本発明は、歯車とローラチェーン又は他の歯車のかみ合わせによりトルクを伝達する動力伝達装置(ドライブライン)に関する。
自転車などに用いられる歯車とローラチェーンを備えた無限軌道式の動力伝達装置は周知である。この動力伝達装置では、ローラチェーンが歯車の歯にかみ合った際、ローラチェーンのローラが伝達張力により歯車に固着し、歯車を回転させる。この結果、ペダルのトルクは、一方の歯車(自転車ではチェーンホイールと呼ばれる。)から、他方の歯車に伝達される。
また、シャフトとかさ歯車(ベベルギア)を備えた動力伝達装置であるシャフトドライブも周知である。この動力伝達装置では、回転軸に取り付けられたかさ歯車の歯とシャフトの一端にある歯車の歯とかみ合うことでシャフトが回転する。この結果、ペダルのトルクは、シャフトの他端にある歯車に伝達される。
自転車は、市街地や村などの限られた範囲での移動には便利な乗り物である。しかしながら、自転車は乗り手の運動により走行するので、長時間又は長距離の移動には不都合である。近年、電動アシスト装置の付加により乗り手の負担が軽減されているが、バッテリー容量に制約があることや、装置の質量が重いことなどから、電動アシスト装置は長時間又は長距離の移動には未だ十分であるとは言えない。
ところで、特許文献1(特開平7−187042号公報)や特許文献2(特開2001−57771号公報)には、永久磁石を利用した自転車に用いられ得る補助装置が開示されている。前者の補助装置は、歯車のような回転体の面上に取り付けられた第1の永久磁石と、第1の永久磁石の回転移動軌跡の一部と立体交差する回転軸に備えられた第2の永久磁石を有する。この補助装置では、回転軸を回すことで第1の永久磁石と第2の永久磁石の間に吸引力が働き、円筒体の回転が補助される。後者の補助装置は、歯車のような第1の回転体の面状に取り付けた永久磁石と、回転体と同期できる永久磁石を取り付けた第2の回転体を有する。この補助装置でも、第1の回転体の永久磁石と第2の回転体の永久磁石との吸引力と反発力により、第2の回転体の回転によって第1の円筒体の回転が補助される。
しかしながら、これらの補助装置を自転車に取り付ける場合、その取付構造が複雑になるという問題点が存在する。
特開平7−187042号公報
特開2001−57771号公報
本発明の課題は、比較的簡単な構造であり、かつ自転車等を軽い力で運転できる動力伝達装置を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明の動力伝達装置は、第1の歯車と、ローラチェーン又は第2の歯車をかみ合わせた際に、第1の歯車の隣接する2つの歯と当該2つの歯の間にかみ合うローラチェーンの円筒体又は第1の歯車の隣接する2つの歯と当該2つの歯の間にかみ合う第2の歯車の歯の間で磁力による反発力を生じさせる構成を有する。
本発明の動力伝達装置は、軽い力で自転車等の運転を可能にする。
図1は本発明に係る第1の動力伝達装置の一実施例を示す概略図である。
図2は図1の動力伝達装置に使用される歯車を示す概略斜視図である。
図3は図1の動力伝達装置に使用されるローラチェーンの一部分を示す概略斜視図である。
図4は図3のローラチェーンに使用される円筒体とブシュを示す概略斜視図である。(A)は円筒体とブシュが組み合わされた状態を示す図、(B)は組み合わされる前の状態を示す図である。
図5はローラチェーンと歯車のかみ合いを示す説明図である。
図6は本発明に係る動力伝達装置を備えた自転車に取り付けられる駆動防止装置を示す概略斜視図である。
図7は図6の駆動防止装置が自転車のフレームに取り付けられた状態を示す概略図である。
図8は歯車の歯に取り付けられる磁性付与部材を示す図である。(A)は上方から見た斜視図、(B)は下方から見た斜視図である。
図9は歯車の歯に取り付けられる別な磁性付与部材を示す図である。(A)は上方から見た斜視図、(B)は下方から見た斜視図である。
図10は歯車の歯に取り付けられるさらに別な磁性付与部材を示す斜視図である。
図11は図10に示す磁性付与部材を連結した状態を示す図である。
図12は歯車の歯に取り付けられるさらに別な磁性付与部材を示す図である。
図13は本発明に係る第1の動力伝達装置の別な実施例におけるローラチェーンと歯車のかみ合いを示す図である。
図14は本発明に係る第2の動力伝達装置の一実施例を示す概略図である。
図15は第1の歯車と第2の歯車のかみ合いを示す図である。
図16は図14の動力伝達装置の歯車に取り付けられる磁性付与部材の一例を示す図である。
図17は別な駆動防止装置が自転車のフレームに取り付けられた状態を示す説明図である。
