JP5843223B2 - 超微量グリース状物質の劣化評価方法 - Google Patents

超微量グリース状物質の劣化評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、グリース状物質の劣化評価方法に関する。さらに詳しくは、基油中に増ちょう剤を分散させて半固体又は固体状にした「グリース状物質」の劣化度を、マイクログラムオーダーの超微量の採取量で評価することが可能な、グリース状物質の劣化評価方法に関する。
変電機器はグリース劣化により遮断器や開閉器等の操作機構部で固渋(グリースの硬化など)を生じ、機器不応動となる場合があるため、現場実機よりグリースを採取し劣化評価を行っている。しかしながら、歯車やリンク機構に塗布されたグリースは微量である。
グリースのちょう度測定に関する技術として、2枚の板の間に試料グリースを挿入し、一定の荷重を一定時間、板の上に加えて試料を圧縮し、試料の広がり直径や広がり面積(以降これらを総称して「広がりちょう度」ということがある。)を測定する方法が知られている(特許文献1、2)。
また、グリースの劣化診断方法として、微量採取したグリースと正常なグリースとのマハラノビス汎距離を算出し、算出されたマハラノビス汎距離からグリースの劣化状況を診断する方法も知られている(特許文献3)。
上記の方法による場合、劣化評価には数ミリグラムのグリースが必要である。しかも、一定の荷重を載せて広がり性を調べ、JIS K 2220ちょう度に換算しているだけである。劣化の閾値に関する知見も報告されていない。
しかし、実機で使用されているグリースの劣化診断を行う場合、採取可能な量はマイクログラムオーダーである。そのため、上記の「広がりちょう度」や「JISちょう度」に則った測定を実施できない。よって、上記の方法では超微量のグリースの劣化を評価できないことになる。
さらに、JIS K 2220に規定される針入法は、試料グリースの面部に針を押し当て、そのときの針の下がり具合を見て劣化を診断する方法であるが、測定の前処理として約60回の攪拌処理を行う必要があるため、煩雑な評価方法であり、しかも5g程度の極めて多量の試料を必要とする方法である。
特開昭58−055838号公報 特開昭61−223631号公報 特開2010−133788号公報
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、マイクログラムオーダーの超微量のグリース状物質の劣化度を評価できる方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した。そして、グリースは基油となる潤滑油に増ちょう剤を分散させて半固体又は固体状にしたものであるが、使用による劣化に伴い、固体である増ちょう剤と液体である基油とが分離することに着目した結果、グリースの劣化度合いを可視化しつつ簡便な方法で評価が可能となることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)グリース状物質の劣化度を評価する方法であって、
2枚のガラス板の間に挟んだマイクログラムオーダーの超微量の試料に1度目の一定荷重を加える工程Aと、
所定時間経過後の該試料の広がり長さを測定すると共に、面積を算出する工程Bと、
続いて2度目の一定荷重を加える工程Cと、
所定時間経過後の該試料の広がり長さを測定すると共に、面積を算出する工程Dと、を備え、
工程Bと工程Dにおける広がり長さおよび/または広がり面積から、試料の劣化度を評価することを特徴とするグリース状物質の劣化評価方法。
(2)グリース状物質の劣化度を評価する方法であって、
2枚のガラス板の間に挟んだマイクログラムオーダーの超微量の試料に1度目の一定荷重を加える工程Aと、
所定時間経過後の該試料の色彩を評価する工程B´と、
続いて2度目の一定荷重を加える工程Cと、
所定時間経過後の該試料の色彩を評価する工程D´と、を備え、
工程B´および/または工程D´の色彩の評価から、試料の劣化度を評価することを特徴とするグリース状物質の劣化評価方法。
(3)グリース状物質の劣化度を評価する方法であって、
