみを送信するために、非線型特性を有する飽和増幅動作を実行する。従って、飽和増幅動作によって通常のGSM方式を採用する携帯電話端末に搭載されるRF電力増幅器は、良好な電力付加効率(PAE)の特性を有するものである。更にこの種のRF電力増幅器には、歪み特性を示す隣接チャネル漏洩レシオ(ACLR)の特性が良好であることが必要とされないものである。
一方、W−CDMA方式、CDMA2000方式またはLTE方式を採用する携帯電話端末に搭載されるRF電力増幅器には、電力付加効率(PAE)と隣接チャネル漏洩レシオ(ACLR)の両特性を良好とすることが必要とされる。
本発明者等による検討によって、次の設計変更を行うことによって電力付加効率(PAE)と隣接チャネル漏洩レシオ(ACLR)の両特性を良好とすることが可能なことが明らかとされたものである。
すなわち、図4に示したスミスチャートの動作点Pから出発して、二次高調波周波数終端回路102のインダクタL3のインダクタンス値を上述した設計値よりも所定値ΔL3分増加するものである。その結果、所定値ΔL3分増加の後に、二次高調波周波数終端回路102のインピーダンスは動作点Pにシフトしている。動作点Pから動作点Pへのシフト量は、jωΔL3であり、図4に示した例では、jωΔL3はj2Ωである。従って、動作点Pは、図4に示したスミスチャートでの0.5の定リアクタンス円弧と抵抗値がゼロ(0)の定レジスタンス円との交点である。
本発明者等による検討によって、jωΔL3がj4Ωとなる図4に示したスミスチャートでの1.0の定リアクタンス円弧と抵抗値がゼロ(0)の定レジスタンス円との交点である動作点Pと動作点Pとの間で、電力付加効率(PAE)と隣接チャネル漏洩レシオ(ACLR)との両特性を良好とすることが可能なことが明らかとされた。
更に本発明者等による検討によって、二次高調波周波数終端回路102のインピーダンスである移動先の動作点が図4に示したスミスチャートで抵抗値がゼロ(0)の点と無限大(∞)の点とを結んだ直線よりも下の領域に存在する場合には、動作点Pよりも隣接チャネル漏洩レシオ(ACLR)の特性が劣化することが確認されたものである。
尚、二次高調波周波数終端回路102のインダクタL3のインダクタンス値を上述した設計値よりも所定値ΔL3分の増加によって、上記(1)式に従って二次高調波周波数終端回路102の共振周波数fが当初の周波数値から減少する。しかし、上述したようにインダクタL3のインダクタンス値の増加分ΔL3によるインピーダンスシフト量jωΔL3は、最大でもj4Ωと小さなものである。
一方、本発明の実施の形態1においては、上述したように二次高調波周波数終端回路102にて容量値が十分大きな値に設定された容量C5とLPF型出力整合回路との作用によってバンド3の二次高調波の最低周波数3420MHzからバンド1の二次高調波の最高周波数3960MHzまでの540MHzと言う極めて広い周波数帯域において、終端動作の終端インピーダンスを十分に低くすることが可能である。従って、上述したインダクタL3のインダクタンス値の小さな増加分ΔL3による小さなインピーダンスシフト量jωΔL3によって、本発明の実施の形態1による二次高調波周波数終端回路102の広い周波数帯域の二次高調波の終端動作の低インピーダンス特性が損なわれるものではない。
[実施の形態2]
《RF電力増幅器の基本的な構成》
図5は、本発明の実施の形態2によるRF電力増幅器の基本的な構成を示す図である。
図5に示す本発明の実施の形態2によるRF電力増幅器は、第1RF増幅回路100_H、第1負荷回路・出力整合回路101_H、第1二次高調波周波数終端回路102_H、第2RF増幅回路100_L、第2負荷回路・出力整合回路101_L、第2二次高調波周波数終端回路102_Lによって構成されている。
第1RF増幅回路100_Hと第1負荷回路・出力整合回路101_Hと第1二次高調波周波数終端回路102_Hとは、LTE方式のバンド1とバンド2とバンド3のLTE方式のハイバンドの送信RF周波数(1710〜1980MHz)を有するハイバンド送信周波数の増幅を実行する第1パスを構成する。
第2RF増幅回路100_Lと第2負荷回路・出力整合回路101_Lと第2二次高調波周波数終端回路102_Lとは、LTE方式のバンド5とバンド8のLTE方式のローバンドの送信RF周波数(824〜915MHz)を有するローバンド送信周波数の増幅を実行する第2パスを構成する。従って、第1パスと第2パスとによって、マルチバンドRF電力増幅器としてのデュアルアンプ・アーキテクチャーが構成される。
《第1RF増幅回路》
