以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、本発明の実施形態は、下記の第1の特徴及び第2の特徴の両方(または一方)を有するが、以下では説明の便宜上、第1の特徴と第2の特徴とを別々に説明する。
<<第1の特徴>>
〔実施の形態1〕
(1)タッチパネルシステム1の構成
図1は、本発明の実施の一形態に係るタッチパネルシステム1の基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1は、表示装置2、タッチパネル3、タッチパネルコントローラ4、およびドライブライン駆動回路5を備えており、ノイズキャンセル機能を有する。以下では、使用者が利用する側を、前面(または上方)として説明する。
表示装置2は、図示しない表示画面(表示部)を備えている。表示画面には、操作用の各種アイコンや、使用者の操作指示に応じた文字情報等が表示される。表示装置2は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED;field emission display)等から構成される。これらのディスプレイは、日常的な電子機器に多用されており、汎用性の高いタッチパネルシステム1が構成される。表示装置2は、任意の構成とすればよく、特に限定されない。
タッチパネル3は、使用者が指またはペン等により、タッチパネル3の表面をタッチ(押圧)操作することによって、各種の操作指示を入力する。タッチパネル3は、表示画面を覆うように、表示装置2の前面(上部)に積層されている。
タッチパネル3は、同一面上(同一面内)に設けられた2つのセンサ(主センサ31,副センサ32を各1個)を備えている。主センサ31と副センサ32とは、互いに隣接して設けられている。主センサ31および副センサ32は、いずれも静電容量方式のセンサである。静電容量方式のセンサが設置されたタッチパネル3は、透過率が高く、耐久性も有するという利点を有する。
主センサ(主センサ部)31は、タッチパネル3上のタッチ操作される領域(タッチ領域)に設けられており、使用者によるタッチパネル3のタッチ操作を検出する。タッチ操作には、ダブルクリック操作、スライド操作、シングルクリック操作、ドラッグ操作等が
含まれる。主センサ31は、線状電極からなるセンスライン33を備えている。センスライン33の一端は、タッチパネルコントローラ4に接続されている。これにより、主センサ31で検出された信号は、センスライン33を介して、タッチパネルコントローラ4に
出力される。つまり、主センサ31で検出されたタッチ操作に応じた信号が、タッチパネルコントローラ4に出力される。
副センサ(副センサ部)32は、タッチパネル3に反映されるノイズ成分を検出する。副センサ32は、タッチパネル3上のタッチ操作されない領域(非タッチ領域)に設けられている。このため、副センサ32は、使用者がタッチ操作により接触することなく、タッチパネルシステム1で発生する各種ノイズを検出する。このように、副センサ32は、主センサ31とは異なり、タッチ操作に応じた信号は検出しない。つまり、副センサ32は、使用者がタッチ操作により接触することなく、タッチパネル3に発生するノイズを検出するようになっている。
副センサ32は、線状電極からなるサブセンスライン34を備えている。サブセンスライン34は、センスライン33に対して、平行である(センスライン33と同一方向に延びている)。サブセンスライン34の一端は、タッチパネルコントローラ4に接続されている。これにより、副センサ32で検出された信号は、サブセンスライン34を介して、タッチパネルコントローラ4に出力される。
一方、タッチパネル3は、センスライン33およびサブセンスライン34に直交するように交差したドライブライン35を備えている。ドライブライン35は、線状電極からなるものである。センスライン33またはサブセンスライン34とドライブライン35との
交差部分には、静電容量が形成されている。すなわち、センスライン33とドライブライン35との間、および、サブセンスライン34とドライブライン35との間には、それぞれ、静電容量が形成されている。ドライブライン35は、ドライブライン駆動回路(センサ駆動部)5に接続されており、ドライブライン35には、タッチパネルシステム1の起動時に、一定周期で電位が印加される。
センスライン33、サブセンスライン34、およびドライブライン35は、いずれも、例えば、ITO(Indium Thin Oxide:酸化インジウムスズ)などの透明な配線材料から形成することができる。センスライン33、サブセンスライン34、およびドライブライン35は、タッチパネル3におけるセンサ電極であるともいえる。
なお、ドライブライン35は、透明基板または透明フィルム(図示せず)上に設けられている。さらに、ドライブライン35は、絶縁層(図示せず)により被覆されている。この絶縁層上には、センスライン33およびサブセンスライン34が設けられている。このように、センスライン33またはサブセンスライン34と、ドライブライン35とは、絶縁層を介して互いに絶縁されると共に、容量結合している。センスライン33およびサブセンスライン34は、保護層(図示せず)により被覆されている。つまり、タッチパネル3では、保護層が、最も前面側(使用者側)に配置されている。
タッチパネルコントローラ4は、タッチパネル3の主センサ31および副センサ32から入力された信号(データ)を読み取る。タッチパネルシステム1は、静電容量方式のセンサを備えているため、タッチパネルコントローラ4は、タッチパネル3で発生した静電容量を検出する。具体的にはタッチパネルコントローラ4は、センスライン33−ドライブライン35間の静電容量の変化、サブセンスライン34−ドライブライン35間の静電容量の変化を検出する。タッチパネルコントローラ4は、減算部41、座標検出部42(タッチ検出部)、およびCPU43を備えている。
減算部41は、主センサ31から出力された信号を受信するための入力端子(主センサ出力用の入力端子)と、副センサ32から出力された信号を受信するための入力端子(副センサ出力用の入力端子)とを備えている。減算部41は、主センサ出力用の入力端子に入力された信号から、副センサ出力用の入力端子に入力された信号を減算する。減算部41で減算処理された信号は、座標検出部42に出力される。なお、減算部41に入力される信号は、デジタル信号であっても、アナログ信号であってもよい。すなわち、減算部41への入力信号は、減算部41の構成に応じた信号であればよい。
座標検出部42は、減算部41で減算処理された信号に基づいて、タッチ操作の有無情報を検出する。例えば、座標検出部42は、減算部41からの出力信号値が所定の閾値以上の場合、タッチ操作「有」の信号を、CPU43に出力する。なお、タッチパネルシステム1では、主センサ31が単数であるため、座標検出部42は、タッチ操作の有無情報を検出する。一方、主センサ31が複数の場合、座標検出部42は、使用者のタッチ位置の座標値も検出することになる。
CPU43は、座標検出部42から出力された情報を一定間隔で取り込み、取り込んだ情報に応じて表示装置2に出力等を行う。
ドライブライン駆動回路5は、ドライブライン35に接続されており、タッチパネルシステム1の起動時に、ドライブライン35に一定周期で電位を印加する。
(2)タッチパネルシステム1のノイズ処理
タッチパネルシステム1は、タッチパネルコントローラ4で検出される静電容量の変化に基づいて、タッチ操作の有無を検出する。しかし、タッチパネル3が表示装置2の前面(使用者側)に接着されている。このため、タッチパネルシステム1は、表示装置2が発生するクロック等のノイズだけでなく、その他外来からのノイズの影響を受けやすい。その結果、タッチ操作の検出感度(座標検出部42の検出感度)が低下してしまう。
そこで、タッチパネルシステム1は、このようなノイズを除去する対策として、副センサ32と減算部41とを備えている。図2に基づいて、タッチパネルシステム1のノイズキャンセル処理について説明する。図2は、タッチパネルシステム1の基本処理であるノイズキャンセル処理を示すフローチャートである。
タッチパネルシステム1を起動すると、ドライブライン駆動回路5からドライブライン35に一定周期で電位が印加される。使用者がタッチパネル3にタッチ操作を行うと、主センサ31および副センサ32の両センサが、減算部41に信号を出力する。
ここで、表示装置2が発生するクロック等のノイズ、および、その他外来からのノイズは、タッチパネル3に反映される。このため、主センサ31および副センサ32では、各種ノイズ成分が検出される。すなわち、主センサ31からの出力信号には、タッチ操作本来の信号に、ノイズ信号(ノイズ成分)が加算されている。一方、副センサ32はタッチ操作を検出しないようになっている。このため、副センサ32からの出力信号には、ノイズ信号(ノイズ成分)が含まれるが、タッチ操作の信号は含まれない(F201)。
タッチパネルシステム1では、主センサ31と副センサ32とが、互いに同一面内に設けられており、かつ、互いに隣接して設けられている。このため、主センサ31の出力信号に含まれるノイズ信号値と、副センサ32の出力信号に含まれるノイズ信号値とは、基本的に同じ値であるとみなすことができる。そこで、タッチパネルコントローラ4内に存在する減算部41は、主センサ31からの入力信号(信号値)から、副センサ32からの入力信号(信号値)を減算する処理を実行する(F202)。つまり、減算部41は、センスライン33とサブセンスライン34との差分をとる。これにより、主センサ31からの出力信号から、ノイズ信号が除去される。従って、タッチ操作により生じたタッチ操作本来の信号値が得られることになる。
このようにして減算処理された信号(タッチ操作本来の信号)は、タッチパネルコントローラ4内に存在する座標検出部42に出力される(F203)。これにより、タッチ操作本来の信号が、座標検出部42に出力される。座標検出部42は、タッチ操作本来の信号処理により、タッチ操作の有無を検出する。従って、座標検出部42の検出感度(タッチ操作の有無の検出精度など)の低下を抑制することができる。
このように、タッチパネルシステム1では、減算部41が、センスライン33とサブセンスライン34との差分をとり、多様なノイズ成分が含まれるセンスライン33からの入力信号から、ノイズ成分をキャンセルする。つまり、減算部41は、センスライン33からの入力信号からノイズ信号を除去し、タッチ操作により生じた本来の信号を抽出する。従って、多様な種類のノイズを確実にキャンセルすることのできるタッチパネルシステム1を提供することができる。
一方、タッチパネルシステム1のノイズキャンセル処理を視覚的に示すと、図3のようになる。図3は、タッチパネルシステム1における減算部41で処理される信号の波形を示す図である。図3の(a)は主センサ31からの出力信号、図3の(b)は副センサ32からの出力信号、図3の(c)は減算部41で処理された信号を示している。図3に示す各信号は、使用者がタッチ操作したときの信号である。
タッチパネルシステム1では、使用者がタッチ操作を行うと、タッチ操作を検出する主センサ31の容量が増加する(図3の(a))。つまり、主センサ31(センスライン33)からの出力信号値が増加する。しかし、タッチ操作されたときの主センサ31からの出力信号には、タッチ操作本来の信号だけでなく、各種ノイズ(表示装置2が発生するクロック等のノイズ、外来からのノイズ)信号が加算されている。
一方、副センサ32は、タッチ操作を検出しないため、副センサ32(サブセンスライン)の容量は、タッチ操作によっては増加しない。つまり、副センサ32からの出力信号には、タッチ操作の信号は含まれず、タッチパネル3に反映されたノイズ成分が含まれる(図3の(b))。
減算部41は、主センサ31からの出力信号から、副センサ32からの出力信号を減算する(図3の(a)の信号値−図3の(b)の信号値)。この減算処理によって、図3の(c)のような、主センサ31からの出力信号から、副センサ32から出力されたノイズ成分が除去される。従って、タッチ操作により生じたタッチ操作本来の信号が得られる。さらに、座標検出部42には、タッチ操作本来の信号が入力されるため、タッチ操作の検出精度は低下しない。
以上のように、本実施形態のタッチパネルシステム1は、タッチパネル3上の同一面内(同一面上)に、主センサ31と副センサ32とが設けられている。これにより、主センサ31および副センサ32からのいずれの出力信号にも、タッチパネル3に反映された各種ノイズ信号が含まれる。さらに、減算部41が、タッチ操作による信号とノイズ信号とを含む主センサ31からの出力信号と、ノイズ信号を含む副センサ32からの出力信号との差分をとる。これにより、主センサ31の出力信号からノイズ成分が除去され、タッチ操作本来の信号が抽出される。従って、タッチパネル3に反映された多様な種類のノイズを確実に除去(キャンセル)することができる。
なお、特許文献1のタッチパネルシステムにおいて、除去対象となるノイズ成分は、ノイズ成分を含む信号中のAC信号成分である。これに対し、タッチパネルシステム1においては、主センサ31および副センサ32からの出力信号に、各種ノイズ成分が含まれている。このため、タッチパネルシステム1において除去対象となるノイズ成分は、AC信号成分に限られない。従って、タッチパネルシステム1は、タッチパネル3に反映されるあらゆるノイズを全てキャンセルすることができる。
タッチパネルシステム1において、副センサ32は、主センサ31と共に、タッチパネル3の同一面内に設けられていればよい。これにより、主センサ31および副センサ32のいずれにおいても、タッチパネル3に反映されるノイズ成分(ノイズ信号)を検出することができる。ただし、副センサ32は、タッチパネル3のタッチ操作を検出しないようになっていることが好ましい。この構成によれば、タッチ操作による信号が副センサ32で検出されなくなるため、副センサ32からの出力信号には、タッチ操作による信号が含まれない。これにより、減算部41の減算処理によって、タッチ操作の信号値が低減されることはない。つまり、主センサ31で検出されたタッチ操作の信号が低減されることなく、ノイズ成分が除去される。従って、タッチ操作の検出感度をより一層高めることができる。
タッチパネルシステム1のように、副センサ32がタッチパネル3上の使用者がタッチ操作されない領域(非タッチ領域)に設けられている場合、タッチ操作による信号が副センサ32で検出されなくなる。このため、副センサ32は、使用者がタッチ操作することなく、タッチパネルに反映されたノイズを検出するが、タッチ操作による信号を検出しないようになっている。従って、副センサ32が、タッチ操作を検出するのを確実に回避することができる。
副センサ32によってノイズ成分を検出する上では、副センサ32は、できる限り、主センサ31の近くに設けられていることが好ましく、主センサ31に隣接して設けられていることがより好ましい。これにより、主センサ31と副センサ32とが、ほぼ同一条件に配置される。特に、副センサ32が、主センサ31に隣接して設けられている場合、主センサ31と副センサ32とが、最も接近して配置される。このため、副センサ32からの出力信号に含まれるノイズ信号値は、主センサ31からの出力信号に含まれるノイズ信号値と同一であるとみなすことができる。これにより、減算部41による減算処理によって、タッチパネル3に反映されたノイズ成分を、より確実に除去することができる。従って、タッチ操作の検出感度をより一層高めることができる。
本実施形態では、静電容量方式のタッチパネル3を備えたタッチパネルシステム1について説明した。しかし、タッチパネル3の動作原理(センサの動作方式)は、静電容量方式に限定されるものではない。例えば、抵抗膜方式、赤外線方式、超音波方式、または電磁誘導結合方式のタッチパネルを備えたタッチパネルシステムも、同様に、ノイズキャンセル機能を発揮する。また、表示装置2の種類も問わずに、ノイズキャンセル機能を発揮する。
