JP5817403B2 - めっき用陽極材、めっき用陽極材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被めっき物の形状に合わせて形成可能なめっき用陽極材及びこの陽極材の製造方に関する。
金属部材は、一般にその使用目的に応じて耐磨耗性、耐食性、耐薬品性等を改善する処理が行われる。金属部材の表面処理の方法としては、表面をニッケル等の金属の膜で被覆する電気めっき等の方法がある。電気めっきでは、複雑な形状の被めっき物にめっき被膜を形成することができ、そのめっき被膜の膜厚が均一であること等が要求される。被めっき物が複雑な形状の場合には、陽極を被めっき物の形状に合わせて形成することが好ましい。
電気めっきでは、ニッケル(Ni)を陽極材に用いてニッケルめっき被膜を成膜した場合、不導体膜が形成され、めっきレートが変化してしまう。そこで、電気めっきでは、不導体膜が発生しないように処理されたSK−Ni材が陽極材として一般に使用されている。
しかしながら、SK−Ni材は、硬くて脆いため難加工材であり、陽極材を被めっき物の形状に合わせて複雑な形状にする必要がある場合に適用することが難しい。
陽極を被めっき物の形状に合わせて形成するには、陽極材に加工性の良い純Niを使用し、めっき浴であるスルファミン酸に塩化ニッケル又は臭化ニッケルを添加して不導体膜の生成を抑制することで不導体膜の発生を防止している。このため、純Niを用いた場合には、めっき浴の濃度管理等が必要になる。このように、陽極材に純Niを用いた場合には、純Niが加工性が良いため複雑な形状の被めっき物にめっき被膜を形成し表面処理することができるが、不導体膜の生成を抑制するためにめっき浴の濃度管理等に手間がかかる。
そこで、めっき用の陽極材としては、被めっき物の形状に合わせて加工することができ、めっき浴の濃度管理等に手間がかからず、安定しためっきレート及び被膜特性に優れためっき被膜を成膜できる陽極材が求められている。
特開2001−115287号公報 特開平6−322575号公報
本発明は、上述した従来の事情に鑑み、加工性に優れ、めっき浴の濃度管理等の手間がかからず、安定しためっきレート及び被膜特性に優れためっき被膜の成膜が可能なめっき用陽極材及びこの陽極材の製造方法、このめっき用陽極材を用いて電気めっきにより成膜しためっき被膜を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するために、検討を重ねた結果、本発明に係るめっき用ニッケル陽極材は、純ニッケルの粒界のみに硫黄が存在し、ニッケル陽極材全体に対する硫黄の含有量が0.01重量%〜0.50重量%であることを特徴とする。
本発明に係るめっき用ニッケル陽極材の製造方法は、純ニッケルをめっき用電極の形状に加工した後に、硫黄を付着させて熱処理することによって上記純ニッケルを硫化処理することを特徴とする。
本発明では、純ニッケルを加工した後に、この加工した純ニッケルに硫黄を所定量含有させる。本発明では、純ニッケルの状態で加工することができるので加工性に優れ、そして加工後に硫黄を含有させることで不導体膜の発生を抑制でき、めっき浴の濃度管理等が簡易になり、被めっき物が複雑な形状であっても安定しためっきレート及び被膜特性に優れためっき被膜を成膜することができる。
