以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態のエアコンユニット100の一部である、エアミックスダンパ(以下「ダンパ」と略す)50近傍の概略構成を表すものである。エアコンユニット100は、車両に搭載されて車両室内の空調を担うものであり、図示しないエバポレータを経た冷風が、冷風送出壁101の中央部において開口するように形成された冷風口101aから送出され、また、図示しないヒータを経た温風が、温風送出壁102の中央部において開口するように形成された温風口102aから送出される。そして、冷風口101a及び温風口102aから送出した冷風及び温風が混合され、図示しない吹き出し口から車室内へ送出される。
そして、吹き出し口から車室内へ送出される混合風の温度は、ダンパ50の位置(開度)によって制御される。ダンパ50は、図1に示すように、略板状に形成されていてその一端辺が第3減速ギア114においてその回転軸と平行となるように取り付けられている。これにより、第3減速ギア114が回転すると、その回転軸を略中心としてスイングするように駆動される。
即ち、第3減速ギア114が図中時計回り方向に回転すると、ダンパ50は温風口102a側に駆動され、やがて温風送出壁102の壁面102bに突き当たり、これにより温風口102aが閉じられる。つまり、ダンパ50が温風口102aに近づくほど、冷風の量に対して温風の量が相対的に少なくなって車室内に送出される混合風の温度は低くなる。逆に、第3減速ギア114が図中反時計回り方向に回転すると、ダンパ50は冷風口101a側に駆動され、やがて冷風送出壁101の壁面101bに突き当たり、これにより冷風口101aが閉じられる。つまり、ダンパ50が冷風口101aに近づくほど、温風の量に対して冷風の量が相対的に少なくなって車室内に送出される混合風の温度は高くなる。尚、各送出壁101,102は本発明の固定部材に相当する。
そして、ダンパ50は、モータ2により駆動される。即ち、モータ2の回転駆動力が、モータ2の回転軸に固定されたウォームギア111、このウォームギア111と噛み合うように設けられた第1減速ギア112、この第1減速ギア112と噛み合うように設けられた第2減速ギア113、及びこの第2減速ギア113と噛み合うように設けられた第3減速ギア114を介して、駆動対象としてのダンパ50に伝達される。尚、モータ2は、後述するようにブラシ付きの直流モータである。また、図1中の符号120は荷重センサであるが、この荷重センサ120については後述する。
次に、モータ2の回転を制御(延いてはダンパ50の駆動を制御)するためのダンパ駆動システムについて、図2を用いて説明する。
本実施形態のダンパ駆動システムは、モータ2及び上述した各ギア111〜114からなるモータユニット110と、モータ2を回転駆動させる(トルクを発生させる)ための直流電圧を出力する直流電源3とを備えている。また、直流電源3の正極からモータ2を経てグランドライン(グランド電位)に至る通電経路における、直流電源3の正極とモータ2の第1端子2aとの間には、モータ2に流れる電流(モータ電流)を検出するための電流検出部21が設けられている。また、上記通電経路における、直流電源3の正極と電流検出部21の間には、インピーダンス素子26が設けられている。また、上記通電経路における電流検出部21の上流側とモータ2の第2端子2bとの間には、ダイオードDbが並列接続されている。このダイオードDbは、モータ2の第2端子2bから電流検出部21の上流側への通電方向が順方向となるように接続されている。また、直流電源3は、所定電圧値Vbの直流電圧を出力するものであり、その直流電圧がモータ2に印加される(詳しくは各ブラシ16,17間に印加される)。
尚、インピーダンス素子26は、電流検出部21にてモータ電流を確実に検出できるようにする(特に後述するようにモータ電流に含まれる交流成分を確実に検出できるようにする)ために設けられており、そのインピーダンス値は、モータ2のインピーダンス値に比べて非常に小さいものである。このインピーダンス素子26は、具体的には例えばコイルや抵抗により実現できる。
尚、本実施形態のダンパ駆動システムは、実際には、モータ2の回転方向を切り替え可能に構成されている。具体的には、図1では、モータ2に対して第1端子2aから第2端子2bの方向(正方向)へ通電してモータ2を正転させる(ダンパ50を冷風送出壁101側へ駆動する)ための回路が示されているが、その他にも、モータ2に対して第2端子2bから第1端子2aの方向(逆方向)へ通電してモータ2を逆転させる(ダンパ50を温風送出壁102側へ駆動する)ことも可能に構成されている。但し、本明細書では、説明の簡略化のため、逆方向への通電のための回路及びその制御については説明を省略し、正方向への通電のための回路に着目して説明する。尚、後述するイニシャライズも、本実施形態では基本的にはモータ2を正転させる(ダンパ50を冷風送出壁101へ突き当てる)ことにより行われる。
また、上記通電経路におけるモータ2の下流側、即ちモータ2の第2端子2bとグランドラインの間には、この経路を導通・遮断するためのスイッチMOS(本発明のスイッチ手段に相当)が配置されている。このスイッチMOSは、本実施形態ではNチャネルMOSFETであり、制御ユニット20の制御部24からの駆動信号Smに従ってON・OFFされる。制御部24からの駆動信号Smは、0V(ローレベル)又は5V(ハイレベル)のパルス状の信号であり、スイッチMOSは、駆動信号Smが0VのときはOFFされ、駆動信号Smが5VのときにONされる。
制御ユニット20は、スイッチMOSを制御することによりモータ2の通電を制御するものであり、既述の電流検出部21と、この電流検出部21により検出されたモータ電流に基づく各種信号処理を行ってモータ2の回転角に応じた回転パルスSpを生成する信号処理部22と、この信号処理部22からの回転パルスSpに基づいてモータ2の回転状態(本実施形態では少なくとも回転角及び回転速度)を検出する回転検出部23と、この回転検出部23により検出された回転状態に基づいて駆動信号Smを生成することによりモータ2への通電を制御する制御部24と、を備えている。
本実施形態の制御部24は、モータ2の起動から停止までの全期間で、スイッチMOSを所定のDuty(デューティ比)にてON・OFFさせるいわゆるPWM制御によって、モータ2の回転を制御する。
