JP5831221B2 - 樹脂溶液キャスティング用フィルム積層体、これを用いたシームレスベルトならびに凸版印刷原版の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂溶液をキャスティングするためのフィルム積層体とこれを用いたシームレスベルトならびに凸版印刷原版の製造方法に関する。
表面に凹凸(レリーフ)を有する樹脂凸版印刷版やフレキソ印刷版などの凸版印刷版が、広く一般に流通・使用されている。多くは、樹脂フィルムや金属からなる基板上あるいは基板上に形成された接着層上に、エラストマー性あるいは熱可塑性の樹脂をベースポリマーとする組成物からなるレリーフを形成する層(以下レリーフ層と呼ぶ)を有している。
基板上あるいは接着剤層上にレリーフ層を形成する方法としては、レリーフ層を構成する樹脂組成物を溶剤に溶解し、溶液の状態で基板あるいは接着層上に直接キャスティングし、溶剤を乾燥除去する方法が広く実施されている(例えば、特許文献1参照)。この方法を用いた場合、樹脂溶液中の溶剤の乾燥除去が、基板と反対側の面からしか行われないため、乾燥に非常に長い時間を有するといったことが生産効率上の課題として挙げられる。また、樹脂溶液中の溶剤が乾燥除去される過程で、樹脂固形分が収縮するため、基板ごとカールさせてしまい、印刷原版としての平坦性を損ねるといった課題も挙げられる。これらの課題に対して、樹脂溶液を直接基板上にではなく、離型性を有した平面に一旦キャスティングし、ある程度乾燥が進行した後に、乾燥途中の樹脂シートを離型平面から剥離し、更にシートの両面から乾燥することが生産効率上有用である。
離型平面上にキャスティングする樹脂シートの製造方法としては、例えば、塩化ビニル樹脂やポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱可塑性樹脂を、ポリエステル等のフィルム上にメラミン樹脂やシリコーン樹脂などを離型剤として塗布した離型フィルム上にキャスティングした後に剥離する方法が挙げられる(例えば、特許文献2〜3参照)。しかしながら、これら方法においては、フィッシュアイなどのフィルム由来の異物あるいは製造工程で混入し得る外部からの異物によって離型層の凹凸を完全に平準化することがすることが困難である上、外部との接触による離型層自身の傷や脱落が発生し易いため、高い表面品位を有するシートが得られない、という課題がある。
また、厚さ50〜90μmのシリコーンゴムを離型層として塗布形成したコンベアベルト状の離型体上に樹脂溶液をキャスティングする方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。この方法によれば、下地の凹凸形状を大幅に平坦化できるという利点がある。一方、樹脂シートを連続して形成する場合、環状の支持体にシリコーンゴムを形成したつなぎ目部分が不可避的に凹凸形状を有し、該部分の乱れた凹凸形状が樹脂シートに周期的に転写されるという課題が残存する。さらに、シリコーンゴムが熱やキャスティング物との接触によって劣化したり、外部的な接触などによりその表面が傷つくことによって、コンベアベルト状の離型体の補修または交換作業を要し、生産効率上課題があった。したがって、凹凸品位に優れる樹脂シートを連続で効率よく形成することは極めて困難であった。
特開平5−313356号公報 特開平11−300896号公報 特公平6−2833号公報 特開2010−234636号公報
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、表面品位に優れる樹脂シートを連続して効率良く製造することを可能とする樹脂溶液キャスティング用フィルム積層体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は主として次の構成を要する。すなわち、樹脂溶液をキャスティングするためのフィルム積層体であって、セパレーターフィルム(A)、粘着剤層(B)、厚さ50〜200μmのベースフィルム(C)、プライマー層(D)、厚さ20〜300μmのシリコーンゴム層(E)およびポリ−4−メチルペンテン−1を主成分とする保護フィルム(F)をこの順に有することを特徴とする樹脂溶液キャスティング用フィルム積層体である。
本発明のフィルム積層体およびシームレスベルトにより、表面品位に優れる樹脂シートを連続して効率良く製造することができる。
シリコーンゴム離型フィルムと環状支持体とを貼り合わせる工程の例を示す概略図である。 溝部分周囲のシリコーンゴム層を厚さ10μm以下の金属箔を用いて保護する工程の例を示す概略図である。 溝部分をプライマーおよびシリコーンゴムにより埋める工程の例を示す概略図である。 溝部分周囲を保護する金属箔を除去する工程の例を示す概略図である。 平坦化用フィルムを介して溝部分をヘラでしごくことにより溝部分を平坦化する工程の例を示す概略図である。 平坦化用フィルムを除去する工程の例を示す概略図である。 シリコーンゴム溶液を塗布することによりさらに溝部分を平坦化する工程の例を示す概略図である。 図1〜図7に記載の工程により作製したシームレスベルトの例を示す概略図である。 シームレスベルト上に樹脂溶液をキャスティングする工程の例を示す概略図である。 ウェット膜を乾燥し、剥離し、得られた樹脂シートをさらに乾燥する工程の例を示す概略図である。 樹脂シートと接着層を有する支持体をラミネートする工程の概略図である。 樹脂シートとカバーフィルムをラミネートする工程の例を示す概略図である。
本発明の樹脂溶液キャスティング用フィルム積層体(以下、単にフィルム積層体ということがある)は、樹脂溶液をキャスティングするためのフィルム積層体であって、セパレーターフィルム(A)、粘着剤層(B)、ベースフィルム(C)、プライマー層(D)、シリコーンゴム層(E)およびポリ−4−メチルペンテン−1を主成分とする保護フィルム(F)をこの順に有する。
本発明におけるセパレーターフィルム(A)は、後述する粘着剤層(B)を保護する機能を有し、後述するシームレスベルトに使用される際には粘着剤層(B)から剥離される。セパレーターフィルム(A)としては、例えば、紙やプラスチックフィルムにフロロシリコーンを剥離剤として塗布したフィルムや、フッ素系樹脂からなるフィルムを挙げることができる。フッ素系樹脂としては、例えば、PTFE(テトラフルオロエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体)、PFA(四フッ化エチレン(C)とパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体)などを挙げることができる。これらのうち、経済的に有利であることや、粘着剤層(B)からの剥離力を所望の値に容易に調整することが可能であることから、フロロシリコーンを離型剤として塗布したポリエステルフィルムが好ましい。セパレーターフィルム(A)の厚さは、フィルム積層体としてロール状に巻かれた際の、特に曲率半径の小さい巻き芯領域におけるフィルムの屈曲によるシリコーンゴム層(E)の変形を抑制する観点から、10〜100μmが好ましく、25〜75μmがより好ましい。
粘着剤層(B)は、後述するシームレスベルトの環状支持体(G)へのフィルム積層体の着脱機能を有する。粘着剤層(B)は、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系粘着剤などにより形成される。これらの中でもシリコーン系粘着剤が好ましく、例えば、50℃以上の温度で10日間以上というような高温かつ長期間の使用環境下における支持体からの剥離力の変化が少なく、後述する環状支持体(G)からシリコーンゴム離型フィルムを剥離した際、環状支持体(G)上に粘着剤が残存しにくい利点がある。後述するシームレスベルトにおける粘着剤層(B)と環状支持体(G)との剥離力は、例えば、粘着剤層(B)を構成する粘着剤の種類によって調整することができ、求められる剥離力に応じて粘着剤を適宜選択することが好ましい。粘着剤層(B)の厚さは、20〜40μmが好ましい。
ベースフィルム(C)は、フィルム積層体の骨格的支持体として機能する。ベースフィルム(C)としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムを挙げることができる。これらの中で、耐熱性、機械的特性、寸法安定性に優れているポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルム、ポリエチレン−α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルムが好ましい。これらを2種以上積層してもよい。これらのプラスチックフィルムは、常法によって製造されたものを用いることができる。本発明において、ベースフィルム(C)の厚さは50〜200μmである。ベースフィルム(C)の厚さが50μm未満であると、シームレスベルトに使用する場合に、セパレーターフィルム(A)と保護フィルム(F)を剥離したフィルム積層体(以下、本発明のフィルム積層体からセパレーターフィルム(A)および保護フィルム(F)を剥離した積層体を、シリコーンゴム離型フィルムという。)を後述する環状支持体(G)へ貼り付ける際の作業性が低下するため、シリコーンゴム層(E)の表面品位が低下する。一方、ベースフィルム(C)の厚さが200μmを超えると、シームレスベルトに使用する場合に可撓性が不十分となる。150μm以下が好ましい。
また、後述するプライマー層(D)の塗布性や反応性の観点から、ベースフィルム(C)にはコロナ処理や薬液処理が施されていてもよい。ベースフィルム(C)のうち、プライマー層(D)側の面の表面張力は、55mN/m以上が好ましく、60mN/m以上がより好ましい。
ベースフィルム(C)の表面張力を高くすることによって、プライマー層(D)との密着力が高くなることに伴い、シリコーンゴム層(E)のベースフィルム(C)への密着性が高くなり、樹脂溶液をキャスティングした場合のフィルム積層体の連続使用性が向上する。なお、ベースフィルム(C)のうち、プライマー層(D)側の面の表面張力は、室温23℃相対湿度50%雰囲気下で各表面張力値を測定可能な市販の濡れ試薬を対象表面に塗布し、塗布後5秒後に試薬が水滴状にはじいているか、面状を保っているかを観察することにより求めることができる。
プライマー層(D)は、ベースフィルム(C)とシリコーンゴム層(E)との間に介在し、両者を実用に耐える程度に接着させるものであれば、いかなる組成のものでもよい。例えば、シラン化合物や有機チタン、有機ジルコニウムなどの有機金属化合物等がプライマー層(D)に好ましく用いられる。
シラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラノルマルプロポキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、n−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。有機チタンとしては、例えば、テトラメトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラノルマルプロポキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート、テトラノルマルブトキシチタネート、テトライソブトキシチタネート、ジイソプロポキシ時ノルマルブトキシチタネート、ジターシャリーブトキシジイソプロポキシジイソプロポキシチタネート、テトラターシャリーブトキシチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラステアリルアルコキシチタネート、あるいはこれらのキレート化合物等を挙げることができる。有機ジルコニウムとしては、例えば、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウム、テトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウム、テトラアセチルアセトネート等を挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。その中でも、プライマー層(D)の製膜性が高く、ひび割れやこれに起因するベースフィルム(C)とシリコーンゴム層(E)との剥離を抑制する観点から、縮合により上記有機チタンまたはそのキレート化合物が2〜20量体になった有機チタンオリゴマーを主成分するものが好ましい。ここで、主成分とはプライマー層(D)全体の50重量%以上を構成する成分を指す。
プライマー層(D)の厚さは、プライマー層(D)の可撓性を向上させ、ひび割れやこれに起因するベースフィルム(C)とシリコーンゴム層(E)との剥離を抑制する観点から、0.1〜2.0μmが好ましく、0.2〜1.0μmがより好ましい。
シリコーンゴム層(E)は、樹脂溶液のキャスティング時に樹脂溶液と直接接触する離型層としての役割を果たすものであり、プライマー層(D)を介してベースフィルム(C)と接着される。シリコーンゴム層(E)は、硬化後の平均単位式:RSiO(4−x)/2で表されるオルガノポリシロキサンから形成される。上記式中、Rは置換または非置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、へキセニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜20のシクロアルキル基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜20のアラルキル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。加熱によって付加重合するいわゆる加熱硬化タイプや、大気中の湿気と反応して縮重合するいわゆる室温硬化タイプのいずれでもよく、別々の主剤と硬化剤を混合して硬化させる2液硬化型や、混合の必要がない一液硬化型のいずれでもよい。
本発明において、シリコーンゴム層(E)の厚さは20〜300μmである。シリコーンゴム層(E)の厚さが20μm未満であると、樹脂溶液のキャスティングによって、シリコーンゴム層(E)とプライマー層(D)を介したベースフィルム(C)との接着耐久性が低下するとともに、ベースフィルム(C)におけるフィッシュアイなどの異物によって、シリコーンゴム層(E)の表面品位の低下を招く。25μm以上が好ましい。一方、シリコーンゴム層(E)の厚さが300μmを越えると、巻き取り性が低下し、シリコーンゴム層(E)の表面品位が低下する。150μm以下が好ましい。
保護フィルム(F)は、シリコーンゴム層(E)を保護する機能を有し、後述するシームレスベルトに使用される際にはシリコーンゴム層(E)から剥離される。通常、硬化後のシリコーンゴム層(E)はそれ自身が離型性を有するため、保護目的のみであれば、ベースフィルム(C)と同じくポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム等のプラスチックフィルムを使用することが可能である。しかしながら、20μm以上の厚膜のシリコーンゴム層(E)の塗布乾燥工程において、その厚さによって硬化が100%進行し切らない場合があり、保護フィルム(F)を剥離する際に、シリコーンゴム層(E)が付着して共に剥離される懸念があることから、上記に挙げたフィルムは保護フィルムとしては不向きである。また、上記フィルムに離型剤を塗布すると、シリコーンゴム層(E)上に離型剤が転写し、キャスティングした樹脂溶液のウェット膜にはじきが発生したり、乾燥後の樹脂シート表面への再転写が懸念されるため、離型剤を使用することは好ましくない。この理由から、フィルム自体が上記フィルムと比較してより離型性を有する素材が保護フィルム(F)として好適である。さらに、保護フィルム(F)積層後も進行するシリコーンゴム層(E)の硬化に伴う縮合反応に必要な水分を外部から供給する観点から、本発明においては、高い離型性に加えて高い透湿性を有する素材、すなわち、ポリ−4−メチルペンテン−1を主成分とする保護フィルム(F)を用いる。ここで、主成分とは保護フィルム(F)全体の50重量%以上を構成する成分を指す。保護フィルム(F)の厚さは、シリコーンゴム層(E)を保護する目的から、10〜100μmが好ましく、20〜75μmがより好ましい。
本発明のフィルム積層体は、例えば、以下の方法により製造することができる。はじめに、ベースフィルム(C)の片面に粘着剤層(B)を形成し、セパレーターフィルム(A)をラミネートする。粘着剤層(B)は、例えば、粘着剤やその溶液を塗布し、必要に応じて乾燥することにより、形成することができる。その後、ベースフィルム(C)の反対の面に、プライマー層(D)を塗布・乾燥によって形成し、一旦ロール状に巻き取っておく。再び積層フィルムを繰り出し、シリコーンゴム層(E)を形成し、保護フィルム(F)をラミネートすることにより、本発明のフィルム積層体を得ることができる。シリコーンゴム層(E)は、例えば、シリコーンゴム溶液を塗布し、必要に応じて乾燥することにより、形成することができる。得られたフィルム積層体は、ロール状に巻き取ることが好ましい。
本発明のフィルム積層体は、セパレーターフィルム(A)を剥離し、環状且つ帯状の支持体(以下環状支持体(G)と呼ぶ)へ粘着剤層(B)により貼り付けるとともに、保護フィルム(F)を剥離し、シリコーンゴム層(E)を最外層とした上で、環状支持体(G)を回転させながら樹脂溶液をキャスティングすることに用いられるが、フィルム積層体の繋ぎ目部分のシームレス処理が、樹脂シート表面の凹凸品位ならびに連続生産性に大きく影響するため、非常に重要となる。以下に本発明のフィルム積層体を用いたシームレスベルトとその製造方法の詳細について例を挙げて説明する。なお、以下の説明において、本発明のフィルム積層体からセパレーターフィルム(A)および保護フィルム(F)を剥離した積層体を、シリコーンゴム離型フィルムという。
<本発明のフィルム積層体を用いたシームレスベルトの作製方法>
(1)シリコーンゴム離型フィルムと環状支持体(G)と貼り合わせる工程
図1にシリコーンゴム離型フィルムと環状支持体とを貼り合わせる工程の例を示す。本発明のフィルム積層体からセパレーターフィルム(A)を一部剥離し、むき出しになった粘着剤層(B)を、環状支持体(11)に貼り付け固定し、貼り合わせの始点とする。なお、図1〜7においては、環状支持体(11)として環状構造の一部を示している。次いで、セパレーターフィルム(A)と保護フィルム(F)を共に剥離巻き取りすると同時に環状支持体(11)を回転させながら、フィルム積層体の粘着剤層(B)を環状支持体(11)の回転方向と反対方向へ貼り付けていく。この際、環状支持体(11)に貼り付けたシリコーンゴム離型フィルム(12)がエアを噛み込まないように、ゴム製のニップローラーで適度に貼り付け面を加圧し、エアを外部に逃がすことが好ましい。シリコーンゴム離型フィルム(12)が支持体を一周する直前で貼り付けを終了し、シリコーンゴム離型フィルム(12)を回転方向と垂直にカットし、貼り付けたシリコーンゴム離型フィルム(12)の両端同士が1〜5mmの幅で向かい合うように溝(13)を形成させる。
(2)貼り合わせの始点と終点との間に生じる溝部分を埋める工程
図2に溝部分周囲のシリコーンゴム層を厚さ10μm以下の金属箔を用いて保護する工程の例を示す。シリコーンゴム離型フィルム(12)の貼り付け後に、前述の溝(13)を形成している両端部に沿って、幅2〜10cmの金属箔(14)を、これの側辺とシリコーンゴム離型フィルム(12)の端部がちょうど重なるように密着配置する。このとき、金属箔(14)の側辺が溝(13)の内部にはみ出したり、あるいはその側辺と溝(13)端部に隙間が生じ、シリコーンゴム層(E)が最外層にならないように完全に養生する。金属箔(14)の材質は特に限定がないが、密着配置した際にシワ等になることを防止するため、アルミニウム、スチール、ステンレスなどが好ましい。金属箔(14)の厚さは、溝(13)部分に埋め込むシリコーンゴムの残存量を少なくするため、10μm以下が好ましい。一方、溝(13)部分への配置に際してシワの発生を抑制するために、3μm以上が好ましい。
次に、図3に溝部分をプライマーおよびシリコーンゴムにより埋める工程の例を示す。溝(13)部分に本発明の積層フィルムにおけるプライマー層(D)を形成するプライマーを乾燥後の膜厚が0.2〜1.0μmになるように塗布・乾燥し、プライマー層(15)を形成する。プライマー層(15)が形成された溝(13)部分に、無溶剤の室温硬化型のシリコーンゴム(16)を塗り込み、ヘラ(17)でしごくことによって、溝部分を完全に埋める。無溶剤のシリコーンゴム(16)の粘度は、5〜40Pa・sが好ましく、10〜30Pa・sがより好ましい。5Pa・s以上であればしごく等の作業によって容易に変形することを防止でき、40Pa・s以下であれば、溝(13)をデッドスペースなく完全に埋めることが容易である。このような粘度を有するシリコーンゴムとして、例えば、東レダウコーニング(株)製“SE”シリーズなどのシーリング用途のシリコーンゴムなどを用いることができる。
