JP5825570B2 - 糸状菌培養用培地 - Google Patents
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Description
大豆由来の成分を窒素源として用いることは、従来、滅菌された大豆、脱脂大豆、これらを熱処理等したもの、大豆蛋白質等を窒素源とすること等から知られているが(例えば、特許文献4〜7参照)、窒素源として大豆由来の不溶性窒素成分を特に用いることは知られていなかった。
(1)大豆由来の不溶性窒素成分を含む糸状菌培養用培地。
(2)次の(A)または(B)の特徴を有する大豆由来の不溶性窒素成分を含む上記(1)に記載の糸状菌培養用培地。
(A)水分8%以下、粗たん白質含量47%以上、粗繊維7%以下、粗灰分6.8%以下、窒素分7.52%以上、粒度0.106mm(150メッシュ)パス90%以上、抗原量100U/10mg以下
(B)水分12%以下、粗たん白質含量51.125%以上(無水物換算)、粗繊維3〜7%、粗灰分6〜7%、窒素分8.18%以上(無水物換算)、粒度0.355mm以上痕跡、0.25mm(60メッシュ)パス90%以上、0.15mm(100メッシュ)パス50%以上、ウレアーゼ活性度0.3以下
(3)糸状菌がAspergillus属、Humicola属またはTrichoderma属に属する菌である上記(1)または(2)に記載の糸状菌培養用培地。
(4)糸状菌がHumicola insolensである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の糸状菌培養用培地。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の糸状菌培養用培地によって、糸状菌を培養する方法。
(6)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の糸状菌培養用培地によって、糸状菌を培養することにより、糸状菌に酵素を産生させる方法。
(7)酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼまたはリグニン分解酵素である上記(6)に記載の方法。
(8)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の糸状菌培養用培地によって、糸状菌を培養することにより、糸状菌に産生させる酵素を調節する方法。
(9)酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼまたはリグニン分解酵素である上記(8)に記載の方法。
(10)上記(5)に記載の方法によって培養された糸状菌を用い、バイオマスを分解する方法。
(11)バイオマスが草本系バイオマスである上記(10)に記載の方法。
(12)草本系バイオマスがイナワラ、バガスまたはススキである上記(11)に記載の方法。
ここで「糸状菌の培養に適する」とは、糸状菌の増殖や、糸状菌に酵素を産生させるための培地として有効に利用できることを指す。
本発明の「糸状菌培養用培地」は、大豆由来の不溶性窒素成分を含み、糸状菌の培養に適するものであれば、糸状菌の培養に有用な公知の他の成分等を含んでいてもよく、固体培地であっても液体培地であっても良い。特に液体培地においては、糸状菌がペレット化せず、分散した状態で培養できる培地であることが特に好ましい。
(A)水分8%以下、粗たん白質含量47%以上、粗繊維7%以下、粗灰分6.8%以下、窒素分7.52%以上、粒度0.106mm(150メッシュ)パス90%以上、抗原量100U/10mg以下である。
また、上記(A)のような特徴に加え、さらに、水溶性窒素指数(NSI)が概ね5以上、20未満、ウレアーゼ活性度0.02以下、トリプシンインヒビター活性1.5U/mg以下である、(A’)のような特徴を有する不溶性窒素成分を含むものであっても良い。
この(A)または(A’)のような特徴を有する不溶性窒素成分として、例えば、市販のJ−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)(J−オイルミルズ製)等が挙げられる。また、本発明の「糸状菌培養用培地」は、炭素源としてバイオマスをさらに含むこともできる。
このような「大豆由来の不溶性窒素成分」として、例えば、上記(A)または(A’)のような特徴を有するものが挙げられる。このような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」は、エクストルーダーで脱脂大豆を処理し、膨化、変性させた後、乾燥し、粉砕することで調製することができる。
エクストルーダーによる脱脂大豆の処理は、上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」が得られる条件であれば、いずれの処理条件であっても良い。例えば、エクストルーダーKEI−87(幸和工業株式会社製)を用いる場合には、バレル温度160〜190℃、圧力30〜50kg/cm2、回転数280rpm、スクリュー配置に於いてニーディングディスクを6個含むスクリューを使用し、原料供給量530〜600kg/時間、水供給量80〜130リットル/時間、ダイ2.5mm×226穴の処理条件等が挙げられる。
