JP5845374B1 - 異常予兆診断システム及び異常予兆診断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】機械設備の異常予兆の有無を高精度で診断できる異常予兆診断システム等を提供する。【解決手段】異常予兆診断システム1は、センサデータを取得するセンサデータ取得手段12と、運転プロセスが開始されてから所定時間が経過したときのセンサの検出値を特定するとともに、時間の経過に伴って時間の経過に対しそれぞれ異なる値を出力する所定の関数を用いて、運転プロセスが開始されてから前記所定時間が経過したときの値を特定し、特定した検出値及び関数の値に基づいて、波形の正常モデルを学習する学習手段と、診断対象のセンサデータの時系列的な波形において、運転プロセスが開始されてから前記所定時間が経過したときのセンサの検出値及び関数の値と、正常モデルと、の比較に基づいて、機械設備2の異常予兆の有無を診断する診断手段と、を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、機械設備の異常予兆の有無を診断する異常予兆診断システム等に関する。
機械設備に設置されたセンサの検出値等に基づいて、機械設備の異常予兆の有無を診断する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、機械設備の運転スケジュールを複数の時間帯に分割し、各時間帯ごとに時系列データをクラスタリングすることによって、機械設備の正常範囲を示すクラスタを学習し、このクラスタに基づいて機械設備の異常予兆の有無を診断する異常予兆診断装置について記載されている。
また、特許文献2には、監視対象プラントの温度分布を示す画像データを15分間隔で学習データとして取得し、これらの学習データに基づき、ニューラルネットワークを用いて温度変化の正常パターンを学習し、さらに、前記した正常パターンに基づいて監視対象プラントの異常の有無を識別するプラント監視装置について記載されている。
特許文献1に記載の技術では、前記した複数の時間帯に含まれるひとつひとつの時間帯については、クラスタが一括で学習される。したがって、例えば、ひとつの時間帯において所定範囲内の大きさで時系列データが急激に変動する波形でも、また、前記した所定範囲内の大きさで時系列データが緩やかに変動する波形でも、これらを区別することなく「異常予兆なし」と診断する可能性がある。
しかしながら、特に化学プラントや製薬プラントでは、時系列データの大きさに加えて、その波形も重要視されている。時系列データの波形には、化学反応の過程や反応速度が反映されるからである。前記した2種類(急激な変動、緩やかな変動)の波形の一方が「異常予兆なし」であるならば、他方は「異常予兆あり」と診断されるべきである。したがって、特許文献1に記載の技術は、診断精度をさらに高める余地がある。
また、特許文献2に記載の技術では、前記したように、15分間隔で取得される画像データに基づき、正常パターンが学習される。しかしながら、監視対象プラントの温度分布は時々刻々と変動しており、その時系列的な波形を正常パターンに正確に反映させようとすると、ニューラルネットワークにおける計算量が膨大になる。したがって、特許文献2に記載の技術についても、診断精度をさらに高める余地がある。
そこで、本発明は、機械設備の異常予兆の有無を高精度で診断できる異常予兆診断システム等を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明に係る異常予兆診断システムは、所定の運転プロセスが繰り返される機械設備に設置されたセンサの検出値を含むセンサデータを取得するセンサデータ取得手段と、前記機械設備が正常であることが既知である期間のセンサデータの時系列的な波形において、前記運転プロセスが開始されてから所定時間が経過したときの前記センサの検出値を特定するとともに、前記運転プロセスが開始されてからの時間の経過に伴って時間の経過に対しそれぞれ異なる値を出力する所定の関数を用いて、前記運転プロセスが開始されてから前記所定時間が経過したときの値を特定し、特定した前記検出値及び前記関数の値に基づいて、前記波形の正常モデルを学習する学習手段と、診断対象のセンサデータの時系列的な波形において、前記運転プロセスが開始されてから前記所定時間が経過したときの前記センサの検出値及び前記関数の値と、前記正常モデルと、の比較に基づいて、機械設備の異常予兆の有無を診断する診断手段と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、機械設備の異常予兆の有無を高精度で診断する異常予兆診断システム等を提供できる。
≪実施形態≫
図1は、本実施形態に係る異常予兆診断システム1の構成図である。
異常予兆診断システム1は、機械設備2に設置されたセンサ(図示せず)の検出値を含むセンサデータに基づいて、機械設備2の異常予兆の有無を診断するシステムである。前記した「異常予兆」とは、機械設備2の異常が発生する前触れであり、「異常予兆診断」とは、異常予兆の有無を診断することである。
図1は、本実施形態に係る異常予兆診断システム1の構成図である。
異常予兆診断システム1は、機械設備2に設置されたセンサ(図示せず)の検出値を含むセンサデータに基づいて、機械設備2の異常予兆の有無を診断するシステムである。前記した「異常予兆」とは、機械設備2の異常が発生する前触れであり、「異常予兆診断」とは、異常予兆の有無を診断することである。
以下では、異常予兆診断システム1の説明に先立って、機械設備2について簡単に説明する。機械設備2は、例えば、化学プラントであり、図示はしないが、反応器や、この反応器に化学物質を投入する装置を備えている。そして、機械設備2において所定の「運転プロセス」が繰り返されることで、各工程において所定の化学物質が生成されるようになっている。なお、機械設備2の種類はこれに限定されず、製薬プラント、生産ライン、ガスエンジン、ガスタービン、発電設備、医療設備、通信設備等であってもよい。
機械設備2には、図示はしないが、所定の物理量(温度、圧力、流量、電流、電圧等)を検出するセンサが設置されている。センサによって検出された物理量は、センサデータとして、ネットワークNを介して異常予兆診断システム1に送信される。なお、センサデータには、センサの検出値、物理量を検出した日付・時刻の他に、機械設備2の識別情報、センサの識別情報、機械設備2において繰り返される「運転プロセス」の開始・終了を示す信号も含まれる。
