以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明では、本発明の権利範囲に含まれないものも実施の形態として記載されているが、ここでは全て実施の形態として説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
<マイクロミラーアレイの構成>
図1,図2に示すように、本実施の形態に係るマイクロミラーアレイは、例えばシリコン基板などから構成された電極基板1と、電極基板1から離間して電極基板1と略平行に対向して配置され、例えばSOI(Silicon-On-Insulator)基板などから構成されるミラー基板2とを備えている。便宜上、以下においては、電極基板1とミラー基板2の平面に沿った方向を「X軸方向」、その平面に沿いかつX軸方向に直交する方向を「Y軸方向」、X軸方向およびY軸方向に直交する方向を「Z軸方向」という。
電極基板1は、平面視略矩形の開口を有し、この開口の底面に固定電極3が配設されている。この固定電極3は、後述するミラー基板2の可動電極53と対向する位置に配置されている。また、電極基板1上には配線が形成されており、この配線を介して接続された外部電源から供給される電圧が固定電極3に印加される。なお、配線は、電極基板1を貫通するように形成されていてもよい。
ミラー基板2は、X軸方向に延在し、かつ、互いに平行に配設された一対の基部4,4’と、この一対の基部4,4’の間にX軸方向に配列された複数のミラー構造体5(図3参照)と、ミラー構造体5毎に設けられ、Y軸方向に延在し、基部4,4’とミラー構造体5とを連結する一対の支持部材6,6’とを備えている。
本実施の形態においては、固定電極3とミラー構造体5によりマイクロミラー素子が構成され、このマイクロミラー素子がX軸方向に配列されることにより、マイクロミラーアレイが構成されることとなる。
ここで、ミラー構造体5は、図3に示すように、支持部材6を介して一方の基部4に連結されたミラー51と、支持部材6’を介して他方の基部4’に連結されたバランサ部材52と、一対の連結部材54,54’を介してミラー51およびバランサ部材52に連結された可動電極53とを備えている。このようにミラー構造体5は、支持部材6,6’により、これらを結ぶY軸に平行な軸(回動軸)α回りに回動可能に支持されている。また、ミラー51,バランサ部材52および可動電極53は、Y軸方向に離間している。
ミラー51は、平面視略矩形に形成されており、各辺がX軸またはY軸に対して平行に配置されている。このようなミラー51の各辺のうち、基部4と対向する辺には、X軸方向における一方の側(以下、「負の側」とする。)の端部に、支持部材6が接続されている。また、基部4’と対向する辺には、X軸方向における負の側の端部に、連結部材54の一端が接続されている。この連結部材54の一端は、回動軸α上に位置しているので、回動軸αは、ミラー51のY軸方向に平行な辺のうち、X軸方向における負の側の辺の近傍を通ることとなる。このため、ミラー51は、全体として回動軸αに対してX軸方向の正の側に位置しているので、ミラー51の重心も、回動軸αに対してX軸方向の正の側に位置することとなる。なお、ミラー51上面には、反射膜が形成されている。
バランサ部材52は、ミラー51と同等の大きさの平面視略矩形に形成されており、各辺がX軸またはY軸に対して平行に配置されている。このようなバランサ部材52の各辺のうち、基部4’と対向する辺には、X軸方向における負の側の端部に、支持部材6’が接続されている。また、基部4と対向する辺には、X軸方向における負の側の端部に、連結部材54’の一端が接続されている。この連結部材54’の一端は、回動軸α上に位置しているので、回動軸αは、バランサ部材52のY軸方向に平行な辺のうち、X軸方向における負の側の辺近傍を通ることとなる。このため、バランサ部材52は、全体として回動軸αに対してX軸方向の正の側に位置しているので、バランス部材52の重心も、回動軸αに対してX軸方向の正の側に位置することとなる。なお、バランサ部材52の上面には、ミラー51に形成された反射膜と同等の材料が配設されている。
