JP5851765B2 - ロータリー式圧縮機 - Google Patents
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Description
ロータリー式圧縮機は、密閉されたハウジング内に、円筒状の内壁面を有したシリンダと、シリンダの中心に対して偏心して設けられたピストンロータと、を備えている。ピストンロータは、シリンダの中心軸に沿って設けられたシャフトに設けられている。シャフトは、シリンダに固定された軸受を介してその軸線周りに回転自在に設けられている。シャフトには、シャフトを回転させるための電動モータを構成する回転子(ロータ)が接続されている。回転子の外周側には、ハウジングの内周面に固定された固定子(ステータ)が配置され、固定子に通電されることによって、シャフトが回転駆動され、ピストンロータがシリンダ内で旋回する。そして、シリンダとピストンロータの間に形成された圧縮室に冷媒を吸い込み、ピストンロータの回転により圧縮室容積が減少して冷媒を圧縮して吐出する。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、回転子の重量を増やさずに、加えて、回転子の周囲に余計なスペースを設けることなく、冷媒に含まれる潤滑油を分離できるロータリー式圧縮機を提供することを目的とする。
本発明による電動モータは、ハウジングに固定される固定子と、固定子の内周側に配置され、固定子に電力が供給されると軸心の周りに回転する回転子と、を備える。この回転子には、圧縮機構部で圧縮された冷媒を吐出口に向けて流す、軸心方向に真っ直ぐに延びるように冷媒通過路が設けられるとともに、冷媒通過路に一端が連なり、回転子の径方向の外側に延びる分離油路を備える。
本発明のロータリー式圧縮機(以下、単に圧縮機ということがある)において、冷媒と潤滑油からなる混合体は冷媒通過路内に流入する。回転子は高速で回転しているため、冷媒通過路に流入した混合体にはこの回転に伴う遠心力が作用する。冷媒(ガス)よりも比重が大きい潤滑油はこの遠心力により回転子の外周側に移動する。この潤滑油は冷媒通過路に連なる分離油路に流入するので、冷媒から潤滑油を分離することができる。
1つ目の形態は、分離油路の他端を回転子の外側面に開口させる、というものである。この形態によると、分離油路に流入した潤滑油は、遠心力が作用することで、外側面の開口を介して分離油路から流出される。この潤滑油は、回転子と固定子の間の隙間を通って、又は、固定子とハウジングの間の隙間を通って、油貯まりに落下する。
2つ目の形態は、分離油路に流入した潤滑油を、回転子内に設けた戻し油路を介して油溜まりに戻すというものである。
詳しくは後述するが、圧縮機の作動時に生ずる騒音を防止するために、電動モータを構成する回転子の磁力中心(図1 C1)を、固定子の磁力中心(図1 C2)よりも、軸線方向の上方にオフセットさせることがある。この圧縮機は、回転子が、固定子の上端よりも上方に突出する突出部を備えることになるが、この突出部はトルクの発生にほとんど寄与しないことを前提としている。一方で、分離油路は、回転子に磁性体ではない空隙をもたらすものであるから、モータのトルクを低下させる要素となり得る。そこで、トルクの発生にほとんど寄与しない突出部に分離油路を設けることで、モータのトルクを低下させないか、または、低下させたとしても微小にできる。
分離油路を得るのに回転子素材に溝を形成するだけで足りるので、コストの上昇をほとんど招かない。
また、上下のシリンダ20A、20Bの間には、ディスク状の仕切板24が設けられている。仕切板24により、上段側のシリンダ20A内の空間Rと、下段側のシリンダ20Bの空間Rとが互いに連通せずに圧縮室R1と圧縮室R2とに仕切られている。
そして、シャフト23には、ピストンロータ21A、21Bの内側に、シャフト23の中心軸から直交する方向にオフセットした偏心軸部23A、23Bが形成されている。偏心軸部23A、23Bは、ピストンロータ21A、21Bの内径よりもわずかに小さな外径を有している。これにより、シャフト23が回転すると、偏心軸部23A、23Bがシャフト23の中心軸周りに旋回し、上下のピストンロータ21A、21Bがシリンダ20A、20B内で、偏心転動する。このとき、ブレードは、先端部がピストンロータ21A、21Bの動きに追従して進退し、ピストンロータ21A、21Bに常に押し付けられる。
冷媒通過路44の下端はそれぞれ開口端44Lとされており、この開口端44Lを通って、潤滑油と冷媒ガスとの混合体が冷媒通過路44内に流入するようになっている。また、冷媒通過路44の上端はそれぞれ開口端44Uとされている。開口端44Lから冷媒通過路44内に流入した潤滑油と冷媒ガスとの混合体は、図2に示す矢印Fで示すように、冷媒通過路44の上方に設けられた開口端44Uを通って回転子コア42(回転子41)の外部上方に流出するようになっている。