(3)溝部分を平坦化する工程
次に、図4に溝部分周囲を保護する金属箔を除去する工程の例を、図5に平坦化用フィルムを介して溝部分をヘラでしごくことにより溝部分を平坦化する工程の例を、それぞれ示す。溝(13)部分両端の金属箔(14)を剥離することにより除去し、溝(13)部分のみにシリコーンゴム(16)が埋められている状態にする。この際、シリコーンゴム(16)の高さは、金属箔(14)の厚さの分だけシリコーンゴム離型フィルム(12)より高い状態となっている。この状態の溝(13)部分に平坦化用フィルム(18)を配置し、再度フィルムを介して溝部分をヘラ(17)でしごくことによって、図5に示すように溝(13)部分を平坦化することができる。平坦化用フィルム(18)は、溝(13)部分を埋めたシリコーンゴム(16)をこのフィルムを配置したまま硬化させ、硬化後に剥離可能とするため、ポリ−4−メチルペンテン−1を主成分とするフィルムであることが好ましい。ここで、主成分とは平坦化用フィルム全体の50重量%以上を構成する成分を指す。平坦化用フィルムの厚さは、ヘラでしごく際の湾曲を抑制するため、100μm以上が好ましい。
(4)平坦化用フィルムを除去し、シリコーンゴム溶液を塗布してさらに溝部分を平坦化する工程
図6に平坦化用フィルムを除去する工程の例を示す。ヘラ(17)でしごく作業後は、平坦化用フィルム(18)は直ちに剥離せず、少なくとも30分間以上放置し、シリコーンゴム(16)の表面タックが事実上なくなってから剥離することが好ましく、表面が乱れずに平坦性が確保される。実際には、しごく作業でごく僅かに溝部分の外側に押し出されるシリコーンゴムがあるが、ごく薄く延ばされているため、表面段差は実質上ゼロとみなしてよい。
図7にシリコーンゴム溶液を塗布することによりさらに溝(13)部分を平坦化する工程の例を示す。仕上げとして、本発明のフィルム積層体におけるシリコーンゴム層(E)を形成するシリコーンゴム(19)の溶液を平坦化した溝(13)部分を覆うように塗布・乾燥することによってつなぎ目部分の定着・シームレス化が完了する。この際、溝部分(13)とシリコーンゴム離型フィルム(12)の段差が5μm以下になることが好ましい。
以上の工程により作製したシームレスベルトの例を図8に示す。駆動ドラム(20)と従動ドラム(21)を擁した環状支持体(11)にシリコーンゴム離型フィルム(12)が貼り付けられ、溝部分(13)が補修・平坦化されたシームレスベルト(22)である。
以上の方法を以て、表面品位に優れる樹脂シートの連続生産に適したシームレスベルトが完成する。このシームレスベルトのシリコーンゴムによって補修された溝(13)部分のことを、以降、つなぎ目補修部分(H)と呼ぶ。
本発明のシームレスベルトは、シリコーンゴム離型フィルムの環状支持体(G)への定着維持(キャスティングされた樹脂シートを剥離する力によって、シリコーンゴム離型フィルムが環状支持体(G)から剥がれないこと)の観点から、粘着剤層(B)と環状支持体(G)との剥離力は、100mN/cm以上が好ましく、200mN/cm以上がより好ましく、300mN/cm以上がより好ましい。一方、シームレスベルトにおいて、シリコーンゴム離型フィルムの交換作業性の観点から、粘着剤層(B)と環状支持体(G)の剥離力は、1000mN/cm以下が好ましく、750mN/cm以下がより好ましい。ここで、粘着剤層(B)と環状支持体(G)との剥離力は、引張試験機を用いて200mm/分の速度で180°剥離した場合の剥離力を指す。粘着剤層(B)の剥離力は、粘着剤の種類によって調整することができる。
次に、このシームレスベルトを用いて樹脂溶液をキャスティングする連続樹脂シートの製造方法の詳細について例を挙げて説明する。本発明の連続樹脂シートの製造方法は、本発明のシームレスベルトを回転させながらシームレスベルト上に樹脂溶液をキャスティングし、乾燥し、剥離することを特徴とする。樹脂溶液は、ポリマーあるいはこれに加えてモノマーや可塑剤などの各種添加剤を溶媒に溶解もしくは分散させた液状混合物のことを指す。口金から連続吐出され、シリコーンゴム層(E)を著しく膨潤させたり脱落させたりすることなくキャスティング可能であれば、樹脂溶液の粘度等の制限は特にない。
図9にシームレスベルト上に樹脂溶液をキャスティングする工程(キャスティング工程)の例を示す。キャスティング工程では、樹脂溶液を本発明のシームレスベルト(22)にキャスティングして、ウェット膜(41)を形成する。このウェット膜(41)は、溶媒除去後の樹脂シートの厚さ精度に大きく関係するので、膜厚精度よくキャスティングされることが必要である。そのため、樹脂溶液は幅方向に均一に広がるように設計された口金(34)を介して吐出されることが好ましい。このような口金としてTダイ、コートハンガーダイ、フィッシュテールダイ、スリットダイコーターなどが挙げられる。これらの中でも、コートハンガーダイおよびフィッシュテールダイは、口金内の異常滞留が少ないので、樹脂溶液を吐出する口金として特に好ましく用いられる。
口金(34)へ所定量で一定に送液する方法としては、例えば、(i)保管容器(31)から温度管理された送液ライン(32)を通じて流体運送機(33)に樹脂溶液を強制供給し、(ii)流体運送機(33)から一定量口金へ送液する方法が挙げられる。送液ライン(32)としては、熱媒や温水が循環する二重管や、リボンヒーターを巻き付けた単管などが好ましく用いられる。
(i)保管容器(31)から流体運送機(33)に樹脂溶液を強制供給する方法として、例えば、樹脂溶液をアスピレーターなどで吸引する方法、樹脂溶液の保管容器(31)を流体運送機より高い位置に配置し、重力の落下により自然供給する方法、保管容器(31)を加圧して樹脂溶液を圧送する方法などを挙げることができる。
(ii)流体運送機(33)としては、例えば、モーノポンプ、タービンポンプ、ボリュートポンプ、多段ポンプ、軸流ポンプ、ピストンポンプ、ブランジャーポンプ、ダイアグラムポンプ、ギアポンプ、ナッシュポンプ、摩擦ポンプ、アシッドエッグ、噴出ポンプなどが挙げられ、送液量や液の粘度、配管内圧等によって適宜選択できる。
また、流れ方向に均一な膜厚を有するウェット膜(41)を得るために、シームレスベルト(22)は、速度制御された搬送手段、モーターを配した駆動ロールによって一定速度で搬送されることが好ましい。
ウェット膜(41)を樹脂シートとしてシームレスベルト(22)から剥離するために、ウェット膜(41)を乾燥し、溶媒を揮発させる。ウェット膜(41)は、乾燥時間が長いほど溶媒が揮発するので、シート強度が高くなり、独立したシートを形成しやすくなる。しかし、ウェット膜(41)の乾燥面は、シームレスベルト(22)と反対側の面のみで、溶媒の揮発効率が低いので、シームレスベルト(22)上における乾燥は、シート強度が得られる程度に留めることが好ましい。この際の乾燥温度は、溶媒の突沸によるシート内への気泡の発生を抑制するため、ウェット膜(41)に含まれる溶媒の沸点より低い温度であることが好ましい。
図10にウェット膜をシームレスベルトから乾燥・剥離し、さらに樹脂シート単体で乾燥する工程の例を示す。シームレスベルト(22)からウェット膜(41)を剥離した後に、乾燥手段(42)により独立した樹脂シート(51)から溶媒を揮発させる工程をさらに含むことが好ましい。独立した樹脂シート(51)は両面が覆われておらず、両面乾燥が可能となる。両面乾燥することで、効率よく溶媒を揮発除去することができる。この際の乾燥温度も、溶媒の突沸によるシート内への気泡の発生を抑制するため、ウェット膜(41)に含まれる溶媒の沸点より低い温度であることが好ましい。
このようにして得られた単体の樹脂シートは、目的によって各々の使用の仕方が可能であるが、樹脂凸版印刷原版あるいはフレキソ印刷原版などの凸版印刷原版のレリーフ層として用いる場合の製造方法についてさらに述べる。
この場合は、得られた樹脂シートと、接着層を有する支持体とをラミネートしてシート/接着層/支持体の積層体を形成する。支持体は、寸法安定性を付与する目的や、柔軟なシートに対して適度な腰の強さを与えて取扱性を改善する目的で設置される。
図11に樹脂シートと接着層を有する支持体をラミネートする工程の例を示す。樹脂シート(51)と接着層を有する支持体(52)とをラミネートする方法としては、例えば、樹脂シート(51)と接着層を有する支持体(52)とを直接圧着する方法、溶媒あるいは樹脂シートを膨潤させる薬液、樹脂シートと親和性のあるモノマーなどで樹脂シートあるいは接着層を膨潤させた後に、両者を圧着する方法が挙げられる。圧着手段としては、例えば、プレス機でプレスする方法、カレンダリングロール(54)でニップする方法が挙げられ、これら圧着は例えばプレス機やロールを適当な温度、例えば100℃に加熱した条件で行ってもよい。
本発明における支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定性を有するものが好ましく、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などのポリエステル、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたエポキシ樹脂やフェノール樹脂などが挙げられる。なかでも、PETフィルムやPENフィルム、スチール基板が好ましく用いられる。基板の厚さは50〜350μmが好ましく、75〜250μmがさらに好ましい。
接着層は1層でもよいし、2層以上の複層であってもよい。樹脂シートとの接着を担う材料と支持体との接着を担う材料の極性、例えば溶解度パラメータ(SP値)の差が小さければ、それぞれの材料が相溶しやすく、単層で接着層を形成できる。一方、例えば部分ケン化ポリビニルアルコール(SP値12.6)とポリエステル樹脂(SP値10.7)のようにSP値の差が大きな場合は、相溶性が低く、両者を混合することは困難である。そのような場合には、相溶性改善のために両者の中間の極性の材料(例えばフェノール樹脂)を相溶化剤として追加してもよいし、接着層を複層にしてもよい。
接着力とは、支持体/接着層間および接着層/樹脂シート間の接着力の両者を意味する。支持体/接着層間の接着力は、支持体/接着層/樹脂シートからなる積層体から接着層および樹脂シートを400mm/分の速度で180°剥離する際、サンプル1cm幅当たりの剥離力が1.0N/cm以上または剥離不能であることが好ましく、3.0N/cm以上または剥離不能であることがより好ましい。その際、剥離界面が支持体/接着層間であるか接着層/樹脂シート間であるかは特に問題としない。
