JP5828441B2 - 同期電動機のための回転子位相推定装置 - Google Patents

同期電動機のための回転子位相推定装置 Download PDF

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Description

本発明は、回転子に永久磁石を有する同期電動機のためのセンサレス駆動制御装置に使用される回転子位相推定装置に関する。特に、回転子位相を電動機駆動用の電圧・電流を用いて推定する回転子位相装置に関する。なお、本発明の説明では、固定子と電機子、固定子鎖交磁束と固定子磁束、固定子巻線抵抗と固定子抵抗、界磁と回転子、回転子位相と回転子位置、座標系位相と座標系位置、を各々同義で使用する。
γδ一般座標系は、αβ固定座標系、dq同期座標系を特別の場合として包含する一般性に富む座標系である(図1参照)。本発明では、γδ一般座標系の中で、特にdq同期座標系への位相差の無い同期を目指した座標系を、γδ準同期座標系と呼称する。
回転子に永久磁石を有する同期電動機(以下、同期電動機と略記)のセンサレスベクトル制御のための、駆動用の電圧・電流を利用した回転子位相推定法として、同一次元状態オブザーバ(以下、適宜、状態オブザーバ、またはオブザーバと略記)を用いて回転子磁束を推定し、回転子磁束推定値からこれに含まれる回転子位相情報を抽出する方法が特許文献(1)〜(4)、非特許文献(1)に提案されている(後掲の先行技術文献欄参照)。一般に、状態オブザーバの推定性能は、これに使用される行列形式のオブザーバゲインにより支配的な影響を受ける。「状態オブザーバの設計」がしばしば「オブザーバゲインの設計」を意味するように、「状態オブザーバの設計」においては「オブザーバゲインの設計」が特に重要である。
非特許文献(1)を通じ、楊等は、非突極同期電動機を対象に、オブザーバゲインの設計法を提案している。楊のゲイン設計法は、固定子反作用磁束(固定子電流に比例)対応のオブザーバゲインGi(2×2行列)と回転子磁束対応のオブザーバゲインGm(2×2行列)の両行列ゲインを以下のように設計するものである。
Figure 0005828441
ここに、kは設計パラメータ、Iは2×2単位行列、Jは次式で定義された2×2交代行列である。
Figure 0005828441
また、ω2nは電気速度相当値(具体的には、電気速度推定値)であり、R1は固定子巻線抵抗であり、Liは固定子インダクタンスである。なお、Liは、一般には、次の(3)式で定義された固定子インダクタンスの平均値(d軸インダクタンスとq軸インダクタンスの平均値)を意味し、同相インダクタンと呼ばれることもある(非特許文献(2)参照)。
Figure 0005828441
(1)式から明白なように、楊のゲイン設計法は、以下の特色をもつ。
(a) 2種の2×2行列オブザーバゲインの全要素を、単一の設計パラメータkを用いて、電動機パラメータに比例するように定める。
(b) 行列オブザーバゲインの対角要素は固定子巻線抵抗に比例させ、逆対角要素は回転子速度に比例させる。
しかし、残念ながら、楊のオブザーバゲイン設計法は直感的発想に基づくものであり、これに基づく状態オブザーバは、特許文献(1)〜(4)、非特許文献(2)で指摘されているように、定格速度近傍で不安定化することが知られている。
特許文献(1)で山本等は、上記不安定化問題を解決すべく、非突極同期電動機を対象にした楊の状態オブザーバのための新たなゲイン設計法を提示している。山本のゲイン設計法の1つは、次式のように与えられる。
Figure 0005828441
ここに、ωmax,ωは、各々、最大駆動電気速度、状態オブザーバの等価的帯域幅を指定する設計パラメータである。
また、山本のゲイン設計法の他の1つは、次式のように与えられる。
Figure 0005828441
山本の2つの設計法の特色は、以下のように整理される。
(a) 回転子磁束対応ゲインGm(2×2行列)の全要素を速度向上に応じ減少させる。回転子磁束対応ゲインの速度対応の変化は、楊のゲインとは正反対である。
(b) 回転子磁束対応ゲインGmの対角要素gm1の極性は、回転の極性に支配され、正回転の場合には正、負回転の場合は負となる。
(c) 回転子磁束対応ゲインGmの逆対角要素gm2の極性は、正回転・負回転の如何を問わず、常に正である。
山本のゲイン設計法も、楊の設計法と同様に、直感的発想に基づく部分が多く、本設計法に基づく状態オブザーバは安定収束しないことが(特に、高速回転時、逆回転時には不安定化することが)、特許文献(3)、非特許文献(2)等で解明・指摘されている。
特許文献(2)で金原は、上記の楊、山本のゲイン設計法に対して、安定論に立脚したゲイン設計法を示している。金原のゲイン設計法は、カルマンフィルタのゲイン設計法を流用したものであり、以下の特色を有する。
(a) 2種のオブザーバゲインGi、Gm(2×2行列)の各要素の決定には、全駆動領域にわたり、ある周波数特性を平均化することを目的としたリカッチ方程式を求解する必要がある。全駆動領域にわたる本求解の演算負荷は膨大である。このため、求解作業は、状態オブザーバの遂行に先立って、別途完了しておく必要がある。リカッチ方程式の求解により得られた各要素は、テーブル(特許文献(2)では、ゲインテーブルと呼称)に保存する必要がある。