可動電極53は、ミラー51とバランサ部材52を連結した程度の面積を有する平面視略矩形に形成されており、各辺がX軸またはY軸に対して平行に配置されている。このような可動電極53の各辺のうち、基部4と対向する辺には、ミラー51に接続された一端からX軸方向の負の側に延在する連結部材54の他端が接続されている。また、基部4’と対向する辺には、バランサ部材52に接続された一端からX軸方向の負の側に延在する連結部材54’の他端が接続されている。したがって、可動電極53は、回動軸αに対してX軸方向の負の側に位置しているので、可動電極53の重心も、可動電極53と回動軸αとを含む面内において回動軸αからX軸方向の負の側に離間した箇所に位置している。
このように、ミラー構造体5は、回動軸αに対して、ミラー51およびバランサ部材52をX軸方向の正の側、ミラー51とバランサ部材52を合計した面積を有する可動電極53をX軸方向における負の側に位置させて、回動軸αを挟んで各部材の重量のバランスをとることにより、重心Gが回動軸α上に位置するように設定されている。また、重心Gが、両支持部材6,6’のミラー51またはバランサ部材52との接続端間の中心に位置するように設定されている。このようにミラー構造体5の重心Gが回動軸αの中点上にあるので、外乱を受けてもミラー構造体5が回動軸α、β(重心を通るZ軸に平行な回動軸)、γ(重心を通るX軸に平行な回動軸)回りに回動するのを防ぐことができるので、結果として、光パワーの揺らぎを防ぐことができる。
また、ミラー構造体5は、ミラー51、バランサ部材52および可動電極53がY軸方向に離間している。これにより、ミラー構造体5をX軸方向に並べてミラーアレイを形成するとき、いわゆる入れ子構造に並べることが可能となるので、隣り合うミラー構造体5の構成要素と干渉せずに近接して高密度に並べることができる。したがって、ミラー51のフィルファクタを向上させることができる。
なお、本実施の形態においてミラー構造体5の重心Gは、ミラー51と支持部材6との接続端と、バランサ部材52と支持部材6’との接続端とを結ぶ直線(回動軸α)の中点に位置している。さらに、ミラー構造体5は、その中点を通るX軸方向に平行な直線に対して線対称に形成されている。
<マイクロミラーアレイの動作>
次に、本実施の形態に係るマイクロミラーアレイの動作について説明する。
まず、固定電極3に電圧を印加していない場合、ミラー構造体5は、支持部材6,6’により支持されて、ミラー51、バランサ部材52および可動電極53が、電極基板1やミラー基板2と平行な同一平面内に位置した状態となっている。
この状態から固定電極3に電圧を印加すると、ミラー構造体5は、発生する静電引力により固定電極3と対向して配置された可動電極53が固定電極3の方に、Z軸方向の負の側に変位するので、回動軸α回りに回動することとなる。このとき、可動電極53は、回動軸αから離れた位置に配設されている。したがって、静電引力が小さくても大きなトルクを得ることができるので、ミラー構造体5を低電圧で大きく回動させることができる。このように、低電圧で大きな回動を実現できるので、特殊なドライバなどが不用となり、結果として、低コスト化を実現できる。
固定電極3が下方に変位した状態から固定電極3への電圧の印加を停止すると、ミラー構造体5は、固定電極3により発生していた静電引力が無くなるので、支持部材6,6’から受ける回動軸α回りのねじりの力により、ミラー51、バランサ部材52および可動電極53が、電極基板1やミラー基板2と平行な同一平面内に位置した状態に戻ることとなる。
本実施の形態に係るマイクロミラーアレイにおける駆動特性と加速度に対する変化について測定を行った。この測定結果を図4,図5に示す。なお、図4,図5に示す測定結果は、図3に示すミラー構造体5に関するものである。このときのミラー構造体5の各部の寸法は次の通りである。ミラー51およびバランサ部材52は、X軸方向およびY軸方向の長さがそれぞれ100[μm]である。可動電極53は、X軸方向の長さが100[μm]、Y軸方向の長さが200[μm]である。連結部材54,54’は、Y軸方向の長さが43[μm]である。
図4に示すように、本実施の形態では、4[deg]の回動角を実現するのに固定電極3に印加した電圧が20[V]であった。このように本実施の形態では、可動電極53を回動軸αから離れた位置に配設することにより、ミラー構造体5を低電圧で大きく回動できることが確認された。
