JP5826732B2 - 植物栽培用資材および植物成長阻害作用を軽減する方法 - Google Patents

植物栽培用資材および植物成長阻害作用を軽減する方法 Download PDF

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Description

本発明は、植物成長阻害因子による植物の成長阻害を軽減することができる植物栽培用資材、および、植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減するための方法に関する。
従来から、野菜、果実などの農産物や花卉などの園芸産物の生産過程においては、生産効率を上げたり、病害を防止する目的で、天然の土壌の代わりとして木材繊維や木材チップなどの木質材料を主成分とする人工的な植物栽培用土が用いられている。最近では、環境緑化を促進する観点から、建築物の屋上緑化や壁面緑化が進められているが、屋上緑化や壁面緑化においては、保水性が高く軽量な栽培用土が用いられている(非特許文献1参照)。
これらの栽培用土には、保水性向上(特許文献1参照)や浸透性向上(特許文献2参照)、防黴などの目的で界面活性剤が添加されることが多い。しかし、界面活性剤は、その特性上、濃度によっては有毒なものや、使い方によっては環境に対して悪影響を及ぼすものも少なくない。例えば、界面活性剤による細胞膜の破壊作用(特許文献3参照)や、河川、湖沼、海域などの水系環境における有機性汚濁や環境毒性(非特許文献2参照)が懸念されている。
また、栽培用土の原料として用いられる木材チップなどの木質材料は、しばしば植物の生育障害を引き起こすことが知られている。この原因としては、微生物の作用により資材中の窒素が不足すること、木質材料中に存在する可溶性成分および微生物分解により生ずるフェノール成分などが植物の生育に悪影響を及ぼすことが原因と考えられている。(特許文献4、非特許文献3参照)。
このため、栽培用土を用いて環境緑化植物や農園芸用植物を栽培する場合、界面活性剤や木質材料中の可溶性成分など植物の成長にとって有害な植物成長阻害因子による植物への悪影響を少なくする必要がある。
栽培用土中に存在する界面活性剤などの植物成長阻害因子を、簡便にしかも低コストで排除するには、活性炭などの吸着剤を用いる物理的吸着手段による除去方法が最も一般的である。しかし、活性炭などの吸着剤は被吸着質に対する選択性が低く(非特許文献4参照)、植物の成長に必要な成分までも吸着除去してしまう可能性があり、効率性、実用性の面で問題がある。
界面活性剤を選択的に除去する方法として、不溶化されたシクロデキストリンを使用する除去方法が提案されている(特許文献5参照)。しかし、この方法では、界面活性剤を除去することに伴い、界面活性剤の持つ有用な保水機能や防黴機能も失われるという問題がある。
したがって、木質材料を原料とする栽培用土を使用する植物栽培においては、界面活性剤による保水性などの機能を確保しながら、界面活性剤や木質材料中の可溶性成分による植物成長阻害作用を軽減若しくは解消する技術の確立が喫緊の課題となっている。
特開2009−183177号公報 特開2008−092955号公報 特開平11−018566号公報 特開2000−204558号公報 特開2008−246287号公報
高麗秀昭、他7名、「インシュレーションボードおよびマット植物を用いた軽量屋上緑化技術の開発(第1報)」、木材工業、2009年、第64巻、第4号、p.166〜171 宇都宮暁子、「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、アルキルフェノールポリエトキシエーテル、それらの分解生成物及びLASコンプレックス(LAS-C)の環境毒性評価」、衛生化学、1999年、第45巻、第2号、p.70〜86 千秋由里、大内公安、「木質系チップを利用した緑化基盤材の配合検討」、日本緑化工学会誌、2001年、第27巻、第1号、p.178〜180 今村主税、伊原靖二、「水溶性シクロデキストリンポリマーと界面活性剤の相互作用」、山口県立大学生活科学部研究報告、2004年、第30巻、p.21〜28
したがって、本発明の目的は、上記の問題を解決し、環境緑化植物や農園芸植物の栽培において、栽培用土中に含まれる界面活性剤の保水性などの機能を確保しながら、界面活性剤や木質材料中の可溶性成分などの植物成長阻害因子による成長阻害作用を効果的に軽減若しくは解消できる植物栽培用資材、および、上記植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減する方法を提供することである。
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意研究の結果、シクロデキストリンを担持した担体を植物栽培用資材中に含ませるか、または、この担体を栽培用土に配置することにより、栽培用土中の界面活性剤による保水性等の機能を損なうことなく、界面活性剤や木質材料中の可溶性成分などの植物成長阻害因子による成長阻害を軽減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は植物成長阻害因子による成長阻害を軽減するための植物栽培用資材であって、シクロデキストリンを担持した担体を含む植物栽培用資材を提供する。
上記本発明の植物栽培用資材においては、前記担体が木質繊維を主要構成要素とする木質基体であること;木質繊維を主要構成要素とする前記木質基体が、木質繊維板または木質繊維からなるシートであり、該木質基体1gに対し前記シクロデキストリンを0.02〜1g担持したものであること;前記シクロデキストリンが、α−シクロデキストリンおよびβ−シクロデキストリンの少なくともいずれかであること;前記植物成長阻害因子が界面活性剤であること;前記植物成長阻害因子が木質材料中の可溶性成分であることが好ましい。
また、本発明は植物成長阻害因子とシクロデキストリンとを接触させることにより、前記植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減する方法を提供する。この方法においては、前記シクロデキストリンが担体に担持されたものであること;前記担体が木質繊維を主要構成要素とする木質基体であること;木質繊維を主要構成要素とする前記木質基体が、木質繊維板または木質繊維からなるシート;前記植物成長阻害因子を含む栽培用土100質量部あたり、前記シクロデキストリンを0.1〜2質量部用いることが好ましい。
木質材料を主成分とする栽培用土に本発明の植物栽培用資材を配置することにより、栽培用土に含まれる界面活性剤の保水効果を損なうことなく、界面活性剤や木質材料中の可溶性成分による植物成長阻害作用を軽減または解消し、栽培植物の発芽障害や成長抑制を減らし、品質の向上が達成される。また、本発明の植物成長阻害作用を軽減する方法によれば、植物栽培用土中に植物成長阻害因子である界面活性剤や木質材料中の可溶性成分が存在する場合であっても、植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減し、栽培植物の発芽障害や成長抑制を減らし、栽培植物の品質を向上することができる。
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明の植物栽培用資材は、シクロデキストリンを担持した担体を含む。シクロデキストリンは、D−グルコースがα1,4−結合で環状構造を形成した化合物であり、重合度6のα−シクロデキストリン、重合度7のβ−シクロデキストリン、重合度8のγ−シクロデキストリン、重合度が9のδ−シクロデキストリンおよび重合度が10のε−シクロデキストリン、これらをマルトシル化したマルトシル化シクロデキストリン等が知られている。シクロデキストリンは植物由来の環状オリゴ糖で天然に存在する化合物であり、食品添加物として認可されており、変異原性や環境ホルモンとしての疑いは認められておらず、安全性が極めて高い。
