JP5817342B2 - 内燃機関の制御目標値設定方法及び内燃機関の制御装置 - Google Patents

内燃機関の制御目標値設定方法及び内燃機関の制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、ディーゼルエンジンに代表される内燃機関の制御目標値設定方法、及び、その制御目標値設定方法に従って設定された制御目標値を利用して内燃機関の制御を行う制御装置に係る。特に、本発明は、NOx排出量の削減等の内燃機関に対する規制や要求を満たすための制御目標値を設定する方法に関する。
従来から周知のように、自動車用エンジン等として使用されるディーゼルエンジン(以下、単にエンジンと呼ぶ場合もある)では、排気ガス特性、燃料消費特性、燃焼安定性および動力性能等のエンジン特性がさまざまな要求を満たすべく、複雑な制御が行われる。
具体的には、エンジンの回転数や負荷に基づいて決定されるエンジン運転状態に応じ、例えばNOx排出量を規制値以下に抑えるための最適な燃料噴射量等の各制御パラメータの適合値を実験やシミュレーションによって求めて制御用マップを作成し、これをエンジン制御用の電子制御ユニット(エンジンECU)に記憶させておく。そして、この制御用マップ上の適合値を参照しつつ、エンジンECUがエンジンの制御を行うようになっている。
例えば下記の特許文献1には、上記適合値を取得するための自動適合システムにおいて、予め用意した目標値修正係数を用いた排気目標値を、排気走行モードに対応して最適にするように目標値を修正しながら自動適合を行うことが開示されている。
特開2004−124935号公報
上記特許文献1に開示されているような自動適合システムによれば、省人力化が図れ、また作業者の調整ばらつきに起因する効率の悪化を回避することが可能である。
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術にあっては、上記目標値修正係数の精度が十分に得られている保証はなく、この目標値修正係数の精度が十分に得られていない場合には、目標値の修正回数が多くなってしまい、適合値を取得するまでの時間を長く要してしまうことになる。
また、これまでのエンジンにおいて制御用マップ上に設定されている適合値は、エンジンの定常運転状態(車両に搭載された場合には車両の加減速要求のない状態)のみを基準としたものである。つまり、エンジンの過渡運転(車両の加速要求等)を考慮して最適化された制御目標値を有する制御用マップ(例えば、車両の加速要求期間中でのNOx排出量を規制量以下に抑えるための制御目標値を有する制御用マップ)に関する有効な提案は未だなされていない。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内燃機関の運転状態変化に対して最適化された制御目標値を設定可能とする内燃機関の制御目標値設定方法、及び、その制御目標値設定方法に従って設定された制御目標値を利用して内燃機関の制御を行う制御装置を提供することにある。
−発明の概要−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の概要は、内燃機関の運転状態の各格子点(運転動作点)それぞれにおける排気変化感度(各格子点それぞれにおける排気の悪化しやすさ)等を考慮し、内燃機関の運転状態の各格子点毎に要求や規制(NOx排出量の規制等)を満たす制御目標値を設定するようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、内燃機関に対する規制または要求に応じたNOx排出量の目標値を設定する制御目標値設定方法を対象とする。この制御目標値設定方法に対し、上記内燃機関が搭載された車両を、予め規定された車両走行テストモードに応じて走行させた場合において、上記内燃機関が定常運転状態にある場合に要求される出力である定常要求出力を算出するステップ、上記車両走行テストモードに応じて車両を走行させた場合において、車両が加速または減速する際に要求される加速度である要求車両加速度を算出するステップ、上記車両走行テストモードに応じて車両を走行させた場合において、上記定常要求出力と加速に要する出力との総和である総要求出力を算出するステップ、上記総要求出力と上記定常要求出力との偏差に基づく値であって、上記定常要求出力に対して上記総要求出力が大きく且つその差が大きいほど大きな値として算出される走行加減速状態指標を算出するステップ、上記走行加減速状態指標と、上記車両が加速または減速する際におけるNOx排出量に対する影響度合いを表す係数である加減速排気変化係数との関係を表す加減速排気変化係数マップに従って、上記走行加減速状態指標が大きいほど大きな値として算出される加減速排気変化係数を算出するステップ、上記車両走行テストモードで規定されている走行パターンの全走行距離を走行させた場合における単位出力当たりのNOx排出量の平均値であって、この全走行距離を走行させた場合のNOx総排出量を、この全走行距離を走行させた場合の全走行総出力により除算した値が、NOx排出量規制値を満たすように算出される基本平均排気目標値を算出するステップ、以下の式(10)
eti (t)=E et /(1+C td (t)) …(10)
eti (t):運転動作点でのNOx排出量目標値
et (t):基本平均排気目標値
td :加減速排気変化係数
によって上記基本平均排気目標値を上記加減速排気変化係数により補正して、上記内燃機関の定常運転時における所定の運転動作点でのNOx排出量目標値を算出すると共に、以下の式(13)
etmap (Ne,T qe )=E eti (t) …(13)
etmap (Ne,T qe ):定常動作点排気目標値
Ne:運転動作点での内燃機関の回転数
qe :運転動作点での内燃機関のトルク
によって上記NOx排出量目標値である定常動作点排気目標値を、その定常運転での運転動作点における制御目標値として算出するステップを順に行うようにしている。
