本発明は、医療用および異物検査等の産業用に使用され、放射線(X線およびγ線等)を検出して投影データを収集し、収集した投影データを画像再構成して放射線断層画像を生成する放射線断層画像生成装置、放射線断層撮影装置および放射線断層画像生成プログラムに関する。
従来、この種の放射線断層撮影装置として、PET装置、SPECT装置、X線CT装置、PET/CT装置およびSPECT/CT装置などがある(例えば、特許文献1参照)。これらの装置は、測定によって収集された図14(a)に示す実測投影データ(サイノグラム)を画像再構成することで被検体の断層画像(図14(b))を取得している。
しかしながら、被検体よりも撮影断面の有効視野(FOV)が狭い場合には、被検体が有効視野をはみ出して欠ける、いわゆるトランケーションが生じる。なお、はみ出した部分をトランケーション部分とする。図14(c)は、トランケーションが生じた実測投影データ(サイノグラム)を示す図である。図14(c)中の破線とサイノグラムで囲まれた領域が符号200に示すトランケーション部分である。このようなトランケーションした(被検体が欠けた)実測投影データをそのままの状態で画像再構成(例えばML−EM法)すると、図14(d)に示すように、生成された断層画像(再構成画像)の有効視野内の外端であって被検体がはみ出した領域付近にトランケーションアーチファクトが生じるという問題がある。
さらに、例えば、PET/CT装置やSPECT/CT装置(CTはトランスミッションCTを含む)等の複数の撮影システム(モダリティ)で構成される放射線断層撮影装置においては、一般的にPET装置やSPECT装置よりもCT装置の撮影の有効視野が狭いことが知られている(例えば特許文献1、並びに非特許文献1および2参照)。そのため、CT画像をPET装置やSPECT装置の吸収補正に用いようとする場合には、X線CT画像に生じたトランケーションアーチファクトの影響が吸収補正後に画像再構成されたPET画像にも与えてしまうこととなる。
四月朔日聖一、PETとPET/CTにおける減弱補正法の基礎と有用性(日本放射線技術学会雑誌、2006)
Thomas Beyer et al. Whole-body 18F-FDG PET/CT in the Presence of Truncation Artifacts (J Nucl Med 2006; 47:91-99.)
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、トランケーションアーチファクトの発生は、トランケーション部分を推定することにより防止している。例えば特許文献1では、SPECT画像から被検体の体輪郭を抽出し、抽出した体輪郭を用いて楕円近似によりトランスミッションCT投影データの総和値およびトランスミッションCT像の重心からトランケーション部分を推定し、トランスミッションCT投影データに2次式外挿することでトランケーション補正を行っている。この手法は、実用化されているものの、被検体境界位置の推定などにパラメータの最適化が必要であり、アルゴリズム的に煩雑さを含むものである。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、パラメータの最適化をほとんど必要としなく、トランケーション部分の画像推定が行われた放射線断層画像を容易に取得することが可能な放射線断層画像生成装置、放射線断層撮影装置および放射線断層画像生成プログラムを提供することを目的とする。
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。すなわち、本発明に係る放射線断層画像生成装置は、被検体に対して異なる複数の方向から収集された実測投影データに基づいて放射線断層画像を生成する放射線断層画像生成装置において、前記実測投影データの取得された領域の幅であるデータ幅の外側の投影データの推定を行わずに前記データ幅を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含む画像を逐次近似画像再構成する画像再構成部を備えていることを特徴とするものである。
本発明に係る放射線断層画像生成装置によれば、画像再構成部は、実測投影データの取得された領域の幅であるデータ幅の外側の投影データの推定を行わずにデータ幅を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含む画像を逐次近似画像再構成する。逐次近似画像再構成の画像を広く設定することにより、実測投影データが、被検体Mが検出範囲からはみ出してトランケーションしている場合でも揃っている実測投影データでトランケーション部分の画像を推定することができる。揃っている実測投影データは、放射線断層画像を生成するための投影データに推定された部分を有することによる誤差が生じないので、投影データ間の整合性が高くアーチファクトを低減させることができる。したがって、パラメータの最適化などの設定をほとんど必要としなく、トランケーション部分の画像推定が行われた放射線断層画像を容易に取得することができる。
また、本発明に係る放射線断層画像生成装置において、前記画像再構成部は、前記広く設定された円形領域を含む画像の初期画像に、天板に対応する画素値を吸収係数とする先見情報を与えることが好ましい。これにより、逐次近似画像再構成の際に、天板に対応する画素値の精度を高めることができ、また、これに伴いトランケーション部分の画素値の精度を高めることができる。
また、本発明に係る放射線断層画像生成装置において、前記画像再構成部は、前記広く設定された円形領域を含む画像の初期画像に、天板内部に対応する画素値を0とする先見情報を与えることが好ましい。天板内部には被検体が配置されないので、初期画像の天板内部に対応する画素値を0として画像更新を行わないようにしている。これにより、トランケーション部分の画素値の精度を高めることができる。
また、本発明に係る放射線断層画像生成装置において、前記画像再構成部は、前記広く設定された円形領域を含む画像の初期画像に、予め設定された天板位置よりも低い画素値を0とする先見情報を与えることが好ましい。天板より低い位置には被検体が配置されないので、初期画像の予め設定された天板位置よりも低い画素値を0として画像更新を行わないようにしている。これにより、トランケーション部分の画素値の精度を高めることができる。
また、本発明に係る放射線断層画像生成装置において、前記実測投影データは、実測トランスミッション投影データと実測エミッション投影データであり、前記画像再構成部は、実測トランスミッション投影データの取得された領域の幅であるデータ幅の外側の投影データの推定を行わずに前記データ幅を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含む画像を、前記実測トランスミッション投影データを用いて逐次近似画像再構成してトランスミッション画像を生成するトランスミッション画像生成部であり、前記トランスミッション画像に基づいて求められた吸収補正用投影データを用いて実測エミッション投影データに対して吸収補正を行う吸収補正部と、前記吸収補正部で吸収補正された前記実測エミッション投影データに基づいて画像再構成を行ってエミッション画像を生成するエミッション画像生成部と、をさらに備えていることが好ましい。これにより、トランケーション部分の画像が推定されたトランスミッション画像に基づいて、吸収補正部は、実測エミッション投影データを吸収補正している。そのため、トランスミッション画像のトランケーション部分に起因するエミッション画像のアーチファクトを低減させることができる。
