水産物の養殖用筏、漁網浮子、海上標識、無線標識、ブイ等の水面構造物に電気設備(船舶等の衝突を防止するための電気照明等)を設ける場合には、作業員等の安全性を確保しつつ電気設備に効率よく電力を供給する仕組みが必要となる。またそのような仕組みを実現する設備には、水上交通の安全確保、長期に亘り安定して機能する耐久性、装置の冷却性能等も求められる。
本発明はこのような背景に鑑みてなされたもので、水面構造物に設けられている負荷に外部から電力を供給するための電力供給方法、及び電力供給システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明の一つは、水面構造物に設けられている負荷に外部から電力を供給する方法であって、非接触給電の受電設備の受電部を水面下に沈めた状態で水面構造物に設け、非接触給電の送電設備の送電部を前記受電部に対向させて前記送電設備から前記受電設備に非接触給電により電力を供給し、前記受電設備が受電した電力を前記負荷に供給することとする。
本発明によれば、非接触給電により水面構造物に設けられている負荷に外部から電力を効率よく供給することができる。また受電設備の受電部を水面下に沈めた状態で水面構造物に設けているので、水面構造物の限られたスペースを有効に利用することができる。また受電部を水面下に設けることで受電部が水面構造物に対して錘として機能し、揺動を抑えて水面構造物を安定させることができる。また受電設備の受電部が水面下に沈められた状態で送電設備から非接触給電により電力を受電するので、給電ケーブル等の水上交通の妨げとなるようなものを水中に設ける必要がなく、また作業者等が感電する危険性も少ない。また受電部を水面下に設けることで受電部の冷却を図ることができる。
本発明のうちの他の一つは、上記電力供給方法であって、前記受電部は、非接触給電の受電側の共振回路を構成する、コイル及びコンデンサを含み、前記送電部は、非接触給電の送電側の共振回路を構成する、コイル及びコンデンサを含むこととする。
本発明のうちの他の一つは、上記電力供給方法であって、前記受電部及び前記送電部は、密閉された設備ケースに収容されて水面下に沈められることとする。
本発明の電力供給方法においては、非接触給電により給電を行うので、このように受電部や送電部を密閉された設備ケースに収容して露出部分を減らすことができ、劣化を防いで装置の耐久性を向上することができる。
本発明のうちの他の一つは、上記電力供給方法であって、前記負荷と前記受電部との間に介在し、前記受電部が受電した電力を蓄電し、蓄電されている電力を前記負荷に供給する蓄電池を、水面下に沈めて前記水面構造物に設けることとする。
このように比較的専有体積の大きな蓄電池を水面下に沈めた状態で水面構造物に設けることで、水面構造物の限られたスペースを有効に利用することができる。また重量物である蓄電池を水面下に設けることで、蓄電池が水面構造物に対して錘として機能し、揺動を抑えて水面構造物を安定させることができる。また水面下に設けることで蓄電池の冷却も図られる。
本発明のうちの他の一つは、上記電力供給方法であって、前記蓄電池の充放電を制御する充放電制御回路を、前記受電部とともに水面下に沈めて前記水面構造物に設けることとする。
本発明のうちの他の一つは、上記電力供給方法であって、前記受電設備が受電した電力を整流する整流回路を、前記受電部とともに水面下に沈めて前記水面構造物に設けることとする。
このように充放電制御回路や整流回路を水面下に沈めた状態で水面構造物に設けることで、水面構造物の限られたスペースを有効に利用することができる。またこれらは水面構造物に対して錘として機能し、揺動を抑えて水面構造物を安定させることができる。また水面下に設けることでこれらの冷却も図られる。
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
本発明によれば、水面構造物に設けられている負荷に外部から電力を供給することができる。
以下、本発明の一実施形態について図面とともに説明する。
図1に本発明の一実施形態として説明する電力供給システム1の概略的な構成を示している。電力供給システム1は、水面構造物5に設けられ、非接触給電(電界共鳴方式、電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電波方式等)により電力の供給を受ける受電設備10と、船舶等の水上移動体6に設けられ、受電設備10に非接触給電により電力を供給する送電設備20とを含む。
水面構造物5は、例えば、水産物の養殖用筏、漁網浮子、海上標識、無線標識、ブイ等であり、受電設備10から供給される電力により動作する電気設備(照明装置、自動給餌器等)である負荷51を備える。本実施形態では、水面構造物5は、多数の採苗連55が取り付けられた牡蠣56の養殖用筏であり、負荷51は、船舶等の衝突防止を目的として養殖用筏の存在を注意喚起するために設けられた照明設備とその駆動装置とを含むものとする。照明設備は、例えば、高輝度LED群等で構成され、受電設備10から供給される電力によって夜間時等に点灯(例えば、CdSセンサ等を利用した自動オンオフ)される。