より具体的には、起動〜定常回転中は、例えば5:5のDuty(50%)でスイッチMOSをON・OFF制御する。そして、定常回転中のモータ2を停止させるための制動制御(ブレーキ)時は、例えば1:9のDuty(10%)でスイッチMOSをON・OFF制御する。
但し、後述するイニシャライズ処理では、起動後、ダンパ50が所定の突き当て直前位置(冷風送出壁101に突き当たる位置よりも所定角度前の位置)へ駆動されるまではDuty90%で駆動(定常回転)し、突き当て直前位置に到達した以後はDuty70%に切り替え、更に、突き当てを検出したらDuty10%として制動制御(ブレーキ)を行う。
このようなPWM制御により、DutyにおけるONの比率を大きくすればモータ2のトルクも上昇し、逆に、OFFの比率を大きくするほどモータ2のトルクや回転速度は小さくなって、上記例の10%(1:9)のようにOFFの比率を非常に大きくすると、ONの期間があるもののモータ2は停止する。
そのため、回転時にモータ2に流れる電流は、図5に示すように、PWM制御の周波数(PWM周波数Sf)で増減(脈動)する電流となる。なお、図5は、制御部24がスイッチMOSを5:5のDutyにてON・OFF制御する起動〜定常回転時におけるモータ電流の一例を示している。図5から明らかなように、駆動信号Smが5VとなってスイッチMOSがONされるとモータ電流は増加し、逆に駆動信号Smが0VとなってスイッチMOSがOFFされるとモータ電流は減少し、これがPWM周波数Sfで繰り返される。
モータ2は、図3に示すように、軟磁性体の継鉄(ヨーク)で形成されたハウジング40を有し、このハウジング40内に、電機子コイルや図示しないロータコアなどの各種構成部品が収容されている。ハウジング40は、略円筒形の形状をなし、その内周面には、界磁発生用の2つの磁石41,42が径方向に互いに対向するように固定されている。各磁石41,42はいずれも永久磁石であり、電機子コイルと対向する面側の極性が一方はN極で他方がS極である。また、モータ2は、互いに対向して(即ち回転方向に180°離れて)配置された一対のブラシ16,17を備え、電機子コイルとして3相の相コイルを有している。つまり、本実施形態のモータ2は、界磁が2極のブラシ付き3相直流モータとして構成されている。
このモータ2は、各ブラシ16,17と接触する3つの整流子片11,12,13からなる整流子10を備えている。そして、電機子コイルを構成する3つ(3相)の各相コイルL1,L2,L3が、それぞれ、図示のようにΔ結線されている。
即ち、第3整流子片13と第1整流子片11との間に第1相コイルL1が接続され、第1整流子片11と第2整流子片12との間に第2相コイルL2が接続され、第2整流子片12と第3整流子片13との間に第3相コイルL3が接続されている。これら3つの相コイルL1,L2,L3からなる電機子コイル及び整流子10により、アーマチャが構成される。なお、各相コイルL1,L2,L3のインダクタンスは同じ値(L1=L2=L3)である。また、各相コイルL1,L2,L3は、互いに電気角で2/3πずつ離れるように配置されている。
そして、3つの整流子片11,12,13のうちいずれか2つが、各ブラシ16,17にそれぞれ接触しており、モータ2の回転による整流子10の回転に伴って、各ブラシ16,17と接触する2つの整流子片は切り替わっていく。
各ブラシのうち一方のブラシ16は第1端子2aに接続され、他方のブラシ17は第2端子2bに接続されている。そして、直流電源3からの直流電圧は、各ブラシ16,17の間に印加される。これにより、各ブラシ16,17間に形成される、モータ2内部の各相コイルL1,L2,L3等からなる回路(モータ回路)には、各ブラシ16,17及びこれに接触している整流子片を介して電流が流れる。
更に、本実施形態では、モータ2において、第1相コイルL1と並列に、コンデンサC1が接続されている。
コンデンサC1は、周知の通り、直流的には電流がほとんど流れない非常に高い抵抗として機能し、交流的には周波数が高くなればなるほど電流が流れやすい低インピーダンス特性を有する。そのため、直流電源3からみればこのコンデンサC1は等価的に存在しないものとして扱うことができ、よって、直流電源3からの直流電流は各相コイルL1,L2,L3にのみ流れることとなる。
一方、各ブラシ16,17間のモータ2内の回路(モータ回路)を交流回路としてみれば、各相コイルL1,L2,L3は高インピーダンスであるのに対してコンデンサC1は低インピーダンスとなり、両者の差は大きい。そのため、例えば図2に示す状態からモータ2が時計回りに回転(即ち整流子10が時計回りに回転)して、通電経路の下流側(グランド電位側)のブラシ17に第1整流子片11が接触するようになると、各ブラシ16,17間に、第1相コイルL1とコンデンサC1の並列回路(並列共振回路)が形成される。そのため、その状態では、各ブラシ16,17間のモータ回路のインピーダンスは並列共振特性を有し、その共振周波数以上の周波数帯域では周波数が高くなればなるほどインピーダンスは低くなる。
つまり、直流的にみればモータ回路は3つの相コイルL1,L2,L3のみからなる回路とみなせ、故に、直流電源3からの直流電流によって回転するモータ2の回転速度やトルクにコンデンサC1の存在が影響することはない。
これに対し、交流的にみれば、モータ2の回転角に応じて各ブラシ16,17と接触する2つの整流子片が切り替わる毎に、各ブラシ間に形成されるモータ回路も変化し、よってモータ回路のインピーダンスも変化する。但し、本実施形態では、第1相コイルL1に対してのみコンデンサC1を一つ接続しているため、モータ2が180°回転する間に整流子片の切り替わりは3回生じるもののインピーダンスの変化は二段階である。
図4(a)に、モータ2が180°回転する間における、モータ2内部の結線状態の変化、即ち各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路の変化を示す。図4(a)に示すように、本実施形態のモータ2のモータ回路は、モータ2が180°回転する間に、主として状態A、状態B、及び状態Cの三種類に変化する。
状態Aは、図示の如く、直流電源3の正極側(以下「Vb側」ともいう)のブラシ16に第1整流子片11が接触し、グランド電位側(以下「GND側」ともいう)のブラシ17に第2整流子片12が接触した状態である。この状態Aでのモータ2の等価回路、即ち各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路は、図中右側に示す回路となる。
