以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1. 基本的な実施形態 >>>
図1は、本発明の基本的な実施形態に係る施設内の地図提示システムの構成を示すブロック図である。図示のとおり、このシステムは、階床地図格納部10、探索ルート格納部20、探索用情報格納部30、階床配置図作成部40、個別切出地図作成部50、ルート探索部60、表示制御部70、指示入力部80、ディスプレイ90、地点設定部100、場所情報格納部110、現在地認識部120によって構成されており、複数の階を有する建物を含む施設について地図を提示する機能を有する。
ここでは、説明の便宜上、この図1に示す地図提示システムが、図2に示すような建物構成をもった商業施設についての地図を提供する場合を例にとって、以下の説明を行うことにする。この図2に示す例は、西館Wと東館Eとの2つの建物から構成される商業施設(ショッピングセンター)であり、西館Wおよび東館Eは、それぞれ1階から3階までの3階床を有する建物であるものとする。また、西館Wおよび東館Eの2階部分は、図示のとおり、渡り廊下Jで接続されているものとする。
指示入力部80は、ユーザからの指示を入力する構成要素である。また、ディスプレイ90は、ユーザに地図を提示する表示画面をもった構成要素であり、たとえば、液晶ディスプレイ装置によって構成される。このシステムのユーザは、指示入力部80に対して様々な指示を与えることにより、ディスプレイ90の表示画面上に所望の地図を表示させることができる。ここに示す実施形態の場合、指示入力部80は、タッチパネル81と、このタッチパネル81に対する押圧操作を検出して、ユーザの指示を入力する入力インターフェイス82によって構成されている。図1のブロック図では、便宜上、タッチパネル81とディスプレイ90とが別々のブロックとして示されているが、実際には、タッチパネル81は、ディスプレイ90の表示画面上に設けられている。
階床地図格納部10は、個々の建物の個々の階ごとの構成を示す階床地図を格納する構成要素である。ここに例示する施設は、図2に示すとおり、3階建ての西館Wと3階建ての東館Eとによって構成されているため、合計6枚の階床地図が必要になる。ここでは、具体的に、図3に示すような西館1階の階床地図W1および東館1階の階床地図E1、図4に示すような西館2階の階床地図W2および東館2階の階床地図E2、図5に示すような西館3階の階床地図W3および東館3階の階床地図E3、という合計6枚の階床地図が階床地図格納部10内に格納されているものとしよう。これらの階床地図は、原点Oをもった二次元XY座標系上に配列された画素からなる画像データによって構成されている。
なお、図3〜図5では、図が繁雑になるのを避けるため、各階の売り場の位置を図形で示しただけの単純な階床地図が示されているが、実際には、個々の売り場の名称や種々の案内を示す文字などが掲載され、必要に応じて、色分け表示がなされている。もちろん、このような階床地図を構成する画像データは、たとえば、個々の売り場の区画を示す図形レイヤー、個々の売り場の名称を示す文字レイヤーなど、複数のレイヤーによって構成することが可能である。
このシステムによってユーザに提示される地図には、大別して、階床配置図と個別切出地図という2つの形態がある。階床配置図は、階床地図格納部10内の複数の階床地図を並べて示した図であり、この施設の全体構成がわかるように、個々の階床地図を1枚の図面上に並べて示した図ということができる。ここに示す例の場合、階床配置図は、6枚の階床地図を並べることによって構成される。階床配置図作成部40は、指示入力部80が入力した指示に基づいて、階床配置図を作成する機能を果たす構成要素である。
一方、個別切出地図は、階床地図格納部10内の特定の階床地図から特定の表示対象部分を切り出した図であり、階床地図の特定の部分の詳細を把握するための地図である。個別切出地図作成部50は、指示入力部80が入力した指示に基づいて、階床地図格納部10内の特定の階床地図から特定の表示対象部分を切り出して、ユーザが所望の個別切出地図を作成する機能を果たす構成要素である。
また、表示制御部70は、指示入力部80が入力した指示に基づいて、階床配置図作成部40が作成した階床配置図もしくは個別切出地図作成部50が作成した個別切出地図をディスプレイ90の表示画面に表示する機能を果たす構成要素である。ユーザは、指示入力部80を介して表示制御部70に対して指示を与え、階床配置図の表示と個別切出地図の表示とを適宜切り替えることができる。
以上が、ディスプレイ90に地図を表示させるために必要な構成要素である。続いて、ユーザを所望の目的地点まで誘導するためのナビゲーション機能を果たすために必要な構成要素の説明を行う。
まず、地点設定部100は、指示入力部80が入力した指示に基づいて、階床地図格納部10に格納されている階床地図上に出発地点Sおよび目的地点Gを設定する機能を果たす構成要素である。また、探索用情報格納部30は、階床地図格納部10に格納されている階床地図上の任意の2点間についてのルートを探索するために必要な探索用情報を格納する構成要素であり、ルート探索部60は、指示入力部80が入力した指示に基づいて、地点設定部100によって設定された出発地点から目的地点に至るまでのルートを、探索用情報格納部30内の探索用情報を利用して探索する機能を果たす構成要素である。こうしてルート探索部60によって探索された探索ルートは、探索ルート格納部20に格納される。
なお、場所情報格納部110および現在地認識部120は、後述するように、場所のリストや現在地を用いて地点設定を行うために用いる構成要素であり、本発明の実施に必須の構成要素ではない。
探索ルート格納部20に格納された探索ルートは、ユーザからルート付き地図の要求指示があった場合に、階床配置図もしくは個別切出地図の上に重畳された状態で、ディスプレイ90上に表示される。そのために、階床配置図作成部40は、指示入力部80がユーザからのルート付き地図の要求指示を入力したときに、探索ルート格納部20内に格納されている探索ルートを重畳したルート付き階床配置図を作成する機能を有し、個別切出地図作成部50は、指示入力部80がルート付き地図の要求指示を入力したときに、探索ルート格納部20内に格納されている探索ルートを重畳したルート付き個別切出地図を作成する機能を有している。
また、表示制御部70は、指示入力部80がルート付き地図の要求指示を入力したときに、階床配置図作成部40が作成したルート付き階床配置図もしくは個別切出地図作成部50が作成したルート付き個別切出地図をディスプレイ90の表示画面に表示する機能を有する。
結局、表示制御部70は、指示入力部80から与えられるユーザの指示に基づいて、階床配置図もしくは個別切出地図、または、これらに探索ルートを重畳したルート付き階床配置図もしくはルート付き個別切出地図を、適宜切り替えてディスプレイ90の表示画面上に表示する機能を有する。また、表示制御部70は、地点設定部100からの指示に応じて、出発地点や目的地点を設定するために用いる設定用画面や、ユーザの指示を入力するためのメニュー画面を表示する機能も有している。これらの画面の具体的な構成については、後述する。
以上、図1のブロック図を参照しながら、本発明の基本的な実施形態に係る施設内の地図提示システムの構成を説明したが、実際には、このシステムは、コンピュータに専用のプログラムを組み込むことによって構成することができる。
たとえば、階床地図格納部10、探索ルート格納部20、探索用情報格納部30、場所情報格納部110は、コンピュータ用のメモリやハードディスク装置などの記録装置によって構成することができ、階床配置図作成部40、個別切出地図作成部50、ルート探索部60、表示制御部70、指示入力部80、地点設定部100は、コンピュータのCPU、入出力機器、インターフェイス回路およびこれらを制御するプログラムによって構成することができる。また、現在地認識部120は、現在地の認識機能をもった様々なハードウエア装置によって構成することができる。
特に、本発明に係るシステムを、ノート型パソコンや携帯電話などの携帯型の電子端末装置によって構成すると、ユーザは、当該システムを携帯し、ディスプレイ90に表示された地図を見ながら施設内を移動することができる。この場合は、汎用のノート型パソコンや携帯電話などに、専用のプログラムを組み込むことにより、図1に示すシステムを構成することができる。
なお、携帯電話などの比較的小型の携帯型電子端末装置では、内蔵する記憶装置の容量を十分に確保できないため、図1に示すシステムを構成するためのプログラム全体を組み込むことが困難な場合も少なくない。ここでは、説明の便宜上、図2に示す単一の施設についての地図表示を行う例を示すが、実際には、多数の施設についての地図表示が可能となるようにするのが好ましい。そのような場合、このシステムを、携帯型の電子端末装置とこの電子端末装置と無線交信可能なサーバ装置とによって構成し、電子端末装置側には必要最小限の構成要素を組み込み、残りの構成要素をサーバ装置側に組み込み、必要に応じて双方で交信を行いながら処理を進めてゆくようにすればよい。
具体的には、図1に示す構成において、少なくともディスプレイ90と、表示制御部70と、指示入力部80と、現在地認識部120とを携帯型の電子端末装置によって構成し、少なくとも階床地図格納部10と、探索用情報格納部30とを、この電子端末装置と無線交信可能なサーバ装置によって構成し、探索ルート格納部20と、階床配置図作成部40と、個別切出地図作成部50と、ルート探索部60と、地点設定部100と、場所情報格納部110とを、それぞれ電子端末装置またはサーバ装置のいずれかによって構成することができる。
図6は、電子端末装置200の一例を示す平面図である。ここに示す電子端末装置200は、スマートフォンを利用したものであり、少なくともディスプレイ90と、表示制御部70と、指示入力部80と、現在地認識部120とを、スマートフォンに予め備わっている装置をそのまま利用して構成した例である。このスマートフォンは、その通信機能を利用して外部のサーバ装置と交信することができるので、図1に示す構成要素の一部がサーバ装置側に設けられていても支障なく必要な処理を実行することができる。
図6に示すディスプレイ90には、メニュー画面が表示された例が示されている。このメニュー画面は、前述したとおり、表示制御部70の機能によって表示されたものであり、このシステムの起動時に最初に表示される画面である。図示のとおり、このメニュー画面には、「通常地図表示」、「ルート付き地図表示」、「出発地点設定」、「目的地点設定」と表示されたボタンが用意されており、ユーザは、いずれかのボタンを指示する操作を行うことにより、所望の指示入力を行うことができる。ここに示す実施形態の場合、ディスプレイ90の画面がタッチパネルとなっているため、ユーザは、ディスプレイ90の画面上で、所望のボタンをタップする(指先で軽くたたく)ことにより、所望の指示入力を行うことができる。