また、本発明に係る放射線断層画像生成装置において、前記エミッション画像生成部は、前記吸収補正部で吸収補正された実測エミッション投影データの取得された領域の幅であるデータ幅の外側の投影データの推定を行わずにデータ幅を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含む画像を、前記吸収補正部で吸収補正された実測エミッション投影データを用いて逐次近似画像再構成を行ってエミッション画像を生成することが好ましい。これにより、吸収補正部で吸収補正された実測エミッション投影データが、被検体Mが検出範囲からはみ出してトランケーションしている場合でも揃っている実測エミッション投影データでトランケーション部分の画像を推定することができる。
また、本発明に係る放射線断層画像生成装置において、前記実測投影データは、実測トランスミッション投影データと実測エミッション投影データであり、前記画像再構成部は、実測トランスミッション投影データの取得された領域の幅であるデータ幅の外側の投影データの推定を行わずに前記データ幅を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含む画像を、前記実測トランスミッション投影データを用いて逐次近似画像再構成してトランスミッション画像を生成するトランスミッション画像生成部であり、前記実測エミッション投影データに基づいて前記トランスミッション画像を利用した逐次近似画像再構成を行ってエミッション画像を生成するエミッション画像生成部と、をさらに備えていることが好ましい。これにより、トランケーション部分の画像が推定されたトランスミッション画像を利用した逐次近似画像再構成を行うことにより、エミッション画像生成部は、吸収補正とエミッション画像の生成を行っている。そのため、トランスミッション画像のトランケーション部分に起因するエミッション画像のアーチファクトを低減させることができる。
また、本発明に係る放射線断層画像生成装置において、前記エミッション画像生成部は、実測エミッション投影データの取得された領域の幅であるデータ幅の外側の投影データの推定を行わずに前記データ幅を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含む画像を、前記実測エミッション投影データを用いて前記トランスミッション画像を利用した逐次近似画像再構成を行ってエミッション画像を生成することが好ましい。これにより、実測エミッション投影データが、被検体Mが検出範囲からはみ出してトランケーションしている場合でも揃っている実測エミッション投影データでトランケーション部分の画像を推定することができる。また、吸収補正も行うことができる。
また、本発明に係る放射線断層画像生成装置の一例において、前記放射線断層画像は、エミッション画像またはトランスミッション画像であることである。エミッション画像またはトランスミッション画像の放射線断層画像を生成する際に、実測投影データがトランケーションしている場合でも揃っている実測投影データのみでトランケーション部分の画像を推定することができる。
また、本発明に係る放射線断層画像生成装置の一例において、前記実測投影データは、複数の放射線検出器により収集されたものであることである。例えば、検出範囲の大きさが異なる場合でも、揃っている実測投影データのみで画像を推定することができる。
また、本発明に係る放射線断層撮影装置は、実測投影データに基づいて放射線断層画像を生成する放射線断層撮影装置であって、被検体に対して異なる複数の方向から前記実測投影データを収集するデータ収集部と、前記実測投影データの取得された領域の幅であるデータ幅の外側の投影データの推定を行わずに前記データ幅を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含む画像を逐次近似画像再構成する画像再構成部と、を備えていることを特徴とするものである。
本発明に係る放射線断層撮影装置によれば、データ収集部は、被検体に対して異なる複数の方向から実測投影データを収集する。画像再構成部は、実測投影データの取得された領域の幅であるデータ幅の外側の投影データの推定を行わずにデータ幅を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含む画像を逐次近似画像再構成する。逐次近似画像再構成の画像を広く設定することにより、実測投影データが、被検体Mが検出範囲からはみ出してトランケーションしている場合でも揃っている実測投影データでトランケーション部分の画像を推定することができる。揃っている実測投影データは、放射線断層画像を生成するための投影データに推定された部分を有することによる誤差が生じないので、投影データ間の整合性が高くアーチファクトを低減させることができる。したがって、パラメータの最適化などの設定をほとんど必要としなく、トランケーション部分の画像推定が行われた放射線断層画像を容易に取得することができる。
また、本発明に係る放射線断層画像生成プログラムは、被検体に対して異なる複数の方向から収集された実測投影データに基づいて放射線断層画像を生成する処理をコンピュータに実行させるための放射線断層画像生成プログラムであって、前記実測投影データの取得された領域の幅であるデータ幅の外側の投影データの推定を行わずに前記データ幅を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含む画像を逐次近似画像再構成する工程を備えていることを特徴とするものである。
本発明に係る放射線断層画像生成プログラムによれば、実測投影データの取得された領域の幅であるデータ幅の外側の投影データの推定を行わずにデータ幅を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含む画像を逐次近似画像再構成する。逐次近似画像再構成の画像を広く設定することにより、実測投影データが、被検体Mが検出範囲からはみ出してトランケーションしている場合でも揃っている実測投影データでトランケーション部分の画像を推定することができる。揃っている実測投影データは、放射線断層画像を生成するための投影データに推定された部分を有することによる誤差が生じないので、投影データ間の整合性が高くアーチファクトを低減させることができる。したがって、パラメータの最適化などの設定をほとんど必要としなく、トランケーション部分の画像推定が行われた放射線断層画像を容易に取得することができる。
本発明に係る放射線断層画像生成装置、放射線断層撮影装置および放射線断層画像生成プログラムによれば、実測投影データの取得された領域の幅であるデータ幅の外側の投影データの推定を行わずにデータ幅を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含む画像を逐次近似画像再構成する。逐次近似画像再構成の画像を広く設定することにより、実測投影データが、被検体Mが検出範囲からはみ出してトランケーションしている場合でも揃っている実測投影データでトランケーション部分の画像を推定することができる。揃っている実測投影データは、放射線断層画像を生成するための投影データに推定された部分を有することによる誤差が生じないので、投影データ間の整合性が高くアーチファクトを低減させることができる。したがって、パラメータの最適化などの設定をほとんど必要としなく、トランケーション部分の画像推定が行われた放射線断層画像を容易に取得することができる。
実施例1に係るPET/CT装置の構成を示すブロック図である。
被検体が撮影範囲からはみ出していることの説明に供する図である。
実測投影データ(サイノグラム)の一例を示す図である。
逐次近似画像再構成の説明に供する図である。