(b) 本オブザーバゲインによる場合には、原理的には、全駆動領域で状態変数推定値の安定収束が保証される。
(c) しかしながら、オブザーバゲインを得るための設計パラメータは単一であり、自由度の高いオブザーバゲインを得ることは不可能である。
金原のゲインは、楊のゲイン、山本のゲインと異なり、状態オブザーバの安定収束を保証できると言う優れたメリットを有している。しかしながら、上記のように、テーブル化を前提とした膨大な事前演算を必要とする。金原のゲインによれば、リカッチ方程式を解く際の1個の設計パラメータを通じ、最も速いモードのオブザーバ固有値(時不変オブザーバで言われる極と同義)は概略指定できるが、最も遅いオブザーバ固有値に関しては、楊のゲイン、山本のゲインと同様に不明という欠点を有している。安定収束の実際的性能である収束速度を支配するのは、最も遅いオブザーバ固有値であり、これに関しては、楊のゲイン、山本のゲインと同様に不明という欠点を有している。
特許文献(3)で新中は、自由度の高いオブザーバゲイン設計法を提示している。新中のゲイン設計法は、固定子反作用磁束(または固定子鎖交磁束)対応のオブザーバゲインGiと回転子磁束対応のオブザーバゲインGmの両行列ゲインを以下のように設計するものである。
Figure 0005828441
ただし、δi12,δi21:ゼロを代表値とする任意の微小値、sgn:符号関数である。
新中の設計法は、以下の特徴をもつ。
(a) 2種のオブザーバゲインGi、Gm(2×2行列)の各要素の選定に関し、高い設計自由度を有する。しかも、全速度領域での安定性を確保した状態変数の推定が可能である。さらには、オブザーバゲインのテーブル化も必要としない。
(b) ただし、オブザーバゲインGiの対角要素を、実質的に常時ゼロに選定するものであり、この点で設計自由度が制限されている。このため、状態オブザーバの4個の固有値(状態オブザーバの極)を自由に指定できない。
特許文献(4)で黒田は、上記いずれの方法とも異なるゲイン設計法を提示している。黒田のゲイン設計法は、固定子反作用磁束(固定子電流と等価)対応のオブザーバゲインGiと回転子磁束対応のオブザーバゲインGmの両行列ゲインを以下のように設計するものである。
Figure 0005828441
Figure 0005828441
ここに、ωn1、ωn2、ζは、第1固有各周波数、第2固有各周波数、第1固有周波数に関係した減衰係数と呼ばれる設計パラメータである。設計パラメータの選定は、ωn1>>ωn2の選定が必要であり、また、減数係数の選定範囲は0<ζ<=1に限定される。
黒田の設計法は、以下の特徴をもつ。
(a) オブザーバゲインの設計原理は、固定子電流の高速収束と回転子磁束の低速収束を前提に、成立するものであり、設計パラメータはこの原理に従って選定されねばならない。
(b) 前提が成立する範囲において、状態オブザーバの固有値(極)を、固定子巻線抵抗、固定子インダクタンス、速度によらず、概ね一定にできる。また、一応の安定性が確保される。
(c) 電動機の高速回転時には、固定子電流のみならず、回転子磁束の高速収束が必要とされるが、これには対応できない。
以上、同一次元状態オブザーバのオブザーバゲインの設計に関し、その概要を特徴を中心に説明した。総合的には、これらは以下の2点にまとめられる。
(a) 状態オブザーバためのオブザーバゲインは、状態オブザーバの安定性を確保するものでなくてはならない。このためのゲイン設計は、従来の設計法(金原、新中、黒田の設計法)で、一応可能である。
(b) 従来のゲイン設計法は、総じて、状態オブザーバの安定性の確保に主眼がある。状態オブザーバは、ある種のフィルタリング処理を遂行しているとして捕らえることができるが、推定性能に重要な影響を与えるフィルタ特性(通過帯域の中心周波数、通過帯域の幅)に関しては、ほとんど注意が払われていない。
山本康弘:「同期電動機の制御装置」、特開2004−32905(2002−6−26) 金原義彦・貝谷敏之:「同期電動機の制御装置」、国際公開番号WO2002/091558、特願2002−565151(2001−4−24) 新中新二:「同期電動機のための回転子位相推定装置」、特開2009−219338(2008−3−7) 黒田岳志・松本康・野村尚史・糸魚川信夫:「永久磁石動機電動機の制御装置」、特開2009−290962(2008−5−28)
楊耕・富岡真知子・中野求・金東海:「適応オブザーバによるブラシレスDCモータの位置センサレス制御」、電気学会論文誌D、113、5、pp.579−586(1993−5) 新中新二:「永久磁石同期モータのベクトル制御技術、下巻(センサレス駆動制御の真髄)」、電波新聞社(2008−12)
