JP5853620B2 - 水素化触媒の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機化合物の水素化に用いる触媒の製造方法に関する。具体的にはアルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、カルボン酸エステル類および芳香族ニトロ化合物類等の水素化に用いられる有用な触媒の製造方法に関する。
上記水素化反応に用いられる有用な触媒としては、従来、銅クロマイト触媒として銅/クロム酸化物触媒が広く知られている。
その具体的な例として、反応温度180〜370℃、圧力0.1〜0.5MPa、ニトロベンゼン濃度2〜14容量%の条件下で、銅/クロム酸化物触媒を用いてガス状のニトロベンゼンを水素還元し、アニリンを製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このようなクロム酸化物を含む触媒は、クロムによる健康被害や環境汚染の恐れがあるため、その取り扱いに際しては細心の注意が求められるとともに、使用済触媒の処理と回収にも多大な労力と費用が必要であった。
クロム酸化物を含まない触媒としては、銅、鉄およびアルミニウムを基本成分とする変性ラネー銅触媒(例えば、特許文献2参照)や、銅、ケイ酸カルシウム、アタパルジャイト等の天然粘土鉱物からなる成型水素化触媒(例えば、特許文献3参照)が提案されているが、いずれも耐久性の欠如や組成変動に伴う再現性の欠如という問題がある。
近年では、銅をケイ酸カルシウムに担持した成型触媒が提案され(例えば、特許文献4参照)、さらにアルカリ金属を添加した成型触媒が提案されている(例えば、特許文献5参照)。これらの成型触媒は、環境汚染や健康被害を招くことなく、その上、従来の銅/クロム酸化物触媒同等以上の活性、選択性および耐久性を有する。しかし、触媒の製造方法が共沈法であるため、工程が長く煩雑であり、更に効率の良い当該触媒の製造方法の開発が期待されている。
特公昭53−30961号公報 特開平9−124562号公報 特表平11−507867号公報 特開2011−147934公報 特開2011−147935公報
本発明は、銅とケイ酸カルシウムからなる水素化触媒の製造方法において、共沈法よりも効率が良く、簡便な水素化触媒の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、銅とケイ酸カルシウムからなる水素化触媒の製造方法において、シリカ、カルシウム化合物、水、そして銅化合物を、アンモニアの存在下、混練する方法を用いることで前記課題を解決することを見出した。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水素化触媒の製造方法では、水素化触媒成分である銅、あるいは銅酸化物、または焼成によって銅酸化物形態に容易に変化しうる水酸化物、炭酸塩もしくは硝酸塩などからなる1種類以上の銅化合物をケイ酸カルシウム担体に担持する際、アンモニアおよび水の存在下で混錬することを特徴とする。それにより、銅化合物とアンモニアが反応し、水溶性の銅アンミン錯体を形成し、銅をケイ酸カルシウム担体上に高分散状態で担持することができる。
存在させるアンモニア量は、ケイ酸カルシウム担体上に担持させる銅金属量に対して30〜65重量%であることが好ましい。アンモニア量が30重量%未満であると、銅が反応して生成する銅アンミン錯体の量が少ないため、銅のケイ酸カルシウム担体への分散性が低下する。一方、アンモニア量が65重量%を超えると、銅のモル当量以上にアンモニアが存在することになり、過剰のアンモニアがロスし、アンモニアの除外設備が必要となる。
存在させるアンモニアの形態はガス状、水溶液状のいずれでも良いが、添加の容易さから水溶液状のアンモニアの使用が好ましい。また、塩化アンモニウムや炭酸アンモニウムなどのアンモニアを発生する化合物を使用することもできる。
銅化合物を添加する時期は、シリカおよびカルシウム化合物を仕込み、水とアンモニアを添加して混練し、ケイ酸カルシウム担体を調製する際に添加しても良いし、ケイ酸カルシウム担体を調製した後に添加し、その後、水およびアンモニアと混練しても良いが、ケイ酸カルシウム担体の調製後に添加した方が、銅の凝集が起こらない点で好ましい。ケイ酸カルシウムの生成はXRD(X線回折)により確認することができる。
使用するシリカは、非結晶性、結晶性またはその混合物を使用することができるが、非結晶性のものが好ましい。非結晶性のシリカは乾式合成法または湿式合成法のどちらで製造されたものでも良い。湿式合成法のシリカは安価で入手が容易であるため好ましい。
また、使用するカルシウム化合物は、水酸化カルシウム(消石灰)、酸化カルシウム(生石灰)および硫酸カルシウム等、カルシウム化合物であれば良く、特に限定されない。
