JP5848428B2 - 経口用医薬組成物および機能性食品 - Google Patents

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Description

本発明は、心拍数を増加させることなく、血圧を有意に低下させることが可能な経口用医薬組成物および機能性食品に関する。
高血圧症は日本人において比較的多い病態であり、高血圧症由来の心臓病、脳卒中、動脈硬化等にみられるように、高血圧症はしばしば重大な症状を引き起こす危険因子である。高血圧症の主な原因は、喫煙、飲酒、運動不足、ストレスの蓄積、塩分の過剰摂取といった、食生活や日頃の生活習慣が関係することが多い。特に伝統的な日本食は、塩分が過剰であることが多いため、高齢化に伴い、高血圧症の患者は今後も増加すると予測されている。
血圧は正常血圧に近づくほど、心臓病、脳卒中等の発症リスクが低減するため、高血圧症の予防及び治療が重要であり、食事療法、運動療法、薬物療法等が実施されている。
高血圧症の薬物療法は、食事療法や運動療法で血圧が正常化しない、症状が重い高血圧に対して行われ、確実な降圧効果が期待できる薬物が多用されている。このような薬物としては例えば、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、利尿薬、交感神経抑制薬等が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
特に、塩分過剰摂取に起因する高血圧症は、薬剤抵抗性の高血圧症になりやすいため、従来の高血圧症の予防治療剤では、血圧降下作用(降圧作用)がほとんど認められないことや、血圧降下作用が不十分であることが多い。
また、従来の血圧降下剤として用いられる薬物には、副作用を伴うものもあり、予防目的で長期間服用することについての安全性が確立されているとは必ずしも言えないのが実情である。また、従来の血圧降下剤は高血圧症が重度の場合に用いられるものが多く、高血圧症とまでは分類されない軽度〜中程度の高血圧予備軍における高血圧症の予防目的に使用されているわけではない。
そのため、経口投与で有効であり、天然物由来の高血圧症の予防や治療に用いることができる医薬組成物の開発が望まれていた。
このような課題に対し、本願発明者は、特許文献1において、ヤナギタデの乾燥物及び/又は抽出物を有効成分として含有する高血圧症の予防治療剤を開示しており、その実施例においてヤナギタデ乾燥物をマウスに投与することによって、有意な血圧降下作用が認められることを報告している。そして、マウスの用量依存性試験の結果から、降圧効果が認められるヒトへの摂取量は、一日当たり、ヤナギタデ乾燥物で50〜500mg程度であると説明している。
特開2014−129344号公報
高血圧治療ガイドライン2009,日本高血圧学会
ところで、従来の血圧降下薬として最も頻用されている薬剤は、カルシウム拮抗薬である。この薬剤は血管拡張性が強いので反射性に頻脈を伴うことが多い。心拍はその絶対数や変動が増加すると平均余命が短縮することがわが国の疫学的研究で証明されている(例えば、田主丸研究や大迫研究)。したがって、一般国民の長期予後を考えると心拍数を減少させるような降圧薬の開発が望まれる。現在使用されている降圧薬の内、降圧後も心拍数が増加しない薬剤として、ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬などが知られているが、心拍数を減少させる効果は証明されていない。このような背景から十分な降圧とともに心拍数を減少させる降圧薬の開発が望まれている。唯一降圧に伴って心拍数を減少させる薬剤としてβ遮断薬が既存するが、副作用が多岐に渡り(過度の徐脈・喘息誘発・冠れん縮性狭心症誘発・インスリン分泌低下・脂質代謝悪化など)実臨床での使用は限られているのが実状である。
かかる状況下、本発明は、経口投与によって優れた血圧降下作用を示すと共に、心拍数を増加させない新規な経口用医薬組成物および機能性食品を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ヤナギタデ由来の成分の特定量を経口投与することにより、心拍数を増加させることがなく、有意な血圧降下作用が発現することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物を含有し、ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で10mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有する、塩分過剰摂取に起因する高血圧症の予防及び/又は治療のための経口用医薬組成物。
<2> ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物を含有し、ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で10mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有する、心拍数低下のための経口用医薬組成物。
<3> ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物を含有し、ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で10mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有する、塩分過剰摂取に起因する高血圧症の予防及び/又は治療、並びに心拍数低下のための経口用医薬組成物。
<4> ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で12〜35mg/kg体重/日を経口投与されるように用いられる前記<1>から<3>のいずれかに記載の経口用医薬組成物。
