JP5821643B2 - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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Description

2軸延伸フィルム、PETボトル、深絞りカップなどの成形性を低下させず、経時した時の透明性を損なうことなく、さらに高湿度下でのバリア性が低下しないポリアミド樹脂組成物に関するものである。
塩素を含まないガスバリア性樹脂としては、ナイロン6やポリメタキシリレンアジパミド(以下、N−MXD6と略することがある)といったポリアミド樹脂やエチレンビニル共重合体(以下EVOHと略することがある)が知られており、なかでもポリメタキシリレンアジパミドは酸素バリア性、特に高湿度環境下やボイルやレトルト処理といった加熱殺菌処理後の酸素バリア性に優れ、且つ高い機械的性能を有しているので、食品包装用材料として好適であり、ポリエチレンテレフタレートとメタキシリレンアジパミドとの多層ボトルやブレンドボトルとして、延伸フィルム、ポリオレフィンといったベースフィルムと積層したものや、ナイロン6といった他材と混合して利用されている。
しかしながら、N-MXD6は、非晶で無延伸または非晶で低倍率の延伸状態では、ガラス転移温度以上に加熱された際、高湿度雰囲気下での保存中、あるいは水や沸騰水に接触した際に白化・結晶化し、透明性が低下する。このため、ボイル・レトルト殺菌用途などの高湿度雰囲気下での利用あるいは水に接触する状態での利用に制約があった。特に、フィルムやシート用に使用するために溶融重合後、更に固相重合したN−MXD6は、結晶化速度が遅くなるため、白化・結晶化し易く、白化・結晶化したN−MXD6は機械的性能、特に耐衝撃性が低下するという問題があった。
特許文献1においては、N−MXD6に結晶化速度の速い特定の他のポリアミド(例えばナイロン6)を混合した組成物を開示した。このポリアミド樹脂組成物より得られるフィルム、シートは、柔軟性があり、高湿度雰囲気下においても優れた透明性を保つという優れた特徴を有するが、一方、他のポリアミドを混合することによりN−MXD6単独の場合と比較し、ガスバリア性が低下するという問題点があった。
また、非特許文献1には、ナイロン6中に粘土鉱物が分子サイズで分散し、かつナイロン6と粘土がイオン結合している複合材料、いわゆるナイロン6−粘土ハイブリッドにおいては、球晶の成長が粘土の層により妨げられて球晶の大きさが可視光の波長以下に制御されるため、可視光の透過率が通常のポリアミドより増大すると記載されている。同じ結晶性ポリアミドであるN−MXD6においても同様な効果が期待できるが、その効果発現のためには粘土鉱物を1%添加する必要がある。しかし、粘土鉱物を1%以上添加したN−MXD6から成形されたフィルム、シート等は衝撃強度が低下するなど機械的性能が不充分である。
同様の無機物として、タルク、マイカなどをN−MXD6にブレンドすることでも、ボイル・レトルト後の白化改善が可能であるが、結晶化速度が無添加のN−MXD6と比べて2倍以上加速されるため、高い成形サイクルを求められる射出成形用途では良いが、延伸フィルム、シートから成形される深絞りカップなどでは、結晶化速度が速すぎると、結晶化により、フィルムやシートの延伸ができなくなり、破断したり、伸びムラなど、成形性が極端に低下するといった問題がある。
特許文献2において、ポリアミドMXD6にエチレンビスステアリルアミドなどの特定の脂肪酸と特定のジアミンあるいは特定のジオールから得られるジアミド化合物あるいはジエステル化合物を特定量添加混合した組成物から得たフィルム、シート及び中空容器は、非晶で無延伸または非晶で低倍率の延伸状態であっても、高湿度雰囲気下での保存中や、水、特に沸水との接触の際の白化が少なく、透明性を維持できるが、十分な効果がない。
特許文献3において、ポリアミドMXD6にアルキル置換芳香族アルデヒド、および関連するアセタールで作られうるようなビス(ジベンジリデン)ソルビトールアセタールからなるポリプロピレン用結晶核剤を特定量添加混合した樹脂組成物及び、2軸延伸フィルムでは、23℃60%RHでは、OTR改善効果があり、さらには、Haze改善効果はあるものの、高湿度下でのバリア性が低下する問題がある。
特開平4−198329号公報 特開2000−248176号公報 特開2010−280754号公報
「新素材」誌1996年12月号17頁
本発明は、上記課題を鑑みて、以下のポリアミド樹脂組成物を提供する。
下記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、下記一般式(II)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位を含有するポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、スルホンアミド化合物の金属塩(B)を0.1〜10質量部含むポリアミド樹脂組成物。
Figure 0005821643
[前記一般式(II)中、mは2〜18の整数を表す]
本発明によれば、本発明のポリアミド樹脂組成物は二軸延伸フィルム、PETボトル、深絞りカップ等の成形体にする際の成形加工性に優れる。また、得られたポリアミド樹脂組成物からなる成形体は、経時変化による白化を抑制できるため透明性に優れたものとなる。さらに該樹脂組成物からなる成形体は、加熱殺菌処理や、高湿度条件下で保存しても高いバリア性を保持したまま、高い透明性を維持できる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現する物質として具体的な化合物を例示する場合があるが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
1−1.ポリアミド樹脂(A)
本発明において、ポリアミド樹脂(A)は、下記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、下記一般式(II)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位を含有する。
ただし、前記ジアミン単位、前記ジカルボン酸単位の合計は100モル%を超えないものとする。ポリアミド樹脂(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記以外の構成単位を更に含んでいてもよい。
Figure 0005821643
[前記一般式(II)中、mは2〜18の整数を表す]
(ジアミン単位)
ポリアミド樹脂中(A)のジアミン単位は、優れたガスバリア性を付与する観点から、前記式(I)で表される芳香族ジアミン単位を70モル%以上含み、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
前記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位を構成しうる化合物としては、オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、及びパラキシリレンジアミンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のポリアミド樹脂(A)中のジアミン単位は、優れたガスバリア性を発現させることに加え、汎用的な熱可塑性樹脂の成形性を容易にする観点から、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むことが好ましく、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
前記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物としては、パラフェニレンジアミン等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン等の脂肪族ジアミンを例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(ジカルボン酸単位)
本発明のポリアミド樹脂(A)中のジカルボン酸単位は、適度な結晶性を付与することに加え、包装材料として必要な柔軟性を付与する観点から、前記一般式(II)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を50モル%以上含み、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
前記一般式(II)中、mは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8である。前記一般式(II)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のポリアミド樹脂(A)中のジカルボン酸単位は、優れたガスバリア性を付与する観点から、アジピン酸単位、セバシン酸単位、及び1,12−ドデカンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で50モル%以上含むことが好ましく、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。本発明のポリアミド樹脂(A)中のジカルボン酸単位は、ガスバリア性の発現及び適切なガラス転移温度や融点等の熱的性質の観点からはアジピン酸単位を50モル%以上含むことが好ましい。また、ジカルボン酸の種類は用途に応じて適宜決定され、適度なガスバリア性付与と成形加工適性付与との観点からはセバシン酸単位を50モル%以上含むことが好ましく、低吸水性、耐候性、耐熱性を要求される用途に用いる場合は1,12−ドデカンジカルボン酸単位を50モル%以上含むことが好ましい。
前記一般式(II)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、ガスバリア性の更なる付与及び包装材料の成形加工性を容易にする観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に、ポリオレフィンとの多層シートを熱成形により多層容器を成形する場合、結晶化速度を遅くし、成形性を容易にさせる観点から、本発明のポリアミド樹脂(A)中の芳香族ジカルボン酸単位は、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを、芳香族ジカルボン酸単位中に合計で50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。また、これらの中でもイソフタル酸単位及び/又はテレフタル酸単位を芳香族ジカルボン酸単位中に含むことが好ましい。イソフタル酸単位とテレフタル酸単位との含有比(イソフタル酸単位/テレフタル酸単位)は、特に制限はなく、用途に応じて適宜決定される。例えば、適度なガラス転移温度や結晶性を下げる観点からは、両単位の合計を100としたとき好ましくは0/100〜100/0、より好ましくは0/100〜60/40、更に好ましくは0/100〜40/60、更に好ましくは0/100〜30/70である。