ここで、「通常地図表示」ボタンは、探索ルートが重畳されていない通常地図を表示するための指示を与えるボタンであり、「ルート付き地図表示」ボタンは、探索ルートが重畳されているルート付き地図を表示するための指示を与えるボタンである。また、「出発地点設定」ボタンおよび「目的地点設定」ボタンは、文字通り、出発地点および目的地点を設定するための指示を与えるボタンである。これら各ボタンをタップした後の動作の詳細は、§2〜§4で述べることにする。
<<< §2. 通常地図表示 >>>
ここでは、まず、図6に示すメニュー画面において、「通常地図表示」ボタンをタップした後のシステムの動作を説明する。上述したとおり、この「通常地図表示」ボタンは、探索ルートが重畳されていない通常地図を表示するための指示を与えるボタンであり、ユーザがこのボタンをタップすると、階床配置図作成部40が、階床地図格納部10内の6枚の階床地図に基づいて階床配置図を作成し、表示制御部70が、当該階床配置図をディスプレイ90の画面上に表示する処理を行う。
図7は、このようにして電子端末装置200のディスプレイ90の画面上に、階床配置図が表示された状態を示す平面図である。ここに示す例の場合、ディスプレイ90の画面は、上部表示領域Uと下部表示領域Lとに分かれており、上部表示領域Uには階床配置図が表示され、下部表示領域Lには3つの操作ボタンが表示されている。
階床配置図は、階床地図格納部10内の複数の階床地図を並べて示したものであり、ここに示す例の場合、図示のように6枚の階床地図が表示されている。スマートフォンなどの電子端末装置200の場合、ディスプレイ90の表示画面は比較的小さいため、6枚の階床地図を配置した階床配置図を作成する際には、個々の階床地図を縮小して配置する必要がある。このため、この階床配置図では、個々の階床地図の詳細な内容を確認することは困難であるが、そもそも階床配置図を表示する目的は、この施設の全体構成がわかるように、各階床地図の配置を示すためのものであるので、詳細な内容が確認しにくくても問題はない。
ここに示す基本的な実施形態の場合、階床配置図作成部40は、横方向に複数の建物を配置し、縦方向に複数の階を配置した二次元行列の各要素の位置にそれぞれ階床地図を並べることにより、それぞれが複数の階を有する複数の建物を含む施設についての階床配置図を作成する。したがって、図7に示す階床配置図の場合、横方向に西館および東館を配置し、縦方向に1階〜3階を配置した2列3行からなる二次元行列が定義され、この行列の各要素の位置に、合計6枚の階床地図が配置されている。
もちろん、階床の配置は、下から上へ階数が増加するような配置にするのが好ましく、建物の配置も、実際の建物の位置関係に準じた配置にするのが好ましい。また、各階床地図の空隙部分には、建物名の表示(図示の例における西館および東館)や、階数の表示(図示の例における1F〜3F)を付加するのが好ましい。このような階床配置図を見たユーザは、この施設全体の階床構成を一目で把握することができ、また、個々の階床相互の位置関係も把握することができる。
なお、表示対象となる階床地図があまりに多いため、そのすべてをディスプレイ90の画面上に一度に表示するのが不適切である場合には、階床配置図40が作成した階床地図の一部を切り出して画面上に表示するようにし、ユーザのスクロール操作により、切出位置を変更するようにすればよい。たとえば、10階建ての建物が10棟も建っているような巨大施設の場合、合計100枚もの階床地図を一画面上に表示するのは不適切である。この場合は、10行10列からなる階床配置図の一部を切り出して表示し、ユーザのスクロール操作(たとえば、表示画面のタッチパネル上に指を接触させた状態で、所望のスクロール方向に移動させる操作)によって切出位置を変更できるようにすればよい。
図7に示す例の場合、下部表示領域Lには、上矢印ボタン91、下矢印ボタン92、戻るボタン93という3つの操作ボタンが表示されている。ここで、戻るボタン93は、図6に示すメニュー画面に戻るためのボタンであり、ユーザがこの戻るボタン93をタップすると、表示制御部70は、表示画面をメニュー画面に戻す処理を行う。なお、上矢印ボタン91および下矢印ボタン92は、この階床配置図の表示画面では機能しない(必要なら、上下方向のスクロール操作用ボタンとして利用してもよい)。
本発明の重要な特徴は、この図7に示すような階床配置図が、各階床地図の相互位置関係を示す役割だけでなく、個別切出地図についての表示指示を与える指示ボタンとしての役割を果たす点である。たとえば、ユーザが、図7に示す階床配置図において、左下の階床地図(西館1階)をタップすると、表示画面は図8のように切り替わり、西館1階の階床地図の一部を切り出した個別切出地図が表示される。この例の場合も、ディスプレイ90の画面は、上部表示領域Uと下部表示領域Lとに分かれており、上部表示領域Uに個別切出地図が表示され、下部表示領域Lには3つの操作ボタンが表示されている。
図8の上部表示領域Uに表示されている個別切出地図は、個別切出地図作成部50が、階床地図格納部10に格納されている西館1階の階床地図W1(図3左に示す地図)から、その一部分を切り出すことにより作成したものである。図9は、このような切出処理の概念を説明する平面図である。
ここに示す基本的な実施形態の場合、階床地図格納部10には、原点Oをもった二次元XY座標系上に配列された画素からなる画像データとして各階床地図が格納されている。図9に示す階床地図W1は、このような画像データとして用意されたものである。そして、個別切出地図作成部50は、任意の切出基準点Pを示す座標値P(x,y)と、任意の表示倍率mと、任意の切出方位角φと、を含む切出条件に基づいて、階床地図から、切出基準点Pの位置を基準として、表示倍率mに応じた面積をもつ領域を、切出方位角φに応じた向きに切り出す切出処理を行うことにより個別切出地図を作成する。
図9に示す例は、階床地図W1上に切出基準点Pa(xa,ya)を定義し、この切出基準点Paを中心点とした矩形からなる切出フレームFaの内部の領域を切り出すことにより個別切出地図を作成した例である。図8の上部表示領域Uに示す個別切出地図は、このような切出条件に基づいて作成されたものである。
このように、切出基準点Pは、位置の条件を示すパラメータであり、ここに示す例の場合、常に切出基準点Pを中心とする矩形領域が切り出されることになる。もちろん、切出基準点Pは、必ずしも切出領域の中心点に設定する必要はなく、たとえば、切出領域の左上隅点を切出基準点Pに設定するようにしてもかまわない。切出基準点Pは、XY座標系上の1点を示す座標値(x,y)によって定義することができる。一方、矩形状の切出フレームを画定するには、位置の条件の他、大きさおよび向きの条件も必要になる。大きさの条件は表示倍率mとして与えられ、向きの条件は切出方位角φとして与えられる。結局、切出フレームを画定するための切出条件は、切出基準点Pを示す座標値P(x,y)、表示倍率m、切出方位角φという3つのパラメータによって構成される。
図1に示すとおり、個別切出地図作成部50には、切出条件格納部51が設けられており、個別切出地図作成部50は、この切出条件格納部51に格納されている切出条件に基づいて、階床地図格納部10内の特定の階床地図から、特定の表示対象部分(切出フレームの内部)を切り出すことにより個別切出地図を作成する。また、指示入力部80は、この切出条件を変更するユーザからの切出条件変更指示を入力する機能を有し、個別切出地図作成部50は、当該切出条件変更指示を受けて、切出条件格納部51に格納されている切出条件を変更する。したがって、ユーザは、所望の切出条件変更指示を与えることにより、階床地図の任意の位置から任意の大きさの部分地図を任意の向きに切り出して、ディスプレイ90の画面上に表示させることができる。
図10は、図9に示す状態から、切出位置を切出フレームFbの位置まで横方向に移動させた状態を示す平面図である。このように、切出位置を切出フレームFaの位置からFbの位置まで移動させるには、ユーザは、図8に示すような個別切出地図(切出フレームFaによって切り出された地図)が表示されている状態において、地図を水平方向にスクロールさせる操作を行えばよい。具体的には、たとえば、表示画面のタッチパネル上に指を接触させた状態で、指を右方向に移動させる操作を行えばよい。当該操作により、切出条件格納部51に切出条件として格納されている切出基準点Pa(xa,ya)が、Pb(xb,yb)に変更され、切出フレームFbの内部の領域が新たな個別切出地図として表示されることになる。
図11は、図9に示す状態から、切出位置を切出フレームFcの位置まで縦方向に移動させた状態を示す平面図である。このように、切出位置を切出フレームFaの位置からFcの位置まで移動させるには、ユーザは、図8に示すような個別切出地図(切出フレームFaによって切り出された地図)が表示されている状態において、地図を垂直方向にスクロールさせる操作を行えばよい。具体的には、たとえば、表示画面のタッチパネル上に指を接触させた状態で、指を下方向に移動させる操作を行えばよい。当該操作により、切出条件格納部51に切出条件として格納されている切出基準点Pa(xa,ya)が、Pc(xc,yc)に変更され、切出フレームFcの内部の領域が新たな個別切出地図として表示されることになる。
一方、図12は、図9に示す状態から、切出範囲を切出フレームFdの内部の領域まで縮小させた状態を示す平面図である。切出フレームFdは、切出フレームFaと同様に、切出基準点Pa(xa,yb)を中心点とする矩形であり、切出位置についての変更はないが、切出フレームFdの面積は、切出フレームFaの面積よりも小さくなっている。これは、ディスプレイ90の画面上では、地図が拡大表示されたことを意味し、表示倍率mが増加したことを意味する。
これに対して、図13は、図9に示す状態から、切出範囲を切出フレームFeの内部の領域まで拡大させた状態を示す平面図である。切出フレームFeは、切出フレームFaと同様に、切出基準点Pa(xa,yb)を中心点とする矩形であり、切出位置についての変更はないが、切出フレームFeの面積は、切出フレームFaの面積よりも大きくなっている。これは、ディスプレイ90の画面上では、地図が縮小表示されたことを意味し、表示倍率mが減少したことを意味する。
このように、切出フレームの大きさを変更するには、ユーザは、図8に示すような個別切出地図(切出フレームFaによって切り出された地図)が表示されている状態において、表示倍率mを増減させる操作を行えばよい。具体的には、たとえば、表示画面のタッチパネル上に2本の指を接触させた状態で、2本指の間隔を広げる操作(表示倍率mを増加させる操作)や2本指の間隔を狭める操作(表示倍率mを減少させる操作)を行えばよい。当該操作により、切出条件格納部51に切出条件として格納されている表示倍率mの値が変更され、切出フレームの大きさが変更されることになる。
また、図14は、図9に示す状態から、切出向きを切出フレームFfの向きまで回転させた状態を示す平面図である。切出フレームFfは、切出フレームFaと同様に、切出基準点Pa(xa,ya)を中心点とする矩形であり、大きさも同じである。したがって、切出位置や表示倍率mについての変更はないが、切出フレームFfの向きは、切出フレームFaの向きとは異なっている。ここでは、X軸に平行な方向に対する切出フレームの短辺のなす角度を切出方位角φと定義し、切出向きを示すパラメータとして用いている。図9〜図13に示す例は、いずれも切出方位角φ=0°、すなわち、切出フレームの短辺がX軸に平行な向きになっていたのに対して、図14に示す例では、切出方位角φ>0°となり、切出フレームFfは、XY座標系に対して若干傾斜した矩形になっている。
