以下に添付図面を参照して、この発明にかかる画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラムの最良な実施の形態を詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
(システム構成)
図1は、本実施の形態にかかる画像処理装置を備えた画像形成システムの構成図である。本実施の形態にかかる画像処理装置1は、例えば、制御PCおよび該制御PCに搭載された拡張ハードウエアと制御ソフトウエアにより実現されている。
画像処理装置1には、該画像処理装置1によって処理された画像データに基づいて、物理的な画像の出力媒体である用紙上に画像を形成する画像形成装置2が接続されている。画像形成装置2は、例えば、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)の4色を基本色材とし、これらの混色でフルカラー画像を用紙上に形成する。
一方で、画像処理装置1は、ネットワーク3に接続されており、同じネットワーク3に接続されたユーザPC4から送付される画像データを受け取って、後述する画像処理プロセスを施した後、画像形成装置2に転送する。
また、画像処理装置1には、画像形成装置2により用紙に形成された補正用パッチ画像を測色する測色手段5が接続されている。測色手段5としては、例えば、分光測色機が使用されるが、用紙の分光反射率データが得られるものであればよく、カラースキャナで代用することも可能である。
(機能構成)
図2は、画像処理装置1における画像処理プロセスを実現するための機能構成を示す機能ブロック図である。画像処理装置1は、画像処理プロセスを実現するための機能構成として、図2に示すように、画像データ取得部11と、第1色変換部12と、用紙対応補正部15と、補正制御部20と、データ格納部30とを備える。
画像データ取得部11は、ネットワーク3を介してユーザPC4から送付される画像データを取得する。なお、画像データ取得部11が取得する画像データは、ユーザPC4からネットワーク3を介して送付される画像データに限られるものではない。例えば、画像形成装置2がスキャナを備える場合、このスキャナで読み取った画像データを、画像データ取得部11が取得するようにしてもよい。
第1色変換部12は、画像データ取得部11が取得した画像データに対して、RGB,CMYK等デバイス依存の色空間の表色値から、デバイス非依存の色空間であるPCS(Profile Connection Space)の表色値に変換する色変換を行う。
用紙対応補正部15は、画像形成装置2で画像の出力媒体として使用する用紙に対応した補正を行う機能ブロックであり、第2色変換部13と、階調補正部14とを含む。
第2色変換部13は、例えば3次元LUT(Look Up Table)で構成される色変換パラメータを用いて、第1色変換部12での色変換により得られたPCSの表色値を、画像形成装置2が扱うCMYKの色空間の表色値に変換する色変換を行う。
階調補正部14は、例えばCMYKの各色ごとに設定された1次元LUTである用紙差補正カーブを用いて、第2色変換部13での色変換により得られたCMYKの色空間の表色値に対して、CMYKの各色ごとの階調補正を行う。
補正制御部20は、用紙対応補正部15による補正を制御する機能ブロックであり、補正用パッチ画像データ転送部21、特性データ取得部22、第1類似度算出部23、用紙群選択部24、第2類似度算出部25、類似用紙選択部26および用紙差補正カーブ生成部27を含む。
また、データ格納部30は、画像処理装置1における画像処理プロセスに必要な各種データを保持するデータ保持手段である。例えば、データ格納部30は、補正用パッチ画像データ31と、データ集合32と、用紙対応データ33と、データ集合34と、データ集合35とを保持している。補正用パッチ画像データ31は、複数の単色パッチ画像および混色パッチ画像を用紙上に形成するためのデータである。データ集合32は、複数の標準用紙に対応する複数の色変換パラメータのデータ集合である。用紙対応データ33は、複数の標準用紙と各標準用紙に対して色再現特性が類似する複数の登録用紙との対応関係を表すデータである。データ集合34は、複数の登録用紙に対応する複数の用紙差補正カーブのデータ集合である。データ集合35は、複数の標準用紙および複数の登録用紙に対応する複数の特性データのデータ集合である。なお、特性データとは、各用紙の色再現特性を表すデータであり、例えば、分光反射率データである。
ここで、本明細書において使用するいくつかの用語の定義を明確にしておく。本明細書において、「標準用紙」とは、一般に広く知られている標準的な用紙であって、特に第2色変換部13での色変換に用いる色変換パラメータとして、当該用紙に対応する色変換パラメータが予め作成されてデータ格納部30に保持されている用紙をいう。「標準用紙」を画像形成装置2での画像の出力媒体として使用する場合、この「標準用紙」に対応する色変換パラメータを用いた第2色変換部13での色変換が行われる。なお、「標準用紙」を画像形成装置2での画像の出力媒体として使用する場合は、階調補正部14に対しては、入力値=出力値となる用紙差補正カーブが適用され、階調補正部14による補正が実質無効化される。
また、本明細書において、「標準用紙」以外の用紙は「ユーザ用紙」と呼ぶ。「ユーザ用紙」は、対応する色変換パラメータがデータ格納部30に保持されていない。このため、「ユーザ用紙」を画像形成装置2での画像の出力媒体として使用する場合は、複数の「標準用紙」のうち、色再現特性が類似する「標準用紙」に対応する色変換パラメータを流用して第2色変換部13での色変換を行い、この「標準用紙」との用紙差を補正するための用紙差補正カーブを用いて、階調補正部14での階調補正を行う。
また、本明細書において、「ユーザ用紙」のうち、特に、過去に画像形成装置2での画像の出力媒体として使用されたことがあり、対応する用紙差補正カーブが既に生成されてデータ格納部30に保持されている用紙を「登録用紙」と呼ぶ。「登録用紙」を画像形成装置2での画像の出力媒体として使用する場合は、色再現特性が類似する「標準用紙」に対応する色変換パラメータを流用して第2色変換部13での色変換を行うとともに、データ格納部30に保持されている、この「登録用紙」に対応する用紙差補正カーブを用いて、階調補正部14での階調補正を行う。