2枚のガラス板の間に挟んだ油を吸着・吸収するシート状物と該シート状物上に量り取ったマイクログラムオーダーの超微量の試料に一定荷重を加える工程Eと、
所定時間経過後の該シート状物の重量を測定し、該シート状物が吸収した試料の重量を求める工程Fと、を備え、
該シート状物が吸収した試料の重量と量り取った超微量の試料の重量との比率から、試料の劣化度を評価することを特徴とするグリース状物質の劣化評価方法。
(4)グリース状物質の劣化度を評価する方法であって、
2枚のガラス板の間に挟んだ油を吸着・吸収するシート状物と該シート状物上に量り取ったマイクログラムオーダーの超微量の試料に一定荷重を加える工程Eと、
所定時間経過後の該シート状物上の試料の広がり面積を求める工程F´と、を備え、
工程F´で求めた広がり面積と非劣化状態の該試料の広がり面積との比率から、試料の劣化度を評価することを特徴とするグリース状物質の劣化評価方法。
本発明によれば、多段階で荷重を加えたときの広がりちょう度の変化率や、グリース状物質中の油分量を測定することにより、マイクログラムオーダーの超微量のグリース状物質について、短時間かつ低コストで劣化状況を評価することができる。同時に、ガラス板の間で薄く引き延ばされたグリース状物質は、固まりでは分からない色や透明度の違いが明確に現れるため、色や透明度の違いも劣化指標となる。さらに、広がりちょう度の変化率に閾値を設け、正常な物質と劣化した物質を精度よく評価することで、変電機器などの保全コストを大幅に削減することができる。
本発明に係るグリース状物質の劣化評価方法は、グリース(潤滑剤)を始めとして、油を含む粘ちょう性物質(グリース状物質)、例えばワックス、コールタール、バター、マーガリン、化粧品等の品質管理に用いることができる。
劣化によるグリースからの離油を説明する図。 グリースの色見本と劣化度合いの分類を説明する図。(a)二硫化モリブデン入りグリースの場合。(b)シリコングリースの場合。 本発明の劣化評価方法における広がり直径及び広がり面積の変化率の測定方法を説明する図。 広がりちょう度(直径、面積)の測定例を示す図。 広がりちょう度の測定方法を説明する図。(a)グリース載置位置指示円および十字マークを記載したガラス板を用いた場合。(b)グリース載置位置指示円のみを記載したガラス板を用いた場合。 グリースの広がりちょう度(直径、面積)と荷重の関係を示す図。 新品グリースと実機経年品グリースについて、広がり面積に対する荷重の影響を示す図。 新品グリースと実機経年品グリースについて、長さ変化率と面積変化率を示す図。 試料の色彩評価の一例を示す図。 新品グリースと実機経年品グリースについて、油を吸着・吸収するシート状物に油が吸着される状態を説明する図。(a)上面図。(b)断面図。 新品グリースと実機経年品グリースについて、油を吸着・吸収するシート状物が油を吸着した状態を示す上面図。
グリースは基油に増ちょう剤を分散させて半固体状にしたものであり、基油が増ちょう剤により保持された構造となっているが、劣化していない新品のグリースは流動性を有している。しかし、熱等により劣化すると、グリース中の基油と増ちょう剤が分離して油分が離油し、増ちょう剤のみが残存する状態となるため、グリースの流動性が徐々に失われてくる(図1参照)。このような状態変化は、グリースだけでなく、ワックス、バター、マーガリン、化粧品でも生じうる。本発明では、グリースと実質的に同等な状態変化をする物質を「グリース状物質」という。
本発明に係るグリース状物質の劣化評価方法は、現在各種機器類に使用されているグリースや製造日より時間が経過した食品・化粧品等を、劣化評価用の試料として超微量採取して2枚のガラス板の間に薄く引き伸ばしたときの、
1.試料の広がり直径又は広がり面積又はそれらの変化率を求めることにより、
2.試料の色彩を評価することにより、
3.試料の離油量を測定することにより、
グリース状物質の劣化度を評価するものである。
本発明による劣化評価方法では、グリース状物質に2度に渡って一定荷重を加え、グリース状物質を多段階でガラス板の間で薄く引き延ばすことにより、マイクログラムオーダーの試料で劣化進行度を評価することが可能になる。