本発明は上記背景の下になされたものであり、その目的は、回転子に永久磁石を有する同期電動機のための駆動制御装置に使用され、同一次元状態オブザーバに基づく回転子位相推定手段を有する回転子位相推定装置を提供することにある。特に、状態オブザーバの安定性の単なる確保のみならず、電動機パラメータに独立した安定性(安定性の度合いの指定を含む)、電動機パラメータに独立したフィルタ特性(通過帯域の中心周波数、通過帯域の幅の指定を含む)の指定が可能なオブザーバゲインを備えた状態オブザーバに基づく回転子位相推定装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、回転子に永久磁石を有する同期電動機のための駆動制御装置に使用され、かつ、αβ固定座標系上の駆動用固定子電圧の相当値と駆動用固定子電流の相当値を入力信号とし、またはdq同期座標系への位相差のない収斂をめざしたγδ準同期座標系上の駆動用固定子電圧の相当値と駆動用固定子電流の相当値を入力信号とし、固定子鎖交磁束と回転子磁束、固定子反作用磁束と回転子磁束、固定子電流と回転子磁束の3種組合せのいずれか1つの組合せを状態変数に選定し、固定子電流相当値と同推定値との偏差にオブザーバゲインを乗じて得た信号をフィードバックして状態変数を推定するようにした状態オブザーバを少なくとも構成して回転子位相推定値を生成する手段を備える回転子位相推定装置であって、駆動用固定子電圧相当値の正相分(または逆相分)から状態変数推定値の1つである回転子磁束推定値の正相分(または逆相分)に至る1入力1出力伝達関数が、予め定めた分母2次、分子0次の1入力1出力安定2次複素フィルタに概ね等しくなるように、安定2次複素フィルタを構成する係数を利用してオブザーバゲインを設定するようにしたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1記載の回転子位相推定装置であって、複素数の変数sと実数の係数aiから構成される2次安定多項式A(s)を次式とし、
Figure 0005828441
安定2次複素フィルタの実数係数の1つをg1とし、安定2次複素フィルタのフィルタゲインをgとし、回転子の電気速度相当値をω2nとし、虚数単位をjとして、安定2次複素フィルタを次式のように構成し、
Figure 0005828441
固定子インダクタンス相当値をLiとし、固定子巻線抵抗相当値をR1とし、2×2単位行列をIとし、2×2交代行列Jを次式とし、
Figure 0005828441
更には、状態オブザーバで推定すべき状態変数を固定子鎖交磁束と回転子磁束、固定子反作用磁束と回転子磁束のいずれかの組合せとし、固定子鎖交磁束あるいは固定子反作用磁束に対応したオブザーバゲインをGiで表現し、回転子磁束に対応したオブザーバゲインをGmで表現するとき、オブザーバゲインGi、Gmを、安定2次複素フィルタを構成する実数係数ai、g1を利用した次式に従い設定することを特徴とする。
Figure 0005828441
請求項3の発明は、請求項1記載の回転子位相推定装置であって、複素数の変数sと実数の係数aiから構成される2次安定多項式A(s)を次式とし、
Figure 0005828441
安定2次複素フィルタの実数係数の1つをg1とし、安定2次複素フィルタのフィルタゲインをgとし、回転子の電気速度和当値をω2nとし、虚数単位をjとして、安定2次複素フィルタを次式のように構成し、
Figure 0005828441
固定子インダクタンス相当値をLiとし、固定子巻線抵抗相当値をR1とし、2×2単位行列をIとし、2×2交代行列Jを次式とし、
Figure 0005828441
更には、状態オブザーバで推定すべき状態変数を固定子電流と回転子磁束の組合せとし、固定子電流に対応したオブザーバゲインをGi’で表現し、回転子磁束に対応したオブザーバゲインをGmで表現するとき、オブザーバゲインGi’、Gmを、安定2次複素フィルタを構成する実数係数ai、g1を利用した次式に従い設定することを特徴とする。
Figure 0005828441
なお、本発明の手段に用いた「相当値」なる用語は、以下を意味している。駆動用固定子電圧相当値は、駆動用固定子電圧の実測値、あるいは電圧指令値に代表される駆動用固定子電圧近似値を意味する。駆動用固定子電流相当値は、駆動用固定子電流の実測値、あるいは電流指令値に代表される駆動用固定子電流近似値を意味する。回転子の速度相当値とは、回転子速度の実測値、あるいは同推定値、あるいは速度指令値に代表される近似値を意味する。固定子インダクタンス、固定子巻線抵抗等の電動機パラメータの相当値とは、状態オブザーバ内の電動機パラメータ利用部分に使用される、電動機パラメータ真値、同公称値、同近似値を含む数値の総称を意味する。
以下、図面と数式を用いて、請求項1の本発明の効果を明快に説明する。請求項1の発明では、推定すべき状態変数の組合わせとしては3種を前提としているが、発明効果の簡単な説明のため、推定すべき状態変数として固定子反作用磁束と回転子磁束の組合せを選定した場合を例に取り上げる。同期電動機の突極,非突極にかかわらず,固定子反作用磁束と回転子磁束を状態変数とする状態オブザーバを単一のインダクタンス相当値Liと固定子巻線抵抗相当値R1を用いてαβ固定座標系上で構成する場合,これは次の(16)、(17)式で記述される。
Figure 0005828441
Figure 0005828441
