JP5846384B2 - カワハギ由来の細胞株 - Google Patents

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Description

本発明は、線維芽細胞様の形態を呈する、カワハギ科(Monacanthidae)魚類の生体部位に由来する細胞株またはその継代株に関する。
魚類に由来する魚類細胞は、哺乳動物に由来する動物細胞と類似する性質が多い。また、魚類細胞は、一般的に、比較的低い温度で培養が可能であり、増殖可能な温度範囲が広い。したがって、魚類細胞は、動物細胞に代替するものとして、生体由来物質の生産などの工業的用途や研究用途における培養細胞として有望視されている。
魚類の培養細胞としては、チョウザメの眼球上皮細胞由来の株化細胞やカサゴの尾鰭由来の株化細胞などが知られている(たとえば、特許文献1および2を参照)。これらの株化された細胞株は、動物細胞に代替可能な細胞としてだけではなく、それぞれチョウザメやカサゴの生態の解明や養殖の実現に資することが期待されている。
カワハギ(Stephanolepis cirrhifer)を含むフグ目カワハギ科(Monacanthidae)の魚類は、全身が丈夫な皮膚で覆われており、調理に際しては皮膚全体を一度に剥がすことができる。カワハギ科の魚類の中でもカワハギは生食用または調理用の食材として広く嗜まれている。
特開2004−24192号公報 特開2008−220198号公報
カワハギは、食材として広く愛用されているが、現在市場におかれているものは天然のカワハギであり、その取れ高は季節により変動する。また、カワハギの養殖技術はこれまでに確立されておらず、現在に至るまで種々の試みがなされている。
魚類の養殖では、細菌やウイルスなどの感染症、化学物質や重金属などの細胞毒性などに起因する養殖魚の斃死が問題となっている。そこで、養殖魚の斃死の問題を解決するために、魚類の細胞株は、ウイルス感染症の診断、ウイルス感染症に対して有効なワクチンの製造、細胞毒性試験などに寄与する可能性がある。そこで、本発明者らは、カワハギの不死化細胞株があれば、カワハギ養殖魚の斃死の問題を解決する糸口を探り出すことができ、カワハギの養殖開発において著しい進展を遂げるのではないかと考えた。特に、魚類の細胞株は、一般的に、低温での培養が可能であるものの、哺乳動物の細胞株に比べて増殖速度が小さいという性質を有する。したがって、低温培養が可能であり、かつ、増殖速度が哺乳動物の細胞株と同程度であるカワハギの不死化細胞株は、簡便かつ迅速に培養ができるものであることから、カワハギの養殖技術の開発において、急速な進歩をもたらすことが期待できる。
一方、カワハギに限らず、魚類の多能性幹細胞があれば、特定の細胞へ分化誘導することにより、従前は採取することが困難であった組織細胞を得ることができ、魚類の疾病の病因や発症メカニズムを研究することができるようになる。また、分化誘導後に特定の疾病を発症させた細胞を用いれば、その疾病に対する薬剤の効果や毒性を評価することが可能となる。したがって、魚類の多能性幹細胞もまた、魚類の養殖技術の発展に寄与することが期待できる。
上記したように、カワハギの不死化細胞株や多能性幹細胞を用いれば、カワハギの養殖技術の研究開発を格段に進められる可能性がある。しかし、これまでに、樹立されたカワハギの細胞株や多能性幹細胞は知られていない。
そこで、本発明の第1の目的は、カワハギに由来する不死化細胞株を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、カワハギに由来する多能性幹細胞を提供することにある。さらに、本発明の第3の目的は、カワハギに由来する細胞株の製造方法および利用方法を提供することにある。
本発明者らは、まず、魚類細胞は低温下で培養が可能という点に着目して、魚類細胞の株化を検討した。そこで、タイ、アジ、サメなどの種々の魚類の鰭を用いて、様々な組織細胞の増殖を試みた。しかし、増殖速度の大きい細胞を得るどころか、継代培養さえできないものがほとんどであった。そこで、本発明者らは、魚類の種類や継代培養方法などを適宜変更して、さらに鋭意研究を積み重ねた結果、カワハギの背鰭から継代培養が可能な不死化細胞株を製造することに成功した。しかも、驚くべきことに、得られた細胞株は、25℃という室温と変わらない温度で培養した場合であっても、哺乳動物の細胞株と同程度又はそれ以上の増殖速度で培養が可能なものであった。さらに驚くべきことには、本発明者らが得たカワハギ由来の細胞株は、分化多能性を示す細胞マーカーの一部を発現するものであり、さらに培養条件を変えることにより形態の異なる種々の細胞へ変化するものであった。本発明は、これらの成功例や知見に基づいて完成された発明である。
したがって、本発明によれば、下記(1)の性質を有する、カワハギ科(Monacanthidae)魚類の生体部位に由来する細胞株またはその継代株が提供される。
(1)実質的に制限なく継代培養が可能である
本発明において、好ましくは、さらに下記(2)の性質を有する。
(2)線維芽細胞様の形態を呈する
本発明において、好ましくは、さらに下記(3)の性質を有する。
(3)多層構造を形成した培養が可能である
本発明において、好ましくは、さらに下記(4)の性質を有する。
(4)最大値は66本であり、最小値は32本であり、およびモードは33本である度数分布に従った染色体数を有する
本発明において、好ましくは、前記(4)の性質において、モードである33本の染色体の度数が度数分布における全度数の約90%である。
本発明において、好ましくは、さらに下記(5)の性質を有する。
(5)初期細胞数を約1.0×10cells/mlとして、75cmの底面積を有する培養容器内で10% FBSを含むLeibovitz’s L−15培地を用いて、CO非存在下で25℃にて培養した際の倍加時間は、約14〜28時間である
本発明の別の側面によれば、TRA−1−60、OCT4およびSSEA−3からなる群から選ばれる少なくとも1種の細胞マーカーが陽性である、カワハギ科魚類の生体部位に由来する細胞株またはその継代株が提供される。
本発明において、好ましくは、前記細胞株またはその継代株は、線維芽細胞様の形態を呈する細胞株またはその継代株である。
本発明において、好ましくは、前記細胞株またはその継代株は、筋細胞および筋細胞様細胞、上皮細胞および上皮細胞様細胞、神経細胞および神経細胞様細胞、脂肪細胞および脂肪細胞様細胞、免疫細胞および免疫細胞様細胞ならびに肝臓細胞および肝臓細胞様細胞からなる群から選ばれる少なくとも1種の細胞に分化する能力を有する。
本発明において、好ましくは、前記カワハギ科魚類が、カワハギ属(Stephanolepis)魚類、ウマヅラハギ属(Thamnaconus)魚類、メガネウマヅラハギ属(Cantherhines)魚類、ウスバハギ属(Aluterus)魚類およびアミメハギ属(Rudarius)魚類からなる群から選ばれる魚類である。
本発明において、好ましくは、前記カワハギ科魚類が、カワハギ(Stephanolepis cirrhifer)である。
本発明において、好ましくは、前記生体部位は、背部、胸部、腹部、尻部または尾部にある鰭である。
本発明の別の側面によれば、受託番号がNITE BP−1369である、カワハギの背鰭に由来する細胞株またはその継代株が提供される。
本発明の別の側面によれば、カワハギ科魚類の生体部位から単離した細胞を70回以上の継代培養に供する工程を含む、本発明の細胞株またはその継代株を製造する方法が提供される。
本発明の別の側面によれば、本発明の細胞株またはその継代株に外来遺伝子を導入してなる、形質転換体が提供される。
本発明の別の側面によれば、本発明の細胞株またはその継代株に外来遺伝子を導入して形質転換体を得る工程を含む、形質転換体を製造する方法が提供される。
本発明の別の側面によれば、本発明の細胞株またはその継代株に外来遺伝子を導入してなる形質転換体から該外来遺伝子の発現産物を得る工程を含む、外来遺伝子の発現産物を製造する方法が提供される。
本発明の別の側面によれば、本発明の細胞株またはその継代株と、ベクターと、トランスフェクションのための器材とを含む、形質転換体を製造するためのキットが提供される。
本発明の別の側面によれば、本発明の細胞株またはその継代株と、培地と、培養容器とを含む、分化細胞を製造するためのキットが提供される。
本発明において、好ましくは、さらに血清を含む。
本発明において、好ましくは、前記血清が、哺乳類血清、魚類血清および血清代替物からなる群から選ばれる少なくとも1種の血清である。
本発明において、好ましくは、前記培地は、哺乳動物細胞用培地、昆虫細胞用培地および魚類細胞用培地からなる群から選ばれる少なくとも1種の培地である。
本発明において、好ましくは、前記培養容器が、底面が細胞接着分子でコーティングされた培養容器および底面が細胞接着分子でコーティングされていない培養容器からなる群から選ばれる少なくとも1種の培養容器である。
本発明の別の側面によれば、本発明の細胞株またはその継代株を、底面が細胞接着分子でコーティングされた培養容器または底面が細胞接着分子でコーティングされていない培養容器の中で、血清を含有していない、または哺乳類血清、魚類血清もしくは血清代替物を含有した哺乳動物細胞用培地、昆虫細胞用培地または魚類細胞用培地を用いて培養する工程を含む、分化細胞を製造する方法が提供される。
本発明の別の側面によれば、本発明の細胞株またはその継代株からなる培養細胞シートが提供される。
本発明の別の側面によれば、本発明の細胞株またはその継代株から、アルカリフォスファターゼ活性の染色により識別され、かつ、NANOG、OCT4、TRA−1−60およびSSEA−3陽性である細胞または該細胞によって形成される巨大繭状コロニーを製造する工程を含む、巨大繭状コロニーを製造する方法が提供される。
