JP5840485B2 - 内燃機関用ピストン - Google Patents

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本発明は、内燃機関にてシリンダ内を往復動作する内燃機関用ピストンに関する。
自動車は、燃料が供給された内燃機関が発生する駆動力を回転駆動力に変換してタイヤを回転動作させ、これにより走行している。このような構成の自動車において、近時、内燃機関の燃料消費率(燃費)を向上させることが種々試みられている。燃料の消費量が低減するので、省エネルギ化となるとともに、地球環境保護に貢献し得るからである。
そのような試みの1つとして、内燃機関のシリンダの内壁(ボア又はスリーブの内壁)と、該シリンダ内を往復動作するピストンとの摺動抵抗を低減することが挙げられる。摺動抵抗が小さい場合、ピストンが往復動作することが容易となる。このため、ピストンを往復動作させるための駆動力が小さくなり、ひいては燃料消費量が低減するからである。
摺動抵抗を低減するべく、潤滑性に富む物質を含む層をシリンダの内壁又はピストンスカートに設け、これにより、内壁又はピストンスカートの潤滑性能を向上させることが知られている。例えば、本出願人は、特許文献1において、ピストンスカートの摺接面に条痕を形成するとともに、該条痕を銀、銀合金、銅又は銅合金からなる潤滑性の皮膜で被覆することを提案している。
該特許文献1に記載の通り、この種の皮膜と、ピストンスカートとの間に耐熱性樹脂材からなる中間層を介在すると、皮膜が中間層を介してピストンスカートに強固に接合するので好適である。なお、中間層をなす耐熱性樹脂材の具体例としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン−6樹脂、ナイロン−6,6樹脂等が挙げられている。
このように構成された内燃機関用ピストンでは、皮膜が存在することにより、シリンダの内壁(例えば、スリーブの内壁)とピストンスカートとの間に潤滑剤を良好に保持することができるとともに、摩擦熱が速やかに拡散ないし伝達されるようになるのでピストンスカートとシリンダの内壁との間に凝着が起こることを回避することができるという効果が得られる。
国際公開第2011/115152号パンフレット
レーシングカー等、過酷な環境下で走行する車においては、内燃機関に優れた耐久性が要求される。例えば、特許文献1記載の内燃機関用ピストンの場合、皮膜がピストンスカートから可及的に脱落し難いことが望まれる。この場合、上記した効果が長期間にわたって維持されるからである。
本発明は特許文献1記載の技術に関してなされたもので、固体潤滑部が脱落し難く、このためにシリンダの内壁とピストンスカートとの間に潤滑剤を良好に保持し得、しかも、両者の間に凝着が起こることを回避することも可能な内燃機関用ピストンを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、内燃機関のシリンダ内を往復動作する内燃機関用ピストンにおいて、
ピストンスカートの摺接面に形成されて樹脂材を含む下地層と、
前記下地層上に形成され、銀、銀合金、銅又は銅合金の少なくともいずれか1種からなる固体潤滑部と、
を有し、
前記固体潤滑部の気孔率が2%以下であり、
且つ前記下地層と前記固体潤滑部との間に、厚みが10nm以上であり、前記下地層と、前記固体潤滑部との双方が混在する相互混合層が介在していることを特徴とする。
相互混合層では、下地層の上端部に対して固体潤滑部の下端部が進入した状態となっている。このため、下地層と固体潤滑部との間にいわゆるアンカー効果が発現する。このことと、相互混合層の厚みが10nm以上に設定され、且つ固体潤滑部の気孔率が2%以下に設定されていることとが相俟って、下地層に対して固体潤滑部が強固に接合する。これにより、固体潤滑部が下地層から剥離ないし脱落し難くなる。
従って、この内燃機関用ピストンを組み込んだ内燃機関を、レーシングカー等の過酷な環境下で運転される車に搭載したとしても、長期間にわたって優れた耐久性を示す。
下地層には、樹脂材の他、固体潤滑剤をさらに含めるようにしてもよい。この場合、固体潤滑部が万一脱落して下地層が露呈したとしても、該下地層に含まれる固体潤滑剤によって潤滑性能が維持されるからである。