<5> 前記ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物が、ヤナギタデ芽部の乾燥物及び/又は抽出物である前記<1>から<4>のいずれかに記載の経口用医薬組成物。
<6> 前記ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物が、ヒトに対してヒペロシド換算で0.1mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられる前記<1>から<5>のいずれかに記載の経口用医薬組成物。
> ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物を含有し、ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で10mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有する、塩分過剰摂取に起因する高血圧症の予防及び/又は治療のための機能性食品。
<8> ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物を含有し、ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で10mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有する塩分過剰摂取に起因する高血圧症の予防及び/又は治療、並びに心拍数低下のための機能性食品。
<9> ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で12〜35mg/kg体重/日を経口投与されるように用いられる前記<7>又は<8>に記載の機能性食品。
<10> 前記ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物が、ヤナギタデ芽部の乾燥物及び/又は抽出物である前記<7>から<9>のいずれかに記載の機能性食品。
<11> 前記ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物が、ヒトに対してヒペロシド換算で0.1mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられる前記<7>から<10>のいずれかに記載の機能性食品。
また、本発明の経口用医薬組成物及び機能性食品の他の態様は以下の通りである。
[1a] ヒペロシドを含有し、ヒトに対してヒペロシド換算で0.1mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有する、塩分過剰摂取に起因する高血圧症の予防及び/又は治療のための経口用医薬組成物。
[2a] ヒペロシドを含有し、ヒトに対してヒペロシド0.1mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有する、心拍数低下のための経口用医薬組成物。
[3a] ヒペロシドを含有し、ヒトに対してヒペロシド0.1mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有する、塩分過剰摂取に起因する高血圧症の予防及び/又は治療、並びに心拍数低下のための経口用医薬組成物。
[4a] ヒペロシドを含有し、ヒトに対してヒペロシド0.1mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有する、塩分過剰摂取に起因する高血圧症の予防及び/又は治療のための機能性食品。
本発明によれば、経口投与によって優れた血圧降下作用を有すと共に、心拍数低下作用を有する、経口用医薬組成物および機能性食品が提供される。当該経口用医薬組成物は、塩分過剰摂取に起因する高血圧症の予防及び/又は治療用の医薬組成物、心拍数低下用の医薬組成物、塩分過剰摂取に起因する高血圧症の予防及び/又は治療、並びに心拍数低下のための医薬組成物として使用することができる。
ヒトの収縮期血圧(SBP)に対するヤナギタデ乾燥物の用量依存性の評価結果である。 ヒトの拡張期血圧(DBP)に対するヤナギタデ乾燥物の用量依存性の評価結果である。 ヒトの心拍数に対するヤナギタデ乾燥物の用量依存性の評価結果である。 食塩依存性高血圧マウスの収縮期血圧(SBP)に対するヤナギタデ乾燥物の用量依存性の評価結果(8週間)である。 食塩依存性高血圧マウスの拡張期血圧(DBP)に対するヤナギタデ乾燥物の用量依存性の評価結果(8週間)である。 食塩依存性高血圧マウスの心拍数に対するヤナギタデ乾燥物の用量依存性の評価結果(8週間)である。 食塩依存性高血圧マウスの収縮期血圧(SBP)に対するヒペロシドの用量依存性の評価結果(8週間)である。 食塩依存性高血圧マウスの拡張期血圧(DBP)に対するヒペロシドの用量依存性の評価結果(8週間)である。 食塩依存性高血圧マウスの心拍数に対するヒペロシドの用量依存性の評価結果(8週間)である。
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
本発明は、ヤナギタデ(Persicaria hydropiper)の乾燥物及び/又は抽出物を含有し、ヒトに対してヤナギタデが含有する成分の特定量を経口投与されるように用いられることにより、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有する経口用医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」と称する場合がある。)に関する。
本発明における「血圧降下作用」とは、高血圧症の発症者及びその予備軍(健常者に対して軽度に高血圧の者)に対する血圧降下作用を意味する。すなわち、高血圧症の発症者及びその予備軍に対しては血圧降下作用により正常に近い血圧に戻す作用である。そのため、本発明の医薬組成物は高血圧症の予防や改善のための医薬組成物として有用である。