本発明を適用した硫化処理Ni材の一部断面図である。 SK−Ni材の一部断面図である。 実施例及び比較例の陽極材における陰極電流密度と陰極電流効率の関係を示す図である。 実施例及び比較例の陽極材における陽極電流密度と陽極電流効率の関係を示す図である。 実施例及び比較例の陽極電流密度D=1A/dmにおけるめっき時間と電極間電圧の関係を示す図である。 実施例及び比較例の陽極電流密度D=3A/dmにおけるめっき時間と電極間電圧の関係を示す図である。 実施例及び比較例の陽極電流密度D=5A/dmにおけるめっき時間と電極間電圧の関係を示す図である。 実施例及び比較例の陽極電流密度D=7A/dmにおけるめっき時間と電極間電圧の関係を示す図である。 SK−Ni、電解Ni、S−Niの光沢を示す図である。 陽極材のビッカース硬さを示す図である。 陽極材のめっき被膜の反射率を示す図である。
以下に、本発明を適用しためっき用ニッケル陽極材、この陽極材の製造方法及びこの陽極材を用いて形成しためっき被膜について詳細に説明する。なお、本発明は、特に限定がない限り、以下の詳細な説明に限定されるものではない。
被めっき物にニッケルからなる被膜を形成する方法としては、電気めっき法や無電解めっき法がある。例えば、電気めっき法では、金属部材などの被めっき物を陰極に配置し、主にニッケル(Ni)からなる陽極材を可溶性陽極として配置し、この陰極と陽極とをめっき浴中に浸漬させ、両極間に直流電源を接続し、適当な電圧を加えることで、陰極では還元反応が起こり、ニッケルが被めっき物に析出してめっき被膜を形成する。このような電気めっき法では、被めっき物の形状に合わせて陽極を形成することにより、均一な膜厚の被膜特性に優れためっき被膜を被めっき物に形成することができる。
陽極材は、図1に示すように、主に純ニッケル(純Ni)からなり、純ニッケルの粒界に硫黄が存在しているものである。硫黄の含有量は、0.01重量%〜0.50重量%である。この陽極材は、純Niを陽極の形状、即ち被めっき物の形状に合わせて加工した後、加工した純Niの表面に硫黄を付着させ、熱処理を行うことによって得られる。純Niとは、99.9重量%以上の純度のニッケルである。この陽極材は、硫黄を含有し、残りがニッケル及び不可避不純物からなる。
純Niは、ある程度の硬さがあり加工しやすいため、被めっき物の形状に合わせて容易に加工することができる。純Niのみでは、めっき時に不導体膜を発生してしまうため、加工した後に硫黄を含有させる硫化処理を純Niに行う。この硫化処理した硫化処理ニッケルは、硫黄が含有されているため、不導体膜の発生を防止することができる。
硫黄を含有させる方法としては、純Niの表面に硫黄を塗布又は硫黄を含む鉱油を塗布した後、表面に塗布した硫黄又は鉱油を純Niの内部に拡散させるために、所定の温度及び時間をかけて熱処理を行う。また、硫黄を含有させる他の方法としては、硫黄を含むガス中に加工した純Niを置いて熱処理を行うようにしてもよい。
熱処理は、純Niに過剰に硫黄が含有されると脆くなるため、不導体膜の発生を防止できる程度に硫黄が含有される条件とする。また、熱処理の条件は、加工した純Niの形状や大きさによって異なるため、形状や大きさに合わせて適宜決定する。例えば、熱処理の温度は、加工した純Niの形状や大きさによって異なるが、500℃〜1000℃程度である。
純Niは、熱処理の温度や時間によって、加工した純Niの表面又は表面から内部に亘って硫黄が含有されるようになる。このようにして得られた陽極材は、図1に示すように、硫黄が純Niの表面又は表面から内部までにおける純Niの粒界に存在している。この陽極材は、硫黄が純Niの粒界に存在し、硫黄からなる粒界相が形成されている。したがって、得られた陽極材は、硫黄以外の部分は純Niであるため、脆くなりすぎず純Niの硬さとほぼ変わりがない。この陽極材のビッカース硬さ(Hv)は100〜150であることが好ましい。ビッカース硬さ(Hv)が100よりも小さいと、硬さが足りず加工性が悪くなってしまい、純Niに硫黄を含有させ過ぎると、ビッカース硬さ(Hv)が大きくなり過ぎて硬く脆くなってしまう。したがって、陽極材のビッカース硬さは、100〜150であることが好ましい。
