JP5827272B2 - ケーブル固定構造、及びケーブル - Google Patents

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Description

本発明は、主にケーブルに使用される固定構造に関する。
産業用ロボットなどの稼働部などにおいて、リボンケーブル、ベアケーブルなどと称される、複数本のケーブルを並列固定したものが広く使用されている。並列固定の方法としては、熱融着による方法、接着による方法などが知られている。
熱融着による方法としては、ケーブル間に熱風を当てて融着する方法(特許文献1)や、ケーブルを型で加熱プレスする方法(特許文献2)などが知られている。
一方、接着固定する方法としては接着剤として紫外線硬化塗料を使用して接合する方法(特許文献3)などが知られている。
ところで、従来使用されているケーブルの並列固定方法は、各ケーブルが伸びた状態で連続的に給線し、長さ方向の全体に渡って固定することを想定した物が殆どであり、長さ方向の一部分のみを固定したりするには不向きであることが多い。
特許文献2に記載の製造装置では、ケーブルを間欠的に固定することができるが、これも各ケーブルが伸びた状態で連続的に給線して固定することを想定したものであり、ケーブルが曲がった状態で固定するは不向きな方法である。
特に、図1のように、並列したケーブルによって形成される平面に沿って曲げた部分を有する形状のケーブルを得たくても、この形状は外側のケーブルを長く、内側のケーブルを短くする必要があるため、ケーブルの長さ方向の全体に渡って固定されたケーブルではこの形状を得ることができず、曲げた形状とした後にケーブル間を固定することも、先述の通り困難である。
また、従来の加熱融着による固定方法は、ケーブルに使用される材料によっては熱影響が大きく、ケーブル特性に悪影響を及ぼす可能性も存在する。
特許文献3に記載の接着剤塗布による固定方法を使用すれば、熱影響を抑えつつ、曲げた後にケーブル間を固定することが可能だが、接着固定では使用環境によっては固定強度が不十分なことがある。特に固定部の近傍でケーブルが分岐し、分岐部に引張応力が働くような環境で使用される際、固定部が破壊されてしまう可能性が高い。
特開昭54−037283 特開昭55−090017 特開平7−14437
本発明の課題は、ケーブルの並列固定構造に関して、長さ方向の一部にだけ固定部を設けるのに適し、ケーブルへの熱影響を抑え、ケーブルの曲げ部や分岐部の近傍で使用されるのが好ましいケーブル固定構造を提供することにある。
発明者は鋭意工夫を重ねた結果、ケーブルのシース上に融着層を設けた上、固定が必要な箇所に補強部材を設け、補強部材と融着層を融着する一方で、融着層同士は融着しないようケーブルを固定することで、従来の問題を解消できることを究明した。
本発明によって提供されるケーブル固定構造は、各ケーブルのシースの外周に融着層が設けられ、ケーブルの固定部において、並列した複数本のケーブルを囲むように多層構造を有する補強部材が設けられ、隣り合う該ケーブルの融着層は融着されることなく、補強部材と融着層との間が互いに融着するとともに、多層構造を有する補強部材の、融着層と接する層の融点が、融着層の融点、及びケーブルのシースの融点よりも低いことを特徴とする。
本発明のケーブル固定構造にあっては、以下に記載した優れた効果が期待できる。