本実施形態のタッチパネルシステム1は、タッチパネル式の各種電子機器に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビ、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、携帯ゲーム機、電子フォトフレーム、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)、電子ブック、家電製品(電子レンジ,洗濯機等)、券売機、ATM(Automated Teller Machine)、カーナビゲーション等を挙げることができる。これにより、タッチ操作の検出感度の低下を効果的に抑制することのできる電子機器を提供することができる。
〔実施の形態2〕
(1)タッチパネルシステム1aの構成
図4は、本発明に係る別のタッチパネルシステム1aの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1aの基本的な構成は、実施の形態1のタッチパネルシステム1と略同様である。以下では、タッチパネルシステム1との相違点を中心に、タッチパネルシステム1aについて説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態1にて説明した図面と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
タッチパネルシステム1aは、タッチパネル3aに設けられたセンサの構成が、タッチパネルシステム1と異なる。すなわち、タッチパネル3aが、複数の主センサ31からなる主センサ群31a、および、複数の副センサ32からなる副センサ群32aを備えている。タッチパネルシステム1aは、使用者によるタッチ操作の有無だけでなく、使用者のタッチ操作の位置情報(座標)も検出する。
具体的には、タッチパネルシステム1aでは、タッチパネル3aは、タッチパネル3aの同一面上(同一面内)に、主センサ群31aと、副センサ群32aとを備えている。主センサ群31aと、副センサ群32aとは、互いに隣接して設けられている。主センサ群31aおよび副センサ群32aは、いずれも静電容量方式のセンサから構成されている。
主センサ群(主センサ部)31aは、タッチパネル3a上のタッチ操作される領域(タッチ領域)に設けられており、使用者によるタッチパネル3aのタッチ操作を検出する。主センサ群31aは、格子状に配置された複数の主センサ31から構成されている。主センサ群31aは、L本(Lは2以上の整数)のセンスライン33を備えている。各センスライン33は、互いに平行に、かつ、等間隔に設けられている。各センスライン33上には、M個(Mは2以上の整数)の主センサ31が配置されている。
各センスライン33の一端は、タッチパネルコントローラ4の減算部41に接続されている。これにより、主センサ31で検出された信号は、各センスライン33を介して、減算部41に出力される。つまり、主センサ31で検出されたタッチ操作に応じた信号が、減算部41に出力される。
副センサ群(副センサ部)32aは、タッチパネル3aに反映されるノイズ成分を検出する。副センサ群32aは、タッチパネル3a上のタッチ操作されない領域(非タッチ領域)に設けられている。このため、副センサ群32aは、使用者がタッチ操作により接触することなく、タッチパネルシステム1aで発生する各種ノイズを検出する。このように、副センサ群32aは、主センサ群31aとは異なり、タッチ操作に応じた信号は検出しないようになっている。つまり、副センサ群32aは、使用者がタッチ操作により接触することなく、センサに発生するノイズを検出するようになっている。副センサ群32aは、1本のサブセンスライン34を備えている。サブセンスライン34は、各センスライン33に対して平行である(センスライン33と同一方向に延びている)。サブセンスライン34上には、M個(Mは2以上の整数)の副センサ32が配置されている。つまり、各センスライン33上に配置された主センサ31の個数と、サブセンスライン34上に配置された副センサ32の個数とは、同一である。
サブセンスライン34の一端は、タッチパネルコントローラ4の減算部41に接続されている。これにより、副センサ群32aで検出された信号は、サブセンスライン34を介して、減算部41に出力される。
一方、タッチパネル3aは、各センスライン33およびサブセンスライン34に直交するように交差した、M本(Mは2以上の整数)のドライブライン35を備えている。各ドライブライン35は、互いに平行に、かつ、等間隔に設けられている。各ドライブライン35上には、L個(Lは2以上の整数)の主センサ31と、1個の副センサ32とが配置されている。さらに、各センスライン33またはサブセンスライン34と、各ドライブライン35との交差部分には、静電容量が形成されている。すなわち、各センスライン33と各ドライブライン35との間、および、サブセンスライン34と各ドライブライン35との間には、それぞれ、静電容量が形成されている。ドライブライン35は、図示しないドライブライン駆動回路に接続されており、ドライブライン35には、タッチパネルシステム1aの起動時に、一定周期で電位が印加される。
このように、タッチパネル3aでは、横方向に設けられたセンスライン33およびサブセンスライン34と、縦方向に設けられたドライブライン35とが、二次元マトリクス状に配置されている。なお、センスライン33、サブセンスライン34、ドライブライン35の本数、長さ、幅、間隔等は、タッチパネルシステム1aの用途またはタッチパネル3aのサイズ等により任意に設定することができる。
(2)タッチパネルシステム1aのノイズ処理
タッチパネルシステム1aは、タッチパネルコントローラ4で検出される静電容量の変化に基づいて、タッチ操作の有無およびタッチされた位置を検出する。しかし、タッチパネルシステム1aにおいても、タッチパネルシステム1と同様に、各種ノイズの影響を受けやすい。このため、タッチ操作の検出感度(座標検出部の検出感度)が低下してしまう。具体的には、図5は、図4のタッチパネルシステム1aにおいて、副センサ群32aを備えないタッチパネル3bを示す概略図である。図5のように、タッチパネル3bは、主センサ群31aのみを備え、副センサ群32aを備えていない。すなわち、図5のタッチパネル3bは、ノイズ対策前の構成である。この場合、タッチパネル3bが、各種ノイズの影響を受けてしまう。従って、各センスライン33から出力された信号には、各種ノイズ成分が含まれ、タッチ操作の検出感度が低下してしまう。
そこで、タッチパネルシステム1aでは、このようなノイズを除去する対策として、副センサ群32aと減算部41とを備えている。図6に基づいて、タッチパネルシステム1aのノイズキャンセル処理について説明する。図6は、タッチパネルシステム1aの基本処理であるノイズキャンセル処理を示すフローチャートである。
タッチパネルシステム1aを起動すると、ドライブライン35に一定周期で電位が印加される。使用者がタッチパネル3aにタッチ操作を行うと、主センサ群31aおよび副センサ群32aの両センサ群が、減算部41に信号を出力する。具体的には、使用者がタッチ操作を行うと、タッチ位置に対応する特定の主センサ31の容量が増加する。つまり、その主センサ31(センスライン33)からの出力信号値が増加する。タッチパネルシステム1aは、各ドライブライン35を駆動しつつ、センスライン33およびサブセンスライン34からの出力信号を、減算部41に出力する。
より詳細には、表示装置2が発生するクロック等のノイズ、および、その他外来からのノイズは、タッチパネル3aに反映される。このため、主センサ群31aおよび副センサ群32aでは、各種ノイズ成分が検出される。すなわち、主センサ群31aからの出力信号には、タッチ操作本来の信号に、ノイズ信号(ノイズ成分)が加算されている。一方、副センサ群32aはタッチ操作を検出しないようになっている。このため、副センサ群32aからの出力信号には、ノイズ信号(ノイズ成分)が含まれるが、タッチ操作の信号は含まれない(F501)。
タッチパネルシステム1aでは、主センサ群31aと副センサ群32aとが、互いに同一面内に設けられており、かつ、互いに隣接して設けられている。このため、主センサ群31aの出力信号に含まれるノイズ信号値と、副センサ群32aの出力信号であるノイズ信号値とは、基本的に同じ値であるとみなすことができる。そこで、タッチパネルコントローラ4内に存在する減算部41は、主センサ群31aからの入力信号(信号値)から、副センサ群32aからの入力信号(信号値)を減算する処理を実行する(F502)。つまり、減算部41は、各センスライン33とサブセンスライン34との差分をとる。これにより、主センサ群31aからの出力信号から、ノイズ信号が除去される。従って、タッチ操作により生じたタッチ操作本来の信号値が得られることになる。
このようにして減算処理された信号は、タッチパネルコントローラ4内に存在する座標検出部42に出力される(F503)。これにより、タッチ操作本来の信号が、座標検出部42に出力される。座標検出部42は、タッチ操作本来の信号処理により、タッチ操作の有無およびタッチ位置(座標)を検出する。従って、座標検出部42の検出感度(タッチ操作の有無の検出精度、タッチ位置の検出感度など)の低下を抑制することができる。
なお、タッチパネルシステム1aでは、タッチ位置に対応する特定の主センサ31を含むセンスライン33からの出力信号が、図3の(a)のような波形を有し、副センサ群32a(サブセンスライン34)からの出力信号が、図3の(b)のような波形を有する。減算部41は、主センサ群31aからの出力信号から、副センサ群32aからの出力信号を減算する。この減算処理によって、図3の(c)のような、主センサ群31aからの出力信号から、副センサ群32aから出力されたノイズ成分が除去される。従って、タッチ操作により生じたタッチ操作本来の信号が得られる。さらに、座標検出部42には、タッチ操作本来の信号が入力されるため、タッチ操作の検出精度もタッチ位置の検出精度も低下しない。このため、実際のタッチ位置と、座標検出部42で検出された検出位置とのズレを小さくすることができる。
以上のように、タッチパネルシステム1aは、ドライブライン35を駆動しつつ、使用者がタッチ操作を行うことによる主センサ群31aの容量値の変化をセンスライン33にて読み取る。また、ノイズ成分をサブセンスライン34にて読み取る。さらに、減算部41にて、センスライン33とサブセンスライン34との差分をとり、ノイズ成分を除去(キャンセル)することができる。
タッチパネルシステム1aは、主センサ群31aが、縦方向および横方向にマトリクス状に配置された複数の主センサ31から構成されている。これにより、タッチパネルシステム1と同様の効果に加えて、座標検出部42にて、タッチされた座標を検出することができる。つまり、タッチ操作の有無と共に、タッチ位置(座標値)を検出することができる。
タッチパネルシステム1と同様に、タッチパネルシステム1aにおいても、除去対象となるノイズ成分は、AC信号成分に限られない。従って、タッチパネルシステム1aも、タッチパネル3aに反映されるあらゆるノイズを全てキャンセルすることができる。
〔実施の形態3〕
(1)タッチパネルシステム1bの構成
図7は、本発明に係る別のタッチパネルシステム1bの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1bの基本的な構成は、実施の形態2のタッチパネルシステム1aと略同様である。以下では、タッチパネルシステム1aとの相違点を中心に、タッチパネルシステム1bについて説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態1,2にて説明した図面と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
タッチパネル3bは、実施の形態2のタッチパネルシステム1aのタッチパネル3aと同様の構成である。すなわち、タッチパネル3bは、複数本(図7では5本)のドライブライン35と、各ドライブライン35に交差する複数本(図7では7本)のセンスライン33と、各ドライブライン35に直交し、センスライン33と平行な1本のサブセンスライン34とを備えている。センスライン33とドライブライン35、および、サブセンスライン34とドライブライン35とは、それぞれ互いに絶縁され、かつ、容量結合している。
以下では、1本のサブセンスライン34と、7本のセンスライン33とからなる8本のセンス/サブセンス配列を、配列(1)〜配列(8)として区別して説明する。
タッチパネルコントローラ4は、入力側から順に、スイッチSW、減算部41、記憶部45a〜45d、加算部46を備えている。なお、図示しないが、タッチパネルコントローラ4は、座標検出部42とCPU43も備えている(図1)。このように、タッチパネルシステム1bは、タッチパネルコントローラ4の構成が、タッチパネルシステム1,1aとは異なる。
スイッチSWは、センスライン33またはサブセンスライン34から減算部41に入力される信号を切り替える。より詳細には、スイッチSWは、上下に2つの端子を備えており、一方の端子が選択される。図7は、スイッチSWが下側の端子を選択した状態である。
減算部41は、スイッチSWで選択された配列(1)〜(8)の信号の差分信号処理を行う。すなわち、減算部41は、隣接するセンスライン33間の差分信号処理、および、隣接するセンスライン33とサブセンスライン34との差分信号処理を行う。例えば、図7のように、スイッチSWにより下側の端子が選択されている場合、減算部41は、配列(8)−配列(7)、配列(6)−配列(5)、配列(4)−配列(3)、および配列(2)−配列(1)の各差分信号処理を行う。一方、図示しないが、スイッチSWにより上側の端子が選択されている場合、減算部41は、配列(7)−配列(6)、配列(5)−配列(4)、および配列(3)−配列(2)の各差分信号処理を行う。
記憶部45a〜45dは、スイッチSWにより一方の端子が選択された場合の減算部41による差分処理された信号(差分処理信号)を記憶する。記憶部45a〜45dに記憶された差分処理信号は、加算部46に出力される。なお、スイッチSWにより他方の端子が選択された場合、差分処理信号は、記憶部45a〜45dを経由せず、直接加算部46に出力される。
加算部46は、減算部41および記憶部45a〜45dから入力される、隣接するセンスライン33の差分処理信号を加算し、加算処理した結果を出力する。また、加算部46は、記憶部45aに記憶されたサブセンスライン34とそれに隣接するセンスライン33との差分処理信号(配列(2)−配列(1))を出力する。加算部46は、最終的に、配列(2)−配列(1)、配列(3)−配列(1)、配列(4)−配列(1)、配列(5)−配列(1)、配列(6)−配列(1)、配列(7)−配列(1)、配列(8)−配列(1)の各信号を出力する。つまり、加算部46から出力される信号は、センスライン33に含まれるノイズ信号(配列(1)の信号)が除去されている。しかも、減算部41は隣接するセンスライン33間の差分信号処理を行っている。従って、ノイズ信号がより確実に除去された信号が、加算部46から出力される。
(2)タッチパネルシステム1bのノイズ処理
図7および図8に基づいて、タッチパネルシステム1bのノイズ処理について説明する。図8は、タッチパネルシステム1bの基本処理であるノイズキャンセル処理を示すフローチャートである。
タッチパネルシステム1bを起動すると、ドライブライン35に一定周期で電位が印加される。使用者がタッチパネル3bにタッチ操作を行うと、タッチ位置に対応する特定のセンスライン33の容量が増加する。つまり、そのセンスライン33からの出力信号値が増加する。タッチパネルシステム1bは、各ドライブライン35を駆動しつつ、センスライン33およびサブセンスライン34からの出力信号を、タッチパネルコントローラ4に出力する。このように、タッチパネルシステム1bは、ドライブライン35を駆動しつつ、センスライン33およびサブセンスライン34の容量変化を検出し、タッチ操作の有無およびタッチ位置を検出する。