また、本発明における「心拍数低下作用」とは、心拍数を低下させる作用、特には交感神経系の活性上昇によって増加した心拍数を低下させる作用をいう。なお、塩分過剰摂取に起因する高血圧症の発症者及びその予備軍は、交感神経系の活性が上昇して、元々の心拍数を増加させている傾向にあるが、本発明の医薬組成物はその増加した心拍数を低下させる作用を有する。
後述する実施例で示すように臨床実験の結果では、本発明の医薬組成物の経口投与により有意な血圧降下作用を示した上に、有意な心拍数低下作用が観察された。従来の降圧薬であれば、降圧に伴い心拍数は増加もしくは変化しないのが普通であるから、この「心拍数低下作用」は本発明の医薬組成物に特異的である。
本発明の医薬組成物の対象となる高血圧症は特に制限されるものではなく、塩分の過剰摂取、運動不足、喫煙、飲酒、ストレスの蓄積等に起因する高血圧症に対して有効である。高血圧症の中でも、塩分過剰摂取に起因する高血圧症は、本発明の医薬組成物が特に有効な高血圧症の一つである。
塩分過剰摂取に起因する高血圧症は、薬剤抵抗性の高血圧症になりやすい。そのため、塩分過剰摂取に起因する高血圧症に対して、従来の高血圧症の予防治療剤(例えば、ACE阻害剤)では、血圧降下作用がほとんど認められなかったり、血圧降下作用が不十分であることが多い。これに対し、本発明の医薬組成物は、塩分過剰摂取に起因する高血圧症に対して有意な血圧降下作用が認められる。ここで「有意な血圧降下作用」とは、プラセボ期の血圧と本発明の医薬組成物摂取期の血圧とを比較したときに、統計的有意に(危険率がP<0.05)低値を示すことを意味する。
そして、本発明の医薬組成物の最大の特徴は、ヤナギタデ(Persicaria hydropiper)が含有する成分の特定量を経口投与することにより、有意な血圧降下作用が認められるのみならず、心拍数の低下作用(心拍数増加抑制作用)を示すことにある。
本発明の医薬組成物が、血圧降下作用と共に、心拍数の低下作用を示すためには、ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で10mg/kg体重/日以上、経口投与する必要がある。なお、10mg/kg体重/日は、体重65kgのヒトの場合、1日当たり650mgの投与量(650mg/人/日)に該当する。また、「ヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準」については、ヤナギタデ乾燥物及び抽出物の説明と併せて後述する。
なお、本発明の医薬組成物の経口投与量が、ヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で10mg/kg体重/日未満であっても血圧降下作用は認められるが、心拍数低下作用は認められない。
なお、本発明の医薬組成物の経口投与量は、より優れた血圧降下作用と心拍数低下作用が認められる点で、ヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で12mg/kg体重/日以上であることがより好ましい。また、本発明の医薬組成物の経口投与量は、少なくともヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で61.5mg/kg体重/日までは、血液検査、尿検査等の代謝異常が認められず、安全であるが、経口投与量が多くなりすぎても血圧降下作用のそれ以上の改善は認められないため、好適な経口投与量の上限はヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で35mg/kg体重/日である。
また、本発明の医薬組成物は、血圧降下作用を必ずしも目的とする必要はなく、特定量のヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物の心拍数低下作用を利用した心拍数低下剤とすることもできる。この場合、高血圧症以外にも、心拍数の増加は発症する疾病における心拍数低下(心拍数増加の抑制)の用途に好適に使用することができる。そして、特定量のヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物の他に、対象となる疾患の治療に用いられる他の医薬として有効な成分を併用することもできる。
また、対象となる疾患が高血圧症の場合においても、相乗的な予防・治療効果が期待できる場合には、公知の血圧降下剤と併用することもできる。公知の血圧降下剤としては、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤、カルシウムチャンネル拮抗剤、利尿剤(サイアザイド系利尿剤・ループ利尿剤・カリウム保持性利尿剤のいずれも含む)、α遮断剤、β遮断剤、αβ遮断剤等に分類される血圧降下剤が挙げられる。
なお、本発明の医薬組成物を、ヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で、特定量を経口投与することによって、血圧降下作用と共に、心拍数低下作用が発現する理由については現段階では定かではないが、ヤナギタデが含有する1種の血圧降下作用と共に心拍数低下作用として作用したり、または複数の成分が複合的に作用している可能性がある。
詳細は実施例で後述するが、ヤナギタデに含まれる成分のうち、主成分に相当するヒペロシドは、ヒトキマーゼ(以下、「キマーゼ」と記載する場合がある。)に対する優れた酵素活性阻害作用を有する。塩分過剰摂取に起因する高血圧症に対してはACEの活性抑制では降圧効果が認められないが、キマーゼ活性を阻害することにより、塩分過剰摂取に起因する高血圧症に対しても、降圧作用が認められる。そのため、ヤナギタデに含まれるヒペロシドが本発明の医薬組成物における薬理作用に関する主要な有効成分である、と推測される。
本発明の医薬組成物は、ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物として、ヒペロシド換算で0.1mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられることが好適であり、より好適にはヒペロシド換算で0.12〜0.35mg/kg体重/日である。