この状態Aでは、コンデンサC1と第3相コイルL3とが直列に接続された状態となっているため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、一方のブラシ16から他方のブラシ17に至るまでの経路には必ずいずれかの相コイルが存在することになる。そのため、この状態Aでは、各相コイルL1,L2,L3によるインダクタンスが支配的となってモータ回路全体のインピーダンスは高くなる。
状態Bは、状態Aから時計回りに約50°回転した状態であり、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態Aのときの第1整流子片11から第3整流子片13へと切り替わっている。GND側のブラシ17には第2整流子片12が接触している。
この状態Bでも、コンデンサC1と第2相コイルL2とが直列に接続された状態となっているため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、一方のブラシ16から他方のブラシ17に至るまでの経路には必ずいずれかの相コイルが存在することになる。そのため、この状態Bでもモータ回路全体のインピーダンスは高い。なお、この状態Bと状態Aは、図の等価回路を比較して明らかなように、回路全体のインピーダンスは同じである。
状態Cは、状態Bからさらに時計回りに約50°回転した状態であり、GND側のブラシ17に接触する整流子片が、状態A,Bのときの第2整流子片12から第1整流子片11へと切り替わっている。Vb側のブラシ16には第3整流子片13が接触している。
この状態Cでは、第2相コイルL2及び第3相コイルL3の直列回路と、第1相コイルL1と、コンデンサC1とが、それぞれ並列接続された状態となる。そのため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路が存在する。つまり、各ブラシ間に並列共振回路が接続された状態となる。これにより、モータ回路のインピーダンスは、その並列共振回路の共振周波数より高い領域においては、周波数が高くなるほどコンデンサC1が支配的となってインピーダンスは低くなる。
このように、モータ2が180°回転する間には、各ブラシ16,17と接触する整流子片の切り替わりが3回生じ、これに伴って各ブラシ16,17間のモータ回路は状態A,B,Cの三種類に切り替わる。但し状態Aと状態Bは、既述の通り、回路全体のインピーダンスが等しいため、180°回転の間に生じるインピーダンスの変化は二段階である。
尚、モータ2の回転の過程では、隣接する2つの整流子片に一つのブラシが同時に接触する切り替わり期間が存在し、この切り替わり期間においてもブラシ間のインピーダンスが変化するが、この切り替わり期間はモータ2が一回転する間において瞬間的に生じるのみであり、これに伴うインピーダンスの変化も瞬間的なものである。そのため、本実施形態ではこの切り替わり期間については考慮しないものとする。
状態Cから更に回転が進むと、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態Cのときの第3整流子片13から第2整流子片12へと切り替わる。GND側のブラシ17には第1整流子片11が接触している。この状態は、上述した状態Aにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは状態Aと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態A’という。
この状態A’から更に回転が進むと、GND側のブラシ17に接触する整流子片が、状態A’のときの第1整流子片11から第3整流子片13へと切り替わる。Vb側のブラシ16には第2整流子片12が接触している。この状態は、上述した状態Bにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは状態Bと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態B’という。
この状態B’から更に回転が進むと、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態B’のときの第2整流子片12から第1整流子片11へと切り替わる。GND側のブラシ17には第3整流子片13が接触している。この状態は、上述した状態Cにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは状態Cと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態C’という。
そして、この状態C’から更に回転が進むと、再び状態Aに切り替わり、以下、回転が進むにつれて状態B→状態C→状態A’→状態B’→状態C’→状態A→・・・と切り替わる。
つまり、モータ2は、一回転する間にその回転角に応じてモータ回路が状態A、B、C、A’、B’、C’の六種類に順次切り替わるのであり、60°回転毎に状態が切り替わるということになる。このうち、状態A、B、A’、B’は、いずれも同じインピーダンス(高インピーダンス)である。また、状態C、C’も同じインピーダンスであり、その値は状態A等のインピーダンスよりも非常に低い。
図4(b)に、各状態におけるモータ回路のインピーダンスの周波数特性を示す。上述の通り、状態A,B,A’,B’のモータ回路のインピーダンスは同じである。この状態A,B,A’,B’の場合、コンデンサC1の影響はほとんどなく、周波数faで小さなピーク値(共振点)が生じるものの、全体としてみれば周波数が高くなるほどインピーダンスが増加する特性となる。
これに対し、状態C,C’の場合、各相コイルL1,L2,L3とコンデンサC1との共振によってインピーダンス特性は大きく変化し、共振周波数fbを中心(最大値)としてインピーダンスは小さくなる。そのため、状態A,B,A’,B’と状態C,C’とでは、インピーダンスが一致(特性が交差)する周波数fcを除き、インピーダンスが異なる。特に、周波数fcよりもある程度高い周波数以上の帯域では、インピーダンスの比が大きくなる。
そして、上述したモータ回路のインピーダンスの変化は、モータ2に流れるモータ電流に含まれる交流成分(交流電流成分)の変化として直接現れる。
具体的には、図5に示すように、状態A、B、A’、B’のときは、各ブラシ16,17間にコンデンサC1のみの経路が存在せずモータ回路のインピーダンスは大きいため、比較的小さな振幅で、スイッチMOSのON・OFFに追随して電流が脈動する。