また、前記ジアミン単位及び前記ジカルボン酸単位の含有量は、重合反応の観点から、ほぼ同量であることが好ましく、前記ジカルボン酸単位の含有量が前記ジアミン単位の含有量の±2モル%であることがより好ましい。前記ジカルボン酸単位の含有量が前記ジアミン単位の含有量の±2モル%の範囲を超えると、ポリマーの重合度が上がりにくくなるため重合度を上げるのに多くの時間を要し、熱劣化が生じやすくなる。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド樹脂(A)にさらに酸素吸収機能が必要な場合には、前記ジアミン単位、前記ジカルボン単位に加えて、下記一般式(III)で表される三級水素含有カルボン酸単位をさらに含有してもよい。本発明のポリアミド樹脂組成物を構成するポリアミド樹脂(A)は、三級水素含有カルボン酸単位を含有することにより、遷移金属を含有せずとも優れた酸素吸収性を発揮することができる。
Figure 0005821643
[前記一般式(III)中、Rは置換又は無置換のアルキル基又はアリール基を表す。]
前記三級水素含有カルボン酸単位の含有量は、ポリアミド樹脂(A)の全構成単位中、好ましくは0.1〜49.9モル%、より好ましくは0.2〜40モル%、更に好ましくは1〜30モル%である。ただし、前記のジアミン単位、ジカルボン酸単位、及び三級水素含有カルボン酸単位の合計は100モル%を超えないものとする。
三級水素含有カルボン酸単位の含有量が0.1モル%以上であれば、十分な酸素吸収性能を発現することができる。また、49.9モル%以下であれば、ポリマーのバリア性や機械物性などの物性が低下することなく、特に三級水素含有カルボン酸がアミノ酸である場合は、ペプチド結合が連続するために起こる耐熱性の過度の低下を防ぐことができる。
なお、本発明において、三級水素含有カルボン酸単位を共重合したポリアミド樹脂(A)が良好な酸素吸収性能を示す機構についてはまだ明らかにされていないが以下のように推定される。三級水素含有カルボン酸単位を構成しうる化合物は、同一炭素原子上に電子求引性基と電子供与性基とが結合しているため、その炭素原子上に存在する不対電子がエネルギー的に安定化されるキャプトデーティブ(Captodative)効果と呼ばれる現象によって非常に安定なラジカルが生成すると考えられる。すなわち、カルボキシル基は電子求引基であり、それに隣接する三級水素が結合している炭素が電子不足(δ+)になるため、当該三級水素も電子不足(δ+)となり、プロトンとして解離してラジカルを形成する。ここに酸素及び水が存在したときに、酸素がこのラジカルと反応することで、酸素吸収性能を示すと考えられる。
前記一般式(III)中、Rは置換基を表す。本発明におけるRで表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(1〜15個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基)、アルケニル基(2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(6〜16個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、複素環基(5員環又は6員環の芳香族又は非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除くことによって得られる、1〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する一価の基、例えば1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、2−フリル基)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基(1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アリールオキシ基(6〜12個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基)、アシル基(ホルミル基、2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するアルキルカルボニル基、或いは7〜12個、好ましくは7〜9個の炭素原子を有するアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アミノ基(アミノ基、1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキルアミノ基、6〜12個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアニリノ基、或いは1〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する複素環アミノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基)、アリールチオ基(6〜12個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基)、複素環チオ基(2〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する複素環チオ基、例えば2−ベンゾチアゾリルチオ基)、イミド基(2〜10個、好ましくは4〜8個の炭素原子を有するイミド基、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)等が挙げられる。これらの官能基の中で水素原子を有するものは更に上記の基で置換されていてもよい。
前記一般式(III)中におけるRとしては、置換又は無置換のアルキル基又はアリール基が好ましく、置換又は無置換の炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6〜8のアリール基がより好ましく、置換又は無置換の炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基が更に好ましい。
好ましいRの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、メルカプトメチル、メチルスルファニルエチル、フェニル、ナフチル、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
前記一般式(III)で表される構成単位を構成しうる化合物としては、アラニン、2−アミノ酪酸、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、tert−ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、2−フェニルグリシン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン等のα−アミノ酸を例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらはD体、L体、ラセミ体のいずれであってもよく、アロ体であってもよい。また、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、原料の入手性や酸素吸収性向上等の観点から、α炭素に三級水素を有するα−アミノ酸が特に好ましい。また、α−アミノ酸の中でも、供給しやすさ、安価な価格、重合しやすさ、共重合ポリアミド樹脂の黄色度(YI)の低さといった点から、アラニンが最も好ましい。アラニンは、分子量が比較的低く、共重合ポリアミド樹脂1g当たりの共重合率が高いため、共重合ポリアミド樹脂1g当たりの酸素吸収性能は良好である。
また、前記三級水素含有カルボン酸単位を構成しうる化合物の純度は、重合速度の遅延等の重合に及ぼす影響や共重合ポリアミド樹脂の黄色度等の品質面への影響の観点から、95%以上であることが好ましく、より好ましくは98.5%以上、更に好ましくは99%以上である。また、不純物として含まれる硫酸イオンやアンモニウムイオンは、500ppm以下が好ましく、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。
[ポリアミド樹脂(A)の重合度]
ポリアミド樹脂(A)の重合度については、相対粘度が使われる。ポリアミド樹脂(A)の好ましい相対粘度は、成形品の強度や外観、成形加工性の観点から、好ましくは1.8〜4.2、より好ましくは1.9〜4.0、更に好ましくは2.0〜3.8である。
なお、ここでいう相対粘度は、ポリアミド樹脂(A)1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t
[末端アミノ基濃度]
ポリアミド樹脂(A)の酸素吸収速度、及び酸素吸収によるポリアミド樹脂(A)の酸化劣化は、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度を変えることで制御することが可能である。本発明では、酸素吸収速度と酸化劣化のバランスの観点から、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度は5〜150μeq/gの範囲が好ましく、より好ましくは10〜100μeq/g、更に好ましくは15〜80μeq/gである。
1−2.ポリアミド樹脂(A)の製造方法
ポリアミド樹脂(A)は、前記ジアミン単位を構成しうるジアミン成分と、前記ジカルボン酸単位を構成しうるジカルボン酸成分と、必要により、前記三級水素含有カルボン酸単位を構成しうる三級水素含有カルボン酸成分及び、その他のモノマー成分とを重縮合させることで製造することができ、重縮合条件等を調整することで重合度を制御することができる。重縮合時に分子量調整剤として少量のモノアミンやモノカルボン酸を加えてもよい。また、重縮合反応を抑制して所望の重合度とするために、ポリアミド樹脂(A)を構成するジアミン成分とカルボン酸成分との比率(モル比)を1からずらして調整してもよい。
ポリアミド樹脂(A)の重縮合方法としては、加圧塩法、常圧滴下法、加圧滴下法、反応押出法等が挙げられるが、これらに限定されない。また、反応温度は出来る限り低い方が、ポリアミド樹脂(A)の黄色化やゲル化を抑制でき、安定した性状のポリアミド樹脂(A)が得られる。
[加圧塩法]
加圧塩法では、ナイロン塩を原料として加圧下にて溶融重縮合を行う方法である。具体的には、ジアミン成分と、ジカルボン酸成分と、必要に応じて三級水素含有カルボン酸成分とからなるナイロン塩水溶液を調製した後、該水溶液を濃縮し、次いで加圧下にて昇温し、縮合水を除去しながら重縮合させる。缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド樹脂(A)の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、−0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド樹脂(A)を回収する。