銅化合物をアンモニアの存在下で混練する際に加える水分は、生成した銅アンミン錯体を溶解するのに充分な量であれば良い。混錬して得られたペーストは、一定の形に成型し、乾燥し、300〜600℃の温度で焼成して水素化触媒前駆体を得た後、これを還元処理して水素化触媒とすることができる。そのため、共沈法で必要なろ過、洗浄工程を省略することができ、工業的に効率的な製造方法である。
この時の乾燥温度は、前記ペーストが乾燥できる温度であれば任意に決定されるが、100〜150℃の温度が例示される。
焼成温度は300〜600℃である。300℃未満では、銅の焼成が不十分で触媒性能が低くなり、600℃を超えると、銅のシンタリング(焼結)が起こり、これまた触媒性能が低くなる。
また、本発明の製造方法で得られる水素化触媒の銅含有量は20〜60重量%である。銅含有量が20重量%未満であると反応ロード(原料フィード速度)に対して活性不足となり、充分な反応速度を得ることができない。一方、銅含有量が60%を超えると銅を担持する時の銅の分散性が低下し、担持銅あたりの活性が低下する。
また、銅以外にアルカリ金属を水素化触媒に対して0.22〜2.5重量%含有させることが好ましく、さらには0.25〜1.5重量%含有させることが好ましい。0.22重量%未満では、触媒寿命が短くなる傾向にあり、2.5重量%を超えると、触媒性能が低下しやすくなる。アルカリ金属としては、還元された金属の形態または水酸化物や炭酸塩の形態、あるいは硝酸塩やケイ酸塩等の塩類の形態として存在させることができる。また、好ましい金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムである。
本発明の製造方法で得られる水素化触媒前駆体は、反応器内において、目的とする水素化反応を行う前に還元処理をして水素化触媒とすることができる。この水素化触媒前駆体を還元する方法としては、例えば、還元剤として水素ガスを用い、気相または液相で加熱して行うことができる。加熱温度は100〜500℃が好ましく、さらには150〜300℃の温度で気相還元することが好ましい。この場合、還元反応速度を制御するために、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈したものを用いても良い。
このようにして得られる本発明の水素化触媒の製造方法で得られた水素化触媒は、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、カルボン酸エステル類および芳香族ニトロ化合物類を対象とした水素化反応に好適に用いられる。
本発明の水素化触媒の製造方法で得られた水素化触媒を用いて、水素化してアルコールを製造することができるアルデヒド類の例としては、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、3−メチルブチルアルデヒド、2,2−ジメチルプロピオンアルデヒド、カプロンアルデヒド、2−メチルバレルアルデヒド、3−メチルバレルアルデヒド、4−メチルバレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、2,2−ジメチルブチルアルデヒド、3,3−ジメチルブチルアルデヒド、カプリルアルデヒド、グルタルジアルデヒドなどが挙げられる。またケトン類としては、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどが挙げられる。
本発明の水素化触媒の製造方法で得られた水素化触媒を用いて、水素化してアルコールを製造することができるカルボン酸類やカルボン酸エステル類としては、ギ酸、酢酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、イソステアリル酸、オレイン酸、シュウ酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、フタル酸などやそのエステルが挙げられる。
本発明の水素化触媒の製造方法で得られた水素化触媒を用いて、水素化して芳香族アミン化合物を製造することができる芳香族ニトロ化合物類としては、ニトロベンゼン、アルキル置換ニトロベンゼン類、ニトロナフタレン類、4−ニトロジフェニル、ニトロアントラキノン類、ニトロフェナントロ類、2−ニトロフラン、2−ニトロチオフェン、3−ニトロピリジン、2−ニトロジフェニルエーテル、5−ニトロ−1H−ベンゾトリアゾール、異性体ジニトロベンゼン類、異性体ニトロアニリン類、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、異性体ニトロフェノール類、o−ニトロクロロベンゼン、m−ニトロクロロベンゼン、p−ニトロクロロベンゼン、3,4−ジニトロクロロベンゼンなどが挙げられる。特に、ニトロベンゼンは水素化反応を適用するのに好適なニトロ化合物である。