実測投影データのデータ幅を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含む再構成画像領域の説明に供する図である。
(a)〜(d)は実測投影データのみを用いた逐次近似画像再構成の説明に供する図である。
実施例に係るPET/CT装置(放射線断層撮影装置)の動作を示すフローチャートである。
(a)〜(d)は実施例2に係る逐次近似画像再構成の初期画像の説明に供する図である。
実施例3に係るPET/CT装置の構成を示すブロック図である。
実施例4に係るSPECT/CT装置の構成を示すブロック図である。
実施例4に係るSPECT装置の構成を示すブロック図である。
変形例に係る放射線断層撮影装置の構成を示す図である。
(a)は変形例に係る放射線断層撮影装置の構成を示し、(b)は(a)で収集した実測投影データ(サイノグラム)の一例を示す図である。
(a)〜(d)は、トランケーションアーチファクトの説明に供する図である。
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。図1は、実施例1に係るPET/CT装置の構成を示すブロック図であり、図2は、被検体が撮影範囲からはみ出していることの説明に供する図である。図3は、実測投影データ(サイノグラム)の一例を示す図であり、図4は、逐次近似画像再構成の説明に供する図である。図5は、実測投影データのデータ幅を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含む再構成画像領域の説明に供する図である。本実施例では、放射線断層撮影装置として、PET装置とX線CT装置とを組み合わせたPET/CT装置を一例に説明する。
図1を参照する。PET/CT装置1は、ベッド装置2を備えている。ベッド装置2は、被検体Mを載置する天板2aを上下に昇降移動させ、また、被検体Mの体軸に沿って平行移動させるように構成されている。PET/CT装置1は、天板2aに載置された被検体Mを診断するPET装置3およびX線CT装置4を備えている。
PET装置3は、開口部31aを有したガントリ31と、被検体Mから放射したγ線対を検出するγ線検出器32とを備えている。γ線検出器32は、開口部31a、すなわち、被検体Mの体軸周りを取り囲むようにしてリング状に構成され、ガントリ31内に収容されている。
γ線検出器32は、例えば、シンチレータブロックとライトガイドと光電子増倍管(PMT)とを備えている(いずれも図示しない)。シンチレータブロックは、複数個のシンチレータからなり、放射性薬剤が投与された被検体Mから放射したγ線を光に変換する。変換された光は、ライトガイドにより案内され、光電子増倍管により光電変換されて電気信号として出力される。
PETデータ収集部36は、図示しない同時計数回路等を備えている。PETデータ収集部36は、γ線検出器32で検出されたγ線に基づいてPETデータ(エミッションデータ)、すなわち実際に測定された実測PET投影データを収集する。実測PET投影データは、被検体Mに対して異なる複数の方向から収集される。また、実測PET投影データは、収集した方向の順番に並べられてサイノグラムの形式にされる。
一方、X線CT装置4は、開口部41aを有したガントリ41を備えている。ガントリ41内には、被検体Mに向けてX線を照射するX線管42と、被検体Mを透過したX線を検出するX線検出器43とが設けられている。X線管42とX線検出器43は対向配置されており、開口部41a内に配置された被検体Mの体軸を中心に、X線管42とX線検出器43とが一体となって回転するように構成されている。X線管42は、ファン状のX線(ファンビーム)を照射する。X線検出器43は、円弧状(図2)の検出面を有して構成されるが、それ以外、例えば、フラットパネル型X線検出器(FPD)であってもよい。
X線管42は、X線管制御部44によりX線照射に必要な制御が実行される。X線管制御部44は、X線管42の管電圧や管電流を発生させる高電圧発生部45を有している。X線管制御部44は、管電圧や管電流や照射時間等のX線照射条件に応じてX線管42からX線を照射する。
X線CTデータ収集部46は、X線検出器43で検出されたX線に基づいてX線CTデータ(トランスミッションデータ)、すなわち、実際に測定された実測CT投影データを収集する。実測CT投影データは、図2に示すように、被検体Mに対して異なる複数の方向から収集される。また、実測PET投影データは、図3に示すように、収集した方向の順番に並べられてサイノグラム70の形式にされる。なお、ある方向の実測CT投影データを符号70aに示す。また、サイノグラム70の縦軸は、360°に限らず、例えば180°であってもよい。実測CT投影データは、検出されたX線強度と被検体Mが無いときのX線強度の比の対数をとって、吸収係数μ(cm−1)の投影データに処理される。なお、ファンビームの実測CT投影データは、パラレルビームの実測CT投影データに変換される。
本実施例では、図2に示すように、被検体Mは、X線検出器43の有効視野、すなわち検出範囲からはみ出して配置されているものとする。そのため、X線CTデータ収集部46には、被検体Mが検出範囲からはみ出して被検体Mが欠けているトランケーションした実測CT投影データが収集される(図3)。
PETデータ収集部36で収集された実測PET投影データ、およびX線CTデータ収集部46で収集された実測CT投影データは、断層画像生成部5に転送される。図1に戻る。断層画像生成部5は、X線CT画像生成部51、吸収係数マップ変換部52、補正用投影データ生成部53、吸収補正部54、PET画像生成部55および重ね合わせ部56を備えている。なお、断層画像生成部5は、本発明の放射線断層画像生成装置に相当し、X線CT画像生成部51は、本発明の画像再構成部に相当する。実測PET投影データは、本発明の実測エミッション投影データおよび実測投影データに相当する。実測CT投影データは、本発明の実測トランスミッション投影データおよび実測投影データに相当する。
X線CT画像生成部51は、実測CT投影データを逐次近似法による画像再構成(逐次近似画像再構成)を行ってX線CT画像を生成する。逐次近似法による画像再構成は、例えばML−EM(maximum likelihood - expectation maximization)法により行われる。ML−EM法による画像再構成の計算式を下記の式(1)に示す。但し、式(1)はエミッション画像再構成などの放射型画像再構成を示しており、X線CT画像再構成やトランスミッション画像再構成などの透過型画像再構成においては、実測投影データや検出確率に対数変換等の処理が加わる場合がある。
λ
j (k+1):k+1回目の再構成画像
λ
j (k):k回目の再構成画像
Σ
j′=1 ma
ij′λ
j′ (k):順投影
Σ
i=1 n〔(y
ia
ij)/(Σ
j′=1 ma
ij′λ
j′ (k))〕:逆投影
Σ
i=1 na
ij:検出確率a
ijの総和
y
i:実測投影データ
i:実測投影データの画素(1〜nまでの通し番号が付され、nはX線検出器の一列のX線検出素子数×投影方向数で算出される)
j:再構成画像の画素(1〜mまでの通し番号が付される)
ML−EM法による画像再構成を上述の式(1)および図4を参照して説明する。すなわち、式(1)に基づき、次の手順で再構成画像λjの各画素jの更新が行われる。まず、再構成画像λj (k)の各画素jの初期値を仮定する。例えば、全ての画素jの初期値をλj (k)=1とする。次に、再構成画像λj (k)(λj′ (k))からの順投影により投影データを算出する。なお、この算出された投影データを算出投影データと呼ぶこととする。実測投影データyiと算出投影データとの比を計算する。この実測投影データyiと算出投影データとの比を逆投影する。逆投影された値を検出確率の総和Σi=1 naijで規格化し、再構成画像λj (k)を乗算して再構成画像λj (k+1)を計算する。なお、再構成画像λjの各画素jの更新を予め設定された回数を繰り返し行うときは、計算されたλj (k+1)をλj (k)とし、順投影により算出投影データを算出する工程に戻る。