第1RF増幅回路100_Hの入力端子Input_HにLTE方式のバンド1とバンド2とバンド3を含むLTE方式のハイバンドであるトリプルバンド送信RF周波数を有するハイバンド送信周波数入力信号が供給され、第1RF増幅回路100_Hはこのハイバンド送信周波数入力信号の電力増幅を実行する。
《第1負荷回路・出力整合回路》
第1負荷回路・出力整合回路101_Hは、3個のインダクタL1H、L2H、L4Hと4個の容量C1H、C2H、C3H、C4Hを含んでいる。インダクタL1Hは第1RF増幅回路100_Hの負荷としてのRFチョークコイルとして機能して、容量C1HはインダクタL1Hの一端に供給される電源電圧Vccに含まれる電源リップル成分を減衰するためのデカップリング容量として機能する。
インダクタL4Hは、第1RF増幅回路100_Hの出力端子とインダクタL1Hの他端を接続する配線の寄生インダクタンスを示している。インダクタL2Hと寄生インダクタンスL4Hと2個の容量C2H、C3Hは、第1ローパスフィルタ(LPF)型の出力整合回路を構成している。この第1LPF型の出力整合回路は、第1RF増幅回路100_Hの数Ωの低い出力インピーダンスから携帯電話端末のアンテナの50Ωに接続されるフロントエンドモジュールへのインピーダンス変換を実行する。容量C4Hは出力端子Output_Hに接続される携帯電話端末のアンテナに電源電圧Vccの直流電圧が供給されないようにする一方、第1RF増幅回路100_Hの第1RF増幅出力信号をこのアンテナに供給するための結合容量として機能する。
《第1二次高調波周波数終端回路》
第1二次高調波周波数終端回路102_Hは、第1RF増幅回路100_Hの出力端子と接地電位GNDとの間に直列接続された容量C5HとインダクタL3Hとによって構成される。容量C5HとインダクタL3Hによって決定される直列共振周波数における低い直列共振インピーダンスによって、第1RF増幅回路100_Hの第1RF増幅出力信号の二次高調波成分は接地電位GNDにバイパスされ、第1出力端子Output_Hに伝達される二次高調波出力成分を減衰することが可能となる。
第1二次高調波周波数終端回路102_Hは、上述したLTE方式のバンド1とバンド2とバンド3のトリプルバンドの送信RF周波数の全ての二次高調波の終端動作を実行する共通の第1二次高調波周波数終端回路として機能する。LTE方式のバンド1の送信RF周波数は1920〜1980MHで、LTE方式のバンド2の送信RF周波数は1850〜1910MHzで、LTE方式のバンド3の送信RF周波数は1710〜1785MHzである。従って、LTE方式のバンド1の二次高調波周波数は3840〜3960MHzで、LTE方式のバンド2の二次高調波周波数は3700〜3820MHzで、LTE方式のバンド3の二次高調波周波数は3420〜3570MHzである。
更に、第1二次高調波周波数終端回路102_Hは、上述した本発明の実施の形態1の二次高調波周波数終端回路102と全く同一の構成となっている。従って、第1二次高調波周波数終端回路102_Hを使用することによって、バンド3の二次高調波の最低周波数3420MHzからバンド1の二次高調波の最高周波数3960MHzまでの540MHzと言う極めて広い周波数帯域を持つ全ての二次高調波の終端動作を実行する際に、終端動作の終端インピーダンスを十分に低い値に設定可能なものである。
《第2RF増幅回路》
第2RF増幅回路100_Lの入力端子Input_LにLTE方式のバンド5とバンド8を含むLTE方式のローバンドであるデュアルバンド送信RF周波数を有するローバンド送信周波数入力信号が供給され、第2RF増幅回路100_Lはこのローバンド送信周波数入力信号の電力増幅を実行する。
《第2負荷回路・出力整合回路》
第2負荷回路・出力整合回路101_Lは、3個のインダクタL1L、L2L、L4Lと4個の容量C1L、C2L、C3L、C4Lを含んでいる。インダクタL1Lは第2RF増幅回路100_Lの負荷としてのRFチョークコイルとして機能して、容量C1LはインダクタL1Lの一端に供給される電源電圧Vccに含まれる電源リップル成分を減衰するためのデカップリング容量として機能する。
インダクタL4Lは、第2RF増幅回路100_Lの出力端子とインダクタL1Lの他端を接続する配線の寄生インダクタンスを示している。インダクタL2Lと寄生インダクタンスL4Lと2個の容量C2L、C3Lは、第2ローパスフィルタ(LPF)型の出力整合回路を構成している。この第2LPF型の出力整合回路は、第2RF増幅回路100_Lの数Ωの低い出力インピーダンスから携帯電話端末のアンテナの50Ωに接続されるフロントエンドモジュールへのインピーダンス変換を実行する。容量C4Lは出力端子Output_Hに接続される携帯電話端末のアンテナに電源電圧Vccの直流電圧が供給されないようにする一方、第2RF増幅回路100_Lの第2RF増幅出力信号をこのアンテナに供給するための結合容量として機能する。