ここで、硫黄を含む陽極材としてSK−Niがあるが、このSK−Niは図2に示すように、純Niの粒界が存在せず硫黄がNiの全面に分散しているため硬くて脆いものである。このため、陽極材にSK−Niを用いる場合には、複雑な形状の被めっき物と同じ形状に加工しようとすると割れてしまうため、複雑な形状の被めっき物のめっきには適用できない。
一方、純Niを加工した後に硫黄を付着させて熱処理を行い純Niの粒界に硫黄が存在する上述した硫化処理ニッケルでは、硫化処理を行う前の純Niの状態で加工を行うため、複雑な形状に形成することができ、複雑な形状の被めっき物に対するめっき被膜の形成にも適用できる。また、硫化処理ニッケルでは、純Niの粒界に硫黄が存在し、硫黄以外の部分は純Niであるため、ビッカース硬さ(Hv)が100〜150であり、SK−Niほど硬く脆くならない。このため、硫化処理ニッケルでは、硫黄を含有させた後であっても加工することが可能である。更に、この硫化処理ニッケルでは、硫黄を含有しているため、不導体膜の発生を抑制できることから、不導体膜の発生を抑制する添加剤が含有されていないめっき浴を用いた場合であってもめっきレートが安定し、被膜特性に優れためっき被膜を成膜することができる。また、硫化処理ニッケルは、硫黄が純Niの粒界に存在するため、めっき時の陽極溶解性が良く、光沢のある外観に優れためっき被膜を成膜することができる。
一方、陰極には、板状のみならず、銅やステンレス等の金属部材からなる複雑な形状の被めっき物を配置する。
めっき浴には、スルファミン酸浴、ワット浴、ストライク浴等の一般的なめっき浴を使用することができる。陽極に硫黄が含有されている硫化処理ニッケルを用いるため、不導体膜の生成が抑制されていることから、めっき浴には不導体膜の生成を抑制する添加剤を添加しなくて良く、濃度管理等が不要となる。
電気めっきによりニッケルめっき被膜を形成する際には、陰極に板状又は複雑な形状の被めっき物を配置し、陽極に被めっき物の形状に合わせて加工した硫化処理ニッケルを用い、めっき浴に陰極と陽極を浸漬し、所定の電圧を加え、被めっき物にニッケルめっき被膜を成膜する。めっき被膜は、陽極が被めっき物の形状に合わせて加工されているため、膜厚が均一となる。また、硫化処理ニッケルの陽極材を用いた電気めっきでは、添加剤を添加していないめっき浴であっても不導体膜が形成されず、めっきレートが安定し、被膜特性に優れた被膜を成膜できる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
先ず、めっき前後の陽極材の外観変化、陰極電流効率、陽極電流効率、電極間電圧、めっき被膜の外観について評価を行った。
<陽極材の外観変化>
(評価用の陽極)
先ず、下記の表1に示す実施例及び比較例の3種類の評価用の可溶性陽極板サンプルを作製した。実施例1の陽極は、99.9重量%以上の純Niを機械加工により幅50mm、長さ100mm、厚さ5mmの形状とした後、硫黄(S)を付着させ、温度800℃、120分間熱処理を施した硫化処理Ni(S−Ni)からなる陽極板である。この実施例1の硫化処理Niの陽極板は、Niの含有量が99.8重量%であり、Sの含有量は0.20重量%である。比較例1の陽極は、電解精錬法で得られた電解Niからなり、比較例2は、硫黄を0.20重量%含有する電解Ni(SK−Ni)からなる。
以下の表1に示す3種類の可溶性陽極板を用いて、上から12.5mm、端から25mmの位置に直径がΦ5mmの穴加工を行った後、ビーカー用陽極板止具(株式会社山本鍍金試験器製)にチタンビスで固定して評価用の可溶性陽極板サンプルとした。なお、めっき時には、可溶性陽極板サンプルの下から8cmの位置までめっき液に浸漬した(陽極面積:8×5cm)。