なお、ヤナギタデには、ヒペロシド以外にも、ケルシトリン、ケルセチン等の公知の血圧降下作用を有する成分を少量含むが、これらの成分とヒペロシドが相乗的に作用して本発明の医薬組成物の薬理作用を発現している可能性もある。
また、本発明の医薬組成物の他の態様として、ヒペロシドを含有し、ヒトに対してヒペロシド換算で0.1mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられる医薬組成物とすることができる。この本発明の他の態様の医薬組成物でも、当該医薬組成物をヒペロシド換算で0.1mg/kg体重/日以上経口投与することにより、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有する。本発明の医薬組成物の他の態様における、好適な投与量はヒペロシド換算で0.12〜0.35mg/kg体重/日である。この場合、ヒペロシドは天然物からの抽出・分離したものだけでなく、合成したものを使用することもできる。
なお、本発明の他の態様の医薬組成物においても、特定量のピペロシドの経口投与による心拍数低下作用が発現するのならば、血圧降下作用を必ずしも目的とする必要はなく、心拍数低下剤とすることもできる。この場合、高血圧症以外にも、心拍数の増加は発症する疾病における心拍数低下(心拍数増加の抑制)の用途に好適に使用することができる。そして、特定量のピペロシドの他に、対象となる疾患の治療に用いられる他の医薬として有効な成分を併用することもできる。
また、対象となる疾患が高血圧症の場合においても、相乗的な予防・治療効果が期待できる場合には、公知の血圧降下剤と併用することもできる。公知の血圧降下剤としては、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤、カルシウムチャンネル拮抗剤、利尿剤(サイアザイド系利尿剤・ループ利尿剤・カリウム保持性利尿剤のいずれも含む)、α遮断剤、β遮断剤、αβ遮断剤等に分類される血圧降下剤が挙げられる。
以下、本発明の医薬組成物の原料植物であるヤナギタデ、及びその乾燥物、抽出物について説明する。
本発明の医薬組成物の原料となるヤナギタデは、芽はさしみのつま、タデ酢等として食用にされており、経口投与しても安全である。
ヤナギタデにおける使用できる部位としては、例えば、地上部、根部、実等が挙げられ、任意の部分が使用できるが、ヤナギタデの芽部(スプラウト)であることが好ましい。ヤナギタデは、事前処理せずにそのまま使用することができるうえ、スライス、粉砕、圧搾またはすりおろす等により、細粒物として使用することもできる。
本発明の医薬組成物は、ヤナギタデの乾燥物及び/又は抽出物の形態でヤナギタデ由来成分を上述の特定量で経口投与するものであるが、ヤナギタデの部位によって含有成分量が異なるため、ヤナギタデ由来成分を規定する基準が必要となる。そこで、本発明の医薬組成物は、「ヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量」を基準とする。
「ヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量」とは、ヤナギタデの乾燥物及び/又は抽出物として、ヤナギタデ芽部の乾燥物を使用する場合はヤナギタデ芽部の乾燥物自体の重量が相当するが、ヤナギタデ芽部の乾燥物以外を使用する場合には以下の方法で算出する。
まず、基準用のヤナギタデ芽部の乾燥物に含まれるヒペロシド濃度を求める。具体的には、ヤナギタデ芽部の乾燥物は水分量が2.0重量%以下まで乾燥させたのちに、50%エタノール/水の混合溶媒と接触させて、乾燥物に含まれる成分を50%エタノール/水混合溶媒中へ溶出させる。次いで、溶出液を分析し、含有するヒペロシド濃度を測定する。
次いで、使用するヤナギタデの部位(芽部以外)についても、同様な手順でヒペロシド濃度を測定する。なお、ヤナギタデの部位(芽部以外)の形態は乾燥物、抽出物のいずれであってもよい。
測定されたヤナギタデの部位(芽部以外)のヒペロシド濃度と、ヤナギタデ芽部の乾燥物のヒペロシド濃度とから、ヤナギタデの部位(芽部以外)におけるヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量を求め、これを「ヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量」とする。
本発明において、「乾燥物」とは原料植物であるヤナギタデを乾燥したものである。具体的にはヤナギタデを、天日乾燥、加熱乾燥、フリーズドライ等の公知の乾燥方法で乾燥したものである。乾燥物は、使用性の観点から、通常、粉砕して粉末化され、乾燥粉砕物として使用される。粉砕方法は、特に限定はなく従来公知の粉砕器を使用すればよい。粉末の粒径は、その使用態様によって適宜決定される。
本発明の医薬組成物では、ヤナギタデに含まれる血圧降下作用や心拍数低下作用に作用する成分を抽出して、ヤナギタデ抽出物として用いられてもよい。なお、本明細書において、「抽出物」とは、抽出対象となるヤナギタデ、又はこれを必要に応じて乾燥、細切したものを溶媒抽出して、有効成分の含有率を高めた形態のものを総括した概念である。具体的にはヤナギタデを抽出原料として得られる抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。なお、抽出液を乾燥して得られる乾燥物も、抽出物に該当するものとする。
抽出処理に使用する抽出溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級脂肪族アルコールが挙げられる。これらの抽出溶媒は単独又はこれら2種以上の混合物として使用することができ、2種以上の溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。
好適な抽出溶媒の一つは、ヤナギタデ含有成分の抽出効率が高く、ヒトに対して安全なエタノールと水の混合溶媒である。