また、二軸型エクストルーダーKE145−25(幸和工業株式会社製)を用いる場合には、バレル温度180℃、圧力45kg/cm2、回転数280rpm、原料供給量77kg/hr、ダイ2mm×10穴の処理条件やバレル温度140℃、圧力54kg/cm2、回転数280rpm、原料供給量77kg/hr、ダイ2mm×10穴の処理条件等が挙げられる
また、上記(B)のような特徴に加え、さらに、抗原量5000〜2万U/10mgであり、水溶性窒素指数(NSI)が概ね15以上35未満である、(B’)のような特徴を有する不溶性窒素成分を含むものであっても良い。
この(B)または(B’)のような特徴を有する不溶性窒素成分として、例えば、市販のソイプロ(J−オイルミルズ製(登録商標))等が挙げられる。このような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」は、脱脂大豆を乾燥し、粉砕することで調製することができる。
この(B)または(B’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を用いた糸状菌培養用培地では、上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を用いた糸状菌培養用培地と比べてやや糸状菌がペレット化しやすく、必ずしも糸状菌が完全に分散した状態で培養することはできないが、糸状菌に酵素を産生させる場合等において有用である。
本発明の「糸状菌を培養する方法」では、本発明の糸状菌培養用培地を培地として用いれば、従来、糸状菌の培養方法として知られているいずれの方法を用いても良い。例えば、液体培地を用いて糸状菌を培養する場合には、PW−1(サクラ精機製)等の市販のジャーファメンターを用いて培養してもよく、MIR−220R(SANYO製)等の市販の震盪培養機を用いて震盪培養してもよい。震盪培養することにより、糸状菌の増殖や、糸状菌による酵素の産生を効率的に行うことができるため好ましい。
また、本発明の「糸状菌を培養する方法」において、糸状菌の生育を促し、生育ステージを均一にするために、糸状菌の胞子を本発明の糸状菌培養用培地に植菌して培養を行うことが好ましい。
本発明の「糸状菌に酵素を産生させる方法」では、本発明の糸状菌培養用培地を培地として用いれば、糸状菌に酵素を産生させるために有効な方法として知られているいずれの方法を用いても良い。例えば、前培養によって糸状菌を増殖させた後、増殖した糸状菌を効率的に酵素が産生できる培地に植菌して本培養を行うこと等が挙げられる。
特に上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を用いて糸状菌がペレット化せず、分散した状態で前培養を行い、糸状菌を効率よく増殖させた後、上記(B)または(B’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地でこの糸状菌を本培養することにより、糸状菌に特に効率的に酵素を産生させることができる。
本発明の実施例においては、本発明の糸状菌培養用培地を用いて糸状菌を培養することにより、カバ由来キシラン分解活性(主にキシラナーゼ活性)およびパラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)を測定することにより、これらの酵素活性を有するヘミセルラーゼが産生され、パラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)およびパラ−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド分解活性(主にβ−グルコシダーゼ活性)を測定することにより、セロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、β−グルコシダーゼ活性等を有するセルラーゼが産生されていることを確認している。
この糸状菌培養用培地は、その培地に含まれる成分によって選択することができ、特に、大豆由来の不溶性窒素成分によって選択することが好ましい。例えば、糸状菌培養用培地として、上記(A)または(A’)のような特徴を有する「大豆由来の不溶性窒素成分」を含む糸状菌培養用培地を選択し、Humicola insolens等の糸状菌を培養する場合には、パラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)(pNP−Xase)等を有するヘミセルラーゼを産生させることができ、さらにパラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)(pNP−Lase)等を有するセルラーゼを多く産生させることができる。
糸状菌培養用培地として、グルコース5w/v%と大豆由来の不溶性窒素成分を0.3w/v%含む培地を調製した。この大豆由来の不溶性窒素成分は、以下のように調製したものをそれぞれ用いた。
1)J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)