シクロデキストリンは市場から入手してそのまま本発明の植物栽培用資材に使用できる。
本発明の植物栽培用資材が植物成長阻害因子による成長阻害を軽減できる理由は明らかではないが、発明者らは以下のような機構によるものと考えている。
シクロデキストリンはD−グルコースがα−1,4−グルコシド結合して環状構造を形成しており、その分子は筒状になっている。シクロデキストリンの内腔は疎水性の環境になっており、水溶液中ではエネルギー的に不安定な状態にあるが、植物成長阻害因子が接近すると植物成長阻害因子の疎水性部分がこの内腔部分に取り込まれ、エネルギー的に安定すると考えられる。このシクロデキストリンの包接作用により、植物成長阻害因子が植物体に移行するのが抑止され、植物成長阻害作用が軽減される。植物成長阻害因子が界面活性剤の場合、界面活性剤の親水性部分はシクロデキストリンの内腔からはみ出た形で存在し、このはみ出した親水性部分が、界面活性剤の保水性や防黴性等の機能維持に効果を発揮するものと考えている。
本発明の植物栽培用資材が、成長阻害作用を軽減できる植物成長阻害因子としては、界面活性剤や木質材料中の可溶性成分が挙げられる。
本発明の植物栽培用資材は、アニオン系、非イオン系、カチオン系、両性系、天然系などのいずれの界面活性剤に対しても、その植物成長阻害作用を軽減することができる。本発明の植物栽培用資材が植物成長阻害作用を軽減できるアニオン系界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(AES)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、αオレフィンスルホン酸塩(AOS)などが挙げられる。
本発明の植物栽培用資材が植物成長阻害作用を軽減できる非イオン系(ノニオン系)界面活性剤の例としては、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(POPE)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(POAE)、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグリセリルエーテル、ソルビタンアルキルエーテル、ツイーン(Tween)、ポリ(オキシエチレン)硬化ヒマシ油などが挙げられる。
本発明の植物栽培用資材が植物成長阻害作用を軽減できるカチオン系界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられ、両性系界面活性剤の例としては、アルキルベタイン、スルホベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、カルボキシベタイン、ホスホベタイン、アルキルアミノカルボン酸塩などが挙げられる。
また、本発明の植物栽培用資材が植物成長阻害作用を軽減できる天然系界面活性剤の例としては、胆汁酸塩、アルギン酸塩、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセリド、サポニン、レシチン、エタノールアミン、高級アルコール、高級脂肪酸、アミノ酸型界面活性剤などが挙げられる。
次に、植物成長阻害因子としての木質材料中の可溶性成分について説明する。本発明における木質材料中の可溶性成分とは、木質材料を冷水、温水、アルコール、アルコール・ベンゾール、ヘキサン、アセトン、エーテルなどの溶媒と接触させて、溶解または抽出することにより得られる成分である。木材の細胞内に含まれ、細胞壁から遊離した低分子化合物を主成分とする。この木質材料中の可溶性成分は、一般的には木部全体に対して0.2〜5質量%程度含まれるが、その含有量は樹種により様々であり、25質量%を超える樹種もある。木質材料中の可溶性成分の具体的な成分としては、単糖類、少糖類、デンプン、脂質、炭化水素、高級アルコール、糖アルコール、アルデヒド、脂肪酸、フェノール類、スチルベン類、クマリン類、クロモン類、フラボン類、タンニン類、キノン類、ヒノキチオールなどのトロポロン類、リグナン類、テルペン類、アルカロイドなどが挙げられる。
本発明の植物栽培用資材が植物成長阻害作用を軽減できる木質材料中の可溶性成分の例としては、高級アルコール、脂肪酸、グリセリド、糖、サポニンなどの配糖体、フェノール類、タンニン類、テルペン類が挙げられる。本発明の植物栽培用資材は、これらの中でも、冷水または温水で抽出される、タンニン類やフラボン類、スチルベン類、リグナン類などの低分子フェノール性成分による植物成長阻害作用を効果的に軽減することができる。また、上記の木質材料中の可溶性成分のなかでも、サポニンのようにその分子中に疎水性を示す部位と親水性を示す部位を持つものに対して、植物成長阻害作用を顕著に軽減することができる。
木質材料の原料としては、建築廃材、廃木、廃根、剪定枝、木片等が挙げられる。
本発明の植物栽培用資材を使用して栽培し得る植物は、特に制限されず、農産植物、園芸植物、緑化植物など、広範な植物の栽培に本発明の植物栽培用資材を用いることができる。植物成長阻害作用の軽減効果としては、アブラナ科ダイコン属(Raphanus属)、アブラナ科アブラナ属(Brassica属)、キク科アキノノゲシ属(Lactuca属)、マメ科ウマゴヤシ属(Medicago属)などに対して大きな効果を得ることができる。
アブラナ科ダイコン属の植物の具体例としては、かいわれ大根(Rhaphanus sativus)、はつか大根(Rhaphanus sativus var. sativus)、青首大根(Rhaphanus sativus L. var. longipinnatus)などが挙げられ、本発明の植物栽培用資材はこれらの植物に対して植物成長阻害因子による成長阻害作用の抑制効果が大きい。
また、アブラナ科アブラナ属の植物の具体例としては、こまつな(Brassica rapa var.perviridis)、チンゲンサイ(Brassica rapa var.chinensis)、タアサイ(Brassica rapa var.narinosa)、かぶ(Brassica rapa var.rapa或いはBrassica rapa var.glabra)、ブロッコリー(Brassica oleracea var. italica)、カリフラワー(Brassica oleracea var.botrytis)、キャベツ(Brassica oleracea var.capitata)などが挙げられ、本発明の植物栽培用資材はこれらの植物に対して植物成長阻害因子による成長阻害作用の抑制効果が大きい。
また、キク科アキノノゲシ属の植物としては、レタス(Lactuca sativa)、マメ科ウマゴヤシ属の植物としてはアルファルファ(Medicago sativa)に対して植物成長阻害因子による成長阻害作用の抑制効果が大きい。
本発明に用いるシクロデキストリンの種類は特に制限されないが、コストの点からはα、βおよびγ−シクロデキストリン並びにこれらをマルトシル化したα、βおよびγ−マルトシルシクロデキストリンが好ましい。また、一般に用いられている界面活性剤の植物成長阻害作用を軽減する効果からは、αおよびβ−シクロデキストリンが適しており、特にα−シクロデキストリンが優れている。また、α−シクロデキストリンは、β−シクロデキストリンと比較して水溶性が高く、担体への担持が容易であるという利点がある。これらのシクロデキストリンは単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。
