JP5822293B2 - Rnf213遺伝子多型による重症もやもや病の予測方法 - Google Patents
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Description
(1)被験者のRNF213遺伝子におけるc.14576G>A多型を検出し、ホモ接合性の多型A/Aを持つ場合に、予後不良の重症型である、あるいは発症リスクが高いと判定する、もやもや病の検査方法。
(2)c.14576G>A多型をゲノムDNAで解析して検出する(1)記載の検査方法。
(3)c.14576G>A多型をRNAレベルで解析して検出する(1)記載の検査方法。
(4)c.14576G>A多型をタンパク質レベルで解析して検出する(1)記載の検査方法。
mRNA join(1..35,2707..2911,12374..12537,17897..18043, 26948..27496,27766..27888,28792..28970,29703..29861, 30761..30960,33853..34136,34691..34947,37455..37652, 45386..45602,46262..46335,48152..48305,52146..52301, 56322..56411,58324..58446,64164..64332,66950..67123, 67462..67611,71140..71765,73239..73404,75295..75512, 76720..76860,76967..77131,78335..79490,82266..82459, 82991..83149,83812..87420,88904..89040,89435..89530, 90819..90937,92074..92193,92646..92800,93153..93300, 93575..93710,97422..97613,99195..99340,100868..101022, 102236..102448,102743..102924,103567..103687, 106882..106982,107095..107277,108636..108805, 108902..109001,111008..111119,111655..111868, 112109..112299,113592..113723,114894..115004, 115435..115677,116016..116097,116896..116930, 118754..118848,119965..120121,120681..120861, 122113..122204,122811..123062,124173..124305, 124672..124755,125384..125564,125824..126025, 127746..127823,128307..128501,128962..129051, 129146..129330,132479..135420)
・配列番号2に示すヒトRNF213遺伝子のmRNA配列中の14719番目のGがAに置換。(coding DNA の14576番目である。)
・配列番号3に示すヒトRNF213遺伝子のmRNAがコードするRNF213蛋白のアミノ酸配列中の4859番目のArgがLysに置換。
mRNA join(1..35,2707..2911,12374..12537,26948..27496, 27766..27888,28792..28970,29703..29861,30761..30960, 33853..34136,34691..34947,37455..37652,45386..45602, 46262..46335,48152..48305,52146..52301,56322..56411, 58324..60597)
TCCCCTATGCAGTGATCCTT(リバースプライマー)(配列番号8)
RNF213遺伝子におけるホモ接合性のc.14576G>A多型は、早期発症で重症型もやもや病の強力な予知因子である
抄録
背景 最近もやもや病 (MMD)の疾患感受性遺伝子としてRNF213遺伝子が報告された。私たちは、RNF213遺伝子の遺伝型ともやもや病の臨床型についての相関を明らかにすることにした。
はじめに
もやもや病は、まれな脳血管の病気で、進行性に、内頸動脈の終末部とそこから枝分かれする主幹動脈の狭窄もしくは閉塞をきたす。血管の閉塞がおこると、代償性に異常血管網が形成される、これが‘もやもや血管’と呼ばれるもので、血管造影での所見が‘たばこの煙’のように見えることから名づけられた。1 もやもや病は世界中で見られているが、東アジア、とりわけ日本と韓国での有病率が高い。2,3 年間発症率は日本で0.35-0.54/100000人年であるが、4,5 ヨーロッパではその10分の1である。6,7 好発年齢は2峰性のピークを示す。すなわち10歳未満の層に大きなピークがあり、30-40歳代に小さなピークがある。4 小児期発症の場合、一過性脳虚血(TIA)もしくは脳梗塞(infarction)が、もっとも典型的な症状であるが、成人発症では脳出血がより高頻度に見られる。もやもや病は小児の脳卒中の最も頻度の高い原因として重要な疾患であり、8-10未治療で経過すると、非可逆的で重篤な神経学的後遺症を残すことになる。