一方、状態C、C’のときは、各ブラシ16,17間にコンデンサC1のみの経路が生じる。そのため、この状態C,C’の期間では、スイッチMOSがONされると、そのONの瞬間に、コンデンサC1への突入電流(パルス状の電流)が流れる。この突入電流は、コンデンサC1を充電させるための充電電流である。この突入電流によってコンデンサC1が瞬間的に充電されると、以後、OFFされるまで、モータ電流はモータ回路の合成インダクタンス値に応じた傾きで増加していく。
そして、スイッチMOSがOFFされると、そのOFFの瞬間に、コンデンサC1の充電電荷が放電され、その放電によってパルス状の電流(放電電流)が流れる。この放電電流によってコンデンサC1の電荷が瞬間的に放電されると、以後、再びONされるまで、モータ電流はモータ回路の合成インダクタンス値に応じた傾きで減少していく。
つまり、状態C、C’のときは、他の状態A、B、A’、B’のときと同じようにPWM周波数(PWM周期)での電流の脈動が生じるのに加えて、更に、スイッチMOSのON時及びOFF時のそれぞれにおいて、各ブラシ16,17間に接続されたコンデンサC1の充電、放電に伴うパルス状の電流が流れる。
そこで本実施形態では、信号処理部22が、モータ2の回転に伴うモータ回路のインピーダンス変化によって生じる、モータ電流の変化(本実施形態では特に、上述したパルス状の電流の有無)に基づいて、回転パルスSpを生成する。そして、その回転パルスSpに基づき、回転検出部23が、モータ2の回転角及び回転速度を検出する。
図6に、電流検出部21及び信号処理部22の具体的構成を示す。電流検出部21は、モータ電流が流れる通電経路に配置された電流検出抵抗R1からなり、この電流検出抵抗R1の両端のうちモータ2側に接続されている一端とグランドの間の電圧が、モータ電流に応じた検出信号(本発明の電気量に相当)として信号処理部22へ取り込まれる。
尚、このように電流検出抵抗R1の一端(モータ2側)とグランドの間の電圧を検出することによってモータ電流を検出する構成はあくまでも一例であり、モータ電流を直接又は間接的に検出できる限り、その具体的構成は他にも種々考えられる。例えば、電流検出抵抗R1の両端の電圧を差動増幅回路で増幅し、その差動増幅後の電圧(モータ電流を示す電圧)を信号処理部22に入力するようにしてもよい。また例えば、電流プローブを設けて電流を検出するようにしてもよい。
信号処理部22は、ハイパスフィルタ(HPF)31と、増幅部32と、包絡線検波部33と、ローパスフィルタ(LPF)34と、パルス生成閾値設定部35と、比較部36と、を備えている。
HPF31は、コンデンサC11及び抵抗R2からなる周知の高域通過フィルタ回路である。信号処理部22に取り込まれた電流検出抵抗R1による検出信号は、このHPF31によって所定の遮断周波数より低い帯域の信号がカットされ、遮断周波数以上の帯域の信号が通過する。
この遮断周波数は、図4(b)に示した、周波数fcよりも大きい周波数f1に設定されており、この周波数f1以上の帯域が通過帯域としてこのHPF31を通過する。
この周波数f1以上の通過帯域には、上述した、状態C,C’においてスイッチMOSのON、OFFの瞬間に生じるパルス状の電流の周波数成分も含まれている。このパルス状の電流は、遮断周波数f1よりも高い所定の周波数を基本波周波数として、その基本波周波数の成分を含むのはもちろん、その基本波周波数のn倍(nは2以上の自然数)の周波数fnであるn倍波(2倍波、3倍波、4倍波、・・・)が含まれる。本実施形態では、パルス状の電流が有する全ての周波数成分がHPF31を通過し、後段の増幅部32へ入力される。
増幅部32は、オペアンプ7と、オペアンプ7の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R3と、オペアンプ7の反転入力端子とグランドラインとの間に接続された抵抗R4とを備え、非反転入力端子に入力される信号(HPF31からの検出信号)が所定の増幅率にて増幅される。
増幅部32にて増幅された検出信号は、包絡線検波部33にて包絡線検波される。この包絡線検波部33は、整流用のダイオードD1と、一端がこのダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続された抵抗R5と、一端がダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続されたコンデンサC12とを備えてなるものであり、ダイオードD1のアノードに、増幅部32からの検出信号が入力される。
この包絡線検波部33により、増幅部32から入力された検出信号が包絡線検波され、その振幅に応じた一定の信号(以下「検波信号」という)が生成される。
そして、その生成された検波信号は、LPF34にて高周波成分がカットされた上で、比較部36に入力される。LPF34は、抵抗R6及びコンデンサC13からなる周知の構成のものである。なお、抵抗R6にはダイオードD2が並列接続されている。このダイオードD2の接続方向は、検波信号が入力される方向に対して逆方向となっている。
比較部36は、コンパレータ8と、コンパレータ8の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R9と、一端がコンパレータ8の非反転入力端子に接続されて他端がLPF34に接続された抵抗R7と、一端がコンパレータ8の反転入力端子に接続されて他端がパルス生成閾値設定部35に接続された抵抗R8とを備えてなるものである。
包絡線検波部33から出力された検波信号は、LPF34を介して比較部36に入力され、この比較部36において抵抗R7を介してコンパレータ8の非反転入力端子に入力される。一方、コンパレータ8の反転入力端子には、抵抗R8を介してパルス生成閾値設定部35からのパルス生成閾値が入力される。これにより、コンパレータ8では、検波信号と閾値との比較が行われ、その比較結果が出力される。
パルス生成閾値設定部35にて設定され比較部36に入力されるパルス生成閾値は、本実施形態では、インピーダンスが大きい状態A、B、A’、B’の期間での検波信号よりも大きく、且つ、インピーダンスが小さくてスイッチMOSのON・OFFのタイミングでパルス状の電流が流れる状態C、C’の期間での検波信号よりも小さい、所定の値が設定されている。