なお、抽出溶媒には、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤を含んでいてもよい。例えば、pH調整剤、粘度調整剤などが挙げられる。
原料植物から抽出物を抽出する方法は特に限定されず、常法に従って行なれる。例えば、原料植物を抽出溶媒に浸漬し、室温あるいは加熱して原料植物に含まれる可溶性成分を抽出する方法が挙げられる。また、抽出物に含まれる残渣を取り除くため、濾過や遠心分離を行ってもよい。また、得られた抽出液はそのまま利用してもよいが、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
以上のようにして得られるヤナギタデ乾燥物は、上述のように経口投与により、高血圧症の発症者に対して血圧降下作用を有する。特に食塩摂取過剰に起因する高血圧症の発症者に対して優れた血圧降下作用を有する。そして、ヒトに対して、ヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で10mg/kg体重/日以上(好適には12mg/kg体重/日以上)、ヒペロシド換算で0.1mg/kg体重/日以上(好適に0.12mg/kg体重/日以上)を経口投与することで、血圧降下作用と共に、心拍数低下作用を有する。
そのため、当該乾燥物及び/又は抽出物は心拍数増加による不利益を生じない。このような理由で、本発明の医薬組成物は、高血圧症(特にわが国の高食塩摂取を反映して最も罹病率の高い塩分過剰摂取に起因する高血圧症)の予防及び治療薬として好適に利用することが期待される。
本発明の医薬組成物の形態は、経口投与可能な形態であれば、特に制限されず使用する用途により適宜選択することができる。具体的には粉末状、顆粒状、カプセル状、タブレット状、グミ状、ガム状、キャンディー状、丸剤、錠剤状、棒状、板状、液状、クリーム状、軟膏状、シート状等の剤型・形態をとることができる。この中でも、顆粒状、カプセル状、タブレット状、液状であることが好ましい。
なお、製剤化する場合、保存や取扱いを容易にするために、薬学的に許容され得るキャリア(デキストリン等)やその他任意の助剤を添加することができる。
本発明の医薬組成物は、日常的に経口摂取しやいように、各種の食品、飲料と混ぜて機能性食品とすることで、長期的に摂取することも容易である。
ここでいう「機能性食品」とは、一般食品に加えて、健康の維持の目的で摂取する食品および/又は飲料を意味し、保健機能食品である特定保健用食品や栄養機能食品や、健康食品、栄養補助食品、栄養保険食品等を含む概念である。この中でも保健機能食品である特定保健用食品や栄養機能食品が好ましい機能性食品の態様である。なお、機能性食品として製品化する場合には、食品に用いられる様々な添加剤、具体的には、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料等を添加していてもよい。
機能性食品への添加量は、ヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準でヒトに対して10mg/kg体重/日以上(好適には12mg/kg体重/日以上)、ヒペロシド換算で0.1mg/kg体重/日以上(好適に0.12mg/kg体重/日以上)で経口投与されるような量となるように設定すればよい。
本発明の機能性食品の対象となる、食品、飲料は特に限定されるものではない。例えば、食品として、ソーセージ、ハム、魚介加工品、ゼリー、キャンディー、チューインガムなどの食品類が挙げられる。また、飲料としては、各種の茶類、清涼飲料水、酒類、栄養ドリンクなどが挙げられる。
本発明の医薬組成物は、このような食品、飲料に添加することにより、簡易に経口摂取することができる。
本発明の医薬組成物は、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。そのため、動物用の医薬組成物として使用してもよく、また、ペットフード等の動物用機能性食品へ添加することもできる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
評価1.ヒトに対するヤナギタデ乾燥物の用量依存性の評価
(1)ヤナギタデ乾燥物の製造
ヤナギタデ(株式会社セイシン企業から購入)の芽部を、棚式乾燥機で乾燥させ、ヤナギタデの乾燥物を得た。得られた乾燥物を、気流式粉砕機で十分に粉砕した。
得られた粉砕後のヤナギタデ乾燥物(5サンプル)の含有水分量を、加熱減量法で算出したところ、1.5重量%(平均値)であり、すべてのサンプルのサンプルで2重量%以下であった。
(2)ヤナギタデ乾燥物服用による血圧、心拍数の評価
福岡大学筑紫病院の倫理委員会の承認を経て、ヤナギタデ乾燥物の服用(経口投与)による有効性及び安全性を確認する目的で、高血圧症を発症した被験者11人(平均体重:65kg、標準偏差:12.4)を対象にヒト試験を行った。
プラセボとして難消化デキストリンを400mg/人/日、2週間服用し、続いて、ヤナギタデ乾燥物200mg/人/日を2週間服用した。なお、被験者の体重を65kgとして、200mg/人/日は、3.1mg/kg体重/日に相当する。続いて、ヤナギタデ乾燥物400mg/人/日(6.2mg/kg体重/日)、800mg/人/日(12.3mg/kg体重/日)、2000mg/人/日(30.8mg/kg体重/日)の順番で各2週間服用した。
また、1日におけるプラセボ及びヤナギタデ乾燥物を服用するタイミングは、被験者の朝食後とした。
血圧測定及び心拍数測定は、オムロンヘルスケア株式会社製の自動血圧計(HEM-7251G)を使用して行った。なお、この自動血圧計では測定後、それぞれの血圧データ及び脈拍データが自動的にインターネットを介してサーバーに送られるため、被験者の主観に左右されない。
被験者の血圧として、ヤナギタデ乾燥物服用翌日の朝の収縮期血圧(Systolic Blood Pressure、SBP)及び拡張期血圧(Diastolic Blood Pressure、DBP)を採用した。また、心拍数(Heart Rate)としてヤナギタデ乾燥物服用翌日の朝の脈拍データを採用した。