(1)ケーブルの長さ方向の所望する位置だけに固定部を設けるのに適した構造である。

(2)このため、ケーブルを曲げた状態で固定部を設けることが可能であり、並列したケーブルによって形成される平面に沿った曲げ部を有するケーブルの製造が容易に行える。

(3)加えて、ケーブルに設けた融着層同士は融着しないようケーブルが固定されるため、ケーブルへの熱影響は最小限に抑えられる。

(4)さらに、従来の固定方法と比較して極めて高い引張強度を得ることができ、固定部の近傍で長尺部材が分岐した状態での使用にも十分耐えうる。
並列したケーブルを、並列したケーブルによって形成される平面に沿って曲げた様子である。 本発明のケーブル固定構造である。 本発明のケーブル固定構造を得る方法の一例である。 本発明のケーブル固定構造を使用したケーブルの例である。 ケーブル固定構造の引張強度の測定方法である。
以下、本発明の基本的構成を、添付図面を参照しながら説明する。
図2において、1はケーブル、2はケーブルを構成する信号線、3はケーブルのシース、4はシースの外周に設けられた融着層、5は補強部材であり、6が本発明のケーブル固定構造(固定部)である。図2はケーブル1が5本、各ケーブル1を構成する信号線2が2本の場合を示しているが、ケーブル1は複数本であれば本数は限定されず、信号線2の本数、配列は適宜選択すれば良い。また、後述するようにケーブル1は信号線を含まないチューブなどであっても良い。
本願発明におけるケーブル1とは、電線、同軸ケーブル、光ファイバなどの信号線2を必要に応じてシールド層などで覆い、シース3で一括被覆した一般的なケーブルに限定されるものではなく、導体線をシースで被覆したのみの公知の電線、導体線を誘電体、シールド層、シースで覆った公知の同軸ケーブル、光ファイバをシースで被覆した公知の光ファイバケーブル、エアーや液体を輸送する公知の単層もしくは多層チューブも含むものとする。なお、単層チューブの際はその単層を、多層チューブの際は最外層をケーブル1におけるシース3と見なす。
本発明で特徴的なことは、並列した複数本のケーブル1のシース3の外周に融着層4が設けられ、複数本のケーブル1の固定部6においてケーブル1を囲むように補強部材が設けられており、補強部材5と各ケーブル1の融着層4とが互いに融着されている一方、隣り合うケーブルの融着層4は互いに融着されていないことである。
ケーブルシース3の外周に融着層4を設ける構造を採用することにより、ケーブルシース3の材料特性に左右されることなく、ケーブル1の外周を融着に適したものとすることができる。
また、ケーブル1の長さ方向の所望する場所のみに補強部材5を設け、融着層4と融着させることで、ケーブル1の必要な箇所のみを並列固定させることができる。さらに、本発明においては、ケーブルシース3の外周に存在する融着層4間では融着させないままとし、融着層4と補強部材5の間での融着のみによって各ケーブル1を並列固定するのも特徴である。
これは融着層4間が融着するまで加熱を行うと、ケーブルシース3内の信号線2に熱影響が発生し、ケーブル特性に悪影響が発生する可能性があるためである。特に、熱に弱いプラスチック製光ファイバを信号線2として使用している際には、プラスチック製光ファイバ自体が溶けてケーブルとしての機能を失う可能性が極めて高いため、融着層4と補強部材5とが十分に融着する程度の加熱に留めることがより重要となる。
本発明においては、融着層4と補強部材5の間での融着によって固定強度を得る必要があるため、融着層4と補強部材5が強固に融着する構成とするのが好ましい。
強固に融着するためには、融着層4と補強部材5とが相溶性の材料であることが好ましい。相溶性であるとは、互いに同一の材料である、もしくは化学的構成が類似していることにより、融解した際に互いに混ざり合いやすいことを指す。融着層4と補強部材5とが相溶性であることで、強固な融着を得ることができる。
また補強部材5は多層構造とすることが好ましい。これは、融着層との相溶性を有する補強部材5の材料が必ずしも、柔軟性などその他の特性に優れたものであるとは限らないためである。例えば、固定部6に柔軟性が必要な場合は、補強部材5を2層構造とし、融着層4と接する層は、融着層4との相溶性が高い材料の層とし、もう1つの層は、融着層4と接触する層と同種の材料としつつ、より柔軟性に富んだ組成の材料とすることで、強固な融着と柔軟性を両立することができる。融着層4と接触する層以外の層は、柔軟性に限らず、必要な特性を有する材料を適宜選択すればよい。
補強部材5を多層構造とする際は、融着層4と接する層の融点を融着層4の融点、及びケーブルシース3の融点よりも低いものとすることが好ましい。
この構成とすることで、加熱融着を行う際に、融着層4及びケーブルシース3の融解が開始する前に、補強部材5の融着層4と接する層が融解するため、ケーブル1に熱影響が発生する前に融着を完了することができる。なお、融着層4と接触する層以外の層の融点は、融着層4と接する層の融点より高いものにしておくと、融着後の外観変化を最小限に留めることができて好ましい。
加えて補強部材5は、シートのような薄膜状のものが好ましい。補強部材5を薄膜状とすることで、融着層4と補強部材5の接触面を素早く加熱することができ、短時間で融着が完了するため、ケーブル1への熱影響を最小限に留めることができる。
薄膜状補強部材を使用する際は、その厚さが100〜2000μmの範囲にあるのが好ましい。薄膜状補強部材の厚さが薄すぎると、融着後の固定強度が弱くなってしまい、逆に厚すぎると融着層4と補強部材5の接触面を素早く加熱することができなくなってしまう。