図15は、切出方位角φ=90°に設定したときに得られる切出フレームFgを示す平面図である。切出フレームFgは、切出フレームFaと同様に、切出基準点Pa(xa,ya)を中心点とする矩形であり、大きさも同じであるが、短辺がY軸と平行な向きとなっている。したがって、切り出される領域の中心位置および面積に変わりはないが、得られる個別切出地図の内容は若干変わったものになる。
このように、切出フレームの向きを変更するには、ユーザは、図8に示すような個別切出地図(切出フレームFaによって切り出された地図)が表示されている状態において、切出方位角φを増減させる操作を行えばよい。具体的には、たとえば、表示画面のタッチパネル上に2本の指を接触させた状態で、2本指をその中間点を中心として時計回りもしくは反時計回りに回転させる操作を行えばよい。当該操作により、切出条件格納部51に切出条件として格納されている切出方位角φの値が変更され、切出フレームの向きが変更されることになる。
なお、ここに示す実施形態の場合、図8に示す例のように、X軸方向が水平方向、Y軸方向が垂直方向となるように階床地図を切り出すことを前提として、売り場の名称や種々の案内を示す文字などが掲載されている。したがって、切出方位角φを任意の値に設定して切り出しを行うと、表示される文字の向きが不適切になる可能性がある。そこで、以下の説明では、切出方位角φについては、φ=0°に固定した状態で用いる例を述べることにする(もちろん、ディスプレイが横長になるように電子端末装置200を保持して利用する場合であれば、φ=90°に固定しておけばよい。)。このように、切出方位角φ=0°に固定した実施形態の場合、切出条件格納部51に、切出基準点Pの座標値(x,y)と表示倍率mとが切出条件として格納されていれば、個別切出地図作成部50は、特定の階床地図に基づいて、個別切出地図を作成することができる。
結局、ユーザが、図7に示す階床配置図上で西館1階の階床地図をタップする操作を行うと、図8に示すような個別切出地図(西館1階の階床地図の一部分の詳細図)の表示に切り替わり、この状態で、上部表示領域Uに指を触れて上下左右へ移動させる操作を行うと、地図のスクロールが行われ、2本指を触れて距離を縮めたり広げたりする操作を行うと、地図の表示倍率が変化することになる。
また、ここに示す実施形態の場合、下部表示領域Lには、上矢印ボタン91,下矢印ボタン92,戻るボタン93が設けられており、これらのボタンをタップすることにより、表示中の地図を切り替えることができる。
上矢印ボタン91は「上階移動ボタン」として機能し、ユーザが、上矢印ボタン91をタップすると、現在表示されている階床地図の上階の階床地図(同じ建物内の上の階)についての個別切出地図の表示に切り替わる(但し、現在表示されている地図が最上階の場合は変化しない)。すなわち、指示入力部80は、上矢印ボタン91(上階移動ボタン)に対するユーザの指示操作を、表示対象を同じ建物内の上階に位置する階床地図に切り替えるユーザの指示として入力することになる。
また、下矢印ボタン92は「下階移動ボタン」として機能し、ユーザが、下矢印ボタン92をタップすると、現在表示されている階床地図の下階の階床地図(同じ建物内の下の階)についての個別切出地図の表示に切り替わる(但し、現在表示されている地図が最下階の場合は変化しない)。すなわち、指示入力部80は、下矢印ボタン92(下階移動ボタン)に対するユーザの指示操作を、表示対象を同じ建物内の下階に位置する階床地図に切り替えるユーザの指示として入力することになる。
一方、戻るボタン93は、階床配置図の表示に戻るためのボタンであり、ユーザが、戻るボタン93をタップすると、図7に示す階床配置図に戻ることができる。すなわち、指示入力部80は、戻るボタン93に対するユーザの指示操作を、階床配置図に切り替えるユーザの指示として入力することになる。
このように、ここに示す実施形態の場合、現在表示されている階床地図を、同じ建物内の別な階の地図に切り替える方法として、2通りの方法が用意されている。第1の方法は、図8に示す状態において戻るボタン93をタップして、図7に示す階床配置図に戻った後、この階床配置図上で所望の階床地図をタップする方法である。そして、第2の方法は、図8に示す状態において、上矢印ボタン91もしくは下矢印ボタン92をタップして、同じ建物内の上下の階へと移る方法である。
更に、現在表示されている階床地図を、別な建物内の地図に切り替える方法にも、2通りの方法を用意することができる。第1の方法は、図8に示す状態において戻るボタン93をタップして、図7に示す階床配置図に戻った後、この階床配置図上で別な建物の階床地図をタップする方法である。そして、第2の方法は、図8に示す状態において、別な建物の方向へ地図をスクロールさせる操作を行う方法である。図3〜図5に示す例では、いずれの階床地図も左下隅の近傍に原点Oをもつ別個独立したXY座標系に定義されているが、同じ階の階床地図を、共通の原点Oをもった共通のXY座標系に定義するようにすれば、西館から東館へ至る同一階の連続した地図が得られるので、同一の階であれば、異なる建物へのスクロール操作が可能になる。すなわち、指示入力部80は、個別切出地図に対する隣接する建物へのスクロール指示操作を、表示対象を当該隣接する建物内の同じ階に位置する階床地図に切り替えるユーザの指示として入力することになる。
なお、ここで述べる実施形態の場合、個別切出地図作成部50は、個々の階床地図について、それぞれ初期切出条件と最新切出条件とを格納する切出条件格納部51を有しており、最新切出条件が格納されている場合には、当該最新切出条件に基づく切出処理を行い、最新切出条件が格納されていない場合には、初期切出条件に基づく切出処理を行う機能を有している。
図16は、この切出条件格納部51の内容の一例を示す表である。ここで述べる実施形態では、階床地図格納部10内に合計6枚の階床地図W1〜W3,E1〜E3が格納されているので、切出条件格納部51内にも、図示のとおり、この6枚の階床地図W1〜W3,E1〜E3のそれぞれについて、別個独立して、初期切出条件および最新切出条件を格納するための格納場所が用意されている。
上述したとおり、ここに示す実施形態では、切出方位角φ=0°に固定しているため、各切出条件は、切出基準点Pの座標値(x,y)と表示倍率mとによって構成され、(x,y,m)という形式のデータとして切出条件格納部51に格納される。図16に示す表の各欄に記載されたデータは、このような形式で表された切出条件である。たとえば、階床地図W1については、(x11,y11,m11)なる初期切出条件と、(x11′,y11′,m11′)なる最新切出条件とが設定されている。他の階床地図についても同様である。
図16の表には、説明の便宜上、最新切出条件のすべての欄にそれぞれ(x,y,m)という形式の切出条件が設定されている状態が示されているが、実際には、初期状態(このシステムを起動した当初の状態)では、最新切出条件の各欄はいずれも空欄になっている。これに対して、初期切出条件のすべての欄には、初期状態から所定の切出条件が設定されている。したがって、システム起動時に各階床地図を初めて表示させた場合、いずれも初期切出条件に基づく切り出し処理が行われることになる。
各階床地図の初期切出条件としては、たとえば、各階床地図の中心点を切出基準点Pとして、標準的な表示倍率mで切り出しを行うような条件を予め設定しておくようにすればよい。もし、すべての階床地図の初期切出条件を同一の条件に設定するのであれば(すなわち、いずれの階床地図についても、共通した(x,y,m)という値を用いるのであれば)、初期切出条件の欄は、個々の階床地図ごとに用意する必要はなく、共通の初期切出条件を設定する欄を1つだけ設けておけば十分である。
もちろん、西館1階W1および東館1階E1については、それぞれの正面入り口の位置を切出基準点Pとする初期切出条件を設定し、2階以上の階床地図については、それぞれのエレベータ乗降口を切出基準点Pとする初期切出条件を設定する、というように、各階床地図の特徴に応じて、それぞれ異なる初期切出条件を設定することも可能である。その場合には、図16に示す例のように、各階床地図ごとに、別個独立した初期切出条件の設定欄を設けるようにする。
一方、最新切出条件は、初期状態では設定されておらず、ユーザの指示入力に応じて設定されることになる。しかも、ユーザが切出条件変更指示を与えるたびに、常に最新の切出条件に書き換えられてゆく。たとえば、図10に示す例のように、ユーザがスクロール操作を行うと、最新切出条件は、(xa,ya,m)から(xb,yb,m)に書き直されることになる。要するに、個別切出地図作成部50は、ユーザが指示入力部80に対して切出条件変更指示を与えたときに、切出条件格納部51内に格納されている最新切出条件を変更する処理を行う機能を有している。この最新切出条件は、個々の階床地図ごとに独立して保持されるので、ユーザが別な階床地図に切り替えた後、再び元の階床地図に戻した場合でも、前と同じ切出条件による表示が得られることになる。
たとえば、図8に示すように西館1階の個別切出地図を表示させていた状態で、上矢印ボタン91をタップして、表示対象を西館2階の個別切出地図に切り替えた場合、階床地図W1の最新切出条件としては、(xa,ya,ma)のような条件(図8に示す地図を切り出すための条件)がそのまま保持されることになる。したがって、再び西館1階の個別切出地図を表示させた場合は、保持されていた最新切出条件(xa,ya,ma)に基づく切り出しが行われ、再び図8に示す個別切出地図が表示されることになる。もちろん、図7に示す階床配置図に戻ってから個別切出地図の切り替えを行った場合も同様である。
このように、個々の階床地図について、それぞれ別個独立した最新切出条件を格納しておくようにすれば、ユーザが前に閲覧したことがある階床地図を再び表示させたときに、最後に表示させたときの切出条件による表示が行われるため、前に閲覧したときと同じ位置を同じ倍率で閲覧することができ、良好な使い勝手が得られることになる。
もっとも、実用上は、常に最新切出条件が残っていると、かえって弊害になる場合もある。たとえば、昨日訪問した商業施設に再度訪問したような場合、昨日の閲覧履歴がそのまま残っていると、むしろ使いづらいこともある。そこで、実用上は、ユーザから指示入力部80に対して、所定のリセット条件を満たす指示があったときには、個別切出地図作成部50が、切出条件格納部51内に格納されている最新切出条件を消去するリセット処理を行う機能を設けておくのが好ましい。ここで、所定のリセット条件を満たす指示としては、「最新切出条件を消去する」という直接的な指示を設定することもできるが、後述するように、「ルート探索を行うための指示」を設定しておいてもよい。
また、このシステムが、スマートフォンなどの携帯型の電子端末装置に専用のアプリケーションプログラムを組み込むことによって構成されたシステムであった場合、「当該アプリケーションプログラムを起動させる指示」をリセット条件を満たす指示として設定しておくことも可能である。そうすれば、このシステムが起動されるたびに、リセット処理が行われ、最新切出条件は消去されることになる。