X線CT画像生成部51の再構成画像領域は、実測CT投影データのデータ幅(データ画素数)を直径とする円形領域よりも広く設定された円形領域を含んで構成される。すなわち、図5に示すように、実測CT投影データ71のデータ幅72を直径とする円形領域(有効視野)を符号73aで示し、円形領域73aを含む正方形の再構成画像領域を符号73で示す。一方、円形領域73aよりも広く設定された円形領域(有効視野)を符号74aで示し、円形領域74aを含む正方形の再構成画像領域を符号74で示す。なお、再構成画像領域74は、正方形に限定されず、例えば矩形であってもよい。
広く設定された円形領域74aは、被検体Mのはみ出し部が無いように設定され、例えばPET装置3の有効視野と同じ大きさ(例えば直径60cm程度)に設定してもよい。再構成画像領域73,74の中心位置75は、ほぼ同じ位置である。また、各方向の実測CT投影データ71のデータ幅72の中心線76は、中心位置75を通るようになっている。
X線CT画像生成部51は、実測CT投影データ71のデータ幅72を直径とする円形領域73aよりも広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74で、実測CT投影データ71のみを用いてML−EM法による画像再構成を行ってX線CT画像を生成する。実測CT投影データ71のみとは、収集されて揃っている実測CT投影データ71のことであり、トランケーション部分を推定した投影データを含まないこととする。
図6(a)〜図6(d)は、実測投影データのみを用いたML−EM法による画像再構成の説明に供する図である。図6(a)において、実測CT投影データ71を、そのデータ幅72で投影方向に反映させる。すなわち、実測CT投影データ71を、円形領域73aと、図6(a)中の斜線で示した領域74bとに反映するようにする。具体的には、例えば、まず、実測CT投影データ71と同じ投影方向であって、実測CT投影データ71と同じデータ幅の算出投影データを再構成画像領域74から算出する。そして、上述の式(1)の説明のように、算出投影データと実測CT投影データとの比を求めて比較する。なお、領域74bは、実測CT投影データ71と同じ投影(逆投影)方向であって、実測CT投影データ71と同じデータ幅で限定される領域であり、円形領域73aの外側の領域である。また、算出投影データのデータ幅が広く設定された再構成画像領域74であるときは、実測CT投影データがある部分のみ反映させるようにする。
図6(b)および図6(c)は、図6(a)と異なる方向の一例を示す。この場合も同様に、実測CT投影データ71は、円形領域73aと領域74bとに反映される。
また、図6(d)は、図6(a)〜図6(c)における実測CT投影データが反映される領域を重ね合わせた様子を示した図である。図6(d)中の線77は、投影線である。図6(d)に示すように、広く設定された円形領域74a(を含む再構成画像領域74)のうち有効視野73aの外側の領域では、実測CT投影データ量が制限されている。しかしながら、揃っている実測CT投影データは、推定による誤差を含まないデータであるので、実測CT投影データ間の整合性が高くアーチファクトを低減させることができる。
図1に戻る。吸収係数マップ変換部52は、X線CT画像生成部51で生成されたX線CT画像を511eVの吸収係数μ(cm−1)の吸収係数マップ(吸収係数画像)に変換する。補正用投影データ生成部53は、変換された吸収係数マップを異なる複数の方向に投影して吸収補正用投影データを生成する。吸収補正用投影データは、吸収補正部54に送られる。一方、吸収補正部54には、PETデータ収集部36から吸収補正部54に実測PET投影データが送られる。吸収補正部54は、X線CT画像に基づいて求められた吸収補正用投影データを用いて実測PET投影データに対して吸収補正を行う。
PET画像生成部55は、吸収補正部54で吸収補正された実測PET投影データに基づいて画像再構成を行ってPET画像を生成する。画像再構成は、ML−EM法等の逐次近似法でもよく、その他の既存の方法(例えばフィルタ補正逆投影法(FBP法)等の解析的再構成法)でもよい。生成されたPET画像は、重ね合わせ部56または後述する表示部62に表示され、また、後述する記憶部64に記憶される。
重ね合わせ部56は、PET画像生成部55で生成されたPET画像と、X線CT画像生成部51で生成されたX線CT画像とを重ね合わせて合成画像を生成する。なお、重ね合わせ部56は、後述する記憶部64からPET画像とX線CT画像を取得して合成画像を生成するようにしてもよい。
断層画像生成部5の後段には、主制御部61、表示部62、入力部63および記憶部64が設けられている。主制御部61は、PET/CT装置1の各構成を統括的に制御し、中央演算処理装置(CPU)などで構成される。主制御部61は、例えば、ベッド装置2や、X線管42、X線検出器43、X線管制御部44等の制御を行う。なお、ベッド装置2やX線管42、X線検出器43等は、図示しないラックやピニオンやモータ等の移動機構により移動される。
表示部62は、モニタ等で構成され、PET画像やX線CT画像、合成画像を表示する。入力部63は、キーボードやマウス等で構成される。記憶部64は、ROM(Read-only Memory)、RAM(Random-Access Memory)またはハードディスク等、取り外し可能なものを含む記憶媒体で構成される。記憶部64には、PET画像やX線CT画像、合成画像が記憶される。なお、実測PET投影データおよび実測X線CT投影データを記憶部64に記憶させて、記憶部64からX線CT画像生成部51または吸収補正部54に実測PET投影データおよび実測X線CT投影データを送信してもよい。
断層画像生成部5は、CPU等で構成される制御部と、表示部と、ROMやRAMやハードディスク等、取り外し可能なものを含む記憶媒体で構成される記憶部とを備えたワークステーションやパーソナルコンピュータで構成してもよい(いずれも図示しない)。記憶部には、X線CT画像生成部51、吸収係数マップ変換部52、補正用投影データ生成部53、吸収補正部54、PET画像生成部55および重ね合わせ部56の各機能(後述するステップS01〜S04,S11〜S14)をプログラムとして記憶する。制御部は、記憶部から必要に応じてそのプログラムを読み出して、実測PET投影データおよび実測CT投影データを処理するようにしてもよい。
また、断層画像生成部5は、CPU等で構成される制御部で構成され、X線CT画像生成部51、吸収係数マップ変換部52、補正用投影データ生成部53、吸収補正部54、PET画像生成部55および重ね合わせ部56の各機能(後述するステップS01〜S04,S11〜S14)を動作プログラムとして記憶部64に記憶させる。そして、断層画像生成部5は、記憶部64から必要に応じてその動作プログラムを読み出して、実測PET投影データおよび実測CT投影データを処理してもよい。この場合において、主制御部61が記憶部64から必要に応じてその動作プログラムを読み出して、実測PET投影データおよび実測CT投影データを処理してもよい。また、その動作プログラムは、LAN等のネットワークシステムでPET/CT装置1と接続されたワークステーションやパーソナルコンピュータ上で実測PET投影データおよび実測CT投影データを処理してもよい。
