JP5826732B2 - 植物栽培用資材および植物成長阻害作用を軽減する方法 - Google Patents
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Description
このため、栽培用土を用いて環境緑化植物や農園芸用植物を栽培する場合、界面活性剤や木質材料中の可溶性成分など植物の成長にとって有害な植物成長阻害因子による植物への悪影響を少なくする必要がある。
すなわち、本発明は植物成長阻害因子による成長阻害を軽減するための植物栽培用資材であって、シクロデキストリンを担持した担体を含む植物栽培用資材を提供する。
シクロデキストリンは市場から入手してそのまま本発明の植物栽培用資材に使用できる。
シクロデキストリンはD−グルコースがα−1,4−グルコシド結合して環状構造を形成しており、その分子は筒状になっている。シクロデキストリンの内腔は疎水性の環境になっており、水溶液中ではエネルギー的に不安定な状態にあるが、植物成長阻害因子が接近すると植物成長阻害因子の疎水性部分がこの内腔部分に取り込まれ、エネルギー的に安定すると考えられる。このシクロデキストリンの包接作用により、植物成長阻害因子が植物体に移行するのが抑止され、植物成長阻害作用が軽減される。植物成長阻害因子が界面活性剤の場合、界面活性剤の親水性部分はシクロデキストリンの内腔からはみ出た形で存在し、このはみ出した親水性部分が、界面活性剤の保水性や防黴性等の機能維持に効果を発揮するものと考えている。
本発明の植物栽培用資材は、アニオン系、非イオン系、カチオン系、両性系、天然系などのいずれの界面活性剤に対しても、その植物成長阻害作用を軽減することができる。本発明の植物栽培用資材が植物成長阻害作用を軽減できるアニオン系界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(AES)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、αオレフィンスルホン酸塩(AOS)などが挙げられる。
木質材料の原料としては、建築廃材、廃木、廃根、剪定枝、木片等が挙げられる。
また、アブラナ科アブラナ属の植物の具体例としては、こまつな(Brassica rapa var.perviridis)、チンゲンサイ(Brassica rapa var.chinensis)、タアサイ(Brassica rapa var.narinosa)、かぶ(Brassica rapa var.rapa或いはBrassica rapa var.glabra)、ブロッコリー(Brassica oleracea var. italica)、カリフラワー(Brassica oleracea var.botrytis)、キャベツ(Brassica oleracea var.capitata)などが挙げられ、本発明の植物栽培用資材はこれらの植物に対して植物成長阻害因子による成長阻害作用の抑制効果が大きい。
また、キク科アキノノゲシ属の植物としては、レタス(Lactuca sativa)、マメ科ウマゴヤシ属の植物としてはアルファルファ(Medicago sativa)に対して植物成長阻害因子による成長阻害作用の抑制効果が大きい。
担体の素材はシクロデキストリンの担持能力を有するものであれば特に制限なく使用できる。シクロデキストリンの担持能力に優れた素材の例としては、木質繊維を主要構成要素とする木質基体が挙げられ、より具体的には、後述する濾紙や木質繊維板が挙げられる。
シート状の担体に担持するシクロデキストリンの量は、長期間その効果を発揮させる観点から、シクロデキストリンを担持していない担体1gあたり20mg〜1gとすることが好ましく、50mg〜500mgとすることがより好ましい。
木材繊維を主原料とする木質繊維板は、担持できるシクロデキストリン量が多く、かつ、シクロデキストリンを徐放し、その効果が長持ちするため担体として好ましい。
上記木質ボードに担持させるシクロデキストリンの量は、長期間その効果を発揮させる観点から、担体1gあたり10mg〜2gとすることが好ましく、20mg〜1gとすることがより好ましく、100mg〜1gとすることがさらに好ましい。