より詳細には、表示装置2が発生するクロック等のノイズ、および、その他外来からのノイズは、タッチパネル3bに反映される。このため、主センサ群31aおよび副センサ群32aでは、各種ノイズ成分が検出される。すなわち、センスライン33からの出力信号には、タッチ操作本来の信号に、ノイズ信号(ノイズ成分)が加算されている。一方、サブセンスライン34はタッチ操作を検出しないようになっている。このため、サブセンスライン34からの出力信号には、ノイズ信号(ノイズ成分)が含まれるが、タッチ操作の信号は含まれない(F601)。
次に、スイッチSWにおいて、下側の端子を選択する(F602)。そして、減算部41において、センスライン33(センスラインSn)と、あるセンスライン33に隣接する2つのセンスライン33のうち、サブセンスライン34に近い方のセンスライン(センスラインSn+1)との間の差分を取る(センスライン(Sn+1)−Sn:第1の差分)。このとき、サブセンスライン34に最も近いセンスライン33については、サブセンスライン34との差分(第3の差分)を取る(F603)。
図7の配列(1)〜(8)の場合、減算部41は、
・配列(2)−配列(1)(この差分値をAとする)
・配列(4)−配列(3)(この差分値をCとする)
・配列(6)−配列(5)(この差分値をEとする)
・配列(8)−配列(7)(この差分値をGとする)
の4つの差分信号処理を行う。つまり、ステップF603では、サブセンスライン34を含む配列(1)〜(8)の差分信号処理を行う。
減算部41で算出された差分値A,C,E,Gは、記憶部45a〜45dに記憶される。すなわち、記憶部45aは差分値A,記憶部45bは差分値C、記憶部45cは差分値E、記憶部45dは差分値Gを、それぞれ記憶する(F604)。
次に、下側の端子が選択されているスイッチSWを、上側の端子を選択する(閉ざす)ように切り替える(F605)。そして、減算部41において、F603と同様に処理する。すなわち、センスライン33(センスラインSn)と、あるセンスライン33に隣接する2つのセンスライン33のうち、サブセンスライン34に遠い方のセンスライン(センスラインSn−1)との間の差分信号処理(センスラインSn−(Sn−1)):第2の差分)を行う。(F606)。
図7の配列(1)〜(8)の場合、減算部41は、
・配列(3)−配列(2)(この差分値をBとする)
・配列(5)−配列(4)(この差分値をDとする)
・配列(7)−配列(6)(この差分値をFとする)
の3つの差分信号処理を行う。つまり、ステップF606では、サブセンスライン34を含まない配列(2)〜(7)の差分信号処理を行う。
次に、加算部46は、ステップF606で求めた差分値B,D,Fと、記憶部45a〜45dに記憶された差分値A,C,E,Gの加算処理を行う。つまり、スイッチSWにより下側の端子が選択された場合の差分値(差分値A,C,E,G)と、上側の端子が選択された場合の差分値(差分値B,D,F)とを加算する(F607)。
図7の配列(1)〜(8)の場合、加算部46は、まず記憶部45aに記憶された差分値A(配列(2)−配列(1)信号)と、減算部41から出力された差分値B(配列(3)−配列(2)信号)を加算する。この加算処理は、
差分値A+差分値B={配列(2)−配列(1)}+{配列(3)−配列(2)}
=配列(3)−配列(1)(この差分値を差分値Hとする)
となり、配列(3)−配列(1)信号が取得できる。加算部46は、このような処理を順次進める。
すなわち、この差分値H(配列(3)−配列(1)信号)に、記憶部45bに記憶された差分値C(配列(4)−配列(3)信号)を加算する。その結果、配列(4)−配列(1)信号(差分値I)が取得できる。
次に、この差分値I(配列(4)−配列(1)信号)に、減算部41から出力された差分値D(配列(5)−配列(4)信号)を加算する。その結果、配列(5)−配列(1)信号(差分値J)が取得できる。
次に、この差分値J(配列(5)−配列(1)信号)に、記憶部45cに記憶された差分値E(配列(6)−配列(5)信号)を加算する。その結果、配列(6)−配列(1)信号(差分値K)が取得できる。
次に、この差分値K(配列(6)−配列(1)信号)に、減算部41から出力された差分値F(配列(7)−配列(6)信号)を加算する。その結果、配列(7)−配列(1)信号(差分値L)が取得できる。
次に、この差分値L(配列(7)−配列(1)信号)に、記憶部45dに記憶された差分値G(配列(8)−配列(7)信号)を加算する。その結果、配列(8)−配列(1)信号(差分値M)が取得できる。
なお、記憶部45aに記憶された差分値A(つまり、配列(2)−配列(1)信号)については、加算部46で加算処理をされずに出力される。
このように、加算部46からは、
・配列(2)−配列(1)信号=差分値A
・配列(3)−配列(1)信号=差分値H
・配列(4)−配列(1)信号=差分値I
・配列(5)−配列(1)信号=差分値J
・配列(6)−配列(1)信号=差分値K
・配列(7)−配列(1)信号=差分値L
・配列(8)−配列(1)信号=差分値M
の各信号が出力される。
図7においては、配列(2)〜配列(8)がセンスライン33であり、配列(1)がサブセンスライン34である。加算部46による加算処理の結果、配列(2)〜配列(8)の各信号から、配列(1)の信号(ノイズ信号)が除去される。このため、加算部46からの出力信号は、センスライン33の信号に含まれるノイズ信号を除去したものとなり、タッチ操作により生じたタッチ操作本来の信号値が得られることになる。ノイズ信号が除去された加算部46の出力信号は、タッチパネルコントローラ4内の座標検出部42に出力される。つまり、タッチ操作本来の信号が、座標検出部42に出力される(F608)。
以上のように、タッチパネルシステム1bは、隣接するセンスライン33間で差分信号値を取得する。つまり、ノイズの相関性がより高い隣接するセンスライン33間の差分を取ることになる。さらに、各センスライン33の出力信号から、サブセンスライン34の信号(ノイズ信号)も除去される。従って、タッチパネルシステム1bは、実施の形態1,2のタッチパネルシステム1,1aに比べて、より確実にノイズを除去することができる。
また、加算部46の加算処理を、サブセンスライン34側から順に(サブセンスライン34からの距離が近い順に)行うことによって、加算処理結果を次の加算処理に利用しながら、加算処理を進め、ノイズを除去することができる。
〔実施の形態4〕
本発明のタッチパネルシステムの駆動方法は、特に限定されるものではないが、直交系列駆動方式であることが好ましい。言い換えれば、ドライブライン35を並列駆動することが好ましい。図9は、従来のタッチパネルシステムにおけるタッチパネルの駆動方式を示す図である。図10は、本発明のタッチパネルシステムにおけるタッチパネルの駆動方式(直交系列駆動方式)を示す図である。
図9は、タッチパネルから抽出した1つのセンスラインに、4つのセンサがある場合を示している。図9で示すように、従来のタッチパネルシステムは、ドライブラインの駆動に際し、駆動するドライブラインには+Vボルトを印加し、ドライブラインを逐次駆動するようになっている。
具体的には、1回目のドライブラインの駆動は、最も左側のセンサに+Vボルトを印加する。これにより、Voutの1回目の測定結果(X1)は、
X1=C1×V/Cint
となる。
同様に、2回目のドライブラインの駆動は、左から2番目のセンサに+Vボルトを印加する。これにより、Voutの2回目の測定結果(X2)は、
X2=C2×V/Cint
となる。
3回目のドライブラインの駆動は、左から3番目のセンサに+Vボルトを印加する。これにより、Voutの3回目の測定結果(X3)は、
X3=C3×V/Cint
となる。
4回目のドライブラインの駆動は、最も右側のセンサに+Vボルトを印加する。これにより、Voutの4回目の測定結果(X4)は、
X4=C4×V/Cint
となる。
これに対し、図10も図9と同様に、タッチパネルから抽出した1つのセンスラインに、4つのセンサがある場合を示している。図10のように、直交系列駆動方式の場合、ドライブラインの駆動に際し、全てのドライブラインに、+Vボルト、あるいは、−Vボルトを印加する。つまり、直交系列駆動方式では、ドライブラインが並列駆動される。
具体的には、1回目のドライブラインの駆動は、全てのセンサに+Vボルトを印加する。これにより、Voutの1回目の測定結果(Y1)は、
Y1=(C1+C2+C3+C4)×V/Cint
となる。
2回目のドライブラインの駆動は、最も左側のセンサに+Vボルト、左から2番目のセンサに−Vボルト、左から3番目のセンサに+Vボルト、最も右側のセンサに−Vボルトを印加する。これにより、Voutの2回目の測定結果(Y2)は、
Y2=(C1−C2+C3−C4)×V/Cint
となる。
3回目のドライブラインの駆動は、最も左側のセンサに+Vボルト、左から2番目のセンサに+Vボルト、左から3番目のセンサに−Vボルト、最も右側のセンサに−Vボルトを印加する。これにより、Voutの3回目の測定結果(Y3)は、
Y3=(C1+C2−C3−C4)×V/Cint
となる。
4回目のドライブラインの駆動は、最も左側のセンサに+Vボルト、左から2番目のセンサに−Vボルト、左から3番目のセンサに−Vボルト、最も右側のセンサに+Vボルトを印加する。これにより、Voutの4回目の測定結果(Y4)は、
Y4=(C1−C2−C3+C4)×V/Cint
となる。
図10において、容量値(C1、C2、C3、C4)の値は、出力系列(Y1、Y2、Y3、Y4)と直交符号diとの内積演算により求めることが可能である。この式が成立するのは、直交符号diの直交性のためである。ここで符号diとは、各ドライブラインに印加した正負の電圧の符号を示す。すなわち、符号d1は、最も左側のセンサに印加した電圧の符号であり、「+1,+1,+1,+1」となる。符号d2は、左から2番目のセンサに印加した電圧の符号であり、「+1,−1,+1,−1」となる。符号d3は左から3番目のセンサに印加した電圧の符号であり、「+1,+1,−1,−1」となる。符号d4は最も左側のセンサに印加した電圧の符号であり、「+1,−1,−1,+1」となる。
C1、C2、C3、C4の値を、出力系列Y1、Y2、Y3、Y4と、符号d1、d2、d3、d4との内積演算により求めると、
C1=1×Y1+1×Y2+1×Y3+1×Y4=4C1×V/Cint
C2=1×Y1+(−1)×Y2+1×Y3+(−1)×Y4=4C2×V/Cint
C3=1×Y1+1×Y2+(−1)×Y3+(−1)×Y4=4C3×V/Cint
C4=1×Y1+(−1)×Y2+(−1)×Y3+(−1)×Y4
=4C3×V/Cint
となる。
このように、符号diの直交性により、符号diと出力系列Yiとの内積演算によりCiが求められる。この結果を、図9に示す従来の駆動方式と比較すると、同一の駆動回数で4倍の値を検出できることとなる。図11は、図9の駆動方式のタッチパネルによって、図10の駆動方式のタッチパネルと同等の感度を得るために必要な処理を示す図である。図11のように、図9の駆動方式で、図10の駆動方式と同等の感度を得るためには、同一ドライブラインの駆動を4回繰り返し、その結果を加算する必要がある。すなわち、ドライブラインの駆動時間は、4倍となる。逆に言えば、図10に示す駆動方式によって、図9に示す従来の駆動方式と同等の感度を得るためには、ドライブラインの駆動時間が、図9に示す駆動方式の場合の1/4に短縮される。従って、タッチパネルシステムの消費電力を低減することが可能となる。
図12は、このような直交系列駆動方式のタッチパネル3を備えたタッチパネルシステム1cを示す概略図である。すなわち、図12のタッチパネルシステム1cは、図10で示した4本のドライブライン、1本のセンスラインを一般化して示している。
具体的には、タッチパネルシステム1cは、M本のドライブライン35とL本のセンスライン33(M,Lはいずれも自然数)の間に、マトリクス状に静電容量が形成されている。タッチパネルシステム1cでは、これら静電容量のマトリックスCij(i=1,…,M,j=1,…,L)に対し、+1と−1から構成される互いに直交する符号長Nの符号di=(di1,…,diN)(i=1,…,M)を用いて、+1の場合は+Vボルト、−1の場合は−VボルトになるようにM本のドライブライン35を並列に全て同時に駆動する。そして、センスライン33毎に読み出した出力系列sj=(sj1,…,sjN)(j=1,…,L)と、符号diとの内積演算di・sj=Σ(k=1,…,N)dik・sjkにより、容量値Cijを推定するようになっている。タッチパネルシステム1cは、このような内積演算を行うために、電荷積分器47(復号部)を備えている。電荷積分器47からの出力信号(Vout)の信号強度は、
Vout=Cf×Vdrive×N/Cint
によって求められる。
出力系列sjは、
sj=(sj1,…,sjN)
=(Σ(k=1,…,M)Ckj×dk1,…,Σ(k=1,…,M)Ckj×dkN)×(Vdrive/Cint)
=(Σ(k=1,…,M)Ckj×(dk1,…,dkN)×(Vdrive/Cint)
=Σ(k=1,…,M)(Ckj×dk)×(Vdrive/Cint)
となる。
符号diと出力系列sjとの内積は、
di・sj=di・(Σ(k=1,…,M)(Ckj×dk)×(Vdrive/Cint))
=Σ(k=1,…,M)(Ckj×di・dk)×(Vdrive/Cint)
=Σ(k=1,…,M)(Ckj×N×δik)×(Vdrive/Cint) [δik=1 if i=k, 0 if else]
=Cij×N×(Vdrive/Cint)
となる。
このように、タッチパネルシステム1cによれば、直交系列駆動方式によりタッチパネル3を駆動する。このため、符号diと出力系列sjとの内積を算出することにより、容量Cijの信号がN(符号長)倍されて求まると一般化される。この駆動方式による効果は、ドライブライン35の本数Mに依存せず、キャパシタの信号強度はN倍になる。また、逆に言えば、直交系列駆動方式を採用することによって、図9に示す従来の駆動方式と同等の感度を得るためには、ドライブラインの駆動時間が、図9に示す駆動方式の場合の1/Nに短縮される。つまり、ドライブラインの駆動回数を減らすことができる。従って、タッチパネルシステム1cの消費電力を低減することが可能となる。
〔実施の形態5〕
図13は、本実施形態に係るタッチパネルシステム1dの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1dは、上述した図7で示されるノイズキャンセル機能付きタッチパネルシステム1bに対し、図10,図12で示されるタッチパネルシステム1cにおけるドライブライン35の直交系列駆動方式を適用したものである。タッチパネルシステム1dの動作については、上述したタッチパネルシステム1b,1cと同様であるため、説明を省略する。
タッチパネルシステム1dによれば、隣接するセンスライン33間で差分信号値を取得する。つまり、ノイズの相関性がより高い隣接するセンスライン33間の差分を取ることになる。さらに、各センスライン33の出力信号から、サブセンスライン34の信号(ノイズ信号)も除去される。従って、タッチパネルシステム1dは、実施の形態1,2のタッチパネルシステム1,1aに比べて、より確実にノイズを除去することができる。さらに、容量Cijの信号が、N(符号長)倍されて求まるため、ドライブライン35の数に依存せず、キャパシタの信号強度がN倍になる。また、直交系列駆動方式を採用することによって、図9に示す従来の駆動方式と同等の感度を得るためには、ドライブラインの駆動時間が、図9に示す駆動方式の場合の1/Nに短縮される。つまり、ドライブラインの駆動回数を減らすことができる。従って、タッチパネルシステム1dの消費電力を低減することが可能となる。
〔実施の形態6〕
図14は、本実施形態に係るタッチパネルシステム1eの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1eは、減算部41の構成が異なる。