次に本実施例のPET/CT装置1の動作について説明する。図7は、実施例に係るPET/CT装置(放射線断層撮影装置)の動作を示すフローチャートである。
〔ステップS01〕実測CT投影データの収集(実測トランスミッション投影データの収集)
ガントリ41の開口部41aに被検体Mの関心部位を配置させる。このとき、被検体Mは、図2に示すように、有効視野、すなわちファンビームの検出範囲からはみ出しているものとする。X線管42とX線検出器43とを一体に被検体Mの体軸を中心に回転させる。X線管42は、被検体Mに向けてX線を照射し、被検体Mを透過したX線はX線検出器43で検出される。X線CTデータ収集部46は、X線検出器43で検出されたX線に基づいて、被検体Mが検出範囲からはみ出してトランケーションした実測CT投影データを収集する。実測投影データは、図3に示すように、サイノグラム70形式に順番に並べられる。また、実測CT投影データは、X線CT画像生成部51に送られる。
〔ステップS02〕X線CT画像の生成(トランスミッション画像の生成)
X線CT画像生成部51は、実測CT投影データのデータ幅を直径とする円形領域73aよりも広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74で、実測CT投影データのみを用いてML−EM法(逐次近似法)による画像再構成を行ってX線CT画像を生成する。
図6(a)〜図6(d)に示すように、実測CT投影データ71は、広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74のうち、実測CT投影データ71がある部分のみで反映するように画像再構成される。そのため、揃っている実測CT投影データは、推測による誤差を含まないデータであるので、投影データ間の整合性が高くアーチファクトとなりにくい。X線CT画像生成部51で生成されたX線CT画像は、吸収係数マップ変換部52に送られ、また、重ね合わせ部56や表示部62、記憶部64に送られる。
〔ステップS03〕吸収係数マップ変換
吸収係数マップ変換部52は、X線CT画像のCT値(吸収係数(cm−1))に基づいて511eVの吸収係数μ(cm−1)の吸収係数マップに変換する。吸収係数マップは、補正用投影データ生成部53に送られる。
〔ステップS04〕吸収補正用投影データの生成
吸収補正用投影データ生成部53は、吸収係数マップを投影して吸収補正用投影データを生成する。吸収補正用投影データは、吸収補正部54に送られる。
〔ステップS11〕実測PET投影データの収集(実測エミッション投影データの収集)
被検体Mには、ポジトロン放射性同位元素(ラジオアイソトープ:RI)で標識した放射性薬剤が予め投与されている。ガントリ31の開口部31aに被検体Mの関心部位を配置させる。被検体Mから180°反対方向に放射する2つのγ線は、γ線検出器32で検出される。PETデータ収集部36は、γ線検出器32で同時計数されたγ線の投影データ、実測PET投影データを収集する。実測PET投影データは、サイノグラム形式に順番に並べられる。なお、被検体Mは、PET装置3の検出範囲からはみ出していないものとする。実測PET投影データは、吸収補正部54に送られる。
〔ステップS12〕吸収補正
吸収補正部54は、吸収係数マップに基づいて求められた吸収補正用投影データを用いて実測PET投影データに対して吸収補正を行う。ここで、CT装置4の有効視野はPET装置3よりも狭く、実測CT投影データはトランケーションしている。しかしながら、X線CT画像生成部51により、トランケーション部分の画像が推定されたX線CT画像に基づいて、吸収補正部54は、実測PET投影データを吸収補正している。そのため、X線CT画像のトランケーション部分に起因するPET画像のアーチファクトを低減させることができる。すなわち、吸収補正におけるトランケーションアーチファクトの伝播を低減させることができる。
〔ステップS13〕PET画像の生成(エミッション画像の生成)
PET画像生成部55は、吸収補正部54で吸収補正された実測PET投影データに基づいて画像再構成を行ってPET画像を生成する。生成されたPET画像は、重ね合わせ部56や表示部62、記憶部64に送られる。
〔ステップS14〕表示・保存
X線CT画像生成部51で生成されたX線CT画像、PET画像生成部55で生成されたPET画像、または重ね合わせ部56によりX線CT画像とPET画像とを重ね合わせた合成画像は、表示部62に表示される。また、X線CT画像、PET画像および合成画像は、記憶部64に記憶される。
本実施例に係るPET/CT装置1によれば、X線CTデータ収集部46は、被検体Mに対して異なる複数の方向から実測CT投影データを収集する。X線CT画像生成部51は、実測CT投影データのデータ幅を直径とする円形領域73aよりも広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74で、実測CT投影データのみを用いてML−EM法による画像再構成を行っている。ML−EM法による画像再構成の再構成画像領域を広く設定することにより、実測CT投影データが、被検体Mが検出範囲からはみ出してトランケーションしている場合でも揃っている実測CT投影データのみでトランケーション部分の画像を推定することができる。揃っている実測CT投影データは、X線CT画像を生成するための投影データに推定された投影データ部分を有することによる誤差が生じないので、投影データ間の整合性が高くアーチファクトを低減させることができる。したがって、パラメータの最適化などの設定をほとんど必要としなく、トランケーション部分の画像推定が行われた放射線断層画像を容易に取得することができる。トランケーション補正付きの画像再構成をすることができる。
なお、アーチファクト低減が実現した理由は、少ない投影データであっても投影データ間の整合が取れているので、逐次近似画像再構成の特性でもある、投影データに多少の欠損があっても最も確からしいところに収束する特性が生かされているためと考えられる。
また、X線CT画像に基づいて求められた吸収補正用投影データを用いて実測PET投影データに対して吸収補正を行う吸収補正部54と、吸収補正部54で吸収補正された実測PET投影データに基づいて画像再構成を行ってPET画像を生成するPET画像生成部55と、をさらに備えている。これにより、トランケーション部分の画像が推定されたX線CT画像に基づいて、吸収補正部54は、実測PET投影データを吸収補正している。そのため、X線CT画像のトランケーション部分に起因するPET画像のアーチファクトを低減させることができる。
次に、図面を参照して本発明の実施例2を説明する。図8(a)〜図8(d)は実施例2に係る逐次近似画像再構成の初期画像の説明に供する図である。なお、図8(a)〜図8(d)において、図示の便宜上、初期画像の画像数を少なく図示している。また、実施例1と重複する説明は省略する。
実施例2では、実施例1の構成に加え、X線CT画像生成部51は、再構成画像(X線CT画像)領域の初期画像に、予め設定された先見(特徴)情報を与えるようになっている。図8(a)は先見情報を与えていない状態を示す。図8(a)中の円形領域(有効視野)74aには、初期画像の初期値として例えば“1”が与えられる。一方、再構成画像領域74であって円形領域74aの外側には、初期画像の初期値として“0(ゼロ)”が与えられる。これにより、円形領域74aの外側領域では画素値が更新されないようになっている。なお、必要に応じて円形領域74aの外側領域の初期画像の初期値を“1”としてもよい。