さらに必要に応じて、樹脂シートとカバーフィルムとをラミネートする工程を含んでもよい。カバーフィルムは、樹脂シート表面への傷・凹みを防止する目的で、あるいは柔軟な樹脂シートに対して適度な腰の強さを与えて取扱性を改善する目的で設置される。樹脂シートは製版工程を経た後にレリーフが造形される部分となり、そのレリーフの頂部表面はインキ着肉部として機能するためである。
図12に樹脂シートとカバーフィルムをラミネートする工程の例を示す。樹脂シート(51)とカバーフィルム(62)を加熱したカレンダリングロール(54)などにより圧着する。樹脂シート(51)とカバーフィルム(62)の間に、樹脂シートと同一あるいは類似した樹脂溶液(61)を流延して挟み込んだ後に、クリアランスを均一に制御したカレンダリングロール(54)により圧着することが好ましく、ラミネート後の厚みをより均一にすることができる。この際、必要に応じてカレンダリングロール(54)を加熱してもよい。流延された樹脂溶液(61)は、経時で樹脂シートと一体化し、印刷版のレリーフ層(63)の表層部分を形成する。樹脂溶液(61)を流延しない場合は、樹脂シート(51)がレリーフ層(63)となる。また、上記カレンダリングロールを用いる圧着の他、樹脂シート(51)表面に少量の溶媒を塗布した後にカバーフィルム(62)を密着させる方法や、樹脂シート(51)とカバーフィルム(62)の間に、樹脂シートと同一あるいは類似した樹脂溶液を流延した後にカバーフィルム(62)を密着させる方法によっても、両者をラミネートすることができる。
カバーフィルムは、薄すぎると傷・凹み防止の効果が低減し、厚すぎると取り扱いが不便になり、コスト高にもなる。よって、カバーフィルムの厚さは25〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。
カバーフィルムは、印刷版の保護フィルムとして公知の材料、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)などのポリエステルフィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)などのポリオレフィンフィルムを用いることができる。またフィルムの表面はプレーンでもよいしマット化されていてもよい。
樹脂シート上にカバーフィルムを設ける場合、カバーフィルムは樹脂シートから剥離可能でなければならない。カバーフィルムが剥離不能あるいは困難である場合や、逆に樹脂シートの接着力が弱く剥がれやすい場合は、両者の間にスリップコート層を設け、剥離力を適度に調整してもよい。樹脂シート/(スリップコート層)/カバーフィルムの積層体から、カバーフィルムを200mm/分の速度で180°剥離する際、サンプル1cm幅当たりの剥離力が5〜200mN/cmであることが好ましく、10〜150mN/cmであることがさらに好ましい。5mN/cm以上であれば、作業中にカバーフィルムが剥離することなく作業でき、200mN/cm以下であれば、無理なくカバーフィルムを剥離することができる。スリップコート層を設ける場合は、カバーフィルムを剥離した際、スリップコート層が樹脂シート側に残存することが好ましい。この場合、スリップコート層が印刷原版としての最表層に位置し、画像形成用のネガフィルムを配置する時の粘着防止の役割を担うことから、スリップコート層はポリビニルアルコールやメチルセルロースなどの樹脂で構成されることが好ましい。また、ネガフィルムを介しての露光を実施した際の紫外光の遮光部への進入を低減するため、スリップコート層の厚さは0.5〜3μmが好ましい。
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。実際の独立した連続樹脂シートの製造には、回転駆動するシームレスベルトを覆うように熱風などの媒体を用いた乾燥炉が配置され、キャスティングした樹脂溶液の乾燥を連続して行うものであるが、本発明では各項目において以下のように評価を実施した。
<各種評価方法>
(1)粘着剤層(B)の剥離力測定
粘着剤層(B)の環状支持体(G)からの剥離力の指標として、環状支持体(G)の代わりに同じ材質(SUS304)の平板を用いて、粘着剤層(B)の平板からの剥離力を評価した。フィルム積層体を幅5cm×長さ20cmのサイズに断裁し、セパレーターフィルム(A)を剥離して露出した粘着剤層(B)を環状支持体(G)と同じ材質の1mm厚の平板に貼り付け、(株)東洋ボールドウィン製テンシロン万能型引張試験機“UTM−4−100”に装着した。フィルム積層体を平板から長さ方向に200mm/分の速度で180°剥離し、その剥離力を測定した。
(2)ベースフィルム(C)の表面張力測定
室温23℃相対湿度50%の雰囲気下で、和光純薬工業(株)製ぬれ張力試験用試薬“No.40.0”〜“No.70.0”を、ベースフィルムのプライマー層側の面に薄く塗工し、5秒経過した後の塗工液面の状態を観察した。塗工された試薬がそのままの面状を維持しているか、水滴状にはじいているかを観察することにより濡れ性を評価した。試薬の番手は表面張力(単位:mN/m)の値を示し、低い番手の試薬から順に塗工し、塗工面のはじきが現れなくなった最初の番手の試薬の示す表面張力の値とした。
(3)シリコーンゴム層(E)の表面品位評価
偏光板を上下で偏光角を直角に交わらせ(クロスニコル状態)、該偏光板の間にフィルム積層体作製用のベースフィルム(C)を挟み込み、10倍の拡大鏡にて輝点が30μmφ(円相当径)以上のフィッシュアイ異物を予め50個分マーキングしておいた。このベースフィルムを用いてフィルム積層体を作製し、得られたフィルム積層体上に樹脂溶液をキャスティング・乾燥した。得られた樹脂シートについて、マーキングされた50カ所に対応する箇所を肉眼で観察し、凹凸形状の異常が観られる箇所を計数した。異常箇所が5個以下であれば、表面品位は良好であると判断できる。異常箇所が6〜9個であれば表面品位はやや劣る、10個以上あれば表面品位は劣ると判断できる。
(4)保護フィルム(F)の剥離性評価
本発明のフィルム積層体の製造過程や取り扱いにおいて保護フィルム(F)の剥離の有無、あるいはフィルム積層体から保護フィルム(F)を剥離した際の剥離抵抗の有無を評価した。剥離する前にすでに剥離があったり、剥離する際の抵抗があった場合は、シリコーンゴム層(E)の表面品位を損なうおそれがある。
(5)シームレスベルトの連続キャスティング性評価
(i)シームレスベルトのつなぎ目補修部分(H)の表面段差評価
厚さ1mmのSUS304の平板を用い、環状支持体に本発明のシリコーンゴム離型フィルムを貼り付けした際と同じ状態になるように、シリコーンゴム離型フィルムを幅2mmの直線状の溝ができるように隣り合わせて貼り付け、溝に沿って金属箔を貼り付け、溝を無溶剤の室温硬化型のシリコーンゴムで埋め、ヘラでしごいた。ついで金属箔を剥離除去した後、溝部分を三井化学東セロ(株)製フィルム“オピュラン”(登録商標)X−88B(厚さ100μm)で覆い、フィルム越しにヘラでしごき、30分間放置した後これを剥離除去することによって、補修処理を実施した。触診式表面段差計を用いて補修箇所周辺の断面形状を観察し、高低差を計測して表面段差とした。高低差が5μm以下であれば、表面段差は良好(○)であると評価した。5〜10μmであれば△、10μm以上であれば×と評価とした。
(ii)シリコーンゴム層(E)の連続使用性評価
回転駆動のためのモーターを有する直径15cmの駆動ロールと直径15cmの従動ロールで張られた、厚さ1mm、幅600mm、全長5.5mのSUS304製のコンベアベルトに、上記(5)(i)に記載の方法を用いてシリコーンゴム離型フィルムを貼り付けた。シリコーンゴム離型フィルムを貼り付けたコンベアベルトを1m/分のスピードで回転させ、シリコーンゴム離型フィルムへ繰り返し屈曲応力を与えた。コンベアベルトからシリコーンゴム離型フィルムを剥離し、これを幅3cm×長さ20cmのサイズに断裁し、これと同じ面積の厚さ0.2mmのSUS304平板に再度貼り付け、キャスティングする樹脂溶液に浸漬し、キャスティング温度にて7日間保持した。取り出した後のSUS304平板に貼り付けたシリコーンゴム離型フィルムの表面から樹脂溶液を除去した後、中央部分に幅方向と平行にノッチカッターによる直線状の切れ込みを入れ、さらにこの切れ込みから両側に2cmの位置にも同様の切れ込みを入れ、評価サンプルとした。
(株)大栄科学精器製作所製摩擦堅牢度試験機“RT−300”を用い、JIS0849に準拠した形で、試験布に旭化成せんい(株)製“ハイゼガーゼ”NT−4に用い、45R摩擦子で荷重300gをかけながら30往復/分の速度で3本の切れ込みの入った評価サンプルを長手方向に擦り、表面の変化を観察した。擦りによって切れ込みに削れや捲れが生じ、3cmの長さ全体に渡って本来の幅から広くなるまでの往復回数を計測した。計測された擦り回数が500回以上であれば、シリコーンゴム層の連続使用性は良好(○)であると評価した。200〜499回であれば△、199回以下であれば×と評価した。
(iii)シームレスベルトのつなぎ目補修部分(H)連続使用性評価
幅3cm×長さ20cmの厚さ0.2mmのSUS304平板に対して、本発明のシリコーン離型フィルムをこの中央部分に幅方向と平行になるように幅2mmの隙間を空けて全面に貼り付け、上記(5)(i)と同じ作業手順によって溝を補修処理することにより評価サンプルを作製した。このサンプルに上記(5)(ii)と同様の応力を与えるために、曲率半径7.5cmの屈曲ならびに解放の繰り返し応力を400回与えた後、キャスティングする樹脂溶液に浸漬し、キャスティング温度にて7日間保持した。取り出した後のサンプルの表面から樹脂溶液を除去した後、(株)大栄科学精器製作所製摩擦堅牢度試験機“RT−300”を用い、上記(5)(ii)と同じ条件で擦り、剥がれ等の表面の変化を観察した。擦りによって削ずれや捲れが発生するまでの往復回数を計測し、計測された擦り回数が500回以上であれば、補修部分の連続使用性は良好(○)であると評価した。200〜499回であれば△、199回以下であれば×と評価した。
(6)シームレスベルトを用いて得られた樹脂シートのフレキソ印刷原版適用性評価
10cm×10cmのフレキソ印刷原版からカバーフィルムを剥離し、感度測定用グレースケールネガフィルムおよび150線2%の網点を全面に有する画像再現性評価用ネガフィルムを真空密着させ、紫外線低圧水銀灯でグレースケール感度16±1段となる条件で露光した(主露光)。その後、現像液温25℃のブラシ式現像装置により現像し、60℃で10分間乾燥した後、さらに紫外線低圧水銀灯で主露光と同条件で後露光し、画像再現性評価用印刷版を得た。得られた印刷版について、以下の方法で網点の評価をした。