もやもや病の遺伝学的関与は臨床的に重要な点である。疫学調査により、約15%の患者に家族歴がみられ、高い家族集積性が知られている。遺伝形式は多因子遺伝もしくは浸透率が低い常染色体優性遺伝が想定されている。16-18 表現促進現象も家族性もやもや病ではよく観察される事象である。18 これまで行われた連鎖解析では、5つの異なるもやもや病の遺伝子座が報告されているが、19-22 いずれの遺伝子座からも疾患責任遺伝子は同定されていない。2010年に、Kamadaらが、GWAS studyにより、初のもやもや病の疾患感受性遺伝子として染色体17q25に位置するRNF213遺伝子を同定した。23しかし、臨床症状との関連については知られていなかった。
対象
RNF213遺伝子の変異解析の対象は204人の日本人もやもや病患者で、その血液サンプルを収集した。もやもや病の診断は厚生労働省の診断基準によって行われた。24 これらの患者の臨床症状は、遺伝学的解析の結果を知らされていない臨床医たちによって記載された。204人の患者の概要はtable1に示す。また62組の患者の両親と、13人の母親、4人の父親の血液もしくは唾液サンプルも収集し、変異解析した。RNF213遺伝子で検出された変異について、最大283人の日本人健常コントロールにも見られるかどうか検索した。この研究のプロトコールは横浜市立大学医学部の倫理委員会に承認されており、すべての患者もしくは患者の親に対し、研究参加についての説明が行われ同意が得られた。
ゲノムDNAは、末梢血白血球からQuickGene 610-L (FUJIFILM) を用いて抽出するか、唾液サンプルからOragene(登録商標)・DNA (DNA genotek)キットを用いて抽出した。変異解析のためにDNAをGenomiphi version 2 (GE healthcare)を用いて増幅した。エキソン61にはc.14576G>A変異が存在するが、このエキソンを除く全コーディングエキソンとエキソンーイントロン境界領域について、LightCycler(登録商標)480 System II (Roche Diagnostics).を用いてhigh resolution melting (HRM) 解析を行った。プライマー配列、PCRやHRMの条件は、リクエストに応じて提供可能である。ホモ接合性変異を検出するために、HRMはspike-in法を併用した。25 HRMにおいて、他と異なるメルティング波形を示すサンプルがあれば、ダイレクトシークエンス法にて塩基配列を決定した。使用機器はABI Genetic Analyzer 3100 もしくは3500xL (Applied Biosystems) で、解析ソフトはsequence analysis software version 5.1.1 (Applied Biosystems) およびSequencher
4.10-build 5828 (GeneCodes Corporation)である。エキソン61については、全てのもやもや病患者とその親の検体について、ダイレクトシークエンス法で塩基配列を決定した。以上の変異解析で、検出された変異について、最大283人の健常日本人のサンプルを用いて、HRM解析を行い、これらのサンプルの中に同じ変異が見られるかどうか確認した。全ての変異/多型は、ゲノムDNAもしくは、再度Genomiphiを用いてDNA増幅したものを使って再度PCR及びダイレクトシークエンスを行い、その再現性を確認した。
各々の臨床項目について、その情報がない患者は、各々の統計解析から除外した。(Table 1 並びに supplemental tables 2 及び4に各々の項目について除外した患者数を示している)、全ての統計解析はSPSS Statistics 19 (IBM)を用いて行った。カイ二乗検定は、初発症状、家族歴の有無、知的機能低下やてんかんの合併の有無、もやもや病の分布が両側性か片側性か、といった項目について行った。発症年齢、障害されているPCAの本数といった正規分布に従わない連続変数は、Mann-WhitneyのU 検定 やKruskal-Wallis 検定を用いて解析した。P値が<0.05である時、統計学的に有意と判定した。Kaplan-Meier曲線を用いて累積発症率を算出し、log-rank検定で統計学的有意性を確認した。Cox回帰モデルを用いて、発症年齢に関連する因子を検出した。もやもや病の発症確率の正確検定の95%信頼区間は二項分布を用いて算出した。親子発症例や同胞発症例での臨床項目の比較はWilcoxinの符号順位検定もしくはMcNemar検定を用いた。
RNF213遺伝子の19種類の多型が同定された。(Fig.1及びsupplemental table1に詳細を示す。) そのうち16個は新規の変異であった。C.14576G>Aは41例の家族歴のあるもやもや病患者のうち39例に(95.1%)、163例の孤発性の患者のうち129例(79.2%)に、そして283人の健常日本人のうち5人に(1.8%)検出された。62組の患者の両親についてもこの多型の有無を調べたところ、この多型は全例で、一方もしくは両方の親からの遺伝であった。C.14576G>A多型をもつ168例のうち、15例でホモ接合性変異が検出されたが、健常コントロールと非罹患の患者の親では1例も検出されなかった。以上からヘテロ接合性のc.4576G>A多型はもやもや病の発症リスクを高めそのOdds比は236、95%信頼区間は91-615、p<0.001であった。ホモ接合性変異がコントロールや非罹患の親たちに見られなかったことから、ホモ接合性多型の発症リスクはOdds比が計算上無限大となって算出はできなかった。しかしかなり強い効果をもつものと想定された。ホモ接合性変異を有する場合のもやもや病の発症確率は、非常に高く、95%信頼区間でいうと、78-100%であった。その他に見つかった変異/多型に関しては、もやもや病発症のリスクに関するOdds比は小さく、どれも有意差は見られなかった。(Supplemental table 1)