そのため、状態A、B、A’、B’の期間では、包絡線検波部33から比較部36へ入力される検波信号は0Vであってパルス生成閾値設定部35からの閾値よりも小さいため、コンパレータ8からはローレベルの信号が出力される。一方、状態C、C’の期間では、包絡線検波部33から比較部36へ入力される検波信号は閾値よりも大きくなるため、コンパレータ8からはハイレベルの信号が出力される。
そして、コンパレータ8から出力されたローレベル、ハイレベルの信号が、モータ2の回転角に応じた回転パルスSpとして、回転検出部23へ出力される。
このように、信号処理部22では、電流検出抵抗R1にて検出されたモータ電流(検出信号)に対して各種信号処理を行った上で回転パルスSpが生成されるため、外乱やノイズが低減された正確な回転パルスSpが生成される。
尚、本実施形態では、上記のように、HPF31の遮断周波数をf1として、この周波数f1以上の成分に基づいて回転パルスSpを生成するようにしているが、どの周波数帯域の成分に基づいて回転パルスSpを生成するかということは非常に重要である。
例えば、図4(b)に示す周波数fcの成分に基づいて生成しようとしても、この周波数fcではモータ回転中のインピーダンスが変化しない(各状態のインピーダンスが同じ)であるため、交流成分の変化が生じず、回転パルスSpを生成できない。また例えば、状態C,C’における共振周波数fbの成分、或いは状態A,B,A’,B’における共振周波数faの成分に基づいて生成しようとすると、モータ2を構成する各素子(各相コイルのインダクタンスやコンデンサC1の静電容量など)のばらつきや周囲環境(例えば周囲温度)などの各種要因によって共振周波数がずれてしまうと、インピーダンスも大きく変化して、回転パルスSpが正常に生成できなくなる可能性がある。
そのため、各共振周波数fa、fbを避け、且つ周波数fcよりも高い周波数帯域の交流成分に基づいて回転パルスSpを生成するようにすれば、多少の共振周波数のずれが生じたとしても、インピーダンス比(状態C,C’のインピーダンスとそれ以外の状態のインピーダンスの比)の変化は極めて小さい。そのため、安価なコンデンサC1を用いたとしても、安定的に回転パルスSpを生成できる。
逆に、共振周波数のずれがほとんど生じないような環境下で使用したり、コンデンサC1として周囲環境の変動に対して素子値の変動が小さい高価なものを用いること等によって共振周波数のずれがほとんど生じないように構成されているような場合には、上記共振周波数fa又はfbの成分に基づいて回転パルスSpを生成してもよい。各共振周波数fa、fbではインピーダンス比が大きい(特に共振周波数fbでのインピーダンス比が大きい)ため、より確実且つ安定的に回転パルスSpを生成することができる。
回転検出部23は、信号処理部22から入力された回転パルスSpに基づき、例えばその回転パルスSpの立ち上がりエッジを検出・計数するといった方法により、モータ2の回転角や回転速度を検出する。また、本実施形態の回転検出部23は、回転パルスSpをそのまま制御部24に出力する機能も備えている。制御部24は、その回転パルスSpを、後述するようにイニシャライズを行う際に用いる。即ち、制御部24は、イニシャライズ時において、回転パルスSpの周期Tnを演算し、その周期Tnに基づいてダンパ50の突き当てを検出してブレーキ(制動制御)を開始するのであるが、その詳細については後述する。
次に、モータ2が起動(回転開始)してから停止するまでのモータ電流波形の一例、及びそのモータ電流に基づく、信号処理部22による回転パルスSpの生成の概要を、図7を用いて説明する。
図7に示すように、起動後、定常回転状態になるまでの初期段階では、一旦電流は急上昇した後に一定の電流値に落ち着いていく。そして、定常回転状態になると、電流値は平均的に一定となる。起動〜定常回転時は、定常時Dutyが5:5(50%)であるため、スイッチMOSがONされる期間とOFFされる期間は同じである。そして、状態C,C’の期間は、ON・OFFされる毎にパルス状の電流が発生する。
制動制御が開始されると、本実施形態では既述の通り制動時Dutyが1:9(10%)であることから、スイッチMOSの制御は、極短い期間ONされてそれよりも遙かに長い期間OFFされる、という制御が繰り返される。これにより、制動制御開始時はモータ2の逆起電力によりモータ電流が一旦逆方向(定常回転時とは反対方向)に大きく低下するものの徐々に0に近づいていき、やがて、制動時Duty1:9の比率に応じた平均電流に落ち着いてモータ2は停止する。この制動開始〜停止の間も、定常回転時と同様、状態C,C’の期間は、スイッチMOSがON・OFFされる毎にパルス状の電流が発生する。
そのため、HPF31の出力は、起動〜停止までの全期間に渡って、状態A、B、A’、B’のときは基本的に何も出力されず、状態C,C’のときに、上記パルス状の電流の周波数成分が出力される。そして、そのパルス状の電流に対応した検出信号が包絡線検波部33により検波され、LPF34を経た後に、比較部36にて、パルス生成閾値設定部35により設定されるパルス生成閾値と検波信号との比較がなされる。そして、検波信号がパルス生成閾値よりも大きい期間において回転パルスSpが生成されることとなる。
なお、図7に示したモータ電流波形では、当該モータ電流に含まれる交流成分のうち、状態C,C’の期間におけるパルス状の電流のみ図示し、パルス状の電流以外の波形、即ちPWM周波数Sfにて全期間に渡って生じる脈動(図5参照)については、図示を省略している。
このように、本実施形態では、起動〜定常回転時はもちろん、制動制御時においても、直流電源3からの直流電力の供給を完全に遮断するのではなく、所定のDutyにてPWM制御を行うことにより、モータ2に電流を流すようにしている。制動制御時には、モータ2を停止し得る程度のDuty(上記の制動時Duty。本例では10%。)にてPWM制御することにより、モータ2が停止するまでPWM制御を継続する。そのため、回転速度に関係なく回転パルスSpを生成でき、モータ2の回転角や回転速度を検出することができるのである。勿論、完全に停止した後も、引き続き、モータ2が回転しない程度の低いDutyにてPWM制御を継続してもよい。
尚、本実施形態ではPWM周波数Sfは一定に設定されているのであるが、これはあくまでも一例であり、状況に応じてPWM周波数Sfを可変設定できるようにしてもよい。また、PWM周波数Sfは、モータ2の定格上の最大回転速度における、ブラシと整流子片の切り替わり周波数(回転パルスSpの周波数でもある)よりも高い周波数に設定されている。これは、本実施形態では上記のようにブラシと整流子片の切り替わりによって周期的に生じるモータ2のインピーダンスの変化を利用してモータ2の回転状態を検出するよう構成されているからである。