本発明の植物栽培用資材において、シクロデキストリンを担持する担体は、シクロデキストリンを担持できるものであれば特に制限はない。担体の形状は、シート状、フィルム状、粒状、顆粒状、粉末状、板状、懸濁液等、特に制限されない。これらの形状の担体をそのまま植物栽培用資材として用いてもよいし、使用に適する形状や大きさに切断、成型して使用してもよい。
担体の素材はシクロデキストリンの担持能力を有するものであれば特に制限なく使用できる。シクロデキストリンの担持能力に優れた素材の例としては、木質繊維を主要構成要素とする木質基体が挙げられ、より具体的には、後述する濾紙や木質繊維板が挙げられる。
粉末状の担体の素材としては、プラスチック製の多孔材料や無機の多孔性化合物が挙げられる。無機の多孔性化合物の具体例としては、ケイ酸カルシウム、アルミナ、ベントナイト、硅藻土、モンモリロナイト、ゼオライト等が挙げられる。これらの粒子径は特に制限されないが、通常、30〜400メッシュの内から使用態様に適したものを用いればよい。
シート状およびフィルム状の担体の素材としては、木質繊維からなるシート、特に濾紙等の紙類;プラスチック;セルロース繊維;織布または不織布等の布類が挙げられるが、環境に対する負荷を少なくする観点から、生分解性を有するものが好ましい。
シート状の担体に担持するシクロデキストリンの量は、長期間その効果を発揮させる観点から、シクロデキストリンを担持していない担体1gあたり20mg〜1gとすることが好ましく、50mg〜500mgとすることがより好ましい。
板状の担体の素材としては、木質ボードが挙げられる。好適に用いられる木質ボードの例としては、木材繊維を主原料とし、これをパルプ化してバインダーを添加または無添加で成型して造られる木質繊維板(ファイバーボード)、木材の小片(パーティクル)に合成樹脂などのバインダーを添加し、熱圧成型したパーティクルボード、およびこれらの複合材料が挙げられる。上記木質繊維板は、インシュレーションボード(軟質繊維板)、MDF(中密度繊維板)、ハードボード(硬質繊維板)などのいずれの繊維板も用いられるが、特に密度の小さなインシュレーションボードが好適に用いられる。上記の木質ボードは、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム等の樹脂、グラスウール、ロックウール等の無機繊維、金属、木質以外の植物繊維、等を添加して複合材料としたものであってもよい。
木材繊維を主原料とする木質繊維板は、担持できるシクロデキストリン量が多く、かつ、シクロデキストリンを徐放し、その効果が長持ちするため担体として好ましい。
なお、木質繊維を担体の構成要素とする場合、木質繊維に対しあらかじめ可溶性成分の除去処理を施すことが好ましい。可溶性成分の除去処理は、木質繊維やその原料を冷水、温水、アルコール、アルコール・ベンゾール、ヘキサン、アセトンまたはエーテルなどの溶媒に浸漬することによって得ることができる。浸漬時間、温度は木質繊維の種類、溶媒の種類等によって異なり一概には言えないが、溶媒として25℃の水を用いる場合、1日〜1週間程度浸漬すればよい。
上記木質ボードに担持させるシクロデキストリンの量は、長期間その効果を発揮させる観点から、担体1gあたり10mg〜2gとすることが好ましく、20mg〜1gとすることがより好ましく、100mg〜1gとすることがさらに好ましい。
本発明の植物栽培用資材の形態は特に制限されず、上記した粉末状、シート状、フィルム状、粒状、顆粒状、板状等の、シクロデキストリンを担持した担体のみから構成されてもよく、担体の他に種々の添加剤を含んでもよい。また、微細な担体を含む分散液や乳化液であってもよい。添加剤としては、水、水溶性高分子、ゲル化剤、保湿剤、緩衝液、防腐剤、増粘剤、抗菌剤、防黴剤などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの添加剤は2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の植物栽培用資材の使用量は特に制限されないが、成長阻害の軽減効果を発揮するためには、栽培用土中の植物成長阻害因子100質量部あたり、シクロデキストリンが50〜2000質量部となる量を用いることが好ましい。栽培用土に対する好ましい使用量は、栽培用土100質量部あたりシクロデキストリンが0.1〜2.0質量部となる量である。栽培用土中の界面活性剤の量が分かる場合には、界面活性剤100質量部に対して、シクロデキストリンが50〜2000質量部となるように使用すればよい。
本発明の植物栽培用資材が固体状の場合、水やり時に植物栽培用資材中のシクロデキストリンが溶けて、栽培用土中の植物成長阻害因子と接触できるように、栽培用土の上や中、または栽培用土の底部に配置すればよい。水やり時に担体中のシクロデキストリンが栽培用土中に拡散することにより、界面活性剤による保水機能等を損なうことなく、植物成長阻害因子による成長阻害を軽減することができる。また、シクロデキストリンの持つ包接作用により悪臭の発生も抑制される。
本発明の植物栽培用資材を液体状とする場合、ゼオライトやシリカなどの粒子状の担体にシクロデキストリンを担持し、これに水等の液体媒体を加えて乳化液、分散液、懸濁液等を調製すればよい。液体媒体としては水を用いることが好ましい。この液体状の植物栽培用資材にも、必要に応じて添加剤、抗菌剤、防黴剤を加えることができる。液体状の植物栽培用資材は、栽培用土に散布または滴下してもよく、あるいは栽培用土を液体状の植物栽培用資材に浸すことによって浸透させてもよい。
液体状の植物栽培用資材中のシクロデキストリン濃度は特に限定されないが、シクロデキストリン濃度の一例として0.05〜15.0質量%が挙げられる。シクロデキストリン濃度は散布に適した濃度に調整したものでも、濃厚液として調製し、使用時に希釈して使用してもよい。また、液体状の植物栽培用資材に栄養剤や農薬を添加して、栽培用土への散布剤や土壌潅注剤として用いてもよい。
液体状の植物栽培用資材は、栽培用土1m2あたりシクロデキストリンの量が10〜100gになるように1回でまたは数回に分けて施用することが好ましい。使用量が多すぎると植物の成育に悪い影響を与える場合があり、少なすぎると十分な効果が発揮されない場合がある。
本発明の植物栽培用資材を粉末状とする場合、シクロデキストリンを担持した上記した粉末状の担体をそのまま用いてもよく、この担体に粉末状の抗菌剤や防黴剤を添加してもよい。
また、栽培用土の製造工程で粉末状の植物栽培用資材を添加し均一に分散させることにより、植物成長阻害因子による成長阻害が軽減された栽培用土を製造することができる。この栽培用土の形状を植栽ポットや鉢の形状に合わせておくことにより、植物栽培用資材を量りとったり、散布する手間を省くことができる。
本発明の植物栽培用資材をシート状とする場合、その製造にあたっては、シクロデキストリンを担体シート上または担体シート内に均一に含有させることが好ましい。そのための方法としては、
(1)セルロース系繊維の水性分散体にシクロデキストリンを混合して抄紙する方法(内添式)、
(2)シクロデキストリンを水中に溶解または分散させ、この溶液または分散液を担体シートに塗布、滴下、浸漬などの方法により含浸させてから、この担体シートを乾燥させる方法などがある。上記内添式では、セルロース系繊維の水性分散体に添加するシクロデキストリンは、水溶液または水性分散体でもよく、粉末またはペースト状であってもよい。
本発明の植物栽培用資材がシート状の場合、水やり時に資材中のシクロデキストリンが溶けて、栽培用土中の植物成長阻害因子と接触できるように、このシートを栽培用土の上に置くか、栽培用土中に挿入するなどして配置すればよい。
シート状の植物栽培用資材に均一にシクロデキストリンを担持することにより、担体の面積または質量によってシクロデキストリン量を調節できるので、施用の際に施用量を量り取る手間が省け、粉末状態あるいは液体状態の植物栽培用資材に比べて格段に便利である。また、取扱いが容易であり、輸送しやすい。コンパクトに圧縮されているので嵩が小さく、スペース効率が高く、場所をとらない。これらの利点から、シート状の植物栽培用資材は実用性に優れている。