また、図5に示すように、本実施の形態では、20[g]の加速度を与えても、回動角の変動が見られなかった。このように本実施の形態では、ミラー構造体5の重心Gを回動軸α上に位置させることにより、外乱を受けてもミラー構造体5が回動軸α回りに回動するのを防ぐことができることが確認された。
<マイクロミラーアレイの製造方法>
次に、図6A〜図8を参照して、本実施の形態に係るマイクロミラーアレイの製造方法について説明する。
まず、図6Aに示すように、例えばシリコン単結晶からなるシリコン基板101を用意する。次に、図6Bに示すように、シリコン基板101上にレジストパターン102を形成する。このレジストパターン102は、公知のフォトリソグラフィー技術により形成すればよい。
次に、図6Cに示すように、レジストパターン102をマスクとした公知のドライエッチングなどにより、シリコン基板101を選択的にエッチングし、平面視略矩形の開口を形成する。次に、図6Dに示すように、レジストパターン102を除去した後、図6Eに示すように、シリコン基板101に形成した開口の底面に固定電極3を形成する。例えばスパッタ法などにより金属を堆積することで、固定電極3を形成できる。また、メッキ法などにより金属を堆積して固定電極3を形成してもよい。以上の工程により、電極基板1が生成される。
次に、図7Aに示すように、SOI(Silicon on Insulator)基板111を用意する。このSOI基板111は、シリコン基部112の上に、埋め込み絶縁層113を介して表面シリコン層114が形成された基板である。
次に、図7Bに示すように、表面シリコン層114上に、基部4,4’、ミラー構造体5および支持部材6,6’の平面形状に対応したレジストパターン115を形成する。このレジストパターン115は、公知のフォトリソグラフィー技術により形成すればよい。
次に、図7Cに示すように、レジストパターン115をマスクとした公知のドライエッチングなどにより表面シリコン層114を選択的にエッチングした後、図7Dに示すように、レジストパターン115を除去する。
次に、図7Eに示すように、シリコン基部112および埋め込み絶縁層113を選択的にエッチングして除去することにより、基部4,4’、ミラー構造体5および支持部材6,6’を形成する。
次に、図7Fに示すように、ミラー構造体5のミラー51およびバランサ部材52の表面に反射膜116を形成する。例えばスパッタ法などにより金などの金属を堆積することで、反射膜116を形成できる。また、メッキ法、抵抗加熱蒸着法などにより金などの金属を堆積して反射膜116を形成してもよい。以上の工程により、ミラー基板2が生成される。
次に、図8に示すように、上述した工程により生成した電極基板1とミラー基板2とを、電極基板1の開口が形成された側の面にミラー基板2の表面シリコン層114側の面を対向させるようにして、貼り合わせる。これにより、本実施の形態に係るマイクロミラーアレイが生成されることとなる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、可動電極53の重心が回動軸αと離れているので、低電圧で大きな回動を実現できるため、高電圧を印加するためのドライバなどが不用となり、結果として、低コストを実現できる。また、ミラー構造体5の重心Gは、回動軸α上にあるので、外乱を受けてもミラー構造体5が回動軸α回りに回動するのを防ぐことができ、結果として、安定した回動を実現することができる。
なお、本実施の形態では、可動電極53として平板状の電極を用いる場合を例に説明したが、可動電極53は、図9に示すように、棒状の第1の梁部材531から同じ方向に突出した棒状の複数の第2の梁部材532を備えた、いわゆる櫛歯状の可動電極53’から構成されるようにしてもよい。このとき、固定電極3は、板状の電極部材3’が所定間隔離間して互いに平行に配置された構成を有する。このような構成を採ることによっても、上述した本実施の形態による作用効果と同等の作用効果を実現することができる。