この場合において、樹脂材と固体潤滑剤との配合比は、重量割合で1:9〜9:1とする。樹脂材が重量比で1未満では、固体潤滑部との間に相互混合層を形成することが容易ではない。また、固体潤滑剤が重量比で1未満の場合、下地層に十分な潤滑性能を付与することが容易ではない。
なお、この種の固体潤滑剤としては公知のものを用いればよいが、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、グラファイトの群から選択される少なくとも1種が特に好適である。
固体潤滑部は、ピストンスカートの摺接面全体に設けるようにしてもよいが、該固体潤滑部が銀、銀合金、銅又は銅合金からなるため、コストが上昇するとともに内燃機関用ピストンの重量が大きくなる。そこで、固体潤滑部を、線状形状又は点状形状で形成することが好ましい。
この場合、固体潤滑部の総体積が低減するので、該固体潤滑部をなす金属(銀、銀合金、銅又は銅合金)の使用量が低減する。従って、コストを低廉化することができる。また、内燃機関用ピストンの重量が大きく増加することを回避することができる。
なお、下地層は、ピストンスカートの摺接面全体に設けるようにしてもよいし、固体潤滑部を設ける位置にのみ選択的に設けるようにしてもよい。
ピストンスカートの摺接面は、平滑面であってもよい。この場合、下地層を、該平滑な摺接面に形成すればよい。
この構成では、ピストンスカートに条痕を設けていないので、そのための作業を行う必要がない。従って、下地層及び固体潤滑部を設けた内燃機関用ピストンを効率的に得ることができる。
本発明によれば、ピストンスカートの摺接面上に設けた下地層と、銀、銀合金、銅又は銅合金の少なくともいずれか1種からなり且つ気孔率が2%以下である固体潤滑部との間に、これら下地層及び固体潤滑部の材料が混在する相互混合層を、厚み10nm以上として介在させるようにしている。このため、過酷な環境下であっても、固体潤滑部が下地層から脱落し難い。
従って、内燃機関において、シリンダの内壁と内燃機関用ピストンとの間に、長期間にわたって優れた潤滑性能が発現する。すなわち、耐久性に優れた内燃機関を構成することができる。
本発明の実施の形態に係るピストンの概略全体斜視図である。 図1に示すピストンの側面図である。 前記ピストンを構成するピストンスカートの表層部近傍を拡大して示す断面模式図である。 ピストンスカートの摺接面上に積層された下地層と固体潤滑部との境界近傍を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影したSEM写真である。 図4に示される侵食層の厚みと、固体潤滑部の密着率との関係を示すグラフである。 侵食層が存在しない場合の下地層と固体潤滑部との境界近傍のSEM写真である。 図4の固体潤滑部に対して画像処理を施すことで得られた画像である。 図6の固体潤滑部に対して画像処理を施すことで得られた画像である。 固体潤滑部の気孔率と、該固体潤滑部の密着率との関係を示すグラフである。 別の実施の形態に係るピストンの側面図である。 また別の実施の形態に係るピストンを構成するピストンスカートの表層部近傍を拡大して示す断面模式図である。
以下、本発明に係る内燃機関用ピストン(以降、単に「ピストン」と表記することもある)につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係るピストン10の概略全体斜視図であり、図2は、その側面図である。このピストン10は、その下部に一対のピストンスカート12、12を有し、該ピストンスカート12、12同士の間には、略鉛直方向に沿って延在する壁部14、14が介在する。壁部14、14の各々には、ピンボス部16、16が水平方向に指向して突出するように設けられ、ピンボス部16、16の各々には、図示しないピストンピンを挿入するためのピストンピン孔17、17が貫通形成される。前記ピストンピンは、図示しないコネクティングロッド(コンロッド)の小端部に形成される貫通孔に通され、これにより、コンロッドを軸支する。
ピストンスカート12、12の上部には、下方から上方に向かうに従って、オイルリング溝18、第1ピストンリング溝20、第2ピストンリング溝22がこの順序で形成される。勿論、これらオイルリング溝18、第1ピストンリング溝20及び第2ピストンリング溝22は、ピストン10の頭部を円周方向に沿って周回するように形成されている。