以上、図6に示すメニュー画面において、「通常地図表示」ボタンをタップした後の動作を説明した。結局、指示入力部80が、「通常地図表示」の指示入力を受けた場合には、表示制御部70が、図6に示すメニュー画面から図7に示す階床配置図への表示に切り替える処理を行うことになる。一方、この図7に示す階床配置図上で特定の階床地図を指定するユーザの操作(タップ操作)があった場合、指示入力部80は、当該操作を当該特定の階床地図についての表示指示として入力することになる。別言すれば、指示入力部80は、ディスプレイ90に階床配置図が表示されている際に、特定の建物の特定の階の階床地図の表示位置に対する押圧操作があった場合に、この押圧操作を、当該特定の建物の特定の階の階床地図についての表示指示として入力することになる。そして、個別切出地図作成部50は、この表示指示に基づいて当該特定の階床地図についての個別切出地図を作成し、表示制御部70は、この表示指示に基づいて当該特定の階床地図についての個別切出地図をディスプレイ90の画面上に表示することになる。
本発明では、このように図7に示すような階床配置図を表示し、この階床配置図上で特定の階床地図を指定するユーザの指示入力を受け付けるようにしたため、個別切出地図の施設全体に対する位置関係が容易に把握できるようになる。たとえば、図7において、左下に表示された西館1階の縮小された地図をタップする操作により、図8に示すような個別切出地図(詳細な地図)が表示されることになるので、ユーザは、図8の個別切出地図に示されている場所が、施設全体のどのあたりの地図であるのかを直感的に把握することができるようになる。
<<< §3. 地点設定 >>>
続いて、図6に示すメニュー画面において、「出発地点設定」ボタンをタップした後のシステムの動作および「目的地点設定」ボタンをタップした後のシステムの動作を説明する。
まず、ユーザが、「出発地点設定」ボタンをタップすると、指示入力部80は、「出発地点設定」の指示入力を受けたものと認識し、その旨を地点設定部100に伝達する。これを受けた地点設定部100は、出発地点設定処理を開始する。すなわち、地点設定部100から表示制御部70に対して、出発地点設定画面が与えられ、表示制御部70は、当該出発地点設定画面への表示に切り替える処理を行う。図17は、出発地点設定画面を示す平面図である。結局、「出発地点設定」ボタンのタップ操作により、ディスプレイ90上の表示画面は、図6に示すメニュー画面から図17に示す出発地点設定画面に切り替えられることになる。地点設定部100は、この出発地点設定画面を利用して出発地点の設定処理を行うことになる。
図17に示す例の場合、出発地点設定画面は、上部表示領域Uと下部表示領域Lとに分かれている。上部表示領域Uには、「地図で設定」,「リストで設定」,「現在地設定」という3つの操作ボタンが表示されている。これは、後述するように、3通りの方法で出発地点の設定を行うことができるためである。一方、下部表示領域Lには、上矢印ボタン91、下矢印ボタン92、戻るボタン93という3つの操作ボタンが表示されている。ここで、戻るボタン93は、図6に示すメニュー画面に戻るためのボタンであり、ユーザがこの戻るボタン93をタップすると、表示制御部70は、表示画面をメニュー画面に戻す処理を行う。なお、上矢印ボタン91および下矢印ボタン92は、この出発地点設定画面では機能しない。
ここでは、第1の設定方法として、ユーザが「地図で設定」ボタンをタップした場合の動作を説明しよう。この第1の設定方法は、地点設定部100が、個別切出地図上でユーザが指定した所定点を出発地点に設定する方法である。ユーザが「地図で設定」ボタンをタップすると、地点設定部100から表示制御部70に対して、通常地図表示を行う旨の指示が与えられる。この指示を受けた表示制御部70は、§2で説明したように、通常地図表示を行うための処理を行う。すなわち、まず、画面を図7に示すような階床配置図に切り替え、ユーザのタップ操作を待って、特定の階床地図の個別切出地図の表示に切り替える。
ただ、ここで表示された個別切出地図は、あくまでも出発地点設定処理のための地図であり、§2で述べた個別切出地図とは若干異なった表示になる。図18は、出発地点設定処理中に表示された個別切出地図の一例を示す平面図である。この図18に示す画面は、図8に示す画面とほぼ同じであるが、上部に「出発地点設定」なる見出しが表示される点、完了ボタン95が表示される点、地図の中心に十字カーソルCが表示される点が異なっている。
ここで、ユーザが完了ボタン95をタップすると、その時点で十字カーソルCの位置に表示されていた地点(図示の例では、バッグ売り場の近傍地点)が出発地点Sとして設定されることになる。§2で述べたとおり、ユーザは、地図を自由にスクロールすることができ、また、上矢印ボタン91や下矢印ボタン92をタップして上階や下階へ切り替えたり、戻るボタン93をタップして階床配置図に戻ったりすることができるので、所望の地点を十字カーソルCの位置へもってきて、当該地点を出発地点Sとして設定することができる。なお、この出発地点設定中に表示された階床配置図(図7)において戻るボタン93をタップした場合は、メニュー画面ではなく、図17に示す出発地点設定画面に戻るようになっているので、ここで別な設定方法を選び直すこともできる。
出発地点の第2の設定方法は、場所名のリストから特定の場所を選択して出発地点として設定する方法である。具体的には、ユーザが図17に示す出発地点設定画面上の「リストで設定」ボタンをタップすると、地点設定部100から表示制御部70に対して、場所名のリストを含む設定用画面をディスプレイ90上に表示させる指示が与えられる。この指示を受けた表示制御部70は、図17に示す出発地点設定画面から図19に示すような出発地点設定画面に切り替える処理を行う。
この図19に示す出発地点設定画面も、上部表示領域Uと下部表示領域Lとに分かれており、場所名のリストは、上部表示領域Uに表示されている。図示の例の場合、西館の1階から順に個々の場所名がリストアップされており、上下にスクロールさせることにより、全リストの閲覧が可能になっている。ユーザがこのリスト上の所望の場所名をタップすると、当該場所名が選択され、反転表示される。こうして、いずれか1つの場所名を選択した状態で、完了ボタン95をタップすれば、選択した場所名に対応する位置が出発地点Sとして設定される。
このような設定処理を行うために、図1に示す場所情報格納部110には、建物内の個々の場所について、その場所名と階床地図上の位置(たとえば、建物と階数を示すコードとXY座標値)とを対応づけた場所情報が格納されている。地点設定部100は、この場所情報格納部110内の場所情報を利用して、場所名のリストを作成し、これを表示制御部70に与える。また、地点設定部100は、リスト上の特定の場所名が選択された状態で完了ボタン95がタップされた旨の指示を指示入力部80から受け取ると、リスト上でユーザが選択した場所についての位置(たとえば、XY座標値)を、場所情報格納部110内の場所情報から取得し、取得した位置を出発地点に設定する処理を行う。
この第2の設定方法では、特定の場所が実際にどこにあるかを知らなくても、場所名さえ知っていれば、当該場所を出発地点に設定することができる。なお、図19において、下部表示領域Lには、上矢印ボタン91、下矢印ボタン92、戻るボタン93という3つの操作ボタンが表示されている。ここで、上矢印ボタン91および下矢印ボタン92は、リストを上下にスクロールさせるボタンとして機能し、戻るボタン93は、図17に示す出発地点設定画面に戻るためのボタンとして機能する。
出発地点の第3の設定方法は、携帯型の電子端末装置200の現在地をそのまま出発地点として設定する方法である。図1に示す現在地認識部120は、施設内におけるディスプレイ90の位置(すなわち、電子端末装置200の位置)を現在地として認識する機能を有している。この現在地認識部120は、たとえば、GPS機能および高度計機能を備えた装置、無線LANやbluetooth(登録商標)などによる交信情報を利用した位置認識装置などによって構成することができる。
ユーザが図17に示す出発地点設定画面上の「現在地設定」ボタンをタップすると、地点設定部100は、現在地認識部120が認識した現在地を取得する処理を行い、取得した現在地をそのまま出発地点に設定する処理を行えばよい。なお、取得した現在地が緯度経度情報として表されている場合には、緯度経度情報を階床地図が定義されたXY座標値に変換する変換式や変換テーブルを用いることにより、XY座標値からなる出発地点を設定することができる。
なお、現在地認識部120が現在地の情報を取得する際に、若干の時間を要する場合もあるので、ここに示す実施形態では、「現在地設定」ボタンがタップされると、地点設定部100から表示制御部70に対して、図20に示すような画面を表示する旨の指示が与えられるようにしている。したがって、ユーザが図17に示す「現在地設定」ボタンをタップした後、現在地の情報が取得されるまで、ユーザには図20に示す画面が提示される。
以上、出発地点を設定するための3通りの方法を順に説明したが、いずれの方法を選択した場合も、出発地点の設定が完了した後は、図21に示すような出発地点設定完了画面が表示される。この画面は、設定された出発地点Sを切出基準点Pとして、所定の表示倍率で出発地点Sの近傍領域を切り出した個別切出地図であり、出発地点Sの位置に、出発地点アイコン96(図示の例では、文字Sを星形で囲った図形)が表示され、「ここに出発地点を設定しました。」なるメッセージが付加されている。ユーザは、このような出発地点設定完了画面を見て、正しい位置(この例では、靴売り場の近傍地点)に出発地点が設定されたことを確認することができる。この出発地点設定完了画面の戻るボタン93をタップすると、メニュー画面に戻ることができる。
続いて、ユーザが、図6に示すメニュー画面上で「目的地点設定」ボタンをタップした後の動作を説明する。目的地点設定の作業は、上述した出発地点設定の作業とほぼ同じである。「目的地点設定」ボタンがタップされると、指示入力部80は、「目的地点設定」の指示入力を受けたものと認識し、その旨を地点設定部100に伝達する。これを受けた地点設定部100は、目的地点設定処理を開始する。すなわち、地点設定部100から表示制御部70に対して、目的地点設定画面が与えられ、表示制御部70は、当該目的地点設定画面への表示に切り替える処理を行う。図22は、目的地点設定画面を示す平面図である。地点設定部100は、この目的地点設定画面を利用して目的地点の設定処理を行うことになる。
図22に示す例の場合、目的地点設定画面は、上部表示領域Uと下部表示領域Lとに分かれている。上部表示領域Uには、「地図で設定」,「リストで設定」という2つの操作ボタンが表示されており、2通りの方法で目的地点の設定を行うことができる。なお、目的地点設定画面には、「現在地設定」ボタンは用意されていない。これは、現在地を目的地点とするルート探索は意味をなさないためである。一方、下部表示領域Lには、上矢印ボタン91、下矢印ボタン92、戻るボタン93という3つの操作ボタンが表示されている。ここで、戻るボタン93は、図6に示すメニュー画面に戻るためのボタンであり、ユーザがこの戻るボタン93をタップすると、表示制御部70は、表示画面をメニュー画面に戻す処理を行う。なお、上矢印ボタン91および下矢印ボタン92は、この目的地点設定画面では機能しない。