本発明に係る第1の動力伝達装置は、1つ以上の第1の歯車と、前記第1の歯車とかみ合う1つのローラチェーンを有し、前記第1の歯車は、前面及び/又は背面に磁性面を有する磁性歯を2つ以上有し、前記ローラチェーンは、前記第1の歯車とかみ合った際に、1つの磁性歯の磁性面とそれに隣接する1つの磁性歯の磁性面の間に位置し、かつ、両磁性面との間に反発力が生じる磁性面を有する円筒体を1つ以上有する。
第1の動力伝達装置は2以上の第1の歯車と無端のローラチェンを備えた無限軌道式の動力伝達装置として使用される。第1の歯車はいわゆる平歯車であって、ローラチェーンにかみ合う複数の歯を有する。それぞれの歯は、各回転方向を向く2つの面、つまり前面と背面を有する。第1の歯車は、前面及び/又は背面が磁性面である歯を有する(以下、本発明において、前面及び/又は背面に磁性を付与された歯を「磁性歯」、前面及び背面の双方に磁性を付与されていない歯を「非磁性歯」ということがある。)。磁性歯は、前面又は背面の一方の面が磁性面であってその反対面が非磁性面である磁性歯であり、前面及び背面ともに磁性面である磁性歯でもあり得る。なお、本明細書において、「前面」とは、歯車の歯が有する回転方向を向いた2つの面のうち一方の面を意味し、「背面」とは同じ歯の他面を意味する。また、磁性面はいわゆる永久磁石としての磁性面を意味する(下記の円筒磁性体の磁性面も同じ。)。
磁性歯の製造方法は、例えば金属から加工された磁性付与前の歯に対して直接磁性を付与する方法、磁性が付与されていない歯に磁性付与部材を取り付ける方法であり得る。前者の方法は公知である。磁性付与部材は、例えば片面にN極(又はS極)の磁性面を有し、裏面にS極(又はN極)の磁性面を有する薄板部材を有する磁性付与部材であり得る。薄板部材を有する磁性付与部材の場合、それは磁性付与前の歯の前面又は背面にのみ付着する大きさを有する磁性付与部材であるか、磁性付与前の歯の側面に沿って曲折された側面を有する磁性付与部材でもあり得る。また、磁性付与部材は、磁性付与前の歯の大きさとほぼ等しい大きさの空洞を有するキャップ状の部材でもあり得る。キャップ状の部材では、表面にN極(又はS極)の磁力が付され、その裏面にS極(又はN極)に磁石が付される。また、キャップ状の部材からなる磁性付与部材は、前面又は背面にのみに磁性を有し、他面は磁性を有しない場合もある。磁性付与部材が、磁性が付与されていない歯に取り付けられることで、磁性面を有する磁性歯が構成される。磁性付与部材は、その裏面の磁性の利用やビスなどの締結部品の利用など適宜の方法で磁性付与前の歯に容易に外れないように取り付けられる。また、キャップ状の部材である磁性付与部材はその基端に、2つの磁性付与部材を連結する連結部を備えることもある。連結部は例えば薄板部材からなり、連結部同士をつなぐことで磁性付与部材は環を形成する。この場合、ローラチェーンの円筒体が連結部に引き付けられないことが望まれる。連結部には磁性付与部材の磁性面と同極の磁性が付与されてもよく、磁性が付与されなくても差し支えない。動力伝達装置が有する第1の歯車の数は2以上である。1つのローラチェーンが全ての第1の歯車とかみ合うことで、全ての第1の歯車が回転する。
第1の動力伝達装置に用いられるローラチェーンは、磁力を持たない普通のローラチェーンとほぼ同じ構造を有する。ローラチェーンは、円筒体と、ブシュと、対となった外側プレートと、それよりも内側に配置される対となった内側プレートと、ピンを有する。円筒体の中心を、それよりも細長い円筒形のブシュが貫通している。ブシュの両端は1対の内側プレートに圧入されている。ピンはブシュを貫通し、1対の外側プレートにその両端がかしめられ、全体が環状に連結されている。歯車の歯がローラチェーンの1つの円筒体とそれに隣り合う円筒体の間に入ることで、歯車とローラチェーンがかみ合う。
ローラチェーンは、外周面が磁性面である円筒体(以下、本発明において、外周面が磁性面である円筒体を「磁性円筒体」ということがある。)を備える点で、普通のローラチェーンと異なる。ローラチェーンが有する磁性円筒体の数は1以上であり、好ましくは2以上であり、望ましくは1のローラチェーンが有する円筒体の数と同じである。
磁性円筒体の製造方法は、例えば金属から加工された磁性付与前の円筒体に対して直接磁性を付与する方法であり得る。この場合、円筒体の内周面とブシュの外周面との間で磁力による固着を防ぐため、例えば、アルミニウムやオーステナイト系ステンレンなどの非磁性材料から作製されたブシュ、内周面に非磁性材料からなる固着防止層を有する円筒体、外周面に非磁性材料からなる固着防止層を有するブシュなどが用いられる。