また、栽培用土の製造工程で粉末状の植物栽培用資材を添加し均一に分散させることにより、植物成長阻害因子による成長阻害が軽減された栽培用土を製造することができる。この栽培用土の形状を植栽ポットや鉢の形状に合わせておくことにより、植物栽培用資材を量りとったり、散布する手間を省くことができる。
(1)セルロース系繊維の水性分散体にシクロデキストリンを混合して抄紙する方法(内添式)、
(2)シクロデキストリンを水中に溶解または分散させ、この溶液または分散液を担体シートに塗布、滴下、浸漬などの方法により含浸させてから、この担体シートを乾燥させる方法などがある。上記内添式では、セルロース系繊維の水性分散体に添加するシクロデキストリンは、水溶液または水性分散体でもよく、粉末またはペースト状であってもよい。
本発明では、植物成長阻害因子とシクロデキストリンとを接触させることにより、植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減する。本発明により植物成長阻害因子による成長阻害を軽減できる理由は明らかではないが、発明者らは、植物成長阻害因子の疎水性部分が疎水的なシクロデキストリンの内腔部分に取り込まれ、植物成長阻害因子の植物体への移行が妨げられているためであると考えている。また、植物成長阻害因子が界面活性剤の場合、界面活性剤の親水性部分はシクロデキストリンの内腔からはみ出た形で存在し、このはみ出した親水性部分が、界面活性剤の保水性や防黴性等の機能を損なわずに効果を発揮するものと考えている。
本発明の実施にあたっては、植物成長阻害因子を含む栽培用土100質量部あたり、シクロデキストリンの量を0.1〜2質量部用いることが好ましい。
本実施例で使用した植物成長阻害因子としての界面活性剤を表1に示す。これらの界面活性剤は1%水溶液として使用した。なお、界面活性剤A〜Eは表1の中央欄に記載した各成分を等濃度含む。
本実施例で用いた植物を表2に示す。
3−1) β−CDと界面活性剤の両方を担持した植物栽培用資材の効果
[実施例1]
<植物栽培用資材の調製>
蒸留水を用いて上記界面活性剤Cの1%水溶液を調製した。この界面活性剤C水溶液1.2mLを濾紙(定性濾紙No2、直径70mm;質量0.49g)1枚に滴下し、十分浸透させた。その後、この濾紙を80℃の乾燥機中に2時間放置し、濾紙中の水分を蒸発させて界面活性剤含有濾紙基材を調製した。
市販のワイピングクロス(キムタオルホワイト、日本製紙クレシア製)から55mm×45mmの切片を切り出し、この切片6枚を重ねて、ワイピングクロス製の支持台を作製した。
直径90mmのガラスシャーレの底に上記支持台を置き、上から蒸留水15mLを加え、しばらく放置した。水が支持台に十分浸透した後、この支持台の上に上記植物栽培用資材を載せ、その上に通常の定性濾紙(No2、直径70mm)1枚を載せた。ガラスシャーレの縁と支持台の間の部分に蒸留水10mLを加えた後、上記定性濾紙上にカイワレの種20粒を播種し、25℃で7日間、暗黒下で静置し、発芽率や成長状況を観察した。結果を表3−1に示す。なお、表中の下胚軸長は、発芽した個体における根から子葉までの長さの平均値である。
界面活性剤の種類とβ−CDの添加量を、表3−1に記載したものとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2〜6の実験を行った。結果を表3−1に示す。
植物栽培用資材へのβ−CDの担持処理を行わなかったこと以外は実施例1〜6と同様にして、比較例1〜6の実験を行い、発芽率等を観察した。また、無処理対照実験として、植物栽培用資材への界面活性剤の担持処理とβ−CDの担持処理のどちらも行わなかったこと以外は実施例1〜6と同様にして、比較例7〜12の実験を行い、発芽率等を観察した。結果を表3−1に示す。
栽培植物をカイワレに代えてコマツナとし、界面活性剤の種類とβ−CDの添加量を表3−2に記載したものとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例7〜14を、比較例1と同様にして比較例13〜20を、比較例7と同様にして無処理対照である比較例21〜28の実験を行った。結果を表3−2に示す。