次に、本発明の植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減する方法について説明する。
本発明では、植物成長阻害因子とシクロデキストリンとを接触させることにより、植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減する。本発明により植物成長阻害因子による成長阻害を軽減できる理由は明らかではないが、発明者らは、植物成長阻害因子の疎水性部分が疎水的なシクロデキストリンの内腔部分に取り込まれ、植物成長阻害因子の植物体への移行が妨げられているためであると考えている。また、植物成長阻害因子が界面活性剤の場合、界面活性剤の親水性部分はシクロデキストリンの内腔からはみ出た形で存在し、このはみ出した親水性部分が、界面活性剤の保水性や防黴性等の機能を損なわずに効果を発揮するものと考えている。
上記植物成長阻害因子は前述した植物栽培用資材の発明で記載したものと同様であり、界面活性剤や木質材料中の可溶性成分が挙げられる。また、シクロデキストリンも前述した植物栽培用資材の発明で記載したものと同様であり、α−シクロデキストリンまたはβ−シクロデキストリンを用いることが好ましい。
シクロデキストリンは担体に担持されたものであることが好ましく、担体は木質繊維を主要構成要素とする木質基体であることが好ましい。木質繊維を主要構成要素とする木質基体は、木質繊維板または木質繊維からなるシートであることが好ましい。
本発明の実施にあたっては、植物成長阻害因子を含む栽培用土100質量部あたり、シクロデキストリンの量を0.1〜2質量部用いることが好ましい。
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中の「%」は質量基準である。また、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1) 界面活性剤
本実施例で使用した植物成長阻害因子としての界面活性剤を表1に示す。これらの界面活性剤は1%水溶液として使用した。なお、界面活性剤A〜Eは表1の中央欄に記載した各成分を等濃度含む。
Figure 0005826732
2) 植物
本実施例で用いた植物を表2に示す。
Figure 0005826732
3) 界面活性剤に起因する植物成長阻害作用の抑制
3−1) β−CDと界面活性剤の両方を担持した植物栽培用資材の効果
[実施例1]
<植物栽培用資材の調製>
蒸留水を用いて上記界面活性剤Cの1%水溶液を調製した。この界面活性剤C水溶液1.2mLを濾紙(定性濾紙No2、直径70mm;質量0.49g)1枚に滴下し、十分浸透させた。その後、この濾紙を80℃の乾燥機中に2時間放置し、濾紙中の水分を蒸発させて界面活性剤含有濾紙基材を調製した。
β−シクロデキストリン(β−CD;日本食品化工製セルデックスB−100)7.2gを加熱した蒸留水に添加して100mLのβ−CD水溶液を調製した。このβ−CD水溶液の0.7mLを上記界面活性剤含有濾紙基材に滴下し、その後、この濾紙基材を80℃の乾燥機中に2時間放置し、水分を蒸発させて、界面活性剤とβ−CDを含む植物栽培用資材を得た。
<支持台の作製>
市販のワイピングクロス(キムタオルホワイト、日本製紙クレシア製)から55mm×45mmの切片を切り出し、この切片6枚を重ねて、ワイピングクロス製の支持台を作製した。
<種子の播種>
直径90mmのガラスシャーレの底に上記支持台を置き、上から蒸留水15mLを加え、しばらく放置した。水が支持台に十分浸透した後、この支持台の上に上記植物栽培用資材を載せ、その上に通常の定性濾紙(No2、直径70mm)1枚を載せた。ガラスシャーレの縁と支持台の間の部分に蒸留水10mLを加えた後、上記定性濾紙上にカイワレの種20粒を播種し、25℃で7日間、暗黒下で静置し、発芽率や成長状況を観察した。結果を表3−1に示す。なお、表中の下胚軸長は、発芽した個体における根から子葉までの長さの平均値である。
[実施例2〜6]
界面活性剤の種類とβ−CDの添加量を、表3−1に記載したものとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2〜6の実験を行った。結果を表3−1に示す。
[比較例1〜12]
植物栽培用資材へのβ−CDの担持処理を行わなかったこと以外は実施例1〜6と同様にして、比較例1〜6の実験を行い、発芽率等を観察した。また、無処理対照実験として、植物栽培用資材への界面活性剤の担持処理とβ−CDの担持処理のどちらも行わなかったこと以外は実施例1〜6と同様にして、比較例7〜12の実験を行い、発芽率等を観察した。結果を表3−1に示す。
表3−1に示す結果から、植物成長に関して言えば、本発明の植物栽培用資材を用いた実施例1〜6では、植物栽培用資材に界面活性剤のみを添加した比較例1〜6と比べて下胚軸長が長くなっており、植物成長が改善されているのが分かる。特に実施例4〜6では、植物栽培用資材に界面活性剤もβ−CDも添加していない無処理対照と同程度の下胚軸長になっており、植物成長が著しく改善されていることが分かる。以上の表3−1の結果より、β−CDを含有する本発明の植物栽培用資材は界面活性剤による成長抑制効果を解消もしくは軽減することに有効であることが明らかになった。
Figure 0005826732
[実施例7〜14、比較例13〜28]
栽培植物をカイワレに代えてコマツナとし、界面活性剤の種類とβ−CDの添加量を表3−2に記載したものとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例7〜14を、比較例1と同様にして比較例13〜20を、比較例7と同様にして無処理対照である比較例21〜28の実験を行った。結果を表3−2に示す。
表3−2に示す結果から、植物成長に関して言えば、β−CDを含む本発明の植物栽培用資材を用いた実施例7〜14では、植物栽培用資材に界面活性剤のみを添加した比較例13〜20に比べて下胚軸長が長くなっており、植物成長が改善されているのが分かる。特に実施例10〜14では、植物栽培用資材に界面活性剤もβ−CDも添加していない無処理対照と同等かそれ以上の下胚軸長になっており、植物成長が著しく改善されていることが分かる。また、発芽率に関して言えば、本発明の植物栽培用資材を用いた実施例7〜14では、界面活性剤のみを添加した比較例13〜20に比べて発芽率が改善しており、無処理対照である比較例21〜28と同じく100%であった。以上の表3−2の結果より、β−CDを含有する本発明の植物栽培用資材は、界面活性剤がコマツナの発芽や成長に及ぼす悪影響を解消若しくは低減化するのに有効であることが明らかになった。
Figure 0005826732
[実施例15〜17、比較例29〜34]
栽培植物ならびに植物栽培用資材に添加する界面活性剤の種類およびβ−CDの量を表3−3に記載のものとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例15〜17を、比較例1と同様にして比較例29〜31を、比較例7と同様にして無処理対照である比較例32〜34の実験を行った。結果を表3−3に示す。
表3−3に示す結果から、植物成長に関して言えば、β−CDを含む本発明の植物栽培用資材を用いた実施例15〜17では、植物栽培用資材に界面活性剤のみを添加した比較例29〜31に比べて下胚軸の長さが長くなっており、植物成長が改善されているのが分かる。また、発芽率に関して言えば、本発明の植物栽培用資材を用いた実施例15〜17では、植物栽培用資材に界面活性剤のみを添加した比較例29〜31と比べて発芽率が改善しており、無処理対照である比較例32〜34と同等なものとなっている。以上の表3−3に示す結果より、β−CDを含有する本発明の植物栽培用資材は、界面活性剤が赤丸ハツカやターサイの成長および発芽率に及ぼす悪影響を解消若しくは低減化することに有効であることが明らかになった。