また、本明細書において、「ユーザ用紙」のうち、画像形成装備2での画像の出力媒体として始めて使用される用紙(または、対応する補正カーブが過去に生成されていない用紙)を「未登録用紙」という。「未登録用紙」を画像形成装置2での画像の出力媒体として使用する場合は、対応する用紙差補正カーブがデータ格納部30に保持されていないため、用紙差補正カーブを新規に生成する。そして、色再現特性が類似する「標準用紙」に対応する色変換パラメータを流用して第2色変換部13での色変換を行うとともに、新規に生成した用紙差補正カーブを用いて、階調補正部14での階調補正を行う。
補正制御部20の補正用パッチ画像データ転送部21は、例えば、画像形成装置2に設けられたオペレーションパネルを利用したユーザの操作に応じて、データ格納部30に格納されている補正用パッチ画像データ31を読み出して、画像形成装置2に転送する。画像形成装置2は、この補正用パッチ画像データ31の転送を受けて、ユーザによりセットされた用紙に補正用パッチ画像を形成して出力する。ここでは、ユーザにより画像形成装置2にセットされる用紙が、未登録用紙であるものとする。
特性データ取得部22は、画像形成装置2によって補正用パッチ画像が形成された未登録用紙Xを測色した測色手段5から、未登録用紙の特性データ(例えば、紙白部分およびパッチ画像の分光反射率データ)を含む測色値を取得する。なお、ここでは、画像形成装置2により未登録用紙に補正用パッチ画像を形成し、この補正用パッチ画像が形成された未登録用紙Xを測色手段5で測色して、この測色手段5から特性データ取得部22が未登録用紙の特性データを取得する構成を説明する。特性データ取得部22が未登録用紙の特性データを取得する方法は、これに限られるものではなく、例えば、ネットワーク3に接続されている他の端末が保持する未登録用紙の特性データを、ネットワーク3経由で取得する構成としてもよい。
第1類似度算出部23は、未登録用紙と複数の標準用紙それぞれとの間の類似度を算出する。例えば、第1類似度算出部23は、データ格納部30が保持するデータ集合35に含まれる複数の特性データのうち、複数の標準用紙に対応する複数の特性データを抽出する。そして、第1類似度算出部23は、特性データ取得部22により取得された未登録用紙の特性データと、これら複数の標準用紙に対応する複数の特性データとの差分に基づいて、未登録用紙と複数の標準用紙それぞれとの間の類似度を算出する。
用紙群選択部24は、第1類似度算出部23により算出された類似度に基づいて、複数の標準用紙のうちで未登録用紙との類似度が最も大きい標準用紙を選択する。また、用紙群選択部24は、データ格納部30が保持する用紙対応データ33を参照して、選択した標準用紙に色再現特性が近い複数の登録用紙を、第2類似度算出部25による類似度算出の処理対象として選択する。
第2類似度算出部25は、データ格納部30が保持するデータ集合35に含まれる複数の特性データのうち、用紙群選択部24により選択された複数の登録用紙に対応する複数の特性データを抽出して、特性データ取得部22により取得された未登録用紙の特性データと、これら複数の登録用紙に対応する複数の特性データとの差分に基づいて、未登録用紙と複数の登録用紙それぞれとの間の類似度を算出する。
特性データとして分光反射率データを用いる場合、第1類似度算出部23および第2類似度算出部25は、未登録用紙の分光反射率データと、複数の標準用紙それぞれの分光反射率データまたは複数の登録用紙それぞれの分光反射率データとの波長ごとの差分に基づいて、未登録用紙と複数の標準用紙または複数の登録用紙との間の類似度を算出する。なお、第1類似度算出部23および第2類似度算出部25による類似度の算出方法の具体例については、詳細を後述する。
類似用紙選択部26は、第2類似度算出部25により算出された類似度に基づいて、複数の登録用紙のうちで未登録用紙との類似度が最も大きい登録用紙を、未登録用紙に色再現特性が類似する類似用紙として選択する。
用紙差補正カーブ生成部27は、データ格納部30が保持するデータ集合34に含まれる用紙差補正カーブのうち、類似用紙選択部26に選択された類似用紙に対応する用紙差補正カーブを補正して、未登録用紙と用紙群選択部24により選択された標準用紙との差を補正するための、階調補正部14での階調補正に用いる用紙差補正カーブを生成する。なお、用紙差補正カーブ生成部27が用紙差補正カーブを生成する方法の具体例については、詳細を後述する。
(動作概要)
次に、画像形成装置2での画像の出力媒体として未登録用紙が使用される場合における本実施の形態にかかる画像処理装置1の動作の概要について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図3のフローチャートは、画像処理装置2の補正制御部20により実行される一連の処理を示したものである。
ユーザが画像形成装置2の用紙カセットに未登録用紙をセットして、例えば、画像形成装置2のオペレーションパネルに表示されている「用紙対応補正」のボタンを押圧操作すると、画像形成装置2から画像処理装置1に対して、補正用パッチ画像データの転送を要求する要求信号が送られる。
画像形成装置2から画像処理装置1に対して上記要求信号が送られると、補正制御部20の補正用パッチ画像データ転送部21が、データ格納部30から補正用パッチ画像データ31を読み出し、この補正用パッチ画像データ31を画像形成装置2へと転送する。画像形成装置2は、この補正用パッチ画像データ31の転送を受けて、未登録用紙に補正用パッチ画像を形成して出力する。
補正用パッチ画像が形成された未登録用紙Xが画像形成装置2から出力され、ユーザがこの補正用パッチ画像が形成された未登録用紙Xを測色手段5にセットすると、測色手段5によって補正用パッチ画像が形成された未登録用紙Xに対する測色が行われ、未登録用紙の特性データを含む測色値が画像処理装置1に送られて、補正制御部20の特性データ取得部22により取得される(ステップS101)。
特性データ取得部22により未登録用紙の特性データを含む測色値が取得されると、補正制御部20の第1類似度算出部23が、データ格納部30が保持するデータ集合35に含まれる複数の特性データのうち、複数の標準用紙に対応する複数の特性データを抽出する。そして、第1類似度算出部23は、特性データ取得部22により取得された未登録用紙の特性データと、データ格納部30から抽出した複数の標準用紙に対応する複数の特性データとの差分に基づいて、未登録用紙と複数の標準用紙それぞれとの間の類似度を算出する(ステップS102)。
第1類似度算出部23により未登録用紙と複数の標準用紙それぞれとの間の類似度が算出されると、補正制御部20の用紙群選択部24が、複数の標準用紙のうちで未登録用紙との類似度が最も大きい標準用紙を選択する(ステップS103)。そして、用紙群選択部24は、データ格納部30のデータ集合32に含まれる複数の色変換パラメータのうち、選択した標準用紙に対応する色変換パラメータを読み出して、用紙対応補正部15の第2色変換部13にセットする(ステップS104)。