加圧塩法は、揮発性成分をモノマーとして使用する場合に有用であり、三級水素含有カルボン酸成分の共重合率が高い場合には好ましい重縮合方法である。特に、三級水素含有カルボン酸成分がポリアミド樹脂(A)を構成する全成分中に15モル%以上含まれる場合に、好適である。加圧塩法を用いることで、三級水素含有カルボン酸成分の蒸散を防ぎ、更には、三級水素含有カルボン酸成分同士の重縮合を抑制でき、重縮合反応をスムーズに進めることが可能であるため、性状に優れたポリアミド樹脂(A)が得られる。
[常圧滴下法]
常圧滴下法では、常圧下にて、ジカルボン酸成分と、必要に応じて三級水素含有カルボン酸成分とを加熱溶融した混合物に、ジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。なお、生成するポリアミド樹脂(A)の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。
常圧滴下法は、前記加圧塩法と比較すると、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、また、原料成分の気化・凝縮を必要としないため、反応速度の低下が少なく、工程時間を短縮できる。
[加圧滴下法]
加圧滴下法では、まず、重縮合缶にジカルボン酸成分と、必要に応じて三級水素含有カルボン酸成分とを仕込み、各成分を撹拌して溶融混合し混合物を調製する。次いで、缶内を好ましくは0.3〜0.4MPaG程度に加圧しながら混合物にジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。この際、生成するポリアミド樹脂(A)の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。設定モル比に達したらジアミン成分の滴下を終了し、缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド樹脂(A)の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、−0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド樹脂(A)を回収する。
加圧滴下法は、加圧塩法と同様に、揮発性成分をモノマーとして使用する場合に有用であり、三級水素含有カルボン酸成分の共重合率が高い場合には好ましい重縮合方法である。特に、三級水素含有カルボン酸成分がポリアミド樹脂(A)を構成する全成分中に15モル%以上含まれる場合に、好適である。加圧滴下法を用いることで三級水素含有カルボン酸成分の蒸散を防ぎ、更には、三級水素含有カルボン酸成分同士の重縮合を抑制でき、重縮合反応をスムーズに進めることが可能であるため、性状に優れたポリアミド樹脂(A)が得られる。更に、加圧滴下法は、加圧塩法に比べて、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、常圧滴下法と同様に反応時間を短くできることから、ゲル化等を抑制し、黄色度が低いポリアミド樹脂(A)を得ることができる。
[反応押出法]
その他に、三級水素含有カルボン酸成分共重合させたポリアミド樹脂(A)を製造する方法として、反応押出法がある。この方法は、ジアミン成分及びジカルボン酸成分からなるポリアミド(ポリアミド樹脂(A)の前駆体に相当するポリアミド)を上述のいずれの方法によりあらかじめ製造しておき、その後に三級水素含有カルボン酸成分を押出機で溶融混練して反応させる方法である。三級水素含有カルボン酸成分をアミド交換反応により、ポリアミドの骨格中に組み込む方法であり、十分に反応させるためには、反応押出に適したスクリューを用い、L/Dの大きい2軸押出機を用いるのが好ましい。少量の三級水素含有カルボン酸成分を含むポリアミド樹脂(A)を製造する場合に、簡便な方法であり好適である。
[重合度を高める工程]
上記重縮合方法で製造されたポリアミド樹脂(A)は、そのまま使用することもできるが、更に重合度を高めるための工程を経てもよい。更に重合度を高める工程としては、押出機内での反応押出や固相重合等が挙げられる。固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリアミド樹脂(A)の固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
[リン原子含有化合物、アルカリ金属化合物]
ポリアミド樹脂(A)の重縮合においては、アミド化反応を促進する観点から、リン原子含有化合物を添加することが好ましい。
リン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のホスフィン酸化合物;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸エチル等のジ亜リン酸化合物;ホスホン酸、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸リチウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム等のホスホン酸化合物;亜ホスホン酸、亜ホスホン酸ナトリウム、亜ホスホン酸リチウム、亜ホスホン酸カリウム、亜ホスホン酸マグネシウム、亜ホスホン酸カルシウム、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル等の亜ホスホン酸化合物;亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等が挙げられる。
これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩が、アミド化反応を促進する効果が高くかつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましい。なお、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
リン原子含有化合物の添加量は、ポリアミド樹脂(A)中のリン原子濃度換算で0.1〜1000ppmであることが好ましく、より好ましくは1〜600ppmであり、更に好ましくは5〜400ppmである。0.1ppm以上であれば、重合中にポリアミド樹脂(A)が着色しにくく透明性が高くなる。1000ppm以下であれば、ポリアミド樹脂(A)がゲル化しにくく、また、リン原子含有化合物に起因すると考えられるフィッシュアイの成形品中への混入も低減でき、成形品の外観が良好となる。
また、ポリアミド樹脂(A)の重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物を添加することが好ましい。重縮合中のポリアミド樹脂(A)の着色を防止するためには十分な量のリン原子含有化合物を存在させる必要があるが、場合によってはポリアミド樹脂(A)のゲル化を招くおそれがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物を共存させることが好ましい。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド等が好ましい。本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。なお、リン原子含有化合物とアルカリ金属化合物の比率(モル比)は、重合速度制御の観点や、黄色度を低減する観点から、リン原子含有化合物/アルカリ金属化合物=1.0/0.05〜1.0/1.5の範囲が好ましく、より好ましくは、1.0/0.1〜1.0/1.2、更に好ましくは、1.0/0.2〜1.0/1.1である。
1−3.スルホンアミド化合物の金属塩(B)
本発明に用いられるスルホンアミド化合物の金属塩におけるスルホンアミド化合物とは、スルホンアミド骨格を有する化合物を表し、例えば、スルホンアミド、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、トルエン−4−スルホンアミド、4−クロロベンゼンスルホンアミド、4−アミノベンゼンスルホンアミド、N−ブチル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−フェニルベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−ピリジン−2−イルベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−(5−メチル−チアゾール−2−イル)−ベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−チアゾール−2−イル−ベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−(5−メチル−イソキサゾール−3−イル)−ベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−(2,6−ジメトキシ−ピリミジン−4−イル)−ベンゼンスルホンアミド、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン−1,1−ジオキシド、4−アミノ−6−クロロ−ベンゼン−1,3−ジスルホン酸ジアミド、6−エトキシ−ベンゾチアゾール−2−スルホン酸アミド、5−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸アミド、4−ナトリウムオキシ−ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ベンゼンスルホンアミド−フェニル)−ベンゼンスルホンアミド等が挙げられ、好ましくは、4−アミノベンゼンスルホンアミド、N−フェニル−ベンゼンスルホンアミド、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン−1,1−ジオキシド等が挙げられる。特に、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン−1,1−ジオキシドが好ましい。
上記スルホンアミド化合物の金属塩の添加量は、前記ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。0.1質量部より少ないと、得られたポリアミド樹脂組成物からなる成形体を加熱殺菌処理後や高湿度下で保存した際のHaze抑制作用効果が低い。また、10質量部以上添加した場合は、ポリアミド樹脂の分子量低下やポリアミド樹脂組成物中でのスルホンアミド化合物の金属塩(B)の分散性の低下などにより、ポリアミド樹脂(A)の物性面での特性を低下させる場合がある。
上記スルホンアミド化合物の金属塩における金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタニウム、マンガン、鉄、亜鉛、珪素、ジルコニウム、イットリウム又はバリウムから選択される金属が挙げられ、それらの中でも、カリウム、リチウム、ナトリウムは、ポリアミド樹脂(A)の結晶化促進効果に優れているので好ましく、ナトリウムが、特に好ましい。