一般的なグリースは、基油(鉱油、合成油又はシリコーン油)中に増ちょう剤として金属石けん、又は、非石けん系のベントナイト、シリカゲル、アリル尿素、銅フタロシアニン等を分散させ、半固体状にしたものである。さらに固体潤滑剤として黒鉛や二硫化モリブデン等を添加し、耐久性を向上させたものもある。固体潤滑剤を添加したグリースは常温で黒色であるが、固体潤滑剤を添加していないシリコーン系グリースは常温で白色である等、グリースの種類によって色が異なる。本発明の評価方法は、グリース状物質の種類や色に拘わらず評価することが可能である。
ガラス板の間で薄く引き延ばされたグリース状物質は、固まりでは分からない色や透明度の違いが明確に現れるため、色や透明度の違いも劣化指標となり得る。色の変化は、例えばグリースの劣化による基油や増ちょう剤の分子鎖の切断による低分子量化、不飽和結合の重合による高分子量化、水酸化物や酸化物の形成、二硫化モリブデン等添加剤の消耗などによるものと推察される。
グリースの劣化による色の変化は、例えば、固体潤滑剤として二硫化モリブデンを添加したグリースのように、最初は黒色であったものが、劣化により二硫化モリブデンが消耗されて失われて行くことにより退色し、最終的にほぼ無色に変化する場合(図2(a)参照)と、シリコングリースなどで固体潤滑剤を添加していないグリースのように、最初は白色であったものが、劣化により着色し茶褐色に濃色化する場合(図2(b)参照)がある。
劣化により退色する場合も濃色化する場合も、いずれの場合も色の変化度合いで、グリースの劣化度合いを判定することができる。また、劣化の程度を、光透過度や色差により
判定することもできる。
また、固体潤滑剤などの固体状の添加剤を含有するグリースの場合には、劣化により発生する摩耗粉等の異物等の形状や量を観察比較することで劣化の程度を評価することも可能である。
以下、本発明に係るグリース状物質の劣化評価方法の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
1.広がり長さの測定による劣化の評価方法(図3〜図5参照)
<工程A>
1)先ず、清浄な2枚のガラス板(スライドグラスが好適である。)1a、1b、ならびに横滑り抑制用の枠2および白紙3を用意する。白紙3は試料の色彩を判別し易くして、広がったグリースの輪郭を見易くする効果がある。
2)ガラス板1aの中心付近には、グリースの載置位置を指示するための直径1mmの円ならびに当該直径1mmの円の中心で直交する2本の直線(十字マーク)を記載しておく(図5(a)参照)。あるいは十字マークは記載せずグリースの載置位置を指示するための直径1mmの円のみを記載しておいても良い(図5(b)参照)。または、図示していないが、ガラス板1aの代わりに、白紙3に直径1mmの円と十字マークを記載しておいても良い。
3)枠2内にガラス板1aを嵌めこんで白紙3の上に置き、清浄な針を用いて、マイクログラムオーダーの試料4を、ガラス板1aの直径1mmの円の上に載置する。なお、ガラス板1aの代わりに白紙3にグリース載置位置を指示する直径1mmの円および十字マークを記載した場合には、ガラス板1aの中心付近に、清浄な針を用いて、マイクログラムオーダーの試料を載置した後、ガラス板1aを枠2に嵌めこみ、白紙3の直径1mmの円の位置に試料位置をあわせても良い。
4)ガラス板1bをガラス板1aの上に載せて枠2内に嵌め込んだ後、ガラス板1bの上に1度目の一定荷重5(W)を加える。
<工程B>
5)所定の時間が経過したところで荷重5を除去し、十字マークに沿いながら、ガラス板1aとガラス板1bの間に広がった試料のX軸方向の広がりXおよびY軸方向の広がりYを測定し、面積(S)を算出する(図4参照)。
<工程C>
6)次いで、ガラス板1bの上部に2度目の一定荷重5´(W)を加える。
<工程D>
7)所定の時間が経過したところで荷重5´を除去し、1度目と同じ箇所の試料のX軸方向の広がりXおよびY軸方向の広がりYを測定し、面積(S)を算出する。