脱脂大豆(水溶性窒素指数15〜35程度)(J−オイルミルズ製)を、エクストルーダーKEI−87(幸和工業株式会社製)にて、バレル温度190℃、圧力54〜69kg/cm2、回転数280rpm、スクリュー配置に於いてニーディングディスクを6個含むスクリューを使用し、原料供給量770kg/時間、水供給量123リットル/時間、ダイ2.5mm×226穴の条件下で処理し、大気中に押し出して膨化、変性させた。この処理物を3〜5mm程度に切断し、80℃の温風で充分に乾燥し、これを粉砕機ACM−100(ホソカワミクロン製)にて粉砕したものを、J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)として調製した。
このように調製された不溶性窒素成分は、水分8%以下、粗たん白質含量47%以上、粗繊維7%以下、粗灰分6.8%以下、窒素分7.52%以上、粒度0.106mm(150メッシュ)パス90%以上、抗原量100U/10mg以下であるという特徴(A)を有する。
脱脂大豆(水溶性窒素指数15〜35程度)(J−オイルミルズ製)を、粉砕機ACM−100(ホソカワミクロン製)でソイプロ(登録商標)として調製した。このように調製された不溶性窒素成分は、水分12%以下、粗たん白質含量51.125%以上(無水物換算)、粗繊維3〜7%、粗灰分6〜7%、窒素分8.18%以上(無水物換算)、粒度0.355mm以上痕跡、0.25mm(60メッシュ)パス90%以上、0.15mm(100メッシュ)パス50%以上、ウレアーゼ活性度0.3以下であるという特徴(B)を有する。
蒸留水100mlを500ml三角フラスコに入れ、グルコース5w/v%、不溶性窒素成分0.3w/v%を添加しよく溶かした。その後、オートクレーブ(ES−315:TOMY製)で121℃、20分高温高圧滅菌を行い、糸状菌培養用培地とした。
実施例1で調製した糸状菌培養用培地を用い、糸状菌の培養を行った。比較として、基本培地を用いた培養も行った。
1.糸状菌
Humicola insolens ATCC26908株(ATCC(American Type Culture Collection)の菌株保存機関より住商ファーマインターナショナル社を通じて入手した)を用いた。
1)糸状菌培養用培地
実施例1で調製した糸状菌培養用培地を用いた。
2)基本培地
グルコース5w/v%、Yeast extract2w/v%、Polypepton0.1w/v%、硫酸マグネシウム0.03w/v%、塩化カルシウム0.03w/v%を含む培地を基本培地として調製した。
即ち、蒸留水50mlを500ml三角フラスコに入れ、グルコース(関東化学製)5w/v%、Yeast extract(BD製)2w/v%、Polypepton(日本製薬製)0.1w/v%、を添加しよく溶かした。その後、オートクレーブ(ES−315:TOMY製)で121℃、20分高温高圧滅菌を行った(1)。
次に10w/v%硫酸マグネシウム水溶液(和光純薬製)、10w/v%塩化カルシウム水溶液(和光純薬製)を調製し、オートクレーブ(ES−315:TOMY製)で上記と同様に滅菌した後、0.03w/v%になるように上記(1)に無菌的に添加し、基本培地とした。
グルコース5w/v%、比較用窒素成分0.3w/v%、硫酸マグネシウム0.03w/v%、塩化カルシウム0.03w/v%を含む培地を比較用培地として調製した。
比較用窒素成分は、Polypepton−Y(日本製薬製)、PhytonePepton(BBL製)、ゼラチンペプトン(nacalai tesque製)、乾燥おから(さとの雪食品製)、小麦ふすま(ナチュラルキッチン製)、米ぬか(ノイマン製)、魚粉(益川商店製)、菜種ミール(J−オイルミルズ製)、コーングルテンミール(J−オイルミルズ製)、脱脂大豆(J−オイルミルズ製)またはペプトン(極東製薬工業製)をそれぞれ用い、上記2)の基本培地と同様に比較用培地を調製した。
炭素源としてコシヒカリのイナワラを一週間程度天日干しして乾燥し実験用カッティングミルP−15(FRITSCH製)にて粉砕した後、80メッシュで篩別したものを5w/v%含み、窒素源としてJ−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)として調製した不溶性窒素成分を0.3w/v%含むものをpH6.0としたものを本培養用の糸状菌培養用培地として調製した。
即ち、蒸留水100mlを500ml三角フラスコに入れ、イナワラ5w/v%、不溶性窒素成分0.3w/v%を添加しよく溶かした。その後、オートクレーブ(ES−315:TOMY製)で121℃、20分高温高圧滅菌を行い、本培養用の糸状菌培養用培地とした。
1)前培養
上記の前培養用培地(糸状菌培養用培地、基本培地または比較用培地)をそれぞれ50mLいれた500mL三角フラスコに、糸状菌を1白金耳植菌し、200rpm、30℃で3日間、震盪培養機(MIR−220R:SANYO製)を用いて震盪培養した。
基本培地で前培養した場合、図1、A.に示したように、菌体は、1cmほどのぺレツトを形成したが、本願発明の糸状菌培養用培地で前培養した場合は、図1、B.に示したように、ペレットを形成せず、菌体が分散した状態で前培養できることが確認できた。
比較用培地で前培養した場合は、図2に一例を示したが、いずれの比較用窒素成分を使用した場合も糸状菌がペレットを形成してしまい、十分に増殖が行えないことが確認された。
上記糸状菌培養用培地で前培養した糸状菌を10w/v%となるように、上記の本培養用の糸状菌培養用培地1Lに加え、2Lジャーファメンター(PW−1:サクラ精機製)を用いて、通気量はlvvm、回転数は溶存酸素量に合わせ200rpm〜500rpmで制御し、10日間培養を行った。