以下では、一例として、機械設備2に設置されている複数のセンサのうち、機械設備2の異常予兆が敏感に反映される1つのセンサの検出値に基づいて、機械設備2の異常予兆の有無を診断する構成について説明する。
図2は、センサの検出値の変化を示す波形図である。なお、図2の横軸は時刻であり、縦軸は、機械設備2に設置されているセンサ(図示せず)の検出値である。
図2に示す例では、時刻t01から時刻t02の時間帯で、機械設備2において1回目の運転プロセスが実行され、時刻t02から時刻t03の時間帯で2回目の運転プロセスが実行されている。このように所定の運転プロセスが繰り返されるため、機械設備2が正常であれば、各運転プロセスにおいてセンサの検出値が同様の(つまり、非常に似通った)波形になる。
図2に示す例では、時刻t01から時刻t02の時間帯で、機械設備2において1回目の運転プロセスが実行され、時刻t02から時刻t03の時間帯で2回目の運転プロセスが実行されている。このように所定の運転プロセスが繰り返されるため、機械設備2が正常であれば、各運転プロセスにおいてセンサの検出値が同様の(つまり、非常に似通った)波形になる。
本実施形態では、機械設備2が正常であることが既知である所定の学習期間(図2参照)に取得したセンサデータに基づき、センサデータの時系列的な波形(運転プロセスごとの波形)を正常モデルとして学習し、この正常モデルに基づいて、機械設備2の異常予兆の有無を判定するようにしている。なお、正常モデルの詳細については後記する。
<異常予兆診断システムの構成>
図1に示すように、異常予兆診断システム1は、通信手段11と、センサデータ取得手段12と、センサデータ記憶手段13と、データマイニング手段14と、関数記憶手段15と、診断結果記憶手段16と、表示制御手段17と、表示手段18と、を備えている。
図1に示すように、異常予兆診断システム1は、通信手段11と、センサデータ取得手段12と、センサデータ記憶手段13と、データマイニング手段14と、関数記憶手段15と、診断結果記憶手段16と、表示制御手段17と、表示手段18と、を備えている。
通信手段11は、機械設備2からネットワークNを介して、センサデータを含む情報を受信するものである。通信手段11として、例えば、TCP/IPの通信プロトコルに従って情報を受信するルータを用いることができる。
センサデータ取得手段12は、ネットワークNを介して通信手段11が受信した情報に含まれるセンサデータを取得し、取得したセンサデータをセンサデータ記憶手段13に格納する。
センサデータ記憶手段13には、センサデータ取得手段12によって取得されたセンサデータが、例えば、データベースとして格納されている。なお、センサデータ記憶手段13として、磁気ディスク装置、光ディスク装置、半導体記憶装置等を用いることができる。
センサデータ記憶手段13には、センサデータ取得手段12によって取得されたセンサデータが、例えば、データベースとして格納されている。なお、センサデータ記憶手段13として、磁気ディスク装置、光ディスク装置、半導体記憶装置等を用いることができる。
データマイニング手段14は、統計的なデータ分類手法であるデータマイニングによって、センサの検出値(つまり、センサデータ)の正常な波形を正常モデルとして学習し、この正常モデルに基づいて、機械設備2の異常予兆の有無を診断する。なお、データマイニング手段14の詳細については後記する。
関数記憶手段15には、前記した運転プロセスの開始時(図4に示す時刻t01,t02,…)からの時間の経過に伴って単調増加する一次関数(図4に示す直線L)が格納されている。前記した一次関数は、データマイニング手段14において用いられる。
関数記憶手段15には、前記した運転プロセスの開始時(図4に示す時刻t01,t02,…)からの時間の経過に伴って単調増加する一次関数(図4に示す直線L)が格納されている。前記した一次関数は、データマイニング手段14において用いられる。
診断結果記憶手段16には、データマイニング手段14の診断結果が格納されている。この診断結果には、機械設備2の識別情報、及び異常予兆の有無が含まれる。
表示制御手段17は、データマイニング手段14の診断結果を表示するための制御信号を表示手段18に出力する。例えば、表示制御手段17は、各機械設備2の名称を行とし、診断日の日付を列として、診断結果をマトリクス形式で表示手段18に表示する。
表示手段18は、例えば、液晶ディスプレイであり、表示制御手段17から入力される制御信号に従って診断結果を表示する。
表示制御手段17は、データマイニング手段14の診断結果を表示するための制御信号を表示手段18に出力する。例えば、表示制御手段17は、各機械設備2の名称を行とし、診断日の日付を列として、診断結果をマトリクス形式で表示手段18に表示する。
表示手段18は、例えば、液晶ディスプレイであり、表示制御手段17から入力される制御信号に従って診断結果を表示する。
図3は、異常予兆診断システム1が備えるデータマイニング手段14の構成図である。
図3に示すように、データマイニング手段14は、学習手段141と、診断手段142と、を備えている。
学習手段141は、統計的なデータ分類手法の一つであるクラスタリングによって、センサの検出値の正常な波形を表すクラスタ(正常モデル)を学習する。前記したクラスタとは、多次元ベクトル空間においてクラスタ中心c(図5参照)及びクラスタ半径r(図5参照)で特定される領域であり、所定の学習期間(図2参照)に取得したセンサデータに基づいて学習される。
図3に示すように、データマイニング手段14は、学習手段141と、診断手段142と、を備えている。
学習手段141は、統計的なデータ分類手法の一つであるクラスタリングによって、センサの検出値の正常な波形を表すクラスタ(正常モデル)を学習する。前記したクラスタとは、多次元ベクトル空間においてクラスタ中心c(図5参照)及びクラスタ半径r(図5参照)で特定される領域であり、所定の学習期間(図2参照)に取得したセンサデータに基づいて学習される。
図3に示すように、学習手段141は、学習対象データ取得部141aと、値特定部141bと、値記憶部141cと、クラスタ学習部141dと、学習結果記憶部141eと、を備えている。
学習対象データ取得部141aは、学習対象のセンサデータ(つまり、学習対象データ)を、センサデータ記憶手段13から取得する。すなわち、学習対象データ取得部141aは、機械設備2が正常であることが既知である学習期間に取得されたセンサデータを、機械設備2で繰り返される運転プロセスごとに取得する。