Figure 0005817403
(陰極)
陰極には、厚さ0.5mmのTi板とハルセル銅陰極板(株式会社山本鍍金試験器製)を組み合わせたものを用いた。先ず、マスキングテープ「ポリエステルテープNo.558B(ニチバン株式会社製)」を利用して、Ti板表面にハルセル陰極板と同じ大きさの露出面を作製した。その後、Ti板露出面とハルセル陰極板の裏面が接触するように重ねて、8×5cmの銅面(陰極面積)が露出するようにマスキングテープで固定した。
(めっき浴)
評価に使用した電気Niめっき浴は、スルファミン酸ニッケルの濃度が500g/L、ホウ酸の濃度が30g/Lであるスルファミン酸浴である。めっき時の陽極溶解性を把握しやすくするために、ハロゲン化物を無添加とした。
上述のように作製した陽極板と陰極板を、極間距離が11cmとなるように電解槽にセットした。そして、電解槽内において下記の表2に示すように、めっき浴を維持した。この状態で、下記の表2に示すめっき条件で30分通電し、めっき被膜を成膜した。
Figure 0005817403
(評価)
Niめっき前とめっき後(電流密度1、3、5、7A/dmのそれぞれの条件終了後)の陽極を観察した。観察した結果、実施例1は、S−Niの陽極板の面全体に粒界腐食のような溶解跡が見られた。このことから、実施例1では、硫黄がめっき浴に溶解して不導体膜の発生が抑えられることがわかる。また、実施例1のS−Niは、純ニッケルの粒界に硫黄が存在していることがわかる。一方、比較例1は、電解Niの陽極板の外観に溶解跡はほとんど見られなかった。比較例2は、SK−Niの陽極板の電流の集中しやすいエッジ部を中心に溶解跡が見られた。
<陰極電流効率>
陰極電流効率は、各電流密度において、Niめっき前後の銅陰極板の重量変化を測定して析出量を算出し、理論析出量に対する割合として求めた。理論析出量は、次にようにして求めた。理論析出量(g)={Ni原子量(58.693g)/価数(2)}×{電流値(A)×通電時間(s)/クーロン量(96500C)}
実施例及び比較例の陰極電流効率は、図3に示すようになった。図3に示す結果から、実施例1のS−Niは、比較例1の電解Niや比較例2のSK−Niとほとんど同じであり、標準的電流効率が得られ、陽極材や陰極電流密度の違いによる違いは見られなかった。なお、実施例1の5A/dmにおける陰極電流効率が低くなっているのはばらつきの範囲内である。
<陽極電流効率>
陽極電流効率は、各電流密度において、Niめっき前後の陽極板の重量変化を測定して析出量を算出し、理論析出量に対する割合として求めた。理論析出量は、陰極電流効率を求める際の理論析出量と同じである。
実施例及び比較例の陽極電流効率は、図4に示すようになった。実施例1のS−Niでは、D=1〜5A/dmの電流密度において、比較例1の電解Niや比較例2のSK−Niと比べて高い電流効率を示した。陽極電流効率が100%を越えたことについては、めっき後の陽極表面に付着していたスライムと思われる微細な黒色皮膜片が、重量測定前の乾燥の際に剥離する現象が見られたことが一因とも考えられる。なお、実施例1では、D=7A/dmの電流密度おいて陽極電流効率が70%程度となった。
比較例1の電解Niでは、D=1〜3A/dmの電流密度において80%程度の効率が得られたが、電流密度を高くすると電流効率が低下した。比較例2のSK−Niでは、D=3〜7A/dmの電流密度では電流効率が高いが、D=1A/dmの電流密度においては電流効率は50%程度と低かった。