24時間おきに培養上清を10mLずつ採取し、採取したサンプルについてPHを6.0に調整し、次のような手法により、還元糖および遊離糖を測定することで、ヘミセルラーゼ等の酵素活性を調べた。
表1の組成で混合した混合液のうち100μLに、DNS試薬300μLを加え、50℃で60分間反応させた後、100℃で5分間おくことにより反応を停止した。この反応溶液50μLを1000μLの滅菌水で希釈した後、吸光度(500nm)を測定した。
DNS試薬の調製および還元糖の測定は、以下の文献を参考にして、次のように行った。
文献:Use of dinitrosalicylic acid reagent for determination of reducing sugar;G.L. Miller;Anal. Chem., 31, 426−428 (1959)
水酸化ナトリウム(和光純薬工業製)、3,5ジニトロサリチル酸(DNS)(東京化成工業製)、ロッシェル塩(和光純薬工業製)、結晶フェノール(和光純薬工業製 核酸抽出用)、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業製)、ろ紙(Whatman(登録商標) No,1)、リン酸二水素ナトリウム(和光純薬工業製)、リン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業製)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)(ナカライテスク製)Xylan Birchwood(SIGMA製)
1)DNS試薬溶液の調製
4.5%の水酸化ナトリウム水溶液60mLと1%DNS水溶液176mLを混合し45gのロッシェル塩を加え完全に溶解させた。(A液)
10%水酸化ナトリウム水溶液4.4mLに結晶フェノール2gを加え完全に溶解させ、純水で20mLにフィルアップした。この溶液13.8mLに炭酸水素ナトリウムを1.38g完全に溶かした。(B液)
B液にA液を全量加えよく攪拌させ、さらにロッシェル塩を飽和するまで溶かしこみ遮光して室温で2日以上安定させた。この操作でできた溶液をDNS試薬溶液とした。
1Mリン酸二水素ナトリウム水溶液39mLと、1Mリン酸水素二ナトリウム水溶液61mLを混合し、pHを6に調整した物をリン酸バッファーとした。
氷上にてリン酸バッファー25μL、純水975μL、1%CMCまたは1%Xylan Birchwoodを125μL、培養上清125μLを入れ、激しく攪拌した。
以下の操作は三連で行った。
混合した溶液のうち100μLを予め反応の0時間として採取し、氷上に保管しておいた。残った溶液を150μLずつ採取した。50℃の湯を入れたウォーターバスに浮かべ1時間反応させた。反応後は、直ちに氷上に移し5分間急冷した。
溶液は次に氷上で100μLずつ分注し、0時間として保管しておいたサンプルとともに1)で調製したDNS試薬を300μLずつ加え、よく攪拌した。その後5分間煮沸しその後直ちに冷水で5分間冷却した。
最後にそこから50μL採取し、1000μLの純水で希釈した後、分光光度計(BECKMAN COULTER DU730)でOD500nmの波長の吸光度を測定した。
表2の組成で混合し、リン酸バッファーでpH6.0に調製したものを50℃で10分間反応させた後、1M炭酸ナトリウムを100μL加えることで反応を停止した。この反応溶液の吸光度(415nm)を測定した。
一方、パラ−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド分解活性(主にβ−グルコシダーゼ活性)(図3、pNP−Gase)、カルボキシメチルセルロース分解活性(主にエンドグルカナーゼ活性)(図3、CMCase)は本培養の開始から7日目以降の後期になって始めて活性の上昇が確認され、カルボキシメチルセルロース分解活性に関しては、培養期間を通してほとんど活性がみられなかった。
従って、この結果より、本発明の糸状菌培養用培地を用いて糸状菌を培養することにより、糸状菌にキシラナーゼ活性、βキシロシダーゼ活性等を有するヘミセルラーゼおよびセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、β−グルコシダーゼ活性等を有するセルラーゼ等を産生させることができることが確認できた。
また、図4の写真(右)においてイナワラの細胞壁がわからないほど分解されていることも観察された。従って、これらより、Humicola insolens ATCC26908株によってイナワラ粉末を資化できることが確認された。
その結果、図5に示したように、CMCアーゼ活性(CMCase)はほとんど差が見られなかった。キシラナーゼ活性(XYLase)については、基本培地で前培養したHumicola insolens ATCC26908株を用いた場合は、ほとんど活性が見られなかったが、糸状菌培養用培地で前培養した場合には、酵素活性が著しく高まり、基本培地で前培養した場合と比べて約1000倍の活性を示すことが確認された。