X線CT画像生成部51は、例えば、ML−EM法による画像再構成の際に、広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74の初期画像に、天板2aに対応する画素を吸収係数μ(cm−1)とする先見情報を与える。図8(b)に示すように、ML−EM法による画像再構成の初期画像には、天板2aに対応する画素を吸収係数μとする先見情報が与えられる。これにより、ML−EM法による画像再構成の際に、天板2aに対応する画素値の精度を高めることができ、また、これに伴いトランケーション部分の画素値の精度を高めることができる。天板2aに対応する画素は、予め撮影されたX線CT画像の生データであるCT値(μ値)から設定される。このX線CT画像における天板2aの位置は、予め撮影されたX線CT画像の天板2aの位置から設定されている。天板2aの位置を被検体Mの体軸と垂直な面(XY面)で移動すると、その移動に合わせて初期画像内の天板2aに対応する画素位置が移動するようになっている。
また、X線CT画像生成部51は、ML−EM法による画像再構成の際に、広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74の初期画像に、天板2a内部(例えば内部が中空や他材料で構成される)に対応する画素値を“0”とする先見情報を与えるようにしてもよい。すなわち、図8(c)に示すように、天板2a内部に対応する画素値に“0”が与えられる。この場合も同様に、天板2a内部に対応する画素は、予め撮影されたX線CT画像から設定されている。また、天板2aの移動に合わせて初期画像内の天板2a画像も移動する。天板2a内部には被検体Mが配置されないので、初期画像の天板2a内部に対応する画素値を“0”として画像更新を行わないようにしている。これにより、トランケーション部分の画素値の精度を高めることができる。なお、天板2a内部に対応する画素値を吸収係数μとしてもよい。
また、X線CT画像生成部51は、ML−EM法による画像再構成の際に、広く設定された円形領域74aを含む再構成画像74の初期画像に、予め設定された天板2a位置よりも低い位置の画素値を“0”とする先見情報を与えるようにしてもよい。すなわち、図8(d)に示すように、予め設定された天板2a位置によりも低い位置の画素値に“0”が与えられる。予め設定された天板2a位置は、例えば天板2aの載置面2dでもよいし、その反対側の面2eでもよい。また、載置面2dよりも下方の予め設定された位置2fでもよい。天板2aより低い位置には被検体Mが配置されないので、初期画像の予め設定された天板2a位置よりも低い画素値を“0”として画像更新を行わないようにしている。これにより、トランケーション部分の画素値の精度を高めることができる。なお、図8(b)〜図8(d)を組み合わせてもよい。
次に、図面を参照して本発明の実施例3を説明する。図9は、実施例3に係るPET/CT装置の構成を示すブロック図である。なお、各実施例と重複する説明は省略する。
上述の各実施例では、X線CTデータ収集部46で収集された実測CT投影データに基づいたX線CT画像から吸収補正用投影データを生成し、PETデータ収集部36で収集された実測PET投影データに対して吸収補正を行っていた。しかしながら、図9に示すように、PET/CT装置90は、外部線源91とγ線検出器92とを備え、トランスミッションデータ収集部96で収集された実測トランスミッション投影データに基づいて吸収補正用投影データを生成し、実測PET投影データに対して吸収補正を行うようにしてもよい。
すなわち、PET/CT装置70は、外部線源91、γ線検出器92、トランスミッションデータ収集部96、およびトランスミッション画像生成部97および吸収係数マップ変換部98をさらに備えている。外部線源91およびγ線検出器92は、例えばPET装置3に設けられる。
外部線源91は、例えば68Ge−68Ga、137Csでかつ線状または点状で構成される。外部線源91は、図示しない回転機構により、被検体Mの体軸を中心に被検体Mの周りを回転する。γ線検出器92は、γ線検出器32と同様に、被検体Mの体軸周りを取り囲むようにしてリング状に構成され、ガントリ31内に収容されている。γ線検出器92は、例えばシンチレータブロックとライトガイドと光電子増倍管とを備えている。外部線源91が68Ge−68Gaの場合は、例えば被検体Mの周りを回転する外部線源91の位置に合わせて同時計数を行うγ線検出器32の検出範囲が限定される。また、外部線源91が137Csの場合は、例えばファン状にγ線が照射される。そのため、図2と同様に、PET画像の有効視野に比べ、トランスミッション画像の有効視野が狭くなる。
γ線検出器92は、外部線源91から放射されて被検体Mを透過する等したγ線を検出する。トランスミッションデータ収集部96は、γ線検出器92で検出されたγ線に基づいて、トランスミッションデータ、すなわち実測トランスミッション投影データを収集する。なお、トランスミッションデータ収集部96は、外部線源91が68Ge−68Gaの場合、図示しない同時計数回路等を備えている。また、実測トランスミッション投影データは、収集した各方向の順番に並べられてサイノグラム70形式にされる。実測トランスミッション投影データは、例えば予め収集された被検体Mが無いときの実測ブランク投影データ(計数率)を実測トランスミッション投影データ(計数率)で割った値の対数をとって、吸収係数μ(cm−1)の投影データに処理される。
トランスミッション画像生成部97は、実測トランスミッション投影データのデータ幅を直径とする円形領域73aよりも広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74で、実測トランスミッション投影データのみを用いてML−EM法(逐次近似法)による画像再構成を行ってトランスミッション画像を生成する。なお、トランスミッション画像生成部97は、本発明の画像再構成部に相当する。実測トランスミッション投影データは、本発明の実測投影データに相当する。
吸収係数マップ変換部98は、トランスミッション画像生成部97で生成されたトランスミッション画像を必要に応じて被検体Mから放射されるγ線のエネルギ(例えば511keV)に変換する。
次に、本実施例のPET/CT装置90の動作について実施例1の図7を参照して説明する。なお、実施例1の図7のフローチャートにおいてステップS04,S11〜S14は、X線CT装置4での説明の一部が外部線源91とγ線検出器92等での説明に置き換わるのみ異なるので説明を省略する。
〔ステップS01a〕トランスミッションデータの収集
ガントリ31の開口部31aに被検体Mの関心部位を配置させる。このとき、被検体Mは、図2と同様に、有効視野、すなわちファンビームの検出範囲からはみ出しているものとする。外部線源(例えば137Cs)91は、リング状のγ線検出器92の内壁を沿うように円の軌跡を描きながら回転移動する。外部線源91は、被検体Mに向けてγ線を照射し、被検体Mを透過したX線はγ線検出器92で検出される。トランスミッションデータ収集部96は、γ線検出器92で検出されたγ線に基づいて、実測トランスミッション投影データを収集する。実測トランスミッション投影データμは、図3に示すように、サイノグラム70形式に順番に並べられる。また、実測トランスミッション投影データは、トランスミッション画像生成部97に送られる。
〔ステップS02a〕トランスミッション画像の生成
トランスミッション画像生成部97は、実測トランスミッション投影データのデータ幅を直径とする円形領域73aよりも広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74で、実測トランスミッション投影データのみを用いてML−EM法(逐次近似法)による画像再構成を行ってトランスミッション画像を生成する。トランスミッション画像は、吸収係数マップ変換部98に送られる。