なお、固定電極3および可動電極53’の第2の梁部材532の形状を、図10に示すように、Y軸方向の幅を4[μm]、X軸方向の長さ80[μm]とし、かつ、第2の梁部材532を15個設けることにより、図4,図5に示した特性を得ることができた。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と固定電極3およびミラー構造体5の構成が異なるものである。したがって、本実施の形態において、上述した第1の実施の形態と同等の構成については同じ名称および符号を付し、適宜説明を省略する。
図11に示すように、本実施の形態におけるミラー構造体5aは、一対の連結部材54a,54a’の一端により支持されたミラー51aと、連結部材54aの他端と連結部材55aの一端により支持された第1の可動電極53aと、連結部材54a’の他端と連結部材55a’の一端により支持された第2の可動電極53a’とを備えている。ここで、連結部材55aの他端は、支持部材6が連結されている。同様に、連結部材55a’の他端は、支持部材6’が連結されている。したがって、ミラー構造体5aは、支持部材6,6’により、これらを結ぶY軸に平行な軸(回動軸α)回りに回動可能に支持されている。また、ミラー51a,第1の可動電極53aおよび第2の可動電極53a’は、Y軸方向に離間している。さらに、電極基板上には、第1の可動電極53aと対向する位置に固定電極3aが配置され、第2の可動電極53aと対向する位置に固定電極3a’が配置されている。
ここで、ミラー51aは、平面視略矩形に形成されており、各辺がX軸またはY軸に対して平行に配置されている。このようなミラー51aのX軸に平行な辺のうち、Y軸方向における正の側の辺には、X軸方向における負の側の端部に連結部材54aの一端が接続され、Y軸方向における負の側の辺には、X軸方向における負の側の端部に連結部材54a’の一端が接続されている。連結部材54a,54a’は、ミラー51aに接続された一端から、回動軸αを通過した位置までX軸方向における負の側に延在している。したがって、回動軸αは、ミラー51aよりもX軸方向における負の側に位置することとなる。このように、ミラー51aは、全体として回動軸αに対してX軸方向の正の側に位置しているので、ミラー51の重心も、回動軸αに対してX軸方向の正の側に位置することとなる。
第1の可動電極53aは、ミラー51aと同等の大きさの平面視略矩形に形成されており、各辺がX軸またはY軸に対して平行に配置されている。このような第1の可動電極53aのX軸に平行な辺のうち、Y軸方向における負の側の辺には、X軸方向における正の側の端部に、一端がミラー51aに接続された連結部材54aの他端が接続されている。また、Y軸方向における正の側の辺には、X軸方向における正の側の端部に連結部材55aの一端が接続されている。この連結部材55aは、その一端からX軸方向における正の側に延在しており、他端が支持部材6に接続されている。したがって、回動軸αは、第1の可動電極53aよりもX軸方向における正の側に位置することとなる。このように、第1の可動電極53aは、全体として回動軸αに対してX軸方向の負の側に位置しているので、第1の可動電極53aの重心も、回動軸αに対してX軸方向の負の側に位置することとなる。このような第1の可動電極53aは、第1の実施の形態におけるバランサ部材52および可動電極53として機能する。
第2の可動電極53a’は、ミラー51aと同等の大きさの平面視略矩形に形成されており、各辺がX軸またはY軸に対して平行に配置されている。このような第2の可動電極53a’のX軸に平行な辺のうち、Y軸方向における正の側の辺には、X軸方向における正の側の端部に、一端がミラー51aに接続された連結部材54a’の他端が接続されている。また、Y軸方向における負の側の辺には、X軸方向における正の側の端部に連結部材55a’の一端が接続されている。この連結部材55a’は、その一端からX軸方向における正の側に延在しており、他端が支持部材6’に接続されている。したがって、回動軸αは、第2の可動電極53a’よりもX軸方向における正の側に位置することとなる。このように、第2の可動電極53a’は、全体として回動軸αに対してX軸方向の負の側に位置しているので、第2の可動電極53a’重心も、回動軸αに対してX軸方向の負の側に位置することとなる。このような第2の可動電極53a’は、第1の実施の形態におけるバランサ部材52および可動電極53として機能する。