上記スルホンアミド化合物の金属塩に含まれる水分量とは、熱分析装置、例えば株式会社リガク製サーモプラス2を用いて、下記の測定条件(窒素下(200ml/min)、昇温速度:50℃/min、試料:5mg)で、室温から昇温して、150℃に到達したときの重量減少を水分量として評価したものであり、本発明においては、水分量は、スルホンアミド化合物の金属塩との質量比が0.1〜20%の範囲内であるものが好ましく、特に好ましくは0.1〜5%である。
0.1%よりも少ない水分量は、スルホンアミド化合物の金属塩は吸湿性があるため、その水分量まで乾燥させるのは不経済である。20%を超える水分量は、ポリアミド樹脂(A)の加水分解に伴う着色や、成形加工時の発泡問題を起こす可能性があり、ポリアミド樹脂組成物の成形品の外観を損なう場合がある。
また、上記スルホンアミド化合物の金属塩に含まれる水分量は、ポリエステルポリアミド樹脂組成物との質量比が3%を超えないように配合しなければならない。3%を超える水分量でポリアミド樹脂組成物を加工すると、著しい加水分解と、ポリアミド樹脂(A)自身の粘度の低下、低分子量体のデポジット化により成形性が悪化する。
本発明に係るスルホンアミド化合物の金属塩は、種々の粉砕機器の利用によって、所望の粒子径に調整可能であるが、本発明においては、平均粒子径が100μm以下であるものが好ましい。100μmを超えると、ポリアミド樹脂組成物の成形品の外観を損なう場合がある。なお、本発明においてスルホンアミド化合物の金属塩の平均粒子径とは、スルホンアミド化合物の金属塩についてレーザー回折・散乱式粒度分布計(マイクロトラックMT3000II;日機装株式会社製)で測定したものをいい、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)による体積平均が50%となる数値を表す。
1−4.添加剤(C))
本発明のポリアミド樹脂組成物は、前述したポリアミド樹脂(A)、スルホンアミド化合物の金属塩(B)以外に、必要に応じて更に添加剤(C)を含有してもよい。添加剤(C)は1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。ポリアミド樹脂組成物中における添加剤(C)の含有量は、添加剤の種類にもよるが、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
[白化防止剤]
本発明においては、熱水処理後や長時間の経時後の白化抑制をさらに高める手段として、ジアミド化合物及び/又はジエステル化合物をポリアミド樹脂(A)に添加することが好ましい。ジアミド化合物及び/又はジエステル化合物は、オリゴマーの析出による白化の抑制に効果がある。ジアミド化合物とジエステル化合物を単独で用いてもよいし、併用してもよい。
本発明に用いられるジアミド化合物としては、炭素数8〜30の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10のジアミンから得られるジアミド化合物が好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素数が8以上、ジアミンの炭素数が2以上であると白化防止効果が期待できる。又、脂肪族ジカルボン酸の炭素数が30以下、ジアミンの炭素数が10以下でポリアミド樹脂(A)中への均一分散が良好となる。脂肪族ジカルボン酸は側鎖や二重結合があってもよいが、直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましい。ジアミド化合物は1種類でもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、ステアリン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、モンタン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等が例示できる。前記ジアミンとしては、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサンジアミン、キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が例示できる。これらを組み合わせて得られるジアミド化合物が好ましい。
炭素数8〜30の脂肪族ジカルボン酸と主としてエチレンジアミンから成るジアミンから得られるジアミド化合物、または、主としてモンタン酸から成る脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10のジアミンから得られるジアミド化合物が好ましく、特に好ましくは主としてステアリン酸から成る脂肪族ジカルボン酸と主としてエチレンジアミンから成るジアミンから得られるジアミド化合物である。
本発明に用いられるジエステル化合物としては、炭素数8〜30の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10のジオールから得られるジエステル化合物が好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素数が8以上、ジアミンの炭素数が2以上であると白化防止効果が期待できる。又、脂肪族ジカルボン酸の炭素数が30以下、ジオールの炭素数が10以下でポリアミド樹脂(A)中への均一分散が良好となる。脂肪族ジカルボン酸は側鎖や二重結合があってもよいが、直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましい。ジエステル化合物は1種類でもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、ステアリン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、モンタン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等が例示できる。前記ジオールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、キシリレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が例示できる。これらを組み合わせて得られるジエステル化合物が好ましい。
特に好ましくは主としてモンタン酸から成る脂肪族ジカルボン酸と主としてエチレングリコール及び/又は1,3−ブタンジオールから成るジオールから得られるジエステル化合物である。
本発明において、ジアミド化合物及び/又はジエステル化合物の添加量は、ポリアミド樹脂(A)中に好ましくは0.005〜0.5質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%、さらに好ましくは0.12〜0.5質量%である。ポリアミド樹脂(A)中に0.005質量%以上添加し、かつ結晶化核剤と併用することにより白化防止の相乗効果が期待できる。また、添加量がポリアミド樹脂(A)中に0.5質量%以下であると、本発明のポリアミド樹脂(A)を成形して得られる成形体の曇値を低く保つことが可能となる。
[ゲル化防止・フィッシュアイ低減剤]
本発明においては、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体から選択される1種以上のカルボン酸塩類を添加することが好ましい。ここで該誘導体としては、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム等の12−ヒドロキシステアリン酸金属塩等が挙げられる。前記カルボン酸塩類を添加することで、成形加工中に起こるポリアミド樹脂(A)のゲル化防止や成形体中のフィッシュアイを低減することができ、成形加工の適性が向上する。
前記カルボン酸塩類の添加量としては、ポリアミド樹脂(A)中の濃度として、好ましくは400〜10000ppm、より好ましくは800〜5000ppm、更に好ましくは1000〜3000ppmである。400ppm以上であれば、ポリアミド樹脂(A)の熱劣化を抑制でき、ゲル化を防止できる。また、10000ppm以下であれば、ポリアミド樹脂(A)が成形不良を起こさず、着色や白化することもない。溶融したポリアミド樹脂(A)中に塩基性物質であるカルボン酸塩類が存在すると、ポリアミド樹脂(A)の熱による変性が遅延し、最終的な変性物と考えられるゲルの生成を抑制すると推測される。
なお、前述のカルボン酸塩類はハンドリング性に優れ、この中でもステアリン酸金属塩は安価である上、滑剤としての効果を有しており、成形加工をより安定化することができるため好ましい。更に、カルボン酸塩類の形状に特に制限はないが、粉体でかつその粒径が小さい方が乾式混合する場合、ポリアミド樹脂(A)中に均一に分散させることが容易であるため、その粒径は0.2mm以下が好ましい。
さらに、より効果的なゲル化防止、フィッシュアイ低減、更にはコゲ防止処方として、1g当たりの金属塩濃度が高い酢酸ナトリウムを用いることが好ましい。酢酸ナトリウムを用いる場合、ポリアミド樹脂(A)と乾式混合して成形加工してもよいが、ハンドリング性や酢酸臭の低減等の観点から、ポリアミド樹脂(A)と酢酸ナトリウムとからなるマスターバッチを、ポリアミド樹脂(A)と乾式混合して成形加工することが好ましい。マスターバッチに用いる酢酸ナトリウムは、ポリアミド樹脂(A)に均一に分散させることが容易であるため、その粒系は、0.2mm以下が好ましく、0.1mm以下がより好ましい。
[酸化防止剤]
本発明においては、酸素吸収性能を制御する観点や機械物性低下を抑える観点から酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤としては、銅系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤等を例示することができ、中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2−チオビス(4−メチル−6−1−ブチルフェノール)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチルカルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−T−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、d−α−トコフェロール等が挙げられる。これらは単独であるいはこれらの混合物で用いることができる。ヒンダードフェノール化合物の市販品の具体例としては、BASF社製のIrganox1010やIrganox1098が挙げられる(いずれも商品名)。
リン系酸化防止剤の具体例としては、トリフェニルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の有機リン化合物が挙げられる。これらは単独であるいはこれらの混合物で用いることができる。
酸化防止剤の含有量は、組成物の各種性能を損なわない範囲であれば特に制限無く使用できるが、酸素吸収性能を制御する観点や機械物性低下を抑える観点から、ポリアミド樹脂(A)中に好ましくは0.001〜3質量%、より好ましくは0.01〜1質量%である。
[その他の添加剤]