上式においては、sは微分演算子であり、v1、i1は、2×1ベクトルとしての固定子電圧相当値、固定子電流相当値である。また、i1^は、2×1ベクトル固定子電流相当値の推定値である。φi^、φm^は、2×1ベクトルとしての状態変数の推定値であり、具体的には、固定子反作用磁束推定値、回転子磁束推定値である。Gi、Gmは、各々、推定すべき固定子反作用磁束に対応したオブザーバゲイン、推定すべき回転子磁束に対応したオブザーバゲインであり、(17)式の構造をもつ2×2行列である。(16)式が明示しているように、状態オブザーバでは、固定子電流相当値i1と同推定値i1^との偏差(i1−i1^)にオブザーバゲインGi、Gmを乗じて得た信号をフィードバックして、状態変数の推定値φi^、φm^を生成するようにしている。
(16)、(17)式において,諸信号の正相成分のみを考える。(16)、(17)式に対応した正相成分の関係式は次式となる(2×1ベクトル信号(ボールドタイプ)と同一の記号で表現した複素スカラ信号(非ボールドタイプ)は,同ベクトル信号の正相成分を表現している)。
Figure 0005828441
Figure 0005828441
回転子速度一定の前提の下で(本前提下では、微分演算子は複素数たるラプラス演算子と等価に扱える)、固定子電流相当値がゼロ(i1=0)の条件で、(18)式を回転子磁束推定値の正相成分φm^に関し整理すると,駆動用固定子電圧相当値の正相分v1から回転子磁束推定値の正相分に至る1入力1出力伝達関数Fob(s)を意味する次式を得る。
Figure 0005828441
上の伝達関数Fob(s)は、変数s(複素数たるラプラス演算子と等価)に関し分母2次、分子0次となっている。
請求項1の発明によれば、分母2次、分子0次の1入力1出力安定2次複素フィルタを予め定める。このときの2次複素フィルタは、電動機パラメータに依存することなく、所要の安定性とフィルタ特性をもつように、自由に定めることができる。請求項1の発明によれば、この上で、(20)式の伝達関数Fob(s)が、予め定めた好ましい特性を有する2次複素フィルタと概ね等しくなるように、複素スカラゲインgi、gmを決める。(19)式と(17)式との比較より明白なように、(19)式の複素スカラゲインgi、gmの実数部と虚数部は、(17)式の2×2行列のオブザーバゲインの対角要素と逆対角要素と同一である。複素スカラゲインの実数部と虚数部の決定は、2×2行列のオブザーバゲインの設定を意味する。こうして設定したオブザーバゲインを用いた状態オブザーバは、その信号の正相成分に関しては、予め定めた2次複素フィルタと実質同一の好ましい性質(すなわち、電動機パラメータに独立した安定性、フィルタ特性)をもつことになる。信号の逆相成分に関しても、実質同一の好ましい特性が得られる。以上の説明より明白なように、請求項1の発明によれば、予め定めた好ましい特性、すなわち電動機パラメータに独立した安定性(安定性の度合いの指定を含む)、電動機パラメータに独立したフィルタ特性(通過帯域の中心周波数、通過帯域の幅の指定を含む)をもつ1入力1出力安定2次複素フィルタと実質的に同一の好ましい特性を、状態オブザーバに付与できるようになるという効果が得られる。
続いて、請求項2の発明の効果を説明する。(8)式の本安定多項式を用いて構成された(9)式の1入力1出力複素フィルタF(・)は、当然のことながら、安定多項式で指定された安定性をもつ。(9)式の複素フィルタは、(8)式を用いると、次式となる。
Figure 0005828441
すなわち、本複素フィルタは、(20)式の1入力1出力伝達関数Fob(s)と同一形式の分母2次、分子0次となる。
(21)式の複素フィルタにs=jω2nにおいて、振幅減衰1/ω2nと位相遅れ−π/2(rad)をもたせることを考える。これには、(21)式におけるフィルタゲインg(一般には複素数)を、複素フィルタの実数係数ai、g1を用い、次の(22)式のように定めばよい。
Figure 0005828441
(22)式のフィルタゲイン用いたときの(21)式の複素フィルタの周波数特性(振幅特性)を、図2に概略的に例示した。(21)式の全極形の複素フィルタは,一般には、中心周波数(1−g1)ω2nのバンドパス特性をもつ。中心周波数より離れた周波数域では、振幅減衰−40(dB/dec)の特性を示す。また、中心周波数近傍の振幅減数特性は、フィルタの実数係数aiで種々調整可能である。本複素フィルタにおいては、g1=1の場合には、本中心周波数はゼロ周波数となり、バンドパス特性は、ローパス特性となる。複素フィルタにおいては、ローパス特性は、中心周波数がゼロ周波数のバンドパス特性として扱うことができる。以上の説明より明らかなように、本複素フィルタは、フィルタの実数係数ai、g1の調整を通じ、種々の好ましい周波数特性を持たせることができる。なお、以降では,中心周波数のシフト機能を担うフィルタ係数g1を周波数シフト係数と呼称する。
(21)式は、(22)式を考慮すると、次のように書き改めることができる。
Figure 0005828441