学習対象データ取得部141aは、学習対象のセンサデータ(つまり、学習対象データ)を、センサデータ記憶手段13から取得する。すなわち、学習対象データ取得部141aは、機械設備2が正常であることが既知である学習期間に取得されたセンサデータを、機械設備2で繰り返される運転プロセスごとに取得する。
値特定部141bは、学習対象データ取得部141aによって取得された学習対象データにおいて、運転プロセスが開始されてからの長さの異なる所定時間Δt1,Δt2,Δt3(図4参照)が経過したときのセンサの検出値、及び一次関数の値をそれぞれ特定する。前記した所定時間Δt1,Δt2,Δt3は、機械設備2の異常予兆の発生が、これらの所定時間Δt1,Δt2,Δt3におけるセンサの検出値に敏感に反映されるように、事前に設定されている。
図4は、センサの検出値、及び一次関数で表される直線Lに関する説明図である。
図4に示すように、機械設備2において1回目、2回目、…の運転プロセスが繰り返され、それに伴ってセンサの検出値が変動する。図4に示す直線Lは、前記したように、運転プロセスの開始時(時刻t01、時刻t02、…)からの時間の経過に伴って増大する直線であり、一次関数で表される。値特定部141b(図3参照)は、例えば、運転プロセスの開始時から所定時間Δt1が経過したときのセンサの検出値p1(図4参照)と、直線Lの値q1(図4参照)と、を特定する。所定時間Δt2,Δt3についても同様にして、値特定部141bは、センサの検出値及び一次関数の値をそれぞれ特定する。
図4に示すように、機械設備2において1回目、2回目、…の運転プロセスが繰り返され、それに伴ってセンサの検出値が変動する。図4に示す直線Lは、前記したように、運転プロセスの開始時(時刻t01、時刻t02、…)からの時間の経過に伴って増大する直線であり、一次関数で表される。値特定部141b(図3参照)は、例えば、運転プロセスの開始時から所定時間Δt1が経過したときのセンサの検出値p1(図4参照)と、直線Lの値q1(図4参照)と、を特定する。所定時間Δt2,Δt3についても同様にして、値特定部141bは、センサの検出値及び一次関数の値をそれぞれ特定する。
図3に示す値記憶部141cには、値特定部141bによって特定された検出値及び一次関数の値が、前記した所定時間Δt1,Δt2,Δt3に対応付けて格納されている。なお、学習期間においてn回の運転プロセスが繰り返された場合、値記憶部141cには、(3×n)組の検出値及び一次関数の値が格納される。
クラスタ学習部141dは、値記憶部141cに格納されている情報に基づいて、センサの検出値の正常な波形を表すクラスタ(正常モデル)を学習する。
クラスタ学習部141dは、値記憶部141cに格納されている情報に基づいて、センサの検出値の正常な波形を表すクラスタ(正常モデル)を学習する。
図5は、クラスタ学習部141dによって学習されるクラスタJの説明図である。なお、図5の軸αは、一次関数の値の正規化後の数値を示す軸であり、軸βは、センサの検出値の正規化後の数値を示す軸である。一回の運転プロセスにおけるセンサデータの波形は、所定時間Δt1,Δt2,Δt3(図4参照)でのセンサの検出値、及び一次関数の値を用いて表される。つまり、センサデータは、センサの検出値及び一次関数の値に正規化処理を施した値を成分とする2次元の特徴ベクトルで表される。ここで「正規化処理」とは、センサの検出値及び一次関数の値を代表値(平均値、標準偏差等)で除算するなどして無次元量化して、互いに比較可能とする処理である。
図5に示す●印(n個存在する)のひとつひとつが、運転プロセスから所定時間Δt1、所定時間Δt2、又は所定時間Δt3(図4参照)が経過したときのセンサデータを表している。なお、図5では、一つのクラスタJを図示しているが、実際には、所定時間Δt1,Δt2,Δt3に対応して、少なくとも3個のクラスタが生成される。
クラスタ学習部141d(図3参照)は、●印で示すn個の特徴ベクトルを、クラスタと呼ばれるグループに分類する。以下では、一例として、非階層的クラスタリングであるk平均法を用いてクラスタを学習する場合について説明する。クラスタ学習部141dは、まず、各特徴ベクトルに対してランダムにクラスタを割り振り、割り振ったデータに基づいて各クラスタの中心(クラスタ中心c:図5参照)を算出する。クラスタ中心cは、例えば、クラスタに属する複数の特徴ベクトルの重心である。
次に、クラスタ学習部141dは、所定の特徴ベクトルと各クラスタ中心cとの距離を求め、この距離が最も小さくなるクラスタに当該特徴ベクトルを割り当て直す。クラスタ学習部141dは、このような処理を全ての特徴ベクトルについて実行する。そして、クラスタ学習部141dは、クラスタの割り当てが変化しなかった場合にはクラスタの生成処理を終了し、それ以外の場合には、新しく割り振られたクラスタからクラスタ中心cを再計算する。
そして、クラスタ学習部141dは、各クラスタについてクラスタ中心c(図5参照)の座標値と、クラスタ半径r(図5参照)と、を算出する。クラスタ半径rは、例えば、クラスタ中心cと、そのクラスタに属する特徴ベクトルと、の距離の平均値である。なお、クラスタ半径rの算出方法はこれに限定されない。例えば、クラスタに属する特徴ベクトルのうちクラスタ中心cから最も離れている特徴ベクトルを特定し、この特徴ベクトルとクラスタ中心cとの距離をクラスタ半径rとしてもよい。このようにしてクラスタ学習部141dは、センサデータの正常な波形を表すクラスタを学習する。
図3に示す学習結果記憶部141eには、クラスタ学習部141dの学習結果であるクラスタ情報が、データベースとして格納されている。前記したクラスタ情報には、クラスタ中心c、クラスタ半径r、及び機械設備2の識別情報が含まれる。
図3に示す診断手段142は、学習手段141によって学習されたクラスタを用いて、機械設備2の異常予兆の有無を診断する。診断手段142は、診断対象データ取得部142aと、値特定部142bと、異常測度算出部142cと、診断部142dと、を備えている。
診断対象データ取得部142aは、診断対象のセンサデータ(つまり、診断対象データ)をセンサデータ記憶手段13から取得する。すなわち、診断対象データ取得部142aは、学習期間後の診断期間(図2参照)におけるセンサデータを、機械設備2で繰り返される運転プロセスごとに取得する。