《第2二次高調波周波数終端回路》
第2二次高調波周波数終端回路102_Lは、第2RF増幅回路100_Lの出力端子と接地電位GNDとの間に直列接続された容量C5LとインダクタL3Lとによって構成される。容量C5LとインダクタL3Lによって決定される直列共振周波数における低い直列共振インピーダンスによって、第2RF増幅回路100_Lの第2RF増幅出力信号の二次高調波成分は接地電位GNDにバイパスされ、第2出力端子Output_Lに伝達される二次高調波出力成分を減衰することが可能となる。
第2二次高調波周波数終端回路102_Lは、上述したLTE方式のバンド5とバンド8のデュアルバンドの送信RF周波数の全ての二次高調波の終端動作を実行する共通の第2二次高調波周波数終端回路として機能する。LTE方式のバンド5の送信RF周波数は824〜849MHで、LTE方式のバンド8の送信RF周波数は880〜915MHzである。従って、LTE方式のバンド5の二次高調波周波数は1648〜1698MHzで、LTE方式のバンド8の二次高調波周波数は1760〜1830MHzである。
更に、第2二次高調波周波数終端回路102_Lは、上述した本発明の実施の形態1の二次高調波周波数終端回路102と略同一の構成となっている。その結果、第2二次高調波周波数終端回路102_Lを使用することによって、バンド5の二次高調波の最低周波数1648MHzからバンド8の二次高調波の最高周波数1824MHzまでの176MHzと言う比較的広い周波数帯域を持つ全ての二次高調波の終端動作を実行する際に、終端動作の終端インピーダンスを十分に低い値に設定可能なものである。
以上、本発明者によってなされた発明を種々の実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなくその要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、本発明において、多段増幅回路によって構成されたRF増幅回路の最終段増幅素子はヘテロ接合バイポーラトランジスタにのみ限定されるものではなく、LD(Laterally Diffused)型パワーMOSトランジスタやMESFET等の他のトランジスタを使用することも可能である。
更に本発明のRF電力増幅器は、LTE方式のハイバンドの送信RF周波数を有するハイバンド送信周波数の増幅を実行する第1パスと、LTE方式のローバンドの送信RF周波数を有するローバンド送信周波数の増幅を実行する第2パスだけではなく、その他の方式の送信周波数の増幅を実行するためのその他のパスの多段増幅回路を含むことが可能である。例えば、GSM850方式とGSM900方式とのGSM方式のローバンド送信周波数の増幅を実行する第3パスとDCS1800方式とPCS1900方式とのGSM方式のハイバンド送信周波数の増幅を実行する第4パスを、本発明のRF電力増幅器が含むようにすることも可能である。その際に、第3パスと第4パスの各パスの二次高調波周波数終端回路を、上述の本発明の実施の形態1の二次高調波周波数終端回路102と略同一の構成によって実現することが可能である。
100…RF電力増幅回路
101…負荷回路・出力整合回路
102…二次高調波終端回路
L1〜L4…インダクタ
C1〜C5…容量
Vcc…電源電圧
GND…接地電位
Input…入力端子
Output…出力端子
200…RFパワーモジュール配線基板
201…マイクロウエーブモノリシック集積回路チップ(MMIC)
100_H…ハイバンドRF電力増幅回路
101_H…ハイバンド負荷回路・出力整合回路
102_H…ハイバンド二次高調波終端回路
L1H〜L4H…ハイバンドのインダクタ
C1H〜C5H…ハイバンドの容量
Input_H…ハイバンド入力端子
Output_H…ハイバンド出力端子
100_L…ローバンドRF電力増幅回路
101_L…ローバンド負荷回路・出力整合回路
102_L…ローバンド二次高調波終端回路
L1H〜L4L…ローバンドのインダクタ
C1H〜C5L…ローバンドの容量
Input_L…ローバンド入力端子
Output_L…ローバンド出力端子

Claims (4)

  1. RF増幅回路と、二次高調波終端回路とを具備するRF電力増幅器であって、
    前記RF増幅回路の入力端子に複数のRF周波数帯域を有するRF入力信号が供給されることによって、前記RF増幅回路は前記RF入力信号の電力増幅を実行して、
    前記複数のRF周波数帯域は、所定の周波数帯域を有する第1周波数帯域と、前記所定の周波数帯域よりも高い周波数の周波数帯域を有する第2周波数帯域とを少なくとも含み、