なお、本発明において分離油路45が設けられる高さ方向の位置は任意であるが、混合体から潤滑油を分離するには、高い位置に設けることが有利である。また、本実施形態では高さ方向の一カ所にだけ分離油路45を設けているが、高さ方向の複数個所に設けることを本発明は許容する。
また、図2に示すように、渡線部63の基端部(固定子コア61の側に位置する端部)には、シャフト23の回転軸線と直交する方向に沿って延びるとともに、コイルエンド62により取り囲まれる領域Aとハウジング11の胴部11a内とを連通する複数の連通路64が形成されている。
ハウジング11の底部には、油溜まり51が形成されている。図示を省略した潤滑油はこの油溜まり51に貯留され、圧縮機10の運転に伴って冷媒とともに混合体を構成する。
アキュムレータ14には、アキュムレータ14内の冷媒を圧縮機10に吸入させるための吸入管16A、16Bが設けられている。吸入管16A、16Bの先端部は、開口部12A、12Bを通して、吸入ポート30A、30Bに接続されている。
そして、ピストンロータ21A、21Bの偏心転動により、圧縮室R1、R2の容積が徐々に減少して冷媒が圧縮される。シリンダ20A、20Bの所定の位置には、冷媒を吐出する吐出穴(図示無し)が形成されており、この吐出穴にはリード弁(図示無し)が備えられている。これにより、圧縮された冷媒の圧力が高まると、リード弁を押し開き、冷媒をシリンダ20A、20Bの外部に吐出する。吐出された冷媒に潤滑油が巻き込まれることで混合体が生成される。この冷媒は、ハウジング11の上部に設けられた吐出口55から外部の図示しない配管に吐出される。
分離油路45に流入した潤滑油は、遠心力の働きにより、分離油路45から流出される。この潤滑油は、回転子41と固定子60の間の隙間を通って、又は、固定子60とハウジング11の間の隙間11bを通って、油貯まり51に落下する。あるいは、分離油路45から流出された潤滑油の一部は、冷媒に巻き込まれて混合体となり、吐出口55に向かうこともある。
次に、回転子コア42(回転子41)のより具体的な構成を、図3及び図4を参照して説明する。
前述したように、回転子コアは複数枚の回転子素材を積層して作製される。通常は形態が同じ回転子素材を必要な枚数だけ積層し、締結部材により締結して一体化された回転子コアを作製する。ところが、分離油路45を形成するために、異なる2種類の回転子素材42a、42bにより、本発明の回転子コア42は作製される。このなかで回転子素材42bは、分離油路45を形成するのに直接的に係る。
回転子素材42aは、図4(a)に示すように、表裏を貫通する軸孔43aが中心に形成された円板状の部材である。回転子素材42aには、軸孔43aの周囲に4つの冷媒通過孔44aが表裏を貫通して形成されている。冷媒通過孔44aは、互いに隣接する冷媒通過孔44a同士が90°の間隔を隔てて配置されている。
また、回転子素材42aには、冷媒通過孔44aよりも外周側に、締結部材Bが貫通する4つの締結孔46aが表裏を貫通して形成されている。締結孔46aは、互いに隣接する締結孔46aが90°の間隔を隔てて配置されている。
さらに、回転子素材42aには、永久磁石を保持するための磁石保持溝47aが表裏を貫通して形成されている。この実施形態では、一対の磁石保持溝47aが中心軸を基準にしてV字状に配置されて1組の永久磁石群を保持するものであり、併せて4組の永久磁石群が回転子コア42に保持される。
回転子素材42a、42bが積層されて回転子コア42を構成すると、軸孔43aは軸心孔43を構成し、冷媒通過孔44aは冷媒通過路44を構成する。
回転子素材42bは、さらに、分離油溝45bを備えている。分離油溝45bは回転子素材42bの内周端45biから外周端45boにかけて形成される。外周端45boは回転子素材42bの外周縁に開口しており、また、分離油溝45bは回転子素材42bの表裏を貫通している。
分離油溝45bは、回転子素材42aの冷媒通過孔44aに対応して設けられている。つまり、回転子素材42bを回転子素材42aに積層すると、分離油溝45bは内周端45bi側が冷媒通過孔44aと重なり、分離油溝45bと冷媒通過孔44aは連通する。
この回転子コア42において、回転子素材42bは上下が回転子素材42aに挟まれている。そうすると、分離油溝45bは上下開口が上下に配置される回転子素材42aに塞がれる。ただし、内周端45biが冷媒通過孔44aと連通する部分は除かれる。また、分離油溝45bの外周端45boは回転子素材42bの周縁に開口しているので、分離油路45は回転子コア42の外側面42Sに開口する。こうして、回転子コア42には、一端が冷媒通過路44に連なり、回転子コア42の径方向の外側に群れて延びる分離油路45が形成される。