磁性歯の磁性面の極性や磁性円筒体の磁性面の極性は、第1の歯車とローラチェーンがかみ合った際、磁性歯の前面(又は背面)とそれに隣接する磁性歯の背面(又は前面)、及び当該2つの磁性歯の間に位置する磁性円筒体との間に反発力が生じるように決定される。つまり、磁性円筒体の磁性面の極性と、その両側に向かい合って位置する磁性歯の磁性面の極性が同じになるように決められる。具体的には、磁性円筒体の磁性面がN極(又はS極)であれば、その両側に位置する磁性歯の磁性面はそれぞれN極(又はS極)である。
磁性円筒体を挟む2つの磁性歯の磁性面が同じ極性である限り、当該2つの磁性面の裏面である磁性面はそれぞれ、(1)それと同じ極性の磁性面(つまり、磁性歯の前面及び背面がそれぞれN極(又はS極)である磁性歯)であるか、(2)それと異なる極性の磁性面であるか(つまり、磁性歯の前面又は背面がN極でその裏面がS極である磁性歯)、(3)非磁性面であるか(つまり、磁性歯の前面又は背面がN極又はS極でその裏面が非磁性面である磁性歯)の何れでもよい。上記磁性円筒体との間で反発力が生じる関係が成立する限り、1つの歯車において、(1)(2)(3)の場合が適宜組み合わせられる。もっとも、(3)の場合が採用される際には、2つの非磁性面の間や、磁性面と非磁性面の間には非磁性円筒体が位置するようにローラチェーンを構成する、非磁性部材からなる歯車と磁性面を有しない磁性付与部材を用いるなどして、非磁性円筒体が磁性歯や歯車の基底面に磁力により付着することを防止する必要がある。
本発明では、全てが磁性歯である第1の歯車(1つの歯車が有する歯の数と磁性歯の数が同数)と、全てが磁性円筒体であるローラチェーン(1つのローラチェーンが有する円筒体の数と磁性円筒体の数が同数)をかみ合わせることが望ましい。これによって、磁性歯と磁性円筒体との間に生じる反発力を最大限に利用できる。
磁性歯の磁性面や磁性円筒体の磁性面における磁力の強さ(磁気強度)、歯車の大きさ(直径や厚みなど)や歯の大きさ(高さや厚み)、歯と歯の間隔、一つの歯車が有する歯の数、一つのローラチェーンとかみ合わせる歯車の数、ローラチェーンの長さ、円筒体の大きさや一つのローラチェーンが有する数は当業者によって適宜決定され得る。ただし、隣り合う2つの歯の間の距離は円筒体の直径よりも大きく、隣り合う2つの円筒体の間の距離は歯の幅よりも大きく設定される。このとき、隣り合う2つの磁性歯の間の距離は、両者の間に位置する磁性円筒体が両者の間である程度移動できることが必要である。なぜなら、両者の間に位置する磁性円筒体が両者の間である程度移動できなければ、普通の自転車の場合と同様に磁性円筒体が磁性歯にぶつかる(固着する)結果、両者の間に生じる反発力を十分に活かせないからである。一方、隣り合う2つの磁性歯の間の距離が大きすぎると、磁性歯と磁性円筒体間の反発力が弱くなるので、磁性歯の磁性面における磁気強度や磁性円筒体の磁性面における磁気強度を強くして、磁性歯と磁性円筒体間の反発力を高める必要がある。また、歯の高さは、円筒体の直径と同じか好ましくはそれよりも高く、好ましくは普通の自転車に使われる磁性を持たない歯に比べて高い。隣り合う2つの磁性歯の間で向かい合う2つの磁性面における磁力は、好ましくは静止状態で磁性円筒体が2つの磁性歯の間のほぼ中央に位置するように、ほぼ等しく設定される。さらに、隣り合う2つの磁性歯の間で向かう合う各磁性面における磁気強度は好ましくは磁性円筒体の磁性面における磁気強度とほぼ同じか、それよりも大きい。そして、前記2つの磁性歯の間で向かい合う2つの磁性面における磁気強度や磁性円筒体の磁性面における磁力強度はそれぞれ、1つのローラチェーンとかみ合う全ての歯車において同じであることが望ましい。ローラチェーンの長さは、歯車から容易に外れない程度の長さにすることが重要であり、普通の自転車に使われる磁力を利用しないローラチェーンとほぼ同じかそれよりもわずかに長い。長くなるのは、磁性歯と磁性円筒体間の反発力の大きさによっては、歯車の基底面から離れた状態にローラチェーンが保持される場合もあるからである。これらの条件を満たすことで、安定してローラチェーンが装着されると共に、外部から第1の歯車に力が加わらない限り、ローラチェーンが静止した状態に維持されるからである。
歯車は鉄などの磁性材料やオーステナイト系ステンレンなどの非磁性材料から作製され得る。非磁性材料を用いた場合には、磁性円筒体は歯車の基底面に引き付けられずに磁性歯の磁性面から反発力を受けるので、安定にローラチェーンが取り付けられる。また磁性材料を用いた場合には、磁性円筒体を歯車の基底面に引き付けようとする引き付け力と磁性円筒体が磁性歯の磁性面から受ける反発力が生じるが、当該反発力を引き付け力よりも大きくすることでローラチェーンが歯車から離れた状態で安定に取り付けられる。