このように、ミラー構造体5aは、回動軸αに対して、ミラー51aをX軸方向の正の側、第1の可動電極53aおよび第2の可動電極53a’をX軸方向における負の側に位置させて、回動軸αを挟んで各部材の重量のバランスをとることにより、重心Gが回動軸α上に位置するように設定されている。このようにミラー構造体5aの重心Gが回動軸α上にあるので、外乱を受けてもミラー構造体5aが回動軸α回りに回動するのを防ぐことができるので、結果として、光パワーの揺らぎを防ぐことができる。
また、ミラー構造体5aは、ミラー51a、第1の可動電極53aおよび第2の可動電極53a’がY軸方向に離間している。これにより、ミラー構造体5aをX軸方向に並べてミラーアレイを形成するとき、いわゆる入れ子構造に並べることが可能となるので、隣り合うミラー構造体5aの構成要素と干渉せずに近接して高密度に並べることができる。したがって、ミラー51aのフィルファクタを向上させることができる。
さらに、第1の可動電極53aおよび第2の可動電極53a’は、回動軸αから離れた位置に配設されている。したがって、静電引力が小さくても大きなトルクを得ることができるので、ミラー構造体5aを低電圧で大きく回動させることができる。このように、低電圧で大きな回動を実現できるので、特殊なドライバなどが不用となり、結果として、低コスト化を実現できる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と固定電極3およびミラー構造体5の構成が異なるものである。したがって、本実施の形態において、上述した第1の実施の形態と同等の構成については同じ名称および符号を付し、適宜説明を省略する。
図12に示すように、本実施の形態におけるミラー構造体5bは、一対の連結部材54b,54b’の一端により支持されたミラー51bと、連結部材54bの他端により支持された第1の可動電極53bと、連結部材54b’の他端により支持された第2の可動電極53b’とを備えている。ここで、連結部材54bの一端側には、支持部材6が連結されている。同様に、連結部材54b’の一端側には、支持部材6’が連結されている。したがって、ミラー構造体5bは、支持部材6,6’により、これらを結ぶY軸に平行な軸(回動軸α)回りに回動可能に支持されている。また、ミラー51b,第1の可動電極53bおよび第2の可動電極53b’は、Y軸方向に離間している。さらに、電極基板上には、第1の可動電極53bと対向する位置に固定電極3bが配置され、第2の可動電極53b’と対向する位置に固定電極3b’が配置されている。
ここで、ミラー51bは、平面視略矩形に形成されており、各辺がX軸またはY軸に対して平行に配置されている。このようなミラー51bのX軸に平行な辺のうち、Y軸方向における正の側の辺には、X軸方向における負の側の端部に連結部材54bの一端が接続され、Y軸方向における負の側の辺には、X軸方向における負の側の端部に連結部材54b’の一端が接続されている。連結部材54b,54b’のミラー51bに接続された端部には、支持部材6または支持部材6’が接続されている。したがって、回動軸αは、ミラー51bのY軸方向に平行な辺のうち、X軸方向における負の側の辺の近傍を通ることとなる。このため、ミラー51bは、全体として回動軸αに対してX軸方向の正の側に位置しているので、ミラー51bの重心も、回動軸αに対してX軸方向の正の側に位置することとなる。
第1の可動電極53bは、ミラー51bと同等の大きさの平面視略矩形に形成されており、各辺がX軸またはY軸に対して平行に配置されている。このような第1の可動電極53bのX軸に平行な辺のうち、Y軸方向における負の側の辺には、X軸方向における正の側の端部に、一端がミラー51bに接続されてX軸方向の負の側に延在する連結部材54bの他端が接続されている。したがって、回動軸αは、第1の可動電極53bよりもX軸方向における正の側に位置することとなる。このように、第1の可動電極53bは、全体として回動軸αに対してX軸方向の負の側に位置しているので、第1の可動電極53bの重心も、回動軸αに対してX軸方向の負の側に位置することとなる。このような第1の可動電極53bは、第1の実施の形態におけるバランサ部材52および可動電極53として機能する。