固定子60にコイルを巻き回すのに集中巻きを適用することはよく知られている。この場合、よく知られているように、径が縮小された部分を有する回転子(回転子コア)が用いられることがある。この回転子素材142bは、例えば図5に示すように、長径部LDと短径部SDを交互に備える。この回転子素材142bは、分離油溝45bを短径部SDに対応して設ける。そうすると、分離油溝45bは短径部SDに開口することになる。
この回転子素材142bを用いて得られた回転子コア42を固定子60(図5に点線で内径を示す)の内部に配置すると、短径部SDと固定子60の間には、長径部LDと固定子60の間よりも大きい隙間が設けられる。したがって、この短径部SDに対応する部分は、分離油路45から流出された潤滑油が、回転子41と固定子60の間を通り易くなるので、油貯まり51に潤滑油を効率よく戻すことができる。
なお、回転子素材42bと同様の構成には図4と同じ符号を図5に付けた。また、回転子素材142bに対応する固定子の図示は省略するが、図4(a)に示す回転子素材42aの外形を図5の回転子素材142bと同様にすればよい。
本発明は、種々の形態の回転子に適用できる。例えば、図4に示した冷媒通過孔44aを二つに分割した形態とすることができる。この形態に従う回転子素材242a、242bが図6に記載されている。なお、図4に示した回転子素材42a、回転子素材42bと同様の構成については、図6に図4と同じ符号を付している。
回転子素材242aには、軸孔43aの周囲に8つの冷媒通過孔244aが表裏を貫通して形成されている。
回転子素材242aには、回転子素材42aと同様に、4つの締結孔46aが形成されている。この締結孔46aは、隣接する一組の磁石保持溝47aの間に配置される点で、回転子素材42aと配置位置が相違している。
なお、締結孔46aが図4と同様の位置に設けられているとすれば、2つの隣接する冷媒通過孔244aに対応する一つの分離油溝245bを設けることもできる。
分離油路45を設ける位置は高いほど好ましいことは前述のとおりである。しかるに、圧縮機10のように回転子41の上端が固定子60の上端よりも突出している場合には、図7に示すように、分離油路45を固定子60の上端よりも突出している回転子41の部分に設けることが好ましい。
分離油路45は、回転子コア42に磁性体ではない空隙をもたらすものであるから、モータ40のトルクを低下させる要素となり得る。しかしながら、固定子60の上端よりも突出している回転子41の部分はそもそもトルクの発生にほとんど寄与しないことを前提としているので、当該部分に分離油路45を設けてもモータ40のトルクを低下させないか、または、低下させたとしても微小である。
この場合、連通路64を分離油路45に対応する位置に設けると、分離油路45から流出された潤滑油が回転子41と固定子60の間の隙間に到達しやすくなるので好ましい。
以上説明した回転子41は、分離油路45を回転子コア42の外側面42Sに開口させ、分離された潤滑油を回転子41と固定子60の間、つまり回転子41の外部を通して油貯まり51に戻すものである。しかし、本発明は潤滑油を戻す通路を回転子の内部に設けることもできる。その一例を図8及び図9に基づいて説明する。
図9に示すように、回転子素材342aは、冷媒通過孔44aに加えて、戻し油孔52aが形成されている。回転子素材342aが積層されたとき、戻し油孔52aは戻し油路52を構成する。回転子素材342aの他の構成は、図4の回転子素材42aと同じである。したがって、図4(a)と同じ符号を図9(a)に付している。
この実施形態によると、混合体から分離された潤滑油は回転子コア142の内部を通って油貯まり51に戻されると吐出口55に向かうことはないので、より確実に潤滑油を油戻し51に戻すことができる。
以上の例では、戻し油路52を新たに形成したが、本発明はこれに限定されず、締結孔46a,46bを戻し油路として利用することができる。その例を図10に基づいて説明する。
この例は、回転子素材242aは図6(a)に示したものと同じものを用いる(図10(a))。一方、図10(b)に示される回転子素材442bを用いることにより戻し油路を形成する。つまり、回転子素材442bは、分離油溝245bを備えている。分離油溝245bは、内周側が二股に分岐されるとともに、外周側は集合しており、V字状をなしている。この分離油溝245bは、内周側の端部が冷媒通過孔244aに対応しており、外周側の端部が締結孔46aに対応している。つまり、分離油溝245bは、冷媒通過孔244aに対応する位置から締結孔46aに対応する位置にかけて形成されている。回転子素材442bの他の構成は、図4の回転子素材42bと同じである。したがって、図4(b)と同じ符号を図10(b)に付している。