また、用紙群選択部24は、データ格納部30が保持する用紙対応データ33を参照して、選択した標準用紙に色再現特性が近い用紙として登録されている複数の登録用紙を、第2類似度算出部25による類似度算出の処理対象として選択する(ステップS105)。
用紙群選択部24により複数の登録用紙が選択されると、補正制御部20の第2類似度算出部25が、データ格納部30が保持するデータ集合35に含まれる複数の特性データのうち、用紙群選択部24が選択した複数の登録用紙に対応する複数の特性データを抽出する。そして、第2類似度算出部25は、特性データ取得部22により取得された未登録用紙の特性データと、データ格納部30から抽出した複数の登録用紙に対応する複数の特性データとの差分に基づいて、未登録用紙と複数の登録用紙それぞれとの間の類似度を算出する(ステップS106)。
第2類似度算出部25により未登録用紙と複数の登録用紙それぞれとの間の類似度が算出されると、補正制御部20の類似用紙選択部26が、複数の登録用紙のうちで未登録用紙との類似度が最も大きい登録用紙を、未登録用紙に色再現特性が類似する類似用紙として選択する(ステップS107)。
類似用紙選択部26により類似用紙が選択されると、補正制御部20の用紙差補正カーブ生成部27が、データ格納部30が保持するデータ集合34に含まれる複数の用紙差補正カーブのうち、類似用紙に対応する用紙差補正カーブを読み出して、この類似用紙に対応する用紙差補正カーブを、最適化処理の初期値に設定する(ステップS108)。そして、用紙差補正カーブ生成部27は、設定した初期値に対して、類似用紙と未登録用紙との色再現特性の差を吸収する最適化処理を行って、未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを生成する(ステップS109)。
用紙差補正カーブ生成部27により生成された未登録用紙に対応する用紙差補正カーブは、用紙対応補正部15の階調補正部14にセットされるとともに、データ格納部30のデータ集合34に、新たな用紙差補正カーブとして登録される。また、用紙差補正カーブがデータ格納部30のデータ集合34に登録されることによって、未登録用紙は登録用紙として扱われることとなり、特性データ取得部22により取得された特性データがデータ格納部30のデータ集合35に登録されるとともに、用紙群選択部24により選択された標準用紙に色再現特性が近い登録用紙として、データ格納部30の用紙対応データ33に登録される。
その後、ユーザが画像形成装置2のオペレーションパネルに表示されている「印刷実行」のボタンを押圧操作すると、画像データ取得部11により画像データの取得が行われる。そして、第1色変換部12が、画像データ取得部11が取得した画像データを、デバイス非依存の色空間であるPCSの表色値に変換する。
第1色変換部12で色変換が行われた画像データは、用紙対応補正部15の第2色変換部13に入力される。第2色変換部13は、補正制御部20の用紙群選択部24がセットした標準用紙に対応する色変換パラメータを用いて、第1色変換部12での色変換により得られたPCSの表色値を、画像形成装置2が扱うCMYKの色空間の表色値に変換する。
第2色変換部13で色変換が行われた画像データは、用紙対応補正部15の階調補正部14に入力される。階調補正部14は、補正制御部20の用紙差補正カーブ生成部27が生成した用紙差補正カーブを用いて、第2色変換部13での色変換により得られたCMYKの色空間の表色値に対して、CMYKの各色ごとの階調補正を行う。
階調補正部14でCMYKの各色ごとの階調補正が行われた画像データは、画像形成装置2に送られる。そして、画像形成装置2は、この画像データに基づいて未登録用紙に画像を形成し、印刷物として出力する。以上の一連の動作により、画像形成装置2での画像の出力媒体として未登録用紙を用いる場合であっても、画像処理装置1で未登録用紙に対応する高精度な補正を実施して、画像の再現性を高めることができる。
(類似度算出の具体例)
次に、特性データとして分光反射率データを用いる場合を例に挙げて、補正制御部20の第1類似度算出部23および第2類似度算出部25による類似度算出の具体例について説明する。
用紙間で分光反射率データの波形が似通っている場合、これらの用紙は色再現特性が類似していると言える。したがって、下記式(1)を用いて、用紙間の分光反射率データの偏差σを求め、下記式(2)のように、その偏差σの逆数を類似度Tとして求めることができる。なお、下記式(1)において、波長λは離散値であり、λ=380,390,・・・,730とする。また、Nは離散値λのデータ数であり、N=36となる。
用紙間で分光反射率データの波形が似通っているということは、各波長における差分のばらつきが小さいということであり、偏差σが小さい値になる。逆に、各波長における差分のばらつきが大きければ、偏差σが大きい値になる。類似度の大小と分光反射率データの偏差σの大小が逆の関係にあるため、偏差σの逆数を類似度Tとした。このように、用紙間の類似度Tは、分光反射率データの各波長における差分に基づく値で定義できる。
(類似用紙選択の具体例)
次に、補正制御部20の類似用紙選択部26による類似用紙の選択の具体例について説明する。ここでは、3種類の標準用紙A〜Cそれぞれについて、対応する色変換パラメータと分光反射率データ(特性データ)がデータ格納部30に保持されており、9種類のユーザ用紙U1〜U9のうち、ユーザ用紙U1〜U8の用紙差補正カーブと分光反射率データ(特性データ)がデータ格納部30に保持されており(ユーザ用紙U1〜U8が登録用紙)、ユーザ用紙U9の用紙差補正カーブと分光反射率データ(特性データ)はデータ格納部30に保持されていない(ユーザ用紙U9は未登録用紙)ものとし、ユーザ用紙U9に色再現特性が近い標準用紙および登録用紙を選択する場合を例に挙げて説明する。
図4は、3種類の標準用紙A〜Cと9種類のユーザ用紙U1〜U9の分光反射率データを対比して示したものである。図4(a)は、3種類の標準用紙A〜Cの分光反射率データを示し、図4(b)は、標準用紙Aの分光反射率データおよびこの標準用紙Aに色再現特性が近いユーザ用紙U1,U2,U7,U8の分光反射率データを示し、図4(c)は、標準用紙Bの分光反射率データおよびこの標準用紙Bに色再現特性が近いユーザ用紙U4,U5,U6,U9の分光反射率データを示し、図4(d)は、標準用紙Cの分光反射率データおよびこの標準用紙Cに色再現特性が近いユーザ用紙U3の分光反射率データを示している。