本発明に係る動力伝達装置は、例えば自転車に取り付けられる。自転車への取付方法は、磁力を利用しない普通自転車の場合と同様である。つまり、ローラチェーンの一部を例えばチェーンホイールにかみ合わせた状態で、ローラチェーンを引っ張りながら後方の歯車に引っかけて取り付ける。磁性歯と磁性円筒体の間の反発力が強く、磁性円筒体が歯車の基底面に引き付けられない場合には、手を離すと、両者間の反発力によって磁性円筒体は歯車(歯車の基底面)から離れた状態に自然と位置し、ローラチェーンが静止した状態に保持される。また、チェーンホールと後方の歯車にローラチェーンをかみ合わせた後に自転車の後輪を固定する方法もあり得る。
第1の動力伝達装置では、第1の歯車の磁性歯と、当該歯車とかみ合ったローラチェーンの磁性円筒体との間で生じる反発力が、ローラチェーンを第1の歯車の回転方向に押し出す作用を生み出し、その結果、第1の歯車を回転させるに必要な力が軽減される。すなわち、例えば自転車の場合、ペダルを踏むことによって、チェーンホイールである第1の歯車に力が加えられると、加えられた少しの力によって磁性歯が回転方向に動き出す。そうすると、磁性歯と磁性歯との間に位置していた磁性円筒体とその背後から近づく磁性歯の前面との間の反発力が大きくなるとともに、当該円筒体とその前方において離れる磁性歯の背面との間の反発力が小さくなるので、当該磁性円筒体はその前後に位置する2つの磁性歯の間で第1の歯車の回転方向(前方)に動こうとし、ローラチェーン全体が歯車の回転方向に移動する。このようにして、外部からの力とそれに加えて第1の歯車とローラチェーンの間で生じた反発力がローラチェーンを動かす。また、後輪に取り付けられた第1の歯車であるスプロケットにおいても同様の現象が生じる。この結果、運転者は普通の自転車よりも小さい力で自転車を運転できる。
本発明における第2の動力伝達装置は、歯車と歯車のかみ合わせを利用した動力伝達装置である。この動力伝達装置は、第1の歯車と当該第1の歯車とかみ合う第2の歯車を有し、前記第1の歯車は、前面及び/又は背面に磁性面を有する磁性歯を1つ以上有し、前記第2の歯車は、前記第1の歯車とかみ合った際に、前記第磁性歯の磁性面との間に反発力が生じる磁性面を有する磁性歯を1つ以上有する。
この動力伝達装置における2つの歯車は互いにかみ合わせできる歯車であればよく、第1の歯車、第2の歯車はそれぞれ平歯車であり、それぞれかさ歯車であり得る。また、本発明において、第1の歯車と第2の歯車は、ラックアンドピニオンにおけるラックとラック上を移動する歯車でもあり得る。
この動力伝達装置では、第1の歯車の磁性歯の前面の磁性面と、当該磁性面と向かい合った第2の歯車の磁性歯の背面の磁性面との間に生じる反発力が利用される。つまり、第2の歯車は、第1の歯車とかみ合った際に、前記第1の歯車の1の磁性面との間で反発力が生じる磁性面を有する磁性歯を1つ以上有する。そして、第2の歯車は、好ましくは、前記第1の歯車の磁性歯とその隣り合う第1の歯車の磁性歯との間で反発力が生じる2つの磁性面を有する磁性歯を1つ以上有する。つまり、第1の歯車にある隣り合う2つの磁性歯の間に位置する第2の歯車の磁性歯の前面及び背面がそれぞれそれと向かい合う第1の歯車の磁性面とそれぞれ同極の磁性面であることが好ましい。
2つの歯車がかみ合った際に向かい合う2つの磁性歯(第1の歯車の磁性歯と第2の歯車の磁性歯)の磁性面が同じ極性である限り、当該2つの磁性面の裏面にある磁性面はそれぞれ、(1)それと同じ極性の磁性面(つまり、各磁性歯の前面及び背面がそれぞれN極(又はS極)である)であるか、(2)それと異なる極性の磁性面であるか(つまり、各磁性歯の前面又は背面がN極でその裏面がS極である磁性歯)、(3)非磁性面であるか(つまり、各磁性歯の前面又は背面がN極又はS極でその裏面が非磁性面である)の何れでもよく、上記反発力が生じる関係が成立する限り、1つの歯車において、(1)(2)(3)の場合が適宜組み合わせられる。もっとも、(3)の場合が採用される際には、2つの非磁性面の間や、磁性面と非磁性面の間には非磁性面が位置するように第1の歯車と第2の歯車を作製するか、磁性面を有しない磁性付与部材を利用して、非磁性面と磁性面が磁力により付着することを防止する必要がある。