本発明の細胞株またはその継代株によれば、カワハギの生体を用いることなく、かつ、カワハギの生体から特定の細胞を単離することなく、カワハギの生態解明のための研究や実験を繰り返し実施することが可能である。そのような研究等として期待されるものは、細菌やウイルスなどの感染性微生物に対するカワハギの感受性(感染性)の検査、化学物質や重金属などの細胞毒性物質に対するカワハギの影響を調べるための細胞毒性試験、環境変化要因に対するカワハギの応答性試験、感染性微生物に感染したカワハギの治療または予防に有効な薬剤およびワクチンの開発などが含まれる。本発明の細胞株またはその継代株によれば、カワハギの生態解明を通して、カワハギの養殖技術のさらなる発展に寄与することが期待できる。
本発明の細胞株またはその継代株は、哺乳動物の細胞株と同程度の増殖速度で培養可能な細胞株を包含する。このような本発明の細胞株またはその継代株は、室温下での培養が可能なものであることから、哺乳動物の細胞株に代替して、研究用途や工業生産用途などに使用することが期待できる。
図1Aは、カワハギの背鰭片から遊走する細胞を示した図である。 図1Bは、カワハギの尾鰭片から遊走する細胞を示した図である。 図1Cは、カワハギの尻鰭片から遊走する細胞を示した図である。 図1Dは、カワハギの腹鰭片から遊走する細胞を示した図である。 図2は、初代細胞(初代培養時)、第1継代細胞(継代1)、第10継代細胞(継代10)、第20継代細胞(継代20)および第30継代細胞(継代30)の各細胞を凍結および解凍した際の細胞生存率を示した図である。 図3Aは、KSC細胞の形態を倍率×460にて光学顕微鏡を用いて観察した図である。 図3Bは、2層を形成したKSC細胞の形態を倍率×460にて光学顕微鏡を用いて観察した図である。 図3Cは、多層を形成したKSC細胞の形態を倍率×460にて光学顕微鏡を用いて観察した図である。 図4は、Human−APを発現した細胞を示した図である。 図5は、Human−APの発現産物の活性を示した図である。 図6は、PONとHalotagの融合タンパク質による発現を示した図である。 図7Aは、蛍光融合タンパク質であるCyan Fluorescent Protein−Yellow Fluorescent Proteinおよびカルモジュリンを発現させた細胞を観察した図である。 図7Bは、蛍光融合タンパク質であるRed Fluorescent ProteinおよびVesicular Stomatitis VirusのG糖タンパク質を発現させた細胞を観察した図である。 図7Cは、蛍光タンパク質であるGreen Fluorescent Proteinを発現させた細胞を観察した図である。 図8は、各細胞をLipofectamine法により遺伝子導入した後の細胞毒性を検証した図である。 図9Aは、KSC細胞が多能性幹細胞に特有の細胞マーカーであるTRA−1−60陽性の細胞であることを示した図である。上側は光学顕微鏡観察結果、下側は蛍光顕微鏡観察結果を示す。 図9Bは、KSC細胞が多能性幹細胞に特有の細胞マーカーであるOCT4陽性の細胞であることを示した図である。上側は光学顕微鏡観察結果、下側は蛍光顕微鏡観察結果を示す。 図9Cは、KSC細胞が多能性幹細胞に特有の細胞マーカーであるSSEA−3陽性の細胞であることを示した図である。上側は光学顕微鏡観察結果、下側は蛍光顕微鏡観察結果を示す。 図10Aは、KSC細胞が線維芽細胞様を呈することを示した図である。 図10Bは、KSC細胞が筋細胞様の細胞に分化したことを示した図である。 図10Cは、KSC細胞が上皮細胞様の細胞に分化したことを示した図である。 図10Dは、KSC細胞が神経細胞様の細胞に分化したことを示した図である。 図10Eは、KSC細胞が肝臓様細胞の細胞に分化したことを示した図である。 図10Fは、KSC細胞が繊維細胞様の細胞に分化したことを示した図である。 図10Gは、KSC細胞が脂肪様細胞の細胞に分化したことを示した図である。 図10Hは、KSC細胞が免疫細胞の可能性があるバラの枝状の細胞に分化したことを示した図である。 図10Iは、KSC細胞が巨大な繭状の細胞に分化したことを示した図である。 図11Aは、KSC細胞から誘導した巨大繭状の融合細胞が未分化細胞に特有の細胞マーカーであるアルカリフォスファターゼ活性陽性の細胞であることを示した図である。 図11Bは、KSC細胞から誘導した巨大繭状の融合細胞が未分化細胞に特有の細胞マーカーであるNANOG陽性の細胞であることを示した図である。 図11Cは、KSC細胞から誘導した巨大繭状の融合細胞が未分化細胞に特有の細胞マーカーであるTRA−1−60陽性の細胞であることを示した図である。 図11Dは、KSC細胞から誘導した巨大繭状の融合細胞が未分化細胞に特有の細胞マーカーであるOCT4陽性の細胞であることを示した図である。 図11Eは、KSC細胞から誘導した巨大繭状の融合細胞が未分化細胞に特有の細胞マーカーであるSSEA−3陽性の細胞であることを示した図である。 図12は、KSC細胞を培養することによって得られた細胞シートを示した図である。
以下、本発明の詳細について説明する。
1.本発明の第1の細胞株
本発明の第1の細胞株またはその継代株は、カワハギ科(Monacanthidae)魚類の生体部位に由来するものである。
本明細書において「細胞株」とは、当業者によって最も広義に理解されるものであり、株化細胞、樹立細胞系などともよばれ、連続的に継代培養が可能な細胞系であれば特に限定されない。また、本明細書において「継代株」とは、細胞株を継代培養して得られるすべての細胞を意味する。本明細書において、細胞株と継代株との間には厳密な区別はなく、便宜上、株化したと評価できる細胞を細胞株とよび、その後細胞株を継代培養して得られるものを継代株とよぶ。以下では、細胞株および継代株をまとめた総称として、単に「細胞株」とよぶ。
本発明の第1の細胞株は、カワハギ科魚類から摘出した組織や臓器などの生体部位から単離した細胞に基づいて製造することができる。カワハギ科魚類は、その名が示すとおり、身体全体を覆う皮(外皮)を容易に剥がすことができるという特徴を有する魚類である。たとえば、皮の一部に包丁などで切り込みを入れると、特殊な器具を用いることなく、手などで簡単に皮を剥がすことができる。本発明の第1の細胞株の由来生物は、上記した特徴を有するカワハギ科魚類であれば特に限定されないが、たとえば、カワハギ属(Stephanolepis)魚類、ウマヅラハギ属(Thamnaconus)魚類、メガネウマヅラハギ属(Cantherhines)魚類、ウスバハギ属(Aluterus)魚類およびアミメハギ属(Rudarius)魚類を挙げることができる。本発明の目的において、カワハギ科魚類の好適な具体例としては、カワハギ(Stephanolepis cirrhifer)、ウマヅラハギ(Thamnaconus modestus)およびウスバハギ(Aluterus monoceros)を挙げることができ、より好ましいのはカワハギ(Stephanolepis cirrhifer)である。
本発明の第1の細胞株を製造するために使用されるカワハギ科魚類の生体部位は、魚体中の特定の一部分のみを指すものではなく、魚体中の2以上の組織や臓器などの部位を含み、さらには魚体全部を含み得る。本発明の目的において、カワハギ科魚類における好適な生体部位は、鰭にあたる部位であり、たとえば、背部、胸部、腹部、尻部または尾部にある鰭が好ましく、背部にある鰭である背鰭がより好ましい。
本発明の第1の細胞株をカワハギ科魚類の生体部位から製造する方法は特に限定されるものではなく、当業者により知られる生体から細胞株を取得する方法、たとえば、生体から組織や臓器を摘出する手法、切除した組織等から細胞を単離する手法、単離した細胞を培養して初代培養細胞を得る手法、初代培養細胞を継代培養して細胞株およびその継代株を得る手法などを適宜組み合わせた方法を実施することにより製造することができる。
本発明の第1の細胞株を製造する方法のうち、初代培養細胞を得る工程の具体例は、たとえば、次の手順からなる。すなわち、カワハギの鰭部を、皮を剥ぐことなく、適当な大きさの角片として切除する。切除した角片を適当な方法で洗浄し、次いで種々の濃度の抗生物質を用いて1〜数回に分けて処理する。処理後の切片を、無菌的にトリプシンなどのタンパク質分解酵素溶液の存在下で微小片となるように細かく刻む。ここまでの操作は低温下、好ましくは氷冷下で実施する。次いで、トリプシン溶液に浸漬させた微小片を室温で静置する。静置後の微小片を遠心分離等によって回収し、回収した微少片をLeibovitz’s L−15培地などの非CO環境下での細胞増殖に適した培地を用いて数回繰り返し洗浄する。この際、微小片をCO環境下で洗浄する場合は、RPMI1640倍地やIMDM培地(ともにライフテクノロジーズ社)などの標準的な哺乳動物細胞用培地が使用可能である。次いで、血清含有培地を含むコラーゲンコートされた培養容器に微小片を播き、底着させた後、25℃にするなどの適当な培養条件で、細胞が培養容器の底面の約80%以上を覆うようになるまで培養する。この際の微小片に集まった細胞を初代培養細胞とする。次いで、培養容器中の培地を除去し、容器底面に付着している培養細胞を適当な方法で洗浄した後、適当な方法で底面から培養細胞を剥離および回収し、2〜3等分して新しい培養容器にて継代培養を実施する。新しい培養容器に播いた細胞を第1継代培養細胞とする。
本発明の第1の細胞株を製造する方法のうち、初代培養細胞を継代培養して本発明の第1の細胞株を得る工程の具体例は、たとえば、次の手順からなる。すなわち、初代培養細胞から本発明の第1の細胞株を得るための継代培養は、たとえば、初代培養細胞を得る工程と同じようにして、血清含有培地を用いて適当な培養条件により達成される。培養開始時の細胞数は4×10cells/mlであり、培養終了時の目安は90%以上のコンフルエントになったときであり、および培地の交換時期は死滅細胞により培養液が汚れたときなどとすることができるが、これらは特に限定されるものではない。