9種類のユーザ用紙U1〜U9は、3種類の標準用紙A〜Cとの間の分光反射率データの波形の近さから、図4(b)に示すように、色再現特性が標準用紙Aに近いA群のユーザ用紙U1,U2,U7,U8と、図4(c)に示すように、色再現特性が標準用紙Bに近いB群のユーザ用紙U4,U5,U6,U9と、図4(d)に示すように、色再現特性が標準用紙Cに近いC群のユーザ用紙U3とに分類することができる。
ユーザ用紙に対して色再現特性が近い標準用紙を選択することは、ユーザ用紙U1〜U9をA群、B群、C群に分類することと同じである。ここでは、ユーザ用紙U9が未登録用紙であり、このユーザ用紙U9がB群に分類されているので、ユーザ用紙U9に色再現特性が近い標準用紙としては標準用紙Bが選択されることになる。また、図4(c)に示すように、B群には、ユーザ用紙U9以外に、ユーザ用紙U4,U5,U6が分類されているので、標準用紙Bに色再現特性が近い登録用紙としては、これらユーザ用紙U4,U5,U6が選択されることになる。
図5は、上述した9種類のユーザ用紙U1〜U9それぞれについて、3種類の標準用紙A〜Cとの類似度Tを算出した場合の算出結果を纏めたものである。なお、図中の○は、3種類の標準用紙A〜Cのうち、各ユーザ用紙に対して類似度Tが最も大きい標準用紙がどれかを示している。上述したA群、B群、C群は、この図5に示す結果をもとに、9種類のユーザ用紙U1〜U9を分類したものである。
ユーザ用紙U1〜U8が登録用紙であり、ユーザ用紙U9が未登録用紙である場合、この図5に示す類似度Tの算出結果から、未登録用紙であるユーザ用紙U9に対して類似度Tが最も大きい標準用紙として、標準用紙Bが選択されることが分かる。そして、この標準用紙Bに色再現特性が近い登録用紙としては、ユーザ用紙U4,U5,U6が選択されることが分かる。
図6は、図4(c)中においてB1,B2で示した特定波長域を拡大して示す図である。この図6の拡大図から、未登録用紙であるユーザ用紙U9は、B1の波長域では分光反射率データの波形がユーザ用紙U5やユーザ用紙U6に近く、B2の波長域では分光反射率データの波形がユーザ用紙U5に近いことが分かる。したがって、標準用紙Bに色再現特性が近い登録用紙であるユーザ用紙U4,U5,U6のうち、未登録用紙であるユーザ用紙U9に最も類似する類似用紙として、ユーザ用紙U5が選択されることになる。
図7は、標準用紙BおよびB群に分類された登録用紙であるユーザ用紙U4,U5,U6と、未登録用紙であるユーザ用紙U9との類似度Tを算出した結果を纏めたものである。この図7に示す類似度Tの算出結果から、未登録用紙であるユーザ用紙U9の類似用紙として、ユーザ用紙U5が選択されることが分かる。
本実施の形態にかかる画像処理装置1では、以上のようにして、未登録用紙に最も類似する登録用紙を類似用紙として選択し、選択した登録用紙に対応する用紙差補正カーブを、未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを生成する際の最適化処理における初期値として利用する。なお、以上の説明は、未登録用紙に最も類似する類似用紙としていずれかの登録用紙が選択されるものとして説明したが、未登録用紙に最も類似する用紙が標準用紙であるケースも考えられる。このような場合には、最適化処理における初期値として入力値=出力値となる用紙差補正カーブを設定する。
(用紙差補正カーブの生成)
次に、補正制御部20の用紙差補正カーブ生成部27による用紙差補正カーブの生成方法について詳細に説明する。
図8は、用紙差補正カーブ生成部27により実行される一連の処理(メインルーチン)を示すフローチャートである。用紙差補正カーブ生成部27は、類似用紙選択部26により未登録用紙に類似する類似用紙が選択されると、この図8のフローチャートで示す一連の処理を実行し、未登録用紙と色変換パラメータを流用する標準用紙(つまり、未登録用紙との類似度が最も大きい標準用紙)との差を補正するための用紙差補正カーブを生成する。なお、本実施の形態においては、予め複数の標準用紙それぞれについて、補正用パッチ画像が形成された標準用紙を測色手段5で測色することで得られる測色値(Lab値)が、色変換パラメータや特性データとともに、データ格納部30に保持されているものとする。
図8のメインルーチンが開始されると、用紙差補正カーブ生成部27は、まずステップS201の「ターゲット設定」において、データ格納部30に格納された複数の標準用紙に対応する測色値のうち、色変換パラメータを流用する標準用紙(つまり、未登録用紙との類似度が最も大きい標準用紙)に対応する測色値を読み出し、この標準用紙に対応する測色値をターゲットとして設定する。
次に、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS202の「プリンタシミュレータ算出」において、特性データ取得部22により測色手段5から取得された未登録用紙の測色値に基づき、CMYKから画像形成装置2によりプリンタ出力されるLab値を推定するプリンタシミュレータを算出する。このプリンタシミュレータ算出の既存技術としては、例えば、CMYKと測色値であるLab値との組み合わせからなる各パッチ画像のデータをニューラルネットに学習させてシミュレータを構築する方法などがあり、本実施の形態においてもこの方法を用いることができる。
次に、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS203の「初期値設定」において、類似用紙選択部26により選択された類似用紙に対応する用紙差補正カーブを、最適化処理の初期値として設定する。用紙差補正カーブを生成する従来の技術では、この「初期設定」において、入力値=出力値となる用紙差補正カーブを初期値として設定していたが、このような従来の技術では、特に混色の用紙差を適切に補正できる用紙差補正カーブを生成するまでに、最適化処理を何度も繰り返す必要があり、用紙差補正カーブの生成に長時間を要していた。これに対して、本実施の形態にかかる画像処理装置1では、未登録用紙に最も類似する登録用紙である類似用紙に対応する用紙差補正カーブを、最適化処理の初期値として設定するため、最適化処理の繰り返し回数を削減しながら未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを適切に生成することができ、用紙差補正カーブの生成を短時間で行うことが可能となる。
次に、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS204の「Cの補正カーブ最適化」において、C以外の色の補正カーブを固定してCの補正カーブを最適化する。また、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS205の「Mの補正カーブ最適化」およびステップS206の「Yの補正カーブ最適化」においても同様に、他の色の補正カーブを固定して該当色の補正カーブを最適化する。