ここで、ユーザが「地図で設定」ボタンをタップした場合の目的地点設定方法は、地点設定部100が、個別切出地図上でユーザが指定した所定点を目的地点に設定する方法である。その具体的な方法は、上述した出発地点設定方法で述べた方法に準じたものであるため、ここでは説明を省略する。また、ユーザが「リストで設定」ボタンをタップした場合の目的地点設定方法は、地点設定部100が、場所名のリストから特定の場所を選択して目的地点として設定する方法である。この具体的な方法も、上述した出発地点設定方法で述べた方法に準じたものであるため、ここでは説明を省略する。
このように、目的地点は2通りの方法で設定することが可能であるが、いずれの方法を選択した場合も、目的地点の設定が完了した後は、図23に示すような目的地点設定完了画面が表示される。この画面は、設定された目的地点Gを切出基準点Pとして、所定の表示倍率で目的地点Gの近傍領域を切り出した個別切出地図であり、目的地点Gの位置に、目的地点アイコン97(図示の例では、文字Gを星形で囲った図形)が表示され、「ここに目的地点を設定しました。」なるメッセージが付加されている。ユーザは、このような目的地点設定完了画面を見て、正しい位置に目的地点が設定されたことを確認することができる。この目的地点設定完了画面の戻るボタン93をタップすると、メニュー画面に戻ることができる。
<<< §4. ルート付き地図表示 >>>
ここでは、図6に示すメニュー画面において、「ルート付き地図表示」ボタンをタップした後のシステムの動作を説明する。§2では、「通常地図表示」ボタンがタップされた場合に、階床配置図および個別切出地図が表示されることを説明したが、「ルート付き地図表示」ボタンをタップした場合も、基本的には、「通常地図表示」ボタンがタップされた場合と同様に、階床配置図および個別切出地図の表示が行われる。但し、表示される階床配置図および個別切出地図には、出発地点から目的地点に至るルートが重畳して表示される点が異なっている。本願では、このようなルートが重畳表示された図を、それぞれ「ルート付き階床配置図」および「ルート付き個別切出地図」と呼ぶことにする。
したがって、「ルート付き地図表示」を行うためには、既に出発地点と目的地点とが設定されており、ルート探索が行われていることが前提となる。そこで、ここでは、まず、ルート探索の処理について簡単に述べておく。
ここに示す実施形態の場合、§3で述べた方法で、地点設定部100による出発地点Sおよび目的地点Gの双方の設定が完了した時点で、ルート探索部60によるルート探索処理が自動的に行われる(もちろん、ユーザからのルート探索指示を待って、ルート探索処理が行われるようにすることも可能である)。§1で述べたとおり、探索用情報格納部30には、階床地図格納部10に格納されている階床地図上の任意の2点間についてのルートを探索するために必要な探索用情報が格納されており、ルート探索部60は、この探索用情報を利用して出発地点Sから目的地点Gに至るまでのルートを探索し、得られた探索ルートを探索ルート格納部20に格納する処理を行う。
図24は、探索用情報格納部30に格納された探索用情報の一例を示す図である。この例の場合、探索用情報は、ノード情報(図24(a) )とリンク情報(図24(b) )によって構成される。ノード情報は、個々の階床地図上に設定された多数のノード(ルート探索を行うのに必要な密度で分布するように定義された多数の点)について、それぞれ個々のノードを識別するためのノード番号と、当該ノードが所属する階床地図名と、当該ノードの位置を示すXY座標値と、を収録した表によって構成される。たとえば、図24(a) に示す表の1行目には、ノード番号N1,階床地図W1,X座標値180,Y座標値60なる情報が収録されているが、これは階床地図W1上に定義されたノード番号N1なるノードの位置が(180,60)なる座標値であることを示している。
一方、リンク情報は、互いに近傍に位置する2つのノード(開始ノードと終了ノード)間を結ぶリンクを定義し、個々のリンクを識別するためのリンク番号と、当該リンクの両端にある開始ノードおよび終了ノードのノード番号と、当該リンクによって構成される経路の種類と、当該リンクに沿って移動するコストと、を収録した表によって構成される。たとえば、図24(b) に示す表の1行目には、リンク番号L1,開始ノードN1,終了ノードN2,種類:通路,コスト3なる情報が収録されているが、これはノード番号N1なるノードからノード番号N2なるノードに至るリンク番号L1なるリンクが通路を構成しており、その移動コストが3であることを示している。移動コストは、開始ノードから終了ノードへ移動するために費やすコストを示しており、移動距離や移動時間などの移動負担が大きければ大きいほど、大きなコストが設定される。
ルート探索部60は、このような探索用情報を利用して、出発地点Sから目的地点Gに至るまでの最適ルートを探索する。このようなルート探索の方法として、一般にダイクストラ法が知られている。図24に示すノード情報およびリンク情報は、このダイクストラ法の実施に利用するための探索用情報である。この方法では、出発地点Sに最も近い出発ノードから、目的地点Gに最も近い目的ノードに至るまで、多数の経路のバリエーションが検索される。検索された個々の経路は、連続した一連のリンクによって構成されることになる。そこで、各リンクのコストを積算し、個々の経路について、それぞれ出発ノードから目的ノードに至るまでの合計コストを求め、合計コストが最も小さな経路を最適ルートとして選択すればよい。
図25は、このようなルート探索の基本原理を示す平面図である。図25(a) は、西館1階の階床地図W1を示し、図25(b) は、西館2階の階床地図W2を示している。この例は、階床地図W1上に出発ノードN1が位置し、階床地図W2上に目的ノードN4が位置している場合に、リンクL1,L2,L3を連結したルートが最適ルートとして探索された例である。ここで、ノードN1,N2,N3,... の位置は、図24(a) に示すようにノード情報として与えられており、リンクL1,L2,L3,... の特徴は、図24(b) に示すようにリンク情報として与えられている。具体的には、リンクL1は、ノードN1からN2に至る通路(コスト=3)であり、リンクL2は、ノードN2からN3に至る通路(コスト=7)であり、リンクL3は、ノードN3からN4に至るエスカレータ(コスト=1)である。したがって、リンクL1,L2,L3を連結したルートの合計コストは11ということになる。
実際には、階床地図W1,W2上には、この他にも多数のノードが定義されており、出発ノードN1から目的ノードN4に至る経路も、これら多数のノードを通る様々なルートが存在する。これら様々なルートについて、それぞれ合計コストを計算し、最も小さなコストをもつルートが最適ルートとして選択されることになる。ここでは、このようなルート探索法の代表例として、ダイクストラ法の基本原理を述べたが、もちろん、ルート探索部60は、どのような方法で最適ルートの探索を行ってもかまわない。このようなルート探索の手法としては、様々な方法が公知であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
さて、ここでは、説明の便宜上、図21に示すように、西館1階の靴売り場の近傍に出発地点Sが設定され、図23に示すように、東館3階のレストラン近傍に目的地点Gが設定された場合を考えてみる。ここに示す実施形態の場合、出発地点Sおよび目的地点Gの双方の設定が完了した時点で、ルート探索部60によるルート探索処理が自動的に行われ、探索結果が、探索ルート格納部20に格納される。図26〜図28は、こうして探索ルート格納部20に格納された探索ルートを示すものである。
まず、図26には、左側に示す西館1階の階床地図W1上に、出発地点S(星形のアイコン96が示されている地点)を開始点とし、終了点e1に至るまでのルートR1が探索された結果が示されている。終了点e1は、2階へ向かうエスカレータの乗り口である。
図27には、左側に示す西館2階の階床地図W2上に、開始点b2から終了点e2に至るまでのルートR2が探索された結果が示されている。開始点b2は1階からのエスカレータの降り口であり、全ルート上では、図26に示す終了点e1に後続する点ということになる。また、終了点e2は、渡り廊下を経て東館へ移動するための点ということになる。一方、右側に示す東館2階の階床地図E2上には、開始点b3から終了点e3に至るまでのルートR3が探索された結果が示されている。開始点b3は西館2階から渡り廊下を経て連結する点であり、全ルート上では、終了点e2に後続する点ということになる。また、終了点e3は、3階へ向かうエスカレータの乗り口である。
図28には、右側に示す東館3階の階床地図E3上に、開始点b4から終了点となる目的地点G(星形のアイコン97が示されている地点)に至るまでのルートR4が探索された結果が示されている。開始点b4は2階からのエスカレータの降り口であり、全ルート上では、図27に示す終了点e3に後続する点ということになる。
結局、図26〜図28に太線で描かれたルートR1〜R4を連結したものが、出発地点Sから目的地点Gに至るまでの最適ルート(システムが推奨するルート)として探索され、探索ルート格納部20に格納されることになる。
なお、探索ルート格納部20に格納される探索ルートの具体的な態様(データ形式)は、どのような形態のものであってもかまわないが、ここに示す実施形態の場合、ルート付き地図を作成する便宜を考慮して、階床地図にそのまま重畳して利用できる画像レイヤーの形式を採っている。すなわち、探索ルート格納部20には、出発地点Sおよび目的地点Gを示すアイコンと、出発地点Sから目的地点Gに至るまでの経路を示すルート線と、が描かれた画像レイヤーが格納される。
図26〜図28に示す図は、このような画像レイヤーの形式で用意された探索ルートを示すものである。すなわち、これらの図に実線で示されている出発地点アイコン96および目的地点アイコン97と、ルート線R1〜R4とが、探索ルートを示す情報の実体であり、探索ルート格納部20には、これらアイコンおよびルート線が描かれた画像データが探索ルートを示すデータとして格納されていることになる。図26〜図28には、階床地図が破線で示されているが、これは出発地点アイコン96および目的地点アイコン97、ならびにルート線R1〜R4のXY座標系上での位置を明確にするための参考として示したものであり、実際に探索ルート格納部20に格納されている探索ルートを示すデータには、これら階床地図の情報は含まれていない。
このように、探索ルートを画像レイヤーの形式で用意しておけば、階床配置図作成部40および個別切出地図作成部50は、階床地図格納部10に格納されている階床地図に、探索ルート格納部20に格納されている画像レイヤーを重畳することにより、ルート付き階床配置図もしくはルート付き個別切出地図を作成することができる。