本発明の第1の細胞株は、当業者により知られる通常の方法で保存および増殖させることができ、その方法は特に限定されるものではない。本発明の第1の細胞株を凍結保存する方法は、たとえば、細胞株に市販の培地を加えた後、細胞を遠心分離するなどして回収し、次いで回収した細胞へ市販の無血清培養細胞用の細胞凍結保存液を加えて、凍結保存することにより達成し得る。凍結させた本発明の細胞株は、室温で半解凍状態にし、新鮮な無血清培地で適当な回数置換することにより細胞を融解させることができる。融解後の細胞に血清含有培地を加えることによって、上記の継代培養を実施できる。
本発明の第1の細胞株が製造できたことを判定する方法は特に限定されるものではないが、初代培養細胞を30回以上、好ましくは50回以上、より好ましくは70回以上、さらに好ましくは100回以上の継代培養に供することによって、そのような継代培養後の細胞を本発明の第1の細胞株であると判定できる。
本発明の第1の細胞株は、連続的に継代培養が可能な細胞系ではあれば特に限定されないが、実質的に制限なく継代培養が可能であるものであることが好ましい。すなわち、本発明の第1の細胞株の一態様は、当業者が有する相応の注意力および技術力をもって、上記した継代培養の方法に従って培養すれば、何世代にも渡って繰り返し培養できるものである。
本発明の第1の細胞株は、種々の性質を有し得るが、線維芽細胞様の形態を呈するものであることが好ましい。線維芽細胞は、扁平で長目の外形、しばしば見られる不規則な突起、楕円形の核などの特有の形態を呈する。本発明の第1の細胞株が線維芽細胞様の形態を呈するものである場合、本発明の第1の細胞株は、線維芽細胞に特有のいずれかの形態を有するものであれば特に限定されないが、少なくとも扁平で長目の外形を有するものであることが好ましい。本発明の第1の細胞株が線維芽細胞様の形態を呈することは、当業者により知られる細胞の形態を観察する種々の方法により確認することができ、たとえば、適当な倍率にセットした光学顕微鏡下で本発明の第1の細胞株を観察することにより確認することができる。
本発明の第1の細胞株が、実質的に制限なく継代培養が可能であるものである場合は、たとえば、分裂回数を30回以上、好ましくは50回以上、より好ましくは70回以上、さらに好ましくは100回以上とすることができるものである。この場合の本発明の第1の細胞株は、不死化細胞とみなし得る。本発明の第1の細胞株が、実質的に制限なく継代培養が可能であるものか否かは、たとえば、本発明の細胞株を上記した継代培養に供して、継代回数が上記の回数に達することを確認することにより判定できる。
倍加時間は、当業者により知られているとおり、細胞数が2倍に達する時間をいう。倍加時間は、増殖期にある細胞については、原則的に細胞周期と一致する。本発明の第1の細胞株の倍加時間を測定する方法は特に限定されないが、たとえば、上記した継代培養に供した場合、すなわち、10% FBSを含むLeibovitz’s L−15培地を用いて25℃で培養した場合に、増殖期にある細胞について2〜数点、好ましくは3点以上を選んで計測した細胞数から求められ得る。
本発明の第1の細胞株の倍加時間は特に限定されないが、たとえば、初期細胞数を約1.0×10cells/ml、好ましくは0.1〜1.5×10cells/ml、より好ましくは0.4〜1.0×10cells/mlとして、75cmの底面積を有する培養容器内で10% FBSを含むLeibovitz’s L−15培地を用いて、CO非存在下で25℃にて培養した場合、初代培養細胞より短く、好ましくは10〜48時間、より好ましくは12〜36時間、さらに好ましくは14〜28時間、なおさらに好ましくは16〜24時間、特に好ましくは約18時間である。細胞数からの倍加時間を算出する方法は特に限定されないが、たとえば、TC10 Automated Cell Counter(BIO−RAD社)などの細胞数計測機器を用いて計測した細胞数に基づいて、観測点(時間)と細胞数とから単位時間あたりの細胞量の増加を計測するソフトウェア(http://www.doubling−time.com/compute.php?lang=en)を用いて算出する方法を挙げることができる。また、細胞の計測は、たとえば、培養容器の底面にあらかじめ指標(マーカー)を付し、本発明の第1の細胞株を培養に供した後、該マーカー付近における細胞の数を倒立型ルーチン顕微鏡で撮影観察することにより計測することができる。この際、接眼レンズに付された複数の四方マス(たとえば、1mm×1mmのマス)の中の各細胞数の平均を細胞数としてもよい。培養した細胞を経時的に観察すると、細胞の増殖曲線が得られる。増殖曲線からは、細胞の増殖過程における遅延期、対数増殖期、定常期、死滅期の増殖サイクルを知ることができる。対数増殖期の細胞数が2倍になる為に必要な時間(倍加時間)を以下の計算式より算出することができる。
倍加時間=(t−t)log2/(logN−logN
t:時間[h]、N:t時の細胞数
:初期時間[h]、N:t時の細胞数
培養細胞を培養容器の底面に接着させた状態で培養すると、通常は、培養細胞は底面全体を覆うコンフルエントな状態に達すると増殖を停止する。すなわち、培養細胞は、培養容器の底面の上に単層の細胞層を形成するまで増殖し得る。しかし、本発明の第1の細胞株の一態様は、単層の細胞層を形成した後もさらに増殖を続けることにより、単層の細胞層の上に別の細胞層を形成し得るものであり、好ましくは多層構造を形成した培養が可能であるものである。したがって、本発明の第1の細胞株は、細胞層が重なり合った三次元的構造を形成した培養が可能であるものを含む。本発明の第1の細胞株が多層構造を形成し得るものであることは、本発明の第1の細胞株がコンフルエントな状態になった後さらに培養を進め、当業者により知られる方法で培養細胞の構造を観察することにより確認することができる。なお、多層構造とは、単層の細胞層の上に別の細胞層を形成した構造であれば特に限定されず、2層または3層以上の層構造である。
本発明の第1の細胞株の染色体数は、由来生物であるカワハギ科魚類の種類や雌雄によって変化することから特に限定されないが、たとえば、カワハギのメスの背鰭から取得したものである場合、その染色体数は66本、33本および32本であり得る。また、本発明の第1の細胞株は、一個の独立した細胞だけではなく、一群の細胞集団としてみなせる場合がある。その場合、本発明の第1の細胞株が、カワハギのメスの背鰭から取得したものである場合は、染色体数が66本、33本または32本である細胞株の集団であり得る。また、この場合の本発明の第1の細胞株は、好ましくは最大値が66本であり、最小値が32本であり、およびモード(最頻値)が33本である度数分布に従った染色体数を有する細胞株の集団であり、該度数分布において、モードである33本の染色体の度数が全度数の約90%である細胞株の集団であることがより好ましい。本発明の第1の細胞株の染色体数を解析する方法としては、当業者により知られる細胞の染色体数を解析する方法を特に限定することなく採用することができるが、たとえば、後述する実施例に記載されている方法により解析することができる。
本発明の第1の細胞株の具体例は、カワハギ科魚類の生体部位に由来する細胞株であって、下記(1)〜(5)の性質のいずれか1つ以上の性質を有するもの、好ましくは下記(1)の性質を有し、かつ、下記(2)〜(5)のいずれか1つ以上の性質を有するもの、より好ましくは下記(1)および(2)の性質を有し、かつ、下記(3)〜(5)のいずれか1つ以上の性質を有するもの、さらに好ましくは下記(1)〜(3)の性質を有し、かつ、下記(4)および(5)のいずれか1つ以上の性質を有するもの、なおさらに好ましくは下記(1)〜(5)の性質を有するものである。
(1)実質的に制限なく継代培養が可能である
(2)線維芽細胞様の形態を呈する
(3)多層構造を形成した培養が可能である
(4)最大値は66本であり、最小値は32本であり、およびモードは33本である度数分布に従った染色体数を有する、ただし、該度数分布はモードである33本の染色体の度数が全度数の約90%であることが好ましい
(5)初期細胞数を約1.0×10cells/mlとして、75cmの底面積を有する培養容器内で10% FBSを含むLeibovitz’s L−15培地を用いて、CO非存在下で25℃にて培養した際の倍加時間は、約14〜28時間である
2.本発明の第2の細胞株
本発明の細胞株の別の態様として、本発明の第2の細胞株は、TRA−1−60、OCT4およびSSEA−3からなる群から選ばれる少なくとも1種の細胞マーカーが陽性である、カワハギ科魚類の生体部位に由来する細胞株またはその継代株である。本発明の第2の細胞株は、本発明の第1の細胞株と同様の方法によって、カワハギ科魚類の生体部位から製造することができる。本発明の第2の細胞株は、線維芽細胞様の形態を呈することが好ましい。
TRA−1−60、OCT4またはSSEA−3が陽性である細胞株とは、それぞれヒトTRA−1−60、ヒトOCT4またはヒトSSEA−3に対する抗体が認識するエピトープを発現している細胞株をいう。
TRA−1−60に対する抗体は、未分化ヒト胚性幹(ES)細胞、胚性癌(EC)細胞および胚性生殖(EG)細胞に発現するタンパク質(エピトープ)と反応し、該エピトープは細胞分化により失われることが知られている。OCT4はES細胞に高発現する転写因子であり、ES細胞の未分化性の維持や多分化能の維持に関与しているといわれている。SSEA−3はES細胞などの多能性幹細胞の細胞マーカーとして知られている。TRA−1−60、OCT4およびSSEA−3をコードする遺伝子配列は、たとえば、National Center for Biotechnology Information(NCBI)の公共のデータベースであるGenBankにより、それぞれACCESSION番号として、TRA−1−60はNM_001018111あるいはNM_005397、OCT4はNM_002701、およびSSEA−3はNM_033149(アミノ酸配列のACCESSION番号はQ9JI67)として登録されている。