図1に収縮期血圧(SBP)、図2に拡張期血圧(DBP)についての評価結果を示す。また、図3に心拍数の結果を示す。なお、図1〜3における数値は、被験者11人のプラセボ期(2週間)の平均値と、各ヤナギタデ乾燥物服用期(各2週間)の平均値である。
図1に示されるように、プラセボ期及びヤナギタデ乾燥物服用期を対比すると、ヤナギタデ乾燥物服用量3.1mg/kg体重/日(200mg/人/日)から有意に収縮期血圧が低下していることが認められる。また、図2に示されるように拡張期血圧も同様の結果であった。
一方、図3に示されるように、心拍数はヤナギタデ乾燥物服用量3.1mg/kg体重/日(200mg/人/日)、6.2mg/kg体重/日(400mg/人/日)ではプラセボ期と同程度であったが、ヤナギタデ乾燥物服用量が12.3mg/kg体重/日(800mg/人/日)を超えると心拍数が低下していることが確認された。
以上の結果から、ヤナギタデ乾燥物をヒトに対して経口投与することによる血圧降下作用が確認され、さらにヤナギタデ乾燥物服用量が多くなると血圧降下作用と併せて心拍数の低下作用が発現することが明らかとなった。
(3)安全性の確認
安全性についてはヤナギタデ乾燥物4000mg/人/日(61.5mg/kg体重/日)の単回服用試験を行った。被験者は臨床試験のプロトコールや危険性の説明を十分に受けた後、本人の記名同意を得てヤナギタデ乾燥物服用による安全性試験に参加した。結果として、被験者11人中全てにおいて、ヤナギタデ乾燥物4000mg/人/日の単回服用試験を行っても、腹痛・悪心・嘔吐などの消化管不定愁訴や便通異常などの自覚症状は全く認められなかった。また血液検査、尿検査などにおいてもヤナギタデ乾燥物服用による代謝異常は全く認められなかった。以上の結果からヤナギタデ乾燥物の安全性が確認された。
評価2.ヤナギタデ乾燥物による食塩依存性高血圧症マウスの高血圧症の改善作用の評価
ヤナギタデ(「JA筑前あさくら」の紅たで部会から購入)の芽の部分を、フリーズドライヤーFD-80(東京理化器械(株)製)で乾燥し、ヤナギタデ乾燥物を得た。得られたヤナギタデ乾燥物を、ミクロパウダー(ウェスト社製)で十分に粉砕し、ヤナギタデ乾燥粉砕物とした。
得られたヤナギタデ乾燥物(粉砕物)を使用して、以下の5群(コントロール群、試験群1〜4)で、食塩依存性高血圧症マウスに対するヤナギタデ乾燥物投与収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)及び心拍数(Heart Rate)の評価を行った。
実験動物として、日本SLCより入手した野生型マウス(C57BL/6J)、温度24±1℃、湿度50-60%、照明は12時間明暗サイクルで調節された実験動物飼育室にて飼育した。飼料としてCE-2(日本クレハ)を、飲料水として2重量%の食塩水を用い、自由摂食させた。例数は各群N=6で実験を開始し、実験途中で死亡するマウスは認められなかった。また、各群において、体重、摂餌量および摂水量に差異は認められなかった。
<コントロール群(食塩水のみ)>
6匹のマウスに、飼料としてCE-2(日本クレハ)を自由摂食させ、飲料水として2重量%の食塩水を用いて、3か月間2%の食塩水溶液を負荷した食塩依存性高血圧マウスを作製した。食塩依存性高血圧マウスに対し、さらにその後、同条件で飼育を行い、8週間各週ごとに上記評価を行った。
<試験群1(ヤナギタデ乾燥物投与:500mg/kg体重/日)>
コントロール群と同様に作製した食塩依存性高血圧マウス(6匹)に対し、上記飼料及び食塩水と共に、ヤナギタデ乾燥粉砕物を500mg/kg体重/日で与え、8週間各週ごとに上記評価を行った。
<試験群2(ヤナギタデ乾燥物投与:250mg/kg体重/日)>
コントロール群と同様に作製した食塩依存性高血圧マウス(6匹)に対し、上記飼料及び食塩水と共に、ヤナギタデ乾燥粉砕物を250mg/kg体重/日で与え、8週間各週ごとに上記評価を行った。
<試験群3(ヤナギタデ乾燥物投与:125mg/kg体重/日)>
コントロール群と同様に作製した食塩依存性高血圧マウス(6匹)に対し、上記飼料及び食塩水と共に、ヤナギタデ乾燥粉砕物を125mg/kg体重/日で与え、8週間各週ごとに上記評価を行った。
<試験群4(ヤナギタデ乾燥物投与:62.5mg/kg体重/日)>
コントロール群と同様に作製した食塩依存性高血圧マウス(6匹)に対し、上記飼料及び食塩水と共に、ヤナギタデ乾燥粉砕物を62.5mg/kg体重/日で与え、8週間各週ごとに上記評価を行った。
コントロール群及び試験群1〜4の収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)及び心拍数の評価結果を図4〜6に示す。なお、二元配置の分散分析を行い、事後検定にはボンフェローニを行った。有意水準はP<0.05とした。
図4〜6に示すように、コントロール群では食塩水投与3か月間、時間の経過とともに、収縮期血圧、拡張期血圧および心拍数の増加の上昇が認められ、その状態が試験期間持続していた。
一方、食塩水投与3か月間後に、ヤナギタデ乾燥物を投与した試験群1〜3では、コントロール群に比べてヤナギタデ乾燥物投与1週目から、心拍数の増加、収縮期血圧、拡張期血圧の上昇がいずれも抑制され始め、2週目以降では有意にそれぞれを抑制した。試験群4では収縮期血圧には影響しなかったが、拡張期血圧の上昇は4週目からいずれも有意に抑制した。心拍数の増加の抑制にはほとんど影響しなかった。以上の結果から、マウスにおいてもヤナギタデ乾燥物を経口投与することによる血圧降下作用が確認され、さらにヤナギタデ乾燥物服用量が多くなると血圧降下作用と併せて心拍数の低下作用が発現することが明らかとなった。
また、評価1(ヒト)と評価2(マウス)の対比からわかるように、ヒトはマウスと比較して体重基準ではるかに少量のヤナギタデ乾燥物服用で、血圧降下作用及び心拍数の低下作用が発現することが確認された。
評価3.ヤナギタデに含まれる成分の評価