ポリアミド樹脂(A)には、要求される用途や性能に応じて、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、結晶化核剤等の添加剤を添加させてもよい。これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加することができる。
[耐衝撃性改良材]
本発明のポリアミド樹脂組成物においては、耐衝撃性、フィルムの耐ピンホール性、柔軟性を改善するため耐衝撃性改良材を加えてもよい。耐衝撃性改良材としては、ポリオレフィン、ポリアミドエラストマー、スチレン−ブタジエン共重合樹脂の水素添加処理物、アイオノマー、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂の無水マレイン酸変性品、エチレン−メタクリル酸共重合樹脂、ナイロン6,66,12、ナイロン12、ナイロン12エラストマー、エチレン−プロピレン共重合エラストマー、ポリエステルエラストマー等を添加することができる。耐衝撃性改良材の添加量は1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%が更に好ましく、2〜3質量%が特に好ましい。添加量が多いと、透明性、ガスバリア性が低下する。添加量が少ないと、耐衝撃性、フィルムの耐ピンホール性、柔軟性があまり改善されない。
[樹脂]
本発明のポリアミド樹脂組成物を、要求される用途や性能に応じて、種々の樹脂と混合してポリアミド樹脂組成物としてもよい。本発明のポリアミド樹脂組成物と混合しうる樹脂としては、特に限定されないが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール及び植物由来樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
これらの中でも、酸素吸収効果を効果的に発揮するためには、ポリエステル、ポリアミド及びポリビニルアルコールのような酸素バリア性の高い樹脂とのブレンドが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物と樹脂との混合は、従来公知の方法を用いることができるが、溶融混合が好ましい。本発明のポリアミド樹脂組成物と樹脂とを溶融混合し、所望のペレット、成形体を製造する場合、押出機等を用いて溶融ブレンドすることができる。押出機は単軸、2軸いずれの押出機でもよいが、混合性の観点からは、2軸押出機が好ましい。また、溶融するスクリューとしては所謂ナイロン用やポリオレフィン用、緩圧縮、急圧縮タイプ、シングルフライト、ダブルフライトなどの公知のスクリューを用いることができ、これに限定されない。
[ポリオレフィン]
ポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン単独重合体;エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ポリブテン−1共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体;エチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分又は完全鹸化物等のその他のエチレン共重合体;これらのポリオレフィンを無水マレイン酸等の酸無水物等でグラフト変性したグラフト変性ポリオレフィン等を挙げることができる。
[ポリエステル]
前記ポリエステルとは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種又は二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上とから成るもの、又はヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から成るもの、又は環状エステルから成るものをいう。
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホテレフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸などに例示される金属スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸又はそれらの低級アルキルエステル誘導体などが挙げられる。
上記のジカルボン酸のなかでも、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の使用が、得られるポリエステルの物理特性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を共重合してもよい。
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
グリコールとしてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノ−ル、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加されたグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
上記のグリコールのなかでも、特に、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分として使用することが好適である。これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロ−ル、ヘキサントリオールなどが挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などが例示される。
本発明で用いられるポリエステルとしては、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。
主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルとは、全酸成分に対してテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。主たる酸成分がナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルも同様に、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。
本発明で用いられるナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、上述のジカルボン酸類に例示した1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルとは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。ここで言うアルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいてもよい。
上記テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分は、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが、透明性と成形性を両立する上で好ましく、特にイソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることがより好ましい。
本発明に用いられるポリエステルの好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのはエチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
また本発明に用いられるポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2,6−ナフタレートから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2,6−ナフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
また本発明に用いられるポリエステルの好ましいその他の例としては、プロピレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、プロピレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、ブチレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、またはブチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステルである。
特にポリエステル全体の組成として、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコールの組み合わせ、テレフタル酸//エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノールの組み合わせ、テレフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコールの組み合わせは透明性と成形性を両立する上で好ましい。なお、当然ではあるが、エステル化(エステル交換)反応、重縮合反応中に、エチレングリコールの二量化により生じるジエチレングリコールを少量(5モル%以下)含んでもよいことは言うまでも無い。
また本発明に用いられるポリエステルの好ましいその他の例としては、グリコール酸やグリコール酸メチルの重縮合もしくは、グリコリドの開環重縮合にて得られるポリグリコール酸が挙げられる。このポリグリコール酸には、ラクチド等などの他成分を共重合しても構わない。
[ポリアミド]
本発明で使用しうるポリアミド(ポリアミド樹脂(A)以外)は、ラクタムもしくはアミノカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とするポリアミドや脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする脂肪族ポリアミド、脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミド、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミドなどが挙げられ、必要に応じて、主構成単位以外のモノマー単位を共重合してもよい。
前記ラクタムもしくはアミノカルボン酸としては、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等が使用できる。
前記脂肪族ジアミンとしては、炭素数2〜12の脂肪族ジアミンあるいはその機能的誘導体が使用できる。さらに、脂環族のジアミンであってもよい。脂肪族ジアミンは直鎖状の脂肪族ジアミンであっても分岐を有する鎖状の脂肪族ジアミンであってもよい。このような直鎖状の脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。また、脂環族ジアミンの具体例としては、シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