TRA−1−60、OCT4およびSSEA−3は、それぞれ多能性を示す細胞マーカーであり、分化後の細胞表面には見られないものであることで共通する。これらのことから、TRA−1−60、OCT4、SSEA−3またはこれらの細胞マーカーの2種もしくは3種が陽性である細胞株は、種々の細胞に分化する能力である多能性を備えたものであると推測され得る。したがって、本発明の第2の細胞株は、多能性を有する細胞株である蓋然性が高い。ただし、本明細書においては「多能性」という用語は、限定的に解釈されるものではなく、学術用語としての多能性(pluripotency、multipotency)の意味に加えて、全能性(totipotency)の意味をも含み、多能性や全能性があること、またはその蓋然性があることなどと解釈すればよく、このことに係わらず最も広義に解釈されるものである。
細胞株がTRA−1−60、OCT4およびSSEA−3からなる群から選ばれる少なくとも1種の細胞マーカーが陽性であることは、当業者により知られている特定の細胞マーカーを調べる手法を応用して確認できるが、たとえば、次の手順による免疫化学的手法により確認できる。すなわち、培養細胞を培養容器の底面に固定化し、ブロッキング処理などした後に、TRA−1−60、OCT4またはSSEA−3に対する一次抗体を加えて一次抗体反応を実施する。次いで、未反応の一次抗体を除いた後に、蛍光標識された一次抗体に対する二次抗体を加えて二次抗体反応を実施する。次いで、未反応の二次抗体を除去した後に、蛍光標識された細胞を観察することにより、TRA−1−60陽性、OCT4陽性またはSSEA−3陽性の細胞を確認することができる。なお、一次抗体の構造(グロブリンタイプや断片化構造など)、二次抗体についての一次抗体の認識特異性、蛍光標識の波長などを変えることにより、一度または二度の操作で、細胞がTRA−1−60、OCT4およびSSEA−3について陽性であることを確認できるが、細胞を3つの集団に分割してそれぞれの集団についてTRA−1−60、OCT4またはSSEA−3が陽性であることを確認することが好ましい。また、本発明の第2の細胞株は、TRA−1−60、OCT4およびSSEA−3以外の多能性幹細胞において特異的に発現する細胞マーカーを発現し得るものであってもよい。
本発明の第2の細胞株は、ヒト抗NANOG抗体に対する親和性が小さく、バックグラウンドの状況や画像処理法によっては、NANOGについて弱陽性ともいえるし、実質的に陰性であるともいえる。
本発明の第2の細胞株は、上記細胞マーカーを発現するものであることから、多能性を有する細胞株である蓋然性が高い。したがって、本発明の第2の細胞株の一態様は、たとえば、筋細胞および筋細胞様細胞、上皮細胞および上皮細胞様細胞、神経細胞および神経細胞様細胞、脂肪細胞および脂肪細胞様細胞、肝臓細胞および肝臓細胞様細胞などの細胞に分化し得る細胞株である。
本発明において、細胞の分化とは、TRA−1−60、OCT4およびSSEA−3からなる群から選ばれる少なくとも1種の細胞マーカーの発現が消失すること、分化細胞に特有の細胞マーカーを発現することなどに加えて、単なる形態変化も含まれる。また、筋細胞様細胞、上皮細胞様細胞、神経細胞様細胞、脂肪細胞様細胞および肝臓細胞様細胞とは、筋細胞等に完全には分化していないが、分化の途中にある細胞や分化細胞に類似する形態を呈する細胞を包含し得る。
本発明の第2の細胞株の好ましい一態様は、筋細胞および筋細胞様細胞、上皮細胞および上皮細胞様細胞、神経細胞および神経細胞様細胞、脂肪細胞および脂肪細胞様細胞、免疫細胞および免疫細胞様細胞ならびに肝臓細胞および肝臓細胞様細胞からなる群から選ばれる1種、好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、さらに好ましくは4種以上の細胞に分化する能力を有する細胞株である。ただし、これらの分化細胞は例示であり、他の細胞に分化する能力を有するものも本発明の第2の細胞株に含まれる。
本発明の第2の細胞株における各細胞への分化は、当業者により知られる多能性幹細胞を各細胞へ分化させる手法により達成できるが、たとえば、培養容器のコーティングの有無および種類、血清の種類および有無、培地の種類などを種々設定することによっても達成し得る。たとえば、図10B〜Hに示されている通り、本発明の第2の細胞株から筋細胞または筋細胞様細胞、上皮細胞または上皮細胞様細胞、神経細胞または神経細胞様細胞、肝臓細胞または肝臓細胞様細胞、繊維細胞または繊維細胞様細胞、脂肪細胞または脂肪細胞様細胞、免疫細胞または免疫細胞様細胞を得ることができる。
これらの細胞について、図10Bに示す細胞は、細長い紡錘状または線維状の形態を呈し、かつ、増殖能がある筋細胞様の細胞である。図10Cに示す細胞は、個々の細胞は周縁が不定の扁平な形態を呈し、かつ、細胞同士が密になって増殖する上皮細胞様の細胞である。図10Dに示す細胞は、伸長性のある軸索または樹状突起を有する細胞形態を呈し、かつ、増殖能がない神経細胞様の細胞である。図10Eに示す細胞は、細胞質内に脂肪滴らしきものを有する形態を呈し、かつ、有限的に分裂可能な肝臓細胞様の細胞である。図10Fに示す細胞は、筋細胞と同程度またはそれ以上の繊維状の形態を呈し、かつ、増殖能を有する繊維細胞様の細胞である。図10Gに示す細胞は、多数の空洞を有し、中には伸展性の軸索を有する形態を呈し、かつ、増殖能がない脂肪細胞様の細胞である。図10Hに示す細胞は、伸長性がある先端が尖った突起物を有するバラの枝状の形態を呈し、増殖能がなく、かつ、近接する細胞と連結する樹状の免疫細胞様の細胞である。また、本発明の第2の細胞株からは、図10Iに示すような、ゴム様に伸縮し、増殖能を有する細胞同士が融合して、巨大な繭様の構造体を形成する融合細胞が得られる。本融合細胞は、図11Aに示すようにアルカリフォスファターゼ活性陽性であり、かつ、図11Bに示すようにNANOG陽性である。さらに、本融合細胞は、図11C〜Eにそれぞれ示すように、TRA−1−60、OCT4およびSSEA−3についても陽性である。上記のTRA−1−60、OCT4およびSSEA−3をコードする遺伝子配列に加えて、NANOGは、たとえば、NCBIの公共のデータベースであるGenBankにより、それぞれACCESSION番号として、NM_024865として登録されている。
細胞株が分化したことは、継代培養時の線維芽細胞様の形態、たとえば、図10Aに示すような形態と見比べることによる形態の変化により確認することができるが、当業者により知られる分化細胞の判定手法によっても確認することができる。たとえば、各分化細胞の細胞マーカーや各分化細胞が産生する物質を指標として、細胞株が分化したことを確認してもよい。
本発明の第2の細胞株から各分化細胞を製造する方法が、本発明の別の態様として提供される。すなわち、本発明の分化細胞を製造する方法は、本発明の第2の細胞株を、底面が細胞接着分子でコーティングされた培養容器または底面が細胞接着分子でコーティングされていない培養容器の中で、血清を含有していない、または哺乳類血清、魚類血清もしくは血清代替物を含有した哺乳動物細胞用培地、昆虫細胞用培地または魚類細胞用培地を用いて培養する工程を含む。
本発明の別の態様として、本発明の第2の細胞株を含む、分化細胞を製造するためのキットが提供される。分化細胞を製造するためのキットには、血清、培地および培養容器などを含むことが好ましく、これらに加えて緩衝剤(バッファー)やpH調整剤などを含むことがより好ましい。本発明の第2の細胞株は、上記した分化細胞以外の細胞に分化する可能性があることから、血清、培地、培養容器、緩衝剤およびpH調整剤は特に限定されず、種々のものが用いられ得る。
たとえば、本発明の分化細胞を製造するためのキットに含まれる血清としては、哺乳類血清、魚類血清および血清代替物を用いることができ、ウシ胎児血清(GIBCO;No.26140−087など)、ウマ血清(GIBCO;No.16050−130など)、ヤギ血清(GIBCO;No.16210−064など)、ウサギ血清(GIBCO;No.16120−099など)、マウス(ケーエーシー;No.AS3054など)、ニワトリ血清(GIBCO;No.16110−082など)、仔ヒツジ血清(GIBCO;No.16070−096など)、ブタ血清(GIBCO;No.26250−084など)、イヌ(ケーエーシー;No.AS3070など)、サル血清(ケーエーシー;No.AS3076など)、サケ血清SeaGrow(East Coast Bio;JJ80−N2751など)などに加えて、タイやブリなどの他の魚類の血清を用いることができる。また、本発明の分化細胞を製造するためのキットに含まれる血清は、1種であっても2種以上であってもよい。血清を入手する方法は特に限定されず、市販されているものを用いてもよい。
本発明の分化細胞を製造するためのキットに含まれる血清として、血清代替物を用いることができる。血清代替物としては、たとえば、Knockout(登録商標) Serum Replacement(KSR)、ラクトアルブミン水解物、魚由来細胞培養培地用添加剤Hy−Fish(マルハチ村松)、Nu−Serum(BD;No.BSE 355100)、SERUM PLUS(Sigma;No.14008C−500ML)、L−Glutamine溶液(Sigma;No.59202C−100ML)などを挙げることができ、これらの中の1種または2種以上の血清代替物を用いることができる。