(20)式と(23)式の比較より明白なように、(20)式の駆動用固定子電圧相当値の正相分v1から回転子磁束推定値の正相分に至る1入力1出力伝達関数Fob(s)の複素スカラゲインgi、gmを次の(24)式のように定める場合には、1入力1出力伝達関数Fob(s)は、好ましい特性、すなわち電動機パラメータに独立した安定性(安定性の度合いの指定を含む)、電動機パラメータに独立したフィルタ特性(通過帯域の中心周波数、通過帯域の幅の指定を含む)をもつ複素フィルタと同一となる。
Figure 0005828441
ひいては、1入力1出力伝達関数Fob(s)は、複素フィルタと実質同一の好ましい特性をもつことになる。
請求項2の発明は、(11)式と(24)式との比較より明白なように、基本的に、(24)式の複素スカラゲインに基づいて、2個の2×2行列のオブザーバゲインを定めるものである。
以上の説明に利用した、駆動用固定子電圧相当値の正相分v1から回転子磁束推定値の正相分に至る1入力1出力伝達関数Fob(s)(20)式は、推定すべき状態変数の組合わせとして、固定子反作用磁束と回転子磁束とを利用した。推定すべき状態変数の組合わせとして、固定子鎖交磁束と回転子磁束とを利用する場合にも、同様手順に従い、高い類似性をもつ理論展開が可能であり、請求項2の発明による(11)式を得ることができる。
以上の説明より明白なように、請求項2の発明によれば、予め定めた好ましい特性、すなわちすなわち電動機パラメータに独立した安定性(安定性の度合いの指定を含む)、電動機パラメータに独立したフィルタ特性(通過帯域の中心周波数、通過帯域の幅の指定を含む)をもつ1入力1出力安定2次複素フィルタと実質的に同一の好ましい特性を、推定状態変数を固定子反作用磁束と回転子磁束の組合わせ、または固定子鎖交磁束と回転子磁束との組合わせとする状態オブザーバに、簡単かつ直ちに、付与できるようになるという効果が得られる。特に、正の実数係数aiを介して任意の度合いの安定性を簡単かつ直ちに付与でき、さらには実数係数ai、g1を介して好ましい中心周波数と幅のバンドパス特性(ローパス特性を含む)を、簡単かつ直ちに、付与できるようになるという効果が得られる。
続いて、請求項3の発明の効果を説明する。請求項3の発明では、状態オブザーバで推定すべき状態変数を、固定子電流と回転子磁束に選定している。この場合の状態オブザーバは、(16a)式の両辺を(16c)式の関係を利用して、書き改めたものとなる。すなわち、
Figure 0005828441
上式に明示しているように、請求項3の発明で推定対象とした固定子電流に対応したオブザーバゲインGi’と請求項2の発明で推定対象とした固定子反作用磁束に対応したオブザーバゲインGiは、次の関係がある。
Figure 0005828441
(26)式に、請求項2の発明におけるゲイン関係式(11a)式を用いると、請求項3の発明の(15a)式を得る。請求項3の発明における回転子磁束に対応したオブザーバゲインは、(25b)式と(16b)式の比較より明白なように、請求項2の発明における回転子磁束に対応したオブザーバゲインと同一である。
以上の説明より、当業者には既に明白なように、請求項3の発明は請求項2の発明と同様な効果を奏する。具体的には、請求項3の発明によれば、予め定めた好ましい特性、すなわちすなわち電動機パラメータに独立した安定性(安定性の度合いの指定を含む)、電動機パラメータに独立したフィルタ特性(通過帯域の中心周波数、通過帯域の幅の指定を含む)をもつ1入力1出力安定2次複素フィルタと実質的に同一の好ましい特性を、推定状態変数を固定子電流と回転子磁束の組合わせとする状態オブザーバに、簡単かつ直ちに、付与できるようになるという効果が得られる。特に、正の実数係数aiを介して任意の度合いの安定性を簡単かつ直ちに付与でき、さらには実数係数ai、g1を介して好ましい中心周波数と幅のバンドパス特性(ローパス特性を含む)を、簡単かつ直ちに、付与できるようになるという効果が得られる。
3種の座標系と回転子位相の1関係例を示す図 1入力1出力複素フィルタの周波数特性(振幅特性)を概略的に示した図 本発明に基づくαβ固定座標系上の位相速度推定器(回転子位相推定装置)を利用した駆動制御システム例を示すブロック図 本発明に基づくαβ固定座標系上の位相速度推定器(回転子位相推定装置)の内部構造例を示すブロック図 状態変数として固定子反作用磁束と回転子磁束の組合せを採用したαβ固定座標系上の状態オブザーバの基本構成例を示すブロック図 本発明に基づくγδ準同期座標系上の位相速度推定器(回転子位相推定装置)を利用した駆動制御システム例を示すブロック図 本発明に基づくγδ準同期座標系上の位相速度推定器(回転子位相推定装置)の内部構造例を示すブロック図 状態変数として固定子鎖交磁束と回転子磁束の組合せを採用したγδ準同期座標系上の状態オブザーバの基本構成例を示すブロック
以下、図面を用いて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