図29は、こうして作成されたルート付き階床配置図を示す平面図であり、図30は、こうして作成されたルート付き個別切出地図を示す平面図である。図29に示すルート付き階床配置図は、図7に示す階床配置図を構成する個々の階床地図の上に、図26〜図28に示す画像レイヤーを重畳することにより得られた画像であり、出発地点アイコン96および目的地点アイコン97(小さな星形アイコン)ならびにルート線R1〜R4(経路を示す太線)が付加されている。一方、図30に示すルート付き個別切出地図は、西館1階の出発地点S近傍から切り出された個別切出地図の上に、図26の左側に示す画像レイヤーを重畳することにより得られた画像であり、出発地点アイコン96およびルート線R1が付加されている。
ユーザが、図6に示すメニュー画面において、「ルート付き地図表示」ボタンをタップすると、指示入力部80が、「ルート付き地図表示」の指示入力を受けたことを認識し、その旨を表示制御部70に伝達する。表示制御部70は、この指示を受けて、図6に示すメニュー画面から図29に示すルート付き階床配置図への表示に切り替える処理を行う。このルート付き階床配置図が表示されている状態で、戻るボタン93をタップすると、再びメニュー画面に戻ることになる。なお、「ルート付き地図表示」を行うためには、出発地点Sと目的地点Gとの双方が設定されていることが前提となるので、地点設定部100内にこれらの地点設定がなされていない状態、別言すれば、探索ルート格納部20内に探索ルートが格納されていない状態で、「ルート付き地図表示」ボタンがタップされた場合には、ルート付き階床配置図への表示切替は行われず、ユーザに対してエラーメッセージ(たとえば、出発地点Sと目的地点Gの設定を促すメッセージ)が提示される。
続いて、図29に示すルート付き階床配置図上で、特定の階床地図を指定するユーザの操作(タップ操作)があった場合、指示入力部80は、当該操作を当該特定の階床地図についての表示指示として入力する。別言すれば、指示入力部80は、ディスプレイ90にルート付き階床配置図が表示されている際に、特定の建物の特定の階の階床地図の表示位置に対する押圧操作があった場合に、この押圧操作を、当該特定の建物の特定の階の階床地図についての表示指示として入力することになる。そして、個別切出地図作成部50は、この表示指示に基づいて当該特定の階床地図についてのルート付き個別切出地図を作成し、表示制御部70は、この表示指示に基づいて当該特定の階床地図についてのルート付き個別切出地図をディスプレイ90の画面上に表示する。
たとえば、図29に示すルート付き階床配置図上で、左下に示された西館1階の階床地図をタップすると、図30に示すように、西館1階の所定箇所のルート付き個別切出地図が表示されることになる。表示される箇所は、図16の表に示すように、西館1階の階床地図W1について設定されている最新切出条件(最新切出条件が設定されていない場合は、初期切出条件)によって決定される。
もちろん、図30に示すように、ルート付き個別切出地図を表示させた状態において、上部表示領域Uに指を触れて上下左右へ移動させる操作を行うと、地図のスクロールが行われ、必要に応じて、隣接する建物の同じ階床へスクロールさせることもできる。一方、2本指を触れて距離を縮めたり広げたりする操作を行うと、地図の表示倍率が変化することになる。また、下部表示領域Lには、上矢印ボタン91,下矢印ボタン92,戻るボタン93が設けられており、これらのボタンをタップすることにより、表示中の地図を切り替えることができる。
すなわち、「上階移動ボタン」として機能する上矢印ボタン91をタップすると、現在表示されている階床地図の上階の階床地図(同じ建物内の上の階)についてのルート付き個別切出地図の表示に切り替わる(但し、現在表示されている地図が最上階の場合は変化しない)。同様に、「下階移動ボタン」として機能する下矢印ボタン92をタップすると、現在表示されている階床地図の下階の階床地図(同じ建物内の下の階)についてのルート付き個別切出地図の表示に切り替わる(但し、現在表示されている地図が最下階の場合は変化しない)。一方、ユーザが、戻るボタン93をタップすると、図29に示すルート付き階床配置図に戻ることになる。
結局、図6に示すメニュー画面において、「ルート付き地図表示」ボタンをタップした後のシステムの動作は、§2で述べた「通常地図表示」ボタンをタップした後のシステムの動作に準じたものになり、ユーザは図29に示すルート付き階床配置図から所望の建物の所望の階を選んで図30に示すルート付き個別切出地図を表示させたり、再びルート付き階床配置図に戻ったりすることができ、また、図30に示すルート付き個別切出地図から直接別な階もしくは別な建物のルート付き個別切出地図に切り替えたりすることもできる。「通常地図表示」ボタンをタップした場合の表示動作と、「ルート付き地図表示」ボタンをタップした場合の表示動作との違いは、後者の場合には、探索ルートの情報(出発地点アイコン、目的地点アイコン、ルート線)が重畳された画像表示が行われるという点だけである。
このように、「ルート付き地図表示」を行う場合も、図29に示すようなルート付き階床配置図を表示し、このルート付き階床配置図上で特定の階床地図を指定するユーザの指示入力を受け付けて、図30に示すようなルート付き個別切出地図への切替が行われるようにしたため、ルート付き個別切出地図の施設全体に対する位置関係が容易に把握できるようになる。たとえば、図29において、左下に表示された西館1階の縮小された地図をタップする操作により、図30に示すようなルート付き個別切出地図(詳細な地図)が表示されることになるので、ユーザは、図30のルート付き個別切出地図に示されている場所が、施設全体のどのあたりの地図であるのかを直感的に把握することができるようになる。
しかも、図29に示すルート付き階床配置図では、出発地点アイコン96および目的地点アイコン97が表示されるため、出発地点Sおよび目的地点Gの施設全体に対する位置関係も容易に把握でき、更に、出発地点Sから目的地点Gに至るまでの最適ルートがルート線R1〜R4として表示されるため、施設全体に対する最適ルートの位置関係も容易に把握できる。すなわち、ルート付き階床配置図には、出発地点Sから目的地点Gに至るまでの経路全体のルートが表示されるため、ユーザは、経路全体を容易に把握することができるようになる。
もちろん、ルート付き階床配置図では、個々の階床地図が縮小されて表示されるため、詳細なルートを確認することはできないが、たとえば、図29に示す例の場合、西館1階から2階へ移動し、そのまま東館2階へ渡り、更に3階へと移動することにより目的地点に到達する、という最適ルートの概要を把握することができる。そして、より詳細なルートが必要な場合には、必要な階床地図をタップすることにより、図30に示すようなルート付き個別切出地図に切り替えることができ、ルート線を追ってこの地図をスクロールさせたり、上下の階の地図に切り替えたりすることもできる。
このように本発明に係る施設内の地図提示システムによれば、施設内の来訪者を目的地まで誘導するための情報を、経路全体の把握が容易な態様で提示することが可能になる。
<<< §5. いくつかの変形例 >>>
これまで本発明に係る施設内の地図提示システムの構成および動作を基本的な実施形態に基づいて説明してきたが、ここでは、いくつかの変形例を述べておく。
< 5.1 探索ルート情報の表示形態 >
基本的な実施形態では、探索ルート格納部20内に、出発地点アイコンおよび目的地点アイコンと、出発地点Sから目的地点Gに至るまでの経路を示すルート線と、が描かれた画像レイヤーを格納しておき、階床配置図作成部40および個別切出地図作成部50が、階床地図にこの画像レイヤーを重畳することにより、ルート付き階床配置図もしくはルート付き個別切出地図を作成する例を述べた。このように、探索ルート情報として、予め画像レイヤーを作成しておけば、ルート付き階床配置図もしくはルート付き個別切出地図を作成する際には、この画像レイヤーを階床地図に重畳する処理を行えばよいので、処理負担を軽減することができる。しかしながら、ルート付き階床配置図では、個々のルート付き個別切出地図が縮小表示されることになるので、重畳表示された出発地点アイコン,目的地点アイコン,ルート線が見にくくなることは避けられない。
たとえば、図26の左側には、西館1階の階床地図W1に重畳するための画像レイヤーが示されている。この画像レイヤーには、出発地点アイコン96およびルート線R1が描かれており、この画像レイヤーを階床地図W1に重畳して得られるルート付き個別切出地図は、たとえば、図30に示すような地図になる。このように、ルート付き個別切出地図は、ユーザが見やすい大きさに拡大して表示させることができるので、出発地点アイコン96もルート線R1も、十分明瞭に把握することができる。
しかしながら、図29に示すルート付き階床配置図では、画像レイヤー上に描かれている探索ルート情報も縮小表示されてしまうため、視認性が低下することは避けられない。実際、図29に示す例の場合、出発地点アイコン96および目的地点アイコン97の表示は極めて小さく、視認するのが困難である。
このような問題に対処するには、探索ルート格納部20に、画像レイヤーとして探索ルート情報を格納する代わりに、出発地点Sおよび目的地点Gを示す位置情報と、出発地点Sから目的地点Gに至るまでの経路を示すルート線上の個々のノードの位置情報と、を格納しておくようにし、階床配置図作成部40および個別切出地図作成部50が、これら各位置情報に基づいて、出発地点Sおよび目的地点Gを示すアイコンと、各ルート線と、が重畳されたルート付き階床配置図もしくはルート付き個別切出地図を作成するようにすればよい。
出発地点S、目的地点G、ルート線上のノードを示す位置情報としては、階床地図を特定する識別コード(すなわち、建物と階数を特定するコード)と、XY座標系上での座標値を用いればよい。階床配置図作成部40および個別切出地図作成部50は、これらの情報に基づいて、それぞれに相応しい大きさのアイコンやルート線を描くことができるので、視認性は格段に向上する。
一方、ルート線は、施設内の通路に沿った歩行経路を示すものなので、一般に、くねくねと曲がった経路を示す折れ線になる。たとえば、図27の左側に示すルート線R2は、開始点b2から終了点e2に至るまで、売り場の間の通路を辿るくねくねと曲がった経路によって構成されている。したがって、ルート付き個別切出地図上では、当然ながら、くねくねと曲がった経路をそのまま表示するのが好ましい。しかしながら、ルート付き階床配置図では、くねくねと曲がった経路をそのまま表示すると、繁雑度が増すため、かえって視認性が低下するおそれがある。
たとえば、図26〜図28に示されているルート線R1〜R4は、比較的単純な折れ線からなるため、図29の例のようにルート付き階床配置図上にそのまま表示しても、ある程度の視認性を維持できる。しかしながら、より複雑なルート線をそのままルート付き階床配置図上に表示した場合、縮小表示するプロセスで繁雑に隣接配置されたルート線が潰れた状態になり、視認性が低下することは避けられない。