値特定部142bは、診断対象データ取得部142aによって取得された診断対象データにおいて、運転プロセスが開始されてから所定時間Δt1,Δt2,Δt3が経過したときのセンサの検出値、及び一次関数の値を特定する。前記した所定時間Δt1,Δt2,Δt3は、学習手段141で用いられる所定時間Δt1,Δt2,Δt3と略同一である。また、診断手段142で用いる一次関数(y=aΔt+b)についても、学習手段141で用いる一次関数(y=aΔt+b)と略同一である。
異常測度算出部142cは、値特定部142bによって特定されたセンサの検出値、及び一次関数の値と、学習結果記憶部141eに格納されているクラスタ情報(クラスタ中心c、クラスタ半径r)と、に基づいて、診断対象データの異常測度uを算出する。まず、異常測度算出部142cは、値特定部142bによって特定された検出値、及び一次関数の値に正規化処理を施して2次元の特徴ベクトルに変換する。そして、異常測度算出部142cは、学習結果記憶部141eに格納されているクラスタ情報を参照し、各クラスタのうち、診断対象データに最も近いクラスタ中心cを有するものを特定する。そして、異常測度算出部142cは、特定したクラスタのクラスタ中心cから診断対象データまでの距離d(図5参照)と、クラスタ半径r(図5参照)と、を用いて、以下の(数式1)に基づき異常測度uを算出する。
u=d/r・・・(数式1)
診断部142dは、異常測度算出部142cによって算出される異常測度uに基づいて、機械設備2の異常予兆の有無を診断する。その一例を挙げると、異常測度u≦1である場合、診断対象データがクラスタ内(つまり、正常範囲内)に存在しているため、診断部142dは、機械設備2について「異常予兆なし」と診断する。一方、異常測度u>1である場合、診断対象データがクラスタ外(つまり、正常範囲外)に存在しているため、診断部142dは、機械設備2について「異常予兆あり」と診断する。診断部142dは、その診断結果を診断対象データに対応付けて、診断結果記憶手段15に格納する。
なお、例えば、診断期間において異常測度uが所定閾値を超えた診断対象データが所定個数以上存在する場合、診断部142dによって、機械設備2に「異常予兆あり」と診断するようにしてもよい。
<異常予兆診断システムの動作>
図6は、異常予兆診断システム1の処理を示すフローチャートである。
ステップS101において異常予兆診断システム1は、学習手段141(図3参照)によって、学習処理を実行する。
図6は、異常予兆診断システム1の処理を示すフローチャートである。
ステップS101において異常予兆診断システム1は、学習手段141(図3参照)によって、学習処理を実行する。
図7は、学習手段141が実行する学習処理のフローチャートである。
ステップS1011において学習手段141は、値nを1に設定する。この値nは、前記した所定時間(図4に示す例では、3つの所定時間Δt1,Δt2,Δt3)が複数存在する場合において、センサの検出値及び一次関数の値の特定に用いるものを選択する際にインクリメント(S1017)される自然数である。
ステップS1011において学習手段141は、値nを1に設定する。この値nは、前記した所定時間(図4に示す例では、3つの所定時間Δt1,Δt2,Δt3)が複数存在する場合において、センサの検出値及び一次関数の値の特定に用いるものを選択する際にインクリメント(S1017)される自然数である。
ステップS1012において学習手段141は、学習対象データ取得部141aによって、センサデータ記憶手段13から学習対象データを取得する。つまり、学習手段141は、機械設備2が正常に稼動していることが既知である学習期間(図2参照)に取得されたセンサデータのうち、1回目の運転プロセスのセンサデータを学習対象として取得する。
ステップS1013において学習手段141は、値特定部141bによって、運転プロセスの開始時(図4に示す時刻t01)から所定時間Δt1が経過したときのセンサの検出値p1を特定する。前記したように、学習対象データには、センサの検出値の他、運転プロセスの開始・終了を示す信号も含まれている。したがって、この信号に基づき、運転プロセスが開始された時刻t01を特定できる。
ステップS1014において学習手段141は、値特定部141bによって、所定時間Δt1における一次関数の値q1を特定する(図4参照)。つまり、学習手段141は、所定時間Δt1を一次関数:y=aΔt+bに代入することによって、一次関数の値(図4では、y=q1)を特定する。
ステップS1015において学習手段141は、ステップS1013で特定した検出値p1と、ステップS1014で特定した一次関数の値q1と、を所定時間Δt1に対応付けて、値記憶部141cに格納する。
ステップS1015において学習手段141は、ステップS1013で特定した検出値p1と、ステップS1014で特定した一次関数の値q1と、を所定時間Δt1に対応付けて、値記憶部141cに格納する。
ステップS1016において学習手段141は、値nが所定値Nに達している否かを判定する。この所定値Nは、センサの検出値及び一次関数の特定に使用する所定時間Δtnの個数(本実施形態では、所定時間Δt1,Δt2,Δt3の3個)である。
値nが所定値Nに達していない場合(S1016:No)、ステップS1017において学習手段141は、nの値をインクリメントし、ステップS1012の処理に戻る。そして、学習手段141は、他の所定時間Δt2,Δt3(図4参照)についても同様にして、センサの検出値及び一次関数の値を特定する。
値nが所定値Nに達していない場合(S1016:No)、ステップS1017において学習手段141は、nの値をインクリメントし、ステップS1012の処理に戻る。そして、学習手段141は、他の所定時間Δt2,Δt3(図4参照)についても同様にして、センサの検出値及び一次関数の値を特定する。
一方、ステップS1016において値nが所定値Nに達している場合(S1016:Yes)、学習手段141の処理はステップS1018に進む。
ステップS1018において学習手段141は、学習期間(図2参照)において、センサの検出値及び一次関数の値が特定されていない他の運転プロセスが存在するか否かを判定する。
ステップS1018において学習手段141は、学習期間(図2参照)において、センサの検出値及び一次関数の値が特定されていない他の運転プロセスが存在するか否かを判定する。
ステップS1018において他の運転プロセスが存在する場合(S1018:Yes)、学習手段141の処理はステップS1011に戻る。つまり、学習手段141は、他の運転プロセスについても、運転プロセスの開始時から所定時間Δt1,Δt2,Δt3が経過したときの検出値及び一次関数の値を特定する。例えば、2回目の運転プロセスは、図4に示す時刻t02から開始されているため、この時刻t02を基準として、所定時間Δt1,Δt2,Δt3が経過したときのセンサの検出値及び一次関数の値が特定される。