次に、イニシャライズについて説明する。本実施形態のダンパ駆動システムでは、制御部24が、所定のタイミングでイニシャライズを実行する。イニシャライズを行うタイミングは適宜設定でき、例えば、車両のイグニションスイッチがオンされる毎に行ったり、或いは一定期間毎に行ったりすること等が考えられる。
本実施形態のイニシャライズは、既述の通り、基本的にはモータ2を正転させてダンパ50を冷風送出壁101へ突き当てることにより行われる。即ち、モータ2を起動後、ダンパ50が所定の突き当て直前位置へ駆動されるまではDuty90%で駆動(定常回転)し、突き当て直前位置に到達した以後はDuty70%に切り替え、更に、突き当てを検出したらDuty10%として制動制御(ブレーキ)を行う。
但し、初めてイニシャライズを行う際には、ダンパ50の位置(開度)が未知であるため、突き当て直前位置も設定されていない。そのため、その初回イニシャライズ時には、起動後、突き当てを検出するまでは一定のDuty(例えば90%一定或いは70%一定)で回転させる。そして、付き当てを検出したら、Duty10%として制動制御を行う。
この初回イニシャライズにより、ダンパ50が冷風送出壁101の壁面101bに突き当たってその駆動が停止された位置が、ダンパ50の初期位置(モータ2の初期位置)として設定される。制御部24は、イニシャライズを行うことによりモータ2の初期位置(ダンパ50の初期位置)を設定し、その初期位置を基準としてモータ2を制御(ダンパ50の駆動を制御)する。
初回イニシャライズによって初期位置が検出されると、制御部24は、その初期位置に基づいて突き当て直前位置を設定する。そして、2回目以降のイニシャライズでは、既述の通り、その突き当て直前位置の前後でDutyを変化させる。
図8に、2回目以降のイニシャライズ時における、ダンパ突き当て荷重とモータ回転速度の変化例を示す。
本実施形態のイニシャライズ処理(2回目以降)では、制御部24は、まずモータ2をDuty90%で起動させる。そして、時刻t0にてモータ2の回転位置(ダンパ50の位置)が突き当て直前位置に到達すると、Dutyを70%を低下させて引き続き駆動を継続する。
この間、Dutyが90%で定常回転しているときは、回転パルスSpの周期は約12msecである。そして、時刻t0でDutyを70%に下げると、モータ2の回転速度は低下し、回転パルスSpの周期は約18msecとなる。また、ダンパ50がユニットに接触するまで(即ちダンパ50が冷風送出壁101の壁面101bに突き当たるまで)は、ダンパ50による、壁面101bに対する荷重(突き当て荷重)は、当然ながら0である。
時刻t1にてダンパ50が壁面101bに突き当たると、モータ2の回転速度が低下し始めると共に、突き当て荷重が増加し始める。そのため、回転パルスSpの周期も、突き当たる直前の約18msecから増加し始める。
そこで本実施形態では、その回転パルスSpの周期の低下具合に基づいて、ダンパ50の突き当てを検出するようにしている。具体的には、起動後、回転パルスSpの周期の最小値(最低パルス周期Tsm)を、回転パルスSpが生成される毎に(例えばパルスエッジ立ち上がり毎に)更新・記録する。これは言い換えれば、モータ2の回転速度の最大値(最大回転速度)を更新・記録するということでもある。この記録は、例えば図示しないROMやフラッシュメモリなどの記憶媒体に対して行う。そして、現在記録されている最低パルス周期Tsmに基づき、所定の閾値設定係数kを乗算することで、周期閾値を算出する。尚、この周期閾値に対応した回転速度は、本発明の速度閾値に相当するものである。
本例では、閾値設定係数kは例えば「2」に設定されている。そのため、図8の例では、起動後の最低パルス周期Tsmが12msecであるため、この12msecに閾値設定係数k=2を乗算することで、周期閾値が24msecに設定される。
そこで、時刻t1でダンパ50が冷風送出壁101の壁面101bに突き当たることによりモータ2の回転速度が低下していき、これにより回転パルスSpの周期が18msecから増加していってやがて時刻t2で周期閾値24msecを超えると、ダンパ50が突き当たったものと判断して、モータ2のブレーキ(制動制御)を開始する。
ダンパ50の突き当て荷重は、時刻t1から上昇していくが、時刻t2で突き当てが検出されてブレーキがかかると、その上昇も止まる。そして、本実施形態では、突き当て荷重が所定の目標荷重に達する前にモータ2にブレーキをかけ、これにより突き当て荷重がその目標荷重以上とならないように、閾値設定係数kが設定される。
この閾値設定係数kの設定方法は種々考えられるが、例えば、当該システムの工場出荷前に、突き当て後の回転パルスSpの周期変化と突き当て荷重の変化を計測し、その計測結果に基づいて、突き当て荷重が目標荷重に達する前の所定タイミングでの回転パルスSpの周期を基に閾値設定係数kを設定することができる。本例では、定常回転時の最低パルス周期が約12msecであること、及び、突き当たり後に周期が24msecを超えた時点でブレーキをかければ目標荷重に到達する前にモータ2を停止させることができて且つ最低パルス周期との差異も明確であることから、閾値設定係数kを「2」に設定している。尚、突き当て荷重の計測は、例えば、図1に示すように、冷風送出壁101の壁面101bに荷重センサ120を設けることにより行うことができる。
図8には、本実施形態における突き当て荷重の変化例に加え、従来制御Aの場合の荷重変化例及び十例制御B(特許文献1に記載の方法)の場合の荷重変化例も示されている。図示の如く、従来制御Aの場合、一律に一定期間(例えば起動から15秒間)モータへの通電(Duty100%通電)を継続するため、時刻t1で突き当たった後、突き当て荷重は本実施形態よりも急な傾きで上昇していく。そして、その突き当て荷重は、目標荷重の倍に近い約23[N]程度にまで上昇する。
また、従来制御Bの場合は、突き当たり直前にDutyを低下させるため、時刻t1で突き当たった後、突き当て荷重は本実施形態と同程度の傾きで上昇していく。しかし、従来制御Bはエンコーダを用いて回転状態を検出し、そのエンコーダカウント値のカウントアップがなくなったことをもってブレーキをかけるようにしているため、突き当たった後、迅速にその突き当たったことを検出できず、突き当たってから本実施形態よりも長い時間が経過した時刻t3にて突き当たりが検出され、ブレーキがかかる。そのため、従来制御Aと比べると突き当て荷重は約30%低くなるものの、それでも十分に荷重が低減されているとはいえない。