Figure 0005826732
3−2) α−CDと界面活性剤の両方を担持した植物栽培用資材の効果
[実施例18〜24]
β−CDに代えてα−シクロデキストリン(α−CD;試薬1級、和光純薬工業株式会社製)を使用し、栽培植物ならびに植物栽培用資材へのα−CDの添加量を表4に記載されたものとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例18〜24の実験を行った。
[比較例35〜47]
植物栽培用資材へのα−CDの担持処理を行わないこと以外は実施例18〜24と同様にして、比較例35〜41の実験を行い、無処理対照実験として植物栽培用資材への界面活性剤の担持処理とα−CDの担持処理のどちらも行わなかったこと以外は実施例18〜24と同様にして、比較例42〜48の実験を行い、発芽率等を観察した。これらの結果を表4に示す。
表4に示す結果から、植物成長に関して言えば、植物栽培用資材にα−CDを担持しなかった比較例35〜41では、栽培植物が成長していないか、成長がわずかであるのに対して、α−CDを含有する本発明の植物栽培用資材を用いた実施例18〜24では下胚軸長が長くなっており、植物成長が改善されているのが分かる。特に実施例18と21では、無処理対照である比較例42、45と同等、またはそれ以上の下胚軸長になっており、植物成長が著しく改善されていることが分かる。また、発芽率に関して言えば、本発明の植物栽培用資材を用いた実施例18〜24では、植物栽培用資材にα−CDを担持しなかった比較例35〜41に比べて発芽率が改善しており、特に、比較例36〜41では発芽率が0%であるに対し、実施例19〜24では発芽率が62.5〜100%に改善している。以上の表4の結果より、α−CDを含有する本発明の植物栽培用資材は界面活性剤が植物成長および発芽率に及ぼす悪影響を解消若しくは低減化することに有効であることが明らかになった。
Figure 0005826732
3−3) α−CDのみを担持した植物栽培用資材の効果
[実施例25]
<界面活性剤含有濾紙基材の調製>
蒸留水を用いて界面活性剤Cの1%水溶液を調製し、この界面活性剤C水溶液1.2mLを濾紙(定性濾紙No2、直径70mm)1枚に滴下し、十分浸透させた。その後、この濾紙を80℃の乾燥機中に2時間放置し、濾紙中の水分を蒸発させて界面活性剤含有濾紙基材を調製した。
<α−CDのみを担持した植物栽培用資材の調製>
次に、α−CD(試薬1級、和光純薬工業製)14.5gを蒸留水に溶解し、100mLのα−CD水溶液を調製した。このα−CD水溶液の1.5mLを濾紙(定性濾紙No2、直径70mm;質量0.49g)1枚に滴下し、その後、このα−CD含有濾紙基材を80℃の乾燥機中に2時間放置し、濾紙中の水分を蒸発させて、α−CDのみを担持した植物栽培用資材を調製した。
実施例1の<支持台の作製>に記載の手順で支持台を作製し、この支持台をガラスシャーレ(直径90mm)の底に置き、上から蒸留水15mLを加え、しばらく放置した。水が十分支持台に浸透した後、支持台の上に、上記の界面活性剤含有濾紙基材1枚を載せ、その上に上記の植物栽培用資材を1枚載せ、さらにその上に通常の定性濾紙(No2、直径70mm)1枚を載せた。ガラスシャーレの縁と支持台の間の部分に蒸留水10mLを加えた後、上記定性濾紙上にカイワレの種20粒を播種し、25℃で7日間、暗黒下で静置し、播種植物の発芽率や成長状況を観察した。
[比較例49、50]
比較のため、上記植物栽培用資材の代わりに、定性濾紙(No2、直径70mm)を用いたこと以外は実施例25と同様にして、比較例49の実験を行い、無処理対照試験として界面活性剤含有濾紙基材の代わりに定性濾紙(No2、直径70mm)を使用し、さらに植物栽培用資材の代わりにも、定性濾紙(No2、直径70mm)を用いたこと以外は実施例25と同様にして比較例50の実験を行った。実施例25および比較例48、49の結果を表5−1に示す。
Figure 0005826732
また、表5−2に記載の栽培植物を用いたこと以外は実施例25と同様にして実施例26〜36を、比較例49と同様にして比較例51〜61を、比較例50と同様にして無処理対照試験である比較例62〜72の実験を行った。結果を表5−2に示す。
Figure 0005826732
表5−1、5−2を見ると、発芽率に関して言えば、α−CDを担持した植物栽培用資材を使用しなかった比較例49、51〜61では発芽率が0%であるに対し、本発明の植物栽培用資材を用いた実施例25〜36の発芽率は75%〜100%であり、本発明の植物栽培用資材は発芽率を著しく改善することが分かる。また、植物成長に関して言えば、α−CDを含有する植物栽培用資材を使用しなかった比較例49、51〜61では全く成長していないのに対して、本発明の植物栽培用資材を用いた実施例25〜36では下胚軸が成長しており、植物成長が改善されているのが分かる。特に、実施例26、29、32〜35においては、無処理対照(比較例62、65、68〜71)と同等かそれ以上の下胚軸長になっており、植物成長が著しく改善されていることが分かる。以上の表5−1、5−2の結果より、α−CDのみを担持した本発明の植物栽培用資材は界面活性剤Cが植物成長および発芽率に及ぼす悪影響を解消若しくは低減化することに有効であることが明らかになった。
<界面活性剤Bに対する植物栽培用資材の効果>
[実施例37〜48、比較例73〜96]
界面活性剤Cに代えて界面活性剤Bを用いたことの他は、実施例25〜36と同様にして、それぞれ実施例37〜48の実験を行った。また、界面活性剤Cに代えて界面活性剤Bを用いたことの他は、比較例49、50、51〜61、62〜72と同様にして、それぞれ比較例73、85、74〜84、86〜96の実験を行った。これらの結果を表5−3に示す。
Figure 0005826732
表5−3を見ると、発芽率に関して言えば、α−CDを含有しない植物栽培用資材を用いた比較例のうち、比較例74、76、77、79および81〜84では発芽率が0%であるのに対し、本発明の植物栽培用資材を使用した場合、比較例で発芽率が0%だった植物実施例38、40、41、43および45〜48でも発芽率が100%であり、α−CDのみを担持した本発明の植物栽培用資材が発芽率を著しく改善することが分かる。また、植物成長に関して言えば、α−CDを含有しない植物栽培用資材を用いた比較例73〜84では栽培植物が成長していないか、成長がわずかであるのに対し、本発明の植物栽培用資材を使用した実施例37〜48では下胚軸長が長くなっており、植物成長が改善されているのが分かる。特に実施例37、38、40〜44、47および48では、無処理対照(比較例85、86、88〜92、95、96)と同等かそれ以上の下胚軸長になっており、植物成長が著しく改善されていることが分かる。以上の表5−3の結果より、α−CDのみを担持した本発明の植物栽培用資材は界面活性剤Bが植物成長および発芽率に及ぼす悪影響を解消若しくは低減化することに有効であることが明らかになった。
<界面活性剤Hに対する植物栽培用資材の効果>
[実施例49〜60、比較例97〜120]
界面活性剤Bに代えて界面活性剤Hを用いたことの他は、実施例37〜48と同様にして、それぞれ実施例49〜60の実験を行った。また、界面活性剤Bに代えて界面活性剤Hを用いたことの他は、比較例72〜83と同様にして、それぞれ比較例97〜108の実験を行い、界面活性剤含有濾紙基材もα−CDを担持した植物栽培用資材も使用しない無処理対照試験として比較例85〜96と同様に比較例109〜120の実験を行った。これらの結果を表5−4に示す。
Figure 0005826732