タッチパネル3bのセンスライン33、サブセンスライン34からの出力信号は、アナログ信号である。そこで、減算部41は、AD変換部48(第3のAD変換部)とデジタル減算器(図示せず)とを備えている。
これにより、タッチパネル3bからの出力信号(アナログ信号)は、減算部41のAD変換部48にて、デジタル信号に変換される。デジタル減算器は、変換されたデジタル信号を用いて、図7のタッチパネルシステム1bと同様に減算処理を行う。
このように、タッチパネルシステム1eは、タッチパネル3bから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換した後、減算処理を行うことにより、ノイズを除去することができる。
〔実施の形態7〕
図15は、本実施形態に係るタッチパネルシステム1fの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1fは、減算部41の構成が異なる。
タッチパネル3bのセンスライン33、サブセンスライン34からの出力信号は、アナログ信号である。そこで、減算部41は、差動増幅器49とAD変換部48とを備えている。
これにより、差動増幅器49は、タッチパネル3bからの出力信号(アナログ信号)を、アナログ信号のまま、図7のタッチパネルシステム1bと同様に減算処理を行う。AD変換部48(第4のAD変換部)は、減算処理されたアナログ信号を、デジタル信号に変換する。
このように、タッチパネルシステム1fは、タッチパネル3bから出力されるアナログ信号を、アナログ信号のまま減算処理した後、デジタル信号に変換して、ノイズを除去することができる。
〔実施の形態8〕
図16は、本実施形態に係るタッチパネルシステム1gの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1gは、減算部41の構成が異なる。タッチパネルシステム1gは、図15のタッチパネルシステム1fにおける差動増幅器49の代わりに、全差動増幅器50を備えている。
タッチパネル3bのセンスライン33、サブセンスライン34からの出力信号は、アナログ信号である。そこで、減算部41は、全差動増幅器50とAD変換部48とを備えている。
これにより、全差動増幅器50は、タッチパネル3bからの出力信号(アナログ信号)を、アナログ信号のまま、図7のタッチパネルシステム1bと同様に減算処理を行う。AD変換部48は、減算処理されたアナログ信号を、デジタル信号に変換する。
図17は、全差動増幅器50の一例を示す回路図である。全差動増幅器50は、差動増幅器に対称に、2対の静電容量およびスイッチが配置されている。具体的には、非反転入力端子(+)と反転入力端子(−)とには、隣接するセンスライン33からの信号が入力される。差動増幅器の反転出力端子(−)と非反転入力端子(+)との間、および、差動増幅器の非反転出力端子(+)と反転入力端子(−)の間には、同じ容量(フィードバック容量)が接続されている。さらに、反転出力端子(−)と非反転入力端子(+)との間、および、非反転出力端子(+)と反転入力端子(−)のと間には、それぞれスイッチが接続されている。
このように、タッチパネルシステム1gは、タッチパネル3bから出力されるアナログ信号を、アナログ信号のまま減算処理した後、デジタル信号に変換して、ノイズを除去することができる。
〔実施の形態9〕
図18は、本実施形態に係るタッチパネルシステム1hの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1hは、減算部41の構成及びタッチパネル3bの駆動方式が異なる。タッチパネルシステム1hは、図15のタッチパネルシステム1fにおける差動増幅器49の代わりに、全差動増幅器50を備えている。
タッチパネル3bのセンスライン33、サブセンスライン34からの出力信号は、アナログ信号である。そこで、減算部41は、全差動増幅器50とAD変換部48とを備えている。
これにより、全差動増幅器50は、タッチパネル3bからの出力信号(アナログ信号)を、アナログ信号のまま、図7のタッチパネルシステム1bと同様に減算処理を行う。AD変換部48は、減算処理されたアナログ信号を、デジタル信号に変換する。
さらに、タッチパネルシステム1hにおいて、タッチパネル3bの駆動方式として、図10,図12,図13で示す直交系列駆動方式を適用している。この場合、図10に示すように、4本のドライブラインを駆動する電圧は、2回目〜4回目の場合は+Vの印加と−Vの印加が同数の2回であるのに対し、1回目の場合は+Vの印加が4回となっている。このため、1回目の出力系列Y1の出力値が、2〜4回目の出力系列Y2〜Y4の出力値と比して大きくなる。このため、2〜4回目の出力系列Y2〜Y4の出力値に、ダイナミックレンジを合わせると、1回目の出力系列Y1が飽和してしまうことになる。
そこで、タッチパネルシステム1hの減算部41は、全差動増幅器50を備えている。さらに、全差動増幅器50は、入力コモンモード電圧範囲が、レールトゥレール動作するものを採用している。つまり、この全差動増幅器50は、コモンモード入力レンジが広い。これにより、全差動増幅器50が、電源電圧(Vdd)からGNDまでの電圧範囲で動作可能となる。また、全差動増幅器50への入力信号の差分が増幅される。従って、どのような直交系列駆動方式のタッチパネル3bを組み合わせても、全差動増幅器50からの出力信号に、出力飽和の問題が生じない。なお、全差動増幅器50の一例は、上述した図17の通りである。
このように、タッチパネルシステム1hは、タッチパネル3bから出力されるアナログ信号を、アナログ信号のまま減算処理した後、デジタル信号に変換して、ノイズを除去することができる。さらに、レールトゥレール(rail to rail)動作可能な全差動増幅器50を備えているため、全差動増幅器50からの出力信号に、出力飽和の問題が生じない。
〔実施の形態10〕
実施の形態1〜9では、副センサ32(サブセンスライン34)を備えたタッチパネルシステムについて説明した。しかし、本発明のタッチパネルシステムにおいて、副センサ32は、必須の構成ではない。本実施形態では、副センサ32を備えていないタッチパネルパネルシステムについて説明する。
図20は、本実施形態に係るタッチパネルシステム1iの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1iは、互いに隣接するセンスライン33の差分信号を算出する減算部41aを備えている。
より具体的には、タッチパネル3cは、複数本(図20では5本)のドライブライン35と、各ドライブライン35に交差する複数本(図20では8本)のセンスライン33とを備えている。センスライン33とドライブライン35とは、それぞれ互いに絶縁され、かつ、容量結合している。
タッチパネルコントローラ4は、入力側から順に、スイッチSW、減算部41a、記憶部45a〜45dを備えている。なお、図示しないが、タッチパネルコントローラ4は、座標検出部42とCPU43も備えている(図1参照)。
減算部41aは、主センサ31から出力された信号を受信するための入力端子(主センサ出力用の入力端子)を備えている。減算部41aは、主センサ31からの信号を受信し、互いに隣接するセンスライン33の信号を減算し、差分値(差分信号)を算出する。減算部41aで減算処理された信号は、座標検出部42(図1参照)に出力される。
このように、タッチパネルシステム1iは、副センサ32(サブセンスライン34)を備えない点、および、減算部41aの処理が、上述の実施形態のタッチパネルシステムと異なる。
スイッチSWは、センスライン33から減算部41aに入力される信号を切り替える。より詳細には、スイッチSWは、上下に2つの端子を備えており、一方の端子が選択される。図20は、スイッチSWが下側の端子を選択した状態である。
減算部41aは、スイッチSWで選択された配列(1)〜(8)の信号の差分信号処理を行う。すなわち、減算部41aは、隣接するセンスライン33間の差分信号処理を行う。例えば、図20のように、スイッチSWにより下側の端子が選択されている場合、減算部41aは、配列(8)−配列(7)、配列(6)−配列(5)、配列(4)−配列(3)、および配列2)−配列(1)の各差分信号処理を行う。一方、図示しないが、スイッチSWにより上側の端子が選択されている場合、減算部41aは、配列(7)−配列(6)、配列(5)−配列(4)、および配列(3)−配列(2)の各差分信号処理を行う。
記憶部45a〜45dは、スイッチSWにより一方の端子が選択された場合の減算部41aによる差分処理された信号(差分処理信号)を記憶する。なお、スイッチSWにより他方の端子が選択された場合、差分処理信号は、記憶部45a〜45dを経由せず、直接出力される。
(2)タッチパネルシステム1iのノイズ処理
図20および図21に基づいて、タッチパネルシステム1iのノイズ処理について説明する。図21は、タッチパネルシステム1iの基本処理であるノイズキャンセル処理を示すフローチャートである。
タッチパネルシステム1iを起動すると、ドライブライン35に一定周期で電位が印加される。使用者がタッチパネル3cにタッチ操作を行うと、タッチ位置に対応する特定のセンスライン33の容量が変化する。つまり、そのセンスライン33からの出力信号値が変化する。タッチパネルシステム1iは、各ドライブライン35を駆動しつつ、センスライン33からの出力信号を、タッチパネルコントローラ4に出力する。このように、タッチパネルシステム1iは、ドライブライン35を駆動しつつ、センスライン33の容量変化を検出し、タッチ操作の有無およびタッチ位置を検出する。
より詳細には、表示装置2が発生するクロック等のノイズ、および、その他外来からのノイズは、タッチパネル3cに反映される。このため、主センサ群31bでは、各種ノイズ成分が検出される。すなわち、センスライン33からの出力信号には、タッチ操作本来の信号に、ノイズ信号(ノイズ成分)が加算されている(F701)。次に、スイッチSWにおいて、下側の端子を選択する(F702)。そして、減算部41aにおいて、センスライン33(センスラインSn)と、あるセンスライン33に隣接する2つのセンスライン33のうち、一方のセンスライン(センスラインSn+1)との間の差分を取る(センスライン(Sn+1)−Sn:第1の差分)(F703)。
図20の配列(1)〜(8)の場合、減算部41aは、
・配列(2)−配列(1)(この差分値をAとする)
・配列(4)−配列(3)(この差分値をCとする)
・配列(6)−配列(5)(この差分値をEとする)
・配列(8)−配列(7)(この差分値をGとする)
の4つの差分信号処理を行う。つまり、ステップF703では、センスライン33における配列(1)〜(8)の差分信号処理を行う。
減算部41aで算出された差分値A,C,E,Gは、記憶部45a〜45dに記憶される。すなわち、記憶部45aは差分値A,記憶部45bは差分値C、記憶部45cは差分値E、記憶部45dは差分値Gを、それぞれ記憶する(F704)。
次に、下側の端子が選択されているスイッチSWを、上側の端子を選択する(閉ざす)ように切り替える(F705)。そして、減算部41aにおいて、F703と同様に処理する。すなわち、センスライン33(センスラインSn)と、あるセンスライン33に隣接する2つのセンスライン33のうち、他方のセンスライン(センスラインSn−1)との間の差分信号処理(センスラインSn−(Sn−1)):第2の差分)を行う。(F706)。
図20の配列(1)〜(8)の場合、減算部41aは、
・配列(3)−配列(2)(この差分値をBとする)
・配列(5)−配列(4)(この差分値をDとする)
・配列(7)−配列(6)(この差分値をFとする)
の3つの差分信号処理を行う。つまり、ステップF706では、配列(2)〜(7)の差
分信号処理を行う。
以上のように、タッチパネルシステム1iは、隣接するセンスライン33間で差分信号値を取得する。つまり、ノイズの相関性がより高い隣接するセンスライン33間の差分を取ることになる。すなわち、主センサ群31aの出力信号からノイズ成分が除去され、タッチ操作本来の信号が抽出される。従って、タッチパネル3cに反映された多様な種類のノイズを確実に除去(キャンセル)することができる。
〔実施の形態11〕
図22は、本実施形態に係るタッチパネルシステム1jの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1jは、上述した図20で示されるノイズキャンセル機能付きタッチパネルシステム1iに対し、ドライブライン35を並列駆動するドライブライン駆動回路(図示せず)を適用したものである。さらに、タッチパネルシステム1jは、減算部41aで算出された静電容量の差分値を、復号化する復号部58と、非タッチ操作時に復号部58で復号化された静電容量の差分分布を記憶する非タッチ操作時情報記憶部61と、タッチ操作時に復号部58で復号化された静電容量の差分分布を較正する較正部62とを備えている。タッチパネルシステム1jの動作については、上述したタッチパネルシステム1iと同様であるため、説明を省略する。そこで、以下では、減算部41a、復号部58、非タッチ操作時情報記憶部61、および較正部62での処理を中心に説明する。また、以下では、並列駆動のための符号列として、直交系列またはM系列を用いる例について説明する。
具体的には、ドライブラインの1番目からM番目までを並列駆動する符号系列(成分は1または−1)を、
d1=(d11,d12,…,d1N)
d2=(d21,d22,…,d2N)
・
・
・
dM=(dM1,dM2,…,dMN)
とする。以下のこの系列を、直交系列、あるいは、符号長N(=2n−1)のM系列をシフトした系列とする。このような系列では、以下の式が成立するという性質を有する。
この系列に対応するセンスライン33の差分出力系列「Sj,P(j=1,…,[L/2],P=1,2)(Lはセンスライン33の数、[n]=nの整数部分)」を、
Sj,1:スイッチSWが下側の時のd1〜dMに対する出力系列
Sj,2:スイッチSWが上側の時のd1〜dMに対する出力系列
と定義する。
また、センスライン33方向の容量値の差分分布「(∂sC)kj,P(k=1,…,M,j=1,…,[L/2],P=1,2)」を、
(∂sC)kj,1=Ck,2j−Ck,2j−1
(∂sC)kj,2=Ck,2j+1−Ck,2j
と定義する。
この場合、並列駆動による容量のセンスライン方向の差分出力は、以下の式のようになる。
復号部58は、減算部41aで算出された静電容量の差分値(つまりセンスライン33方向の容量値の差分分布)を復号化する。具体的には、ドライブライン33を並列駆動する符号系列と、センスライン33方向の容量値の差分分布との内積を演算する。従って、復号部58による復号後の内積値は、以下の式のようになる。
このように、復号部58では、復号後の内積値di・sj,Pの主成分として、センスライン33方向の容量値の差分分布(∂sC)kj,PがN倍され算出される。従って、内積値di・sj,Pを、センスライン33方向の容量値の差分分布(∂sC)ij,Pの推定値とすることにより、その容量値の信号強度をN倍(符号長倍)にした読み出しが可能になる。
一方、上述のように、センスライン33の差分出力系列Sj,P(P=1,2)を定義することによって、隣り合うセンスライン33に共通に重畳されるコモンモードノイズは、キャンセルされる。従って、SNRが高い差分容量の読み出しが可能となる。
以上のように、タッチパネルシステム1jによれば、タッチパネル3cが並列駆動され、復号部58が、減算部41aで算出された静電容量の差分値を、復号化する。これにより、静電容量の信号が符号長倍(N倍)されて求まるため、ドライブライン35の数に依存せず、静電容量の信号強度が高まる。また、図9に示す従来の駆動方式と同等の信号強度で良ければ、ドライブライン35の駆動時間が、図9に示す駆動方式の場合の1/Nに短縮される。つまり、ドライブライン35の駆動回数を減らすことができる。従ってタッチパネルシステム1jの消費電力を低減することが可能となる。