ヤナギタデに含まれる成分の評価として、上述の評価1と同様の方法で得られたヤナギタデ芽部の乾燥物(粉砕物)が含有する成分を下記の方法で評価した。評価対象のヤナギタデは株式会社セイシン企業から購入したものを使用した。
まず、所定量のヤナギタデ乾燥物(n=3)に対して10倍量(重量比)の50体積%エタノール/水を加え、室温で2時間撹拌して、ヤナギタデに含まれる成分を抽出した。次いで、遠心分離(3000rpm、10分)により分離した上澄液を50体積%エタノール/水で10倍希釈し、フィルター(0.45μm)ろ過を行った後、Alliance HPLC システム(Waters)を使用して分析した。
表1にヤナギタデ乾燥物の溶媒抽出成分の分析結果を示す。表1に示すように、ヤナギタデ芽部の乾燥物における主成分は、ヒペロシドであった。
評価4.ヒペロシドによる食塩依存性高血圧症マウスの高血圧症の改善作用の評価
ヒペロシド(ヤナギタデから抽出)を使用し、食塩依存性高血圧症マウスの高血圧症の改善作用の評価を行った。
以下の5群(コントロール群、試験群1A〜4A)で、収縮期血圧(SBP)、及び拡張期血圧(DBP)の評価を行った。
実験動物として、日本SLCより入手した野生型マウス(C57BL/6J)、温度24±1℃、湿度50-60%、照明は12時間明暗サイクルで調節された実験動物飼育室にて飼育した。飼料としてCE-2(日本クレハ)を、飲料水として2重量%の食塩水を用い、自由摂食させた。
例数は各群N=6で実験を開始し、実験途中で死亡するマウスは認められなかった。また、各群において、体重、摂餌量および摂水量に差異は認められなかった。
<コントロール群(食塩水のみ)>
6匹のマウスに、飼料としてCE-2(日本クレハ)を自由摂食させ、飲料水として2重量%の食塩水を用いて、3か月間2%の食塩水溶液を負荷した食塩依存性高血圧マウスを作製した。食塩依存性高血圧マウスに対し、さらにその後、同条件で飼育を行い、8週間各週ごとに上記評価を行った。
<試験群1A(ヒペロシド投与:20mg/kg体重/日)>
コントロール群と同様に、3か月間2%の食塩水溶液を与え食塩依存性高血圧マウス(6匹)を作製した。当該食塩依存性高血圧マウス(6匹)に対し、上記飼料及び食塩水と共に、ヒペロシドを20mg/kg体重/日で与え、8週間各週ごとに上記評価を行った。
<試験群2A(ヒペロシド投与:10mg/kg体重/日)>
コントロール群と同様に、3か月間2%の食塩水溶液を与え食塩依存性高血圧マウス(6匹)を作製した。当該食塩依存性高血圧マウス(6匹)に対し、上記飼料及び食塩水と共に、ヒペロシドを10mg/kg体重/日で与え、8週間各週ごとに上記評価を行った。
<試験群3A(ヒペロシド投与:5mg/kg体重/日)>
コントロール群と同様に3か月間2%の食塩水溶液を与え食塩依存性高血圧マウス(6匹)を作製した。当該食塩依存性高血圧マウス(6匹)に対し、上記飼料及び食塩水と共に、ヒペロシドを5mg/kg体重/日で与え、8週間各週ごとに上記評価を行った。
<試験群4A(ヒペロシド投与:2.5mg/kg体重/日)>
コントロール群と同様に、3か月間2%の食塩水溶液を与え食塩依存性高血圧マウス(6匹)を作製した。当該食塩依存性高血圧マウス(6匹)に対し、上記飼料及び食塩水と共に、ヒペロシドを2.5mg/kg体重/日で与え、8週間各週ごとに上記評価を行った。
図7〜9にコントロール群及び試験群1A〜4Aの収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)及び心拍数の評価結果を示す。なお、二元配置の分散分析を行い、事後検定にはボンフェローニを行った。有意水準はP<0.05とした。
図7〜9に示すように、コントロール群では食塩水投与3か月間、投与期間の経過とともに、収縮期血圧、拡張期血圧及び心拍数の上昇が認められ、その状態が試験期間持続していた。すなわち、2重量%の食塩水のみを与えたコントロール群では、塩分過剰摂取に起因する高血圧症を発症し、それに起因して心拍数が増加したと認められる。そして、その後の試験期間においても収縮期血圧、および拡張期血圧の上昇が認められた。
一方、食塩水投与3か月間後(高血圧症を発症後)に、ヒペロシドを投与した試験群1A〜4Aでは、ヒペロシド投与1週目から、コントロール群に比べて収縮期血圧、および拡張期血圧の上昇がいずれも抑制され始め、2週目以降では有意にそれぞれを抑制していることが分かる。そして、ヒペロシド投与量が多いほど収縮期血圧、および拡張期血圧の降圧作用が大きいことが確認された。すなわち、ヒペロシド投与によって食塩依存性の高血圧症の改善に寄与していることが示された。
以上の結果から、ヒペロシドを経口投与することによる血圧降下作用が確認され、さらにヤナギタデ乾燥物服用量が多くなると血圧降下作用と併せて心拍数の低下作用が発現することが明らかとなった。
評価5.ヒペロシドによるヒトキマーゼ活性阻害作用の評価
ヒトキマーゼ(以下、「キマーゼ」と記載する場合がある。)は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)以外にアンジオテンシンIIを産生する能力を有する酵素であり、ヒト組織局所におけるアンジオテンシンIIの産生に、ACEに依存しない「非ACE依存性経路」として注目されている酵素である。
そして、キマーゼ活性阻害により、ACEの活性抑制では降圧効果が認められない、塩分過剰摂取に起因する高血圧症に対しても降圧作用が認められることが知られている。そのため、ヒペロシドがキマーゼ活性阻害に寄与している可能性がある。
そこで、ヒペロシドによるキマーゼ阻害作用の評価を行った。なお、ヒペロシドは、和光純薬工業(株)の試薬を使用した。
キマーゼ阻害活性の評価(in vitro)は、Eur J Biochem 268(22),5885-93(2001)に記載された方法に変更を加えた以下に記述する方法で行った。この評価方法では、ヒトキマーゼの基質となるアンジオテンシンIをDnp/Nma修飾した基質を用い、キマーゼがこの基質を切断し、アンジオテンシンIIを産生すると蛍光発色することを利用する簡易的な方法である。以下に当該評価方法の概要を記述する。