これに対し、本実施形態の場合は、エンコーダ等のセンサを用いないセンサレスにて、モータ電流の交流成分の変化に基づいて非常に細かい精度で回転パルスSpを生成し、その周期に基づいて突き当てを判断するようにしているため、迅速且つ確実に突き当てを判断できる。そのため、従来制御Bにおける時刻t3よりも早い時刻t2にて突き当てを判断でき、突き当て荷重の上昇を迅速に止めることができる。尚、初回イニシャライズ時も、時刻t0でのDuty低下がないことを除けば、基本的には図8と同様の特性となる。
次に、制御部24が実行するイニシャライズ処理について、図9を用いて説明する。尚、図9に示すイニシャライズ処理のフローチャートでは、モータ2の起動後にそのDutyを変化させることについては省略しており、イニシャライズ処理全体のうち特に突き当たりの検出に着目してそれに関わる処理を抜粋して図示している。
制御部24は、所定のイニシャライズ実行タイミングにてこのイニシャライズ処理を開始すると、まずS110にて、モータ2を起動させる。即ち、Duty90%でモータ2への通電を開始させる。そして、S120で、パルス周期の検出順番を示す周期番号nを1に設定する。
S130では、起動後、回転パルスSpが2パルス検出されたか否かを判断し、まだ検出されていない場合はS140に進んでタイムアウトしたか否かを判断する。即ち、このタイムアウトの判断は、モータ起動後、所定時間が経過するまでに2パルス検出されたか否かを判断するためのものであり、例えばダンパ50が既に壁面101bに突き当たっている状態となっている場合のように、モータを起動させても回転せずに回転パルスSpが2パルス検出されないままその所定時間が経過した場合は、タイムアウトとしてS280に進む。S280では、イニシャライズが未完了である旨の判断を行う。
S140でタイムアウトと判断される前に回転パルスSpが2パルス検出された場合は、S150にて、その2つのパルスの時間間隔である、n番目(ここでは1番目)のパルス周期Tn(=T1)を算出する。そして、その算出したパルス周期Tnを最低パルス周期Tsmとして記録する。
そして、S170にて、再び回転パルスSpが検出されたか否かを判断し、まだ検出されていない場合はS180に進んでタイムアウトしたか否かを判断する。このタイムアウトの判断は、S170でパルス検出されない状態が所定時間継続したか否かを判断するためのものであり、S170でパルス検出されないままその所定時間が経過した場合は、タイムアウトとしてS280に進む。
S180でタイムアウトと判断される前に次の回転パルスSpが検出された場合は、S190にて、周期番号nを1つインクリメントする。そして、S200にて、今回S170にて検出された回転パルスSpとその直前に検出された回転パルスSpとの時間間隔である周期Tnを算出する。
そして、S210にて、その算出した周期Tnが、現在記録されている最低パルス周期Tsmより小さいか否か判断する。ここで、周期Tnが現在の最低パルス周期Tsm以上ならばS240に進むが、周期Tnが現在の最低パルス周期Tsmより小さい場合は、S220にて、最低パルス周期Tsmをその周期Tnに更新・記録する。更に、S230にて、その最低パルス周期Tsmとして更新された周期Tnの周期番号nを、最低パルス周期番号xとして設定する。
そして、S240にて、現在記録されている最低パルス周期Tsmに閾値設定係数kを乗算することにより周期閾値を算出し、現在の周期Tnがその周期閾値より大きく、且つ現在の周期番号nが最低パルス周期番号xより大きいか否かを判断する。そして、周期Tnが周期閾値より大きく且つn>xならば、ダンパ50が壁面101bに突き当たったものと判断し、S250にてブレーキ(制動制御)を開始する。
そして、S260にて、回転パルスSpが一定期間継続して検出されなくなるまで待機し、一定期間継続して検出されなくなったら、S270にてイニシャライズ完了と判断して、このイニシャライズ処理を終了する。
尚、S280にてイニシャライズ未完了と判断された場合は、制御部24は、例えば再度イニシャライズ処理を実行してみたり、或いはモータ2を逆転させてダンパ50を温風送出壁102の壁面102bに突き当てることによるイニシャライズ処理に切り替えたりするなどの処理を行う。この逆転によるイニシャライズ処理は、モータ2の回転方向が異なるだけであって、イニシャライズ処理自体は図8と同様に行うことができる。
以上説明したように、本実施形態のダンパ駆動システムでは、回転パルスSpの周期に基づいてダンパ50が壁面101bへの突き当てを検出する。その回転パルスSpは、PWM制御を行うことによってモータ電流に含まれる交流成分の変化に基づいて生成されるものであり、エンコーダ等のセンサによって得られるパルス信号に比べて非常に高い分解能とすることができる。
そのため、システムのコストアップや大型化を抑えつつ、イニシャライズの際におけるダンパ50の突き当て荷重を効果的に低減することができる。
また、本実施形態では、モータ2の起動後、最低パルス周期Tsmを更新・記録すると共に、その最低パルス周期Tsm及び閾値設定係数k(本例ではk=2)をもとに周期閾値を設定して、現在のパルス周期Tnがその周期閾値より大きくなったか否かをもってダンパ50の突き当てを判断するようにしている。そのため、突き当ての判断(延いてはブレーキ開始タイミングの判断)を適切に行うことができる。
更に、本実施形態では、PWM制御によって必然的に生じる交流成分を回転パルスSpの生成に有効利用している。モータ電流に交流成分を含ませる方法としては、本例以外にも、例えば後述する第2実施形態の交流重畳部4のように、交流電圧を印加するための独立した構成部材を設けることでも実現可能である。しかし、本例ではそういった独立した構成部材を設ける必要がないため、その分、システムのさらなる低コスト化・小型化が可能となる。
また、本実施形態では、モータ2として、第1相コイルL1に対して並列にコンデンサC1を接続した構成のものを用いており、これにより、図4で説明したように、状態C,C’とそうでない状態A,B,A’,B’とで、周波数が高いほどブラシ間のインピーダンス比が大きくなる。また、このようなモータ2の構成により、状態Cの期間中、PWM制御によってスイッチMOSがON・OFFされると、ONの瞬間にコンデンサC1にパルス状の充電電流が流れ、OFFの瞬間にもパルス状の放電電流が流れる。これら充電電流、放電電流は、上述したように高い周波数成分を含むものであるため、スイッチング損失を小さくすべくPWM制御の周波数を低くしても、状態C,C’の期間においてその高い周波数成分を検出でき、これにより回転状態を確実に検出できる。