また、前記脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖状の脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸が好ましく、さらに炭素数4〜12のアルキレン基を有する直鎖状脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。このような直鎖状脂肪族ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸およびこれらの機能的誘導体などを挙げることができる。脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
また、前記芳香族ジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラ−ビス(2−アミノエチル)ベンゼンなどが挙げられる。
また、前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸およびその機能的誘導体等が挙げられる。
具体的なポリアミドとしては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド6IT、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、イソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6I)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカナミド(ポリアミドMXD12)、ポリ1,3−ビスアミノシクロヘキサンアジパミド(ポリアミドBAC6)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)等がある。より好ましいポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD6Iが挙げられる。
また、前記ポリアミドの共重合成分として、少なくとも一つの末端アミノ基、もしくは末端カルボキシル基を有する数平均分子量が2000〜20000のポリエーテル、又は前記末端アミノ基を有するポリエーテルの有機カルボン酸塩、又は前記末端カルボキシル基を有するポリエーテルのアミノ塩を用いることもできる。具体的な例としては、ビス(アミノプロピル)ポリ(エチレンオキシド)(数平均分子量が2000〜20000のポリエチレングリコール)が挙げられる。
また、前記部分芳香族ポリアミドは、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3塩基以上の多価カルボン酸から誘導される構成単位を実質的に線状である範囲内で含有していてもよい。
前記ポリアミドは、基本的には従来公知の、水共存下での溶融重縮合法あるいは水不存在下の溶融重縮合法や、これらの溶融重縮合法で得られたポリアミドを更に固相重合する方法などによって製造することが出来る。溶融重縮合反応は1段階で行ってもよいし、また多段階に分けて行ってもよい。これらは回分式反応装置から構成されていてもよいし、また連続式反応装置から構成されていてもよい。また溶融重縮合工程と固相重合工程は連続的に運転してもよいし、分割して運転してもよい。
[ポリビニルアルコール]
ポリビニルアルコールの具体例としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体及びその部分若しくは完全鹸化物等を挙げることができる。さらに、その変性品を用いても構わない。
[植物由来樹脂]
植物由来樹脂の具体例としては、上記樹脂と重複する部分もあるが、特に限定されることなく公知の種々の石油以外を原料とする脂肪族ポリエステル系生分解性樹脂が挙げられる。脂肪族ポリエステル系生分解性樹脂としては、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)等のポリ(α−ヒドロキシ酸);ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)等のポリアルキレンアルカノエート等が挙げられる。
[金属]
また、本発明のポリアミド樹脂組成物において、酸素吸収効果に加えて更なる酸素吸収性能が必要とされる場合には、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属;銅、銀等の第I族金属;スズ、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属;バナジウム等の第V族金属;クロム等の第VI族金属;マンガン等の第VII族金属から選択された一種以上の金属原子を、重縮合反応開始前、反応中、又は押出成形時に化合物又は金属錯体として添加することができる。これらの金属原子の中でも、酸素吸収能力の観点から第VIII族金属原子が好ましく、コバルト原子がより好ましい。
本発明において、前記金属原子をポリアミド樹脂組成物中に添加、混合するには、金属原子を含有する化合物(以下、金属触媒化合物と称する)を用いることが好ましい。金属触媒化合物は前記金属原子の低価数の無機酸塩、有機酸塩又は錯塩の形で使用される。
無機酸塩としては、塩化物や臭化物等のハロゲン化物、硫酸塩等のイオウのオキシ酸塩、硝酸塩等の窒素のオキシ酸塩、リン酸塩等のリンオキシ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられるが、カルボン酸塩が本発明の目的に好適であり、その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩が挙げられる。
また、β−ジケトン又はβ−ケト酸エステル等との金属錯体も利用することができる。β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとしては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3ーシクロヘキサジオン、2−ベンジル−1,3−シクロヘキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−ベンゾイルシクロヘキサノン、2−アセチル−1,3−シクロヘキサンジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタン、ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、トリベンゾイルメタン、ジアセチルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ラウロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ビス(4−クロルベンゾイル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイルアセトン、ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シクロヘキサノイル)−メタン及びジピバロイルメタン等を用いることができる。
これらの中でも、酸素吸収機能が良好であることから、前記金属原子を含むカルボン酸塩、ハロゲン化物、アセチルアセトネート錯体が好ましい。
上記金属触媒化合物は、一種以上を添加することができるが、金属原子としてコバルトを含むものが特に酸素吸収機能に優れており、好ましく用いられる。固体または粉末状で溶融混合時の取り扱い性に優れる点から、ステアリン酸コバルト(II)又は酢酸コバルト(II)が特に好ましい。
ポリアミド樹脂組成物に添加される前記金属原子の濃度は特に制限はないが、ポリアミド化合物100質量部に対して1〜1000ppmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜700ppmである。金属原子の添加量が1ppm以上であれば、本発明のポリアミド化合物の酸素吸収効果に加え、酸素吸収機能が十分に発現し、包装材料の酸素バリア性の向上効果が得られる。ポリアミド化合物に金属触媒化合物を添加する方法は特に限定されず、任意の方法で添加することができる。
[酸化性有機化合物]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、更に酸化性有機化合物を含有してもよい。
酸化性有機化合物としては、酸素が存在する雰囲気下において、自動的に、または触媒や、熱、光、水分等のいずれか一つの共存下において酸化される有機化合物であり、水素の引き抜きが容易に行えるような活性な炭素原子を有するものが好ましい。このような活性炭素原子の具体例としては、炭素−炭素二重結合に隣接する炭素原子、炭素側鎖の結合した第三級炭素原子、活性メチレン基を含むものが挙げられる。
例えば、ビタミンCやビタミンEも酸化性有機化合物の一例として挙げられる。また、ポリプロピレン等のように分子に酸化されやすい3級水素を持つようなポリマーや、ブタジエンやイソプレン、シクロヘキサノンのように分子内に炭素−炭素二重結合をもつ化合物やそれらからなる、もしくは含むポリマーも酸化性有機化合物の一例として挙げられる。その中でも、酸素吸収能力や加工性の観点から、炭素−炭素二重結合を有する化合物やポリマーが好ましく、炭素原子数4〜20の炭素−炭素二重結合を含む化合物やそれらから誘導された単位を含むオリゴマー乃至ポリマーがより好ましい。
炭素原子数4〜20の炭素−炭素二重結合を含む化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等のトリエン、クロロプレンなどが挙げられる。
これらの化合物は、単独で或いは2種以上の組合せで、或いは他の単量体との組み合わせで単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体などの形に組み込まれる。
組み合わせで用いられる単量体としては、炭素原子数2〜20のα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンが挙げられ、他にスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどの単量体も使用可能である。
炭素原子数4〜20の炭素−炭素二重結合を含む化合物から誘導された単位を含むオリゴマー乃至ポリマーとしては、具体的には、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR),スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等を挙げることができるが、これらの例に限定されない。また、重合体中における炭素−炭素二重結合は、特に限定されず、ビニレン基の形で主鎖中に存在しても、またビニル基の形で側鎖に存在していてもよい。