本発明の分化細胞を製造するためのキットに含まれる培地としては、たとえば、L−15(GIBCO;No.11415−064)、AIM V(ライフテクノロジーズ社;No.087−0112DK)、IMDM(GIBCO;No.12440−053)、RPMI(GIBCO;No.11835030)、EX−CELL 420 with L−glutamine(ニチレイ;No.14420C、昆虫用)、D−MEM(GIBCO)、mTeSR1(STEM CELL;No.ST−05850、幹細胞用)、Ham’s F−12(GIBCO;No.11765−054)、霊長類ES/iPS細胞用培地(ReproCELL;No.RCHEMD001)を挙げることができ、これらの中の1種または2種以上の培地を用いることができる。
本発明の分化細胞を製造するためのキットには、培地に加えて、増殖因子や培地添加剤を構成成分として含めることができる。増殖因子や培地添加剤としては、たとえば、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、神経成長因子、インスリン様増殖因子、血小板由来増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、サイトカイン、幹細胞因子、T−STIM培養添加物、IL−3カルチャーサプリメント、血管内皮細胞グロースサプリメント、MITO+ シーラム・エクステンダー、ITS培養添加物を挙げることができ、これらの中の1種または2種以上の培地を用いることができる。増殖因子や培地添加剤を入手する方法は特に限定されず、市販されているものを用いてもよく、たとえば、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社(BD;http://www.bdj.co.jp/falcon/products/1f3pro00000c64gx.html)などの製造業者によって市販されているものを使用することができる。
本発明の分化細胞を製造するためのキットに含まれる培養容器は、底面がコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、Poly−D−Lysine、Poly−L−Lysine、ゼラチン、ストレプトアビジンなどの細胞接着分子でコーティングされた培養容器、底面が細胞接着分子でコーティングされていない培養容器またはこれらの中の2種以上の培養容器であることが好ましい。底面が細胞接着分子でコーティングされた培養容器を入手する方法は特に限定されないが、市販のコーティング済培養容器を用いてもよいし、非コーティング培養容器および細胞接着分子を別途用意し、当業者により知られる手法で培養容器の底面を細胞接着分子でコーティングすることにより作製したものを用いてもよい。細胞接着分子の入手方法は特に限定されず、たとえば、コラーゲンI(Thermo:132706)、IV(コスモバイオ:354534)などのコラーゲン;ポリ−D−リシン(Thermo:132703);ゼラチン(CR:354654);フィブロネクチン(BD:356242);ポリ−L−リシン(Thermo);ポリ−L−オルニチン(BioCoat);ラミニン(BD);マトリゲルバイオコート(BD);3次元培養用足場AteloCell(KOKEN;No.CSM−50)などを用いることができる。培養容器の形状や素材は特に限定されないが、ポリスチレン製のフラスコ、シャーレおよびマルチウェルプレートが好ましい。
本発明の分化細胞を製造するためのキットに含まれる各構成成分は、市販されている培地(液体および固形)、血清(液体および固形)、血清代替物質、増殖因子、培地添加剤(各種アミノ酸含む)、培養容器が一般的に用いられるが、特に限定されるものではない。たとえば、培地は、製造業者により開示されている組成を参考にして作製したものを用いてもよい。
本発明の第1の細胞株および第2の細胞株のより好ましい態様は、本発明の第1の細胞株および第2の細胞株の特性を併せ持った細胞株であり、たとえば、後述する実施例に記載のカワハギ(Stephanolepis cirrhifer)の背鰭に由来するKSC細胞である。KSC細胞は、微生物の識別の表示を「KSC」とし、かつ、受託番号を「NITE BP−1369」として、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センター(〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に2012年6月1日付けの受託日により寄託されている。
本発明の別の側面によれば、本発明の第1の細胞株および/または第2の細胞株を培養することにより得られる、これらの細胞株からなる培養細胞シートが提供される。本発明の培養細胞シートは、高級魚類の治療への応用が期待できるものである。特に、養殖魚は免疫が弱く傷害致死率が高いことから、本発明の培養細胞シートは、養殖魚の傷害致死率の低下に寄与し得るものである。また、本発明の培養細胞シートは、合成高分子やセロファンなどの人工的な物質は物質の選択的透過性が制限されることから、これを克服するものとして生体由来選択膜としての利用が期待できる。さらに、本発明の培養細胞シートは、個々の細胞がコラーゲンやフィブロネクチンを産生することからヒト培養細胞シートを形成する際の足場としての利用、細胞に由来する免疫性および抗菌性の観点から生体内への物質輸送カプセル素材、絆創膏、貼付剤などの医療的利用、がん細胞動向の試験への利用、免疫試験への利用、魚類成分を分泌する化粧品としての美容パックとしての利用などに期待できる。また、本発明の培養細胞シートは、シート形成時に底面から剥がれ、浮遊状態で培養を継続できる。本発明の培養細胞シートは、浮遊状態で培養ができるという利点を有する。
3.本発明の細胞株の製造方法
本発明の細胞株の製造方法は、本発明の第1の細胞株および本発明の第2の細胞株を製造する方法であり、たとえば、カワハギ科魚類の生体部位から単離した細胞を30回以上、好ましくは50回以上、より好ましくは70回以上の継代培養に供する工程(以下、継代培養工程ともよぶ。)を含む方法が挙げられる。継代培養工程は、最終的に本発明の細胞株が得られる工程であれば特に限定されるものではなく、たとえば、上記した「1.本発明の第1の細胞株」および「2.本発明の第2の細胞株」に記載の事項に基づいて、使用する材料、方法、条件、製造物の判定などを決定して実施することができる。また、本発明の細胞株の製造方法は、本発明の細胞株を製造するという目的を達成し得る限り、継代培養工程を実施している途中で細胞を保存および復帰するなど、継代培養工程の前、途中および後に適当な工程を設けることができる。
4.本発明の形質転換体、製造方法およびキット
本発明の形質転換体は、本発明の細胞株に外来遺伝子を導入してなるものである。また、本発明の形質転換体の製造方法は、本発明の細胞株に外来遺伝子を導入して形質転換体を得る工程を含む方法である。本発明の外来遺伝子産物の製造方法は、本発明の形質転換体から外来遺伝子の発現産物を得る工程を含む方法である。
本発明の細胞株に外来遺伝子を導入する手法は特に限定されず、たとえば、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、バキュロウィルスを用いる手法などの当業者により知られているトランスフェクション手法を採用できる。また、細胞株への外来遺伝子の導入は、外来遺伝子そのものを本発明の細胞株の核内へ導入してもよいし、ベクターなどの遺伝子導入用物質を利用して、たとえば、外来遺伝子を導入した組換えベクターの形で本発明の細胞株内へ導入してもよい。
ベクターは、自律的に複製することが可能なベクターであれば特に限定されないが、たとえば、市販されている哺乳類細胞用のベクター、より具体的にはpcDNA3.1、Flexi HaloTag、pcDNA3.2、pcDNA4、pcDNA5、pcDNA6、pCMVなどのプラスミドベクターや;λファージ、RSVなどのウイルスベクター;アフリカツメガエル由来EF1αプロモーターを有する両生類由来のベクターなどが挙げられる。
導入すべき外来遺伝子は特に限定されず、たとえば、機能性タンパク質、食用タンパク質、酵素、マーカー用タンパク質、標識用タンパク質などの、所望のタンパク質をコードする遺伝子であればよい。本発明の細胞株は、魚類由来の細胞株であることから、魚類特有のタンパク質をコードする遺伝子を外来遺伝子とすることもできる。外来遺伝子は、所望のタンパク質のアミノ酸配列の情報に基づいて作製でき、市販のものを適宜改変して使用することができる。外来遺伝子がコードするタンパク質は1種類でも2種類以上でもよい。たとえば、所望のタンパク質と抗生物質耐性マーカーとをコードする外来遺伝子であれば、遺伝子導入後に抗生物質選択性により外来遺伝子が導入された形質転換体のみを効率よく取得することが可能である。
本発明の形質転換体の製造方法および本発明の外来遺伝子産物の製造方法の具体例は、特に限定されるものではないが、後述する実施例の「6.KSC細胞への外来遺伝子の導入および発現」に記載の方法を挙げることができる。本発明の方法を実施するために用いられる遺伝子工学的手法や分子生物学的手法は、これまでに知られている手法を制限なく用いることができ、たとえば、Molecular Cloning:A laboratory Manual,2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.,1989やCurrent Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,John Wiley&Sons(1987−1997)などに記載されている方法を参照することができる。