この活性値は、キシラナーゼ分解酵素(キシラナーゼ分解活性:400unit/m)として市販されているノボザイムH−TECU(ノボザイム製)の活性の約10分の1程度であるが、さらなる上昇も可能であり、この点からも本発明の糸状菌培養用培地で前培養したHumicola insolens ATCC26908株を用いることにより、イナワラ等のバイオマスの分解が可能であることが十分に示唆された。従ってこの結果から、ペレットを形成せず、分散した状態で前培養を行い、十分に増殖した糸状菌を用いることが、バイオマスの分解において好ましいものと考えられた。
1)前培養
実施例1と同様に調製した前培養用の糸状菌培養用培地(不溶性窒素成分:J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標))50mlに、糸状菌の胞子を1白金耳植菌し、200rpm、30℃で3日間、震盪培養機(MIR−220R:SANYO製)を用いて震盪培養した。
2)本培養
実施例2と同様に調製した本培養用の糸状菌培養用培地(不溶性窒素成分:J−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)またはソイプロ(登録商標)(いずれも5w/v%))100mlに、上記1)の前培養で得られた糸状菌培養液をそれぞれ10w/v%となるように加え、200rpm、30℃で10日間、震盪培養機(MIR−220R:SANYO製)を用いて震盪培養した。
本培養終了後(10日目)の培養上清を採取し、採取したサンプルについて実施例2と同様の方法で遊離糖を測定することで、ヘミセルラーゼ等の酵素活性を調べた。
したがって、この結果より、窒素源としてJ−オイルミルズ ソヤレックス(Soyallex)(登録商標)を含む培地で糸状菌を前培養した後、窒素源としてソイプロ(登録商標)を含む培地で本培養を行うことにより、糸状菌の酵素産生効率を高めることができた。
一方で、ソイプロ(登録商標)を窒素源とする糸状菌培養用培地で本培養を行なった場合はパラ−ニトロフェニル−β−D−ラクトシド分解活性(主にセロビオハイドラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性)(pNP−Lase)と比べて、さらにパラ−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド分解活性(主にβ−キシロシダーゼ活性)(pNP−Xase)が高かったことから、糸状菌培養用培地に使用する窒素源の選択により、糸状菌に産生させる酵素の活性を調節できることが示唆された。従って、この結果より、糸状菌培養用培地に使用する窒素源等、糸状菌培養用培地やその成分を選択することにより、目的のバイオマスの種類に応じて、酵素活性の調節が可能となると考えられた。
また、この結果から、本発明の糸状菌培養培地を用い、震盪培養機ではなく、さらに、通気性、撹拌性などが向上するジャーファメンターによってスケールアップ試験を行うことにより、更なる酵素産生の効率化が可能であると予測された。
Claims (9)
- 次の(A)または(B)の特徴を有する大豆由来の不溶性窒素成分を含むフーミコラ インソレンス(Humicola insolens)培養用培地。
(A)水分8%以下、粗たん白質含量47%以上、粗繊維7%以下、粗灰分6.8%以下、窒素分7.52%以上、粒度0.106mm(150メッシュ)パス90%以上、抗原量100U/10mg以下
(B)水分12%以下、粗たん白質含量51.125%以上(無水物換算)、粗繊維3〜7%、粗灰分6〜7%、窒素分8.18%以上(無水物換算)、粒度0.355mm以上痕跡、0.25mmパス(60メッシュ)90%以上、0.15mm(100メッシュ)パス50%以上、ウレアーゼ活性度0.3以下 - 請求項1に記載のフーミコラ インソレンス(Humicola insolens)培養用培地によって、フーミコラ インソレンス(Humicola insolens)を培養する方法。
- 請求項1に記載のフーミコラ インソレンス(Humicola insolens)培養用培地によって、フーミコラ インソレンス(Humicola insolens)を培養することにより、フーミコラ インソレンス(Humicola insolens)に酵素を産生させる方法。
- 酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼまたはリグニン分解酵素である請求項3に記載の方法。
- 請求項1に記載のフーミコラ インソレンス(Humicola insolens)培養用培地によって、フーミコラ インソレンス(Humicola insolens)を培養することにより、フーミコラ インソレンス(Humicola insolens)に産生させる酵素を調節する方法。
- 酵素がセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼまたはリグニン分解酵素である請求項5に記載の方法。
- 請求項2に記載の方法によって培養されたフーミコラ インソレンス(Humicola insolens)を用い、バイオマスを分解する方法。
- バイオマスが草本系バイオマスである請求項7に記載の方法。
- 草本系バイオマスがイナワラ、バガスまたはススキである請求項8に記載の方法。
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