樹脂シートがシームレスベルトのつなぎ目補修部分(H)を通過した部分とそれ以外の部分において、網点最頂部の直径をキーエンス(株)製レーザー顕微鏡により測定した。網点最頂部直径の差が2.0μm以内であれば、フレキソ印刷原版適用性は良好(○)であると評価した。2.0〜2.9μmであれば△、3.0μm以上であれば×と評価した。
<接着層を塗布した印刷原版用支持体1の作製>
東洋紡績(株)製の飽和ポリエステル樹脂のトルエン溶液“バイロン”(登録商標)31SS260重量部および和光純薬工業(株)製のベンゾインエチルエーテル“PS−8A”2重量部の混合物を70℃で2時間加熱後30℃に冷却し、エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート7重量部を加えて2時間混合した。さらに、日本ポリウレタン工業(株)製の多価イソシアネート樹脂の酢酸エチル溶液“コロネート”(登録商標)3015E25重量部および住友スリーエム(株)製の工業用接着剤“EC−1368”14重量部を添加し、第一接着層用の塗工液組成物を得た。
日本合成化学工業(株)製のポリビニルアルコール“ゴーセノール”(登録商標)KH−17(けん化度78.5〜81.5mol%)50重量部を日本アルコール(株)製のアルコール混合物“ソルミックス”(登録商標)H−11 200重量部に70℃で2時間溶解させた後、日油(株)製グリシジルメタクリレート“ブレンマー”(登録商標)G1.5重量部を添加して1時間混合し、さらに(ジメチルアミノエチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸=67/32/1)共重合体3重量部、チバ・ガイギー(株)製ベンジルメチルケタール“イルガキュア”(登録商標)651、共栄社化学(株)製のプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物“エポキシエステル”70PA 21重量部およびエチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート20重量部を添加して90分間混合し、50℃に冷却後、大日本インキ化学工業(株)製パーフルオロアルキル基含有オリゴマー“メガファック”(登録商標)F−470を0.1重量部添加して30分間混合して第2接着層用の塗工液組成物を得た。
支持体として用いる厚さ188μmの東レ(株)製ポリエステルフィルム“ルミラー”(登録商標)#188S10上に、第1接着層用の塗工液組成物を乾燥後膜厚が30μmとなるようにコンマコーターで塗布した後、内温180℃の全長15mの熱風乾燥炉を5m/分の速度で通過させて乾燥した後、その上に第2接着層用の塗工液組成物を乾燥後膜厚が18μmになるようにコンマコーターで塗布し、内温160℃の全長15mの熱風乾燥炉を5m/分の速度で通過させて乾燥した。最後にセパレーターフィルムとして厚さ25μmの東レ(株)製ポリプロピレンフィルム“トレファン”(登録商標)2500H#30をラミネートして巻き取り、セパレーターフィルム/第2接着層/第1接着層/支持体の積層体からなる接着層を塗布した印刷原版用支持体1を得た。
第1接着層は、主原料がポリエステル樹脂であり、支持体であるポリエステルフィルムと類似の組成であるため、支持体と良好な接着力を有する。第2接着層は主原料がポリビニルアルコールであるため、同じくポリビニルアルコールを主原料とする後述の樹脂シートに対して良好な接着力を有する。第1接着層と第2接着層は、両層ともに(メタ)アクリレートモノマーを含有しており、両層の接着力は良好である。
<スリップコート層を塗布した印刷原版用カバーフィルム1の作製>
日本合成化学工業(株)製のポリビニルアルコール“ゴーセノール”AL−06(けん化度91〜94mol%)4重量部を水55重量部、メタノール14重量部、n−プロパノール10重量部およびn−ブタノール10重量部の混合溶液に溶解させ、スリップコート層用の塗工液組成物を得た。
厚さ100μmで両面の表面粗さRaが0.3μmの東レ(株)製マット化ポリエステルフィルム“ルミパール#100”上に、上記スリップコート層用の塗工液組成物をグラビアコーターで乾燥後膜厚が1.0μmになるように塗布し、内温110℃の全長20mの熱風乾燥炉を40m/分の速度で通過させて乾燥し、スリップコート層を塗布した印刷原版用カバーフィルム1を得た。
<キャスティング樹脂溶液の作製>
(1)親水性ポリアミド樹脂1の作製
ε−カプロラクタム10重量部、N−(2−アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸のナイロン塩90重量部および水100重量部をステンレス製オートクレーブに投入し、内部の空気を窒素ガスで置換した後に180℃で1時間加熱し、次いで水分を除去し、相対粘度(ポリマー1gを抱水クロラール100mlに溶解し、25℃で設定した粘度)が2.50の親水性ポリアミド1を得た。
(2)変性ポリビニルアルコール樹脂1の作製
冷却管をつけたフラスコ中に、日本合成化学工業(株)製部分ケン化ポリビニルアルコール“ゴーセノール”KL−05(けん化度78.5〜82.0mol%)50重量部、無水コハク酸2重量部およびアセトン10重量部を入れ、60℃で6時間加熱した後、冷却管を外してアセトンを揮発させた。その後、100重量部のアセトンで未反応の無水コハク酸を溶出させる精製工程を2回行った後、60℃で減圧乾燥を5時間行い、水酸基にコハク酸がエステル結合した変性ポリビニルアルコール樹脂1を得た。
(3)樹脂溶液の作製
キャスティング用樹脂溶液の調製に、容量25Lの小型圧力器を用いた。該容器の耐圧は0.5MPa、材質はSUS304、撹拌翼として翼径0.32mのダブルヘリカルリボンを備え、その撹拌速度は0〜200rpmで可変である。また圧力容器上部に圧力計、ベント弁、窒素弁および減圧弁をコック付きで有し、ルッキングラスを有し、材料投入口はベルジャーとなっている。圧力容器下部には樹脂溶液抜き出し用の底栓弁、内温を測定する熱電対を有する。反応容器は二重構造となっており、外槽は熱媒による温度調整に、内槽は樹脂溶液の調製に用いられる。熱媒として、スチーム(最大150℃に設定可能)、温水(最大95℃に設定可能)および15℃の冷却水を用いることができるように配管設計されている。
小型圧力器のベント弁を開放し、材料投入口から、重合禁止剤として和光純薬工業(株)製“Q−1300”(アンモニウム N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン)を0.62g、エタノールを1.48kg、可塑剤としてジエチレングリコールを2.49kg投入後、撹拌翼を150rpmで回転させ、次いで親水性ポリアミド樹脂1を630g、変性ポリビニルアルコール樹脂1を5.90kg添加後、10分間撹拌した。次いで、純水を1kg/分の速度で4.06kg添加した。この際、液温は25℃であった。
その後、材料投入口をベルジャーでボルト・ナット締めし、ベント弁を閉めることで圧力容器を密閉系とした。粉塵爆発防止の目的で、窒素弁を開けて0.25MPa加圧後(この時点で容器内圧力は0.35MPa)、ベント弁を開放して大気圧(この時点での容器内圧力は0.1MPa)に戻し、さらに窒素0.25MPa加圧、ベント弁開放を繰り返して、反応容器内を窒素置換した。窒素置換した後、ベント弁を再度閉めて反応器を密封系にした。この間も撹拌翼は150rpmで撹拌し続けた。
熱媒のスチーム弁を開放し、スチーム圧0.2MPaに調整し、反応容器内の液温が105℃になるまで昇温し、その後スチームを0.15MPaに調整した状態で30分間反応容器を加熱し、ポリマーをスチーム溶解した。この時点での反応容器内の液温は110℃、内圧は0.35MPaであった。
その後、スチーム弁を閉じ、75℃の温水槽と連結した温水弁を開放し、温水ポンプで温水を反応容器外槽内で循環させ、熱媒をスチームから75℃温水に切り替え、この状態で90分間ポリマー溶解を行った。この時点の反応容器内温は75℃、内圧は0.15MPaであった。
ベント弁を開放して容器内圧を大気圧(0.10MPa)に戻した後、材料投入口のベルジャーを外し、材料投入口、日油(株)製グリシジルメタクリレート“ブレンマー”Gを374g添加した。
次いで材料投入口をベルジャーでボルト・ナット締めし、ベント弁を閉めることで圧力容器を密閉系に戻した。この状態で30分間撹拌し、“ブレンマー”Gのエポキシ基と変性ポリビニルアルコール樹脂1のカルボキシル基の一部を付加反応させ、ポリマー側鎖をメタクリル基で変性させた。この時点の反応容器内温は75℃、内圧は0.10MPaであった。
再度ベント弁を開放し、材料投入口のベルジャーを外し、材料投入口からエチレン性不飽和モノマーとして、日油(株)製のグリシジルメタクリレートのメタクリル酸付加物“ブレンマー”GMRを623g、共栄社化学(株)製のプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物“エポキシエステル70A”を1.87kg、光重合開始剤としてチバガイギー(株)製ベンジルメチルケタール“イルガキュア”651を12.5gおよび同社製のα−ヒドロキシケトン“イルガキュア”184を187g添加した。
次いで材料投入口をベルジャーでボルト・ナット締めし、ベント弁を閉めることで圧力容器を完全密閉系に戻した。この状態で30分間撹拌し、樹脂溶液の混合を完了した。この時点の反応容器内温は75℃、内圧は0.10MPaであった。
この後、撹拌翼の回転数を40rpmにし、減圧弁を徐々に開放し、減圧脱泡および濃縮を行った。減圧弁は濃縮冷却管および濃縮液捕集管を介してアスピレーターと連結している。濃縮冷却管は二重管で、外管に15℃の冷却水を循環させている。
アスピレーターを起動させた後、減圧弁を徐々に開放し、樹脂溶液の液面が反応容器の上部壁面にまで上昇しないように、減圧度を調整しながら、脱泡を行った。圧力容器の内圧が0.05MPaの時点で脱泡がほぼ完了し、樹脂溶液が沸騰を始めたので、撹拌による気泡の巻き込みを防止するため、撹拌翼の回転を停止した。濃縮冷却管で冷却された溶媒の蒸気が濃縮液捕集管に蓄積され、330mL留出するまで濃縮を続け、その後減圧弁を閉じ、アスピレーターを停止させた。この時点での圧力容器の内圧は0.03MPa、樹脂溶液の液温は65℃であった。流出された液を回収し、その重量を測定したところ、270gであった。留出液の比重から、その内訳はエタノールと水の9:1混合液と推定される。