    前記二次高調波終端回路は、前記RF増幅回路の出力端子と接地電位との間に直列接続された容量とインダクタとを含み、
    前記二次高調波終端回路の前記容量の容量値と前記インダクタのインダクタンス値によって決定される直列共振周波数は、前記第1周波数帯域の実質的に2倍の周波数を有する第1の二次高調波成分の最低周波数と前記第2周波数帯域の実質的に2倍の周波数を有する第2の二次高調波成分の最高周波数との間の設定周波数に設定され、
    前記最低周波数での前記二次高調波終端回路の前記容量と前記インダクタの第1直列接続インピーダンスと前記最高周波数での前記二次高調波終端回路の前記容量と前記インダクタの第2直列接続インピーダンスが所定の値よりも小さくなるように、前記容量の前記容量値の大きさが設定され
    前記RF電力増幅器は、出力整合回路を更に具備して、
    前記出力整合回路の入力端子は前記RF増幅回路の出力端子と接続され、前記出力整合回路の出力端子はフロントエンドモジュールを介してアンテナと接続可能とされ、前記出力整合回路は前記RF増幅回路の前記出力端子のインピーダンスから前記フロントエンドモジュールのインピーダンスへのインピーダンス変換を実行して、
    前記出力整合回路は、フィルタインダクタとフィルタ容量とを少なくとも含んだローパスフィルタ型出力整合回路であり、
    前記ローパスフィルタ型出力整合回路は、前記RF増幅回路の前記出力端子から生成される前記第2の二次高調波成分を前記接地電位にバイパスする機能を有し、
    前記二次高調波終端回路の前記容量の前記容量値と前記インダクタの前記インダクタンス値によって決定される前記直列共振周波数は、前記第1の二次高調波成分の周波数帯域の実質的に中間の周波数を有する他の設定周波数に設定され、
    前記直列共振周波数を前記他の設定周波数に設定するための前記インダクタの前記インダクタンス値よりも所定の大きさ分大きなインダクタンスを、前記二次高調波終端回路の前記インダクタに使用し、
    前記所定の大きさ分大きなインダクタンスを、前記二次高調波終端回路の前記インダクタに使用したことによって、前記直列共振周波数での前記二次高調波終端回路の前記容量と前記インダクタの直列共振インピーダンスは、スミスチャートの第1動作点から第2動作点に移動して、
    前記第1動作点と前記第2動作点とは、それぞれ、前記スミスチャートで抵抗値が実質的にゼロの点と、前記スミスチャートで抵抗値が実質的にゼロの定レジスタンス円と前記スミスチャートでリアクタンスが実質的にj4Ωの定リアクタンス円弧の交点と前記抵抗値が実質的にゼロの前記点との間に位置する動作点である
    ことを特徴とするRF電力増幅器。
  2. 請求項1において、
    前記RF入力信号は、LTE方式の携帯電話端末から基地局への送信信号であり、
    前記所定の周波数帯域を有する前記第1周波数帯域は、LTE方式のバンド3であり、
    前記所定の周波数帯域よりも高い周波数の周波数帯域を有する前記第2周波数帯域は、LTE方式のバンド1であり、
    前記RF入力信号の前記複数のRF周波数帯域は、LTE方式のバンド2である周波数帯域を有する第3周波数帯域を更に含み、
    前記出力整合回路は、前記第3周波数帯域の実質的に2倍の周波数を有する第3の二次高調波成分の終端処理を実行する
    ことを特徴とするRF電力増幅器。
  3. 請求項1において、
    前記RF電力増幅器は、他のRF増幅回路と、他の二次高調波終端回路と、他の出力整合回路を更に具備して、
    前記他のRF増幅回路の入力端子に他の複数のRF周波数帯域を有する他のRF入力信号が供給されることによって、前記他のRF増幅回路は前記他のRF入力信号の電力増幅を実行して、
    前記複数のRF周波数帯域は、LTE方式のバンド5の周波数帯域とLTE方式のバンド8の周波数帯域とを含み、
    前記他の二次高調波終端回路は、前記他のRF増幅回路の出力端子と前記接地電位との間に直列接続された他の容量と他のインダクタとを含み、
    前記他の出力整合回路の入力端子は前記他のRF増幅回路の前記出力端子と接続され、前記他の出力整合回路の出力端子は前記アンテナと接続可能とされ、前記他の出力整合回路は前記他のRF増幅回路の前記出力端子のインピーダンスから前記アンテナのインピーダンスへのインピーダンス変換を実行する
    ことを特徴とするRF電力増幅器。
  4. 請求項3において、
    前記他の出力整合回路は、他のフィルタインダクタと他のフィルタ容量とを少なくとも含んだ他のローパスフィルタ型出力整合回路である
    ことを特徴とするRF電力増幅器。
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