融着層4と補強部材5の融着には、特許文献2に記載された公知の加熱プレス用の型と同様の断面形状を有する融着金型7を使用するのが好ましい。所定の長さの融着金型7を使用することで、ケーブル1の長さ方向の所望する位置のみに所定の長さの固定部6を形成することができる。
融着方法は融着金型7を使用した方法に限定されず、利用可能な方法を適宜選択すれば良い。
上述のように、本発明はケーブル1の長さ方向の所望する位置に固定部6を形成することができるため、ケーブル1を所望する形状に変形させた後に固定部6を形成するのに好ましく利用できる。
例えば、図1に示すように、並列した複数本のケーブル1を、並列したケーブルによって形成される面に沿って曲げた形状とする場合は、ケーブルを曲げた後、曲げ部8の近傍に固定部6を設ければ良い。
さらに、本発明のケーブル固定構造6は、後述するように高い引張強度を有するため、固定部6の近傍でケーブル1が分岐して使用される場合にも好適である。
本発明のケーブル固定構造を使用したケーブルの実施例として、図7を示す。以下、図7の形状のケーブルを得る方法について述べる。
複数本の信号線2上に融点が130〜140℃の範囲にあるポリ塩化ビニル製のシース3を押出し、外径を8mmとしたケーブル1を6本用意した。各ケーブル1のシース3上に、融着層4として融点が150〜160℃の範囲にあるポリウレタンを押出し、外径を9mmとした。
融着層4を設けた5本のケーブル1を並列させた後、長さ方向の途中を10cmに渡って補強部材5で覆われるように、補強部材5融着して固定部6を設ける。補強部材5として厚さ500μmで、2層構造となっているポリウレタンシートを使用した。このポリウレタンシートの融着層4と接する側の層は厚さ250μm、融点が115〜120℃の範囲にあるポリウレタン層となっており、もう1層は厚さ250μm、融点が140〜150℃の範囲にあり、より柔軟性の高い熱可塑性ポリウレタン層となっている。
固定方法の一例を図3に示す。ケーブル形状に合わせて作成した融着金型7aにポリウレタンシート5を敷き(図3(a))、ケーブル1がシート5に、シート5が融着金型7aに密着するよう5本のケーブル1を配置し(図3(b))、上から融着金型7bを押当て150℃で加熱融着を行った(図3(c))。この時、最も融点の低いポリウレタンシート5のポリウレタン層が最初に融解して、融着層4に固定される。加熱温度は融着層4、及び熱可塑性ポリウレタン層が融解する可能性のある温度であるが、加熱時間を調整することでこれら層の融解が始まる前に必要な融着を終えることができる。
融着層4同士の融着が起こらないように融着層4と補強部材5の融着を行うため、融着層4によって覆われたケーブル1への熱影響は極めて少なく、融着によるケーブル1への悪影響は抑えられる。
片面へのシート5の融着が完了したら(図3(d))、もう片面にも同様の方法でシート5を融着し、不要な部分を除去して固定部6の形成が完了する。
次に、固定部6の近傍で並列したケーブル1によって形成される面に沿って、複数本のケーブル1を90°曲げた。この時曲げ部8において、外側のケーブル1が長く、内側のケーブル1が短くなるが、この時点では固定部6以外ではケーブル間の固定がされていないため、曲げ径に応じた長さ調整を容易に行うことができる。
曲げが完了したら、曲げ部8の反対側にも固定部6を先述した方法で形成する。
ケーブル端部の長さを揃え、機器接続用のコネクタ9を設ける。コネクタ9は周知のものから接続する機器に応じたものを適宜選択して設ければよい。この時ケーブルの片端は、ケーブル5本をまとめて1つのコネクタ9を設けるが、もう一端は固定部の近傍でケーブルを2本と3本に分岐させ、それぞれにコネクタ9を設けて完成となる。
本発明のケーブル固定構造は以下に記載するように強い引張強度が得られるため、引張方向の力が掛かるようなケーブル分岐部にも好適に使用できる。
続いて、本発明の引張強度を測定した。測定方法を図5に示す。
上述の方法、構成で、固定部6を形成し、ケーブル長40mmにカットしたものを評価サンプルとした。
比較例として、引用文献3に記載された接着による固定方法を使用して、評価サンプルと同等の構成のものを準備した。
サンプルの上端と下端を引張試験機のチャック10で固定し、引張速度200mm/minにて上下方向に引張り、固定部6が破断した時の値を引張強度とし、引張強度が240N以上のものを合格とした。なお、引張強度が240N以上という条件は、部分的に固定するのに不向きな特許文献1に記載の融着方法で、同等の評価サンプルを作成した際に得られる値である。
測定結果を表1に示す。比較例では大半のサンプルの引張強度が200N以下であるのに対し、本願発明では240N以上という高い引張強度を安定して得られることが確認できた。
Figure 0005827272
以上の例は、本発明の一例に過ぎず、本発明の思想の範囲内であれば、種々の変更および応用が可能であることは言うまでもない。本発明の固定構造は、ケーブルの並列固定を想定したものではあるものの、ケーブル以外、例えば、金属パイプの外周に融着層を設け、必要箇所のみ融着するなど、種々の長尺品に応用することが可能である。
1 ケーブル
2 信号線
3 シース
4 融着層
5 補強部材
6 固定部
7 融着金型
8 ケーブル曲げ部
9 コネクタ
10 引張試験機のチャック