次いで、ベント弁を開放して内圧を大気圧(0.10MPa)に戻した後、窒素で0.40MPaまで加圧した。この後、圧力容器の熱媒に用いている温水の温度を75℃から70℃に変更して、この条件で樹脂溶液を保管した。
(実施例1)
<フィルム積層体の作製>
(1)セパレーターフィルム(A)の作製
(株)フジコー製のフロロシリコーン“K1”タイプが塗布された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを幅500mmの幅に断裁し、セパレーターフィルム(A)とした。
(2)粘着剤層(B)の形成
500mm幅の東レ(株)製のPETフィルム“ルミラー”S10(100μm厚)をベースフィルム(C)とし、東レダウコーニング(株)製シリコーン粘着剤“SD−4587−L−PSA”100重量部に対して同社製の白金触媒“NC−25 CATALYST”を0.9重量部、トルエンを100重量部添加した混合溶液を、コンマコーターを有した塗工ラインを用いてウェット膜厚が60μmになるように220m分塗布した後、内温110℃の全長20mの熱風乾燥炉を6.5m/分の速度で通過させて乾燥し、上記(1)のセパレーターフィルム(A)をラミネートしながら6インチの紙管に巻き取った。乾燥後の粘着剤層(B)の厚さは30μmであった。この積層体について、前述の方法により粘着剤層の剥離力を測定したところ、380mN/cmであった。また、ロールに巻かれたこの積層体の外周エリアについて、輝点が30μmφ(円相当径)以上のフィッシュアイ異物を予めセパレーターフィルム(A)側から50個分マーキングしておいた。
(3)プライマー層(D)の形成
上記(2)によって作製されたベースフィルム(C)/粘着剤層(B)/セパレーターフィルム(A)の積層体に対して、ベースフィルム(C)の粘着剤層(B)と反対側の面にコロナ処理を施した。コロナ処理後に得られた積層体の長さは200mであり、ベースフィルム(C)のうち、プライマー層(D)側の面の表面張力は61mN/mであった。プライマー層(D)にはマツモトファインケミカル(株)製の2液型有機チタンオリゴマー含有プライマー(2〜20量体)“PC−620”(A液、B液の2液混合型)をA液とB液を1:1の重量比で混合した後、1−ブタノールで5倍に希釈したものを用いた。これをグラビアコーターにてベースフィルム(C)のコロナ処理面に対してウェット膜厚6μmになるように塗布した後、内温110℃の全長20mの熱風乾燥炉を20m/分の速度で通過させて乾燥し、6インチの紙管に巻き取った。乾燥後のプライマー層(D)の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜厚は約0.5μmであった。また、プライマー層(D)塗布後の積層体の長さは180mであった。
(4)保護フィルム(F)の作製
厚さ50μmの三井東セロ化学(株)製ポリ−4−メチルペンテン−1フィルム“オピュラン”X−88Bを500mm幅に断裁し、保護フィルム(F)とした。
(5)シリコーンゴム層(E)の形成
上記(3)で形成されたプライマー層(D)上に、東レダウコーニング(株)製シリコーンゴム“PRX306 DISPERSION CLEAR”をドライ膜厚50μmになるようにコンマコーターで塗布し、内温150℃の全長20mの熱風乾燥炉を6.5m/分の速度で通過させ、上記(4)の保護フィルムをラミネートしながら6インチの紙管に巻き取った。巻き取られたフィルム積層体の長さは160mであった。前述の方法により保護フィルム(F)の剥離性評価を行ったところ、良好であった。また、セパレーターフィルム(A)側から予めマーキングされたφ30μm(円相当径)以上のフィッシュアイ異物の含有箇所において、シリコーンゴム層(E)側から肉眼観察したところ、凹凸異常のある箇所は確認されなかった。
上記(1)〜(5)を以て、本発明のフィルム積層体を完成した。このフィルム積層体について、前述の方法によりシリコーンゴム層(E)の連続使用性評価を行ったところ、600回こすった時点でも切れ込み全長に渡る削れや捲れは認められなかった。
<フィルム積層体を用いたシームレスベルトの作製>
回転駆動のためのモーターを有する直径15cmの駆動ロールと直径15cmの従動ロールで張られた、厚さ1mm、幅600mm、全長5.5mのSUS304製のコンベアベルトに、フィルム積層体からセパレーターフィルム(A)を一部剥離し、むき出しになった粘着剤層(B)を貼り付け固定し、貼り合わせの始点とした。次いで、セパレーターフィルム(A)と保護フィルム(F)を共に剥離巻き取りすると同時にコンベアベルトを回転させながら、粘着剤層(B)をコンベアベルトの回転方向と逆の方向へ貼り付けた。このとき、シリコーンゴム離型フィルムがエアを噛み込まないように、ゴム製のニップローラーで適度に貼り付け面を加圧した。シリコーンゴム離型フィルムがコンベアベルトを一周する直前で貼り付けを終了し、シリコーンゴム離型フィルムを回転方向と垂直にカットし、貼り付けたシリコーンゴム離型フィルムの両端同士が1〜5mmの幅で向かい合うように溝を形成した。
次に、前述の溝を形成している両端部に沿って、(株)辰巳鍛工製のSUS304製の金属箔“SUS304CSP 0.005t”(厚さ5μm)を、これの側辺とシリコーンゴム離型フィルムの端部がちょうど重なるように密着配置し、シリコーンゴム層(B)が最外層にならないように養生した。
次に、溝部分に、マツモトファインケミカル(株)製の2液型有機チタンオリゴマー含有プライマー(2〜20量体)“PC−620”(A液、B液の2液混合型)をA液とB液を1:1の重量比で混合した後、1−ブタノールで5倍に希釈したものを旭化成せんい(株)製“ハイゼガーゼ”NT−4に染み込ませ、溝部分に押しつけ、余分な液が溝内に残らないように1往復塗布し、90℃で30秒間の条件で乾燥し、溝内部にプライマー層を形成した。乾燥後のプライマー層の厚さを評価するため、同じ幅の溝を1mm厚のSUS304平板上に形成し、同一の作業をして測定したところ、プライマー層の厚さは0.7μmであった。プライマー層が形成された溝部分に、無溶剤の室温硬化型のシリコーンゴムである東レダウコーニング(株)製“SE−9189L”を塗り込み、ヘラでしごくことによって、溝部分を完全に埋めた。
次に、両端の金属箔を剥離除去し、溝部分にポリ−4−メチルペンテン−1を主成分とするフィルムである三井化学東セロ(株)製“オピュラン”X−88B(厚さ100μm)を配置し、再度フィルムを介して溝部分をヘラでしごくことによって、溝部分を平坦化した。ヘラでしごく作業後、30分間放置し、シリコーンゴムの表面タックが事実上なくなってからフィルムを剥離した。
さらに、エクソンモービル化学(株)製の炭化水素系溶剤“アイソパー”(登録商標)Eを用いて固形分濃度20%に希釈した東レダウコーニング(株)製シリコーンゴム溶液“SH237”を塗布して溝部分を平坦化し、つなぎ目補修処理とした。
前述の方法により測定したつなぎ目補修部分(H)の表面段差は2.2μmであった。また、このシームレスベルトを前述の方法で評価したところ、600回こすった時点でつなぎ目補修部分(H)の全長に渡る削れや捲れは認められず、シリコーンゴム層(E)およびつなぎ目補修部分(H)の連続使用性はいずれも良好であった。
<シームレスベルトへの樹脂溶液の口金吐出キャスティング>
樹脂溶液を吐出する口金として、吐出幅45cmのコートハンガーダイを用いた。吐出口は下方向垂直に配置されており、吐出口のクリアランスは全幅で400μm±20μmになるように調整した。樹脂溶液の注入口は、コートハンガーダイ上部に設け、送液ラインとフレキホースでつないだ。樹脂溶液の保管容器である圧力容器からコートハンガーダイまでの送液系は順次、圧力容器の底栓弁、送液ライン、送液用のギアポンプ、送液ライン、フィルターユニット、送液ライン、フレキホース、コートハンガーダイの注入口で、直列に形成されている。またフィルター入り圧とフィルター出圧をモニターするため、フィルターユニットの入口と出口にそれぞれ圧力計を設けた。
送液ライン、フィルターユニット、フレキホースおよびコートハンガーダイは、樹脂溶液の保管温度と一定にするため、これと同一の熱媒、この場合は70℃の温水を通水できる構造を有している。送液ラインおよびフレキホースは二重管になっており、外管を熱媒が、内管を樹脂溶液が通液する構造である。フィルターユニットのフィルターハウジングも同様である。フィルターユニットは、樹脂溶液をブリードアウトするブリード口、エアを抜くエア弁を有し、フィルター本体、およびフィルターをセットするフィルターハウジングを有し、フィルターを本体として、50μmカット性能を有する日本ポール(株)製のエポキシセルロースポールフィルターを用いた。ギアポンプとして、1回転当たりの送液容量が7.2ccのものを用い、ギアポンプ内でのシェア発生による熱反応防止の目的で、ギアポンプのサイドクリアランスを20〜25μmに調整した。ギアポンプの回転数は0〜55rpmの範囲で可変であり、防爆モーターで駆動する。
コートハンガーダイの下部にベルトコンベアを設け、速度制御されたベルトコンベアの上に、0.2mm厚のSUS304の平板上にフィルム積層体を5mm幅の隙間を空けて貼り付け、溝部分を前述の<フィルム積層体を用いたシームレスベルトの作製>と同様につなぎ目補修処理したシームレスベルト模造体の上にキャスティングした。ギアポンプによる送液量を212cc/分、ベルトコンベアのライン差速度を40cm/分に設定したので、吐出幅45cmのコートハンガーダイから吐出され、シームレスベルト模造体上にキャスティングされた樹脂溶液のウェット膜厚は、計算上212cc/(40cm×45cm)=0.1178cm=1178μmとなる。
<キャスティングしたウェット膜を乾燥させた独立した樹脂シートの形成>
上記で得られた樹脂溶液を塗布したシームレスベルト模造体を、65℃の熱風乾燥機中で32分乾燥後、室温20℃相対湿度65%に管理された部屋に18分間置いて冷却し、樹脂溶液のウェット膜を得た。シームレスベルト模造体からウェット膜を剥がすことにより、独立した樹脂シートが形成された。得られた樹脂シートの残存溶媒率を測定するために、30mL試験管内に樹脂シートを1g程度秤量し、精密天秤で樹脂シート重量を最小0.1mgオーダーまで測定した。その後、抽出液をホールピペットで10mL添加し、活栓ならびにシールテープで試験管を密封し、70℃ウォーターバスで8時間加熱し、抽出液中にシート中の残存溶媒を抽出させた。抽出液は、n−ブタノール995重量部およびiso−ブタノール5重量部の混合溶媒に、水分除去の目的でモレキュラーシーブスを添加したものを用いた。iso−ブタノールを内部標準とし、水とエタノールの添加量とピーク比について、予め検量線を測定した。抽出液からマイクロシリンダーで2.5μL抜き出し、これをパーキンエルマー社製ガスクロマトグラフ分析装置“1020 GC Plus/オートシステムXL”に注入し、残存水分率と残存エタノール率を測定した。残存溶媒率は樹脂シートの秤量重量、検量線および検出ピーク比から算出した。上記樹脂シートの残存溶媒率は、残存水分率9.8重量%、残存エタノール率8.7重量%であった。