次に、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS207において、その時点での補正カーブを適用した場合に推定されるLab値とターゲットとの平均色差が収束したか否かを判定する。この収束判定は、1回前の収束判定時の平均色差と今回の平均色差との差分を閾値判定し、例えば、差分が0.05未満ならば収束したと判定し、差分が0.05以上ならば収束していないと判定する。1回目の収束判定時は、補正カーブを適用しない場合のターゲットとの平均色差と今回の平均色差との差分を評価する。
用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS207において収束していないと判定された場合は(ステップS207:No)、ステップS204に戻って以降の処理を繰り返す。そして、ステップS207において収束したと判定されると(ステップS207:Yes)、次のステップS208に処理を移行する。
次に、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS208の「Kの補正カーブ最適化」において、CMYの補正カーブを固定してKの補正カーブを最適化する。そして、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS209において、ステップS207と同様の収束判定を行い、収束していないと判定された場合は(ステップS209:No)、ステップS208の処理を繰り返し、収束したと判定されると(ステップS209:Yes)、次のステップS210に処理を移行する。
次に、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS210の「補正カーブのスムージング」において、最適化されたCMYK各色の補正カーブの形状が滑らかになるように、多項式近似等により各色の補正カーブの形状を整える。以上で、用紙差補正カーブ生成部27による用紙差補正カーブの生成が終了する。
図9は、図8のステップS204、ステップS205、ステップS206およびステップS208におけるCMYK各色ごとの補正カーブ最適化処理の詳細(サブルーチン)を示すフローチャートである。この補正カーブ最適化処理は、補正カーブを最適化する対象の入力階調値I(n)を順次変更しながら、入力値ごとに出力値を最適化していく処理となる。
図9のサブルーチンが開始されると、用紙差補正カーブ生成部27は、まずステップS301において、I(n)のnを1に設定し、入力値の初期化を行う。なお、ここでの入力値は、補正用パッチ画像データにてパッチの構成に使用した階調値である。
次に、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS302の「入力値I(n)の評価データ準備」において、CMYKのうち該当色の階調値がI(n)であるパッチのCMYK値と測色値(Lab値)のセットを、評価データとして抽出する。
次に、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS303の「出力値O(I(n))更新」において、I(n)に対する補正カーブの出力値を更新し、ステップS304の「プリンタ出力値推定」において、プリンタシミュレータを使って更新された補正カーブを適用した場合の評価データ(CMYK値)に対するLab値を推定する。
次に、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS305の「ターゲットとの平均色差算出」において、ステップS304で推定したLab値とターゲットとの平均色差を算出する。そして、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS306において、ステップS305で算出した平均色差が極小値となっているか否かを判定し、平均色差が極小値でないと判定された場合は(ステップS306:No)、ステップS303に戻って補正カーブの出力値をまた別の値に更新し、以降の処理を繰り返す。
一方、平均色差が極小値であると判定されると(ステップS306:Yes)、用紙差補正カーブ生成部27は、次のステップS307において、nの値をインクリメント(+1)し、ステップS308において、nの値が最大値を超えたか否かを判定する。そして、nの値が最大値を超えていなければ(ステップS308:No)、ステップS302に戻って、新たな入力値に対する出力値の最適化を行い、nの値が最大値を超えたら(ステップS308:Yes)、補正カーブ最適化の処理を終了する。
図10は、n=2に設定された場合の入力値I(2)に対応する出力値O(I(2))の更新の例を示した図である。この図10に示す例において、第1の出力値候補が図中のcであり、第2の出力値候補が図中のa、第3の出力値候補が図中のbである。第2の出力値候補aや第3の出力値候補bは、第1の出力値候補cの値を微小値eだけ増減させた値である。図9のステップS303の「出力値O(I(n))更新」では、このように、3つの出力値の候補を設定する。そして、図9のステップS306では、これら3つの出力値候補a,b,cそれぞれに対して平均色差を算出し、各平均色差の大小関係に応じて極小値であるか否かを判定する。そして、極小値でないと判定された場合は、さらに図9のステップS303の「出力値O(I(n))更新」にて、次に第1の出力値候補とする値の設定、あるいは、第2の出力値候補および第3の出力値候補の設定に使用する微小値eの更新を行う。
図11は、3つの出力値候補a,b,cそれぞれに対して平均色差を算出した結果を場合分けして示した図である。3つの出力値候補a,b,cそれぞれに対して平均色差を算出した結果が図11(a)のようになるケースでは、第1の出力値候補cが極小値でないと判定され、極小値となっている第3の出力値候補bが、次の第1の出力値候補に設定される。また、3つの出力値候補a,b,cそれぞれに対して平均色差を算出した結果が図11(b)のようになるケースでは、第1の出力値候補cが極小値でないと判定され、極小値となっている第2の出力値候補aが、次の第1の出力値候補に設定される。