8)グリースが真円状に広がる場合には、X軸方向の広がりとY軸方向の広がりは同じ値となるので、XとXの比(またはYとYの比)を求めるか、あるいは面積SとSの比を求めることで、グリースの劣化の程度を評価することができる(図4参照)。なお、XとXの比(X/X)またはYとYの比(Y/Y)を広がりちょう度の長さ変化率、面積SとSの比(S/S)を広がりちょう度の面積変化率と称する。
9)グリースの広がりが真円状でない場合には、広がりちょう度の長さ変化率がX軸方向とY軸方向で必ずしも同じでないことがあるので、その場合には、グリースの広がりを楕円と近似し、X軸方向とY軸方向の広がり長さの大きい方の値を長径、短い方の値を短径とする楕円の面積を算出し、広がりちょう度の面積変化率からグリースの劣化の程度を評価することができる。
図5に広がりちょう度の具体的な測定の方法を示す。
X軸およびY軸の取り方は任意であるが、例えば、ガラス板としてスライドグラスを用いた場合には、長辺方向をX軸、長辺に直交する短辺方向をY軸とすれば良い。
グリース載置位置を指示する直径1mmの円と十字マークを記載したガラス板を用いた場合には、図5(a)に示すように、十字マークのX軸およびY軸に沿って広がったグリースの長さを測定し、円あるいは楕円の面積を算出すれば良い。
一方、直径1mmの円のみを記載し十字マークを記載しないガラス板を用いた場合には、図5(b)に示すように、広がったグリースのX軸方向およびY軸方向の最外縁に対して、それぞれ平行な接線を引き、接線間の長さを測定して、円あるいは楕円の面積を算出すれば良い。
X軸方向、Y軸方向の長さの測定に際しては、拡大鏡、光学顕微鏡、画像解析装置等を使用するのが良い。
本発明においては、2度に渡って荷重を付加し、1度目の荷重でのグリースの広がりちょう度と、2度目の荷重でのグリースの広がりちょう度の比率を求めることが肝要である。
荷重を付加することでグリースが広がる(あるいはグリース中の基油が滲み出す)ので、付加する荷重が大きいほどグリースが広がり易くなり、広がりちょう度が大きくなることが想定される。図6は、新品のシリコーン系グリースについて、荷重と広がりちょう度(長さ、面積)の関係を示した図である(測定点数=5)。図6より、荷重が大きくなるに従い、試料の広がり直径及び広がり面積は直線的に増加する傾向にあり、200gの荷重の場合で、無荷重の荷重の場合と比べて面積比で約4倍程度に広がることがわかる。
一方、本発明の方法にしたがい、新品ならびに加速劣化させたシリコーン系グリースについて、1度目に5gの荷重を60秒、2度目に200gの荷重を60秒付加した場合に、広がったグリースの長さを測定し、面積を算出した例を図7に、そして2度目の200gの荷重での長さあるいは面積と、1度目の5gの荷重での長さあるいは面積との比である、広がりちょう度の長さ変化率および面積変化率を求めた例を図8に示す。
図8より、2度目の200gの荷重の付加による、新品のシリコーン系グリース(加速劣化時間0)の面積変化率は約8であることがわかる。したがって、同じ200gの荷重を付加する場合であっても、図6に示した例のように1度だけ200gの荷重を付加するよりも、本発明のように1度目に低荷重を付加してから、2度目に200gの荷重を付加するほうが、広がりちょう度の変化の度合いが大きくなるので、グリースの劣化を評価し易くなる。
また、1度だけ荷重を付加して広がりちょう度を測定する場合には、試験に供した試料の重量あるいは体積により、広がる大きさが影響されるため、複数回の測定から広がりちょう度の平均値を求める場合に、試料の秤量誤差を補正する必要が生じる。これに対して、本発明の方法では、変化率で評価するので、試料の量がある程度ばらついたとしても、ある2点間の変化率であるから、重量誤差や体積誤差の影響をほぼ無視して、劣化による粘性の変化を評価できる。
さらに、本発明において、2度目の荷重(W)は1度目の荷重(W)より重くすることが必要である。ただし、最適荷重は、評価対象となる試料の劣化度や、試料の種類(グリースの基油や、グリースに添加されている増ちょう剤の種類)等に応じて、適宜、決定することができる。1度目の荷重(W)は1g〜100gの範囲から選ばれ、2度目の荷重(W)は5g〜400gの範囲より選ばれ、そして、2度目の荷重を1度目の荷重の4倍以上400倍以下とするのが好ましい。