第2の動力伝達装置においても、各磁性歯の磁性面における磁力の強さ、歯車の大きさ(直径や厚み)や歯の大きさ(高さや厚み)、歯と歯の間隔、一つの歯車が有する歯の数は当業者によって適宜決定され得る。このとき、第1の動力伝達装置と同じように、第1の歯車における隣り合う2つの磁性歯の間の距離は、両者の間に位置する第2の歯車の磁性歯が両者の間である程度動くことが必要である。なぜなら、両者の間に位置する第2の歯車の磁性歯が両者の間である程度移動できなければ、普通の歯車と歯車のかみ合わせの場合と同様に第1の歯車の歯が第2の歯車の歯にぶるかる結果、第1の歯車の磁性歯と第2の歯車の磁性歯の間に生じる反発力を十分に活かせないからである。一方、向かい合う第1の歯車の磁性歯と第2の歯車の間の距離が大きすぎると、第1の歯車の磁性歯と第2の歯車の磁性歯の間の反発力が弱くなるので、第1の歯車の磁性歯の磁性面における磁気強度や第2の歯車の磁性歯の磁性面における磁気強度を強くして、第1の歯車の磁性歯と第2の歯車の磁性歯間の反発力を高める必要がある。この第2の動力伝達装置では、好ましくは、1つの磁性歯の前面における磁力とその背面における磁気強度は等しく設定される。そして、望ましくは、第1の歯車が有する磁性歯の各磁性面における磁力はそれぞれ等しく、また、第2の歯車が有する磁性歯の各磁性面における磁力はそれぞれ等しく設定される。さらに望ましくは第1の歯車が有する磁性歯の各磁性面における磁力と、第2の歯車が有する磁性歯の各磁性面における磁力は等しく設定される。つまり、第1の歯車の歯と第2の歯車の歯をすべて磁性歯とし、かつ、全ての磁性面における磁力を等しくすることで、第1の歯車と第2の歯車を安定にかみ合わせ、かみ合う2つの磁性歯の間に生じる反発力を最大限利用できる。
第2の動力伝達装置においても、第1の動力伝達装置における作用と同様の作用が生じる。例えばドライブシャフト式の自転車を例にとると、ペダルを踏むことによって、第1の歯車に力が加えられると、加えられた少しの力によって第1の歯車の磁性歯が回転方向に動き出す。そうすると、第1の歯車の磁性歯とそれと隣り合う磁性歯(隣接する磁性歯)との間に位置していた第2の歯車の磁性歯との間において、第2の歯車の磁性歯の背面とその背後から近づく第1の歯車の磁性歯の前面との間の反発力が大きくなるとともに、当該第2の歯車の磁性歯の前面と第1の歯車の磁性歯(隣接する磁性歯)の背面との間の反発力が小さくなるので、第2の歯車は第1の歯車の回転方向と逆の方向に動こうとする。また、当該第2の歯車の歯の前面と第1の歯車の歯(隣接する磁性歯に相当する)の背面との間に反発力がない場合(つまり、両者が非磁性面同士の場合)も同様に、第2の歯車は第1の歯車の回転方向と逆の方向に動こうとする。つまり、第1の歯車の磁性歯と当該第1の歯車とかみ合った第2の歯車の磁性歯との間で生じる反発力が、第2の歯車を力の伝達方向(例えば平歯車の場合には第1の歯車と逆の回転方向)に回転させる作用を生み出し、その結果、第1の歯車を回転させるに必要な力が軽減される。こうして、外部からの少しの力と第1の歯車の磁性歯と第2の歯車の磁性歯の間の反発力が、一端に当該第2の歯車を備えたドライブシャフトを回転させる。そして、当該ドライブシャフトの回転が当該ドライブシャフトの他端に備えられた別な第1の歯車に伝えられ、それとかみ合う第2の歯車を回転させる。そして、当該第2の歯車が取り付けられた後輪の車軸が回転する。この結果、運転者は普通のドライブシャフト式の自転車よりも少ない力で自転車を運転できる。
本発明に係る2つの動力伝達装置は上記のとおり自転車や電動アシスト付き自転車、オートバイなどの二輪車に好ましく取り付けられるが、第1の歯車と、ローラチェーンや第2の歯車を備えた動力伝達装置を利用するいかなる装置、例えば自動車のトランスミッションのような装置でも取り付けられる。また、動力伝達装置は、鉄くずなど不要なものが歯車やローラチェーンに付着するのを防止するため、好ましくはカバー部材により覆われる。当該カバー部材は好ましくは上記非磁性材料から作製される。
以下、添付された図面に基づいて本発明に係る動力伝達装置についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されることのないのは言うまでもない。
図1は本発明に係る第1の動力伝達装置の一実施例を示す概略図である。この動力伝達装置は自転車用の動力伝達装置である。動力伝達装置は、2つの歯車(スプロケット)10A,10Bと1つのローラチェーン20を有する。大きい方の歯車10Aはいわゆるチェーンホイール(前の歯車)であり、小さい方の歯車10Bは後輪用の歯車である。2つの歯車10A,10Bが有する全ての歯はそれぞれ磁性歯11である。各磁性歯11の前面及び背面は、図2に示すように全てN極の磁性面11Aである。