図2に受電設備10の構成を示している。同図に示すように、受電設備10は、受電回路11、充放電制御回路12、蓄電池13、及び無線装置14を備える。
受電回路11は、受電側コイル111、受電側コンデンサ112、及び整流回路113を備える。受電側コイル111は、例えば、導体線を巻回軸の周りに所定回数巻回したものである。受電側コイル111と受電側コンデンサ112は共振回路を構成する。整流回路113は、受電回路11が受電した交流電力を直流電力に変換(整流)して蓄電池13に供給する。
蓄電池13は、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池である。蓄電池13に蓄えられた電力は負荷51に供給される。負荷51が、例えば、交流負荷である場合には、蓄電池13と負荷51との間に更に昇圧チョッパやインバータが設けられる。
充放電制御回路12は、プロセッサ(マイクロコンピュータ等)、蓄電池13の端子間電圧を測定する電圧センサ、蓄電池13に入力又は出力される電流を計測する電流センサ等を備えて構成され、蓄電池13の充放電状態(蓄電池13の残量等)の監視や充放電制御を行う。
無線装置14は、他の装置との間で無線通信を行うインタフェースである。充放電制御回路12は、無線装置14を介して送電設備20と無線通信を行う。
図3に送電設備20の構成を示している。同図に示すように、送電設備20は、送電回路21、無線装置22、及び電源装置23を備える。
送電回路21は、送電側コイル211、送電側コンデンサ212、及び制御回路213を備える。送電側コイル211は、例えば、導体線を巻回軸の周りに所定回数巻回したものである。送電側コイル211と送電側コンデンサ212は共振回路を構成する。
制御回路213は、プロセッサ(マイクロコンピュータ等)、及びドライバ回路(ゲートドライバ、ハーフブリッジドライバ等)を含み、電源装置23から供給される電力に基づき、送電コイルに供給する所定周波数の駆動電流を生成する。制御回路213は、無線装置22を介して受電設備10と無線通信を行う。
無線装置22は、他の装置との間で無線通信を行うインタフェースである。制御回路213は、無線装置22を介して受電設備10と無線通信を行う。
電源装置23は、非接触給電により受電設備10に送電する電力(送電回路21を駆動させる電力)や送電設備20の各部において消費される電力を供給する。
図1に示すように、受電設備10は、絶縁樹脂等を用いて構成される絶縁性の受電側設備ケース3に密閉されて収容されている。受電設備10から負荷51への電力の供給は、受電側設備ケース3から引き出された被覆メタル線等の電力供給線52を介して行われる。受電側設備ケース3の密閉性を確保すべく、電力供給線52の受電側設備ケース3からの引き出し部分にはパッキングが施されている。
受電側設備ケース3は、水面下に所定深度で沈められた状態で水面構造物5に設けられる。受電側設備ケース3は、水面構造物5の所定位置に固定されていてもよいし、ワイヤ等の連結具を介して水面構造物5と接続されていてもよい。その場合、受電側設備ケース3が所定深度に維持されるように、受電側設備ケース3には浮体や錘等を設けてもよい。
受電側設備ケース3に収容されている受電設備10のうち受電部(受電側コイル111と受電側コンデンサ112の双方又はいずれか一方)は、送電設備20の後述する送電部から非接触給電により効率よく受電することが可能なように、受電側設備ケース3の所定位置(例えば、受電側設備ケース3の側面に近い位置)に位置決めされて設けられる。
以上のように、受電設備10は、受電側設備ケース3に収容されて水面下に所定深度で沈められた状態で水面構造物5に設けられているので、受電設備10が水面構造物5の限られたスペースを圧迫することがない。また受電側設備ケース3には蓄電池13等の重量物が収容されており、受電側設備ケース3は波浪等による揺動に対して水面構造物5を安定させる錘としても機能する。また所定深度に沈められた受電側設備ケース3に収容されていることで受電設備10の冷却効果も期待できる。
図1に示すように、送電設備20のうち少なくとも送電部(送電側コイル211と送電側コンデンサ212の双方又はいずれか一方)は、絶縁樹脂等を用いて構成される絶縁性の送電側設備ケース4に密閉されて収容されている。電源装置23から送電部への電力の供給は、送電側設備ケース4の所定位置から引き出される被覆メタル線等の電力供給線32を介して行われる。送電側設備ケース4の密閉性を確保すべく、電力供給線32の送電側設備ケース4からの引き出し部分にはパッキングが施されている。