表3−2に示す結果から、植物成長に関して言えば、β−CDを含む本発明の植物栽培用資材を用いた実施例7〜14では、植物栽培用資材に界面活性剤のみを添加した比較例13〜20に比べて下胚軸長が長くなっており、植物成長が改善されているのが分かる。特に実施例10〜14では、植物栽培用資材に界面活性剤もβ−CDも添加していない無処理対照と同等かそれ以上の下胚軸長になっており、植物成長が著しく改善されていることが分かる。また、発芽率に関して言えば、本発明の植物栽培用資材を用いた実施例7〜14では、界面活性剤のみを添加した比較例13〜20に比べて発芽率が改善しており、無処理対照である比較例21〜28と同じく100%であった。以上の表3−2の結果より、β−CDを含有する本発明の植物栽培用資材は、界面活性剤がコマツナの発芽や成長に及ぼす悪影響を解消若しくは低減化するのに有効であることが明らかになった。
栽培植物ならびに植物栽培用資材に添加する界面活性剤の種類およびβ−CDの量を表3−3に記載のものとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例15〜17を、比較例1と同様にして比較例29〜31を、比較例7と同様にして無処理対照である比較例32〜34の実験を行った。結果を表3−3に示す。
表3−3に示す結果から、植物成長に関して言えば、β−CDを含む本発明の植物栽培用資材を用いた実施例15〜17では、植物栽培用資材に界面活性剤のみを添加した比較例29〜31に比べて下胚軸の長さが長くなっており、植物成長が改善されているのが分かる。また、発芽率に関して言えば、本発明の植物栽培用資材を用いた実施例15〜17では、植物栽培用資材に界面活性剤のみを添加した比較例29〜31と比べて発芽率が改善しており、無処理対照である比較例32〜34と同等なものとなっている。以上の表3−3に示す結果より、β−CDを含有する本発明の植物栽培用資材は、界面活性剤が赤丸ハツカやターサイの成長および発芽率に及ぼす悪影響を解消若しくは低減化することに有効であることが明らかになった。
[実施例18〜24]
β−CDに代えてα−シクロデキストリン(α−CD;試薬1級、和光純薬工業株式会社製)を使用し、栽培植物ならびに植物栽培用資材へのα−CDの添加量を表4に記載されたものとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例18〜24の実験を行った。
植物栽培用資材へのα−CDの担持処理を行わないこと以外は実施例18〜24と同様にして、比較例35〜41の実験を行い、無処理対照実験として植物栽培用資材への界面活性剤の担持処理とα−CDの担持処理のどちらも行わなかったこと以外は実施例18〜24と同様にして、比較例42〜48の実験を行い、発芽率等を観察した。これらの結果を表4に示す。
[実施例25]
<界面活性剤含有濾紙基材の調製>
蒸留水を用いて界面活性剤Cの1%水溶液を調製し、この界面活性剤C水溶液1.2mLを濾紙(定性濾紙No2、直径70mm)1枚に滴下し、十分浸透させた。その後、この濾紙を80℃の乾燥機中に2時間放置し、濾紙中の水分を蒸発させて界面活性剤含有濾紙基材を調製した。
次に、α−CD(試薬1級、和光純薬工業製)14.5gを蒸留水に溶解し、100mLのα−CD水溶液を調製した。このα−CD水溶液の1.5mLを濾紙(定性濾紙No2、直径70mm;質量0.49g)1枚に滴下し、その後、このα−CD含有濾紙基材を80℃の乾燥機中に2時間放置し、濾紙中の水分を蒸発させて、α−CDのみを担持した植物栽培用資材を調製した。
比較のため、上記植物栽培用資材の代わりに、定性濾紙(No2、直径70mm)を用いたこと以外は実施例25と同様にして、比較例49の実験を行い、無処理対照試験として界面活性剤含有濾紙基材の代わりに定性濾紙(No2、直径70mm)を使用し、さらに植物栽培用資材の代わりにも、定性濾紙(No2、直径70mm)を用いたこと以外は実施例25と同様にして比較例50の実験を行った。実施例25および比較例48、49の結果を表5−1に示す。
[実施例37〜48、比較例73〜96]