このような問題に対処するには、階床配置図作成部40が、個々の階床地図ごとにルート線の開始点と終了点とを結ぶ直線を、当該階床地図についての概略ルート線として求め、ルート線の代わりにこの概略ルート線を重畳することにより、ルート付き階床配置図を作成するようにすればよい。たとえば、図26の左側に示すルート線R1については、その開始点(出発地点S)と終了点e1とを結ぶ線分からなる概略ルート線R1′を代用し、図27の左側に示すルート線R2については、その開始点b2と終了点e2とを結ぶ線分からなる概略ルート線R2′を代用し、図27の右側に示すルート線R3については、その開始点b3と終了点e3とを結ぶ線分からなる概略ルート線R3′を代用し、図28の右側に示すルート線R4については、その開始点b4と終了点(目的地点G)とを結ぶ線分からなる概略ルート線R4′を代用すればよい。
図31は、図29に示すルート付き階床配置図におけるアイコン96,97の代わりに、新たに描画したアイコン96′,97′を用い、ルート線R1〜R4の代わりに、直線からなる概略ルート線R1′〜R4′を用いた表示例を示す平面図である。図29に示すアイコン96,97は、画像レイヤー上に描かれたアイコンをそのまま縮小したものであるため、極めて小さく見にくいものになっていたが、図31に示すアイコン96′,97′は、階床配置図作成部40が階床配置図用に描いたものであるため、より大きく、視認性に優れたものになっている。また、図31に示す概略ルート線R1′〜R4′は、単純な直線によって構成されているため、その両端点が開始点および終了点であることが一目で認識でき、概略ルート線R1′,R2′,R3′,R4′を辿って出発地点Sから目的地点Gに至る経路がより明確に把握できるようになる。ルート付き階床配置図上では、ルート線R1〜R4による詳細な経路を示す必要はなく、より単純な概略ルート線R1′,R2′,R3′,R4′を表示すれば十分である。
< 5.2 経路外階床地図の表示省略 >
ここでは、ルート付き階床配置図を作成する際に、探索ルートが存在しない階床地図(経路外階床地図)の一部もしくは全部の表示を省略することにより、探索ルートの視認性を向上させる変形例を述べる。
(1)第1のアルゴリズム
図31に示す例の場合、出発地点Sが西館1階、目的地点Gが東館3階に設定されているため、探索ルートは、西館1,2階および東館2,3階を経由するものになっている。このため、西館3階および東館1階には探索ルートは存在しない。このようなケースでは、ルート付き階床配置図上、探索ルートが存在しない階床地図の部分を空欄にすると、探索ルートの把握がより容易になる。すなわち、階床配置図作成部40が、ルート付き階床配置図を作成する際に、「探索ルートの経路を含まない階床地図の部分を空欄にする」というアルゴリズム(第1のアルゴリズム)に基づいてルート付き階床配置図を作成するようにすればよい。
図31に示す例の場合、探索ルートの経路を含まない西館3階と東館1階の表示を省略し、この部分を空欄にすれば、図32に示すようなルート付き階床配置図が得られる。立ち寄る必要がない西館3階と東館1階の表示が省略されているため、西館1階から2階そして東館2階から3階という探索ルートの構成がより明確に把握できる。しかも、探索ルートを確認する上では、西館3階と東館1階の個別切出地図を見る必要はないので、これらの階床地図をルート付き階床配置図上でタップする必要はなく、空欄になっていても問題は生じない。したがって、探索ルートの確認を行う上では、図32に示す表示形態は、より好ましいものになっている。もちろん、「通常地図表示」に切り替えれば、図7に示すように施設の全階床地図を含む階床配置図(空欄のない階床配置図)を表示させることができるので問題はない。
(2)第2のアルゴリズム
一方、探索ルートが全く存在しない階や建物が存在する場合には、そのような階や建物を配置する行や列自体を削除することができ、一行分もしくは一列分の表示スペースが不要になるので、より効果的である。すなわち、階床配置図作成部40が、ルート付き階床配置図を作成する際に、「探索ルートの経路を全く含まない建物があった場合には当該建物についての列を省略し、探索ルートの経路を全く含まない階があった場合には当該階についての行を省略する」というアルゴリズム(第2のアルゴリズム)に基づいてルート付き階床配置図を作成するようにすればよい。
たとえば、西館1階の出発地点Sから、西館2階を経て、東館2階の目的地点Gに至る探索ルートがあった場合、3階は探索ルートの経路を全く含まない階になるので、「3階を表示すべき行」を一行分そっくり削除することができる。図33は、このような表示例を示す平面図である。一方、西館1階の出発地点Sから、西館2階を経て、西館3階の目的地点Gに至る探索ルートがあった場合、東館は探索ルートの経路を全く含まない階になるので、「東館を表示すべき列」を一列分そっくり削除することができる。図34は、このような表示例を示す平面図である。
このように、探索ルートが全く存在しない階や建物の行や列の表示をそっくり削除すると、探索ルートを確認する上で不要な情報が表示されなくなるので、やはり探索ルートの把握がより容易になる。また、場合によっては、個々の階床地図をより大きく表示することができるので、個々の階床地図の内部の視認性も向上する。たとえば、図34に示す例の場合は、図31に示す例と比べて個々の階床地図の大きさに変わりはないが、図33に示す例の場合は、3行2列の行列表示から2行2列の行列表示に変わるため、個々の階床地図を若干大きく表示することができる。すなわち、表示対象となる行列を画面一杯に表示できるルート付き階床配置図を作成する、という前提では、行列の行数や列数が小さくなれば、それだけ個々の階床地図を大きく表示できる可能性が高まる。
なお、ここに示す第2のアルゴリズムは、前述した第1のアルゴリズムとは若干異なる論理をとるため、探索ルートの経路を含まない階床地図の表示がすべて省略されるわけではない。たとえば、図33に示す例の場合、東館1階は、探索ルートの経路を含まない階床地図であるが、省略されずに残っている。これは、2行2列の行列表示を行った場合に、東館1階もその要素内に含まれるためである。
もちろん、ここに示す第2のアルゴリズムに、前述した第1のアルゴリズムを組み合わせることも可能である。図33に示す例に、更に、前述した第1のアルゴリズムを組み合わせると、右下の東館1階の部分が空欄として表示されることになる。
(3)エレベータ通過階の取り扱い
ルート付き階床配置図を作成する際に、上述した第1のアルゴリズムもしくは第2のアルゴリズムによって、探索ルートが存在しない階床地図(経路外階床地図)の一部もしくは全部を省略する表示方法を採用する場合、単にエレベータが通過するだけの階については、経路外階床地図とする取り扱いをするのが好ましい。すなわち、階床配置図作成部40が、探索ルート上、エレベータが通過するだけの階床地図については、探索ルートの経路を含まない階床地図(経路外階床地図)として取り扱うようにすればよい。
たとえば、西館1階の出発地点Sから、西館3階の目的地点Gに至るために、西館1階でエレベータに乗り、西館3階でエレベータを降りる探索ルートがあった場合、西館2階はエレベータに搭乗した状態で通過することになる。このような場合、西館2階を経路外階床地図として取り扱うようにするのが好ましい。
図35は、そのような取り扱いを行い、前述した第2のアルゴリズムに基づいて作成したルート付き階床配置図を示す平面図である。西館2階は、単にエレベータが通過するだけの階であるため、経路外階床地図として取り扱われる。その結果、2階は「探索ルートの経路を全く含まない階」ということになり、2階の行は表示が省略される。また、東館は「探索ルートの経路を全く含まない建物」であるから、東館の列も表示が省略される。その結果、図示のとおり、西館1階と西館3階のみを含む2行1列の行列からなるルート付き階床配置図が表示されることになる。このような表示によれば、ユーザは、西館1階でエレベータに乗り、西館3階でエレベータから降りる、という探索ルートを容易に把握することができる。
< 5.3 斜傾階床地図の作成 >
既に述べたとおり、図1に示すシステムにおける階床地図格納部10内には、図3〜図5に例示するような各階床地図が格納されている。これらの階床地図は、実際の施設の各建物の各階床の平面図となっており、個別切出地図もしくはルート付き個別切出地図として表示するのに適した地図になっている。しかしながら、図7に示す階床配置図や、図29に示すルート付き階床配置図として並べて配置した場合、相互の立体的な配置関係を把握する上で、必ずしも適切な地図にはなっていない。
ここで述べる変形例は、階床配置図もしくはルート付き階床配置図において、各階床地図の立体的な配置関係の視認性を向上させるために、個々の階床地図に対して斜め方向に歪ませる画像処理を施すものである。図36は、階床地図を斜め方向に歪ませることによって得られる斜傾階床地図を用いた階床配置図を示す平面図である。表示対象となる構成要素は、図7に示す階床配置図と同じであるが、個々の階床地図として、斜め方向に歪ませた斜傾階床地図が用いられている。このため、図7に示す階床配置図と比べると、全体的に立体感が増し、6つの階床相互の立体的な配置関係がより明確に把握できるようになっている。
もちろん、ルート付き階床配置図についても同様に斜傾階床地図を用いた表示が可能である。すなわち、この変形例では、階床配置図作成部40が、階床地図格納部10内に格納されている階床地図に対して、斜め方向に歪ませる画像処理を施すことにより斜傾階床地図を生成し、この斜傾階床地図を並べることにより階床配置図もしくはルート付き階床配置図を作成することになる。
このように、特定の画像を斜め方向に歪ませる画像処理としては、アフィン変換を利用した方法などが公知であるため、ここでは詳しい説明は省略する。なお、階床地図格納部10内に、通常の平面地図に対してアフィン変換を施して斜め方向に歪ませることにより得られた斜傾階床地図を格納しておき、階床配置図作成部40が、この斜傾階床地図をそのまま利用して階床配置図を作成するようにし、個別切出地図作成部50が、個別切出地図を作成する際に、斜傾階床地図に対して逆アフィン変換を施して通常の平面地図に戻し、これを表示するようにしてもかまわない。
< 5.4 階床地図遷移線の付加 >
これまで述べてきた実施形態では、図29や図31〜図35に示す例のように、探索ルートは、ルート付き階床配置図上において、個々の階床地図上に重畳されたルート線もしくは概略ルート線(図における太線)として表示されているが、このような階床地図上のルート線や概略ルート線だけでは、階床地図間の遷移が必ずしも明瞭ではない。
たとえば、図31に示す例の場合、西館1階の出発地点アイコン96′で示される出発地点Sから概略ルート線R1′を通ってエスカレータに乗って西館2階へ移動し、概略ルート線R2′およびR3′を通って東館2階へ渡り、更に、エスカレータに乗って東館3階へ移動する、という探索ルート全体の把握を行うことが可能であるが、西館1階から西館2階への遷移、西館2階から東館2階への遷移、東館2階から東館3階への遷移、といった階床地図間の遷移がわかりずらい。
そこで、ここで述べる変形例では、階床配置図作成部40が、第1の階床地図から第2の階床地図へと探索ルートが継続している場合に、第1の階床地図の探索ルートの終了点と第2の階床地図の探索ルートの開始点とを結ぶ階床地図遷移線を、個々の階床地図間の空隙部分に描いたルート付き階床配置図を作成するようにしている。