ローラチェーン20は、円筒体21と、ブシュ22と、対となった外側プレート24と、それよりも内側に配置される対となった内側プレート23と、ピン25を有する(図3、図4参照)。図4に示すように、円筒体21の中心を、それよりも細長い円筒形のブシュ22が貫通している。ブシュ22はその中心にピン穴25Aを有し、その両端は対となった内側プレート23に圧入されている。ピン25はブシュ22のピン穴25Aを貫通し、対となった外側プレート24にその両端がかしめられている。
全ての円筒体21の外周面はN極である磁性面21Aであり、円筒体21は磁性円筒体である。従って、ローラチェーン20と歯車10A,10Bがかみ合った際、磁性歯11の磁性面11Aと、それらと向かい合う円筒体21の磁性面21Aはそれぞれ同極である(図5参照)。ブシュ22は非磁性材料であるステンレス材から作製され、円筒体21はブシュ22の周りを自由に回転する。
歯車10A,10Bは鉄のような磁性材料や上記ステンレスのような非磁性材料から作製されている。また、ローラチェーン20の外側プレート24や内側プレート23はステンレスのような非磁性材料から作製され、それらが磁性歯11に引き付けられるのが防止されている。円筒体21の直径は磁性歯11の高さよりも小さい。また、全ての磁性歯11の磁性面11Aの磁性強度は等しく、かつ円筒体21の磁性面21Aの磁性強度と等しい。そして、円筒体21が磁力によって歯車10A,10Bの基底面に引き付けられることなく、2つの磁性歯11の間に円筒体21が位置し、円筒体21の中心は磁性歯11の高さのほぼ真ん中あたりに位置している。このため、ローラチェーン20の長さ(円筒体21(ピン25)の中心を結ぶ線の長さ)は、磁性歯11の高さのほぼ中央を結ぶ線の長さとほぼ等しくなっている。
図6は上記の動力伝達装置を備えた自転車に取り付けられる駆動防止装置80の斜視図、図7は当該駆動防止装置80が自転車に取り付けられた状態を示す説明図である。本発明に係る動力伝達装置を備えた自転車では、歯車10A,10Bの回転に必要な力が軽減されることより、歯車10A,10Bにわずかの外力が加わると、例えばペダルに軽く触れた場合や強風が吹いた場合に、歯車10A,10Bが意図せずに回転することが考えられる。そこで図示されたような駆動防止装置80が本発明に係る動力伝達装置を備えた自転車に任意的に備えられる。
駆動防止装置80は、自転車のフレームに取り付けられる取付部材81と取付部材81の一端に備えられたローラチェーン20の動きを規制する係止部材82を有する。図に示した取付部材81の形状は棒状又は薄板状であり、取付部材81は自転車のフレームを構成するシートチューブ(立パイプ)91に取り付けるための取付孔83を有する。この取付孔83にボルトなどの固定部材84が挿通され、固定部材84の周りに取付部材81が回転できるように取付部材81がシートチューブ91に取り付けられる。係止部材82は例えば爪状又は鉤状、棒状の部材からなる。係止部材82がローラチェーン20と円筒体21とその隣接する円筒体21の間に嵌まることでローラチェーン20の動きが規制され、その結果、歯車10A,10Bの回転が防止される。係止部材82は好ましくは鉄のような磁性部材から作製される。磁力により2つの円筒体21の間に固定されるからである。
取付部材81をシートチューブ91とほぼ平行にすれば、ローラチェーン20の規制が解除される。その状態から取付部材81を回転させて、係止部材82をローラチェーン20にかみ合わせることでローラチェーン20の動きは規制される。取付部材81をシートチューブ91とほぼ平行な状態に保持する方法や、取付部材81をローラチェーン20の動きを規制する状態に保持する方法として、例えば固定部材84である蝶ボルトを締め付たり緩めたりする方法や、ラチェットを用いる方法、フックを用いる方法など任意の方法が用いられる。図7ではシートチューブ91に固定された磁石85が、取付部材81をシートチューブ91とほぼ平行な状態に保持する。なお、図7において図番92はダウンチューブ(下パイプ)であり、図番93はチェーンステイ、図番94はボトムブラケットシェルである。また、2つの歯車10A,10Bとローラチェーン20を覆うカバー部材(図示せず)には、係止部材82が出入りする開口が設けられる。この例に限らず、例えば、係止部材を下に押すことで、隣り合う2つの円筒体21の間にピン状の係止部材(図示せず)が挿入されるような構成を有する駆動防止装置も採用され得る。