以上のように構成されるピストン10は、AC2A、AC2B、AC4B、AC4C、AC4D、AC8H、A1100(いずれもJISに定義されるアルミニウム合金)、又はAl−Cu合金等のアルミニウム合金からなる。
図3に拡大して示すように、この場合、ピストンスカート12の摺接面は平滑面として形成されており、該平滑な摺接面に下地層24が固着されている。下地層24は、ピストンスカート12の摺接面を全体にわたって被覆しており、その厚みは略均等である。
下地層24は、後述する固体潤滑部26とピストンスカート12との接合力を向上させ、且つ耐熱性を示す樹脂材を含有する。この種の樹脂材の好適な例としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン−6樹脂、ナイロン−6,6樹脂等を挙げることができる。
下地層24は、樹脂材のみから構成するようにしてもよいが、樹脂材に加えて固体潤滑剤をさらに含有するものであってもよい。固体潤滑剤としては公知のものを配合すればよいが、その好適な例としては、二硫化モリブデン(MoS)、窒化ホウ素(BN)、グラファイト(C)等が挙げられる。
下地層24が固体潤滑剤を含有するものである場合、樹脂材と固体潤滑剤の配合比は、重量割合で樹脂材:固体潤滑剤=1:9〜9:1とすればよい。樹脂材の重量比が1未満であると、後述する侵食層28(相互混合層・図4参照)が生成することが容易でなくなる。また、固体潤滑剤の重量比を1未満とすると、固体潤滑剤を配合することによる潤滑性の向上効果が十分でなくなる。
この下地層24上には、ピストンスカート12の周回方向に沿って線状に延在する固体潤滑部26が複数本設けられる(図1及び図2参照)。各固体潤滑部26は下地層24上から水平方向に沿って隆起しており、このため、線状形状をなす複数本の固体潤滑部26によって、条痕形状が形成される。
固体潤滑部26は、銀、銀合金、銅、又は銅合金のいずれかからなる。これらはいずれも、ピストンスカート12がシリンダブロックのボアの内壁、又はシリンダスリーブの内壁に対して摺接する際、優れた潤滑性能を示す。なお、銀合金の好適な例としてはAg−Sn合金、Ag−Cu合金が挙げられ、銅合金の好適な例としてはCu−Sn合金、Cu−Zn合金、Cu−P合金等が挙げられる。
固体潤滑部26を銀又は銀合金で構成する場合、銀の純度は、60重量%以上であることが好ましい。60重量%未満であると、固体潤滑部26の熱伝導率が若干低く、このために平滑な摩耗面が形成することが容易ではなくなるので、内燃機関の摩擦損失(Psf)を低減する効果が乏しくなる傾向がある。銀の純度は、80重量%以上であることが一層好ましい。
一方、固体潤滑部26を銅又は銅合金で構成する場合、銅の純度は、上記と同様の理由から70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることが特に好ましい。
ここで、銀の純度は、「固体潤滑部26に含まれる銀の重量%」として定義される。例えば、銀合金からなる固体潤滑部26を形成した場合には、銀の純度は、固体潤滑部26中に含まれる銀の重量%として求められる。また、銀粒子を塗布した後に焼結体からなる固体潤滑部26を得る場合、銀の純度は、ペースト中の銀粒子の割合として定義される。銅の純度についても同様である。
なお、固体潤滑部26の全てを同一金属から設ける必要は特にない。例えば、1本の固体潤滑部26を銀で形成するとともに、該固体潤滑部26に隣接する別の固体潤滑部26を銅合金で形成する等、別種の金属から設けるようにしてもよい。
また、固体潤滑部26の厚みは、特に限定されるものではないが、過度に小さいと固体潤滑部26が比較的短期間で摩耗する。一方、過度に大きいと、固体潤滑部26の重量が大きくなるのでピストン10を往復動作させるための駆動力が大きくなってしまう。以上の不都合が発生することを回避するべく、固体潤滑部26の厚みを0.5〜100μmに設定することが好ましい。
ここで、以上のように構成される下地層24と固体潤滑部26との境界近傍を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影したSEM写真を図4に示す。この図4から諒解されるように、直線L1、L2間の領域において、下地層24の上端部では、凹部及び凸部が互いに連なって存在しており、且つ固体潤滑部26の下端部が前記凹部を充填するとともに、前記凸部を埋没している。