また、3つの出力値候補a,b,cそれぞれに対して平均色差を算出した結果が図11(c)のようになるケースでは、微小値eが予め設定した閾値th未満である場合のみ、第1の出力値候補cが極小値であると判定される。微小値eが閾値th以上であれば、第1の出力値候補cは極小値でないと判定され、微小値eの更新が行われる。例えば、微小値eは初期値を2とし、更新するたびにその値が1,0.5,0.25,・・・と小さな値にあるものとする。また、閾値thを0.01とする。この場合、微小値eの更新によりe<0.01となった上で図11(c)のようなケースとなれば、第1の出力値候補cが極小値であると判定される。
以上のように極小値の判定および出力値候補a,b,cや微小値eの更新を繰り返すことにより、平均色差が極小になる出力値O(I(n))を見つけることができる。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施の形態にかかる画像処理装置1は、画像形成装置2での画像の出力媒体として未登録用紙を使用する場合に、この未登録用紙との間の類似度が最も大きい登録用紙を類似用紙として選択し、この類似用紙に対応する用紙差補正カーブを初期値に設定して最適化処理を行うことで、未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを生成するようにしている。したがって、未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを短時間で生成することができるとともに、未登録用紙に色再現特性が近い標準用紙に対応する色変換パラメータを流用した第2色変換部13での色変換と、生成した用紙差補正カーブを用いた階調補正部14での階調補正とを組み合わせて行うことで、未登録用紙に形成される画像の再現性を高めるための補正処理を高精度に行うことができる。
図12は、本実施の形態にかかる画像処理装置1の効果を説明する図であり、図12(a)が、入力値=出力値となる用紙差補正カーブを初期値として設定した場合(従来の技術)の最適化処理を概念的に示したものであり、図12(b)が、類似用紙に対応する用紙差補正カーブを初期値として設定した場合の最適化処理を概念的に示したものである。
従来の技術では、図12(a)に示すように、C,M,Yの補正カーブが収束するまでに最適化処理を3回繰り返すことが必要であったのに対し、本実施の形態では、図12(b)に示すように、1回の最適化処理で、従来の技術と同程度の補正カーブが得られることが分かる。これは、色再現特性が近い用紙間では用紙差補正カーブも近くなるため、未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを生成する際に、この未登録用紙に色再現特性が近い登録用紙(類似用紙)に対応する用紙差補正カーブを初期値とすることで、収束を早めることが可能になるからである。
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、補正制御部20の用紙差補正カーブ生成部27による用紙差補正カーブの生成方法が、上述した第1の実施の形態と若干異なるものである。なお、画像処理装置1の基本的な構成および動作概要については上述した第1の実施の形態と同様であるため、以下では、第1の実施の形態と重複した説明は省略し、第1の実施の形態との相違点のみ説明する。
第1の実施の形態では、用紙差補正カーブ生成部27が未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを生成する際に、未登録用紙に色再現特性が近い登録用紙(類似用紙)に対応する用紙差補正カーブを最適化処理の初期値に設定することで、結果的に収束が早くなり、最適化処理の繰り返し回数を少なくして、短時間で未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを生成できることを説明した。これに対して、本実施の形態では、初めから最適化処理の繰り返し回数を少ない回数に規定する、つまり予め定めた所定回数だけ最適化処理を繰り返すことにより、未登録用紙に対応する用紙差補正カーブの生成時間を短縮するようにしている。
図13は、本実施の形態において、用紙差補正カーブ生成部27により実行される用紙差補正カーブ生成処理の一例を示すフローチャートである。この図13に示す例は、最適化処理の繰り返し回数を2回に規定した場合の例である。なお、この図13のフローチャートにおけるステップS401〜ステップS403の処理は、第1の実施の形態として説明した図8のフローチャートにおけるステップS201〜ステップS203の処理と同様であり、図13のフローチャートにおけるステップS405〜ステップS407の処理は、第1の実施の形態として説明した図8のフローチャートにおけるステップS204〜ステップS206の処理と同様である。また、図13のフローチャートにおけるステップS410の処理は、第1の実施の形態として説明した図8のフローチャートにおけるステップS208の処理と同様であり、図13のフローチャートにおけるステップS413の処理は、第1の実施の形態として説明した図8のフローチャートにおけるステップS210の処理と同様である。
本実施の形態においても、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS403の「初期値設定」において、類似用紙選択部26により選択された類似用紙に対応する用紙差補正カーブを、最適化処理の初期値として設定する。その後、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS404の「カウンタ初期化」において、カウンタn,mを0に初期化した後、ステップS405の「Cの補正カーブ最適化」、ステップS406の「Mの補正カーブ最適化」およびステップS407の「Yの補正カーブ最適化」を行う。
そして、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS405〜ステップS407の最適化処理を行うたび、ステップS408において、カウンタnの値をインクリメント(+1)し、ステップS409において、カウンタnの値が2になったか否かを判定する。このステップS409の判定の結果、カウンタnの値が2になっていなければ(ステップS409:No)、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS405に戻ってC,M,Yの補正カーブについての最適化処理およびカウンタnのインクリメントを繰り返す。そして、カウンタnの値が2になると(ステップS409:Yes)、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS410の「Kの補正カーブ最適化」を行う。