本発明の形質転換体の製造方法によって形質転換体が得られたか否かは、導入した外来遺伝子の発現産物の有無を指標に確認できる。同様に、本発明の外来遺伝子産物の製造方法によって外来遺伝子産物が得られたか否かは、外来遺伝子の発現産物の有無を指標に確認できる。本発明の外来遺伝子産物の製造方法では、本発明の形質転換体を培養することにより外来遺伝子を発現させて外来遺伝子産物を得てもよいし、本発明の形質転換体を培養して増殖させた後、外来遺伝子発現を誘導して外来遺伝子産物を得てもよい。また、外来遺伝子産物は、外来遺伝子の種類に応じて、本発明の形質転換体内に蓄積した発現産物または培養液中に蓄積した発現産物として得ることができる。外来遺伝子産物の確認は、当業者により知られる特定のタンパク質の存在を知る手法であれば特に限定されないが、たとえば、外来遺伝子産物の分子量や外来遺伝子産物に対する抗体などを用いたウエスタンブロット法、イムノアッセイ法、クロマトグラフィー法などを採用することができる。
本発明の形質転換体を製造するためのキットは、本発明の細胞株を含めば特に限定されないが、本発明の細胞株に加えて、外来遺伝子を導入するためのベクターとトランスフェクションのための器具、試薬、装置などの器材とを含むことが好ましい。
トランスフェクションのための器材は、各トランスフェクション手法を実施する際に使用されるものであれば特に限定されず、たとえば、トランスフェクション手法がリポフェクション法である場合は、リポソーム、培地、緩衝液などの試薬および培養容器などの器具であることが好ましい。
5.本発明の細胞株の用途
本発明の細胞株の用途は特に限定されず、たとえば、上記した用途以外にも、魚類の細胞生理、魚類遺伝子とその発現系、魚病ウイルス、水環境汚染評価の実験系など合目的な研究に加え、生理活性物質の評価、魚類ウイルスとの組合せによる抗ウイルス剤のスクリーニングなどにも利用することができる。たとえば、本発明の細胞株は、本発明の細胞株の培養系に被験物質を導入し、次いで被験物質の生細胞に対する影響を評価する工程を含む、被験物質評価方法;本発明の細胞株の培養系にウイルスを接種し、当該ウイルスの増殖に適した栄養培地でウイルスを増殖させる工程を含む、ウイルス増殖方法;ウイルス増殖方法においてウイルスの増殖している培地中に被験物質を導入し、次いで被験物質のウイルスに対する作用を評価する工程を含む、ウイルス治療剤をスクリーニングする方法などに利用できる。さらにこれらの方法を応用して、ウイルス感染症を診断する方法、ウイルス感染症に対して有効なワクチンを製造する方法、細胞毒性を評価する方法などに本発明の細胞株を利用できる。たとえば、本発明の細胞株の生存数と、被験物質を接触させた後の細胞株の生存数とを比較することにより、被験物質の細胞毒性を評価することが期待できる。また、被験物質と本発明の細胞株とを接触させる工程および筋細胞、皮膚細胞、神経細胞または脂肪細胞を検出することにより、被験物質を分化誘導物質と判定する工程によれば、分化誘導物質をスクリーニングすることが期待できる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
1.カワハギ組織からの細胞の単離
カワハギ(Stephanolepis cirrhifer)の各鰭部を、皮を剥ぐことなく5mm角に切り取ったものを1.5mlの滅菌したチューブに入れて、氷冷下で水道水、PBS(WAKO社)の順で洗浄した。洗浄した鰭片を、10% ペニシリン/ストレプトマイシン(MP BIOMEDICALS社)含有PBSを用いて氷冷下で3度置換し、30分静置した。なお、「置換」とは、PBSが適量入ったチューブを用意し、そのPBS含チューブに鰭片を入れて攪拌した後、鰭片を別のPBS含チューブに入れる操作をいう。
静置後の鰭片を、1% ペニシリン/ストレプトマイシン含有PBSを用いて氷冷下で3度置換した。処理後の鰭片を、クリーンベンチ内で、1% ペニシリン/ストレプトマイシン含有PBSの代わりに、トリプシンEDTA(MP BIOMEDICALS社)を加え、氷冷下で組織片を1mm角に細かく刻み、次いで室温で20分間静置した。静置後の組織片を遠心分離機に数秒間かけた後、上清を取り除いた。沈殿した組織片にLeibovitz’s L−15培地(LIFE TECHNOLOGIES社)で数回処理した。すなわち、チューブ内の組織片を遠沈させ、上清を除いた後、新鮮培地を加えて攪拌した。その後、組織片を再度遠沈させ、上清を除いた後、再度新鮮培地を加えて攪拌した。この操作を2〜3回繰り返した。Leibovitz’s L−15培地の組成は表1のとおりである(http://ja.invitrogen.com/site/jp/ja/home/support/Product−Technical−Resources/media_formulation.80.html)。
処理後の組織片を、10% FBS(GIBCO社)を含むLeibovitz’s L−15培地の入った25cm CollagenIカルチャーフラスコ(THERMO社)内に播き、底着させた後、25℃で培養した。図1A〜Dは、各鰭片を中心として、フラスコ全体に遊走した細胞が展開した様相を示す。以下では、背鰭片から摘出した細胞の継代培養手順について述べる。
2.継代培養
カルチャーフラスコ中の培地を除去し、フラスコ底面に付着している細胞をPBSで3回洗浄した。TrypLE Express(GIBCO社)を用いて38℃で10分間処理して、細胞を剥離および回収した。回収した細胞に、10% FBSを含むLeibovitz’s L−15培地を加え、25℃で培養した。
細胞の保存は、回収した細胞に培地を加えた後、室温、1,100rpmで4分間遠心し、次いで上清を除去した後、セルバンカー2(十慈フィールド株式会社)を用いて、−80℃で保存した。また、凍結細胞を起こす手順として、まず、凍結細胞を室温で半解凍状態にし、Leibovitz’s L−15培地で2回培地の置換を行った。この置換は、半解凍状態のチューブから液体部分をとり、15mlの遠沈管にうつした後、L−15培地4mlを加え撹拌し遠心分離を行った。次いで、上清を除き再度L−15培地を4ml加え撹拌し遠心分離を行った。次いで、上清を除いた後、細胞に10% FBSを含むLeibovitz’s L−15培地を加えて、継代培養に供した。
3.細胞の株化の評価および25cmフラスコにおける増殖速度
図1に示す組織周縁に集まった初代培養細胞は、通常、50〜80回の分裂後に細胞の分裂限界に達する(Hayflick limit;Hayflick L,Moorhead PS,1961,Exp Cell Res.25:585−621を参照)。しかし、中には、上記分裂回数を過ぎても、倍加時間(Doubling time)を低下させず、分裂を繰り返す細胞がある。そのような細胞が、不死化細胞(株化細胞、細胞株など)と定義されている。
本発明者らは、上記1および2を実施した結果、継代回数が70回以上であり、かつ、分裂回数が276回以上である細胞を得ることに成功した。この細胞をKSC細胞と名づけた。KSC細胞は、倍加時間について、第1継代培養細胞とほとんど変化がなかった。したがって、KSC細胞は、株化されたと評価した。これは、JRCB細胞バンクの定義(http://cellbank.nibio.go.jp/visitercenter/whatsculture/cellculture03.html)に従うものである。
細胞の増殖率は、細胞の密度(濃度)や培養面積など条件によって大きく変動することが知られている。そこで、KSC細胞と、哺乳類細胞の株化細胞の中でも比較的増殖率の高いCHO細胞との倍加時間を比較した。CHO細胞のデータは、細胞バンク規模で世界第2位であり、かつ、世界で唯一詳細な細胞データを完備して信頼性が高いと思われるドイツのDSMZ(http://www.dsmz.de/)のデータを利用した。
DSMZの細胞データより、CHO細胞は、約80cmに10cells/mlの細胞を播種すると72〜96時間でコンフルエンス(細胞がフラスコ底面全体に展開するまでに増殖した状態)に達し、倍加時間は24時間として計算される。それに対して、KSC細胞は、約80cmに10cells/mlの細胞を播種すると、48〜72時間でコンフルエンスに達し、倍加時間は18.34時間として算出された。したがって、KSC細胞は、CHO細胞と同程度またはそれより優れた増殖能をもった細胞であることがわかった。
また、KSC細胞について、約0.4×10cells/mlの細胞を75cmの面積に播き、10% FBSを含むLeibovitz’s L−15培地を用いて、CO非存在下で25℃にて、コンフルエントに達する48時間後まで培養した際の全細胞数をTC10 Automated Cell Counter(BIO−RAD社)を用いて計測したところ、培養24時間後の細胞数は約1.0×10cells/mlであり、培養48時間後の細胞数は約2.5×10cells/mlであった。ウェブ上の倍加時間計測ソフトウェア(http://www.doubling−time.com/compute.php?lang=en)を用いて、播いた直後の細胞数と培養48時間後の細胞数とから倍加時間を算出したところ、18.16時間であった。同様に、蒔いた直後の細胞数と培養24時間後の細胞数とから算出された倍加時間は18.16時間であり、培養24時間後の細胞数と培養48時間後の細胞数とから算出された倍加時間は18.16時間であった。
4.凍結状態からの復帰
セルバンカー2を用いて凍結保存したKSC細胞について、解凍後の細胞生存率を評価した。図2は、継代回数に係わらず、解凍後のKSC細胞は75%以上の生存率であったことを示す。
5.細胞の形態観察
株化したKSC細胞は、線維芽細胞様の形態を示した(図3Aを参照)。また、KSC細胞をフラスコ底面で培養すると、コンフルエントになった後、2層構造を形成した(図3Bを参照)。さらに、この状態で培養を続けると多層構造を形成した(図3Cを参照)。