図8は磁性付与部材30の一例を示す図である。磁性付与部材30は、磁性が付与されていない歯の前面及び背面に磁性を付与し、磁性歯11とするための部材である。図8に示す磁性付与部材30はキャップ状部材であって、歯車10A,10Bの歯と相似形に作製され、磁性付与前の歯が挿入される凹所32を有する。この磁性付与部材30はキャップとして磁性付与前の歯に被せられる。磁性歯11の前面となる磁性付与部材30の前面及び磁性歯11の背面となる磁性付与部材30の背面は、それぞれN極(又はS極)の磁性面31Aである。磁性付与部材30は、磁性付与前の歯に装着され、固定用穴33を通した固定用ビス(図示せず)などで磁性付与前の歯に固定される。また、磁性の付与が不必要の場合、歯の大きさを揃えるために、磁性付与部材30と同様な構造をしたダミー部材(図示せず)が、磁性付与前の歯に使用される。この磁性付与部材30は、アルミニウムなどの非磁性材料から作製された歯車10A,10Bや鉄などの磁性材料から作製された歯車10A,10Bのいずれにも用いられ得る。
図9は磁性付与部材30の他例を示す図である。磁性付与部材30は、磁性付与前の歯を挿通させる貫通孔37を有する点で、図8に示す磁性付与部材30と異なる。このような磁性付与部材30も使用され得る。
図10に示す磁性付与部材30は、図8に示す磁性付与部材30において、その下端にある4つの隅にプレート状の連結部34をそれぞれ備えたものである。4つある連結部34はそれぞれ2つの磁性付与部材30を連結するための連結穴35を有する。図示した磁性付与部材30では、磁性付与部材30の前面及び背面にある2つの連結部34のうち何れか一方の連結部34は、磁性付与部材30の側面から他方の連結部34の厚み分だけ内側又は外側に位置する。連結部34を重ね合わせ、ボルトなどの締結部材36で連結することで、図11に示すごとく複数の磁性付与部材30が環状に連結される。予め複数の磁性付与部材30を連結しておくと、歯車10A,10Bへの装着が容易になる。また、磁性付与部材30を歯車10A,10Bの歯に個々取り付ける必要がないので、固定用穴33も不要である。連結部34には磁性円筒体20が引き付けられないように、磁性面31Aと同極の磁性が付与されても差し支えない。また、磁性が付されない場合には、鉄などの磁性材料から歯車が作製された場合と同様に取り扱われる。
図12に示す磁性付与部材30は、磁性付与前の歯の前面又は背面に位置する板状部材32Aと磁性付与前の歯の側面に位置する板状部材32Bを有し、磁性付与前の歯を歯の正面から嵌める凹所38を有する。磁性付与部材30は、例えば磁性付与前の歯の前面又は背面から当該歯の両側面に沿って薄板部材を折り曲げることで作製される。磁性歯11の前面又は背面となる磁性付与部材30の外面は例えばN極の磁性面31Aであり、磁性付与部材30の内面は例えばS極の磁性面39である。この磁性付与部材30が歯の前面と背面に取り付けられる場合には図示するように対として用いられ、固定用穴33を通した固定用ビス(図示せず)などで歯車10A,10Bの磁性付与前の歯に取り付けられる。
図13に示す動力伝達装置は、第1の歯車10A,10Bが異なる極性の磁性面11A,11Bを有する磁性歯11を備え、ローラチェーン20が異なる極性の磁性面21A,21Bを有する円筒体21を備える点で、実施例1に示す動力伝達装置と異なる。歯車10A(及び10B)は、その前面及び背面にN極の磁性面11Aを有する磁性歯11と、その前面(又は背面)にN極の磁性面11Aとその背面(又は前面)にS極の磁性面11Bを有する磁性歯11を有する。また、ローラチェーン20は、N極の磁性面21Aを有する円筒体21と、S極の磁性面21Bを有する円筒体21を有する。この動力伝達装置においても、N極の磁性面11AとN極の磁性面11Aの間に、N極の磁性面21Aを有する磁性円筒体21が位置し、S極の磁性面11BとS極の磁性面11Bの間に、S極の磁性面21Bを有する円筒体21が位置している。また、図示する動力伝達装置では、N極の磁性面21Aを有する円筒体21の右隣にS極の磁性面21Bを有する円筒体21が配置され、さらにその右隣にN極の磁性面21Aを有する円筒体21が配置され、さらにその右隣にN極の磁性面21Aを有する円筒体21が配置されている。このように、円筒体21の両側に、その極性と同じ極性の磁性面を有する磁性歯11が位置する限り、円筒体21の磁性面の極性の並びは適宜定められる。また、ローラチェーン20に非磁性面を有する円筒体21や、歯車10A,10Bに非磁性面を有する磁性歯11や非磁性歯を組み入れることもできる。