また、タッチパネルシステム1jにおいて、較正部62が、タッチ操作時に算出された互いに隣接するセンスライン33の差分(すなわち、タッチパネル3c全体における差分値の分布)から、非タッチ操作時に算出された互いに隣接するセンスライン33の差分(=タッチパネル全体における差分値の分布)を減算することが好ましい。すなわち、上述のような差分信号処理を、タッチ操作前後で行うと共に、タッチ操作前後の差分値信号を減算することが好ましい。例えば、タッチ操作の無い初期状態(非タッチ操作時)の差分分布(∂sC)kj,Pの推定値を非タッチ操作時情報記憶部61に記憶しておく。そし
て、較正部62が、タッチ操作時の差分分布(∂sC)kjの推定値から、非タッチ操作時情報記憶部61に記憶された非タッチ操作時の差分分布(∂sC)kj,Pの推定値を差し引く。このように、較正部62は、タッチ操作時の静電容量の差分分布から、非タッチ操作時情報記憶部61に記憶された非タッチ操作時の静電容量の差分分布を減算する(タッチ操作時の差分値信号−非タッチ操作時の差分値信号)。従って、タッチパネル3cに内在するオフセットをキャンセルすることができる。
このように、タッチパネルシステム1jでは、タッチパネル3cに内在する容量バラツキに起因する差成分は無くなり、タッチ操作に起因する差成分のみが検出される。M系列の場合は、直交系列では入らない誤差成分(δij=−1/N if else i≠j)の混入がある。しかし、この誤差成分はタッチ操作に起因するものだけになるため、N=63または127のようにNを大きくすれば、SNRの劣化は少ない。
〔実施の形態12〕
図23は、本実施形態に係るタッチパネルシステム1kの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1kは、減算部41aの構成が異なる。
タッチパネル3cのセンスライン33からの出力信号は、アナログ信号である。そこで、減算部41aは、AD変換部48a(第1のAD変換部)とデジタル減算器(図示せず)とを備えている。
これにより、タッチパネル3cからの出力信号(アナログ信号)は、減算部41aのAD変換部48aにて、デジタル信号に変換される。デジタル減算器は、変換されたデジタル信号を用いて、図20のタッチパネルシステム1i,1jと同様に減算処理を行う。
このように、タッチパネルシステム1kは、タッチパネル3cから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換した後、減算処理を行うことにより、ノイズを除去することができる。
〔実施の形態13〕
図24は、本実施形態に係るタッチパネルシステム1mの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1mは、減算部41aの構成が異なる。
タッチパネル3cのセンスライン33からの出力信号は、アナログ信号である。そこで、減算部41aは、差動増幅器49とAD変換部48a(第2のAD変換部)とを備えている。
これにより、差動増幅器49は、タッチパネル3cからの出力信号(アナログ信号)を、アナログ信号のまま、図20のタッチパネルシステム1iと同様に減算処理を行う。AD変換部48aは、減算処理されたアナログ信号を、デジタル信号に変換する。
このように、タッチパネルシステム1mは、タッチパネル3cから出力されるアナログ信号を、アナログ信号のまま減算処理した後、デジタル信号に変換して、ノイズを除去することができる。
〔実施の形態14〕
図25は、本実施形態に係るタッチパネルシステム1nの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1nは、減算部41aの構成が異なる。タッチパネルシステム1nは、図24のタッチパネルシステム1mにおける差動増幅器49の代わりに、全差動増幅器50を備えている。
タッチパネル3cのセンスライン33からの出力信号は、アナログ信号である。そこで、減算部41aは、全差動増幅器50とAD変換部48aとを備えている。
これにより、全差動増幅器50は、タッチパネル3cからの出力信号(アナログ信号)を、アナログ信号のまま、図20のタッチパネルシステム1iと同様に減算処理を行う。AD変換部48aは、減算処理されたアナログ信号を、デジタル信号に変換する。
このように、タッチパネルシステム1nは、タッチパネル3cから出力されるアナログ信号を、アナログ信号のまま減算処理した後、デジタル信号に変換して、ノイズを除去することができる。
〔実施の形態15〕
図26は、本実施形態に係るタッチパネルシステム1oの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1oは、減算部41aの構成が異なる。タッチパネルシステム1oは、図26のタッチパネルシステム1mにおける差動増幅器49の代わりに、全差動増幅器50を備えている。
タッチパネル3cのセンスライン33からの出力信号は、アナログ信号である。そこで、減算部41aは、全差動増幅器50とAD変換部48aとを備えている。
これにより、全差動増幅器50は、タッチパネル3cからの出力信号(アナログ信号)を、アナログ信号のまま、図20のタッチパネルシステム1iと同様に減算処理を行う。AD変換部48aは、減算処理されたアナログ信号を、デジタル信号に変換する。
さらに、タッチパネルシステム1oにおいて、タッチパネル3cの駆動方式として、図10,図12,図22で示す直交系列駆動方式を適用している。この場合、図10に示すように、4本のドライブラインを駆動する電圧は、2回目〜4回目の場合は+Vの印加と−Vの印加が同数の2回であるのに対し、1回目の場合は+Vの印加が4回となっている。このため、1回目の出力系列Y1の出力値が、2〜4回目の出力系列Y2〜Y4の出力値と比して大きくなる。このため、2〜4回目の出力系列Y2〜Y4の出力値に、ダイナミックレンジを合わせると、1回目の出力系列Y1が飽和してしまうことになる。
そこで、タッチパネルシステム1oの減算部41aは、全差動増幅器50を備えている。
さらに、全差動増幅器50は、入力コモンモード電圧範囲が、レールトゥレール動作するものを採用している。つまり、この全差動増幅器50は、コモンモード入力レンジが広い。これにより、全差動増幅器50が、電源電圧(Vdd)からGNDまでの電圧範囲で動作可能となる。また、全差動増幅器50への入力信号の差分が増幅される。従って、どのような直交系列駆動方式のタッチパネル3cを組み合わせても、全差動増幅器50からの出力信号に、出力飽和の問題が生じない。なお、全差動増幅器50の一例は、上述した図17の通りである。
このように、タッチパネルシステム1oは、タッチパネル3cから出力されるアナログ信号を、アナログ信号のまま減算処理した後、デジタル信号に変換して、ノイズを除去することができる。さらに、レールトゥレール(rail to rail)動作可能な全差動増幅器50を備えているため、全差動増幅器50からの出力信号に、出力飽和の問題が生じない。
〔実施の形態16〕
次に、上述の実施形態に係るタッチパネルシステムによるタッチ操作の認識方法について説明する。以下では、図22のタッチパネルシステム1jを例に説明するが、他の実施形態のタッチパネルシステムについても同様である。タッチパネルシステム1jは、減算部41aおよび復号部58で算出された互いに隣接するセンスライン33の信号の差分と、正および負の閾値との比較に基づいて、タッチ操作の有無を判定する判定部59(タッチ検出部)を備えている。なお、判定部59には、較正部62で較正処理された信号(静電容量の差分分布)、または、較正部62で較正処理されていない信号(静電容量の差分分布)が入力される。較正部62で較正処理されていない信号が、判定部59に入力される場合、復号部58で復号化された静電容量の差分分布が、判定部59に直接入力されることになる。以下では、較正部62で較正処理されていない信号が、判定部59に入力される場合について説明する。しかし、較正処理された信号が、判定部59に入力される場合も同様である。
図27は、図22のタッチパネルシステム1jにおける判定部59の基本処理を示すフローチャートである。図28は、図27のフローチャートにおけるタッチ情報の認識方法を示す模式図である。
図27のように、判定部59は、まず、減算部41aおよび復号部59で算出された互いに隣接するセンスラインの信号の差分値(差分分布)「(∂sC)ij,P」を取得する
(F801)。次に、この差分値を、判定部59に格納された正の閾値THpおよび負の閾値THmと比較し、増減表を作成する(F802)。この増減表は、例えば、図28の(a)に示すような、3値化された増減表である。
次に、3値化された増減表を2値画像に変換(2値化)する(F803)。例えば、図28の(a)の増減表において、センスラインS1〜センスラインS7の順(図中右向き)にスキャンする場合、増減表に「+」が出たら次の「−」がでるまですべて「1」、「−」がでたらスキャン方向と逆方向(図中左向き)に遡って全て「1」に変換する。これにより、図28の(b)に示すような2値化されたデータが得られる。
次に、2値化されたデータからタッチ情報を抽出するため、連結成分を抽出する(F804)。例えば、図28の(b)において、隣り合うドライブライン上で、同じセンスライン位置に「1」が重なった場合は、同一の連結成分であるとみなし、タッチ位置候補とする。すなわち、図28の(c)において、枠で囲った「1」は同一の連結成分であるとみなし、タッチ位置候補として抽出する。
最後に、抽出されたタッチ位置候補に基づいて、タッチ情報(タッチの大きさ、タッチ位置など)を認識する(F805)。
このように、判定部59は、ノイズ信号が除去された、互いに隣接するセンスライン33の信号の差分に基づいて、タッチ操作の有無を判定する。従って、タッチ操作の有無を正確に判定することができる。
さらに、上述の例では、判定部59が、減算部41aで算出された互いに隣接するセンスライン33の信号の差分と、正および負の閾値(THp,THm)との比較に基づいて、各センスライン33の信号の差分分布を3値化した増減表を作成すると共に、その増減表を2値画像に変換する。すなわち、ノイズ信号が除去された、互いに隣接するセンスラインの信号の差分が判定部59に入力される。判定部59は、互いに隣接するセンスライン33の信号の差分と、判定部59に格納された正および負の閾値(THp,THm)との比較とを用いて、各センスライン33の信号の差分分布を3値化した増減表を作成する。さらに、判定部59は、その増減表を2値化することにより、増減表が2値画像に変換される。これにより、変換された2値画像には、タッチ位置候補が抽出される。従って、この2値画像に基づいて、タッチ情報(タッチの大きさ、位置など)を認識することにより、タッチ操作の有無に加えて、タッチ情報をより正確に認識することができる。
〔実施の形態17〕
図29は、タッチパネルシステム1を搭載した携帯電話機10の構成を示す機能ブロック図である。携帯電話機(電子機器)10は、CPU51と、RAM53と、ROM52と、カメラ54と、マイクロフォン55と、スピーカ56と、操作キー57と、タッチパネルシステム1とを備えている。各構成要素は、相互にデータバスによって接続されている。
CPU51は、携帯電話機10の動作を制御する。CPU51は、たとえばROM52に格納されたプログラムを実行する。操作キー57は、携帯電話機10のユーザによる指示の入力を受ける。RAM53は、CPU51によるプログラムの実行により生成されたデータ、または操作キー57を介して入力されたデータを揮発的に格納する。ROM52は、データを不揮発的に格納する。
また、ROM52は、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュメモリなどの書込みおよび消去が可能なROMである。なお、図20には示していないが、携帯電話機10が、他の電子機器に有線により接続するためのインターフェイス(IF)を備える構成としてもよい。
カメラ54は、ユーザの操作キー57の操作に応じて、被写体を撮影する。なお、撮影された被写体の画像データは、RAM53や外部メモリ(たとえば、メモリカード)に格納される。マイクロフォン55は、ユーザの音声の入力を受付ける。携帯電話機10は、当該入力された音声(アナログデータ)をデジタル化する。そして、携帯電話機10は、通信相手(たとえば、他の携帯電話機)にデジタル化した音声を送る。スピーカ56は、たとえば、RAM53に記憶された音楽データなどに基づく音を出力する。
タッチパネルシステム1は、タッチパネル3とタッチパネルコントローラ4とドライブライン駆動回路5と表示装置2とを有している。CPU51は、タッチパネルシステム1の動作を制御する。CPU51は、例えばROM52に記憶されたプログラムを実行する。RAM53は、CPU51によるプログラムの実行により生成されたデータを揮発的に格納する。ROM52は、データを不揮発的に格納する。
表示装置2は、ROM52、RAM53に格納されている画像を表示する。表示装置2は、タッチパネル3に重ねられているか、タッチパネル3を内蔵している。
なお、第1の特徴は、以下のように表現することもできる。
〔1〕複数のセンサを持つタッチパネルと、前記センサからの信号を入力し、データを読み取るタッチパネルコントローラとからなるタッチパネルシステムに関して、前記タッチパネルは、使用者がタッチ操作を行うことにより信号を入力する主センサと、前記主センサと同じタッチパネル上に設置された副センサとを備え、前記タッチパネルコントローラは、前記主センサからの信号と前記副センサからの信号を受信し、前記主センサからの信号から、前記副センサからの信号を減算する減算手段とを有することを特徴とするタッチパネルシステム。
〔2〕前記副センサが、使用者がタッチ操作により接触することなく、センサに発生するノイズを検出することを特徴とする上記〔1〕に記載のタッチパネルシステム。
〔3〕前記主センサと前記副センサとが隣接して設置されていることを特徴とする上記〔1〕または〔2〕に記載のタッチパネルシステム。
〔4〕表示装置と、前記表示装置の表示画面の上部等に配置され、複数のセンサ群をマトリクス状に配置したタッチパネルと、前記センサ群からの信号を入力し、データを読み取るタッチパネルコントローラとからなるタッチパネルシステムに関して、前記タッチパネルは、使用者がタッチ操作を行うことにより信号を入力する主センサ群と、前記主センサ群と同じタッチパネル上に設置された副センサ群とを備え、前記タッチパネルコントローラは、前記主センサ群からの信号と前記副センサ群からの信号を受信し、前記主センサ群からの信号から、前記副センサ群からの信号を減算する減算手段とを有することを特徴とするタッチパネルシステム。
〔5〕前記副センサ群が、使用者がタッチ操作により接触することなく、センサ群に発生するノイズを検出することを特徴とする上記〔4〕に記載のタッチパネルシステム。
〔6〕前記主センサ群と前記副センサ群とが隣接して設置されていることを特徴とする上記〔4〕または〔5〕に記載のタッチパネルシステム。
〔7〕前記表示装置は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、FEDディスプレイであることを特徴とする上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のタッチパネルシステム。
〔8〕上記〔1〕〜〔7〕のいずれかのタッチパネルシステムを備えたことを特徴とする電子機器。
上記各構成によれば、タッチパネル内に、タッチ操作を検出する主センサ部と、ノイズ検出用の副センサ部とを備え、減算部が、主センサ部と副センサ部との信号の差分を取る。これにより、主センサ部からの出力信号からノイズ信号が除去され、タッチ操作により生じたタッチ操作本来の信号が抽出される。従って、タッチパネルに反映された多様な種類のノイズを確実に除去(キャンセル)することができる。それゆえ、除去対象となるノイズ成分は、ノイズを含む信号中のAC信号成分に限られることなく、タッチパネルに反映されるノイズ成分の全てである。つまり、基本的にノイズ成分を全てキャンセルすることが可能であるタッチパネルシステムおよび電子機器を提供することが可能となる。