〔ステップS03a〕吸収係数マップ変換
吸収係数マップ変換部98は、トランスミッション画像生成部97で生成されたトランスミッション画像を必要に応じて被検体Mから放射されるγ線のエネルギ(例えば511eV)の吸収係数μの吸収係数マップに変換する。吸収係数マップは、補正用投影データ生成部53に送られる。
なお、図9中のX線CT生成部51は、実施例1と同様に、実測CT投影データのデータ幅を直径とする円形領域73aよりも広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74で、実測CT投影データのみを用いてML−EM法による画像再構成を行ってX線CT画像を生成する。これにより、実測CT投影データが、被検体Mが検出範囲からはみ出してトランケーションしている場合でも揃っている実測CT投影データのみでトランケーション部分の画像を推定することができる。また、重ね合わせ部56は、PET画像生成部55で生成されたPET画像と、X線CT画像生成部51で生成されたX線CT画像とを重ね合わせて合成画像を生成する。
本実施例に係るPET/CT装置90によれば、トランスミッションデータ収集部96は、被検体Mに対して異なる複数の方向から実測トランスミッション投影データを収集する。トランスミッション画像生成部97は、実測トランスミッション投影データのデータ幅を直径とする円形領域73aよりも広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74で、実測トランスミッション投影データのみを用いてML−EM法による画像再構成を行っている。ML−EM法による画像再構成の再構成画像領域を広く設定することにより、実測トランスミッション投影データが、被検体Mが検出範囲からはみ出してトランケーションしている場合でも揃っている実測トランスミッション投影データのみでトランケーション部分の画像を推定することができる。揃っている実測トランスミッション投影データは、PET画像を生成するための投影データに推定された部分を有することによる誤差が生じないので、投影データ間の整合性が高くアーチファクトを低減させることができる。パラメータの最適化などの設定をほとんど必要としなく、トランケーション部分の画像推定が行われたPET画像を容易に取得することができる。
また、トランスミッション画像に基づいて求められた吸収補正用投影データを用いて実測PET投影データに対して吸収補正を行う吸収補正部54と、吸収補正部54で吸収補正された実測PET投影データに基づいて画像再構成を行ってPET画像を生成するPET画像生成部36と、をさらに備えている。これにより、トランケーション部分の画像が推定されたトランスミッション画像に基づいて、吸収補正部54は、実測PET投影データを吸収補正している。そのため、トランスミッション画像のトランケーション部分に起因するPET画像のアーチファクトを低減させることができる。
次に、図面を参照して本発明の実施例4を説明する。図10は、実施例4に係るSPECT/CT装置の構成を示すブロック図であり、図11は、実施例4に係るSPECT装置の構成を示すブロック図である。なお、各実施例と重複する説明は省略する。
上述した各実施例では、PET装置3とX線CT装置4とを備えたPET/CT装置1,90であった。しかしながら、SPECT装置とCT装置とを備えたSPECT/CT装置120またはSPECT装置130であってもよい。SPECT/CT装置120は、図10に示すように、被検体Mから放射されたγ線を検出するγ線検出器121と、被検体Mにファン状のX線を照射するX線管122と、X線管122と対向配置されて被検体Mを透過したX線を検出するX線検出器123とを備えている。γ線検出器121の入射面側には、パラレルコリメータ121aが設けられている。γ線検出器121とX線管122とX線検出器123は、図示しないガントリに回転自在に取り付けられ、図示しない回転機構により回転される。なお、X線検出器123は、FPD等で構成されている。
また、SPECTデータ収集部124は、γ線検出器121で検出されたγ線に基づいて実測SPECT投影データを収集する。一方、トランスミッションデータ収集部125は、X線検出器123で検出されたX線に基づいて実測CT投影データを収集する。
トランスミッション画像生成部126は、実測CT投影データのデータ幅を直径とする円形領域73aよりも広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74で、実測CT投影データのみを用いてML−EM法による画像再構成を行ってX線CT画像を生成する。吸収係数マップ変換部127は、生成されたX線CT画像を必要に応じて被検体Mから放射されるγ線のエネルギの吸収係数μの吸収係数マップに変換する。なお、トランスミッション画像生成部126は、本発明の画像再構成部に相当する。実測SPECT投影データは、本発明の実測エミッション投影データおよび実測投影データに相当する。
SPECT画像生成部128は、実測SPECT投影データと吸収係数マップに基づいて、ML−EM法による画像再構成を行ってSPECT画像を生成する。ML−EM法による画像再構成では、吸収係数マップを利用して吸収補正を行いながら画像再構成を行う。
また、図10に示すX線管122およびX線検出器123に代えて、図11に示すように、外部線源131およびγ線検出器132を備えて、吸収係数マップを生成してもよい。すなわち、SPECT装置130は、外部線源131と、γ線検出器132と、トランスミッションデータ収集部133とを備えている。外部線源131は、例えば99mTcが用いられる。外部線源131の照射口には、コリメータ131aが設けられており、ファンビームを照射するようになっている。γ線検出器132の入射面側には、ファンビームコリメータ132aが設けられている。なお、外部線源131は、被検体Mに向けてファン状のγ線を照射し、被検体Mを透過したγ線は、ファンビームコリメータ132aを経由してγ線検出器132に入射する。
トランスミッションデータ収集部133は、γ線検出器132で検出されたγ線に基づいて実測トランスミッション投影データを収集する。また、その他の構成は、図10に示すSPECT/CT装置120と同じであるので説明を省略する。
トランスミッション画像生成部126(図10)は、実測トランスミッション投影データのデータ幅を直径とする円形領域73aよりも広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74で、実測トランスミッション投影データのみを用いてML−EM法による画像再構成を行ってトランスミッション画像を生成する。その後、トランスミッション画像を吸収係数マップに変換し、実測SPECT投影データと吸収係数マップに基づいて、吸収補正と画像再構成を行ってSPECT画像が生成される。
なお、SPECT/CT装置120およびSPECT装置130の動作は、図7のフローチャートにおいて、吸収補正用投影データの生成(ステップS04)および吸収補正(ステップS12)の工程を含まない。そして、エミッション画像の生成(ステップS13)において、SPECT画像生成部128は、実測SPECT投影データと吸収係数マップに基づいて、ML−EM法による画像再構成を行ってSPECT画像を生成する。