界面活性剤Cに代えて界面活性剤Bを用いたことの他は、実施例25〜36と同様にして、それぞれ実施例37〜48の実験を行った。また、界面活性剤Cに代えて界面活性剤Bを用いたことの他は、比較例49、50、51〜61、62〜72と同様にして、それぞれ比較例73、85、74〜84、86〜96の実験を行った。これらの結果を表5−3に示す。
[実施例49〜60、比較例97〜120]
界面活性剤Bに代えて界面活性剤Hを用いたことの他は、実施例37〜48と同様にして、それぞれ実施例49〜60の実験を行った。また、界面活性剤Bに代えて界面活性剤Hを用いたことの他は、比較例72〜83と同様にして、それぞれ比較例97〜108の実験を行い、界面活性剤含有濾紙基材もα−CDを担持した植物栽培用資材も使用しない無処理対照試験として比較例85〜96と同様に比較例109〜120の実験を行った。これらの結果を表5−4に示す。
[実施例61〜70、比較例121〜140]
界面活性剤Bに代えて界面活性剤Dを用いたことの他は、実施例37〜46と同様にして、それぞれ実施例61〜70の試験を実施した。また、界面活性剤Bに代えて界面活性剤Dを用いたことの他は、比較例73〜82と同様にして、それぞれ比較例121〜130の試験を実施し、界面活性剤含有濾紙基材もα−CDを含有する植物栽培用資材も使用しない無処理対照試験として比較例85〜94と同様に比較例131〜140の実験を行った。これらの結果を表5−5に示す。
[実施例71〜76、比較例141〜152]
界面活性剤Bに代えて界面活性剤Aを用いたことの他は、実施例37〜39、41〜43と同様にして、それぞれ実施例71〜76の実験を行った。また、界面活性剤Bに代えて界面活性剤Aを用いたことの他は、比較例73〜75、77〜79と同様にして、それぞれ比較例141〜146の実験を行い、界面活性剤含有濾紙基材もα−CDを担持した植物栽培用資材も使用しない無処理対照試験として比較例85〜87、89〜91と同様に比較例147〜152の実験を行った。これらの結果を表5−6に示す。
[実施例77〜82、比較例153〜164]
界面活性剤Bに代えて界面活性剤Gを用いたことの他は、実施例37〜39、41〜43と同様にして、それぞれ実施例77〜82の実験を行った。また、界面活性剤Bに代えて界面活性剤Gを用いたことの他は、比較例73〜75、77〜79と同様にして、それぞれ比較例153〜158の実験を行い、界面活性剤含有濾紙基材もα−CDを担持した植物栽培用資材も使用しない無処理対照試験として比較例85〜87、89〜91と同様に比較例159〜164の実験を行った。これらの結果を表5−7に示す。
[実施例83〜88、比較例165〜176]
界面活性剤Bに代えて界面活性剤Eを用いたことの他は、実施例37〜39、41〜43と同様にして、それぞれ実施例83〜88の試験を実施した。また、界面活性剤Bに代えて界面活性剤Eを用いたことの他は、比較例73〜75、77〜79と同様にして、それぞれ比較例165〜170の試験を実施し、界面活性剤含有濾紙基材もα−CDを含有する植物栽培用資材も使用しない無処理対照試験として比較例85〜87、89〜91と同様に比較例171〜176の実験を行った。これらの結果を表5−8に示す。
界面活性剤Cに代えて界面活性剤Fを用いたことの他は、実施例25、比較例49と同様にして、それぞれ実施例89、比較例177の実験を行った。また、界面活性剤含有濾紙基材もα−CDを担持した植物栽培用資材も使用しない無処理対照試験として比較例50と同様に比較例178の実験を行った。これらの結果を表5−9に示す。
<水溶性成分溶出処理を施した木片基材1の調製>
500mL容ビーカーに300mLの蒸留水を入れ、この中にサクラ材からなる直径40mm、厚さ10mmの円盤型木片を投入し、このビーカーを25℃のインキュベータ中に3日間置いて、木片中の水溶性成分を溶出させた。この後、木片を水中より取り出し、80℃で2時間乾燥させて、水溶性成分溶出処理を施した木片基材1を得た。
蒸留水を用いて、界面活性剤Cの1%水溶液を調製した。この界面活性剤C水溶液の4.5mLを上記木片基材1に滴下し、十分浸透させた。この後、この木片基材を80℃の乾燥機中に4時間放置し、木片基材中の水分を蒸発させて界面活性剤含有木片基材2を得た。
<植物栽培用資材の調製>