<乾燥による独立したシートの更なる溶媒除去>
上記方法により得られた独立した樹脂シートを57℃の熱風乾燥機内に吊し、シートの両面乾燥を120分間行った。両面乾燥後の樹脂シートの残存溶媒率を測定したところ、残存水分率1.9重量%、残存エタノール0.1重量%未満であった。また、得られた樹脂シートを肉眼観察したところ、凹凸は認められる表面品位良好であった。
<樹脂シートと接着層を塗布した印刷原版用支持体1とのラミネート>
2本のロールをニップ可能なニップ式ラミネーターを用い、上記で得られた独立した樹脂シートと、接着層を塗布した印刷原版用支持体1をラミネートした。ニップラミネーターの上ロールはゴムロールであり、圧空で上下させ、ニップ及びニップ開放することができる。下ロールは加熱することができる金属ロールであり、110℃に加熱した。また下ロールは駆動ロールであり、上下ロール間のクリアランスを押し込み側に調整することで、一度ニップすることにより自動的にニップされた材料が自走される。本実施例では、上下ロール間のクリアランスをおおよそ400μmに調整したが、接着層を塗布した印刷原版用支持体1の総厚が235μm、得られた樹脂シートの平均厚さが880μmであるため、その合計厚さはおおよそ1115μmとなり、ニップされる押し込み厚さはおおよそ715μmとなる。
接着層を塗布した印刷原版用支持体1は、基板側が下ロールに接するように、下ロールに沿って供給した。樹脂シートはエチレングリコールをシームレスベルトに接していた面に塗布し、塗布側が基板を供給する下ロール側に来るように供給した。まずニップ開放状態で、下ロール上の接着層面にシート尖端のエチレングリコール塗布面を仮貼り付けし、仮貼り付け面をニップロール間に配置させた後にニップを行い、ニップ圧により下ロールの駆動を得て、ニップ物を自走させた。得られたニップ物は、シートと基板が強固に接着しており、シートを基板から剥がすことは困難であった。
<樹脂シートとスリップコート層を塗布した印刷原版用カバーフィルム1とのラミネート>
シートとカバーフィルムのラミネートには、2本の金属ロールを有するカレンダー式ラミネーターを用い、ラミネーターの前後には、シートを定速(本実施例では1.0m/分)で供給するための前コンベア、およびラミネート物を定速(本実施例では1.0m/分)で搬送するための後コンベア設置した。ラミネーターの上ロールは加熱(本実施例では82℃)可能なロールで、下ロールは圧空で上下動させることができる。また、金属ロール間のクリアランスが製品厚さを決定するので、金属ロールは上下ともに真円度の高いものを用い、ロール軸方向でクリアランスを精密に調整した。本実施例で用いた金属ロールの半径は12mmで、その半径ブレ精度は10μm以内である。またロールクリアランスは1360±5μmに調整した。
前コンベア側から、アンダーフィルムとして厚さ100μm、幅500mの東レ(株)製ポリエステルフィルム“ルミラー”S10を巻き出し、前コンベア上に載せ、これをカレンダーロール間を通し、後コンベア上にまで通し、アンダーフィルムをラミネート物の運搬に使用した。
スリップコート層を塗布した印刷原版用カバーフィルム1をカレンダーロールの上ロール側に供給し、カレンダーロール間を通し、後コンベアまで通し、後コンベア上でアンダーフィルムにリビックテープで貼り付けた。アンダーフィルムはコンベアの動力を、接着層が塗布された基板に伝達するキャリアフィルムとして用い、該工程の後に取り外され、フレキソ印刷原版の構成体とはならない。
前コンベア上のアンダーフィルム上に、シートと基板のラミネート物を、基板がアンダーフィルム側に来るように“セロテープ(登録商標)”で貼り付け、この上にシートと同じ組成を有する樹脂溶液を適当量流延した。
この後、アンダーフィルムおよびカバーフィルムを後コンベアに手で押さえ込んで、後コンベアの駆動をアンダーフィルムおよびカバーフィルムに伝達させて、前コンベア側から後コンベア側に引っ張った。流延された樹脂溶液はカレンダーロールを通過する際に、カレンダーロールのクリアランスを超える分量が横断方向側の両端および、流れ方向の前コンベア側に自動的に掻き出された。カレンダーロールを通過した分はカレンダーロールのクリアランスによって制御された厚さのラミネート物が得られ、フレキソ印刷原版が完成した。
<フレキソ印刷原版の製版ならびに網点観察>
ラミネートされてから24時間以上室温で放置された上記フレキソ印刷原版について、前述の方法によりフレキソ印刷原版適用性評価を行った。樹脂シートがつなぎ目補修部分(H)を通過した部分の網点直径は27.5μm、つなぎ目を通過していない部分の網点直径は27.1μmであり、その差は0.4μmであり、良好であった。
(実施例2〜8)
実施例1におけるフィルム積層体の構成部材(セパレーターフィルム(A)、粘着剤層(B)、ベースフィルム(C)ならびにその表面張力、プライマー層(D)、シリコーンゴム層(E)、保護フィルム(F))を表1に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体、シームレスベルトおよびフレキソ印刷原版を作製した。なお、各実施例に用いた材料は以下のとおりである。
“オピュラン”X−44B:三井化学東セロ(株)製ポリ−4−メチルペンテン−1を主成分とするフィルム(厚さ50μm)
“SH237”:東レダウコーニング(株)製の室温硬化型シリコーンゴム溶液
“PC−605”:マツモトファインケミカル(株)製有機チタンオリゴマー含有1液型プライマー(2〜20量体)
実施例1と同様に評価したところ、フィルム積層体の粘着剤層(B)の剥離力は380mN/cmで問題なく、シリコーンゴム層(E)の表面品位および連続使用性、保護フィルム(F)の剥離性、シームレスベルトのつなぎ目補修部分の連続使用性は良好であった。また、シームレスベルトのつなぎ目補修部分(H)の表面段差はいずれも2.6μm以下で問題なかった。さらに、樹脂シートがつなぎ目補修部分(H)を通過した部分の樹脂シートと通過していない部分の樹脂シートで作製したフレキソ版の網点直径差はいずれも1.0μm以下であり、問題なかった。
(実施例9)
実施例1におけるフィルム積層体のベースフィルム(C)のプライマー層(D)形成面に対するコロナ処理後の表面張力を56mN/mに調整した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体、シームレスベルトおよびフレキソ印刷原版を作製した。シリコーンゴム層(E)の連続使用性がわずかに低下したものの、フィルム積層体の粘着剤層(B)剥離力、シリコーンゴム層(E)の表面品位、保護フィルム(F)の剥離性、シームレスベルトのつなぎ目補修部分(H)の連続使用性は良好であった。また、つなぎ目補修部分(H)の表面段差は2.3μmで問題なかった。さらに、樹脂シートがつなぎ目補修部分(H)を通過した部分と通過していない部分の網点直径差は0.4μmであり、問題なかった。
(実施例10)
実施例1におけるフィルム積層体のベースフィルム(C)を東レ(株)製のポリエステルフィルム“ルミラー”S10(188μm厚)に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体、シームレスベルトおよびフレキソ印刷原版を作製した。ロール状に巻かれたフィルム積層体における巻き芯から25mまでの領域にてフィルム積層体がわずかに屈曲する形でシリコーンゴム層(E)に食い込み、シリコーンゴム層(E)の表面品位と保護フィルム(F)の剥離性の低下が頻発していたが、25m以降の領域においてはシリコーンゴム層(E)の表面品位および保護フィルム(F)の剥離性に問題はなかった。シリコーンゴム層(E)の連続使用性およびシームレスベルトのつなぎ目補修部分(H)の連続使用性を評価したところ、いずれも600回以上で問題なく、つなぎ目補修部分(H)の表面段差は2.3μmで問題なかった。つなぎ目補修部分(H)を通過した部分と通過していない部分の網点直径差は0.5μmであり、問題なかった。
(実施例11)
実施例1におけるフィルム積層体のシリコーン粘着剤を、東レダウコーニング(株)製“DC−7652 ADHESIVE”100重量部、同社製の白金触媒“NC−25 CATALYST”0.3重量部に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体、シームレスベルトおよびフレキソ印刷原版を作製した。実施例1と同様の評価を行ったところ、粘着剤層(B)の剥離力は、1110mN/cmであり、フィルム積層体の剥離作業に若干力を要したものの、支障はなかった。また、シリコーンゴム層(E)の表面品位および連続使用性、保護フィルム(F)の剥離性に問題はなく、つなぎ目補修部分(H)の表面段差は2.0μmで問題なかった。つなぎ目補修部分(H)を通過した部分と通過していない部分の網点直径差は0.4μmであり、問題なかった。
(実施例12)
実施例1におけるフィルム積層体のプライマー層(D)およびシームレスベルト作製時のつなぎ目補修用のプライマーの材料を、東レダウコーニング(株)製のテトラブチルチタネート(単量体)を主成分としたプライマー“PRIMER−D3(RF)”に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体、シームレスベルトおよびフレキソ印刷原版を作製した。実施例1と同様の評価を行ったところ、シリコーンゴム層(E)の連続使用性に多少の低下が観られた。シリコーンゴム層(E)の表面品位、保護フィルム(F)の剥離性は良好であった。つなぎ目補修部分(H)の表面段差は3.1μm、つなぎ目補修部分(H)を通過した部分と通過していない部分の網点直径差は0.6μmであり、問題なかった。
(実施例13)