上述の炭素−炭素二重結合を含む化合物から誘導された単位を含むオリゴマー乃至ポリマーには、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、水酸基が分子の導入されていること、または上述の官能基により変性されたオリゴマー乃至ポリマーとブレンドされていることが好ましい。これらの官能基を導入するのに用いられる単量体としては、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸塩の基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボニル基、水酸基などの官能基を有するエチレン系不飽和単量体が挙げられる。
これらの単量体としては、不飽和カルボン酸またはこれらの誘導体を用いるのが好ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等のα,β−不飽和カルボン酸無水物、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸の無水物が挙げられる。
炭素−炭素二重結合を含む化合物から誘導された単位を含むオリゴマー乃至ポリマーの酸変性は、このオリゴマー乃至ポリマーに不飽和カルボン酸またはその誘導体をそれ自体公知の手段でグラフト共重合させることにより製造されるが、前述した炭素−炭素二重結合を含む化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とをランダム共重合させることによっても製造することができる。
酸化性有機化合物の好ましい含有量は、酸素吸収性能及び透明性の観点から、ポリアミド樹脂組成物中、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜8質量%、更に好ましくは0.5〜5質量%である。
1−5.ポリアミド樹脂組成物の用途
本発明のポリアミド樹脂組成物は、透明性や、酸素バリア性や酸素吸収性能が要求されるあらゆる用途に利用できる。例えば 本発明のポリアミド樹脂組成物の代表的な利用例としては包装材料や包装容器等の成形体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明のポリアミド樹脂組成物を、それら成形体の少なくとも一部として加工して使用することができる。例えば、本発明のポリアミド樹脂組成物をフィルム状又はシート状の包装材料の少なくとも一部として使用することができ、また、ボトル、トレイ、カップ、チューブ、平袋やスタンディングパウチ等の各種パウチ等の包装容器の少なくとも一部として使用することができる。なお、これら包装材料や包装容器の成形体の構造は、本発明のポリアミド樹脂組成物からなる層の単層構造であってもよく、当該層と他の熱可塑性樹脂からなる層を組み合わせた多層構造であってもよい。該熱可塑性樹脂としては、前述のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、接着性樹脂等を使用できる。本発明のポリアミド樹脂組成物からなる層の厚みは、特に制限は無いが、1μm以上の厚みを有することが好ましい。
包装材料及び包装容器などの成形体の製造方法については特に限定されず、任意の方法を利用することができる。例えば、フィルム状若しくはシート状の包装材料、またはチューブ状の包装材料の成形については、Tダイ、サーキュラーダイ等を通して溶融させたポリアミド樹脂組成物、付属した押出機から押し出して製造することができる。なお、上述の方法で得たフィルム状の成形体はこれを延伸することにより延伸フィルムに加工することもできる。ボトル形状の包装容器については、射出成形機から金型中に溶融したポリアミド樹脂組成物を射出してプリフォームを製造後、延伸温度まで加熱してブロー延伸することにより得ることができる。
また、トレイやカップ等の容器は射出成形機から金型中に溶融したポリアミド樹脂組成物を射出して製造する方法や、シート状の包装材料を真空成形や圧空成形等の成形法によって成形して得ることができる。包装材料や包装容器は上述の製造方法によらず、様々な方法を経て製造することが可能である。
本発明のポリアミド樹脂組成物を使用して得られる包装材料や包装容器は、様々な物品を収納、保存するのに好適である。例えば、飲料、調味料、穀類、無菌での充填もしくは加熱殺菌の必要な液体及び固体加工食品、化学薬品、液体生活用品、医薬品、半導体集積回路並びに電子デバイス等、種々の物品を収納、保存することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂(A)の相対粘度、ガラス転移温度及び融点は以下の方法で測定した。
(1)相対粘度
ペレット状サンプル0.2gを精秤し、96%硫酸100mlに20〜30℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下時間(t)も同様に測定した。t及びtから次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t
(2)ガラス転移温度及び融点
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、昇温速度10℃/分で窒素気流下にDSC測定(示差走査熱量測定)を行い、ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)を求めた。
製造例1(ポリアミド樹脂1の製造)
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽及びポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したアジピン酸(AA)(旭化成ケミカルズ(株)製)13755g(94.15mol)、次亜リン酸ナトリウム11.7g(0.11mol)、酢酸ナトリウム6.06g(0.074mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下170℃まで昇温した。170℃に到達した後、反応容器内の溶融した原料へ滴下槽に貯めたメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学(株)製)12721.1g(93.39mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を連続的に240℃まで昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化した後、冷却してペレタイザーによりペレット化した。次にこのペレットをステンレス製の回転ドラム式の加熱装置に仕込み、5rpmで回転させた。十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて反応系内を室温から140℃まで昇温した。反応系内温度が140℃に達した時点で1torr以下まで減圧を行い、更に系内温度を110分間で180℃まで昇温した。系内温度が180℃に達した時点から、同温度にて180分間、固相重合反応を継続した。反応終了後、減圧を終了し窒素気流下にて系内温度を下げ、60℃に達した時点でペレットを取り出すことにより、MXDA/AA(N−MXD6)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比はメタキシリレンジアミン:アジピン酸=49.8:50.2(mol%)であった。
製造例2(ポリアミド樹脂2の製造)
ジカルボン酸成分をイソフタル酸(IPA)(エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル(株)製)とアジピン酸の混合物に変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:イソフタル酸=50.0:44.0:6.0(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/IPA共重合体(ポリアミド樹脂2)を得た。
製造例3(ポリアミド樹脂3の製造)
コモノマーとして、L−アラニン(L−Ala)((株)武蔵野化学研究所製)を使用し、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=44.4:44.5:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド樹脂3)を得た。
表1に、ポリアミド樹脂1〜3の仕込みモノマー組成、相対粘度、ガラス転移温度、融点の測定結果を示す。
Figure 0005821643
次に、スルホンアミド化合物の金属塩(B)として、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン−1,1−ジオキシドナトリウム塩をポリアミド樹脂1〜3に添加し、実施例1〜7及び比較例1〜9において、フィルム又は包装容器を作成した。作成した容器のHAZE及び酸素透過率測定の評価を以下の方法で行った。結果を表2及び表3に示す。
(1)HAZEの評価
得られたフィルムに関しては、90℃30分ボイル前後のHazeを評価した。またフィルムのHazeは、100μmに換算した。
一方、容器に関しては、40℃80%RHの恒温恒湿室に1ヶ月間保存し、容器壁面を切り出したシート切片にて、保存前後のHazeを評価した。
(2)無延伸フィルムの半結晶化時間
半結晶化時間測定装置MK701(コタキ製作所)を用い、脱偏光強度法によって100μmのフィルムを5枚重ねたものを260℃の熱風環境で3分間溶融した後、160℃のオイルバスにて結晶化させたときの半結晶化時間を求めた。
(3−1)フィルムの酸素透過率(OTR)
酸素透過率測定装置(MOCON社製、型式:OX−TRAN2/21)を使用し、ASTM D3985に準じて、23℃、相対湿度60%及び23℃相対湿度85%の雰囲気下にて測定した。安定した時点の値を酸素透過率とした。
(3−2)ボトル又はカップの酸素透過率(OTR)
23℃、容器外部の相対湿度50%、内部の相対湿度100%の雰囲気下にてASTM D3985に準じて、成形後ボトル又はカップの酸素透過率を測定し、安定した時点の値を酸素透過率とした。測定は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、商品名:OX−TRAN 2−61)を使用した。測定値が低いほど酸素バリア性が良好であることを示す。多層カップは、ボイル後、1カ月後のOTRを示す。
[単層フィルム]
実施例1
30mmφ2軸押出機により、製造例1のポリアミド樹脂1、100質量部に対しスルホンアミド化合物の金属塩である1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン−1,1−ジオキシドナトリウム塩を0.3質量部ドライブレンドし、押出機に投入後、押出温度260℃〜270℃、スクリュー回転数70rpm、フィードスクリュー回転数14rpm、引き取り速度1.2m/minで製膜し、巾300mm、厚み95〜105μmの無延伸フィルムを作製した。
実施例2
製造例2のポリアミド樹脂2を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で単層フィルムを得た。
実施例3
製造例3のポリアミド樹脂3を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で単層フィルムを得た。
比較例1