β−CD(セルデックスB−100、日本食品化工製)7.2gを加熱した蒸留水に添加して100mLのβ−CD水溶液を調製した。このβ−CD水溶液の1.2mL(β−CD量:0.09g)を濾紙(定性濾紙No2、直径55mm;0.31g)1枚に滴下し、上記水溶液を濾紙に十分浸透させた。その後、この濾紙を80℃の乾燥機中に2時間放置し、濾紙中の水分を蒸発させてβ−CDを担持した植物栽培用資材を調製した。
ガラスシャーレ(直径70mm)の底に1枚の定性濾紙(No2、直径55mm)を敷き、その上に上記木片基材2を包み込んだワイピングクロス(キムワイプS−200、日本クレシア製、120×215mm)を置き、上から蒸留水4mLを加え、さらにワイピングクロスとガラスシャーレの縁の間に蒸留水15mLを注ぎ込んだ。この後、ワイピングクロスの上に上記植物栽培用資材1枚を載せ、さらにその上に通常の定性濾紙(No2、直径55mm)1枚を載せた。この定性濾紙上にターサイの種20粒を播種し、木片基材2が乾燥しないように適宜、蒸留水を添加(1回あたり約20mL)しながら、25℃で7日間、暗黒下で静置し、播種植物の発芽率や成長状況を観察した。
比較のため、β−CDを担持した植物栽培用資材の代わりに、定性濾紙(No2、直径55mm)を用いたこと以外は実施例90と同様にした試験(比較例179)、および無処理対照試験として界面活性剤含有木片基材2の代わりに水溶性成分溶出処理を施した木片基材1を使用し、さらに上記β−CDを含有する植物栽培用資材に代えて定性濾紙(No2、直径55mm)を用いたこと以外は実施例90と同様にして比較例180の実験を行った。
また、栽培植物としてターサイの代わりにチンゲンサイを用い、植物栽培用資材のβ−CD量を0.18gとしたこと以外は実施例90、比較例179、180と同様にして、それぞれ実施例91、比較例181、182の実験を行った。結果を表6に示す。
<界面活性剤含有木片基材3の調製>
蒸留水を用いて、界面活性剤Cの1%水溶液を調製した。この界面活性剤C水溶液の3mLを、3−4)に記載の手順で調製した水溶性成分溶出処理を施した木片基材1に滴下し、十分浸透させた。次いで、この木片基材を80℃の乾燥機中に4時間放置し、木片基材中の水分を蒸発させて界面活性剤含有木片基材3を得た。
<植物栽培用資材の調製>
α−CD(試薬1級、和光純薬工業製)14.5gを蒸留水に溶解し、100mLのα−CD水溶液を調製した。このα−CD水溶液の0.83mL(α−CD量:0.12g)を濾紙(定性濾紙No2、直径55mm;0.31g)1枚に滴下し、上記水溶液を濾紙に十分浸透させた。その後、この濾紙を80℃の乾燥機中に2時間放置し、濾紙中の水分を蒸発させてα−CDを担持した本発明の植物栽培用資材を調製した。
上記植物栽培用資材の代わりに定性濾紙(No2、直径55mm)を用いたこと以外は実施例92と同様にして比較例183を、無処理対照試験として上記木片基材3の代わりに3−4)に記載の手順で調製した水溶性成分溶出処理を施した木片基材1を使用し、さらに上記植物栽培用資材に代えて定性濾紙(No2、直径55mm)を用いたこと以外は実施例92と同様にして比較例184の実験を行った。
栽培植物としてカイワレの代わりにコマツナを用いたこと以外は実施例92、比較例183、184と同様にして、それぞれ実施例93、比較例185、186の実験を行った。結果を表7に示す。
[実施例94]
実施例92の<植物栽培用資材の調製>に記載した手順にて、α−CDを担持した植物栽培用資材を調製した。
次いで、ガラスシャーレ(直径70mm)の底に1枚の定性濾紙(No2、直径55mm)を敷き、その上に未処理の円盤型木片基材4(サクラ材、直径40mm、厚さ10mm)を包み込んだワイピングクロス(キムワイプS−200、日本クレシア製、120×215mm)を置き、上から蒸留水4mLを加え、さらに上記ワイピングクロスとガラスシャーレの縁の間に蒸留水15mLを注ぎ込んだ。この後、ワイピングクロスの上に上記植物栽培用資材1枚を載せ、さらにその上に通常の定性濾紙(No2、直径55mm)1枚を載せた。この定性濾紙上にカイワレの種20粒を播種し、木片基材4が乾燥しないように適宜、蒸留水を添加(約20mL)しながら、25℃で7日間、暗黒下で静置し、播種植物の発芽率や下胚軸の伸長状況を観察した。