<<第2の特徴>>
(1)タッチパネルシステム1rの構成
図30は、本発明に係る別のタッチパネルシステム1rの基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1rの基本的な構成は、第1の特徴に係るタッチパネルシステム1,1a〜1oと略同様である。以下では、第1の特徴に係るタッチパネルシステム1,1a〜1oとの相違点を中心に、第2の特徴に係るタッチパネルシステム1rについて説明する。なお、説明の便宜上、第1の特徴に係るタッチパネルシステム1,1a〜1oと同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図30に示すように、タッチパネルシステム1rは、表示装置2と、タッチパネル3と、タッチパネルコントローラ4と、ドライブライン駆動回路5と、タッチパネルコントローラ4が生成するタッチ情報(タッチの大きさ、タッチ位置など)に基づいてタッチパネル3に有効領域を設定し有効領域情報を生成する領域設定部8と、を備える。
ドライブライン駆動回路5は、有効領域情報を取得して、領域設定部8が設定した有効領域を把握する。そして、ドライブライン駆動回路5は、領域設定部8が設定した有効領域に基づいて、各ドライブライン35を駆動する。なお、ドライブライン駆動回路5によるドライブライン35の駆動方法の具体例については、後述する。
タッチパネルコントローラ4は、センスライン33の信号を増幅する増幅部71(例えば、第1の特徴で説明した差動増幅部49や全差動増幅部50であってもよい)と、増幅部71が増幅した信号を取得して時分割で出力する信号取得部72と、信号取得部72が出力したアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部73(例えば、第1の特徴で説明したAD変換部48,48aであってもよい)と、AD変換部73が変換したデジタル信号に基づいて静電容量の差分分布を求める復号部58と、復号部58が求めた静電容量の差分分布に基づいてタッチ情報を生成する座標検出部42と、を備える。
増幅部71及び信号取得部72のそれぞれは、有効領域情報を取得して、領域設定部8が設定した有効領域を把握する。そして、増幅部71は、領域設定部8が設定した有効領域に基づいて、センスライン33の信号の増幅を行う。また、信号取得部72は、領域設定部8が設定した有効領域に基づいて、増幅部71が増幅したセンスライン33の信号を選択するとともに時分割で出力する。なお、増幅部71及び信号取得部72による信号の増幅方法や取得方法の具体例については、後述する。
AD変換部73は、信号取得部72が出力するアナログ信号を、所定のビット数のデジタル信号に変換する。なお、AD変換部73によって生成されるデジタル信号のビット数は、いくつであってもよいが、後段の復号部58及び座標検出部42における処理の精度(タッチ位置の検出精度)を考慮すると、例えば12ビット以上16ビット以下であれば、好ましい。
領域設定部8は、タッチ情報に基づいてタッチパネル3に有効領域を設定して有効領域位置情報を生成する有効領域算出部81と、有効領域算出部81の演算に必要なパラメータ等が格納される記憶部82と、を備える。
有効領域算出部81は、例えばCPU(例えば、上述のCPU43に対応し得る)から成り、タッチ情報を取得して、タッチパネルコントローラ4が算出するタッチパネル3上のタッチ位置を把握する。有効領域算出部81は、タッチパネルコントローラ4が算出するタッチパネル3上のタッチ位置に基づいて、タッチパネル3内に有効領域を設定し、有効領域情報を生成する。記憶部82は、有効領域算出部81の演算に必要なパラメータ等を格納するレジスタ821を備える。なお、有効領域算出部81における演算内容(有効領域の設定方法)の具体例については、後述する。
(2)タッチパネルシステムの第1動作例
次に、図30に示したタッチパネルシステム1rの第1動作例について、図面を参照して説明する。最初に、領域設定部8によってタッチパネル3に設定される有効領域の一例について、図面を参照して説明する。図31は、有効領域の一例を示すブロック図である。
図31に例示する有効領域Aは、タッチパネル3の一部の領域に設定されるものである。また、ドライブライン35r及びセンスライン33r(図中の太い実線)のそれぞれが、有効領域Aを通る。換言すると、ドライブライン35r及びセンスライン33rが成す静電容量のそれぞれは、少なくとも一部が有効領域Aに含まれている。
例えば、図31に示した有効領域Aが設定されている場合、ドライブライン駆動回路5は、有効領域Aを通るドライブライン35rのそれぞれに対して、駆動信号を印加する。一方、ドライブライン駆動回路5は、有効領域Aを通らないドライブラインのそれぞれに対しては、駆動信号を印加しない。
ドライブライン駆動回路5によるドライブライン35の駆動方法の具体例について、図面を参照して説明する。図32は、第1動作例におけるドライブライン駆動回路によるドライブラインの具体的な駆動方法の一例を示す図である。なお、図32(a)は、タッチパネル3の全面が有効領域として設定される場合を示すものであり、図32(b)は、タッチパネル3の一部に有効領域が設定される場合(図31に示す有効領域Aが設定される場合)を示すものである。
図32(a)に示すように、タッチパネル3の全面が有効領域として設定される場合、ドライブライン駆動回路5は、全てのドライブライン35に対して駆動信号を印加する。例えば、ドライブライン駆動回路5は、ドライブラインDL毎に設定されている固有の駆動信号を印加する。駆動信号は、ハイレベル(「1」)とローレベル(「0」)の組み合わせから成り、時間方向に対して信号レベルが変化する。なお、この駆動信号は、第1の特徴で説明した符号系列であってもよい。また、駆動信号のローレベルが「−1」であってもよい。
一方、図32(b)に示すように、タッチパネル3の一部に有効領域Aが設定される場合、ドライブライン駆動回路5は、有効領域Aを通るドライブライン35rに対しては、駆動信号を印加する。このとき、ドライブライン駆動回路5は、ドライブライン35rに対して上述した固有の駆動信号を印加する。また、ドライブライン駆動回路5は、有効領域Aを通らないドライブラインのそれぞれを接地するなどして、当該ドライブラインの信号レベルが時間的に変化することを抑制する。
したがって、図32(b)に示す例では、有効領域Aを通るドライブライン35rに印加される駆動信号が、図32(a)に示す場合に当該ドライブライン35rに印加される駆動信号と、同じものになる。さらに、図32(b)に示す例では、有効領域Aを通らないドライブラインの信号レベルが、時間方向に対して不変の値「0」になる。なお、有効領域Aを通らないドライブラインの信号レベルは、時間方向に対して不変であれば「0」に限られるものではなく、「1」であってもよいし、「1」と「0」の組み合わせ(例えば、隣接する2つのドライブラインの一方が「0」、他方が「1」)であってもよい。
このように、ドライブライン駆動回路5が、有効領域Aを通るドライブライン35rを選択的に駆動すると、ドライブライン35が無用に駆動されることを、防止することができる。そのため、ドライブライン35の駆動にかかる消費電力を、低減することが可能になるとともに、ノイズの発生を抑制してタッチ操作の検出感度を向上することが可能になる。また、ドライブライン35rを限定的に駆動することで、タッチパネルコントローラ4におけるタッチ位置の検出精度を、向上させることができる。
また、ドライブライン駆動回路5が、図32に示すようにドライブライン35を制御することで、タッチパネルコントローラ4(特に、復号部58)は、タッチ操作によって生じるセンスライン33の信号の変動を、容易に識別することが可能になる。
また例えば、図31に示した有効領域Aが設定されている場合、増幅部71は、有効領域Aを通るセンスライン33rの信号を、選択的に増幅する。この増幅部71の具体的な動作例について、図面を参照して説明する。図33は、第1動作例における増幅部の具体的な動作の一例について示すブロック図である。
図33に示すように、増幅部71は、センスライン33のそれぞれに対応する増幅器711と、センスライン33の信号を増幅器711に供給するか否かを制御する開閉スイッチ712と、を備える。ただし、それぞれの開閉スイッチ712は、有効領域情報に応じて制御される。
具体的に、有効領域Aを通るセンスライン33rの信号が供給される開閉スイッチ712は、導通状態になる。これにより、有効領域Aを通るセンスライン33rの信号が、増幅器711で増幅されて、増幅部71から出力される。一方、有効領域Aを通らないセンスラインの信号が供給される開閉スイッチ712は、非導通状態になる。これにより、有効領域Aを通らないセンスラインの信号は、増幅器711で増幅されず、増幅部71から出力されないことになる。
このように、増幅部71が、有効領域Aを通るセンスライン33rの信号を選択的に増幅することで、信号の増幅にかかる消費電力を、低減することが可能になる。なお、センスライン33rの信号を選択的に増幅するための構造は、例示した増幅器711及び開閉スイッチ712に限られるものではなく、同様の効果を得ることが可能である限り、他の構造であってもよい。例えば、開閉スイッチ712に代えて(または加えて)、増幅器711の活性/非活性を切替可能なスイッチを備えてもよい。
また、信号取得部72は、有効領域Aを通るセンスライン33rの信号を、選択的に取得するとともに時分割で出力する。この信号取得部72の具体的な動作例について、図面を参照して説明する。図34は、第1動作例における選択取得部の具体的な動作の一例について示すブロック図である。
図34に示すように、信号取得部72は、センスライン33のそれぞれに対応する端子から一つを選択して後段に接続する分岐スイッチ721を備える。ただし、分岐スイッチ721は、有効領域情報に応じて制御される。
具体的に、分岐スイッチ721は、有効領域Aを通るセンスライン33rに対応する端子とは接続し得る。これにより、増幅部71で増幅された有効領域Aを通るセンスライン33rの信号が、後段に出力される。一方、分岐スイッチ721は、有効領域Aを通らないセンスラインに対応する端子とは接続しない。これにより、有効領域Aを通らないセンスラインの信号は、後段に出力されないことになる。
このように、信号取得部72が、有効領域Aを通るセンスライン33rの信号を、選択的に取得するとともに時分割で出力することで、信号取得部72の後段に、無用な信号が出力されることを防止することができる。そのため、信号取得部72の後段(例えば、AD変換部73、復号部58及び座標検出部42)の処理にかかる消費電力を、低減することが可能になる。なお、信号を選択的に取得するとともに時分割で出力するための構造は、例示した分岐スイッチ721に限られるものではなく、同様の効果を得ることが可能である限り、他の構造であってもよい。
そして、AD変換部73が、信号取得部72が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換し、復号部58が、当該デジタル信号に基づいてタッチパネル3(有効領域A)の静電容量の差分分布を求め、座標検出部42が、当該差分分布を参照することでタッチパネル3(有効領域A)のタッチ位置を検出してタッチ情報を生成する。
このように、タッチパネルコントローラ4は、有効領域Aを通るセンスライン33rの信号を、選択的に処理する。そのため、無用な信号処理を防止することができる。したがって、信号処理にかかる消費電力を、低減することが可能になる。また、有効領域Aを通るセンスライン33rの信号を限定的に処理することで、タッチ位置の検出精度を、向上させることができる。
上述のように、タッチパネルコントローラ4は、領域設定部8が設定した有効領域Aに基づいた動作を行う。一方、領域設定部8は、タッチパネルコントローラ4が検出するタッチ位置に基づき、タッチパネル3に設定されている有効領域Aを更新して、新たな有効領域を設定する。
以下、領域設定部8の具体的な一連の動作例について、図面を参照して説明する。図35は、第1動作例における領域設定部の具体的な動作の一例について示すフローチャートである。また、図36は、第1動作例における有効領域の設定方法の一例について示す図である。
以下では説明の便宜上、図36に示すように、センスライン33の整列方向(図中の上下方向、X方向)の位置をX、ドライブライン35の整列方向(図中の左右方向、Y方向)の位置をYとして、タッチパネル3内の位置を(X,Y)の座標で表現する。また、タッチパネル3の左上隅の座標を(0,0)、右下隅の座標を(n,m)とする。ただし、n及びmは、少なくとも一方が2以上となる自然数であり、タッチパネル3にn本のセンスライン33と、m本のドライブライン35が設けられているものとする。また、有効領域Aの左上隅の座標を(Xs,Ys)、有効領域Aの右下隅の座標を(Xe,Ye)とする。
また、図36は、有効領域Aが、タッチ位置(Xp,Yp)を中心として、X方向の長さがWD_S、Y方向の長さがWD_Dとして設定される場合を、例示している。なお、この有効領域Aの設定方法の詳細については、後述する。
図35に示すように、有効領域算出部81は、タッチパネルシステム1rの動作の開始時において、タッチパネル3の全面となる有効領域を設定するべく、(Xs,Ys)=(0,0)かつ(Xe,Ye)=(n,m)となる有効領域情報を算出する(ステップ#1)。そして、有効領域算出部81は、算出した有効領域情報を出力する(ステップ#2)。
次に、有効領域算出部81は、タッチパネルコントローラ4が生成したタッチ情報を取得する(ステップ#3)。このとき、有効領域算出部81は、記憶部82のレジスタ821に格納されているパラメータを確認することで、タッチ位置に基づいて新たな有効領域を設定する「スポット駆動モード」(第1モード)であるか、タッチパネル3の全面を新たな有効領域として継続的に設定する「全面検出モード」(第2モード)であるか、を確認する(ステップ#4)。
「スポット駆動モード」及び「全面検出モード」は、例えばユーザの指示(操作)によって切替可能である。そのため、ユーザは、例えばタッチパネルシステムの設置環境や使用環境などに応じて、消費電力の低減及びタッチ操作の検出感度の向上を図る「スポット駆動モード」と、タッチパネル3の全面から漏れ無くタッチ位置を検出する「全面検出モード」と、のいずれかでタッチパネルシステム1rを動作させることが可能である。なお、タッチパネルシステム1rが、ユーザの指示以外の要因に応じてこれらのモードを自動的に選択し、動作する構成であってもよい。
「全面検出モード」の場合(ステップ#4、NO)、有効領域算出部81は、タッチパネル3の全面となる新たな有効領域を設定するべく、(Xs,Ys)=(0,0)かつ(Xe,Ye)=(n,m)となる有効領域情報を算出する(ステップ#5)。そして、有効領域算出部81は、算出した有効領域情報を出力する(ステップ#6)。
そして、新たなタッチ情報が出力される場合は(ステップ#7、YES)、ステップ#3に戻り当該タッチ情報を取得する。一方、新たなタッチ情報が出力されない場合は(ステップ#7、NO)、動作を終了する。
「スポット駆動モード」の場合(ステップ#4、YES)であり、タッチパネル3上のタッチ位置が算出されない場合(ステップ#8、NO)、有効領域算出部81は、上記の「全面検出モード」の場合と同様の動作を行う(ステップ#5〜#7)。これにより、有効領域がタッチパネル3の全面に設定されるため、次にタッチパネル3上のどの位置に対してタッチ操作が行われたとしても、タッチパネルコントローラ4が、当該タッチ操作を検出して、そのタッチ位置を検出することが可能になる。