すなわち、直線L1、L2間の領域は、下地層24をなす材料と、固体潤滑部26をなす材料との双方が混在する相互混合層である。相互混合層は、見掛け上、固体潤滑部26の下端部が下地層24の上端部を侵食して進入した状態に相当することから、以降の説明では、この相互混合層を「侵食層」と表記し、その参照符号を28とする。
侵食層28では、下地層24と固体潤滑部26との間にいわゆるアンカー効果が発現する。上記したように、固体潤滑部26の下端部が下地層24の上端部に進入しているからである。このため、下地層24に対して固体潤滑部26が強固に接合する。換言すれば、固体潤滑部26が下地層24から剥離ないし脱落し難くなる。
固体潤滑部26の下端部の中、下地層24の平坦部に最も近接するものの高さ位置は概ね同一であり、直線L1は、このような下端部の頂部同士に引いた接線である。その一方で、下地層24の上端部の中、固体潤滑部26の平坦部に最も近接するものの高さ位置も概ね同一であり、直線L2は、このような上端部の頂部同士に引いた接線である。直線L1、L2は、互いに略平行である。
直線L1、L2間の距離Tは、侵食層28の厚みとして定義される。ここで、侵食層28の厚みと、固体潤滑部26の密着率との関係を図5にグラフとして示す。なお、密着率は、複数個の試験片についてタンブリング試験を実施した結果を表す。すなわち、固体潤滑部26に対して所定の条件下で鉄球を衝突させた後、該固体潤滑部26の全体にテープを接着し、さらに、テープを引き剥がす。次に、固体潤滑部26のテープ付着分を、例えば、アドビ社製のフォトショップによって2値化し、その面積率を求める。この面積率が0%のときが、密着率100%である。また、面積率が、例えば、20%、50%、80%である場合、密着率は80%、50%、20%となる。
図6に示すように、下地層24と固体潤滑部26に明確な境界線L3が現れ、侵食層28が存在しない(すなわち、侵食層28の厚みが0である)場合には、図5から判断されるように密着率は60%である。そして、侵食層28の厚みが大きくなるにつれて密着率が向上し、10nmを超えると100%に達する。このため、本実施の形態では、侵食層28の厚みは10nm以上に設定される。
密着率は、固体潤滑部26の気孔率によっても変化する。ここで、本実施の形態において、気孔率は、固体潤滑部26のSEM観察結果に対して画像処理を施すことによって求められる。
具体的には、図4及び図6に示される固体潤滑部26の中の四角枠F1、F2で囲繞した部分の各々につき、コントラストに基づいて2値化を行うと、図7及び図8に示す結果が得られる。図7において、バックグランドの白色部分の面積の相対値を求めると101850であり、点在する黒色部分(気孔に相当する)の面積の総和の相対値を求めると1134である。この場合、気孔率は、下記の式(1)によって算出され、その値は1.11%である。
(1134/101850)×100=1.11 …(1)
一方、図8において、バックグランドの白色部分の面積の相対値を求めると103872であり、点在する黒色部分の面積の総和の相対値を求めると2196である。この場合の気孔率を下記の式(2)に従って算出すると、2.11%である。
(2196/103872)×100=2.11 …(2)
なお、画像処理及び2値化に際しては、例えば、アドビ社製のフォトショップ(ソフト名)を用いればよい。
そして、図9に示すように、気孔率が2%以下であるときには密着率は100%であるが、2%を超えると密着率が低下する。従って、本実施の形態では、固体潤滑部26の気孔率は2%以下に設定される。
以上のように、侵食層28の厚み及び固体潤滑部26の気孔率を適切に設定することにより、固体潤滑部26が下地層24から脱落することを有効に回避することができる。
なお、侵食層28の厚みは、固体潤滑部26を設ける際に用いる分散媒として適切なものを選定することで変更することができる。一方、固体潤滑部26の気孔率は、分散剤の添加量で変化する。
内燃機関を組み上げて運転する際、シリンダの内壁(シリンダボアの内壁又はシリンダスリーブの内壁)に対して、実質的には固体潤滑部26が潤滑油を介して摺接する。例えば、固体潤滑部26がFC(ねずみ鋳鉄)スリーブ又はAlスリーブの内壁に摺接するような場合では、固体潤滑部26の熱伝導度と、FCスリーブ又はAlスリーブの熱伝導度との和を求めると350W/m・K以上となり、且つ、固体潤滑部26のFCスリーブ又はAlスリーブに対するヤング率の差の絶対値が10GPa以上となる。本発明者らの鋭意検討によれば、この場合、スリーブとピストンスカート12との間の微小なクリアランスに潤滑油が良好に保持されるとともに、スリーブとピストンスカート12との間に凝着が発生することが回避される。このため、焼付きが生じることを有効に回避し得るとともに、内燃機関の摩擦損失を大幅に低減することができる。