インキュベーションバッファーは100mM NaCl含有20mMリン酸緩衝液で総インキュベーション溶液量は100μLである。まず、食品抽出溶液(検定サンプル)を5μL加え、そこへ標準ヒトキマーゼ(SIGMA)が0.0012単位含まれるように調整し、室温で前インキュベーションを30分施行後、基質であるDnp/Nma修飾アンジオテンシンI(蛋白研にて依頼作成)を最終濃度が200μMになるように加え、37℃で30分インキュベーションする。0.5MNaOHを25μL加えてインキュベーションを終了した。産生されたDnpアンジオテンシンIIの発光蛍光(460nm)を測定し、標準DnpアンジオテンシンIIによって作成した標準曲線から産生量を計算した。阻害薬を加えないコントロールを対照として、検定サンプルのヒトキマーゼ阻害活性及び阻害率を求めた。
表2に上述の方法により、ヒペロシドによるヒトキマーゼ阻害活性率を評価した結果示す。
以上の結果から、ヒペロシドは、優れたキマーゼ活性阻害作用を有していることが確認された。なお、食塩依存性の高血圧症は、薬剤抵抗性高血圧となり、ACEを阻害することでは血圧降下作用が認められない。そのため、上述のヒト及びマウスの高血圧症の改善は、ヒペロシド投与によるキマーゼ活性阻害作用により、非ACE依存性アンジオテンシンII産生が抑制されたことによって発現していると考えられる。
本発明の医薬組成物は、血圧降下作用と共に心拍数低下作用を有し、高血圧症の予防や治療に有用であり、天然物由来であるため経口摂取しても安全性が高い。そのため、日常的に経口摂取することで、高血圧症を予防し、改善することができ、併せて心拍数低下させることができる。

Claims (11)

  1. ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物を含有し、ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で10mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有することを特徴とする塩分過剰摂取に起因する高血圧症の予防及び/又は治療のための経口用医薬組成物。
  2. ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物を含有し、ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で10mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有することを特徴とする心拍数低下のための経口用医薬組成物。
  3. ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物を含有し、ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で10mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有することを特徴とする塩分過剰摂取に起因する高血圧症の予防及び/又は治療、並びに心拍数低下のための経口用医薬組成物。
  4. ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で12〜35mg/kg体重/日を経口投与されるように用いられる請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
  5. 前記ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物が、ヤナギタデ芽部の乾燥物及び/又は抽出物である請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
  6. 前記ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物が、ヒトに対してヒペロシド換算で0.1mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられる請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物。
  7. ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物を含有し、ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で10mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有することを特徴とする塩分過剰摂取に起因する高血圧症の予防及び/又は治療のための機能性食品。
  8. ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物を含有し、ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で10mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられ、血圧降下作用及び心拍数低下作用を有することを特徴とする塩分過剰摂取に起因する高血圧症の予防及び/又は治療、並びに心拍数低下のための機能性食品。
  9. ヒトに対してヤナギタデ芽部の乾燥物の換算重量基準で12〜35mg/kg体重/日を経口投与されるように用いられる請求項7又は8に記載の機能性食品。
  10. 前記ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物が、ヤナギタデ芽部の乾燥物及び/又は抽出物である請求項7から9のいずれかに記載の機能性食品。
  11. 前記ヤナギタデ乾燥物及び/又は抽出物が、ヒトに対してヒペロシド換算で0.1mg/kg体重/日以上を経口投与されるように用いられる請求項7から10のいずれかに記載の機能性食品。
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