上記陰極電流効率及び陽極電流効率の評価から、実施例1のS−Niの溶解性は、電流密度の大きさに依存する可能性はあるものの、ハロゲン化物未添加のめっき浴における低〜中電流密度領域での溶解性については、比較例1の電気Niや比較例2のSK−Niと比較して高いものといえる。したがって、実施例1のS−Niを陽極に用いた場合には、効率良くめっき被膜を成膜することができる。なお、上記評価結果から、ハロゲン化物を添加しためっき浴を用いた場合には、実施例1のS−Niの高電流密度に対する溶解性は改善され、幅広い電流密度において溶解性が良好になる可能性があると考えられる。
<電極間電圧>
実施例及び比較例において、電極間の電圧を測定し、各電流密度におけるめっき時間と電極間電圧との関係を図5〜8に示す。図5〜7に示す結果から、D=1、3、5A/dmの電流密度の場合では、比較例1の電解Niと比較例2のSK−Niにおける電圧値はほぼ同じ値となったが、実施例1のS−Niの電圧値は比較例と比較して低い値となった。また、図8に示す結果から、D=7A/dmの電流密度の場合では、実施例1のS−Niの電圧値と比較例1や2の電圧値とはほぼ同じになった。このような電極間電圧の評価結果から、実施例1のS−Niを用いた場合には、消費電力が小さく、効率的にめっき処理ができることがわかる。
<めっき被膜の外観>
実施例及び比較例の陽極材を用いて成膜しためっき被膜の外観については、目視により光沢を確認した。図9(A)は、実施例1のS−Niによるめっき被膜、図9(B)は、比較例1の電解Niによるめっき被膜、図9(C)は、比較例2のSK−Niによるめっき被膜である。
実施例1のS−Niは、評価に用いためっき浴には光沢剤を添加していないにもかかわらず、比較例1の電解Niや比較例2のSK−Niよりも光沢を有していた。一方、比較例1の電解Niでは、各電流密度において光沢は得られなかった。比較例2のSK−Niでは、D=1、3A/dmの電流密度において、ある程度の光沢が得られたものの、十分な光沢は得られず、実施例1のS−Niほど高光沢にはならなかった。実施例1において光沢が得られたのは、膜厚や下地状態、電流密度や電圧など様々な要因が考えられるため一概には言えないが、陽極に含まれるS成分がめっき被膜に影響している可能性も考えられる。
次に、陽極材を作製するにあたって熱処理の条件の違いによる陽極溶解性、めっき被膜について評価した。
(陽極材)
先ず、実施例1〜10の陽極材は、純度が99.9重量%以上の純Niを機械加工により幅50mm、長さ100mm、厚さ5mmの形状とした後、硫黄(S)を付着させ、温度500〜900℃、60又は120分間熱処理を施した硫化処理Ni(S−Ni)からなる表3に示される陽極板である。
比較例1は、電解精錬法で得られた電解Niを陽極材とした。比較例2は、Sを0.02重量%含有する電解Niを陽極材(SK−Ni)とした。比較例3は、硫化処理をしていない純Niを陽極材とした。
Figure 0005817403
(陰極板、めっき浴)
陰極板及びめっき浴は、上述した陰極電流効率、陽極電流効率等を評価するにあたって作製した陰極板及びめっき浴と同じであるため、詳細な説明は省略する。
(電気めっきの条件)
電気めっきの条件についても、上述した陰極電流効率、陽極電流効率等を評価する際の電気めっきの条件と同様であるため、詳細な説明を省略する。なお、電流密度は、4A/dmである。
次に、電気めっきを行い、めっき時の陽極溶解性及びめっき被膜外観を評価した。下記の表4に評価結果を示す。
Figure 0005817403
ここで、陽極電流効率は、上述した陽極電極効率と同様にして求めた。陽極溶解性について、表4中○は、陽極電流効率値が80%以上であって陽極溶解性が早く、△は、陽極電流効率値が70%より大きく、80%未満であって陽極溶解がやや遅く、×は、陽極電流効率値が70%以下であって陽極溶解が遅いことを示す。