図14は、本発明に係る第2の動力伝達装置の一例を示す概略図である。この動力伝達装置は自転車に取り付けられるシャフトドライブ式の動力伝達装置である。この動力伝達装置は、クランク(図示せず)が取り付けられる回転軸46に備えられたかさ歯車40(第1の歯車)と、回転軸46に加えられたトルクを伝達するシャフト45と、シャフト45の両端に取り付けられたかさ歯車50(第2の歯車),かさ歯車60(第1の歯車)と、シャフト45から伝えられたトルクを後輪の駆動軸47に伝えるかさ歯車70(第2の歯車)を備える。図中の図番48は自転車のチェーンステーの機能を果たすフレームシャフトである。かさ歯車40とシャフト45の一端に備えられたかさ歯車50がかみ合うことで、回転軸46の回転がシャフト45を回転させる。そして、シャフト45の他端に備えられたかさ歯車60とかさ歯車70がかみ合うことで、シャフト45の回転が回転軸47を回転させる。
かさ歯車40が有する全ての歯は磁性歯41であり、かさ歯車50が有する全ての歯は磁性歯51であり、かさ歯車60が有する全ての歯は磁性歯61であり,かさ歯車70が有する全ての歯は磁性歯71である。かさ歯車40の磁性歯41は、その前面(回転方向を向く面)にN極の磁性面41Aを有し、その背面にはS極の磁性面41Bを有する。かさ歯車50の磁性歯51は、その前面(回転方向を向く面)にS極の磁性面51Bを有し、その背面にN極の磁性面51Aを有する。かさ歯車40とかさ歯車50がかみ合うと、かさ歯車40の磁性歯41の前面においては、磁性歯41の前面にある磁性面41Aと磁性歯51の背面にある磁性面51Aとの間に反発力が生じる。そして、かさ歯車40の磁性歯41の背面においては、磁性歯41の背面にある磁性面41Bと磁性歯51の前面にある磁性面51Bとの間にも反発力が生じる。
かさ歯車60とかさ歯車70の両者の関係も同様な関係にあり、かさ歯車60とかさ歯車70がかみ合うと、かさ歯車60の磁性歯61の前面においては、磁性歯61の前面にある磁性面61Aと、かさ歯車70の磁性歯71の背面にある磁性面71Aとの間に反発力が生じる。そして、かさ歯車60の磁性歯61の背面においては、磁性歯61の背面にある磁性面61Bと、かさ歯車70の磁性歯71の前面にある磁性面71Bとの間にも反発力が生じる。
かさ歯車40,かさ歯車50,かさ歯車60,かさ歯車70の各磁性歯は、前記歯車10A,10Bの各磁性歯と同様に、直接磁性付与前の歯に直接磁性を付与することで作製される。また、図16に示すような磁性付与部材30を用いても付与され得る。この磁性付与部材30は各かさ歯車40,50,60,70の磁性付与前の歯の2つの表面(前面及び背面)と相似状の表面を有する板状部材からなる。磁性付与部材30の2つの表面に磁性が付与されてそれぞれN極の磁性面41A,S極の磁性面41Bとなっている。磁性付与部材30は、固定用穴33を通した固定用ビス(図示せず)などで各かさ歯車40,50,60,70の磁性付与前の歯に取り付けられる。
上記実施例においては、4つのかさ歯車はすべて異極(N極及びS極)の磁性面を備えた磁性歯を有するが、第2の動力伝達装置においても、前記第1の動力伝達装置と同様に、第1の歯車が有する磁性歯の磁性面の極性と、それと向かい合う第2の歯車の磁性面の極性が同じである限り、1つのかさ歯車が前面と背面が同じ極性の磁性面を有する磁性歯(前面がN極又はS極、背面もN極又はS極)のみを有していてもよく、非磁性面を有する磁性歯を一部に有していてもよい。
シャフトドライブ式の自転車においては、例えば図17に示すような駆動防止装置80が用いられ得る。駆動防止装置80は、自転車のフレームに取り付けられる取付部材87と取付部材84の先端に備えられた回転軸46の回転を規制する係止部材86を有する。係止部材86の形状は回転軸46を挟むことができる略U字形状である。取付部材87はシートチューブ91にほぼ平行に備えられる。取付部材87は、ボルトなどの固定部材84によりシートチューブ91に取り付けられたレバー88の操作によりシートチューブ91に沿って上下にスライドする。レバー88の操作により回転軸46に係止部材86を咬ますことで、両者との摩擦力や係止部材86が有する磁力により回転軸46の回転が規制される。また、図17ではシートチューブ91に固定された磁石85が、レバー88をシートチューブ91とほぼ平行な状態に保持して係止部材86を回転軸46から離した状態に維持する。
この第2の動力伝達装置のように、歯車と歯車のかみ合いを利用した動力伝達装置において、向かい合った磁性面のそれぞれを同じ磁性となるように構成することもできる。
本発明の動力伝達装置は、例えば自転車の動力伝達装置として用いられる。
10A,10B 歯車
11 歯車の歯(磁性歯)
11A,11B 磁性歯の磁性面
20 ローラチェーン
21 ローラチェーンの円筒体(磁性円筒体)
21A,21B 磁性円筒体の磁性面
30 磁性付与部材
34 複数の磁性付与部材を連結するプレート状の連結部
40 かさ歯車(第1の歯車)
45 シャフト
46 回転軸
50 かさ歯車(第2の歯車)