第2の可動電極53b’は、ミラー51bと同等の大きさの平面視略矩形に形成されており、各辺がX軸またはY軸に対して平行に配置されている。このような第2の可動電極53bのX軸に平行な辺のうち、Y軸方向における正の側の辺には、X軸方向における正の側の端部に、一端がミラー51bに接続されてX軸方向の負の側に延在する連結部材54b’の他端が接続されている。したがって、回動軸αは、第2の可動電極53b’よりもX軸方向における正の側に位置することとなる。このように、第2可動電極53b’は、全体として回動軸αに対してX軸方向の負の側に位置しているので、第2の可動電極53b’の重心も、回動軸αに対してX軸方向の負の側に位置することとなる。このような第2の可動電極53b’は、第1の実施の形態におけるバランサ部材52および可動電極53として機能する。
このように、ミラー構造体5bは、回動軸αに対して、ミラー51bをX軸方向の正の側、第1の可動電極53bおよび第2の可動電極53b’をX軸方向における負の側に位置させて、回動軸αを挟んで各部材の重量のバランスをとることにより、重心Gが回動軸α上に位置するように設定されている。また、重心Gが、支持部材6,6’の連結部材54b,54b’との接続端間の中心に位置するように設定されている。このようにミラー構造体5bの重心Gが回動軸αの中点上にあるので、外乱を受けてもミラー構造体5bが回動軸α、β(重心を通るZ軸に平行な回動軸)、γ(重心を通るX軸に平行な回動軸)回りに回動するのを防ぐことができるので、結果として、光パワーの揺らぎを防ぐことができる。
また、ミラー構造体5bは、ミラー51b、第1の可動電極53bおよび第2の可動電極53b’がY軸方向に離間している。これにより、ミラー構造体5bをX軸方向に並べてミラーアレイを形成するとき、いわゆる入れ子構造に並べることが可能となるので、隣り合うミラー構造体5bの構成要素と干渉せずに近接して高密度に並べることができる。したがって、ミラー51bのフィルファクタを向上させることができる。
さらに、第1の可動電極53bおよび第2の可動電極53b’は、回動軸αから離れた位置に配設されている。したがって、静電引力が小さくても大きなトルクを得ることができるので、ミラー構造体5bを低電圧で大きく回動させることができる。このように、低電圧で大きな回動を実現できるので、特殊なドライバなどが不用となり、結果として、低コスト化を実現できる。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態における支持部材6,6’に可動電極をさらに設けたものである。したがって、本実施の形態において、上述した第1の実施の形態と同等の構成については同じ名称および符号を付し、適宜説明を省略する。
図13に示すように、ミラー構造体5c、支持部材6cを介して一方の基部4に連結されたミラー51と、支持部材6c’を介して他方の基部4’に連結されたバランサ部材52と、一対の連結部材54,54’を介してミラー51およびバランサ部材52に連結された可動電極53とを備えている。このようにミラー構造体5cは、支持部材6c,6c’により、これらを結ぶY軸に平行な軸(回動軸α)回りに回動可能に支持されている。また、ミラー51,バランサ部材52および可動電極53は、Y軸方向に離間している。このようなミラー構造体5cは、重心Gが回動軸α上にあるように形成されている。
ここで、支持部材6cは、一端がミラー51に接続された第1の梁部材61と、この第1の梁部材61の他端が接続された第3の可動電極62と、一端が第3の可動電極62に接続され、他端が基部4に接続された第2の梁部材63とから構成されている。ここで、電極基板1上面には、第3の可動電極62と対向する位置に固定電極3cが配置されている。