用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS410の最適化処理を行った後も、ステップS411において、カウンタmの値をインクリメント(+1)し、ステップS412において、カウンタmの値が2になったか否かを判定する。そして、ステップS412の判定の結果、カウンタmの値が2になっていなければ(ステップS412:No)、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS410に戻ってKの補正カーブについての最適化処理およびカウンタmのインクリメントを繰り返す。そして、カウンタmの値が2になると(ステップS412:Yes)、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS413の「補正カーブのスムージング」を行って、一連の処理を終了する。
以上のように、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、未登録用紙に最も類似する登録用紙である類似用紙に対応する用紙差補正カーブを初期値に設定して最適化処理を行うことで、未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを生成するようにしているので、未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを短時間で生成することができる。さらに、本実施の形態では、用紙差補正カーブの生成が終了したかどうかを判断するために、補正用パッチ画像全体におけるターゲットとの平均色差を算出して収束判定を行う必要がなく、カウンタ値の判定だけですむため、用紙差補正カーブを生成する処理をより簡易化および高速化することが可能となる。
<第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、最適化処理の繰り返し回数を2回に規定していたが、第3の実施の形態は、最適化処理を1回のみ行うようにしている。最適化処理を1回のみ行うようにすることで、上述したカウンタ値の判定も不要となる。なお、画像処理装置1の基本的な構成および動作概要については上述した第1の実施の形態と同様であるため、以下では、本実施の形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
図14は、本実施の形態において、用紙差補正カーブ生成部27により実行される用紙差補正カーブ生成処理を示すフローチャートである。なお、この図14のフローチャートにおけるステップS501〜ステップS503の処理は、第1の実施の形態として説明した図8のフローチャートにおけるステップS201〜ステップS203の処理と同様であり、図14のフローチャートにおけるステップS504〜ステップS506の処理は、第1の実施の形態として説明した図8のフローチャートにおけるステップS204〜ステップS206の処理と同様である。また、図14のフローチャートにおけるステップS507の処理は、第1の実施の形態として説明した図8のフローチャートにおけるステップS208の処理と同様であり、図14のフローチャートにおけるステップS508の処理は、第1の実施の形態として説明した図8のフローチャートにおけるステップS210の処理と同様である。つまり、図14のフローチャートは、第1の実施の形態として説明した図8のフローチャートから、ステップS207およびステップS209の収束判定のステップをなくしたものである。
本実施の形態においても、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS503の「初期値設定」において、類似用紙選択部26により選択された類似用紙に対応する用紙差補正カーブを、最適化処理の初期値として設定する。そして、本実施の形態では、ステップS504の「Cの補正カーブ最適化」、ステップS505の「Mの補正カーブ最適化」およびステップS506の「Yの補正カーブ最適化」を行った後、そのままステップS507に移行し、ステップS507の「Kの補正カーブ最適化」を行う。そして、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS507の「Kの補正カーブ最適化」が終了すると、ステップS508の「補正カーブのスムージング」を行って、一連の処理を終了する。
以上のように、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、未登録用紙に最も類似する登録用紙である類似用紙に対応する用紙差補正カーブを初期値に設定して最適化処理を行うことで、未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを生成するようにしているので、未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを短時間で生成することができる。特に、本実施の形態では、最適化処理を1回のみ行う、つまり最適化処理の繰り返し回数を1回のみに限定しているので、第1の実施の形態のような収束判定だけでなく、第2の実施の形態のようなカウンタ値の判定も不要となり、用紙差補正カーブを生成する処理をさらに簡易化および高速化することが可能となる。
なお、本実施の形態では、最適化処理の繰り返し回数を1回のみに限定するため、第1の実施の形態や第2の実施の形態と比較すると、生成される用紙差補正カーブの精度は若干劣るものの、未登録用紙に最も類似する登録用紙である類似用紙に対応する用紙差補正カーブを初期値に設定しているため、1回の最適化処理を行うだけでも、生成される用紙差補正カーブの精度をある程度確保することができる。
<第4の実施の形態>
次に、第4の実施の形態について説明する。第2の実施の形態や第3の実施の形態では、最適化処理の繰り返し回数を予め定めた回数に規定していたが、第4の実施の形態は、用紙差補正カーブを初期値として利用する類似用紙と未登録用紙との間の類似度の大きさに応じて、最適化処理の繰り返し回数を決定するようにしている。なお、画像処理装置1の基本的な構成および動作概要については上述した第1の実施の形態と同様であるため、以下では、本実施の形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