一方、「スポット駆動モード」の場合(ステップ#4、YES)であり、タッチパネル3上のタッチ位置が算出されている場合(ステップ#8、YES)、有効領域算出部81は、タッチ位置を含む新たな有効領域を設定するべく、図36に示すように、Xs=Xp−WD_S/2、Ys=Yp−WD_D/2、Xe=Xp+WD_S/2、Ye=Yp+WD_D/2となる新たな有効領域情報を算出する(ステップ#9)。そして、有効領域算出部81は、算出した有効領域情報を出力する(ステップ#6)。これにより、有効領域算出部81が、次にタッチ位置が検出される位置が含まれる可能性が高い新たな有効領域Aを、設定することが可能になる。
そして、新たなタッチ情報が出力される場合は(ステップ#7、YES)、ステップ#3に戻り当該タッチ情報を取得する。一方、新たなタッチ情報が出力されない場合は(ステップ#7、NO)、動作を終了する。
以上のように、本例のタッチパネルシステム1rでは、検出されたタッチ位置に基づいて、タッチ位置の検出を行うべき領域である有効領域が、タッチパネル3内で限定的に設定される。そのため、無用な検出を避けることで、消費電力を低減するとともにタッチ操作の検出感度を向上することができる。
なお、上述したタッチパネルコントローラ4の動作と、領域設定部8の動作(図35のステップ#3〜#9の動作)と、は所定のフレームレート(例えば、120Hz)で繰り返し行われる。
また、有効領域算出部81が、「スポット駆動モード」であるか「全面検出モード」であるかを動作中に逐次確認することとしたが(ステップ#4)、この確認を逐次行わなくてもよい。例えば、有効領域算出部81が、ステップ#2の後にこの確認を行い、その後ユーザ等から何らかの指示が入力されるまで、それぞれのモードに応じた動作を行ってもよい。
なお、領域設定部8が設定する有効領域の大きさ(例えば、WD_D及びWD_S)は、固定値であってもよいが、可変値であってもよい。有効領域の大きさを可変値にする場合、領域設定部8が、タッチ位置の移動速度に応じた大きさの新たな有効領域を設定すると、次のタッチ位置が当該新たな有効領域に含まれる可能性を高くすることができるため、好ましい。
この場合における有効領域の具体的な設定方法の例について、図37を参照して説明する。図37は、第1動作例における有効領域の設定方法の別例について示す図である。図8は、現フレームにおけるタッチ位置が(Xpa,Ypa)、次フレームにおけるタッチ位置が(Xpb,Ypb)である場合について例示している。また、現フレームにおけるタッチ位置のX方向の移動速度をVx、Y方向の移動速度をVy、フレームレートをfとする。
領域設定部8は、現フレームにおけるタッチ位置(Xpa,Ypa)及び移動速度(Vx,Vy)に基づいて、次フレームにおけるタッチ位置(Xpb,Ypb)が含まれるように、新たな有効領域を設定する。即ち、領域設定部8は、WD_S≧2×Vx/f、WD_D≧2×Vy/fとなるように、新たな有効領域を設定する。例えば、Vy=1000mm/s、f=120Hzの場合、WD_D≧16.7mmとなる。
また、領域設定部8において、順次得られるタッチ位置を記憶部82に記憶するなどしてタッチ位置の変動量を求め、当該変動量に基づいて現フレームにおけるタッチ位置の移動速度を求めてもよい。
また、領域設定部8は、必ずしもタッチ位置を中心とした有効領域を設定しなくてもよい。例えば、タッチパネル3の端辺近傍でタッチ位置が検出された場合、領域設定部8は、当該端辺側にタッチ位置が偏った有効領域を設定してもよい。また、領域設定部8は、タッチ位置の移動方向に基づいた有効領域を設定してもよい。例えば、領域設定部8は、タッチ位置の移動方向とは反対方向にタッチ位置が偏った有効領域を設定してもよい。
(3)タッチパネルシステムの第2動作例
図30に示したタッチパネルシステム1rは、タッチパネルコントローラ4が、タッチパネル3の静電容量の差分分布に基づいてタッチ位置を検出するため、タッチパネル3上に複数のタッチ位置があったとしても、それぞれのタッチ位置を別々に検出することができる(マルチタッチに対応可能である)。そこで、以下では、マルチタッチに対応するタッチパネルシステム1rの動作例(第2動作例)について、説明する。
第2動作例は、タッチパネルコントローラ4が複数のタッチ位置を検出し得るとともに、領域設定部8が複数のタッチ位置に基づいて有効領域を設定し得るものであるが、その基本的な動作は、上述の第1動作例と共通する。そのため、以下の第2動作例の説明において、第1動作例と共通する部分については、第1動作例の説明を適宜参酌するものとして、その詳細な説明を省略する。
最初に、領域設定部8によってタッチパネル3内に設定される有効領域の一例について、図面を参照して説明する。図38は、第2動作例においてタッチパネル3内に設定される有効領域の一例を示すブロック図である。なお、図38は、2つのタッチ位置が、タッチパネル3上で離間する場合に設定される有効領域A1,A2を例示したものである。
図38に例示する有効領域A1,A2のそれぞれは、タッチパネル3内の一部の領域に設定される。また、ドライブライン35r1及びセンスライン33r1(図中の太い実線)のそれぞれが有効領域A1を通り、ドライブライン35r2及びセンスライン33r2(図中の太い実線)のそれぞれが有効領域A2を通る。換言すると、ドライブライン35r1及びセンスライン33r1が成す検出領域Xのそれぞれは、その少なくとも一部が有効領域A1に含まれ、ドライブライン35r2及びセンスライン33r2が成す検出領域Xのそれぞれは、その少なくとも一部が有効領域A2に含まれる。
例えば、タッチパネル3内に、図38に示した有効領域A1,A2が設定されている場合、ドライブライン駆動回路5は、有効領域A1を通るドライブライン35r1と、有効領域A2を通るドライブライン35r2と、のそれぞれに対して駆動信号を印加する。一方、ドライブライン駆動回路5は、有効領域A1,A2のいずれも通らないドライブラインのそれぞれに対しては、駆動信号を印加しない。
第2動作例におけるドライブライン駆動回路5によるドライブライン35の駆動方法の具体例について、図面を参照して説明する。図39は、第2動作例におけるドライブライン駆動回路によるドライブラインの具体的な駆動方法の一例を示す図である。
図39に示すように、ドライブライン駆動回路5は、有効領域A1を通るドライブライン35r1と、有効領域A2を通るドライブライン35r2と、のそれぞれに対して、上述した固有の駆動信号(図32参照)を印加する。さらに、ドライブライン駆動回路5は、有効領域A1,A2のいずれも通らないドライブラインのそれぞれを接地するなどして、当該ドライブラインの信号レベルが時間的に変化することを抑制する。
このように、マルチタッチ時においても、ドライブライン駆動回路5が、有効領域A1,A2を通るドライブライン35r1,35r2を選択的に駆動することで、ドライブライン35が無用に駆動されることを防止することができる。そのため、ドライブライン35の駆動にかかる消費電力を、低減することが可能になるとともに、ノイズの発生を抑制してタッチ操作の検出感度を向上することが可能になる。また、ドライブライン35r1,35r2を限定的に駆動することで、タッチパネルコントローラ4におけるタッチ位置の検出精度を、向上させることができる。
また例えば、タッチパネル3内に、図38に示した有効領域A1,A2が設定されている場合、増幅部71は、有効領域A1を通るセンスライン33r1と、有効領域A2を通るセンスライン33r2と、のそれぞれの信号を選択的に増幅する。この増幅部71の具体的な動作例について、図面を参照して説明する。図40は、第2動作例における増幅部の具体的な動作の一例について示すブロック図である。なお、図40に示す増幅部71は、第1動作例で説明した増幅部71(図33参照)と同様のものである。
図40に示すように、有効領域A1を通るセンスライン33r1と、有効領域A2を通るセンスライン33r2と、のそれぞれの信号が供給される開閉スイッチ712は、導通状態になる。これにより、有効領域A1を通るセンスライン33r1と、有効領域A2を通るセンスライン33r2と、のそれぞれの信号が、増幅器711で増幅されて、増幅部71から出力される。一方、有効領域A1,A2のいずれも通らないセンスラインの信号が供給される開閉スイッチ712は、非導通状態になる。これにより、有効領域A1,A2のいずれも通らないセンスラインの信号は、増幅器711で増幅されず、増幅部71から出力されないことになる。
このように、増幅部71が、有効領域A1,A2を通るセンスライン33r1,33r2の信号を選択的に増幅することで、センスライン33の信号の増幅にかかる消費電力を、低減することが可能になる。
また、信号取得部72は、有効領域A1を通るセンスライン33r1の信号と、有効領域A2を通るセンスライン33r2の信号と、を選択的に取得するとともに時分割で出力する。この信号取得部72の具体的な動作例について、図面を参照して説明する。図41は、第2動作例における選択取得部の具体的な動作の一例について示すブロック図である。なお、図41に示す信号取得部72は、第1動作例で説明した信号取得部72(図34参照)と同様のものである。
図41に示すように、分岐スイッチ721は、有効領域A1を通るセンスライン33r1と、有効領域A2を通るセンスライン33r2と、のそれぞれに対応する端子とは接続し得る。これにより、増幅部71で増幅された有効領域A1を通るセンスライン33r1の信号と、増幅部71で増幅された有効領域A1を通るセンスライン33r2の信号と、のそれぞれが後段に出力される。一方、分岐スイッチ721は、有効領域A1,A2のいずれも通らないセンスラインに対応する端子とは接続しない。これにより、有効領域A1,A2のいずれも通らないセンスラインの信号は、後段に出力されないことになる。
このように、信号取得部72が、有効領域A1,A2を通るセンスライン33r1,33r2の信号を、選択的に取得するとともに時分割で出力することで、信号取得部72の後段に、無用な信号が出力されることを防止することができる。そのため、信号取得部72の後段(例えば、AD変換部73、復号部58及び座標検出部42)の処理にかかる消費電力を、低減することが可能になる。
そして、AD変換部73が、信号取得部72が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換し、復号部58が、当該デジタル信号に基づいてタッチパネル3(有効領域A1,A2)の静電容量の差分分布を求め、座標検出部42が、当該差分分布を参照することでタッチパネル3(有効領域A1,A2)上のタッチ位置を検出してタッチ情報を生成する。なお、このとき復号部58及び座標検出部42は、有効領域A1,A2上だけでなく、ドライブライン35r1とセンスライン33r2が通る領域上と、ドライブライン35r2とセンスライン33r1が通る領域上と、についてもタッチ位置を検出することが可能である。
このように、マルチタッチ時においても、タッチパネルコントローラ4が、有効領域A1,A2を通るセンスライン33r1,33r2の信号を選択的に処理することで、無用な信号処理を防止することができる。したがって、信号処理にかかる消費電力を、低減することが可能になる。また、有効領域A1,A2を通るセンスライン33r1,33r2の信号を限定的に処理することで、タッチ位置の検出精度を、向上させることができる。
次に、領域設定部8が有効領域を設定(更新)する具体的な一連の動作例について、図面を参照して説明する。図42は、第2動作例における領域設定部の具体的な動作の一例について示すフローチャートである。また、図43は、第2動作例における有効領域の設定方法の一例について示す図である。なお、以下では、第1動作例における説明(図36参照)と同様に、センスライン33の整列方向(図43中の上下方向、X方向)の位置をX、ドライブライン35の整列方向(図43中の左右方向、Y方向)の位置をYとして、タッチパネル3内の位置を(X,Y)の座標で表現するとともに、タッチパネル3の左上隅の座標を(0,0)、右下隅の座標を(n,m)とする。また、有効領域Aiの左上隅の座標を(Xsi,Ysi)、有効領域Aiの右下隅の座標を(Xei,Yei)とする。
iは、有効領域及び有効領域情報を識別するための番号であり、1以上かつmax以下の値をとる(maxは2以上の自然数)。即ち、maxは、領域設定部8が設定可能な有効領域の数の上限値であり、例えば、タッチパネルコントローラ4が検出可能なタッチ位置の数と等しい数であってもよい。このように、領域設定部8が設定可能な有効領域の数に上限値(max)を設定すると、領域設定部8の演算量が過剰になったり、領域設定部8が設定する有効領域の総面積が大きくなり過ぎたりすることを、抑制することが可能になるため、好ましい。
図43は、有効領域A1が、タッチ位置(Xp1,Yp1)を中心として、X方向の長さがWD_S1、Y方向の長さがWD_D1として設定されるとともに、有効領域A2が、タッチ位置(Xp2,Yp2)を中心として、X方向の長さがWD_S2、Y方向の長さがWD_D2として設定される場合を例示している。なお、この有効領域A1,A2の設定方法の詳細については、後述する。
図42に示すように、有効領域算出部81は、タッチパネルシステム1rの動作の開始時において、タッチパネル3の全面となる有効領域を設定するべく、(Xs1,Ys1)=(0,0)かつ(Xe1,Ye1)=(n,m)となる有効領域情報を算出する。このとき、有効領域算出部81は、残りのi=2〜maxの有効領域情報をどのような値として算出してもよいが、本例ではi=1の有効領域情報と同じく、(Xsi,Ysi)=(0,0)かつ(Xei,Yei)=(n,m)として算出するものとしている(ステップ#11)。
次に、有効領域算出部81は、ステップ#11で算出したi=1〜maxの有効領域情報を出力する(ステップ#12)。なお、タッチパネルコントローラ4の各部は、i=1の有効領域情報に対応する有効領域A1に基づいて、ドライブライン35の駆動やセンスライン33の信号の処理を行うが、i=2〜maxの有効領域情報については無視する。
次に、有効領域算出部81は、タッチパネルコントローラ4が生成したタッチ情報を取得する(ステップ#13)。このとき、有効領域算出部81は、記憶部82のレジスタ821に格納されているパラメータを確認することで、「スポット駆動モード」(第1モード)であるか、「全面検出モード」(第2モード)であるか、を確認する(ステップ#14)。
「全面検出モード」の場合(ステップ#14、NO)、有効領域算出部81は、タッチパネル3の全面となる新たな有効領域を設定するべく、(Xs1,Ys1)=(0,0)かつ(Xe1,Ye1)=(n,m)となる有効領域情報を算出する。このとき、有効領域算出部81は、残りのi=2〜maxの有効領域情報をどのような値として算出してもよいが、本例ではi=1の有効領域情報と同じく、(Xsi,Ysi)=(0,0)かつ(Xei,Yei)=(n,m)として算出するものとしている(ステップ#15)。
次に、有効領域算出部81は、ステップ#15で算出したi=1〜maxの有効領域情報を出力する(ステップ#16)。なお、タッチパネルコントローラ4の各部は、i=1の有効領域情報に対応する有効領域A1に基づいて、ドライブライン35の駆動やセンスライン33の信号の処理を行うが、i=2〜maxの有効領域情報については無視する。
そして、新たなタッチ情報が出力される場合は(ステップ#17、YES)、ステップ#13に戻り当該タッチ情報を取得する。一方、新たなタッチ情報が出力されない場合は(ステップ#17、NO)、動作を終了する。
「スポット駆動モード」の場合(ステップ#14、YES)であり、タッチパネル3上のタッチ位置が検出されない場合(ステップ#18、NO)、有効領域算出部81は、上記の「全面検出モード」の場合と同様の動作を行う(ステップ#15〜#17)。これにより、有効領域がタッチパネル3の全面に設定されるため、次にタッチパネル3上のどの位置がタッチ位置になったとしても、タッチパネルコントローラ4が、当該タッチ位置を検出することが可能になる。