同期電動機に対して、本発明の回転子位相推定装置を用いた駆動制御装置を適用した1実施例を図3に示す。本発明の主眼は回転子位相推定装置(以下、位相速度推定器とも言う)にあるが、電動機駆動制御システム全体における回転子位相推定装置(位相速度推定器)の位置づけを明示すべく、あえて、駆動制御装置を含む電動機駆動制御システム全体から説明する。1は同期電動機を、2は電力変換器を、3は電流検出器を、4a、4bは夫々3相2相変換器、2相3相変換器を、5a、5bは共にベクトル回転器を、6は電流制御器を、7は本発明を利用した位相速度推定器(回転子位相推定装置)を、8は余弦正弦信号発生器を、各々示している。当業者には容易に理解されるように、図3では、1の電動機を除く、2から8までの諸機器が駆動制御装置を構成している。本発明に直接的に関連した位相速度推定器は、トルク制御、速度制御でも利用される。本図では、簡単のためトルク制御と実質等価な電流制御の遂行するためのシステムを示している。なお、本図では、電圧、電流の座標系を明示すべく、これら信号には脚号t(uvw座標系)、s(αβ固定座標系)、r(γδ準同期座標系)を付している。更には、簡明性を確保すべく、3×1(三相信号)と2×1(二相信号)のベクトル信号を1本の太い信号線で表現している。
駆動制御装置の中で、本発明と関係するのは、位相速度推定器7である。図3では特に位相速度推定器がαβ固定座標系上で構成されている点に特色がある。図4に、位相速度推定器の内部構造を示した。本位相速度推定器は、位相推定器7aと速度推定器7bとから構成されている。
位相推定器は、固定子電流実測値(i1と標記)と固定子電圧指令値(v1*と標記)に加えて、最終位相推定値(θα^と標記)と電気速度推定値(ω2n^と標記)を入力信号として得て、αβ固定座標系上の初期位相推定値(θα^’と標記)を生成し出力している(本実施例では、固定子電流相当値として固定子電流実測値を利用、固定子電圧相当値として固定子電圧指令値を利用、また速度相当値ω2nとして速度推定値ω2n^を利用)。αβ固定座標系上の本位相推定器は、推定すべき状態変数を固定子鎖交磁束と回転子磁束、固定子反作用磁束と回転子磁束、固定子電流と回転子磁束の3種組合せのいずれか1つの組合せを採用した同一次元状態オブザーバが構成されており、回転子磁束の推定値に対して逆正接処理をして、初期位相推定値θα^’を生成している。速度推定器の役割は、初期位相推定値θα^’から最終位相推定値θα^と電気速度推定値ω2n^を生成することにある。本速度推定器は、非特許文献(2)で紹介された積分フィードバック形速度推定法に基づき、あるいは非特許文献(1)、特許文献(1)で利用された適応的方法に基づき、構成してよい。速度推定器は、本発明に関係しない上に更には当業者には諸文献を通じ公知であるので、これ以上の説明は省略する。
推定状態変数として固定子反作用磁束と回転子磁束の組合せを採用した状態オブザーバの1構成例は、(16)式の通りである。推定状態変数として固定子反作用磁束と回転子磁束の組合せを採用した状態オブザーバの他の構成例は、非特許文献(2)、特許文献(3)にも紹介されている。また、推定状態変数として、固定子鎖交磁束と回転子磁束の組合せを採用した状態オブザーバの他の構成例は、非特許文献(2)、特許文献(3)に紹介されている。また、固定子電流と回転子磁束の組合せを採用した状態オブザーバの1構成例は(25)式の通りである。固定子電流と回転子磁束の組合せを採用した状態オブザーバの構成例は、非特許文献(1)、特許文献(1)にもある。
以上のように、位相推定器(状態オブザーバ)の構成例に関しては多数の報告があり、当業者には公知であるが、参考までに、図5に、推定すべき状態変数として固定子反作用磁束と回転子磁束の組合せを採用した、αβ固定座標系上の位相推定器(状態オブザーバ)の詳細構造例を示した。図5の位相推定器(状態オブザーバ)に対しては、請求項1及び請求項2の発明を利用して、これに必須のオブザーバゲインGi、Gmを設定することになる。本発明の基本式(11)式に基づく具体的設定例としては、次の(27)〜(31)式に例示した少なくとも5例が存在する。
Figure 0005828441
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上に例示した5例のいずれか1つを図5の位相推定器(状態オブザーバ)に適用する場合には、オブザーバゲインの設定に必要な回転子速度相当値ω2nとしては、回転子推定値ω2n^を利用することになる。なお、オブザーバゲインの設定に必要な固定子インダクタンス相当値としては、同相インダクタンスに代わって、d軸インダクタンス、q軸インダクタンスを利用してもよい。
推定すべき状態変数として固定子鎖交磁束と回転子磁束の組合せを採用したαβ固定座標系上の位相推定器(状態オブザーバ)を構成する場合にも、請求項1及び請求項2の発明が利用可能である。すなわち、固定子鎖交磁束と回転子磁束の組合せを採用する場合にも、本発明の基本式(11)式が利用される。ひいては基本式(11)式に基づくオブザーバゲインの具体的設定例である(27)〜(31)式の設定例が無修正で利用される。