実施例1におけるシームレスベルト作製時のつなぎ目補修用の金属箔を、辰巳鍜工(株)製の厚さ20μmのSUS304製金属箔“CSP 0020t”(厚さ20μm)に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体、シームレスベルトおよびフレキソ印刷原版を作製した。つなぎ目補修部分(H)の表面段差は5.6μmと大きくなっており、つなぎ目補修部分(H)の連続使用性もやや低下した。つなぎ目補修部分(H)を通過した部分と通過していない部分の網点直径差は2.4μmと若干増大していた。網点直径の変化については、表面段差による凹凸形状の乱れにより、露光時に紫外光の散乱が起こったためと推測される。
(実施例14)
実施例1におけるシームレスベルト作製時のつなぎ目補修処理用のシリコーンゴムを、東レダウコーニング(株)製“SH781N”(粘度50Pa・s以上)に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体、シームレスベルトおよびフレキソ印刷原版を作製した。つなぎ目補修部分(H)の表面段差が6.2μmと大きくなっており、つなぎ目補修部分(H)の連続使用性もやや低下した。つなぎ目補修部分(H)を通過した部分と通過していない部分の網点直径差は2.2μmを若干増大していた。表面段差の増大は、溝部分を埋めるシリコーンゴムの粘度が高く、完全に隙間を埋めることができなかったためと推測される。
(実施例15)
実施例1におけるフィルム積層体のベースフィルム(C)のプライマー層(D)形成面に対するコロナ処理後の表面張力を51mN/mに調整した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体、シームレスベルトおよびフレキソ印刷原版を作製した。シリコーンゴム層(E)の連続使用性に多少の低下が観られた。つなぎ目補修部分(H)の表面段差は2.9μm、つなぎ目補修部分(H)を通過した部分と通過していない部分の網点直径差は0.6μmであり、問題なかった。
(比較例1)
実施例1におけるフィルム積層体のベースフィルム(C)を東レ(株)製“ルミラー”S10(25μm厚)に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体を作製した。環状支持体(G)へフィルム積層体を貼り付ける際、環状支持体(G)の進行方向に対して非常に斜めになり易かったため、巻き出し張力の調整によりこれの是正を図ると、進行方向に対して左右に蛇行が酷くなり、フィルム積層体の湾曲によって全面を綺麗に支持体に貼り付けることができず、シリコーンゴム層(E)の表面品位が低下し、シームレスベルト用のフィルム積層体として使用できなかった。ベースフィルム(C)が薄すぎたことに伴い、フィルム積層体としての剛性が低下し、僅かな外力による影響を受けやすくなったためと考えられる。
(比較例2)
実施例1にけるフィルム積層体のベースフィルム(C)を東レ(株)製ポリエステルフィルム“ルミラー”S10(250μm厚)に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体、シームレスベルトおよびフレキソ印刷原版を作製した。つなぎ目補修部分(H)の連続使用性を評価したところ、屈曲作業によってシームレスベルト上のシリコーンゴム離型フィルムの端部が僅かに浮き上がり、つなぎ目補修部分(H)に割れ目が発生したため、樹脂溶液キャスティングのための連続使用はできなかった。ベースフィルム(C)が厚すぎたことに伴い、シリコーンゴム離型フィルムの剛性が上昇したためと考えられる。
(比較例3)
実施例1におけるフィルム積層体の保護フィルム(F)を東レ(株)製ポリプロピレンフィルム“トレファン”2500H(60μm厚)に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体を作製した。フィルム積層体から保護フィルムを剥離したところ、剥離抵抗が大きく、ブロッキングが発生した。剥離後のシリコーンゴム層(E)の一部が保護フィルム側に持っていかれ、シリコーンゴム表面に形で斑上の凹凸ムラが頻発したため、シリコーンゴム層(E)の表面品位が低下し、樹脂溶液キャスティング用のフィルム積層体として使用できなかった。
(比較例4)
実施例1におけるフィルム積層体の保護フィルム(F)を淀川ヒューテック(株)製PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルム“ヨドフロン”(登録商標)4600(50μm厚)に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体を作製した。フィルム積層体から保護フィルム(F)を剥離したところ、シリコーンゴム層(E)表面が明らかに未硬化で柔らかく、外部からのわずかな応力で容易に変形し易い状態となっていたため、シリコーンゴム層(E)の表面品位が低下し、樹脂溶液キャスティング用のフィルム積層体として使用できなかった。
(比較例5)
実施例1におけるフィルム積層体の保護フィルム(F)を設置しない以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体を作製した。ロール状に巻き取ったところ、シリコーンゴム層(E)とセパレーターフィルム(A)がブロッキングを起こしており、フィルム積層体の巻出しの際に、シリコーンゴム層(E)が大きく変形を起こしたため、シリコーンゴム層(E)の表面品位が低下し、樹脂溶液キャスティング用のフィルム積層体として使用できなかった。
(比較例6)
実施例1におけるフィルム積層体のシリコーンゴム層(E)の乾燥後の膜厚を10μmに変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体、シームレスベルトおよびフレキソ印刷原版を作製した。シリコーンゴム層(E)表面品位を評価したところ、樹脂シートにおける表面凹凸異常箇所が14個観られ、シリコーンゴム層(E)の表面品位が低下したため、樹脂溶液キャスティング用のフィルム積層体として使用できなかった。シリコーンゴム層(E)が薄いため、フィッシュアイ異物による凹凸をキャンセルできなかったためと推測される。
(比較例7)
実施例1におけるフィルム積層体のシリコーンゴム層(E)の乾燥後の膜厚を350μmに変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム積層体を160m作製したところ、ロールに巻かれた際に保護フィルム(F)にシワが発生し、このシワによってシリコーンゴム層(E)がほぼ全長にわたって変形しており、シリコーンゴム層(E)の表面品位が著しく低下し、樹脂溶液キャスティング用のフィルム積層体として使用できなかった。
各実施例および比較例の内容と評価結果を表1〜4にまとめて示す。
Figure 0005831221
Figure 0005831221
Figure 0005831221
Figure 0005831221
本発明のフィルム積層体およびシームレスベルトを用いることにより、表面品位に優れる樹脂シートを連続して製造することができ、樹脂凸版印刷原版やフレキソ印刷原版などの凸版印刷原版に好適に用いることができる。また、シームレスベルトのメンテナンスも簡便に行うことができる。
11:環状支持体
12:シリコーンゴム離型フィルム
13:溝
14:金属箔
15:プライマー層
16:シリコーンゴム
17:ヘラ
18:平坦化用フィルム
19:シリコーンゴム層(E)を形成するシリコーンゴム
20:駆動ドラム
21:従動ドラム
22:シームレスベルト
31:保管容器
32:送液ライン
33:流体運送機
34:口金
41:ウェット膜
42:乾燥手段
51:樹脂シート
52:支持体
53:樹脂シート/接着層/支持体
54:カレンダリングロール
61:流延された樹脂溶液
62:カバーフィルム
63:レリーフ層

Claims (8)

  1. 樹脂溶液をキャスティングするためのフィルム積層体であって、セパレーターフィルム(A)、粘着剤層(B)、厚さ50〜200μmのベースフィルム(C)、プライマー層(D)、厚さ20〜300μmのシリコーンゴム層(E)およびポリ−4−メチルペンテン−1を主成分とする保護フィルム(F)をこの順に有することを特徴とする樹脂溶液キャスティング用フィルム積層体。
  2. 前記プライマー層(D)が有機チタン化合物のオリゴマーを主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の樹脂溶液キャスティング用フィルム積層体。
  3. 前記ベースフィルム(C)のプライマー層(D)側の面の表面張力が55mN/m以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂溶液キャスティング用フィルム積層体。
  4. 環状支持体(G)の外側に、請求項1〜3のいずれか記載のフィルム積層体からセパレーターフィルム(A)および保護フィルム(F)を除く積層体が、最外層がシリコーンゴム層(E)となるように配置されてなり、かつ、厚さ10μm以下の金属箔を用いて作製されたつなぎ目補修部分(H)を有することを特徴とするシームレスベルト。
  5. 粘着剤層(B)の環状支持体(G)からの180°剥離力が100〜1000mN/cmであることを特徴とする請求項4に記載のシームレスベルト。
  6. 少なくとも(1)請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂溶液キャスティング用フィルム積層体からセパレーターフィルム(A)および保護フィルム(F)を剥離し、粘着剤層(B)と環状支持体(G)と貼り合わせる工程、(2)前記貼り合わせの始点と終点との間に生じる溝部分を、溝部分周囲のシリコーンゴム層(E)を厚さ10μm以下の金属箔を用いて保護した状態でプライマーおよびシリコーンゴムにより埋める工程、(3)前記金属箔を除去し、ポリ−4−メチルペンテン−1を主成分とする平坦化用フィルムを介して溝部分をヘラでしごくことにより溝部分を平坦化する工程および(4)平坦化用フィルムを除去し、シリコーンゴム溶液を塗布してさらに溝部分を平坦化する工程を有することを特徴とする請求項4または5に記載のシームレスベルトの製造方法。
  7. 請求項4または5に記載のシームレスベルトを回転させながらシームレスベルト上に樹脂溶液をキャスティングし、乾燥し、剥離することを特徴とする連続樹脂シートの製造方法。
  8. 請求項7に記載の方法によって得られた連続樹脂シートと、接着層を有する支持体とをラミネートする工程を少なくとも含む凸版印刷原版の製造方法。
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