31例が、その他の多型を有していた。(table.2)そのうち15人は、c.14576G>Aをヘテロ接合性に有しており、その中で両親の検体が解析可能だった5例中4例が、これら2つの多型を複合ヘテロ接合性に有していた。(つまり1つの多型が父親から、もうひとつが母親から由来していた)。それ以外の16例はc.14576G>A多型を持っていなかった。そのうち1人はc.13342G>A多型をホモ接合性に有しており、他の2人は2つの別の多型であるc.13342G>Aとc.14053G>Aを複合ヘテロ接合性に有していた。16個の新規の多型のうち、11個は188人の健常日本人には1例も見られず、これらは全てプライベートな変異であった。(つまり各々が1つの家系にしか見られなかった)
私たちは、c.14576G>A多型のパターンによって、患者を3つのグループに分けて、各グループでの臨床項目を比較した。3つのグループとは、多型をもたない野生型(遺伝型:
GG, これをGGグループとする)、ヘテロ接合型(遺伝型: GA,GAグループ),ホモ接合型(遺伝型: AA, AAグループ) である。発症年齢は、GA, GGクループに比べてAAグループで有意に若かった。(AA vs. GA: p=0.002, AA vs. GG: p=0.007) (Fig. 2A 及びsupplemental table 2参照) 。発症年齢の中央値はそれぞれ、AAグループで3歳、GAグループで7歳、GGグループで8歳だった。加齢に伴う二次性の血管病変の影響を無視でき、そのため遺伝学的効果が純粋に観察できると思われる15歳以下の患者に限ってみても、同様の結果が再現された。(AA vs. GA: p=0.001, AA vs. GG: p=0.007) (Supplemental table 2) 。小児発症と成人発症では臨床経過が異なるが、この2群間にこの多型を持つ患者の割合の有意差はなく、それぞれ83.2%と79.6%であった。これは異なる遺伝子によって規定される別の疾患というより、臨床の多様性を示唆するものと思われた。単変量のCox回帰分析では、発症年齢に関連するのはc.14576G>A遺伝型のみであった。(Supplemental table 3) 。累積発症頻度はAAグループで有意に高く、この傾向はほとんどどの年代にも見られた。(Log Rank検定: p=0.03) (Fig.2B) しかし、この傾向は10歳前の年代で特に顕著であった。AAグル―プの60%もの患者が4歳未満で発症しているのに対し、GAグループでは15%、GGグループでは14.3%が4歳未満で発症していて、早期発症例の頻度は有意差があった。(AA vs. GA vs. GG: p<0.001) (Fig. 3A)。これらのAAグループの早期発症例では全例脳梗塞で発症していた。
p=0.01 by Mann-Whitney U test) PCA病変の有無について情報のある152症例中74例(48.6%)にPCA病変が見られ、PCA病変を合併する群ではそうでない群に比べて初発症状に脳梗塞が起こる頻度と知的機能障害を合併する頻度が有意に高かった。(Infarctions: 68.9% vs. 30.4%, p<0.001; intellectual impairment: 26.8% vs. 5.2%, p<0.001) このことは、以前にYamadaらが、報告したデータ(43%の症例にPCA病変が合併し、こうした症例ではより高頻度に脳梗塞や大脳萎縮がみられた)に一致していた。知的機能低下の合併は、GAグループよりもAAグループでより多い傾向がみられたが、有意差はなかった。(AA vs. GA: 33.3% vs. 13.8%; p=0.06, OR 3.1; 95%CI 0.97-10.17) てんかん合併の頻度はグループ間で違いはなかった。(AA vs. GA vs. GG: 26.7% vs. 15.8% vs. 20.6%; p=0.51) 15歳未満発症の小児例においても、c.14576G>Aの多型のタイプと臨床病型の相関は類似していた。ただし小児例では全例が両側性の血管病変を持つことが異なっていた。(Fig.3B)
c.14576G>A多型以外の多型ともやもや病の臨床症状との相関についても検討した。(Supplemental table 4) もやもや病の患者を次の4つのグループに分けた、すなわちc.14576G>A多型を持たず、それ以外の多型を1つ以上持つ群(GG1グループ)、c.14576G>A多型を持たず、それ以外の多型も持たない群(GG0グループ)、ヘテロ接合性にc.14576G>A多型を持ち、それ以外の多型を1つ以上持つ群(GA1グループ)、ヘテロ接合性にc.14576G>A多型を持ち、それ以外の多型を持たない群(GA0グループ)にわけた。GG1とGG0の間には発症年齢に有意差はなかったが(GG1 vs. GG0: p=0.48)、GA0はGA1より発症年齢は有意に低かった(GA1 vs. GA0: p=0.03)。発症年齢の中央値はGA0で7歳、GA1で12歳であった。GA1では初発時に脳梗塞を起こす頻度は有意に低く、脳出血を起こす頻度は有意に高かった(infarctions:
GA1 vs. GA0:14.3% vs. 46.2%; p=0.02; OR 0.19; 95%CI 0.04-0.90, ICH/IV: GA1 vs.