1度目の荷重(W)、2度目の荷重(W)を決定する場合は、異なる荷重を載せた予備試験を実施したうえで、広がり直径が3mm程度となる荷重を1度目の荷重とし、広がり直径が5〜10mm程度の荷重を2度目の荷重とするのが良い。これにより、マイクログラムオーダーの試料でも、短時間で精度よく劣化評価することが可能になる。
あるいは、予備試験を行わずに、例えば、1度目の荷重(小荷重)および2度目の荷重(大荷重)として多段階の荷重を設定し、それぞれの荷重の組合せで試験を実施して広がりちょう度の長さ変化率あるいは面積変化率を求め、劣化度合いを最も明確に評価できる荷重の組合せの結果を採用しても良い。
荷重を加える時間は、試料(グリース状物質)の種類(特にちょう度)や劣化度によって異なるため特に限定されるものではなく、適宜決定することができるが、該時間が短すぎると試料の広がり性が悪く評価精度に欠けるものとなり、一方、該時間が長すぎると評価の迅速性に欠けるものとなる。
劣化度合いの判定は、広がりちょう度の長さ変化率あるいは面積変化率のどちらを用いても良い。
面積変化率を表す方法として、例えば、図8の例では、2度目の荷重での面積(S)と1度目の荷重での面積(S)の比(S/S)として表しているが、面積変化率の表し方は特に限定されず、比ではなく%で表示しても良い。また、変化率の算出方法も特に限定されず、(S−S)/Sの値を面積変化率としても良いし、あるいは、新品のグリースの2度目の荷重での面積をS02、1度目の荷重での面積をS01、経年劣化したグリースの2度目の荷重での面積をS2、1度目の荷重での面積をSとして、(S−S)/(S02−S01)の値、あるいは(S−S02)/(S−S01)の値を面積変化率としても良い。さらには、試料の重量(W)を用いて、S/(S*W)、(S−S)/(S*W)、(S−S02)/{(S−S01)*W}の値を変化率とすることもできる。
2.色彩の評価方法(図9参照)
色彩の評価は、上述した、1.広がり長さの測定による劣化の評価方法と同じ手順で行うことができる。従って、別途、色彩評価のみを実施しても良いが、直径又は面積の変化率の測定と同時に実施することもできる。
<工程A>
具体的には、先ず、図3に示すように、清浄な2枚のガラス板(スライドグラスが好適である。)1a、1bを用意する。ガラス板1bの上部に1度目の一定荷重(W)を載せる。
<工程B´>
所定の時間が経過したところで荷重を除去し、試料の色彩を肉眼、或いは色差計を用いてa値、b値、c値等により評価する。
<工程C>
さらに、ガラス板1bの上部に2度目の一定荷重(W)を載せる。
<工程D´>
所定の時間が経過したところで荷重を除去し、試料の色彩を<工程B´>と同様の方法で評価する。
図9に、シリコーン系グリースの新品と実機経年品3種類について、広がりちょう度と色彩を同時に評価した結果を示す。図9からは明らかでないが、新品グリースは、透明灰色の色彩であったのに対し、実機経年グリースは、いずれも黄色味を帯びていた。
3.油を吸着・吸収するシート状物を用いる測定・評価方法(図10、図11参照)
本評価方法では、ガラス板の間にグリース状物質を挟み、荷重を加えることによりグリース中に保持する油量を、油を吸着・吸収するシート状物を用いて測定する。即ち、劣化したグリースでは、増ちょう剤と基油とが分離し、さらに分離した基油が重合固化することにより、グリースの流動性や潤滑性が失われ、グリース中の油分量が減少するので、油分量を測定することにより劣化度を評価することが可能になる。グリースの油分量は、基油や増ちょう剤の種類や量によって異なるため、油を吸着・吸収するシート状物が吸着した絶対的な油分量で評価することは難しい。しかし、各グリースについて劣化品の基油率(即ち、新品グリースの油分量に対する劣化グリースの油分量の割合)を求めることにより、精度の高い評価が可能になる。
図10は、新品のグリースと劣化したグリースでの、グリース中の基油量の測定方法において、油を吸着・吸収するシート状物による油の吸着を概念的に示す(a)上面図と(b)断面図である。
<工程E>