比較のため、上記植物栽培用資材の代わりに、定性濾紙(No2、直径55mm)を用いたこと以外は実施例94と同様にして比較例187の実験を行った。また、上記未処理の木片基材4の代わりに上記3−4)に記載の水溶性成分溶出処理を施した木片基材1を使用し、かつ、α−CDを担持した植物栽培用資材の代わりに定性濾紙(No2、直径55mm)を用いたこと以外は実施例94と同様にして比較例188の実験を行った。
栽培植物としてカイワレの代わりにコマツナを用いたこと以外は実施例94、比較例187、188と同様にして、それぞれ、実施例95、比較例189、190の実験を行った。結果を表8に示す。
一定時間内に蒸発した基材中の水分量を測定することにより、基材の保水性を判断した。すなわち、2種の基材の保水性を比較する場合には、蒸発する水の量が少ない方が、保水性が優れていると評価し、蒸発する水の量が2種の基材で同等の場合には、保水性も同等と評価した。
<木片基材セットの作製>
上記3−4)に記載の手順で調製した界面活性剤含有木片基材2をワイピングクロス1枚(キムワイプS−200、日本クレシア製、120×215mm)に包み込み、これをプラスチック製計量皿(50mm×50mm)の上に置き、その上に実施例92に記載の手順で調製したα−CDを担持した植物栽培用資材を1枚載せ、さらにその上に通常の定性濾紙(No2、直径55mm)1枚を載せて木片基材セットを作製した。
上記の木片基材セットの上から蒸留水14mLを加え、直後に木片基材セットの重量を測定し、この値を放置前重量(A)とした。次に、この木片基材セットを16.5℃のインキュベーター内に9時間放置し、その後重量を測定して、この値を放置後重量(B)とし、下記式1により、放置中に蒸発した水分量(C)を求めた。
[式1] C=A−B (単位:g)
この測定を木片基材セット10セットについて行い、その平均値を求めた。
インキュベーターの温度を25℃としたこと以外は実施例96と同様にして蒸発した水分量を測定した。
木片基材セット中の植物栽培用資材の代わりに処理をしていない定性濾紙を用いたこと以外は実施例96、97と同様にしてそれぞれ蒸発量の水分を測定した。
実施例96、97、比較例191、192の結果を表9に示す。
これらの結果から、本発明の植物栽培用資材を使用した場合に木片基材セットの保水性が損なわれることはないことが分かった。すなわち、α−CDを担持した本発明の植物栽培用資材は界面活性剤含有木片基材の保水性に悪影響を及ぼさないことが明らかになった。
Claims (7)
- 植物成長阻害因子による成長阻害を軽減するための植物栽培用資材であって、α−シクロデキストリンを担持した担体を含み、該担体が木質繊維を主要構成要素とする木質基体である植物栽培用資材。
- 木質繊維を主要構成要素とする前記木質基体が、木質繊維板または木質繊維からなるシートであり、該木質基体1gに対し前記α−シクロデキストリンを0.02〜1g担持したものである請求項1に記載の植物栽培用資材。
- 前記植物成長阻害因子が界面活性剤である請求項1又は2に記載の植物栽培用資材。
- 前記植物成長阻害因子が木質材料中の可溶性成分である請求項1又は2に記載の植物栽培用資材。
- α−シクロデキストリンを担持した担体を含み、該担体が木質繊維を主要構成要素とする木質基体である植物栽培用資材を用い、植物成長阻害因子と前記α−シクロデキストリンとを接触させることにより、前記植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減する方法。
- 木質繊維を主要構成要素とする前記木質基体が、木質繊維板または木質繊維からなるシートである請求項5に記載の植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減する方法。
- 前記植物成長阻害因子を含む栽培用土100質量部あたり、前記α−シクロデキストリンを0.1〜2質量部用いる請求項5又は6に記載の植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減する方法。
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