しかも、本実施の形態では、固体潤滑部26が下地層24に強固に接合している。固体潤滑部26の気孔率が2%以下と小さく、且つ固体潤滑部26と下地層24との間に厚みが10nm以上の侵食層28が存在するからである。
このため、固体潤滑部26が下地層24から剥離し難い。換言すれば、固体潤滑部26が長期間にわたってピストンスカート12の摺接面に保持される。このため、ピストン10においては、固体潤滑部26が存在することによって得られる上記の効果が長期間にわたって継続される。
また、固体潤滑部26が下地層24から剥離し難いので、例えば、ピストン10がシリンダ内を激しく往復運動する場合であっても、固体潤滑部26の作用下に上記の効果が得られる。すなわち、レーシングカー等、過酷な環境下で運転される車であっても、耐久性に優れた内燃機関として供することが可能である。
その上、本実施の形態では、線状形状の固体潤滑部26を複数本設けるのみである。また、上記したような固体潤滑剤及び樹脂材のいずれも安価且つ軽量である。このため、ピストンスカート12の摺接面全体を下地層24で被覆し、該下地層24上に固体潤滑部26を設けたとしても、コストが著しく上昇することや、ピストン10の重量が過度に大きくなることが回避される。
以上のように、下地層24と、気孔率が2%以下である固体潤滑部26との間に厚みが10nm以上である侵食層28を介在するとともに、下地層24の所定の部位にのみ線状形状の固体潤滑部26を設けることにより、コストを低廉化しつつ、且つピストン10の重量増加を抑制しながら、十分な潤滑作用を発現させることができる。
さらに、仮に固体潤滑部26が下地層24から脱落し、下地層24がシリンダの内壁に摺接するような事態に至ったとしても、該下地層24に固体潤滑剤が含有されている場合には、この固体潤滑剤によって潤滑性能を維持することができる。
下地層24及び固体潤滑部26は、以下のようにしてピストンスカート12の摺接面に設けることができる。
先ず、下地層24となる上記したような樹脂材を用意し、溶融する。この溶融物に対し、上記したような固体潤滑剤を配合するようにしてもよい。この場合、樹脂材:固体潤滑剤=1:9〜9:1(重量比)となるようにする。
次に、ピストンスカート12の摺接面上に溶融物を供給する。このためには、例えば、射出を行えばよい。又は、溶融物を塗布するようにしてもよい。溶融物は、ピストンスカート12の摺接面の全体を被覆するように塗布することが好ましい。この場合、ピストンスカート12の摺接面の一部に溶融物を選択的に塗布する場合に比して、作業が容易且つ簡便となる。換言すれば、下地層24を容易に形成することができる。
このようにして供給された溶融物が冷却固化することにより、ピストンスカート12の摺接面上に下地層24が形成される。
その一方で、銀、銀合金、銅又は銅合金の微粒子、好ましくは平均粒径が1〜80nm、より好ましくは30〜80nmである、いわゆるナノ粒子を分散媒に分散させることでペーストを調製する。このペーストには、分散剤が添加される。
ここで、インクジェット印刷用のインクの分散媒として多用されるテルピネオールを用いた場合、図6に示すように、下地層24と固体潤滑部26との間に明確な境界線L3が現れ、侵食層28が形成されなくなる。このことから諒解されるように、侵食層28を形成するためには適切な分散媒が必要である。
具体的には、下地層24を十分に膨潤し得る分散媒を選定する。この場合、固体潤滑部26を形成するためのペーストを下地層24上に塗布した際、分散媒の作用下に下地層24(樹脂材)が膨潤する。この膨潤に伴って下地層24の上端部に凹部及び凸部が形成されるとともに、前記凹部を充填するようにペーストが進入する。その結果、下地層24とペーストとの間に、互いの材料が混在する侵食層28が形成される。
このような作用を営むことが可能な分散媒の好適な例としては、ベンジルアルコール等の芳香族アルコールが挙げられる。又は、ペグミアと呼称されるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであってもよい。