スルホンアミド化合物の金属塩を添加しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で単層フィルムを得た。
比較例2
スルホンアミド化合物の金属塩を添加しなかったこと以外は実施例2と同様の方法で単層フィルムを得た。
比較例3
スルホンアミド化合物の金属塩を添加しなかったこと以外は実施例3と同様の方法で単層フィルムを得た。
比較例4
スルホンアミド化合物の金属塩の代わりにポリアミド樹脂1、100質量部に対して、0.3質量部のビス(N−プロピルベンジリデン)ソルビトール(商品名:Millad NX8000 Milliken製)を添加以外は実施例1と同様の方法で単層フィルムを得た。
比較例5
スルホンアミド化合物の金属塩の代わりにポリアミド樹脂1、100質量部に対して、0.3質量部の粉状タルク(商品名:DG−5000 松村産業製)を添加したこと以外は実施例1と同様の方法で単層フィルムを得た。
[多層フィルム]
実施例4
3台の押出機、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール、巻き取り機等を備えた多層フィルム製造装置を用い、1台目及び3台目の押出機からナイロン6(N6)(宇部興産(株)製、商品名:UBEナイロン6、グレード:1022B)を250℃で、2台目の押出機からポリアミド樹脂組成物1(ポリアミド樹脂1、100質量部対して、スルホンアミド化合物の金属塩である1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン−1,1−ジオキシドナトリウム塩を0.3質量部ドライブレンドしたもの)を250℃でそれぞれ押し出し、フィードブロックを介してナイロン6層/ポリアミド樹脂組成物1層/ナイロン6層の2種3層構造の多層フィルム(A1)を製造した。なお、各層の厚みは、80/80/80(μm)とした。
次いで、バッチ式の2軸延伸機(東洋精機(株)製、センターストレッチ式二軸延伸機)を用いて、加熱温度120℃、延伸速度3000mm/min、熱固定温度190℃、熱固定時間30秒にて、縦4倍、横4倍に同時2軸延伸した多層二軸延伸フィルムを得た。なお、延伸後の各層の厚みは、5/5/5(μm)となった。
比較例6
スルホンアミド化合物の金属塩を添加しなかったこと以外は、実施例4と同様の方法で、多層二軸延伸フィルムを得た。
[PPカップ]
実施例5
3台の押出機、フィードブロック、Tダイを備えた多層押出装置を用い、1台目の押出機からポリアミド樹脂組成物2(ポリアミド樹脂2、100質量部対して、スルホンアミド化合物の金属塩である1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン−1,1−ジオキシドナトリウム塩を0.3質量部ドライブレンドしたもの)を250℃で、2台目の押出機からポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、商品名:ノバテック、グレード:FY6)を230℃で、3台目の押出機から接着性樹脂(三井化学(株)製、商品名:アドマー、グレード:QB515)を220℃で、それぞれ、30℃の冷却ロールに押出し、巻き取りした。ここで得られた多層シートは、外層からポリプロピレン層/接着性樹脂層/ポリアミド樹脂組成物2層/接着性樹脂層/ポリプロピレン層の順に3種5層構造である。なお、各層の厚みは、300/10/60/10/300(μm)とした。
次いで、プラグアシストを備えた圧空真空成形機((株)浅野研究所製)を使用して、シート表面温度が170℃に達した時点で熱成形を行い、開口部79mm角×底部63mm×深さ25mm、表面積110cm2、容積100mlのポリプロピレン(PP)多層カップを作製した。
比較例7
スルホンアミド化合物の金属塩を添加しなかったこと以外は、実施例5と同様の方法で、PP多層カップを得た。
[PET多層ボトル]
実施例6
下記の条件により、層(B)を構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層(A)を構成する材料を別の射出シリンダーから、層(B)を構成する樹脂と同時に射出し、次に層(B)を構成する樹脂を必要量射出してキャビティーを満たすことにより、(B)/(A)/(B)の3層構成のインジェクション成形体(パリソン)(22.5g)を得た。なお、層(B)を構成する樹脂としては、固有粘度(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒を使用、測定温度:30℃)が0.83のポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット(株)製、商品名:BK−2180)を使用した。層(A)を構成する樹脂としては、事前に、押出機にて260℃で、ポリアミド樹脂1、100質量部に対して、スルホンアミド化合物の金属塩である1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン−1,1−ジオキシドナトリウム塩を0.3質量部ドライブレンドし、溶融混合した後、ペレタイズしたポリアミド樹脂組成物3を使用した。
得られたパリソンを冷却後、二次加工として、パリソンを加熱し2軸延伸ブロー成形を行うことでポリエチレン(PET)多層ボトルを製造した。得られたボトルの総質量に対する層(A)の質量は5質量%であった。
(パリソンの形状)
全長95mm、外径22mm、肉厚2.7mm、外側層(B)胴部厚み1520μm、層(A)胴部厚み140μm、内側層(B)胴部厚み1040μmとした。なお、パリソンの製造には、射出成形機(名機製作所(株)製、型式:M200、4個取り)を使用した。
(パリソンの成形条件)
層(A)用の射出シリンダー温度:250℃
層(B)用の射出シリンダー温度:280℃
金型内樹脂流路温度:280℃
金型冷却水温度:15℃
(二次加工して得られたボトルの形状)
全長160mm、外径60mm、内容積370ml、肉厚0.28mm、外側層(B)胴部厚み152μm、層(A)胴部厚み14μm、内側層(B)胴部厚み114μmとした。延伸倍率は縦1.9倍、横2.7倍とした。底部形状はシャンパンタイプである。胴部にディンプルを有する。なお、二次加工には、ブロー成形機((株)フロンティア製、型式:EFB1000ET)を使用した。
(二次加工条件)
インジェクション成形体の加熱温度:100℃
延伸ロッド用圧力:0.5MPa
一次ブロー圧力:0.5MPa
二次ブロー圧力:2.4MPa
一次ブロー遅延時間:0.32sec
一次ブロー時間:0.30sec
二次ブロー時間:2.0sec
ブロー排気時間:0.6sec
金型温度:30℃
比較例8
層(A)を構成する樹脂にスルホンアミド化合物の金属塩を添加しなかったこと以外は、実施例6と同様の方法でパリソン及びPET多層ボトルを製造した。
[PETブレンドボトル]
実施例7
下記の条件により、ポリアミド樹脂(A)と樹脂(B)とを混合した樹脂組成物を射出シリンダーから必要量射出してキャビティーを満たすことにより、インジェクション成形体(パリソン)(22.5g)を得た。なお、樹脂(B)としては、固有粘度(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒を使用、測定温度:30℃)が0.83のポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット(株)製、商品名:BK−2180)を使用した。ポリアミド樹脂(A)としては、実施例6で用いたポリアミド樹脂組成物3を使用した。ポリアミド樹脂(A)の混合割合は5質量%であった。
得られたパリソンを冷却後、二次加工として、パリソンを加熱し2軸延伸ブロー成形を行うことでPETブレンドボトルを製造した。
(パリソンの形状)
全長95mm、外径22mm、肉厚2.7mmとした。なお、パリソンの製造には、射出成形機(名機製作所(株)製、型式:M200、4個取り)を使用した。
(パリソンの成形条件)
射出シリンダー温度:280℃
金型内樹脂流路温度:280℃
金型冷却水温度:15℃
(二次加工して得られたボトルの形状)
全長160mm、外径60mm、内容積370ml、肉厚0.28mmとした。延伸倍率は縦1.9倍、横2.7倍とした。底部形状はシャンパンタイプである。胴部にディンプルを有する。なお、二次加工には、ブロー成形機((株)フロンティア製、型式:EFB1000ET)を使用した。
(二次加工条件)
インジェクション成形体の加熱温度:100℃
延伸ロッド用圧力:0.5MPa
一次ブロー圧力:0.5MPa
二次ブロー圧力:2.4MPa
一次ブロー遅延時間:0.32sec
一次ブロー時間:0.30sec
二次ブロー時間:2.0sec
ブロー排気時間:0.6sec
金型温度:30℃
比較例9
層(A)を構成する樹脂にスルホンアミド化合物の金属塩を添加しなかったこと以外は、実施例7と同様の方法でパリソン及びPETブレンドボトルを製造した。
Figure 0005821643
Figure 0005821643
Figure 0005821643
実施例1〜7に示すスルホンアミド化合物の金属塩を添加したポリアミド樹脂組成物を用いたフィルムや包装容器は、成形性に影響を及ぼす結晶化速度が変化することなく、熱殺菌処理や高湿度下での保存においてもHAZEの悪化を抑制できた。一方、比較例1〜3及び6〜9は、熱殺菌処理や高湿度下での保存では、HAZEが悪化した。また、比較例4〜5は、HAZE改善効果は見られるものの、結晶化速度が加速することによる成形性の悪化や高湿度下でのバリア性の悪化が見られた。
2軸延伸フィルム、PETボトル、深絞りカップなどの成形性を低下させず、熱殺菌処理や高湿度下で経時した時の透明性を損なうことなく、さらに高湿度下でのバリア性が低下しないポリアミド樹脂組成物であるため、高湿度下での保存もしくは熱殺菌処理をする包装容器に利用可能である。

Claims (4)

  1. 下記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、下記一般式(II)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位を含有するポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、スルホンアミド化合物の金属塩(B)を0.1〜10質量部含むポリアミド樹脂組成物。
    Figure 0005821643
    [前記一般式(II)中、mは2〜18の整数を表す]
  2. 更にポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール及び植物由来樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の樹脂組成物からなる成形体。
  4. 請求項1または2に記載の樹脂組成物からなる層、並びにポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール及び植物由来樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種からなる層を含む多層成形体。
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