推定すべき状態変数として固定子電流と回転子磁束の組合せを採用したαβ固定座標系上の位相推定器(状態オブザーバ)を構成する場合には、請求項1及び請求項3の発明を利用することになる。本発明の基本式(15)式に基づくオブザーバゲインの具体的設定例としては、基本式(11)式に基づくオブザーバゲインの具体的設定例である(27)〜(31)式を活用すればよい。すなわち、固定子反作用磁束、固定子鎖交磁束に対応したオブザーバゲインGiと固定子電流に対応したオブザーバゲインGi’との両基本式(11)式と(15)式の間には、両式の比較より明白なように、基本的に単純比例関係が存在する。この比例関係により、オブザーバゲインの基本式から、オブザーバゲインの具体的設定例の導出は、同一となる。本認識により、当業者には、基本式(15)式に基づくオブザーバゲインの具体的設定例は、(27)〜(31)式より自明であるので、これ以上の説明は省略する。
同期電動機に対して、本発明の回転子位相推定装置を用いた駆動制御装置を適用した他の実施例を図6に示す。図6と図3との電動機駆動制御システムの基本的相違は、回転子位相推定装置(位相速度推定器)の位置にある。図3の実施例では、位相速度推定器をαβ固定座標系上で構成した。これに対して、図6では、位相速度推定器をγδ準同期座標系上で構成した実施例を示している。
図6において、位相速度推定器を除く他の機器の機能は、図3と同一であるので、この説明は省略する。図6における位相速度推定器の内部構造を図7に示した。位相速度推定器は位相偏差推定器7cと位相同機器7dから構成されている。位相同期器の役割は、位相偏差推定値θγ^からαβ固定座標系から見た位相推定値θα^、速度推定値ω2n^、座標系速度ωγを生成することにある。本位相同期器は、非特許文献(2)で使用されたものと同一の一般化積分形PLL法に基づき構成されている。上記に例示した位相同期器に代わって、特許文献(2)で利用された適応的方法あるいは他の方法に基づき同様な機能を有する位相同期器を構成してよい。
位相偏差推定器7cは、固定子電流実測値(i1と標記)と固定子電圧指令値(v1*と標記)に加えて、座標系速度ωγと速度推定値ω2n^を入力信号として得て、γδ準同期座標系から見た位相推定値(換言するならば、位相偏差推定値)θγ^を生成し出力している。γδ準同期座標系上の本位相偏差推定器としては、同一次元状態オブザーバが構成されている。このときの状態オブザーバは、推定すべき状態変数として、固定子鎖交磁束と回転子磁束、固定子反作用磁束と回転子磁束、固定子電流と回転子磁束の3種組合せのいずれでもよい。状態オブザーバにより2×1ベクトル信号である回転子磁束推定値φm^が得られたならば、この各要素による逆正接演算を通じ、位相推定値θγ^を生成し、出力している。
γδ準同期座標系上での位相偏差推定器(状態オブザーバ)の構成例は、既に種々の文献にある。例えば、推定状態変数として固定子反作用磁束と回転子磁束の組合せを採用した状態オブザーバの構成例は、非特許文献(2)、特許文献(3)に紹介されている。また、推定状態変数として固定子鎖交磁束と回転子磁束の組合せを採用した状態オブザーバの構成例は、同じく非特許文献(2)、特許文献(3)に紹介されている。また、固定子電流と回転子磁束の組合せを採用した状態オブザーバの構成例は特許文献(2)、(4)に紹介されている。このように、γδ準同期座標系上での位相偏差推定器(状態オブザーバ)の構成法は、当業者には公知であるが、参考までに、推定すべき状態変数として固定子鎖交磁束と回転子磁束の組合せを採用した位相偏差推定器(状態オブザーバ)を図8に示した。図8の位相偏差推定器(状態オブザーバ)に対しては、請求項1及び請求項2の発明を利用して、これに必須のオブザーバゲインGi、Gmを設定することになる。本発明によるオブザーバゲイン設定のための基本式は、(11)式である。すなわち、αβ固定座標系上のものと、原則、同一である。従って、基本式(11)式に基づく具体的設定例としては、少なくとも、前掲の(27)〜(31)式に示したものが無修正で利用可能である。
推定すべき状態変数として固定子反作用磁束と回転子磁束の組合せを採用した位相偏差推定器(状態オブザーバ)をγδ準同期座標系上で構成する場合にも、請求項1及び請求項2の発明を利用して、これに必須のオブザーバゲインGi、Gmを設定することになる。この状態オブザーバのためのオブザーバゲイン設定のための基本式は、(11)式である。すなわち、αβ固定座標系上のものと、原則、同一である。従って、基本式(11)式に基づく具体的設定例としては、少なくとも、前掲の(27)〜(31)式に示したものが無修正で利用可能である。
推定すべき状態変数として固定子電流と回転子磁束の組合せを採用した位相偏差推定器(状態オブザーバ)をγδ準同期座標系上で構成する場合には、請求項1及び請求項3の発明を利用して、これに必須のオブザーバゲインGi’、Gmを設定することになる。この状態オブザーバのためのオブザーバゲイン設定のための基本式は、(15)式である。すなわち、αβ固定座標系上のものと、原則、同一である。従って、基本式(15)式に基づく具体的設定例に関しては、αβ固定座標系上の状態オブザーバのための設定例が無修正で利用可能である。