1)先ず、清浄なガラス板(スライドグラスが好適である。)6の上に、重量が既知のの油を吸着・吸収するシート状物7を貼り付ける。該油を吸着・吸収するシート状物としては、油を吸着・吸収するシートであれば特に限定されず、油取り紙の他、パルプ製のキッチンペーパーやキッチンタオル、不織布製のシートなどの、家庭用や業務用に市販されている化粧用や調理用、清掃用、実験用等の各種シートを用いることができる。
2)油を吸着・吸収するシート状物7の上に、マイクログラムオーダーの試料8の重量(W)を量り取る。次いで、試料8の上部にガラス板(カバーグラスが好適である。)9を載せ、ガラス板9の上部に一定の荷重10を加える。荷重10を加えることにより油が円形状に広がる。図11に示すように、新品グリースでは、多量の油が吸着されるので油を吸着・吸収するシート状物が変色するのに対し、実機経年品グリースでは、油の吸着量が少なく、該シート状物がほとんど変色していないことがわかる。
<工程F>
所定の時間が経過したところで荷重10を除去し、油を吸着・吸収するシート状物7の上に残ったグリース固形分を除去した後、該シート状物7に吸着された油の重量(W)を測定する。吸着された油の重量は、測定前と測定後の油を吸着・吸収するシート状物の重量の差、又は、油を吸着・吸収するシート状物とガラス板の合計重量の差を用いて求めることができる。次いで、試料の重量(W)に対する油の重量(W)の重量比(W/W)(即ち、基油率)を求める。この重量比が小さいほど、試料の劣化が進行していることを示す指標になる。
また、<工程E>と同様にして荷重を加えた後、油を吸着・吸収するシート状物に吸着された油の面積から、劣化度合いを評価することもできる。
<工程F´>
所定の時間が経過したところで荷重10を除去し、油を吸着・吸収するシート状物7に広がった円形の面積(S)を求め、新品の試料について同様の方法にて測定した円形の面積(S)との面積比(S/S)(即ち、基油率)を求める。この面積比が小さいほど、試料の劣化が進行する指標になる。面積の測定は、上述した、1.広がり長さの測定による劣化の評価方法の場合と同様、油の広がり直径又は面積を、平面視野像から検出した径を直径として測定し面積を算出する。
本発明の劣化評価方法を個々の試料に適用するにあたっては、特別の温度条件や装置の設定は必要とされず、常温で汎用装置を用いて行えば良い。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、グリース或いはそれと実質的に同等な物質に関連した測定系を構築すれば良い。これらの一般的な技術手段の詳細については、当該分野で知られた、総説、成書などを参照することができる。
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
以下の手順及び方法に従い、グリースの劣化度を、面積変化率及び色彩で評価した。
a.供試試料
変電機器に12年間使用されている下記2種のグリースについて、各3箇所の実機から採取したものを試料とした。
・グリースA(基油:エステル系+リチウム石けん+固体潤滑剤)、JISちょう度285
・グリースC(基油:シリコーン系)、JISちょう度280
測定は、各試料ごとに5回行い、最小値と最大値を除いた3点の平均値を採用した。
b.1度目の荷重試験
清浄なスライドグラス(26mm×26mm、重さ約1.9〜2.0g)の略中心に、清浄な針を用いて、試料約0.5mgを載せ、スライドグラスを横滑り抑制用の枠(内寸:26mm×26mm、高さ2mm)内にはめこみ、枠内の白紙の十字の中心位置と試料の中心が重なるようにした。試料の上部に同じ大きさのスライドグラスを載せた。スライドグラスの上部に5gの荷重を加え、60秒経過したところで荷重を除去し、2枚のスライドグラスの間に広がった試料のX軸方向の広がりX及びY軸方向の広がりYをデジタルマイクロスコープで拡大して測定し、面積(S)を求めた。
c.2度目の荷重試験
再びスライドグラスの上部に200gの荷重を載せ、60秒経過したところで荷重を除去し、2枚のスライドグラスの間に広がった試料のX軸方向の広がりX及びY軸方向の広がりYを、1度目の荷重試験と同じ方法で測定し、面積(S)を求めた。
d.面積変化率