本発明による水素化触媒の製造方法によれば、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、カルボン酸エステル類および芳香族ニトロ化合物類の水素化に優れた、銅とケイ酸カルシウム担体からなる水素化触媒を、共沈法では必要な濾過および洗浄工程を必要としない効率の良い工程で製造することができる。
以下の実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
(水素化触媒前駆体の調製)
1LのSUS製ニーダーに、シリカ粉末(東ソーシリカ製、Nipsil「NS−K」)81.1g、消石灰粉末(関東化学製、試薬1級)25.0gを仕込み、次に、イオン交換水74.5g、29%アンモニア水(関東化学製、試薬特級)165.5gを添加し、20℃で40時間混練し、ケイ酸カルシウム担体を調製した。その後、塩基性炭酸銅粉末(関東化学製、試薬特級)147.3gを添加し、6時間混練して銅を担持した。
得られたペーストは、110℃で一晩、空気中で乾燥し、この乾燥した固形物は粗粉砕し、450℃で3時間焼成し、水素化触媒前駆体を得た。
(還元処理)
上記水素化触媒前駆体を0.5〜1.0mmに篩分けした。篩分けした触媒22.2mgを同様に篩分けしたグラファイト245mgと混合して固定床反応器に充填し、水素流通下で還元して水素化触媒を得た。
(ニトロベンゼンの水素化反応による触媒性能の評価)
触媒性能評価は、常圧、反応温度240℃、水素/ニトロベンゼン(モル比30)で行い、GHSV(触媒層単位体積当りの体積流量)54,000hr−1となるように窒素で希釈して実施した。初期アニリン生成速度を表1に示す。
実施例2
ケイ酸カルシウム担体を調製した後に、20%炭酸ナトリウム水溶液8.7gを添加し、30分間混練すること以外は、実施例1と同様の方法で水素化触媒を調製し、触媒性能を評価した。初期アニリン生成速度を表1に示す。
実施例3
20%炭酸ナトリウム水溶液の添加量が15.7gであること以外は、実施例2と同様の方法で水素化触媒を調製し、触媒性能を評価した。初期アニリン生成速度を表1に示す。
実施例4
29%アンモニア水の添加量が105.2gであること以外は、実施例3と同様の方法で水素化触媒を調製し、触媒性能を評価した。初期アニリン生成速度を表1に示す。
比較例1
アンモニア水を添加せず、イオン交換水の添加量が160.0gであること以外は、実施例3と同様の方法で水素化触媒を調製し、触媒性能を評価した。初期アニリン生成速度を表1に示す。
比較例2
20%炭酸ナトリウム水溶液の添加量が87.1gであり、イオン交換水の添加量が22.5gであること以外は、実施例3と同様の方法で水素化触媒を調製し、触媒性能を評価した。初期アニリン生成速度を表1に示す。
Figure 0005853620
表1に示す結果から明らかなように、本発明の水素化触媒の製造方法により製造された水素化触媒は、十分に高い触媒性能を有する。
本発明の水素化触媒の製造方法は、成分として有害なクロムを含有せず、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、カルボン酸エステル類および芳香族ニトロ化合物類等の水素化反応に対して優れた活性、選択率および長い触媒寿命を有する水素化触媒の効率の良い製造方法として、触媒製造分野で広範に利用される可能性を有する。

Claims (4)

  1. シリカおよびカルシウム化合物を仕込み、水とアンモニアを添加して混練した後、銅化合物添加してペーストを得た後、該ペーストを乾燥後、300〜600℃の温度で焼成して得られる水素化触媒前駆体を還元処理することを特徴とする水素化触媒の製造方法。
  2. シリカ、カルシウム化合物、水およびアンモニアの混練時に、アルカリ金属化合物を添加し、その添加量がアルカリ金属として水素化触媒に対して0.22〜2.5重量%であることを特徴とする請求項1記載の水素化触媒の製造方法。
  3. アンモニアの添加量が銅化合物中の銅金属量に対して30〜65重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の水素化触媒の製造方法。
  4. 銅化合物が銅、銅酸化物、または焼成によって銅酸化物形態に変化しうる水酸化物、炭酸塩もしくは硝酸塩より選ばれる1種類以上であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の水素化触媒の製造方法。
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