同様に、支持部材6c’は、一端がバランサ部材52に接続された第1の梁部材61’と、この第1の梁部材61’の他端が接続された第3の可動電極62’と、一端が第3の可動電極62’に接続され、他端が基部4’に接続された第2の梁部材63’とから構成されている。ここで、電極基板1上面には、第3の可動電極62’と対向する位置に固定電極3c’が配置されている。なお、この第4の実施の形態において、可動電極53が本発明でいう第1の可動電極に相当し、固定電極3が第1の固定電極に相当し、可動電極62,62’が第2の可動電極に相当し、固定電極3c,3c’が第2の固定電極に相当する。
本実施の形態において、固定電極3c,3c’に電圧を印加すると、発生する静電引力により、固定電極3c,3c’と対向して配置された第3の可動電極62,62’が固定電極3c,3c’に引き寄せられる。したがって、例えば、固定電極3c,3c’の一方に電圧を印加したり、固定電極3c,3c’に互い違いに電圧を印加することにより、ミラー構造体3cをX軸回りに回動させることができる。
なお、本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態で説明した作用効果と同等の作用効果を得られることは言うまでもない。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第3の実施の形態における支持部材6,6’に第4の実施の形態における可動電極6c,6c’と同等の構成をさらに設けたものである。したがって、本実施の形態において、上述した第3の実施の形態と同等の構成については同じ名称および符号を付し、適宜説明を省略する。
図14に示すように、本実施の形態におけるミラー構造体5dは、一対の連結部材54b,54b’の一端により支持されたミラー51bと、連結部材54bの他端により支持された第1の可動電極53bと、連結部材54b’の他端により支持された第2の可動電極53b’とを備えている。ここで、連結部材54bの一端側には、支持部材6dが連結されている。同様に、連結部材54b’の一端側には、支持部材6d’が連結されている。したがって、ミラー構造体5dは、支持部材6d,6d’により、これらを結ぶY軸に平行な軸(回動軸α)回りに回動可能に支持されている。また、ミラー51b,第1の可動電極53bおよび第2の可動電極53b’は、Y軸方向に離間している。また、電極基板上には、第1の可動電極53bと対向する位置に固定電極3bが配置され、第2の可動電極53b’と対向する位置に固定電極3b’が配置されている。さらに、このようなミラー構造体5dは、重心Gが回動軸αの中点上にあるように形成されている。
ここで、支持部材6dは、一端が連結部材54bに接続された第1の梁部材61と、この第1の梁部材61の他端が接続された第3の可動電極62と、一端が第3の可動電極62に接続され、他端が基部4に接続された第2の梁部材63とから構成されている。ここで、電極基板1上面には、第3の可動電極62と対向する位置に固定電極3dが配置されている。
同様に、支持部材6d’は、一端が連結部材54b’に接続された第1の梁部材61’と、この第1の梁部材61’の他端が接続された第3の可動電極62’と、一端が第3の可動電極62’に接続され、他端が基部4’に接続された第2の梁部材63’とから構成されている。ここで、電極基板1上面には、第3の可動電極62’と対向する位置に固定電極3d’が配置されている。なお、この第5の実施の形態において、可動電極53b,53b’が本発明でいう第1の可動電極に相当し、固定電極3b,3b’が第1の固定電極に相当し、可動電極62,62’が第2の可動電極に相当し、固定電極3d,3d’が第2の固定電極に相当する。
本実施の形態において、固定電極3d,3d’に電圧を印加すると、発生する静電引力により、固定電極3d,3d’と対向して配置された第3の可動電極62,62’が固定電極3d,3d’に引き寄せられる。したがって、例えば、固定電極3d,3d’の一方に電圧を印加したり、固定電極3d,3d’に互い違いに電圧を印加することにより、ミラー構造体3dをX軸回りに回動させることができる。
なお、本実施の形態においても、上述した第3の実施の形態で説明した作用効果と同等の作用効果を得られることは言うまでもない。
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態にさらにバランサ部材(第2のバランサ部材)を設けたものである。したがって、本実施の形態において、上述した第1の実施の形態と同等の構成については同じ名称および符号を付し、適宜説明を省略する。