図15は、本実施の形態において、用紙差補正カーブ生成部27により実行される用紙差補正カーブ生成処理を示すフローチャートである。なお、この図15のフローチャートにおけるステップS601〜ステップS603の処理は、第1の実施の形態として説明した図8のフローチャートにおけるステップS201〜ステップS203の処理と同様であり、図15のフローチャートにおけるステップS606〜ステップS608の処理は、第1の実施の形態として説明した図8のフローチャートにおけるステップS204〜ステップS206の処理と同様である。また、図15のフローチャートにおけるステップS611の処理は、第1の実施の形態として説明した図8のフローチャートにおけるステップS208の処理と同様であり、図15のフローチャートにおけるステップS614の処理は、第1の実施の形態として説明した図8のフローチャートにおけるステップS210の処理と同様である。
本実施の形態においても、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS603の「初期値設定」において、類似用紙選択部26により選択された類似用紙に対応する用紙差補正カーブを、最適化処理の初期値として設定する。その後、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS604において、未登録用紙と類似用紙との間の類似度の大きさに応じた最適化処理の繰り返し回数Lを設定する。つまり、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS603の「初期値設定」において初期値として利用した用紙差補正カーブに対応する登録用紙である類似用紙と、これから用紙差補正カーブを生成する未登録用紙との間の類似度の大きさを確認し、両者の間の類似度が大きいほど繰り返し回数Lが小さくなるように、繰り返し回数Lを設定する。
次に、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS605の「カウンタ初期化」において、カウンタn,mを0に初期化した後、ステップS606の「Cの補正カーブ最適化」、ステップS607の「Mの補正カーブ最適化」およびステップS608の「Yの補正カーブ最適化」を行う。
そして、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS606〜ステップS608の最適化処理を行うたび、ステップS609において、カウンタnの値をインクリメント(+1)し、ステップS610において、カウンタnの値がステップS604で設定した繰り返し回数Lに達したか否かを判定する。このステップS610の判定の結果、カウンタnの値が繰り返し回数Lに達していなければ(ステップS610:No)、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS606に戻ってC,M,Yの補正カーブについての最適化処理およびカウンタnのインクリメントを繰り返す。そして、カウンタnの値が繰り返し回数Lに達すると(ステップS610:Yes)、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS611の「Kの補正カーブ最適化」を行う。
用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS611の最適化処理を行った後も、ステップS612において、カウンタmの値をインクリメント(+1)し、ステップS613において、カウンタmの値がステップS604で設定した繰り返し回数Lに達したか否かを判定する。そして、ステップS613の判定の結果、カウンタmの値が繰り返し回数Lに達していなければ(ステップS613:No)、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS611に戻ってKの補正カーブについての最適化処理およびカウンタmのインクリメントを繰り返す。そして、カウンタmの値が繰り返し回数Lに達すると(ステップS613:Yes)、用紙差補正カーブ生成部27は、ステップS614の「補正カーブのスムージング」を行って、一連の処理を終了する。
以上のように、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、未登録用紙に最も類似する登録用紙である類似用紙に対応する用紙差補正カーブを初期値に設定して最適化処理を行うことで、未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを生成するようにしているので、未登録用紙に対応する用紙差補正カーブを短時間で生成することができる。さらに、本実施の形態では、用紙差補正カーブの生成が終了したかどうかを判断するために、補正用パッチ画像全体におけるターゲットとの平均色差を算出して収束判定を行う必要がなく、カウンタ値の判定だけですむため、用紙差補正カーブを生成する処理をより簡易化および高速化することが可能となる。特に、本実施の形態では、用紙差補正カーブを初期値として利用する類似用紙と未登録用紙との間の類似度の大きさに応じて、最適化処理の繰り返し回数を決定するようにしているので、最適化処理を効率よく行って、高精度の用紙差補正カーブを短時間で生成することができる。
なお、上述した各実施の形態にかかる画像処理装置1による画像処理プロセスは、例えば、上述した制御PCに拡張ソフトウエアとして実装された画像処理プログラムが制御PCのCPUにより実行されることによって実現される。制御PCのCPUにより実行される画像処理プログラムは、例えば、制御PCのROM等に予め組み込まれて提供される。また、制御PCのCPUにより実行される画像処理プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。さらに、制御部PCのCPUにより実行される画像処理プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、制御部PCのCPUにより実行される出力制御プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
制御部PCのCPUにより実行される画像処理プログラムは、図2に機能ブロック図で示した各処理機能を含むモジュール構成となっており、実際のハードウエアとしてはCPU(プロセッサ)が例えばROMから画像処理プログラムを読み出して実行することにより各処理機能が主記憶装置(RAM)上にロードされ、各処理機能が主記憶装置上に生成されるようになっている。
以上、本発明の一適用例としての実施の形態を具体的に説明したが、本発明は、上記の各実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えて具体化することができる。例えば、上記の各実施の形態では、画像処理装置1を画像形成装置2とは別の装置として実現する構成を説明したが、画像処理装置1の一部または全部の機能を、画像形成装置2に内蔵させた構成を採用するようにしてもよい。