送電設備20から受電設備10に非接触給電が行われる際、送電側設備ケース4は、水面下に所定深度で沈められる。送電側設備ケース4は、水上移動体6の所定位置に固定されていてもよいし、ワイヤ等の連結具を介して水上移動体6と接続されていてもよい。その場合、送電側設備ケース4が所定深度に維持されるように、送電側設備ケース4には浮体や錘等を設けてもよい。
送電設備20の送電部は、前述した受電設備10の後述する受電部に非接触給電により効率よく送電することができるように、送電側設備ケース4の所定位置(例えば、送電側設備ケース4の側面に近い位置)に位置決めされて設けられる。
送電設備20から受電設備10への非接触給電による給電は、例えば、蓄電池13の残量が閾値以下となる等して、受電設備10への給電が必要になった際に行われる。水面構造物5において非接触給電を実施する必要が生じると、水上移動体6が非接触給電を必要としている水面構造物5の側まで移動する。水上移動体6が現場に到着すると、送電側設備ケース4の送電部を受電側設備ケース3の受電部の近くで対向させ非接触給電が開始される。
非接触給電が行われている間は、伝送効率が維持されるよう、送電部と受電部の相対的な位置関係が維持される。受電側設備ケース3及び送電側設備ケース4はいずれも浮力により支えられているので送電部と受電部の位置合わせは容易に行うことができる。尚、例えば、受電側設備ケース3及び送電側設備ケース4の所定位置に両者を連結する連結具を設け、連結具により両者を連結することで送電部と受電部の相対的な位置関係が適切な状態に維持されるようにしてもよい。
非接触給電により蓄電池13に電力が蓄えられ、蓄電池13の残量が予め設定された閾値以上に回復して非接触給電の必要がなくなると、送電設備20は非接触給電による送電を停止する。尚、送電設備20は、例えば、非接触給電による送電電力の変化に基づき、蓄電池13の充電状態を把握する。また例えば、送電設備20は、無線通信により受電設備10から送られてくる蓄電池13の残量情報に基づき、蓄電池13の充電状態を把握する。尚、蓄電池13に充電状態(残量)を示すインジケータを設け、送電設備20のオペレータ等がインジケータから蓄電池13の充電状態を把握し、手動で非接触給電を停止させるようにしてもよい。
以上に説明したように、本実施形態の電力供給システム1によれば、水面構造物5に設けられている負荷51に非接触給電により外部から電力を効率よく供給することができる。また非接触給電の受電設備10の受電部を水面下に沈めた状態で水面構造物5に設けているので、水面構造物5の限られたスペースを有効に利用することができる。また受電部を水面下に設けることで受電部が水面構造物5に対して錘として機能し、揺動を抑えて水面構造物5を安定させることができる。また受電設備10の受電部が水面下に沈められた状態で送電設備20から非接触給電により電力を受電するので、給電ケーブル等の水上交通の妨げとなるようなものを水中に設ける必要がなく、また作業者等が感電する危険性も少ない。
また受電部を水面下に設けることで受電部の冷却を図ることができる。また非接触給電により給電を行うので、受電部や送電部を密閉ケースに収容して露出部分を減らすことができ、劣化を防いで装置の耐久性を向上することができる。
また比較的専有体積の大きな蓄電池13を水面下に沈めた状態で水面構造物5に設けることで、水面構造物5の限られたスペースを有効に利用することができる。また重量物である蓄電池13を水面下に設けることで、蓄電池13が水面構造物5に対して錘として機能し、揺動を抑えて水面構造物5を安定させることができる。また水面下に設けることで蓄電池13の冷却も図られる。
また充放電制御回路12や整流回路113を水面下に沈めた状態で水面構造物5に設けることで、水面構造物5の限られたスペースを有効に利用することができる。またこれらは水面構造物5に対して錘として機能し、揺動を抑えて水面構造物5を安定させることができる。また水面下に設けることでこれらの冷却も図られる。
ところで、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
例えば、受電設備10に、蓄電池13の充電状態(蓄電池13の残量)を表示するインジケータを設けてもよい。上記インジケータは、例えば、高輝度LEDを用いて構成し、色や発光強度を変化させることにより蓄電池13の充電状態を表示するようにする。また上記インジケータは、例えば、水面構造物5の外部から視認しやすい位置に配置し、水面構造物5から離れた遠方から蓄電池13の充電状態を確認できるようにする。
また例えば、蓄電池13の充電状態(蓄電池13の残量)を示す情報を水面構造物5から無線通信により船舶や陸上の監視施設に送信し、蓄電池13の充電状態を遠隔監視できるようにしてもよい。