図15に示すように、ミラー構造体5eは、支持部材6を介して一方の基部4に連結されたミラー51と、支持部材6’を介して他方の基部4’に連結されたバランサ部材52と、一対の連結部材54,54’を介してミラー51およびバランサ部材52に連結された可動電極53と、連結部材57を介してミラー51に連結された第2のバランサ部材56と、連結部材57’を介してバランサ部材52に連結された第2のバランサ部材56’とを備えている。このようにミラー構造体5eは、支持部材6,6’により、これらを結ぶY軸に平行な軸(回動軸α)回りに回動可能に支持されている。また、ミラー51,バランサ部材52および可動電極53は、Y軸方向に離間している。さらに、このようなミラー構造体5eは、重心Gが回動軸αの中点上にあるように形成されている。
ここで、第2のバランサ部材56は、平面視略矩形に形成されており、各辺がX軸またはY軸に対して平行に配置されている。このような第2のバランサ部材56のX軸に平行な辺のうち、Y軸方向における負の側の辺には、X軸方向における負の側の端部に連結部材57の一端が接続されている。この連結部材57の他端は、ミラー51の連結部材54が接続された辺と反対側の辺の、X軸方向における正の側の端部に接続される。
また、第2のバランサ部材56’は、平面視略矩形に形成されており、各辺がX軸またはY軸に対して平行に配置されている。このような第2のバランサ部材56’のX軸に平行な辺のうち、Y軸方向における正の側の辺には、X軸方向における負の側の端部に連結部材57’の一端が接続されている。この連結部材57’の他端は、バランサ部材52の連結部材54’が接続された辺と反対側の辺の、X軸方向における正の側の端部に接続される。
このように、ミラー構造体5eは、ミラー51、バランサ部材52および可動電極53に加えて第2のバランサ部材56,56’を設け、回動軸αを挟んで各部材の重量のバランスをとって重心Gが回動軸α上に位置することにより、可動電極53を回動軸αからさらに離間させている。これにより、より大きなトルクを得ることができるので、ミラー構造体5eをより低電圧で大きく回動させることができる。
なお、本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態で説明した作用効果と同等の作用効果を得られることは言うまでもない。
[第7の実施の形態]
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態とバランサ部材52の構成が異なるものである。したがって、本実施の形態において、上述した第1の実施の形態と同等の構成については同じ名称および符号を付し、適宜説明を省略する。
図16に示すように、ミラー構造体5fは、支持部材6を介して一方の基部4に連結されたミラー51と、支持部材6’を介して他方の基部4’に連結されたバランサ部材52fと、一対の連結部材54,54’を介してミラー51およびバランサ部材52fに連結された可動電極53とを備えている。このようにミラー構造体5fは、支持部材6,6’により、これらを結ぶY軸に平行な軸(回動軸α)回りに回動可能に支持されている。また、ミラー51,バランサ部材52fおよび可動電極53は、Y軸方向に離間している。さらに、このようなミラー構造体5fは、重心Gが回動軸α上にあるように形成されている。
ここで、バランサ部材52fは、ミラー51と比較して、面積が小さくされている一方、厚さ、すなわちZ軸方向の長さが大きく形成されている。このように厚さを大きくして質量を増加させることにより、バランサ部材52fの面積を小さくしても、ミラー構造体5fの重心Gを回動軸α上に位置させることができる。これにより、ミラー構造体5fを小型化できるので、ミラーアレイについても小型化を実現することができる。
なお、図17に示すバランサ部材52f’のように、異なる材料を用いて厚さをミラー51等と異ならせるようにしてもよい。このバランサ部材52f’では、シリコン521上に例えば金など密度の高い材料522が配設されている。これにより、より小型化したミラー構造体5eとすることができる。