この実施形態においても以上と同様の効果を奏するのに加えて、戻し油路を独立して形成する必要がないので、製作工数の低減に寄与する。
以上の実施形態では、一部の回転子素材に分離油溝を形成することで分離油路を形成する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、積層される回転素子素材の中からその一部を取り除くことで、分離油路を形成することもできる。その例を図11、図12に基づいて説明する。
この例による回転子241(回転子コア242)は、複数枚の例えば回転子素材42aを積層して得られる。ただし、分離油路45を設けたい位置には回転子素材42a(42b)を設ける替りにリング状のスペーサ53を設置する。そうすると、スペーサ53の周囲は空隙が形成されることになり、この空隙が分離油路45を構成する。この分離油路45は、回転子241の外側面に開口するとともに、永久磁石Mを除いて周方向を遮るものがなく開放されている。
以上のように、本発明の分離油路は、回転子の周方向に閉じられた空隙、又は、回転子の周方向に開放された空隙、の何れであってもよい。
なお、この例ではスペーサ53は内周側に設けたが、スペーサ53を設ける位置は任意である。
例えば、回転子41の回転軸線に分離油路45が直交する例を以上では示したが、本発明はこれに限らず、回転軸線に対して傾斜する分離油路とすることもできる。さらに、回転子(内周又は外周)の接線に対する法線方向に分離油路を設けることに限定されず、法線方向に傾斜する方向に分離油路を設けることができる。
また、ロータリー式圧縮機構とスクロール式圧縮機構とが組み合わされた電動圧縮機について本発明を適用することもできる。つまり、本発明におけるロータリー式圧縮機とは、ロータリー式圧縮機構を備えている圧縮機を広く包含する。
11 ハウジング
11b 隙間
20A,20B シリンダ
21A,21B ピストンロータ
23 シャフト
29A,29B 軸受
40 モータ
41,141,241 回転子
42,142,242 回転子コア
42a,42b,142b,242a,242b,342a,342b,442b 回転子素材
42S 外側面
43 軸心孔
43a,43b 軸孔
44 冷媒通過路
44a,244a 冷媒通過孔
45,145 分離油路
45b,145b,245b 分離油溝
46a,46b 締結孔
51 油溜まり
52 戻し油路
52a 戻し油孔
53 スペーサ
60 固定子
61 固定子コア
62 コイルエンド
64 連通路
LD 長径部
SD 短径部
Claims (7)
- 冷媒の吐出口が設けられ、潤滑油が溜められる油溜まりを底部に有するハウジングと、
前記ハウジングの下部側に配置され、冷媒を圧縮するロータリー式圧縮機構部と、
前記ハウジングの上部側に配置され、前記圧縮機構部を駆動する電動モータと、を備え、
前記電動モータは、
前記ハウジングに固定される固定子と、
前記固定子の内周側に配置され、前記固定子に電力が供給されると軸心の周りに回転する回転子と、
前記圧縮機構部で圧縮された冷媒を前記吐出口に向けて流す、下側開口端から上側開口端まで前記軸心方向に真っ直ぐに延びるように前記回転子に設けられた冷媒通過路と、
前記冷媒通過路に一端が連なり、前記回転子の径方向の外側に延びる分離油路と、を備える、
ことを特徴とするロータリー式圧縮機。 - 前記分離油路は、
他端が前記回転子の外側面に開口する、
請求項1に記載のロータリー式圧縮機。 - 前記回転子が短径部を備え、
前記分離油路は、前記短径部に対応する前記外側面に開口する、
請求項2に記載のロータリー式圧縮機。 - 前記回転子は、前記冷媒通過路よりも径方向の外側に、前記潤滑油を前記油溜まりに向けて流す戻し油路を設け、
前記分離油路の他端が前記戻し油路に連なる、
請求項1に記載のロータリー式圧縮機。 - 前記回転子は、前記固定子の上端よりも上方に突出する部分を備え、
前記分離油路は、前記突出する部分に設けられる、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のロータリー式圧縮機。 - 磁性材からなる複数の回転子素材を積層して前記回転子が形成され、
前記分離油路は、一又は複数の前記回転子素材に形成された溝により構成される、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のロータリー式圧縮機。 - 前記分離油路は、前記上側開口端の近傍において、前記冷媒通過路に一端が連なる、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のロータリー式圧縮機。
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