一方、ステップS1018において、センサの検出値及び一次関数の値が特定されていない他の運転プロセスが存在しない場合(S1018:No)、学習手段141の処理はステップS1019に進む。
ステップS1019において学習手段141は、値記憶部141cに格納されているデータに基づいて、クラスタを学習する。つまり、学習手段141は、前記したように、センサの検出値及び一次関数の値を2次元の特徴ベクトルに変換し、各特徴ベクトルをクラスタリングすることによって、センサの検出値の正常な波形を表すクラスタ(正常モデル)を学習する。
ステップS1020において学習手段141は、ステップS1019で学習した結果を学習結果記憶部141eに格納して、一連の学習処理を終了する(END)。
ステップS1019において学習手段141は、値記憶部141cに格納されているデータに基づいて、クラスタを学習する。つまり、学習手段141は、前記したように、センサの検出値及び一次関数の値を2次元の特徴ベクトルに変換し、各特徴ベクトルをクラスタリングすることによって、センサの検出値の正常な波形を表すクラスタ(正常モデル)を学習する。
ステップS1020において学習手段141は、ステップS1019で学習した結果を学習結果記憶部141eに格納して、一連の学習処理を終了する(END)。
図6に示すステップS101の学習処理を行ったのち、ステップS102において異常予兆診断システム1は、診断手段142(図3参照)によって、診断処理を実行する。
図8は、診断手段142が実行する診断処理のフローチャートである。
ステップS1021において診断手段142は、値nを1に設定する。この値nは、図7のステップS1011で説明した値nと同様である。
ステップS1022において診断手段142は、診断対象データ取得部142aによって、センサデータ記憶手段13から診断対象データを取得する。つまり、診断手段142は、学習期間後の診断期間(図2参照)に取得されたセンサデータのうち、1回目の運転プロセスのセンサデータを診断対象として取得する。
ステップS1021において診断手段142は、値nを1に設定する。この値nは、図7のステップS1011で説明した値nと同様である。
ステップS1022において診断手段142は、診断対象データ取得部142aによって、センサデータ記憶手段13から診断対象データを取得する。つまり、診断手段142は、学習期間後の診断期間(図2参照)に取得されたセンサデータのうち、1回目の運転プロセスのセンサデータを診断対象として取得する。
ステップS1023において診断手段142は、値特定部142bによって、運転プロセスの開始時から所定時間Δt1が経過したときのセンサの検出値を特定する。
ステップS1024において診断手段142は、値特定部142bによって、所定時間Δt1を一次関数に代入して、一次関数の値を特定する。
ステップS1025において診断手段142は、異常測度算出部142cによって、診断対象データの異常測度uを算出する。すなわち、ステップS1025において診断手段142は、まず、ステップS1023で特定した検出値、及びステップS1024で特定した一次関数の値を正規化し、各値を成分とする2次元の特徴ベクトルを生成する。そして、診断手段142は、この特徴ベクトルと、学習結果記憶部141eに格納されているクラスタ情報と、に基づき、前記した(数式1)を用いて診断対象データの異常測度uを算出する。
ステップS1024において診断手段142は、値特定部142bによって、所定時間Δt1を一次関数に代入して、一次関数の値を特定する。
ステップS1025において診断手段142は、異常測度算出部142cによって、診断対象データの異常測度uを算出する。すなわち、ステップS1025において診断手段142は、まず、ステップS1023で特定した検出値、及びステップS1024で特定した一次関数の値を正規化し、各値を成分とする2次元の特徴ベクトルを生成する。そして、診断手段142は、この特徴ベクトルと、学習結果記憶部141eに格納されているクラスタ情報と、に基づき、前記した(数式1)を用いて診断対象データの異常測度uを算出する。
ステップS1026において診断手段142は、値nが所定値Nに達している否かを判定する。この所定値Nは、所定時間Δtnの個数(本実施形態では、3個)であり、学習処理で用いた所定値N(図7参照)と同様である。値nが所定値Nに達していない場合(S1026:No)、診断手段142は、ステップS1027においてnの値をインクリメントし、ステップS1022の処理に戻る。
一方、ステップS1026において値nが所定値Nに達している場合(S1026:Yes)、診断手段142の処理はステップS1028に進む。
ステップS1028において診断手段142は、診断部142dによって、機械設備2の異常予兆の有無を診断する。つまり、診断手段142は、ステップS1025で算出した異常測度uに基づいて、機械設備2の異常予兆の有無を診断する。
ステップS1028において診断手段142は、診断部142dによって、機械設備2の異常予兆の有無を診断する。つまり、診断手段142は、ステップS1025で算出した異常測度uに基づいて、機械設備2の異常予兆の有無を診断する。
ステップS1029において診断手段142は、診断結果を診断結果記憶手段16に格納し、一連の診断処理を終了する(END)。診断手段142は、このような診断処理を、診断期間(図2参照)に含まれる運転プロセスごとに繰り返す。
なお、診断結果記憶手段16に格納された情報は、表示制御手段17(図1参照)によって、表示手段18(図1参照)に表示される。
なお、診断結果記憶手段16に格納された情報は、表示制御手段17(図1参照)によって、表示手段18(図1参照)に表示される。
図9(a)は、学習対象データの波形、及び一次関数の直線Lを示す説明図である。
図9(a)に示す検出値の波形は、学習期間に含まれる1回分の運転プロセスにおいて取得された学習対象データ(検出値)である。前記したように、運転プロセスから所定時間Δt1が経過したときのセンサの検出値p1と、一次関数(直線L)の値q1と、を正規化した値を成分とする2次元の特徴ベクトルが生成される。また、他の所定時間Δt2,Δt3についても特徴ベクトルが生成され、学習期間に含まれる他の運転プロセスについても特徴ベクトルが生成される。それらの特徴ベクトルに基づいて、次に説明するクラスタJ1,J2,J3(図10参照)が学習される。