6.KSC細胞への外来遺伝子の導入および発現
(1)方法
哺乳類細胞で使われている各種遺伝子導入法(トランスフェクション法)がKSC細胞で適用可能であることを、Lipofectamine法を含むリポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法およびバキュロウィルスを用いた手法により検証した。各手法の詳細は、下記に示す各製造業者の指示に準じた:http://tools.invitrogen.com/content/sfs/manuals/lipofectamine2000_man.pdf;http://www.invitrogen.jp/transfection/pdf/Neon_quickguide_JPN.pdf;http://www.eppendorf.de/int/img/na/lit/pdf/8301−C109F−07.pdf#search=%27FemtoJetMicroinjector%27;http://probes.invitrogen.com/media/pis/mp10582.pdf#search=%27celllight%20pdf%27。
(2)材料
外来遺伝子を導入する際に使用した組換え用遺伝子として、Flexi HaloTag Vector(Promega社)、Flexi HaloTag Clone(Promega社)およびpcDNA3.1 Vector(Life Technologies社)を用いた。
各トランスフェクション法では、次の試薬等を用いた:Lipofectamine 2000 ReagentおよびPLUS Reagent(Life Technologies社);Neon Transfection System(Life Technologies社);FemtoJet−Microinjector(Eppendorf社);CellLight(Life Technologies社)。
(3)遺伝子導入結果
哺乳動物の細胞系で通常に使用されている上記方法を用いることにより、KSC細胞へ外来遺伝子の導入が可能であることが確認された。
(4)外来遺伝子産物であるヒトアルカリホスファターゼ(Human−AP)の発現
KSC細胞へ導入した外来遺伝子の遺伝子産物であるFlexi HaloTag Human−APの発現をHaloTag Oregon Green Ligandにより蛍光検出した(図4を参照)。生産されたHuman−APの活性は、Ziva Ultra SEAP Plus Detection Kit(フナコシ社)を用いて測定した(図5を参照)。図4および図5が示すとおり、KSC細胞へ導入された外来遺伝子の発現が確認され、さらに発現産物は活性があるものであった。
(5)外来遺伝子産物であるヒトパラオキソナーゼ(PON)の発現
KSC細胞へ導入した外来遺伝子の遺伝子産物であるFlexi HaloTag PONの発現をTMR−Ligandにより蛍光検出した(図6を参照)。図6が示すとおり、KSC細胞へ導入された外来遺伝子の発現が確認された。
(6)外来遺伝子産物である蛍光タンパク質の発現
KSC細胞へ導入した外来遺伝子の遺伝子産物である蛍光タンパク質のCyan Fluorescent Protein−Yellow Fluorescent Proteinおよびカルモジュリン;Red Fluorescent ProteinおよびVesicular Stomatitis VirusのG糖タンパク質;ならびにGreen Fluorescent Proteinを発現させた細胞を蛍光顕微鏡により観察した(図7A〜Cを参照)。図7A〜Cが示すとおり、KSC細胞へ導入された外来遺伝子の発現が確認された。
7.トランスフェクション(遺伝子導入)における細胞安定性の評価
上記Lipofectamine法による遺伝子導入における細胞毒性(耐性)をKSC細胞、ラット間葉系幹細胞(MSC)、ヒト急性T細胞性白血病細胞株(Jurkat)およびマウス胚性腫瘍細胞(P19)を用いて比較検証した。その結果、KSC細胞は、外来遺伝子導入前(Control)との比較から、遺伝子導入後の生存率は90%以上であり、他の細胞に比べて優れた細胞安定性を示すことがわかった(図8)。
8.KSC細胞の高密度培養の可能性検証
KSC細胞の浮遊培養の可能性を検証した。その結果、スピナーフラスコを用いて、10% FBSを含むLeibovitz’s L−15培地で、CO非存在下、100rpm、25℃で培養したところ、細胞の増殖が確認された。本条件の浮遊培養では、TC10 Automated Cell Counter(BIO−RAD社)を用いて細胞数を計測することにより、KSC細胞は約26時間に1回の割合で細胞分裂することが確認された。
9.無血清培養の可能性検証
KSC細胞の無血清培養における倍加時間を検証した。25cm CollagenIカルチャーフラスコを用いて、Leibovitz’s L−15培地のみの培養(無血清培養)およびLeibovitz’s L−15培地および血清代替添加物(KSR;ライフテクノロジーズ社)の培養(血清代替物培養)について、KSC細胞の倍加時間を検証した。無血清培養では、FBS血清を添加する通常培養と比べて、倍加時間が大きくなるものの、KSC細胞の増殖は確認できた。また、KSC細胞は、血清代替添加物を使用することによって、通常培養と変わらない増殖速度での培養が可能であった。
10.染色体解析
(1)試薬
コルセミド溶液として、KaryoMAX−COLCEMID−PBS溶液(10μg/ml)(ライフテクノロジーズ社)を用いた。低張液として、0.075M KClを用いた。固定液として、メタノール:酢酸=3:1溶液を用時調製して用いた。
(2)染色体標本の作成
コルセミドは細胞周期をM期で止めることから、コルセミド処理によりM期の細胞数が増える。しかし、処理時間を長くすると、染色体が短縮して、解析ができなくなる可能性がある。そこで、80〜90%程度のコンフルエンスに達した細胞の中から、対数増殖期の細胞に対して0.02μg/mlになるようにコルセミド溶液を添加した後、約5時間培養を継続してコルセミド処理を実施した。
次いで、処理後の細胞をトリプシン処理して剥離した後、細胞剥離液を15mlチューブに入れて、1,100rpmで4分間遠心し、上清を除去して細胞を回収した。本操作は、細胞がコルセミド処理時間に影響することから、迅速に行った。
次いで、回収した細胞を含む15mlチューブに、ピペットで少量の低張液を加え、静かにピペッティングすることにより、細胞を分散させた。分散後の細胞を含む15mlチューブに、最終容量が1.5mlになるまで低張液を加えた後、ピペッティングにより再度細胞を分散させた。低張液に分散した細胞を、室温にて20分間放置して低張処理を行った。
次いで、総量が10ml程度になるようにゆっくりと固定液を加え、静かに撹拌し細胞を固定した。さらに1,100rpmで4分間遠心して上清を除去し、新たな固定液を遠心沈降した細胞に数滴加えて、ピペッティングにより細胞を分散させた。さらに10ml程度の固定液を加えた後、全体を撹拌した。この作業をさらに2回繰り返し、細胞を完全に固定した。固定した細胞を、ヘキスト・キナクリン(和光純薬)を用いて染色し、光学顕微鏡で観察した。
観察の結果、KSC細胞として、染色体が32個、33個および66個の3タイプの細胞株を含むことが分かった。通常のカワハギは、メス33個、オス34個の染色体を有する。KSC細胞の90%は、カワハギのメスと同じく、染色体数が33個であった。しかし、残り10%の細胞は、32個および66個の染色体を持つ細胞であった。
11.幹細胞マーカーによる多分化能解析
(1)方法
以下の手順に従い、KSC細胞を免疫化学染色した。なお、ブロッキング・バッファーには、10% FBSおよび0.1% Triton X−100を含むPBS溶液を用いた。また、抗体希釈バッファーには、3% ヤギ血清および0.1% Triton X−100を含むPBS溶液を用いた。
まず、KSC細胞を培養フラスコ内でコンフルエントにまで培養した後、培地を除き、細胞を室温にてPBSで2回洗浄した。細胞に4% パラホルムアルデヒドを加えて、20分間室温で静置して細胞を固定化した。パラホルムアルデヒドを除き、10分間隔で3回PBSを用いて固定化細胞を洗浄した。ブロッキング・バッファーを加えて、1時間室温で静置した。ブロッキング・バッファーを除き、ブロッキング処理後の細胞をPBSで1回洗浄した。抗体希釈バッファーを用いて100倍に希釈した一次抗体(ES/iPS Cell Characterization Kit;フナコシ)を加えて、4℃にてオーバーナイトで一次抗体反応を実施した。翌日、一次抗体を除いた後、10分間隔で5回、反応後の細胞をPBSで洗浄した。次いで、抗体希釈バッファーで希釈した二次抗体を加えて、室温で1時間静置して二次抗体反応を実施した。二次抗体について、抗TRA−1−60抗体に対してAnti−IgG+IgM(H+L),Mouse,Goat−Poly,FITC;抗SSEA−3抗体に対してAnti−RAT IgM(mu chain)(GOAT),DyLight 488;抗NANOG抗体に対してAnti−IgG(H+L),Rabbit,Goat−Poly,DyLight 488;抗OCT4抗体に対してAnti−IgG(H+L),Rabbit,Goat−Poly,DyLight 488を用いた。この際、細胞を固定化させたプレートを光から保護した。次いで、二次抗体を取り除き、反応後の細胞をPBSにより10分間隔で4回洗浄した。この際にも、プレートを光から保護した。洗浄後の細胞をFLoidセルイメージングステーション(ライフテクノロジーズ社)を用いて観察した。
(2)結果