Claims (8)

  1. 並列した複数本のケーブルを、長さ方向の少なくとも一部において並列状態で固定した構造であって、該ケーブルのそれぞれはシースの外周に融着層を有し、該複数本のケーブルの固定部において、並列した該複数本のケーブルを覆うように多層構造を有する補強部材が設けられ、隣り合う該ケーブルの融着層は融着されることなく、該補強部材と該融着層との間が互いに融着するとともに、該多層構造を有する補強部材の、該融着層と接する層の融点が、該融着層の融点、及び該ケーブルのシースの融点よりも低いことを特徴とするケーブル固定構造。
  2. 該融着層と、該補強部材とが相溶性の材料であることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル固定構造。
  3. 該補強部材が薄膜状であることを特徴とする、請求項1または2に記載の融着構造。
  4. 該薄膜状補強部材の厚さが100〜2000μmの範囲にある、請求項に記載のケーブル固定構造。
  5. 該融着部の引張強度が240N以上であることを特徴とする、請求項1〜の何れかに記載のケーブル固定構造。
  6. 請求項1〜の何れかに記載の該ケーブル固定構造の近傍で、該並列した複数本のケーブルが曲げられていることを特徴とするケーブル。
  7. 該並列した複数本のケーブルが曲げられている部分が、該並列した複数本のケーブルによって形成される平面に沿って曲げられていることを特徴とする、請求項に記載のケーブル。
  8. 請求項1〜の何れかに記載の該ケーブル固定構造の近傍で、該ケーブルが分岐していることを特徴とするケーブル。
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