本実施例に係るSPECT/CT装置120およびSPECT装置130によれば、トランスミッションデータ収集部125,133は、被検体Mに対して異なる複数の方向からの実測トランスミッション投影データを収集する。トランスミッション画像生成部126は、実測トランスミッション投影データのデータ幅を直径とする円形領域73aよりも広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74で、実測トランスミッション投影データのみを用いてML−EM法による画像再構成を行ってトランスミッション画像を生成している。ML−EM法による画像再構成の再構成画像領域を広く設定することにより、実測トランスミッション投影データが、被検体Mが検出範囲からはみ出してトランケーションしている場合でも揃っている実測トランスミッション投影データのみでトランケーション部分の画像を推定することができる。揃っている実測トランスミッション投影データは、トランスミッション画像を生成するための投影データに推定された部分を有することによる誤差が生じないので、投影データ間の整合性が高くアーチファクトを低減させることができる。パラメータの最適化などの設定をほとんど必要としなく、トランケーション部分の画像推定が行われたトランスミッション画像を容易に取得することができる。
また、実測SPECT投影データに基づいてトランスミッション画像を利用したML−EM法による画像再構成を行ってSPECT画像を生成するSPECT画像生成部と、をさらに備えている。これにより、トランケーション部分の画像が推定されたトランスミッション画像を利用したML−EM法による画像再構成を行うことにより、SPECT画像生成部128は、吸収補正とエミッション画像の生成を行っている。そのため、トランスミッション画像のトランケーション部分に起因するSPECT画像のアーチファクトを低減させることができる。
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した各実施例では、トランスミッション画像を生成するX線CT画像作成部51およびトランスミッション画像作成部97,126は、図2に示すファンビームを照射することによるトランケーションした実測投影データに対して画像再構成を行っていた。しかしながら、図12に示すように、エミッション画像を生成するPET画像生成部55およびSPECT画像生成部128は、被検体Mが検出範囲からはみ出すことによるトランケーションした実測投影データに対しても、トランスミッション画像を生成した同様の処理で画像再構成を行ってもよい。
すなわち、実施例1〜3において、PET画像生成部55は、実測PET投影データのデータ幅を直径とする円形領域73aよりも広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74で、実測PET投影データのみを用いてML−EM法による画像再構成を行ってPET画像を生成する。これにより、実測投影データが、被検体が検出範囲からはみ出してトランケーションしている場合でも揃っている実測投影データのみでトランケーション部分の画像を推定することができる。なお、この場合、PET画像生成部55は、本発明の画像再構成部に相当する。
また、実施例4において、SPECT画像生成部128は、実測SPECT投影データのデータ幅を直径とする円形領域73aよりも広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74で、実測SPECT投影データのみを用いてトランスミッション画像を利用したML−EM法による画像再構成を行ってSPECT画像を生成する。これにより、実測SPECT投影データが、被検体Mが検出範囲からはみ出してトランケーションしている場合でも揃っている実測投影データのみでトランケーション部分の画像を推定することができる。また、吸収補正も行うことができる。なお、この場合、SPECT画像生成部128は、本発明の画像再構成部に相当する。
(2)上述した各実施例および各変形例、例えば実施例1では、X線CT装置4は、X線管42とX線検出器43を備え、X線CTデータ収集部46は、1つのX線検出器43で検出されたX線に基づいて実測X線CT投影データを収集していた。しかしながら、図13(a)に示すように、X線CT装置140は、2つ(複数)のX線管42a,42bと2つのX線検出器43a,43bを備え、X線CTデータ収集部46は、2つのX線検出器43a,43bで検出されたX線に基づいて実測X線CT投影データを収集してもよい。
例えば、X線検出器43a,43bは、検出範囲の大きさが異なっていてもよい。図13(b)は、サイノグラム141の一例を示す図であり、符号142は、検出領域の大きさが異なることにより実測CT投影データの無い部分を示す。この場合、X線CT画像生成部は、図13中の実測CT投影データのデータ幅が大きい方を基準として、そのデータ幅を直径とする円形領域73aよりも広く設定された円形領域74aを含む再構成画像領域74で、実測CT投影データのみを用いてML−EM法による画像再構成を行ってX線CT画像を生成する。これにより、符号142の実測CT投影データが無い部分を含めて、被検体Mが検出範囲からはみ出してトランケーションしている場合でも揃っている実測投影データのみでトランケーション部分の画像を推定することができる。なお、X線CT装置4に限定されず、実施例3の外部線源91とγ線検出器92に適用させてもよく、実施例4のSPECT/CT装置120およびSPECT装置130に適用させてもよい。なお、X線管とX線検出器(放射線検出器)は、3つ以上であってもよい。また、符号143は、実測CT投影データを有する部分を示す。
(3)上述した各実施例および各変形例では、逐次近似法としてML−EM法を用いていたがこれに限定されない。例えば、OS−EM(ordered subsets - expectation maximization)法、RAMLA(row-action maximum likelihood algorithm)法、DRAMA(dynamic RAMLA)法を用いてもよい。
(4)上述した各実施例および各変形例では、放射線断層撮影装置は、PET/CT装置1,90およびSPECT/CT装置120の複数の撮影装置(モダリティ)で構成されていたが、PET装置、SPECT装置およびX線CT装置等の単体の撮影装置で構成されていてもよい。また、複数の撮影装置の配置順序等が実施例と異なっていてもよい。
(5)上述した各実施例および各変形例において、ベッド装置2は、被検体Mが載置された天板2aをPET装置3、X線CT装置4、SPECT/CT装置120およびSPECT130等に対して相対的に移動していた。しかしながら、被検体Mが載置された天板2aに対してPET装置3、X線CT装置4、SPECT/CT装置120およびSPECT130等を移動する構成であってもよい。
(6)上述した各実施例および各変形例において、PETデータ収集部36、X線CTデータ収集部46、トランスミッションデータ収集部96,125,133およびSPECTデータ収集部124は、本発明のデータ収集部に相当する。
1,90 … PET/CT装置
2a … 天板
3 … PET装置
4 … X線CT装置
36 … PETデータ収集部
46 … X線CTデータ収集部
51 … X線CT画像生成部
53 … 補正用投影データ生成部
54 … 吸収補正部
55 … PET画像生成部
61 … 主制御部
64 … 記憶部
70 … サイノグラム
71 … 実測CT投影データ
72 … データ幅
73 … 再構成画像領域
73a… 円形領域(有効視野)
74 … 再構成画像領域
74a… 円形領域(有効視野)
96,125 … トランスミッションデータ収集部
97,126,133 … トランスミッション画像生成部
120… SPECT/CT装置
124… SPECTデータ収集部
128… SPECT画像生成部
130… SPECT装置