観察結果を図9A〜Dに示す。KSC細胞の大部分は、TRA−1−60、OCT4およびSSEA−3を発現しており陽性であった。発現強度は、TRA−1−60、OCT4およびSSEA−3の順であった。それに対して、KSC細胞はNANOG陰性または発現していたとしても非常に微かな量であった。
若尾昌平らの文献(Shohei Wakao et al.、PNAS、June 14,2011、vol.108、no.24、pp.9875−9880)には、多分化能を有するヒト皮膚線維芽細胞(Muse細胞)の存在が報告されている。以上の結果より、KSC細胞は、TRA−1−60、OCT4およびSSEA−3といった多能性幹細胞に特有の細胞マーカーを発現する線維芽細胞様細胞であることから、多能性を有する細胞株であると推測される。
12.分化誘導実験
KSC細胞が多能性を有する細胞株であると推測されたことから、培地や培養条件を変えることにより、種々の細胞への分化を試みた。細胞の形態は、光学顕微鏡により460倍の倍率で観察した。
(1)KSC細胞の形態(分化誘導前)
KSC細胞をコラーゲンコートフラスコにて10%(v/v) FBSを含むLeibovitz’s L−15培地を用いて培養した。培養後の細胞の観察結果を図10Aに示す。図10Aに示す線維芽細胞様の形態は、KSC細胞が他の細胞へ分化する前の形態であるものと推測される。
(2)筋細胞様細胞への分化
KSC細胞を、25cmまたは75cmのコラーゲンコートフラスコにて、10%(v/v) FBSを含むAIM V培地(ライフテクノロジーズ社;No.087−0112DK)を用いて、CO非存在下で、初期細胞数を1〜4×10cells/mlとして、25℃にて90%以上のコンフルエント状態に達するまで培養した。培養後の細胞は、筋細胞様の形態を呈するものであった(図10Bを参照)。また、培養後の細胞は、増殖能を有するものであった。
(3)上皮細胞様細胞への分化
KSC細胞を、25cmまたは75cmの非コーティングフラスコにて、10%(v/v) FBSを含むLeibovitz’s L−15培地を用いて、CO非存在下で、初期細胞数を1〜4×10cells/mlとして、25℃にて90%以上のコンフルエント状態に達するまで培養した。培養後の細胞は、上皮細胞様の形態を呈するものであった(図10Cを参照)。また、培養後の細胞は、増殖可能なものであった。
(4)神経細胞様細胞への分化
KSC細胞を、25cmまたは75cmの非コーティングフラスコにて、無血清のLeibovitz’s L−15培地を用いて、CO非存在下で、初期細胞数を1〜4×10cells/mlとして、25℃にて90%以上のコンフルエント状態に達するまで培養した。培養後の細胞は、神経様軸策および融合した細胞体を形成するものであった(図10Dを参照)。また、培養後の細胞は、増殖性がなく、かつ、伸長性を有するものであった。さらに、培養後の細胞は、神経細胞に特有の細胞マーカー陽性の細胞であった。
同様にして、KSC細胞を種々の培養容器、血清および培地の組み合わせを用いて培養することや、KSC細胞について分化誘導したところ、脂肪細胞様細胞、繊維細胞様細胞、肝臓細胞様細胞、バラの枝状の免疫細胞様細胞および巨大繭状の融合細胞を得ることができた(図10E〜Iを参照)。特に、図10Iに示される融合細胞は、アルカリフォスファターゼ活性陽性であり(図11Aを参照)、かつ、NANOG陽性であった(図11Bを参照)。さらに、本融合細胞は、TRA−1−60、OCT4およびSSEA−3についても陽性であった(図11C〜Eを参照)。
13.培養細胞シートの作製
10% FBS含有Leibovitz’s L−15培地を用いて、コラーゲンIコートフラスコにKSC細胞(1×10cells/ml)を播いた。3日に1度程度の培地交換を繰り返して、1〜3カ月間培養を続けたところ、薄膜状の培養細胞シートが形成された(図12を参照)。また、培地に増殖因子・培地添加剤として分化誘導剤Noggin(HumanZyme社)またはG−CSF(HumanZyme社)を終濃度500pg/mlとなるように添加したところ、シート形成効率を高めることができ、培養細胞シートの形成速度が促進された。形成された培養細胞シートは、細胞同士が結合してシート状または薄膜状の形態であり、キメが細かく目視では細胞の形を認識できないという特徴を有するものであった。


Claims (20)

  1. 下記(1)および(5)の性質を有する、カワハギ科(Monacanthidae)魚類の背部、胸部、腹部、尻部または尾部にある鰭に由来する細胞株またはその継代株。
    (1)実質的に制限なく継代培養が可能である
    (5)初期細胞数を約1.0×10cells/mlとして、75cmの底面積を有する培養容器内で10% FBSを含むLeibovitz’s L−15培地を用いて、CO非存在下で25℃にて培養した際の倍加時間は、16〜24時間である
  2. さらに下記(2)〜(4)の性質からなる群から選ばれる少なくとも1つの性質を有する、請求項1に記載の細胞株またはその継代株。
    (2)線維芽細胞様の形態を呈する
    (3)多層構造を形成した培養が可能である
    (4)最大値は66本であり、最小値は32本であり、およびモードは33本である度数分布に従った染色体数を有する
  3. 前記(4)の性質において、モードである33本の染色体の度数が度数分布における全度数の約90%である、請求項2に記載の細胞株またはその継代株。
  4. TRA−1−60、OCT4およびSSEA−3からなる群から選ばれる少なくとも1種の細胞マーカーが陽性である、カワハギ科魚類の背部、胸部、腹部、尻部または尾部にある鰭に由来する細胞株またはその継代株。
  5. 前記細胞株またはその継代株は、線維芽細胞様の形態を呈する細胞株またはその継代株である、請求項4に記載の細胞株またはその継代株。
  6. 前記細胞株またはその継代株は、筋細胞および筋細胞様細胞、上皮細胞および上皮細胞様細胞、神経細胞および神経細胞様細胞、脂肪細胞および脂肪細胞様細胞、免疫細胞および免疫細胞様細胞ならびに肝臓細胞および肝臓細胞様細胞からなる群から選ばれる少なくとも1種の細胞に分化する能力を有する、請求項4または5に記載の細胞株またはその継代株。
  7. 前記カワハギ科魚類が、カワハギ属(Stephanolepis)魚類、ウマヅラハギ属(Thamnaconus)魚類、メガネウマヅラハギ属(Cantherhines)魚類、ウスバハギ属(Aluterus)魚類およびアミメハギ属(Rudarius)魚類からなる群から選ばれる魚類である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞株またはその継代株。
  8. 前記カワハギ科魚類が、カワハギ(Stephanolepis cirrhifer)である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞株またはその継代株。
  9. 受託番号がNITE BP−1369である、カワハギの背鰭に由来する細胞株またはその継代株。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞株またはその継代株に外来遺伝子を導入して形質転換体を得る工程を含む、形質転換体を製造する方法。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞株またはその継代株に外来遺伝子を導入してなる形質転換体から該外来遺伝子の発現産物を得る工程を含む、外来遺伝子の発現産物を製造する方法。
  12. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞株またはその継代株と、
    ベクターと、
    トランスフェクションのための器材と
    を含む、形質転換体を製造するためのキット。
  13. 請求項4〜9のいずれか1項に記載の細胞株またはその継代株と、
    培地と、
    培養容器と
    を含む、分化細胞を製造するためのキット。
  14. さらに血清を含む、請求項13に記載のキット。
  15. 前記血清が、哺乳類血清、魚類血清および血清代替物からなる群から選ばれる少なくとも1種の血清である、請求項14に記載のキット。
  16. 前記培地は、哺乳動物細胞用培地、昆虫細胞用培地および魚類細胞用培地からなる群から選ばれる少なくとも1種の培地である、請求項1315のいずれか1項に記載のキット。
  17. 前記培養容器が、底面が細胞接着分子でコーティングされた培養容器および底面が細胞接着分子でコーティングされていない培養容器からなる群から選ばれる少なくとも1種の培養容器である、請求項1316のいずれか1項に記載のキット。
  18. 請求項4〜9のいずれか1項に記載の細胞株またはその継代株を、底面が細胞接着分子でコーティングされた培養容器または底面が細胞接着分子でコーティングされていない培養容器の中で、血清を含有していない、または哺乳類血清、魚類血清もしくは血清代替物を含有した哺乳動物細胞用培地、昆虫細胞用培地または魚類細胞用培地を用いて培養する工程を含む、
    分化細胞を製造する方法。
  19. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞株またはその継代株からなる培養細胞シート。
  20. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞株またはその継代株から、アルカリフォスファターゼ活性の染色で識別され、かつ、NANOG、OCT4、TRA−1−60およびSSEA−3陽性である細胞または該細胞によって形成される巨大繭状コロニーを製造する工程を含む、
    巨大繭状コロニーを製造する方法。
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