一方、「スポット駆動モード」の場合(ステップ#14、YES)であり、タッチパネル3上のタッチ位置が検出されている場合(ステップ#18、YES)、有効領域算出部81は、タッチ位置を含む新たな有効領域を設定するべく、例えば図43に示すように、Xsi=Xpi−WD_Si/2、Ysi=Ypi−WD_Di/2、Xei=Xpi+WD_Si/2、Yei=Ypi+WD_Di/2となるi=1〜numの新たな有効領域情報(図43の例ではnum=2)を算出する。即ち、numは、有効領域算出部8が設定しようとする有効領域の数であり、例えば、タッチパネルコントローラ4が算出したタッチ位置の数と等しい数であってもよい。このとき、有効領域算出部81は、残りのi=num+1〜maxの有効領域情報をどのような値として算出してもよいが、本例では(Xsi,Ysi)=(0,0)かつ(Xei,Yei)=(n,m)として算出するものとしている(ステップ#19)。
次に、有効領域算出部81は、ステップ#19で算出したi=1〜maxの有効領域情報を出力する(ステップ#16)。なお、タッチパネルコントローラ4の各部は、i=1〜numの有効領域情報のそれぞれに対応する有効領域A1〜Anumに基づいて、ドライブライン35の駆動やセンスライン33の信号の処理を行うが、i=num+1〜maxの有効領域情報については無視する。これにより、有効領域算出部81が、次にタッチ位置が含まれる可能性が高い新たな有効領域A1〜Anumを、設定することが可能になる。
そして、新たなタッチ情報が出力される場合は(ステップ#17、YES)、ステップ#13に戻り当該タッチ情報を取得する。一方、新たなタッチ情報が出力されない場合は(ステップ#17、NO)、動作を終了する。
以上のように、本例のタッチパネルシステム1rでは、タッチパネルコントローラ4が複数のタッチ位置を検出する場合(マルチタッチ時)であっても、領域設定部8は有効領域を設定することが可能である。そして、本例のタッチパネルシステム1rでは、検出されたそれぞれのタッチ位置に基づいて、タッチ位置の検出を行うべき領域である有効領域が、タッチパネル3内で限定的に設定される。そのため、無用な検出を避けることで、消費電力を低減するとともにタッチ操作の検出感度を向上することができる。
また、本例のタッチパネルシステム1rでは、検出されたそれぞれのタッチ位置に対応する有効領域が、それぞれ設定される。そのため、領域設定部8が設定するそれぞれの有効領域の間に、隙間(有効領域ではない領域)を設けることが可能になる。そのため、領域設定部8が設定する有効領域の総面積を、小さくすることが可能になる。
なお、上述したタッチパネルコントローラ4の動作と、領域設定部8の動作(図42のステップ#13〜#19の動作)と、は所定のフレームレート(例えば、120Hz)で繰り返し行われる。
また、有効領域算出部81が、「スポット駆動モード」であるか「全面検出モード」であるかを動作中に逐次確認することとしたが(ステップ#14)、この確認を逐次行わなくてもよい。例えば、有効領域算出部81が、ステップ#12の後にこの確認を行い、その後ユーザ等から何らかの指示が入力されるまで、それぞれのモードに応じた動作を行ってもよい。
また、有効領域算出部81が、「スポット駆動モード」であるときに、タッチパネルコントローラ4によってタッチ位置が検出されたか否かにかかわらず、所定のタイミング(例えば、所定のフレーム数毎に)で、タッチパネル3の全面となる新たな有効領域を設定してもよい。具体的に例えば、図42において、ステップ#18を行う前に所定のタイミングか否かを判断し、所定のタイミングであればステップ#15を行い、そうでなければステップ#18を行うようにしてもよい。
このようにすると、領域設定部8が、タッチパネルコントローラ4が順次検出するタッチ位置に応じて有効領域を順次設定する動作(スポット駆動)を開始した後に、タッチパネル3上の別の場所でタッチ操作が行われたとしても、所定のタイミングでタッチパネル3の全面となる有効領域が設定されるため、そのタッチ位置をタッチパネルコントローラ4が検出することが可能になる。
なお、領域設定部8が設定する有効領域の大きさ(例えば、WD_Di及びWD_Si)は、同じであってもよいが、有効領域毎(i毎)に異ならせてもよい。また、領域設定部8が設定する有効領域の大きさ(例えば、WD_Di及びWD_Si)は、固定値であってもよいが、可変値であってもよい。有効領域の大きさを可変値にする場合、第1動作例でも述べたように(図37参照)、領域設定部8が、タッチ位置の移動速度に応じた大きさの新たな有効領域を設定すると、次にタッチ位置が検出される位置が、当該新たな有効領域に含まれる可能性を高くすることができるため、好ましい。
この場合における有効領域の具体的な設定方法の例について、図44を参照して説明する。図44は、第2動作例における有効領域の設定方法の別例について示す図である。図図44は、現フレームにおける第1のタッチ位置が(Xp1a,Yp1a)、第2のタッチ位置が(Xp2a,Yp2a)であり、次フレームにおける第1のタッチ位置が(Xp1b,Yp1b)、第2のタッチ位置が(Xp2b,Yp2b)である場合について例示している。また、現フレームにおける第1のタッチ位置のX方向の移動速度をVx1、Y方向の移動速度をVy1、現フレームにおける第2のタッチ位置のX方向の移動速度をVx2、Y方向の移動速度をVy2とするとともに、フレームレートをfとする。
領域設定部8は、現フレームにおける第1のタッチ位置(Xp1a,Yp1a)及び移動速度(Vx1,Vy1)に基づいて、次フレームにおける第1のタッチ位置(Xp1b,Yp1b)が含まれるように、新たな有効領域を設定する。即ち、領域設定部8は、WD_S1≧2×Vx1/f、WD_D1≧2×Vy1/fとなるように、新たな有効領域を設定する。同様に、領域設定部8は、現フレームにおける第2のタッチ位置(Xp2a,Yp2a)及び移動速度(Vx2,Vy2)に基づいて、次フレームにおける第2のタッチ位置(Xp2b,Yp2b)が含まれるように、新たな有効領域を設定する。即ち、領域設定部4は、WD_S2≧2×Vx2/f、WD_D2≧2×Vy2/fとなるように、新たな有効領域を設定する。
また、領域設定部8において、順次得られるそれぞれのタッチ位置を記憶部82に記憶するなどしてそれぞれのタッチ位置の変動量を求め、当該変動量に基づいて現フレームにおけるそれぞれのタッチ位置の移動速度を求めてもよい。
また、領域設定部8は、必ずしもそれぞれのタッチ位置を中心としたそれぞれの有効領域を設定しなくてもよい。例えば、タッチパネル3の端辺近傍で、あるタッチ位置が検出された場合、領域設定部8は、当該端辺側に当該あるタッチ位置が偏った有効領域を設定してもよい。また、領域設定部8は、タッチ位置の移動方向に基づいた有効領域を設定してもよい。例えば、領域設定部8は、あるタッチ位置の移動方向とは反対方向に当該あるタッチ位置が偏った有効領域を設定してもよい。
また、これまでの第2動作例の説明において、主としてタッチパネル3上に2つのタッチ位置が離間する場合について例示してきたが、図30に示すタッチパネルシステム1rは、タッチパネル3上に3つ以上のタッチ位置があっても同様に動作することができる。これについて、図面を参照して説明する。図45は、第2動作例においてタッチパネル内に設定される有効領域の別例を示すブロック図である。なお、図45では、タッチパネル3上に3つのタッチ位置が離間する場合を例示している。
図45に示すように、タッチパネル3上に3つのタッチ位置があったとしても、領域設定部8は、それぞれのタッチ位置に対応する有効領域A1〜A3を設定することができる(図42参照)。このとき、ドライブライン駆動回路5は、有効領域A1を通るドライブライン35r1と、有効領域A2を通るドライブライン35r2と、有効領域A3を通るドライブライン35r3と、をそれぞれ選択的に駆動すればよい。またこのとき、タッチパネルコントローラ4は、有効領域A1を通るセンスライン33r1と、有効領域A2を通るセンスライン33r2と、有効領域A3を通るセンスライン33r3と、のそれぞれの信号を選択的に処理すればよい。なお、ドライブライン35r1〜35r3及びセンスライン33r1〜33r3は、図中において太い実線で表示している。
このように、タッチパネル3上のタッチ位置の数が変動したとしても、領域設定部8が設定する有効領域の変動に合わせて、駆動すべきドライブラインや信号を処理すべきセンスラインが変動するだけである。したがって、図30に示すタッチパネルシステム1rは、タッチパネル3上に3つ以上のタッチ位置があるマルチタッチについても、2つのタッチ位置がある場合(図38〜図44参照)と同様に対応することができる。
ところで、これまでの第2動作例の説明では、タッチパネル3上でタッチ位置が離間する場合について例示してきたが、タッチパネル3上でタッチ位置が近接する場合もあり得る。この場合における、図30に示したタッチパネルシステム1rの動作例について、図面を参照して説明する。図46は、第2動作例においてタッチパネル内に設定される有効領域の別例を示すブロック図である。なお、図46では、タッチパネル3上に2つのタッチ位置が近接する場合を例示している。
図46に示すように、タッチパネル3上でタッチ位置が近接する場合、領域設定部8は、一部の領域が重複した有効領域A1,A2を設定し得る。このとき、ドライブライン駆動回路5は、有効領域A1のみを通るドライブライン35r11と、有効領域A2のみを通るドライブライン35r22と、有効領域A1,A2の両方を通るドライブライン35r12と、をそれぞれ選択的に駆動する。またこのとき、タッチパネルコントローラ4は、有効領域A1のみを通るセンスライン33r11と、有効領域A2のみを通るセンスライン33r22と、有効領域A1,A2の両方を通るセンスライン33r12と、のそれぞれの信号を選択的に処理する。なお、ドライブライン35r11,35r22,35r12及びセンスライン33r11,33r22,33r22は、図中において太い実線で表示している。
この場合における、ドライブライン駆動回路5によるドライブライン35の駆動方法の具体例について、図面を参照して説明する。図47は、第2動作例におけるドライブライン駆動回路によるドライブラインの具体的な駆動方法の別例を示す図である。なお、図47は、図46に示す有効領域A1,A2が設定される場合を想定したものである。
図47に示すように、ドライブライン駆動回路5は、有効領域A1のみを通るドライブライン35r11と、有効領域A2のみを通るドライブライン35r22と、有効領域A1,A2の両方を通るドライブライン35r12と、のそれぞれに対して、上述した固有の駆動信号(図32参照)を印加する。さらに、ドライブライン駆動回路5は、有効領域A1,A2のいずれも通らないドライブラインのそれぞれを接地するなどして、当該ドライブラインの信号レベルが時間的に変化することを抑制する。
また、この場合における、増幅部71の具体的な動作例について、図面を参照して説明する。図48は、第2動作例における増幅部の具体的な動作の別例について示すブロック図である。なお、図48に示す増幅部71は、図40に示した増幅部71と同様のものである。また、図48は、図46に示す有効領域A1,A2が設定される場合を想定したものである。
図48に示すように、有効領域A1のみを通るセンスライン33r11と、有効領域A2のみを通るセンスライン33r22と、有効領域A1,A2の両方を通るセンスライン33r12と、のそれぞれの信号が供給される開閉スイッチ712は、導通状態になる。これにより、有効領域A1のみを通るセンスライン33r11と、有効領域A2のみを通るセンスライン33r22と、有効領域A1,A2の両方を通るセンスライン33r12と、のそれぞれの信号が、増幅器711で増幅されて、増幅部71から出力される。一方、有効領域A1,A2のいずれも通らないセンスラインの信号が供給される開閉スイッチ712は、非導通状態になる。これにより、有効領域Aを通らないセンスラインの信号は、増幅器711で増幅されず、増幅部71から出力されないことになる。
また、この場合における、信号取得部72の具体的な動作例について、図面を参照して説明する。図49は、第2動作例における選択取得部の具体的な動作の別例について示すブロック図である。なお、図49に示す信号取得部72は、図41に示した信号取得部72と同様のものである。また、図49は、図46に示す有効領域A1,A2が設定される場合を想定したものである。
図49に示すように、分岐スイッチ721は、有効領域A1のみを通るセンスライン33r11と、有効領域A2のみを通るセンスライン33r22と、有効領域A1,A2の両方を通るセンスライン33r12と、のそれぞれに対応する端子とは接続し得る。これにより、増幅部71で増幅された、有効領域A1のみを通るセンスライン33r11の信号と、有効領域A2のみを通るセンスライン33r22の信号と、有効領域A1,A2の両方を通るセンスライン33r12の信号と、のそれぞれが後段に出力される。一方、分岐スイッチ721は、有効領域A1,A2のいずれも通らないセンスラインに対応する端子とは接続しない。これにより、有効領域A1,A2のいずれも通らないセンスラインの信号は、後段に出力されないことになる。
このように、タッチパネル3上で検出されるタッチ位置が近接したとしても、領域設定部8が設定する有効領域の変動に合わせて、駆動すべきドライブラインや信号を処理すべきセンスラインを変動させるだけである。したがって、図30に示すタッチパネルシステム1rは、タッチパネル3上の複数のタッチ位置が近接した場合におけるマルチタッチについても、タッチ位置が離間する場合(図38〜図44参照)と同様に対応することができる。
上記のように、タッチパネル3上の複数のタッチ位置が近接している状況では、実質的に、領域設定部8が、それぞれのタッチ位置を包含する有効領域を設定することになる。なお、領域設定部8が、タッチパネル3上の複数のタッチ位置が近接している場合において、それぞれのタッチ位置を包含する包括的な有効領域を設定するように、有効領域情報の算出などを行なってもよい。
また、タッチパネル3上の複数のタッチ位置が近接しているか否かにかかわらず、領域設定部8が、タッチパネルコントローラ4が検出した複数のタッチ位置に基づいて、有効領域を設定してもよい。具体的に例えば、領域設定部8が、タッチパネルコントローラ4が検出したそれぞれのタッチ位置を包含する包括的な有効領域を設定してもよい。
(4)その他
[1] 増幅部71及び信号取得部72の双方が、有効領域情報に基づいてセンスライン33の信号を選択的に処理する構成について例示したが、いずれか一方が選択的な処理を行う構成であってもよい。これらの処理のいずれか一方が行われる場合であっても、消費電力を低減することは可能である。
[2] ドライブライン駆動回路5がドライブライン35を選択的に駆動する動作(第1動作)と、タッチパネルコントローラ4がセンスライン33の信号を選択的に処理する動作(第2動作)と、が共に行われる場合について例示したが、いずれか一方の動作が行われてもよい。これらの動作のいずれか一方が行われる場合であっても、消費電力の低減やタッチ操作の検出感度の向上を図ることができる。
[3] 本発明の1つの実施形態として、投影型の静電容量方式のタッチパネルシステムについて例示したが、本発明は、別の投影型の静電容量方式や、表面型の静電容量方式、光学式など、選択的な駆動または選択的な処理が可能であるタッチパネルシステムであれば、どのような方式のタッチパネルシステムであっても適用することが可能である。
<<変形等>>
本発明は、上述した第1の特徴及び第2の特徴におけるそれぞれの実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、第1の特徴における実施の形態1〜17及び第2の特徴に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。すなわち、今回開示された第1の特徴における実施の形態1〜17及び第2の特徴は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、第1の特徴における実施の形態1〜17及び第2の特徴の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が本発明の範囲に含まれることが意図される。