表5−4を見ると、発芽率に関して言えば、α−CDを含有しない植物栽培用資材を用いた比較例のうち、比較例98、100、101、103、105、107、108では発芽率が0%であるのに対し、本発明の植物栽培用資材を用いた実施例50、52、53、55、57、59および60では発芽率が100%であり、本発明の植物栽培用資材が発芽率を著しく改善することが分かる。また、植物成長に関して言えば、α−CDを含有する植物栽培用資材を使用しなかった比較例97〜108では栽培植物が成長していないか、成長がわずかであるのに対し、本発明の植物栽培用資材を使用した実施例49〜60では下胚軸長が長くなっており、植物成長が改善されているのが分かる。特に実施例50〜53および55〜59では、無処理対照である比較例110〜113および115〜119と比べて、同等かそれ以上の下胚軸長になっており、植物成長が著しく改善されていることが分かる。以上の表5−4の結果より、α−CDを含有する本発明の植物栽培用資材は界面活性剤Hが植物成長および発芽率に及ぼす悪影響を解消若しくは低減化することに有効であることが明らかになった。
<界面活性剤Dに対する植物栽培用資材の効果>
[実施例61〜70、比較例121〜140]
界面活性剤Bに代えて界面活性剤Dを用いたことの他は、実施例37〜46と同様にして、それぞれ実施例61〜70の試験を実施した。また、界面活性剤Bに代えて界面活性剤Dを用いたことの他は、比較例73〜82と同様にして、それぞれ比較例121〜130の試験を実施し、界面活性剤含有濾紙基材もα−CDを含有する植物栽培用資材も使用しない無処理対照試験として比較例85〜94と同様に比較例131〜140の実験を行った。これらの結果を表5−5に示す。
Figure 0005826732
表5−5を見ると、発芽率に関して言えば、α−CDのみを担持する本発明の植物栽培用資材を使用した実施例62、64、69および70では発芽率が100%であるのに対し、同じ植物で本発明の植物栽培用資材を使用しなかった比較例122、124、129、130では発芽率が0〜90%であり、本発明の植物栽培用資材は発芽率を改善することが分かる。また、植物成長に関して言えば、α−CDのみを担持した本発明の植物栽培用資材を使用しなかった比較例121〜130では、栽培植物が成長していないか、成長してもわずかであるのに対し、本発明の植物栽培用資材を用いた実施例61〜70では下胚軸長が長くなっており、植物成長が改善されているのが分かる。特に実施例61〜67、69および70では、界面活性剤含有濾紙基材も本発明の植物栽培用資材も使用しなかった無処理対照(比較例131〜137、139および140)と同等かそれ以上の下胚軸長になっており、植物成長が著しく改善されていることが分かる。以上の表5−5の結果より、α−CDのみを担持した本発明の阻害因子抑制基材は界面活性剤Dが植物成長および発芽率に及ぼす悪影響を解消若しくは低減化することに有効であることが明らかになった。
<界面活性剤Aに対する植物栽培用資材の効果>
[実施例71〜76、比較例141〜152]
界面活性剤Bに代えて界面活性剤Aを用いたことの他は、実施例37〜39、41〜43と同様にして、それぞれ実施例71〜76の実験を行った。また、界面活性剤Bに代えて界面活性剤Aを用いたことの他は、比較例73〜75、77〜79と同様にして、それぞれ比較例141〜146の実験を行い、界面活性剤含有濾紙基材もα−CDを担持した植物栽培用資材も使用しない無処理対照試験として比較例85〜87、89〜91と同様に比較例147〜152の実験を行った。これらの結果を表5−6に示す。
Figure 0005826732
表5−6を見ると、発芽率に関して言えば、α−CDを担持した植物栽培用資材を使用しなかった比較例のうち、比較例142、145では発芽率が70%であるのに対し、α−CDのみを担持する本発明の植物栽培用資材を使用した実施例72、75では発芽率が100%であり、本発明の植物栽培用資材は発芽率を改善することが分かる。また、植物成長に関して言えば、α−CDを担持した植物栽培用資材を使用しなかった比較例141〜146では栽培植物の下胚軸長の伸びがわずかであるのに比べて、本発明の植物栽培用資材を使用した実施例71〜76では下胚軸長が長くなっており、植物成長が改善されているのが分かる。特に下胚軸長は全ての実施例において、界面活性剤含有濾紙基材もα−CDを担持した植物栽培用資材も使用しなかった比較例147〜152の無処理対照以上の長さになっており、植物成長が著しく改善されていることが分かる。以上の表5−6の結果より、α−CDのみを担持した本発明の植物栽培用資材は界面活性剤Aが植物成長および発芽率に及ぼす悪影響を解消若しくは低減化することに有効であることが明らかになった。
<界面活性剤Gに対する植物栽培用資材の効果>
[実施例77〜82、比較例153〜164]
界面活性剤Bに代えて界面活性剤Gを用いたことの他は、実施例37〜39、41〜43と同様にして、それぞれ実施例77〜82の実験を行った。また、界面活性剤Bに代えて界面活性剤Gを用いたことの他は、比較例73〜75、77〜79と同様にして、それぞれ比較例153〜158の実験を行い、界面活性剤含有濾紙基材もα−CDを担持した植物栽培用資材も使用しない無処理対照試験として比較例85〜87、89〜91と同様に比較例159〜164の実験を行った。これらの結果を表5−7に示す。
Figure 0005826732
表5−7を見ると、発芽率に関して言えば、α−CDのみを担持した本発明の植物栽培用資材を用いた実施例77〜82では発芽率が100%であるのに対し、α−CDを担持した植物栽培用資材を使用しなかった比較例153〜158では発芽率が0〜70%であり、本発明の植物栽培用資材が発芽率を著しく改善することが分かる。また、植物成長に関して言えば、α−CDを担持した植物栽培用資材を使用しなかった比較例153〜158では栽培植物が成長していないか、成長しても下胚軸長の伸びがわずかであるのに比べて、本発明の植物栽培用資材を使用した実施例77〜82では下胚軸長が長くなっており、植物成長が改善されているのが分かる。特に下胚軸長は全ての実施例において、界面活性剤含有濾紙基材も本発明の植物栽培用資材も使用しなかった比較例159〜164の無処理対照以上の長さになっており、植物成長が著しく改善されていることが分かる。以上の表5−7の結果より、α−CDのみを担持した本発明の植物栽培用資材は界面活性剤Gが植物成長および発芽率に及ぼす悪影響を解消若しくは低減化することに有効であることが明らかになった。
<界面活性剤Eに対する植物栽培用資材の効果>
[実施例83〜88、比較例165〜176]
界面活性剤Bに代えて界面活性剤Eを用いたことの他は、実施例37〜39、41〜43と同様にして、それぞれ実施例83〜88の試験を実施した。また、界面活性剤Bに代えて界面活性剤Eを用いたことの他は、比較例73〜75、77〜79と同様にして、それぞれ比較例165〜170の試験を実施し、界面活性剤含有濾紙基材もα−CDを含有する植物栽培用資材も使用しない無処理対照試験として比較例85〜87、89〜91と同様に比較例171〜176の実験を行った。これらの結果を表5−8に示す。
Figure 0005826732
表5−8を見ると、発芽率に関して言えば、α−CDのみを担持した本発明の植物栽培用資材を用いた実施例83〜88では発芽率が100%であるのに対し、α−CDを担持した植物栽培用資材を使用しなかった比較例165〜170では発芽率が0%〜75%であり、本発明の植物栽培用資材は発芽率を改善することが分かる。また、植物成長に関して言えば、α−CDを担持した植物栽培用資材を使用しなかった比較例165〜170では栽培植物が成長していないか、成長しても下胚軸長の伸びがわずかであるのに比べて、本発明の植物栽培用資材を使用した実施例83〜88では下胚軸長の伸びが大きく、植物成長が著しく改善されていることが分かる。以上の表5−8の結果より、α−CDのみを担持した本発明の植物栽培用資材は界面活性剤Eが植物成長および発芽率に及ぼす悪影響を解消若しくは低減化することに有効であることが明らかになった。