上記で求めた面積(S)と面積(S)より、面積変化率(S/S)ならびに(S−S)/(S02−S01)を求めた。その結果を表1に示す。なお、S及びSは経年劣化したグリースの面積、S01及びS02は新品のグリースの面積を表す。
e.色彩評価
荷重を加えていないときの試料の色彩、ならびに、1度目の荷重試験及び2度目の荷重試験において2枚のスライドグラスの間に広がった試料の色彩を、色見本(図2参照)による数段階の分類と、光透過度測定による劣化度合いの分類により評価した。結果を表1に示す。
表1より、経年数が同じでもグリースの種類によって劣化度合いが異なること、新品と劣化した試料の変化率は異なることがわかる。
また、荷重を加えることなく色彩を評価した場合は、劣化度の差が明確でなかったが、ガラス板の間で薄く引き伸ばすことによって、特に2度目の荷重試験後の試料では見た目の色彩の差が大きいので、グリースの劣化度合いの分類指標として用いることが可能である。
劣化度合いの変化率による評価と色彩評価との間には、試料の劣化度が大きくなるほど良い相関が見られるようになる。
以上の結果より、マイクログラムオーダーの超微量の試料であっても、迅速かつ簡易な操作でグリースの劣化度を評価できることがわかった。よって、変電機器ごとに劣化度を評価することにより、グリース使用期間の最適化とコスト削減を実現することが可能になる。
本発明は、簡便かつ安価なグリース状物質の劣化評価方法を提供するものであり、現在変電機器類に使用されているグリースの評価で課題となっている超微量サンプルでの評価及び診断に有用である。
1a、1b ガラス板
2 枠
3 白紙
4 試料
5 1度目の荷重
5´ 2度目の荷重
6 ガラス板
7 油を吸着・吸収するシート状物
8 試料
9 ガラス板
10 荷重

Claims (4)

  1. グリース状物質の劣化度を評価する方法であって、
    2枚のガラス板の間に挟んだマイクログラムオーダーの超微量の試料に1度目の一定荷重を加える工程Aと、
    所定時間経過後の該試料の広がり長さを測定すると共に、面積を算出する工程Bと、
    続いて2度目の一定荷重を加える工程Cと、
    所定時間経過後の該試料の広がり長さを測定すると共に、面積を算出する工程Dと、を備え、
    工程Bと工程Dにおける広がり長さおよび/または広がり面積から、試料の劣化度を評価することを特徴とするグリース状物質の劣化評価方法。
  2. グリース状物質の劣化度を評価する方法であって、
    2枚のガラス板の間に挟んだマイクログラムオーダーの超微量の試料に1度目の一定荷重を加える工程Aと、
    所定時間経過後の該試料の色彩を評価する工程B´と、
    続いて2度目の一定荷重を加える工程Cと、
    所定時間経過後の該試料の色彩を評価する工程D´と、を備え、
    工程B´および/または工程D´の色彩の評価から、試料の劣化度を評価することを特徴とするグリース状物質の劣化評価方法。
  3. グリース状物質の劣化度を評価する方法であって、
    2枚のガラス板の間に挟んだ油を吸着・吸収するシート状物と該シート状物上に量り取ったマイクログラムオーダーの超微量の試料に一定荷重を加える工程Eと、
    所定時間経過後の該シート状物の重量を測定し、該シート状物が吸収した試料の重量を求める工程Fと、を備え、
    該シート状物が吸収した試料の重量と量り取った超微量の試料の重量との比率から、試料の劣化度を評価することを特徴とするグリース状物質の劣化評価方法。
  4. グリース状物質の劣化度を評価する方法であって、
    2枚のガラス板の間に挟んだ油を吸着・吸収するシート状物と該シート状物上に量り取ったマイクログラムオーダーの超微量の試料に一定荷重を加える工程Eと、
    所定時間経過後の該シート状物上の試料の広がり面積を求める工程F´と、を備え、
    工程F´で求めた広がり面積と非劣化状態の該試料の広がり面積との比率から、試料の劣化度を評価することを特徴とするグリース状物質の劣化評価方法。
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