図9(a)に示す検出値の波形は、学習期間に含まれる1回分の運転プロセスにおいて取得された学習対象データ(検出値)である。前記したように、運転プロセスから所定時間Δt1が経過したときのセンサの検出値p1と、一次関数(直線L)の値q1と、を正規化した値を成分とする2次元の特徴ベクトルが生成される。また、他の所定時間Δt2,Δt3についても特徴ベクトルが生成され、学習期間に含まれる他の運転プロセスについても特徴ベクトルが生成される。それらの特徴ベクトルに基づいて、次に説明するクラスタJ1,J2,J3(図10参照)が学習される。
図10は、学習結果であるクラスタJ1,J2,J3、及び診断対象データの特徴ベクトルv1A,v2A,v3Aの説明図である。図10の横軸αは、一次関数の値の正規化後の数値であり、縦軸βは、センサの検出値の正規化後の数値である。図10に示すクラスタJ1は、運転プロセスの開始時から所定時間Δt1(図9(a)参照)が経過したときのセンサの検出値、及び一次関数の値に基づくクラスタであり、クラスタ中心c1及びクラスタ半径r1によって表される。同様に、クラスタJ2は所定時間Δt2(図9(a)参照)に対応するクラスタであり、クラスタJ3は所定時間Δt3(図9(a)参照)に対応するクラスタである。ちなみに、一つの所定時間Δtnにおいて、複数のクラスタが学習されることもある。
図9(b)は、機械設備2の異常予兆発生時における診断対象データの波形、及び一次関数の直線Lを示す説明図である。
図9(b)に示す例では、1回の運転プロセスにおける検出値の最大値・最小値が、機械設備2が正常に稼動しているときの学習対象データ(図9(a)参照)と同様になっているが、検出値の波形が正常時とは異なっている。従来の異常予兆診断では、センサの検出値のみに基づいて異常予兆の有無が診断されていたため、図9(b)に示す診断対象データについて「異常予兆なし」と誤診断する可能性があった。
図9(b)に示す例では、1回の運転プロセスにおける検出値の最大値・最小値が、機械設備2が正常に稼動しているときの学習対象データ(図9(a)参照)と同様になっているが、検出値の波形が正常時とは異なっている。従来の異常予兆診断では、センサの検出値のみに基づいて異常予兆の有無が診断されていたため、図9(b)に示す診断対象データについて「異常予兆なし」と誤診断する可能性があった。
これに対して本実施形態では、運転プロセスが開始されてから所定時間Δt1,Δt2,Δt3が経過したときのセンサの検出値、及び一次関数の値で特定される特徴ベクトルがクラスタ内に存在するか否かに基づいて、機械設備2の異常予兆の有無が診断される。例えば、図9(b)に示す所定時間Δt1における検出値p1Aと、一次関数の値q1(正規化後は、値α1:図10参照)と、に基づき、図10の●印で示す特徴ベクトルv1Aが生成される。特徴ベクトルv1Aは、この特徴ベクトルv1Aに最も近いクラスタJ1に含まれないため、診断部142dによって「異常予兆あり」と診断される。なお、所定時間Δt2(図9(b)参照)の検出値等に対応する特徴ベクトルv2Aや、所定時間Δt3(図9(b)参照)の検出値等に対応する特徴ベクトルv3Aについても同様である。
図11(a)は、学習対象データの波形の別の例、及び一次関数の直線Lを示す説明図である。
図11(a)に示す例では、機械設備2が正常に稼動している学習期間において、センサの検出値が正弦波状に変動している。また、検出値の波形の極大点を与える2つの所定時間Δt4,Δt5が設定されている。そして、運転プロセスの開始時から所定時間Δt4,Δt5が経過したときのセンサの検出値及び一次関数の値に基づき、センサの検出値の正常な波形を表すクラスタ(正常モデル)が学習される。図11(a)に示すように、所定時間Δt4,Δt5における検出値pは略同一であるが、一次関数の値q4,q5が異なっている(q4<q5)。その結果、所定時間Δt4,Δt5に対応して、異なるクラスタJ4,J5(図12参照)が学習される。
図11(a)に示す例では、機械設備2が正常に稼動している学習期間において、センサの検出値が正弦波状に変動している。また、検出値の波形の極大点を与える2つの所定時間Δt4,Δt5が設定されている。そして、運転プロセスの開始時から所定時間Δt4,Δt5が経過したときのセンサの検出値及び一次関数の値に基づき、センサの検出値の正常な波形を表すクラスタ(正常モデル)が学習される。図11(a)に示すように、所定時間Δt4,Δt5における検出値pは略同一であるが、一次関数の値q4,q5が異なっている(q4<q5)。その結果、所定時間Δt4,Δt5に対応して、異なるクラスタJ4,J5(図12参照)が学習される。
ちなみに、センサの検出値のみに基づいてクラスタを学習する従来技術では、所定時間Δt4における検出値pと、所定時間Δt5における検出値pと、を区別するような学習処理は行われていなかった。これに対して本実施形態では、検出値pが同一であっても、所定時間Δt4,Δt5が異なっていれば、それらを区別して学習できる。この学習結果は、後記するように、異常予兆診断の高精度化に寄与するものである。
図11(b)は、異常予兆発生時における診断対象データの波形、及び一次関数の直線Lを示す説明図である。
図11(b)に示す例では、診断対象データの波形の振幅や最大値・最小値は正常時と同様であるが、波形の周期が正常時よりも短くなっている。その結果、例えば、所定時間Δt5における検出値p5Aが、正常時の検出値pよりも大幅に小さくなっている。
図11(b)に示す例では、診断対象データの波形の振幅や最大値・最小値は正常時と同様であるが、波形の周期が正常時よりも短くなっている。その結果、例えば、所定時間Δt5における検出値p5Aが、正常時の検出値pよりも大幅に小さくなっている。
図12は、学習結果であるクラスタJ4,J5、及び診断対象データの特徴ベクトルv4A,v5Aの説明図である。なお、横軸α、縦軸βについては、図10と同様である。
図12に示すクラスタJ4は、運転プロセスの開始時から所定時間Δt4(図11(a)参照)が経過したときのセンサの検出値、及び一次関数の値に基づくクラスタである。クラスタJ5は、運転プロセスの開始時から所定時間Δt5(図11(a)参照)が経過したときセンサの検出値、及び一次関数に基づくクラスタである。
図12に示すクラスタJ4は、運転プロセスの開始時から所定時間Δt4(図11(a)参照)が経過したときのセンサの検出値、及び一次関数の値に基づくクラスタである。クラスタJ5は、運転プロセスの開始時から所定時間Δt5(図11(a)参照)が経過したときセンサの検出値、及び一次関数に基づくクラスタである。