尚、図9のイニシャライズ処理において、S150及びS200の処理は本発明の速度関連情報検出手段が実行する処理に相当し、S210〜S220の処理は本発明の最大速度関連情報記録手段が実行する処理に相当する。また、S240の判断処理において行われる、周期閾値の算出(最低パルス周期Tsmと閾値設定係数kの乗算)は、本発明の閾値情報設定手段が実行する処理に相当する。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のダンパ駆動システムについて、図10を用いて説明する。本実施形態のダンパ駆動システムは、図2に示した第1実施形態のダンパ駆動システムと比較して、主に次の三点が異なる。1つ目は、交流重畳部4を備えていること、2つ目は、モータ2への通電をPWM制御ではなく単に通電時はスイッチMOSを常時ON、非通電時はスイッチMOSを常時OFFさせることにより行うこと、3つ目は、電流検出部21により検出されるモータ電流が図11のような波形となって信号処理部22はこのから回転パルスSpを生成すること、である。
交流重畳部4は、モータ2の回転状態を検出するための所定周波数の交流電圧を生成する交流信号発生部5と、モータ2の通電経路に交流信号発生部5で生成された交流電圧を重畳させてモータ2へ供給するためのカップリングコンデンサC20とを備えている。カップリングコンデンサC20の出力端は、モータ2の通電経路における、モータの第2端子2bとスイッチMOSの間の経路に接続されている。また、その通電経路における、カップリングコンデンサC20の出力端の接続部とスイッチMOSの間には、インピーダンス素子27が設けられている。尚、交流信号発生部5が生成する交流電圧は正弦波である。但し、正弦波であることはあくまでも一例にすぎず、例えば方形波や三角波などの他の種類の交流波形を用いても良い。
尚、スイッチMOSがONされてモータ2が回転している状態から、ブレーキをかけるべくスイッチMOSをOFFさせると、直流電源3からの直流電流はモータ2に流れなくなるが、交流重畳部4からの交流電流は、モータ2及びダイオードDbを含む電流ループを流れる。そのため、スイッチMOSの状態にかかわらず、またモータ2の回転状態にかかわらず、モータ2には常に交流重畳部4からの交流電圧が印加され、交流電流が流れることとなる。
制御ユニット60を構成する制御部61は、モータ2を回転させる(延いてはダンパ50を駆動する)際はスイッチMOSを常時ONさせ、モータ2の回転を停止させる(延いてはダンパ50の駆動を停止する)際はスイッチMOSをOFFする。
また、制御部61は、第1実施形態と同様、図8に示したイニシャライズ処理を行う。即ち、本実施形態でも、第1実施形態と同様、電流検出部21により検出されたモータ電流に基づいて信号処理部22が回転パルスSpを生成し、その回転パルスSpに基づいて回転検出部23がモータ2の回転状態を検出する。そして、制御部61が、その検出された回転状態に基づいてモータ2の駆動を制御すると共に、イニシャライズ処理を行う際には、回転パルスSp及びその周期等に基づいてダンパ突き当てを検出し、ブレーキ(制動制御)を行う。
但し、本実施形態では、交流重畳部4によって正弦波交流電圧を重畳するため、モータ電流波形が第1実施形態とは異なる。具体的には、モータ電流は図11(a)に示すように変化する。即ち、全体としては正弦波状に変化する波形であるが、状態A、B、A’、B’のときは交流電流成分の振幅が小さく、状態C、C’のときは交流電流成分の振幅が大きくなる。そのため、信号処理部22におけるパルス生成閾値設定部35で生成すべきパルス生成閾値を、状態Aのときの検波信号と状態Cのときの検波信号の中間値付近の値に設定すれば、比較部36による比較がより正確に行われ、図11(b)に示すように回転角に応じた正確な回転パルスSpを確実に生成することができる。
そして、制御部61は、上記のようにして生成された回転パルスSpに基づいて、第1実施形態と同様にイニシャライズ処理を行うことができる。但し本実施形態では、第1実施形態のようなPWM制御は行わないことから、起動後、突き当てが検出されるまではスイッチMOSが常時ONされてモータ2への通電が行われる。これは即ち、突き当てが検出されるまでDuty100%で通電されるということである。そして、図8のイニシャライズ処理によって突き当てが検出された後は、スイッチMOSがOFFされ、これにより直流電源3からモータ2への直流電流の供給は停止されることとなる。
このように構成された本実施形態のダンパ駆動システムによっても、システムのコストアップや大型化を抑えつつ、イニシャライズの際におけるダンパ50の突き当て荷重を効果的に低減することができる。
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、回転パルスSpの周期に基づいてイニシャライズ時におけるダンパ突き当てを検出するようにしたが、周期以外に例えば回転速度に基づいて検出することもできる。回転パルスSpの周期は、実質的には回転速度に依存する物理量であり、回転速度を示す情報でもある。そのため、周期に限らず、回転速度を直接又は間接的に示す情報であれば、それに基づいてダンパ突き当てを検出することができる。
また、上記実施形態では、モータ2の起動後に最低パルス周期Tsmを更新・記録し、その最低パルス周期Tsm及び閾値設定係数kによって周期閾値を設定するようにしたが、このような周期閾値の設定方法はあくまでも一例であり、ダンパ突き当てを確実且つ迅速に検出することが可能な周期閾値を適切に設定することができる限り、その設定方法は適宜決めればよい。
また、上記実施形態では、直流モータとして、一対のブラシを備えたΔ結線の3相直流モータを例示したが、これもあくまでも一例である。
更に、回転に伴ってブラシ間のインピーダンスを周期的に変化させるために、上記実施形態では第1相コイルL1と並列にコンデンサC1を接続したが、このような構成もあくまでも一例に過ぎない。
また、上記実施形態では、車両のエアコンユニット100を構成するダンパ50を駆動対象とするモータ2を例に挙げてその制御手法(特にイニシャライズ時のダンパ突き当て検出方法)を説明したが、本発明の適用はダンパ50の駆動に限定されるものでないことはいうまでもない。