固体潤滑部26を形成するためには、このような分散媒を含むペーストを、例えば、スクリーン印刷又はパッド印刷等の公知の塗布手法によって下地層24上に塗布する。その後、該ペーストをピストン10ごと、好ましくは160〜240℃で加熱する。これによりペースト中の分散媒が揮発するとともに、ナノ粒子同士が融着する。すなわち、焼結が起こり、ナノ粒子の焼結体からなる固体潤滑部26が得られるに至る。
固体潤滑部26の気孔率は、ペースト中の分散剤の添加量によって変化する。従って、分散剤は、固体潤滑部26の気孔率が2%以下となる量で添加される。
ナノ粒子を用いた場合、上記したように160〜240℃という比較的低温域で焼結させて皮膜を形成することが可能である。従って、アルミニウム合金からなるピストンスカート12が高温となることが回避され、このため、該ピストンスカート12の機械的強度等に影響が及ぶことを回避することができる。
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは勿論である。
例えば、この実施の形態では、固体潤滑部26を線状形状として設けるようにしているが、図10に示すように、点状形状として設けるようにしてもよい。この場合、点状形状の固体潤滑部26、26同士の間に形成される凹部が、潤滑油を保持する役割を果たす。
この形態では、固体潤滑部26を形成するためのペーストの使用量、ひいては金属(銀、銀合金、銅又は銅合金)の使用量が一層低減するので、コストを一層低廉化することができる。また、ピストン10の重量の増加幅を抑制することもできる。
また、下地層24を、ピストンスカート12上の、固体潤滑部26を形成する箇所にのみ選択的に設けるようにしてもよい。又は、ピストンスカート12の摺接面の全体を下地層24で被覆するとともに、下地層24の全体を固体潤滑部26で被覆するようにしてもよい。
さらに、ピストンスカート12の摺接面に条痕を複数本設け、該条痕に対して選択的に下地層24を設けるとともに、この下地層24上にのみ選択的に固体潤滑部26を設けるようにしてもよい。又は、図11に示すように、下地層24に、摺接面を周回する複数本の線状形状をなすようにして凸部30を突出形成するとともに、この凸部30上に、線状形状又は点状形状の固体潤滑部26を設けるようにしてもよい。
10…内燃機関用ピストン 12…ピストンスカート
24…下地層 26…固体潤滑部
28…侵食層 30…凸部

Claims (5)

  1. 内燃機関のシリンダ内を往復動作する内燃機関用ピストンにおいて、
    ピストンスカートの摺接面に形成されて樹脂材を含む下地層と、
    前記下地層上に形成され、銀、銀合金、銅又は銅合金の少なくともいずれか1種からなる固体潤滑部と、
    を有し、
    前記固体潤滑部の気孔率が2%以下であり、
    且つ前記下地層と前記固体潤滑部との間に、厚みが10nm以上であり、前記下地層と、前記固体潤滑部との双方が混在する相互混合層が介在していることを特徴とする内燃機関用ピストン。
  2. 請求項1記載のピストンにおいて、前記下地層が固体潤滑剤をさらに含有し、且つ前記樹脂材と前記固体潤滑剤との配合比が重量割合で1:9〜9:1であることを特徴とする内燃機関用ピストン。
  3. 請求項2記載のピストンにおいて、前記固体潤滑剤は、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、グラファイトの群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする内燃機関用ピストン。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のピストンにおいて、少なくとも前記固体潤滑部が線状形状又は点状形状で形成されることを特徴とする内燃機関用ピストン。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のピストンにおいて、前記ピストンスカートの摺接面が平滑であり、前記下地層は、該平滑な摺接面に形成されていることを特徴とする内燃機関用ピストン。
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