前記したように、所定時間Δt5における検出値p5A(図11(b)参照、正規化後は値β5A:図12参照)は、正常時の検出値pよりも大幅に小さくなっている。したがって、所定時間Δt5の検出値及び一次関数の値で特定される特徴ベクトルv5Aが、最近傍のクラスタJ5の外側に位置している。その結果、診断部142dによって「異常予兆あり」と診断される。
なお、所定時間Δt4,Δt5における一次関数の値q4,q5(図11(a)参照)の大きさが異なっているため、図12に示すクラスタJ4,J5が、α軸方向において比較的離れている。また、診断対象データである特徴ベクトルv5A(図12参照)は、α軸方向の値α5が、クラスタ中心c5のα成分に略等しくなっている。学習対象データであっても、診断対象データであっても、所定時間Δt5における一次関数の値q5は同一だからである(図11(a)、(b)参照)。その結果、特徴ベクトルv5Aに最も近いクラスタ中心を有するものが、クラスタJ4ではなく、クラスタJ5になる。したがって、所定時間Δt5における検出値p5Aの異常測度uを、この所定時間Δt5に対応するクラスタJ5に基づいて算出できる。これによって、診断対象データの検出値の波形が異常であるか否か(つまり、機械設備2の異常予兆の有無)を高精度で診断できる。
<効果>
本実施形態によれば、運転プロセスの開始時から所定時間Δtnが経過したときの検出値、及び単調増加する一次関数の値を2次元の特徴ベクトルに変換し、この特徴ベクトルに基づいて、センサの検出値の正常な波形をクラスタとして学習できる。
また、診断対象データについても同様にして特徴ベクトルを生成し、学習結果であるクラスタに基づいて、波形が異常であるか否か(つまり、機械設備2に異常予兆が発生しているか否か)を高精度で診断できる。
本実施形態によれば、運転プロセスの開始時から所定時間Δtnが経過したときの検出値、及び単調増加する一次関数の値を2次元の特徴ベクトルに変換し、この特徴ベクトルに基づいて、センサの検出値の正常な波形をクラスタとして学習できる。
また、診断対象データについても同様にして特徴ベクトルを生成し、学習結果であるクラスタに基づいて、波形が異常であるか否か(つまり、機械設備2に異常予兆が発生しているか否か)を高精度で診断できる。
≪変形例≫
以上、本発明に係る異常予兆診断システム1について実施形態により説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、実施形態では、検出値及び一次関数の値を特定するために、2つ又は3つの所定時間Δtn(図9、図11参照)を設定する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、所定時間Δtnの個数は一つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
すればよい。
以上、本発明に係る異常予兆診断システム1について実施形態により説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、実施形態では、検出値及び一次関数の値を特定するために、2つ又は3つの所定時間Δtn(図9、図11参照)を設定する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、所定時間Δtnの個数は一つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
すればよい。
また、実施形態では、時間の経過とともに単調増加する一次関数を用いる場合について説明したが、これに限らない。例えば、時間の経過とともに単調減少する一次関数を用いてもよいし、時間の経過とともに単調増加又は単調減少する曲線の関数を用いてもよい。より一般的には、時間の経過に対してそれぞれ異なる値を出力する所定の関数を用いてもよい。
また、実施形態は、センサの検出値及び一次関数の値に基づく2次元の特徴ベクトルを、所定時間Δt1,Δt2,Δt3のそれぞれについて個別で求める場合について説明したが、これに限らない。すなわち、学習対象のセンサデータの時系列的な波形において、所定時間Δt1,Δt2,Δt3におけるセンサの検出値、及び一次関数の値を含む波形データを、学習手段141によって6次元の特徴ベクトルに変換し、運転プロセスごとに得られる特徴ベクトルに基づいてクラスタを学習するようにしてもよい。そして、診断対象のセンサデータの時系列的な波形において、所定時間Δt1,Δt2,Δt3におけるセンサの検出値、及び一次関数の値を含む波形データを、診断手段142によって取得し、当該波形データと正常モデルとの比較に基づいて、機械設備2の異常予兆の有無を診断するようにしてもよい。なお、異常測度uの算出方法等については、実施形態と同様である。これによって、1回分の運転プロセスにおけるセンサの検出値の波形を、6次元の特徴ベクトルとして表すことができるため、その波形の異常(つまり、機械設備2における異常予兆)の有無を高精度で診断できる。
また、実施形態では、一つのセンサから取得されるセンサデータに基づいて、機械設備2の異常予兆の有無を診断する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、複数のセンサから取得されるセンサデータに基づいて、機械設備2の異常予兆の有無を診断するようにしてもよい。この場合には、実施形態で説明したように、運転プロセスの開始時から所定時間が経過したときの各センサの検出値と、一次関数の値と、に基づいて、多次元の特徴ベクトルを生成するようにすればよい。なお、特徴ベクトルの次元数は、(センサの個数)+1である。このように複数のセンサを用いることで、機械設備2のどの箇所にどのような異常が発生したのかを、ユーザが把握できる。
また、実施形態では、機械設備2の運転プロセスが間断なく繰り返される場合について説明したが、これに限らない。すなわち、機械設備2の運転プロセスの開始・終了が把握できればよく、所定の休止時間を挟んで運転プロセスを行うようにしてもよい。
また、実施形態では、学習したクラスタをその後も保持(記憶)する構成について説明したが、これに限らない。すなわち、診断部142dによって「異常予兆なし」と診断されたセンサデータを学習対象データとして追加し、追加後の学習対象データに基づいてクラスタ中心c及びクラスタ半径rを再計算する(つまり、クラスタを再学習する)ようにしてもよい。このようにクラスタを再学習することで、機械設備2の正常状態に関する情報を徐々に増加させ、クラスタ中心c及びクラスタ半径rをより適切な値に更新できる。