γδ準同期座標系上の状態オブザーバのオブザーバゲイン設定に利用する固定子インダクタンス相当値Liに関しては、γ軸電流(推定d軸電流)に対応した固定子インダタクタンス相当値と、δ軸電流(推定q軸電流)に対応した固定子インダタクタンス相当値とを違えてよい。例えば、γ軸電流(推定d軸電流)に対応した固定子インダタクタンス相当値としてd軸インダクタンスを利用し、δ軸電流(推定q軸電流)に対応した固定子インダタクタンス相当値としてq軸インダクタンスを利用してよい。このように、γδ準同期座標系上の状態オブザーバのオブザーバゲイン設定に利用する固定子インダクタンス相当値Liは、必ずしも単一にする必要はない。
以上、本発明に関し、各種の図を利用しつつ複数の実施例を用いて具体的かつ詳しく説明した。上記説明の本発明は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者によって本発明の技術的範囲を外れない範囲内で多様な変形及び変更が可能であり、前述した実施例及び添付図面に限定されるものではないことを指摘しておく。
本発明は、中〜高速域でセンサレス駆動が望まれる用途に広く活用することができる。
1 同期電動機
2 電力変換器
3 電流検出器
4a 3相2相変換器
4b 2相3相変換器
5a ベクトル回転器
5b ベクトル回転器
6 電流制御器
7 位相速度推定器
7a 位相推定器
7b 速度推定器
7c 位相偏差推定器
7d 位相同期器
8 余弦正弦信号発生器

Claims (3)

  1. 回転子に永久磁石を有する同期電動機のための駆動制御装置に使用され、
    かつ、αβ固定座標系上の駆動用固定子電圧の相当値と駆動用固定子電流の相当値を入力信号とし、またはdq同期座標系への位相差のない収斂をめざしたγδ準同期座標系上の駆動用固定子電圧の相当値と駆動用固定子電流の相当値を入力信号とし、
    固定子鎖交磁束と回転子磁束、固定子反作用磁束と回転子磁束、固定子電流と回転子磁束の3種組合せのいずれか1つの組合せを状態変数に選定し、
    固定子電流相当値と同推定値との偏差にオブザーバゲインを乗じて得た信号をフィードバックして状態変数を推定するようにした状態オブザーバを少なくとも構成して回転子位相推定値を生成する手段を備える回転子位相推定装置であって、
    駆動用固定子電圧相当値の正相分(または逆相分)から状態変数推定値の1つである回転子磁束推定値の正相分(または逆相分)に至る1入力1出力伝達関数が、予め定めた分母2次、分子0次の1入力1出力安定2次の1次係数、0次係数の少なくとも1つを複素数とする複素フィルタに概ね等しくなるように、安定2次複素フィルタを構成する係数を直接的に利用してオブザーバゲインを設定するようにしたことを特徴とする回転子位相推定装置。
  2. 複素数の変数sと実数の係数aiから構成される2次安定多項式A(s)を次式とし、
    A(s)=s+as+a;a>0
    安定2次複素フィルタの実数係数の1つをg1とし、安定2次複素フィルタのフィルタゲインをgとし、回転子の電気速度相当値をω2nとし、虚数単位をjとして、安定2次複素フィルタを次式のように構成し、
    Figure 0005828441
    固定子インダクタンス相当値をLiとし、固定子巻線抵抗相当値をR1とし、2×2単位行列をIとし、2×2交代行列Jを次式とし、
    Figure 0005828441
    更には、状態オブザーバで推定すべき状態変数を固定子鎖交磁束と回転子磁束、固定子反作用磁束と回転子磁束のいずれかの組合せとし、固定子鎖交磁束あるいは固定子反作用磁束に対応したオブザーバゲインをGiで表現し、回転子磁束に対応したオブザーバゲインをGmで表現するとき、オブザーバゲインGi、Gmを、安定2次複素フィルタを構成する実数係数ai、g1を直接的に利用した次式に従い設定することを特徴とする請求項1記載の回転子位相推定装置。
    Figure 0005828441
  3. 複素数の変数sと実数の係数aiから構成される2次安定多項式A(s)を次式とし、
    A(s)=s+as+a;a>0
    安定2次複素フィルタの実数係数の1つをg1とし、安定2次複素フィルタのフィルタゲインをgとし、回転子の電気速度相当値をω2nとし、虚数単位をjとして、安定2次複素フィルタを次式のように構成し、
    Figure 0005828441
    固定子インダクタンス相当値をLiとし、固定子巻線抵抗相当値をR1とし、2×2単位行列をIとし、2×2交代行列Jを次式とし、
    Figure 0005828441
    更には、状態オブザーバで推定すべき状態変数を固定子電流と回転子磁束の組合せとし、固定子電流に対応したオブザーバゲインをGi’で表現し、回転子磁束に対応したオブザーバゲインをGmで表現するとき、オブザーバゲインGi’、Gmを、安定2次複素フィルタを構成する実数係数ai、g1を直接的に利用した次式に従い設定することを特徴とする請求項1記載の回転子位相推定装置。
    Figure 0005828441
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