GA0: 28.6% vs. 4.6%; p=0.009; OR 8.3; 95%CI 2.00-35.20) 。しかしpolyphen226やSIFT27などの変異の病原性を予想するアルゴリズムで病的と判定された変異に限って同様の比較を行うと、上記の結果はコンスタントには見られなかったのでこれらのその他の多型の意義は不明である。多数例でのさらなる解析が、その他の変異の遺伝学的効果の検証を行うためには必要である。
204例のもやもや病患者について、RNF213遺伝子の包括的な解析及び臨床症状の評価を行った。C.14576G>A多型ともやもや病発症には強い相関があることを確定した。この多型をヘテロ接合性に持っている場合、オッズ比は236, p<0.001、ホモ接合性に持っているときは、その効果が計算上無限大となるほど大きかった。仮にヘテロ接合性多型とホモ接合性多型のもやもや病発症に対する効果がほぼ同等とすると、ホモ接合性多型を持つことで、もやもや病の発症リスクは少なくともオッズ比259, 95%信頼区間 100-674, p<0.001と計算された。しかしホモ接合性多型の効果は、もっと非常に大きいと思われた。何故なら私たちの研究で283人の健常コントロールと132人の非罹患の両親、および先行研究23で429人の健常人コントロールと28人の非罹患の家族構成員にこの変異が見つからなかったからである。ホモ接合性多型を持つことによる、もやもや病の発症確率は78%以上と計算された。非常にオッズ比は高いが、この多型は純粋なメンデル遺伝には合致しない。何故なら正常集団にもある程度の頻度でこの多型がみつかるからである。この比較的まれな多型は、多因子複合疾患における、いわゆる ‘missing heritability’ (小さな遺伝学的効果を持つ高頻度の多型では説明しえない遺伝学的背景)を説明する1つの好例であると考える。28,29 RNF213 はAAA (ATPases associated with variety of a cellular activities) ドメインをもつRINGフィンガータンパクであり、E3 ユビキチンリガーゼ活性とエネルギー依存性アンフォルダーゼ活性を有する。30このタンパクのもやもや病発症への関与については更なる研究が必要である。
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配列番号1は、ヒトRNF213遺伝子(isoform1)のゲノム配列を示す。
<配列番号2>
配列番号2は、ヒトRNF213遺伝子(isoform1)のmRNA配列を示す。
<配列番号3>
配列番号3は、ヒトRNF213遺伝子(isoform1)のmRNAがコードするRNF213蛋白のアミノ酸配列を示す。
<配列番号4>
配列番号4は、ヒトRNF213遺伝子(isoform2)のゲノム配列を示す。
<配列番号5>
配列番号5は、ヒトRNF213遺伝子(isoform2)のmRNA配列を示す。
<配列番号6>
配列番号6は、ヒトRNF213遺伝子(isoform2)のmRNAがコードするRNF213蛋白のアミノ酸配列を示す。
<配列番号7>
配列番号7は、RNF213遺伝子の変異解析に使用できるプライマー(フォワードプライマー)の配列を示す。
<配列番号8>
配列番号8は、RNF213遺伝子の変異解析に使用できるプライマー(リバースプライマー)の配列を示す。
Claims (4)
- 日本人の被験者のRNF213遺伝子におけるc.14576G>A多型(reference sequenceはNM_020914)を検出し、ホモ接合性の多型A/Aを持つ場合に、予後不良の重症型である、あるいは発症リスクが高いと判定する、もやもや病の検査方法であって、前記c.14576G>A多型が、配列番号1に示す、NM020914に対応するgenomic sequence中の124279番目のGがAに置換しているものである、前記方法。
- c.14576G>A多型をゲノムDNAで解析して検出する請求項1記載の検査方法。
- c.14576G>A多型をRNAレベルで解析して検出する請求項1記載の検査方法。
- c.14576G>A多型をタンパク質レベルで解析して検出する請求項1記載の検査方法。
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