[実施例89、比較例177、178]
界面活性剤Cに代えて界面活性剤Fを用いたことの他は、実施例25、比較例49と同様にして、それぞれ実施例89、比較例177の実験を行った。また、界面活性剤含有濾紙基材もα−CDを担持した植物栽培用資材も使用しない無処理対照試験として比較例50と同様に比較例178の実験を行った。これらの結果を表5−9に示す。
Figure 0005826732
表5−9を見ると、植物成長に関して言えば、α−CDを担持した植物栽培用資材を使用しなかった比較例177では下胚軸長の成長がわずかであるのに比べて、本発明の植物栽培用資材を使用した実施例89では下胚軸長が長くなっており、植物成長が改善されているのが分かる。以上の表5−9の結果より、α−CDのみを担持した本発明の植物栽培用資材は界面活性剤Fが植物成長に及ぼす悪影響を低減化することに有効であることが明らかになった。
3−4) β−CDを担持した植物栽培用資材の界面活性剤含有木片基材に対する効果
<水溶性成分溶出処理を施した木片基材1の調製>
500mL容ビーカーに300mLの蒸留水を入れ、この中にサクラ材からなる直径40mm、厚さ10mmの円盤型木片を投入し、このビーカーを25℃のインキュベータ中に3日間置いて、木片中の水溶性成分を溶出させた。この後、木片を水中より取り出し、80℃で2時間乾燥させて、水溶性成分溶出処理を施した木片基材1を得た。
<界面活性剤含有木片基材2の調製>
蒸留水を用いて、界面活性剤Cの1%水溶液を調製した。この界面活性剤C水溶液の4.5mLを上記木片基材1に滴下し、十分浸透させた。この後、この木片基材を80℃の乾燥機中に4時間放置し、木片基材中の水分を蒸発させて界面活性剤含有木片基材2を得た。
[実施例90]
<植物栽培用資材の調製>
β−CD(セルデックスB−100、日本食品化工製)7.2gを加熱した蒸留水に添加して100mLのβ−CD水溶液を調製した。このβ−CD水溶液の1.2mL(β−CD量:0.09g)を濾紙(定性濾紙No2、直径55mm;0.31g)1枚に滴下し、上記水溶液を濾紙に十分浸透させた。その後、この濾紙を80℃の乾燥機中に2時間放置し、濾紙中の水分を蒸発させてβ−CDを担持した植物栽培用資材を調製した。
<播種試験>
ガラスシャーレ(直径70mm)の底に1枚の定性濾紙(No2、直径55mm)を敷き、その上に上記木片基材2を包み込んだワイピングクロス(キムワイプS−200、日本クレシア製、120×215mm)を置き、上から蒸留水4mLを加え、さらにワイピングクロスとガラスシャーレの縁の間に蒸留水15mLを注ぎ込んだ。この後、ワイピングクロスの上に上記植物栽培用資材1枚を載せ、さらにその上に通常の定性濾紙(No2、直径55mm)1枚を載せた。この定性濾紙上にターサイの種20粒を播種し、木片基材2が乾燥しないように適宜、蒸留水を添加(1回あたり約20mL)しながら、25℃で7日間、暗黒下で静置し、播種植物の発芽率や成長状況を観察した。
[実施例91、比較例179〜182]
比較のため、β−CDを担持した植物栽培用資材の代わりに、定性濾紙(No2、直径55mm)を用いたこと以外は実施例90と同様にした試験(比較例179)、および無処理対照試験として界面活性剤含有木片基材2の代わりに水溶性成分溶出処理を施した木片基材1を使用し、さらに上記β−CDを含有する植物栽培用資材に代えて定性濾紙(No2、直径55mm)を用いたこと以外は実施例90と同様にして比較例180の実験を行った。
また、栽培植物としてターサイの代わりにチンゲンサイを用い、植物栽培用資材のβ−CD量を0.18gとしたこと以外は実施例90、比較例179、180と同様にして、それぞれ実施例91、比較例181、182の実験を行った。結果を表6に示す。
Figure 0005826732
表6を見ると、発芽率に関して言えば、β−CDを担持した植物栽培用資材を使用しなかった比較例179、181の発芽率がそれぞれ50%、90%であるのに対し、本発明の植物栽培用資材を使用した実施例90、91ではともに発芽率は100%であり、本発明の植物栽培用資材は発芽率を改善することが分かる。また、植物成長に関して言えば、β−CDを担持した植物栽培用資材を使用しなかった比較例179、181では下胚軸長の成長がわずかであるのに比べて、本発明の植物栽培用資材を使用した実施例90、91では下胚軸長の伸びが大きく、植物成長が改善されているのが分かる。以上の表6の結果より、β−CDを担持した本発明の植物栽培用資材は、木片基材2に含まれる界面活性剤Cが植物成長および発芽率に及ぼす悪影響を低減化することに有効であることが明らかになった。
3−5) α−CDを担持した植物栽培用資材の界面活性剤含有木片基材に対する効果
<界面活性剤含有木片基材3の調製>
蒸留水を用いて、界面活性剤Cの1%水溶液を調製した。この界面活性剤C水溶液の3mLを、3−4)に記載の手順で調製した水溶性成分溶出処理を施した木片基材1に滴下し、十分浸透させた。次いで、この木片基材を80℃の乾燥機中に4時間放置し、木片基材中の水分を蒸発させて界面活性剤含有木片基材3を得た。
[実施例92]
<植物栽培用資材の調製>
α−CD(試薬1級、和光純薬工業製)14.5gを蒸留水に溶解し、100mLのα−CD水溶液を調製した。このα−CD水溶液の0.83mL(α−CD量:0.12g)を濾紙(定性濾紙No2、直径55mm;0.31g)1枚に滴下し、上記水溶液を濾紙に十分浸透させた。その後、この濾紙を80℃の乾燥機中に2時間放置し、濾紙中の水分を蒸発させてα−CDを担持した本発明の植物栽培用資材を調製した。
木片基材2の代わりに上記界面活性剤含有木片基材3を用い、β−CDを担持した植物栽培用資材の代わりに上記α−CDを担持した植物栽培用資材を用い、栽培植物をカイワレとしたこと以外は、実施例90と同様にして実験を行った。
[比較例183、184]
上記植物栽培用資材の代わりに定性濾紙(No2、直径55mm)を用いたこと以外は実施例92と同様にして比較例183を、無処理対照試験として上記木片基材3の代わりに3−4)に記載の手順で調製した水溶性成分溶出処理を施した木片基材1を使用し、さらに上記植物栽培用資材に代えて定性濾紙(No2、直径55mm)を用いたこと以外は実施例92と同様にして比較例184の実験を行った。
[実施例93、比較例185、186]
栽培植物としてカイワレの代わりにコマツナを用いたこと以外は実施例92、比較例183、184と同様にして、それぞれ実施例93、比較例185、186の実験を行った。結果を表7に示す。
Figure 0005826732
表7を見ると、発芽率に関して言えば、本発明の植物栽培用資材を使用しなかった比較例183の発芽率が90%、比較例185では70%であるのに対し、α−CDを担持した本発明の植物栽培用資材を用いた実施例92、93ではともに発芽率は100%であり、α−CDを含有する本発明の植物栽培用資材が発芽率を改善することが分かる。また、植物成長に関して言えば、本発明の植物栽培用資材を使用しなかった比較例183、185では下胚軸長の成長がわずかであるのに比べて、本発明の植物栽培用資材を使用した実施例92、93では下胚軸長の伸びが大きく、植物成長が改善されているのが分かる。特に、栽培植物としてコマツナを用いた実施例93では、界面活性剤含有木片基材3も本発明の植物栽培用資材も使用しなかった無処理対照の比較例186と同程度の下胚軸長になっており、植物成長が効果的に改善されていることが分かる。以上の表7の結果より、α−CDを担持した本発明の植物栽培用資材は木片基材に含まれる界面活性剤Cが植物成長および発芽率に及ぼす悪影響を解消若しくは低減化することに有効であることが明らかになった。
4) 木材抽出物に起因する植物成長阻害作用の抑制
[実施例94]