めっき被膜の外観は、目視により光沢の有無を判断した。光沢があるものは、良好として表4中○で示し、光沢が少ないものを△で示した。
表4に示す結果から、実施例1〜10のS−Niでは、電解Ni、SK−Ni、純Niを陽極材として用いた比較例1〜3と比べて陽極電流効率及び溶解性が良く、めっき被膜の光沢も得られた。したがって、硫化処理Niを用いた陽極材は、一般的に陽極材として用いられている電解Ni、SK−Niや純Niよりも陽極材として適していることがわかる。
次に、陽極材のビッカース硬さについて評価した。サンプルとして、純Ni(3N)、SK−Ni、硫化処理したNiを用意した。SK−Niは、硫黄を0.2重量%含有する電解Niである。硫化処理したNiとしては、加工した純Niに硫黄を付着させて温度800℃、120分間加熱処理したものを用意した。ビッカース硬さは、各陽極材の試料を用意し、マイクロビッカース硬度測定装置(松沢精機製DMH−1)により測定した。
各陽極材のビッカース硬さの測定結果を図10に示す。図10に示すビッカース硬さの測定結果から、硫化処理Niは、ビッカース硬さが100〜150の範囲内であり、純Niの硬さと変わらないことがわかる。一方、SK−Niは、硫化処理Niよりもビッカース硬さが大きく、硬いものであることがわかる。SK−Niは、硫黄が全面に分散している分散強化型であるのに対し、硫化処理Niは、硫黄が純Niの粒界に存在する粒界侵入型であるため、粒界以外の部分では純Niと硬さがほぼ変わっていないためと考えられる。したがって、硫化処理Niは、硫黄が純Niの粒界に存在するため、SK−Niほど硬く脆くならず、硫化処理前だけではなく硫化処理後においても加工を行うことができる。
次に、めっき被膜の反射率を評価した。陽極材に、純Ni(3N)、SK−Ni、硫化処理Niを用い、上述した陰極電流効率、陽極電流効率等を測定する際のめっき条件と同様の条件で陰極にめっき被膜を成膜した。SK−Niは、硫黄を0.2重量%含有する電解Niである。硫化処理Niは、加工した純Niに硫黄を付着させて温度800℃、120分間熱処理したものである。めっき被膜の反射率は、紫外可視分光光度計(島津製作所製UV−2550)により測定した。反射率の測定結果を図11に示し、各陽極材の最大反射率、最小反射率、平均を表5に示した。
Figure 0005817403
図11及び表5に示す結果から、硫化処理Niは、純NiやSK−Niよりも反射率が高く、光沢度が高いことがわかる。したがって、硫化処理Niを陽極材に用いた場合には、光沢を有するめっき被膜を形成できることがわかる。
以上より、めっき用陽極材として一般に使用されている純NiやSK−Niよりも本発明を適用した加工した純Niに硫黄を付着させて所定の条件で熱処理した硫化処理ニッケルを用いることにより、被めっき物が複雑な形状であっても均一な膜厚でめっき時の溶解性が良好であり、光沢があるめっき膜を成膜することができる。

Claims (4)

  1. 純ニッケルの粒界のみに硫黄が存在し、ニッケル陽極材全体に対する当該硫黄の含有量が0.01重量%〜0.50重量%であることを特徴とするめっき用ニッケル陽極材。
  2. 上記純ニッケルの粒内のビッカース硬さが100〜150であることを特徴とする請求項1記載のめっき用ニッケル陽極材。
  3. 純ニッケルをめっき用電極の形状に加工した後に、硫黄を付着させて熱処理することによって上記純ニッケルを硫化処理するめっき用ニッケル陽極材の製造方法。
  4. 上記硫黄を含む鉱油を上記加工した純ニッケルに塗布して熱処理することを特徴とする請求項3記載のめっき用ニッケル陽極材の製造方法。
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