図37に示す例は、図31に示すルート付き階床配置図において、§5.3で述べた斜傾階床地図を採用するとともに階床地図遷移線を付加した例である。ここでは、説明の便宜上、概略ルート線R1′,R2′,R3′,R4′を太い実線で示し、エスカレータを経由する階床地図遷移線T1,T3を一点鎖線で示し、渡り廊下を経由する階床地図遷移線T2を破線で示しているが、実際には、それぞれの線を色別で表示するのが好ましい。
このように、階床地図間の空隙部分に階床地図遷移線を付加して表示すると、階床地図間の遷移がより明確になる。また、出発地点Sと目的地点Gとが1本の連続した線によって連結されることになるので、探索ルートの全体像をより明確に把握することができるようになる。すなわち、図37に示す例の場合、西館1階の出発地点アイコン96′で示される出発地点Sから概略ルート線R1′を経てエスカレータに乗り、階床地図遷移線T1を経て西館2階へ移動し、概略ルート線R2′を経て渡り廊下まで進み、階床地図遷移線T2(渡り廊下)を経て東館2階へ渡り、概略ルート線R3′を経てエスカレータに乗り、階床地図遷移線T3を経て東館3階へ移動し、概略ルート線R4′を経て目的地点アイコン97′で示される目的地点Gに到達する、という探索ルートの全体像が容易に把握できる。
更なる変形例として、階床配置図作成部40が、探索ルート以外の階床間移動経路もしくは建物間移動経路またはその双方を示す階床地図遷移線を、個々の階床地図間の空隙部分に描いたルート付き階床配置図を作成するようにしてもよい。
図38は、図37に示すルート付き階床配置図に、探索ルート以外の階床地図遷移線T4〜T10を付加して表示した状態を示す平面図である。ここで、破線で示す階床地図遷移線T4は、西館1階と東館1階との間を徒歩で渡る(1階の路面を渡る)移動経路、すなわち、建物間移動経路を示している。また、二点鎖線で示す階床地図遷移線T5〜T8は、各階床地図間をエレベータで遷移するための移動経路、すなわち、階床間移動経路を示しており、一点鎖線で示す階床地図遷移線T9,T10は、各階床地図間をエスカレータで遷移するための移動経路、すなわち、階床間移動経路を示している。ここでも、実際には、それぞれの線を線種を変えて表示する代わりに、色別で表示するのが好ましい。
このように、ルート付き階床配置図上に、探索ルート以外の階床間移動経路もしくは建物間移動経路を示す階床地図遷移線T4〜T10を付加すると、ユーザに対して、探索ルート以外のルートを選択する選択肢を与える上で役立つ。探索ルート格納部20内に格納されている探索ルートは、あくまでもルート探索部60が最適ルート(たとえば、距離的な最短ルートや歩行距離が最短となるルートなど)と判断した推奨ルートであり、実際には、この他にも目的地点Gに向かうためのルートが多数存在する。図38に示すルート付き階床配置図のように、階床地図遷移線T4〜T10を付加した表示を行えば、ユーザは、推奨される探索ルートを確認しつつ、それ以外のルートを選択する上で階床地図遷移線T4〜T10を参考にすることができる。
たとえば、図38に示すルート付き階床配置図を見たユーザは、探索ルートを採る代わりに、階床地図遷移線T4,T10,T3を経る別なルート(東館のエスカレータを利用して1階から3階まで移動するルート)や、階床地図遷移線T4,T7,T8(東館のエレベータを利用して1階から3階まで移動するルート)などを採ることができる。
もちろん、この他にも、階段を使って階床間を移動する経路などを階床地図遷移線として表示することも可能である。このような階床地図遷移線は、図24(b) に示すようなリンク情報を利用して描くことが可能である。
< 5.5 最新切出条件の消去 >
§2で述べたとおり、個別切出地図作成部50には、切出条件格納部51が設けられており、ここには、たとえば図16の表に示すように、初期切出条件と最新切出条件とが、個々の階床地図ごとに格納される。そして、個別切出地図作成部50は、最新切出条件が格納されている場合には、当該最新切出条件に基づく切出処理を行い、最新切出条件が格納されていない場合には、初期切出条件に基づく切出処理を行う機能を有している。
そして、ここで述べる変形例では、ユーザから指示入力部80に対して「ルート探索部60による探索を行う旨の指示」が入力された場合(すなわち、出発地点Sと目的地点Gとの双方が設定された場合)、個別切出地図作成部50が、所定のリセット条件を満たす指示があったものと認識して、条件格納部51内に格納されている最新切出条件を消去するリセット処理を行う機能が設けられている。しかも、個別切出地図作成部50は、ルート付き個別切出地図を作成する際に、最新切出条件が格納されていない場合に、初期切出条件に基づく切出処理を行う代わりに、切出対象となる階床地図上の探索ルートの開始点を切出基準点Pとする最新切出条件を作成し、これを切出条件格納部51に格納し、当該最新切出条件に基づく切出処理を行う機能を有している。
要するに、ルート探索を実行した直後は、リセット処理により、すべての最新切出条件が消去されることになるが、個別切出地図作成部50が、特定の階床地図についてルート付き個別切出地図を初めて作成する際には、初期切出条件を用いた切出処理を行う代わりに、探索ルートの開始点を切出基準点Pとする最新切出条件を作成し、作成した最新切出条件を用いた切出処理を行うことになる。
このような切出処理を行うと、探索ルートを辿って個別切出地図を表示させる場合に、探索ルートを追いやすくなる。たとえば、図29に示すような探索ルートが得られた場合に、西館1階についての個別切出地図を初めて表示させると、図30に示す例のように、西館1階についての探索ルートの開始点である出発地点Sの位置を切出基準点Pとする最新切出条件に基づいた切出処理が行われる。したがって、ユーザは、そのままの表示状態で、出発地点Sから探索ルートを追うことができる。
また、西館1階から西館2階の個別切出地図に切り替え(図29に示す階床配置図に一旦戻ってから切り替えてもよいし、図30に示す上矢印ボタン91をタップして直接切り替えてもよい)、西館2階についての個別切出地図を初めて表示させると、西館2階についての探索ルートの開始点(図27に示す開始点b2)を切出基準点Pとする最新切出条件に基づいた切出処理が行われる。すなわち、西館2階のエレベータ降り口を中心とした個別切出地図が表示されることになる。したがって、ユーザが、西館1階のエレベータ乗り口(図26に示す終了点e1)から探索ルートを追って西館2階の表示に切り替えた場合、そのままの表示状態で、開始点b2から探索ルートを追い続けることができる。
なお、リセット処理後に、通常の個別切出地図を初めて表示する際には、基本的な実施形態に従って、初期切出条件に基づく表示を行うようにしてもよいし、上述したルート付き個別切出地図を初めて表示するときと同様に、探索ルートの開始点を切出基準点Pとする最新切出条件を作成するようにしてもよい。
< 5.6 場所コードの取得による地点設定 >
§3では、基本的な実施形態に係るシステムにおける地点設定部100が、図17に示す3通りの方法で出発地点Sを設定する機能と、図22に示す2通りの方法で目的地点Gを設定する機能を有することを説明したが、地点設定の方法は、この他にも様々なバリエーションが考えられる。
ここで述べる変形例は、地点設定の方法として、読み取った場所コードを地点設定に利用する方法を採るものである。たとえば、一次元のコードであるバーコードや、二次元のコードであるQRコードなどは、光学的に読み取ることができる。また、RFIDの技術を利用すれば、ICタグ内に記録したデジタルコードを無線交信によって読み取ることができる。そこで、この変形例を実施するために、施設内の特定の場所を示す場所コードを光学的にもしくは無線交信により読み取る読取装置を更に設けておくようにし、地点設定部100が、この読取装置が読み取った場所コードに基づいて施設内の特定の場所を認識し、認識した場所を出発地点Sもしくは目的地点Gに設定する処理を行えばよい。
このような地点設定方法の利用形態を、具体的な例について説明してみる。たとえば、施設内のレストランの一覧表を掲示した案内板を作成し、これを施設内の所定の場所に設置する場合を考えよう。この場合、案内板の各レストランの情報欄に、当該レストランの位置を示す場所コード(たとえば、建物および階床を特定する識別コードとXY座標値)を、バーコードやQRコードの形式で表示しておくようにする。そうすれば、この案内板を見たユーザが、所望のレストランを目的地に設定する際には、携帯型の電子端末装置200内に設けられた光学的な読取装置により、当該レストランについてのバーコードやQRコードを撮影すればよい。地点設定部100は、読み取られた場所コードに基づいて、当該レストランの位置を認識し、認識した位置を目的地点Gに設定する処理を行うことができる。また、このように案内板を用いる場合には、レストラン等の位置を目的地点Gに設定するとともに、当該案内板の位置を出発地点Sに設定できるように、両地点S,Gを示す場所コードを用意しておき、これを読み取らせるようにしてもよい。
もちろん、場所コードの表示対象は、案内板に限られるものではなく、チラシやパンフレットなどの印刷物に、レストランの諸情報とともにバーコードやQRコードからなる場所コードを表示することもできる。あるいは、いわゆるデジタルサイネージを利用して、広告画面上に表示することもできる。
また、場所コードは必ずしも光学的に読み取り可能な態様で提示する必要はないので、案内板、チラシやパンフレット、販売促進用の物品などに取り付けたICタグに書き込んでおき、RFIDの技術を利用して無線交信によって読み取るようにしてもかまわない。すなわち、ユーザは、携帯型の電子端末装置200をICタグに近づけて、内蔵された無線交信装置により、場所コードの読み取りを行うようにすればよい。
< 5.7 階床地図の形態 >
本発明に係るシステムの階床地図格納部10内に用意される階床地図は、個々の建物の個々の階ごとの構成を示す地図であれば、その形態は特に限定されるものではない。通常、多数の画素の集合体からなるラスター画像データとして個々の階床地図を用意するのが一般的であるが、もちろん、個々の売り場の区画を示す図形などは、ベクター画像データとして与えてもよいし、個々の売り場の名称や種々の案内を示す文字は、文字コードおよびフォントデータという組み合わせで与えてもかまわない。もちろん、各種のデータを異なるレイヤーからなる画像データとして用意してもかまわない。
また、本発明では、階床配置図に利用する階床地図は、比較的解像度の低い画像で十分であるのに対して、個別切出地図に利用する階床地図は、より高い解像度の画像が必要になる。したがって、階床地図格納部10内に、低解像度の階床地図データと、高解像度の階床地図データとを用意しておき、前者を階床配置図に利用し、後者を個別切出地図に利用する、という使い分けを行うようにしてもよい。もちろん、階床地図格納部10内には、高解像度の階床地図データを共通のデータとして用意しておき、階床配置図を作成する際には、画素の間引き処理などを行い、縮小された低解像度画像を得るようにしてもかまわない。