実施例92の<植物栽培用資材の調製>に記載した手順にて、α−CDを担持した植物栽培用資材を調製した。
次いで、ガラスシャーレ(直径70mm)の底に1枚の定性濾紙(No2、直径55mm)を敷き、その上に未処理の円盤型木片基材4(サクラ材、直径40mm、厚さ10mm)を包み込んだワイピングクロス(キムワイプS−200、日本クレシア製、120×215mm)を置き、上から蒸留水4mLを加え、さらに上記ワイピングクロスとガラスシャーレの縁の間に蒸留水15mLを注ぎ込んだ。この後、ワイピングクロスの上に上記植物栽培用資材1枚を載せ、さらにその上に通常の定性濾紙(No2、直径55mm)1枚を載せた。この定性濾紙上にカイワレの種20粒を播種し、木片基材4が乾燥しないように適宜、蒸留水を添加(約20mL)しながら、25℃で7日間、暗黒下で静置し、播種植物の発芽率や下胚軸の伸長状況を観察した。
[比較例187、188]
比較のため、上記植物栽培用資材の代わりに、定性濾紙(No2、直径55mm)を用いたこと以外は実施例94と同様にして比較例187の実験を行った。また、上記未処理の木片基材4の代わりに上記3−4)に記載の水溶性成分溶出処理を施した木片基材1を使用し、かつ、α−CDを担持した植物栽培用資材の代わりに定性濾紙(No2、直径55mm)を用いたこと以外は実施例94と同様にして比較例188の実験を行った。
[実施例95、比較例189、190]
栽培植物としてカイワレの代わりにコマツナを用いたこと以外は実施例94、比較例187、188と同様にして、それぞれ、実施例95、比較例189、190の実験を行った。結果を表8に示す。
Figure 0005826732
表8を見ると、発芽率に関して言えば、本発明の植物栽培用資材を使用しなかった比較例187、189では、発芽率がともに90%であるのに対し、α−CDを担持した本発明の植物栽培用資材を用いた実施例94、95ではともに発芽率が100%であり、本発明の植物栽培用資材が発芽率を改善することが分かる。また、植物成長に関して言えば、本発明の植物栽培用資材を用いた実施例94、95では、本発明の植物栽培用資材を使用しなかった比較例187、189と比べて下胚軸長の伸びが大きく、植物成長が改善されているのが分かる。特に、栽培植物としてコマツナを用いた実施例95では、木片基材4の代わりに水抽出処理した木片基材1を用いた比較例190と同程度の下胚軸長となっており、植物成長が効果的に改善されていることが分かる。以上の表8の結果より、α−CDを含有する本発明の植物栽培用資材は、木片基材に含まれる可溶性成分が植物成長および発芽率に及ぼす悪影響を低減化することに有効であることが明らかになった。
5) 保水性試験
一定時間内に蒸発した基材中の水分量を測定することにより、基材の保水性を判断した。すなわち、2種の基材の保水性を比較する場合には、蒸発する水の量が少ない方が、保水性が優れていると評価し、蒸発する水の量が2種の基材で同等の場合には、保水性も同等と評価した。
[実施例96]
<木片基材セットの作製>
上記3−4)に記載の手順で調製した界面活性剤含有木片基材2をワイピングクロス1枚(キムワイプS−200、日本クレシア製、120×215mm)に包み込み、これをプラスチック製計量皿(50mm×50mm)の上に置き、その上に実施例92に記載の手順で調製したα−CDを担持した植物栽培用資材を1枚載せ、さらにその上に通常の定性濾紙(No2、直径55mm)1枚を載せて木片基材セットを作製した。
<蒸発した水分量の測定>
上記の木片基材セットの上から蒸留水14mLを加え、直後に木片基材セットの重量を測定し、この値を放置前重量(A)とした。次に、この木片基材セットを16.5℃のインキュベーター内に9時間放置し、その後重量を測定して、この値を放置後重量(B)とし、下記式1により、放置中に蒸発した水分量(C)を求めた。
[式1] C=A−B (単位:g)
この測定を木片基材セット10セットについて行い、その平均値を求めた。
[実施例97]
インキュベーターの温度を25℃としたこと以外は実施例96と同様にして蒸発した水分量を測定した。
[比較例191、192]
木片基材セット中の植物栽培用資材の代わりに処理をしていない定性濾紙を用いたこと以外は実施例96、97と同様にしてそれぞれ蒸発量の水分を測定した。
実施例96、97、比較例191、192の結果を表9に示す。
Figure 0005826732
表9を見ると、放置温度が16.5℃である場合、α−CDを担持した植物栽培用資材を使用した実施例96では水の蒸発量が3.50gであるのに対し、α−CDを担持した植物栽培用基材に代えて無処理の濾紙を用いた比較例191では水の蒸発量が3.51gであり、α−CDを担持した植物栽培用資材の使用の有無による水の蒸発量には大差なく、両者の保水性が同等であることが分かる。一方、放置温度が25℃の場合は、α−CDを担持した植物栽培用資材を用いた実施例97では水の蒸発量が10.69gであるのに対し、無処理の濾紙を用いた比較例192では水の蒸発量が11.02gであり、α−CDを担持した植物栽培用資材を使用した場合、使用しない場合に比べて水の蒸発量は少なくなり、若干ではあるが保水性が優れる結果となった。
これらの結果から、本発明の植物栽培用資材を使用した場合に木片基材セットの保水性が損なわれることはないことが分かった。すなわち、α−CDを担持した本発明の植物栽培用資材は界面活性剤含有木片基材の保水性に悪影響を及ぼさないことが明らかになった。
本発明によれば、栽培用土中に存在する界面活性剤や木質材料中の可溶性成分などの植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減できる植物栽培用資材および植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減できる方法が提供される。本発明の植物栽培用資材および植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減する方法は、安全性が高いことに加えて、界面活性剤の有する保水性機能や防黴性を損なうことがないので、植物の健康的な成長に寄与し、良質な植物を育成することができる。

Claims (7)

  1. 植物成長阻害因子による成長阻害を軽減するための植物栽培用資材であって、α−シクロデキストリンを担持した担体を含み、該担体が木質繊維を主要構成要素とする木質基体である植物栽培用資材。
  2. 木質繊維を主要構成要素とする前記木質基体が、木質繊維板または木質繊維からなるシートであり、該木質基体1gに対し前記α−シクロデキストリンを0.02〜1g担持したものである請求項に記載の植物栽培用資材。
  3. 前記植物成長阻害因子が界面活性剤である請求項1又は2に記載の植物栽培用資材。
  4. 前記植物成長阻害因子が木質材料中の可溶性成分である請求項1又は2に記載の植物栽培用資材。
  5. α−シクロデキストリンを担持した担体を含み、該担体が木質繊維を主要構成要素とする木質基体である植物栽培用資材を用い、植物成長阻害因子と前記α−シクロデキストリンとを接触させることにより、前記植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減する方法。
  6. 木質繊維を主要構成要素とする前記木質基体が、木質繊維板または木質繊維からなるシートである請求項に記載の植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減する方法。
  7. 前記植物成長阻害因子を含む栽培用土100質量部あたり、前記α−シクロデキストリンを0.1〜2質量部用いる請求項5又は6に記載の植物成長阻害因子による植物成長阻害作用を軽減する方法。
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