また、前記したように、学習対象データを追加するたびに、既存の学習対象データのうち最も古いものを学習対象から除外するようにしてもよい。これによって、季節変化等に伴って機械設備2が経時的に変化した場合でも、この変化に追従してクラスタを更新することができ、ひいては異常予兆の診断精度を高めることができる。
また、前記したように、学習対象データを追加するたびに、既存の学習対象データのうち最も古いものを学習対象から除外するようにしてもよい。これによって、季節変化等に伴って機械設備2が経時的に変化した場合でも、この変化に追従してクラスタを更新することができ、ひいては異常予兆の診断精度を高めることができる。
なお、本発明は、各実施形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、一の実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、一の実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することも可能である。
また、図1、図3に示す各構成は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、前記の各構成は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
1 異常予兆診断システム
2 機械設備
11 通信手段
12 センサデータ取得手段
13 センサデータ記憶手段
14 データマイニング手段
15 関数記憶手段
16 診断結果記憶手段
17 表示制御手段
18 表示手段
141 学習手段
141a 学習対象データ取得部
141b 値特定部
141c 値記憶部
141d クラスタ学習部
141e 学習結果記憶部
142 診断手段
142a 診断対象データ取得部
142b 値特定部
142c 異常測度算出部
142d 診断部
2 機械設備
11 通信手段
12 センサデータ取得手段
13 センサデータ記憶手段
14 データマイニング手段
15 関数記憶手段
16 診断結果記憶手段
17 表示制御手段
18 表示手段
141 学習手段
141a 学習対象データ取得部
141b 値特定部
141c 値記憶部
141d クラスタ学習部
141e 学習結果記憶部
142 診断手段
142a 診断対象データ取得部
142b 値特定部
142c 異常測度算出部
142d 診断部
Claims (6)
- 所定の運転プロセスが繰り返される機械設備に設置されたセンサの検出値を含むセンサデータを取得するセンサデータ取得手段と、
前記機械設備が正常であることが既知である期間のセンサデータの時系列的な波形において、前記運転プロセスが開始されてから所定時間が経過したときの前記センサの検出値を特定するとともに、前記運転プロセスが開始されてからの時間の経過に伴って時間の経過に対しそれぞれ異なる値を出力する所定の関数を用いて、前記運転プロセスが開始されてから前記所定時間が経過したときの値を特定し、特定した前記検出値及び前記関数の値に基づいて、前記波形の正常モデルを学習する学習手段と、
診断対象のセンサデータの時系列的な波形において、前記運転プロセスが開始されてから前記所定時間が経過したときの前記センサの検出値及び前記関数の値と、前記正常モデルと、の比較に基づいて、前記機械設備の異常予兆の有無を診断する診断手段と、を備えること
を特徴とする異常予兆診断システム。 - 請求項1において、
前記所定の関数は、単調増加又は単調減少する関数であること、
を特徴とする異常予兆診断システム。 - 請求項1において、
前記学習手段は、学習対象のセンサデータの時系列的な波形において、前記運転プロセスが開始されてからの長さの異なる複数の前記所定時間における前記検出値及び前記関数の値を含む波形データに基づいて、前記正常モデルを学習し、
前記診断手段は、診断対象のセンサデータの時系列的な波形において、前記運転プロセスが開始されてからの長さの異なる複数の前記所定時間における前記検出値及び前記関数の値を含む波形データを取得し、当該波形データと前記正常モデルとの比較に基づいて、前記機械設備の異常予兆の有無を診断すること
を特徴とする異常予兆診断システム。 - 請求項1において、
前記学習手段は、特定した前記検出値及び前記関数の値を無次元量化して互いに比較可能とする正規化処理を施した値を成分とする特徴ベクトルをクラスタリングすることによって、クラスタ中心及びクラスタ半径で表される少なくとも一つのクラスタを前記正常モデルとして学習し、
前記診断手段は、診断対象のセンサデータに正規化処理を施して特徴ベクトルに変換し、前記クラスタのうち、当該特徴ベクトルに最も近いクラスタ中心を有するものを特定し、当該クラスタのクラスタ中心と当該特徴ベクトルとの距離がクラスタ半径に対して占める割合を異常測度として算出し、前記異常測度に基づいて、前記機械設備の異常予兆の有無を診断すること
を特徴とする異常予兆診断システム。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項において、
前記学習手段は、前記診断手段によって異常予兆なしと診断されたセンサデータを学習対象として追加し、追加したセンサデータを含めて前記正常モデルを再学習すること
を特徴とする異常予兆診断システム。 - 所定の運転プロセスが繰り返される機械設備に設置されたセンサの検出値を含むセンサデータを取得し、
前記機械設備が正常であることが既知である期間のセンサデータの時系列的な波形において、前記運転プロセスが開始されてから所定時間が経過したときの前記センサの検出値を特定するとともに、前記運転プロセスが開始されてからの時間の経過に伴って時間の経過に対しそれぞれ異なる値を出力する所定の関数を用いて、前記運転プロセスが開始されてから前記所定時間が経過したときの値を特定し、特定した前記検出値及び前記関数の値に基づいて、前記波形の正常モデルを学習し、
診断対象のセンサデータの時系列的な波形において、前記運転プロセスが開始されてから前記所定時間が経過したときの前記センサの検出値及び前記関数の値と、前記正常モデルと、の比較に基づいて、前記機械設備の異常予兆の有無を診断すること
を特徴とする異常予兆診断方法。
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