この特定事項により、定常運転状態から加速運転状態(過渡運転状態)に移行した場合であっても、NOx排出量としては所定の規制値以下に抑えることが可能となる。つまり、上記NOx排出量目標値は、定常運転状態から加速運転状態に移行した際のNOx排出量の増加を見越して、この定常運転状態でのNOx排出量を制限するように設定されたものとなっている。このため、内燃機関の過渡運転におけるNOx排出量を適正に抑制するための制御目標値であるNOx排出量目標値を、従来の適合動作(内燃機関の実機を運転しながらNOx排出量が規制値以下になるように制御パラメータを調整していくといった動作)を実施することなしに規定することが可能となり、適合動作の廃止または適合動作の工数削減を図ることができる。
また、上述した制御目標値(NOx排出量目標値)を利用して内燃機関の制御を行う制御装置も本発明の技術的思想の範疇である。
つまり、上記内燃機関の制御目標値設定方法によって設定された定常動作点排気目標値を、上記運転動作点における定常運転状態でのNOx排出量目標値としてEGR率を制御する構成とされた内燃機関の制御装置である。
本発明では、内燃機関の運転状態が定常運転状態から変化する際における制御値に対する影響度合いを考慮して運転動作点における定常運転状態での制御目標値を設定している。このため、内燃機関の過渡運転における制御値を、従来の適合動作を実施することなしに、規制や要求を満たすための値として設定することが可能となる。
実施形態に係るエンジン及びその制御系統の概略構成を示す図である。 ディーゼルエンジンの燃焼室及びその周辺部を示す断面図である。 ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。 燃焼室内での燃焼形態の概略を説明するための吸排気系及び燃焼室の模式図である。 燃料噴射時における燃焼室及びその周辺部を示す断面図である。 燃料噴射時における燃焼室の平面図である。 NOx排出量目標値の設定動作の手順を示すフローチャート図である。 エンジンの運転状態変化時における運転動作点の変化を説明するための図である。 走行加減速状態指標St(t)を加減速要求出力Pt(t)とした場合に採用される加減速排気変化係数マップを示す図である。 定常要求出力Pc(t)に対する総要求出力Pv(t)の比として走行加減速状態指標St(t)を求めた場合に採用される加減速排気変化係数マップを示す図である。 定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe)を利用したエンジンの制御動作の手順を示すフローチャート図である。 制御目標状態量CPtrgを筒内の酸素濃度とした場合に、加減速動作点排気目標値EtrgであるNOx排出量目標値から制御目標状態量CPtrgである酸素濃度を求めるための制御目標状態量マップを示す図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車に搭載されたコモンレール式筒内直噴型多気筒(例えば直列4気筒)ディーゼルエンジン(圧縮自着火式内燃機関)に本発明を適用した場合について説明する。
−エンジンの構成−
先ず、本実施形態に係るディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)の概略構成について説明する。図1は本実施形態に係るエンジン1及びその制御系統の概略構成図である。また、図2は、ディーゼルエンジンの燃焼室3及びその周辺部を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、燃料供給系2、燃焼室3、吸気系6、排気系7等を主要部とするディーゼルエンジンシステムとして構成されている。
燃料供給系2は、サプライポンプ21、コモンレール22、インジェクタ(燃料噴射弁)23、遮断弁24、燃料添加弁26、機関燃料通路27、添加燃料通路28等を備えて構成されている。
上記サプライポンプ21は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした後、機関燃料通路27を介してコモンレール22に供給する。コモンレール22は、サプライポンプ21から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各インジェクタ23に分配する。インジェクタ23は、その内部に圧電素子(ピエゾ素子)を備え、適宜開弁して燃焼室3内に燃料を噴射供給するピエゾインジェクタにより構成されている。このインジェクタ23からの燃料噴射制御の詳細については後述する。
また、上記サプライポンプ21は、燃料タンクから汲み上げた燃料の一部を、添加燃料通路28を介して燃料添加弁26に供給する。添加燃料通路28には、緊急時において添加燃料通路28を遮断して燃料添加を停止するための上記遮断弁24が備えられている。
また、上記燃料添加弁26は、ECU100による添加制御動作によって排気系7への燃料添加量が目標添加量(排気A/Fが目標A/Fとなるような添加量)となるように、また、燃料添加タイミングが所定タイミングとなるように開弁時期が制御される電子制御式の開閉弁により構成されている。つまり、この燃料添加弁26から所望の燃料が適宜のタイミングで排気系7(排気ポート71から排気マニホールド72)に噴射供給される構成となっている。
吸気系6は、シリンダヘッド15(図2参照)に形成された吸気ポート15aに接続される吸気マニホールド63を備え、この吸気マニホールド63に、吸気通路を構成する吸気管64が接続されている。また、この吸気通路には、上流側から順にエアクリーナ65、エアフローメータ43、スロットルバルブ(吸気絞り弁)62が配設されている。上記エアフローメータ43は、エアクリーナ65を介して吸気通路に流入される空気量に応じた電気信号を出力するようになっている。
また、この吸気系6には、燃焼室3内でのスワール流(水平方向の旋回流)を可変とするためのスワールコントロールバルブ(スワール速度可変機構)66が備えられている(図2参照)。具体的に、上記吸気ポート15aとしては、ノーマルポート及びスワールポートの2系統が各気筒毎に備えられており、そのうち図2に示されているノーマルポート15aに、開度調整可能なバタフライバルブで成るスワールコントロールバルブ66が配置されている。このスワールコントロールバルブ66には図示しないアクチュエータが連繋されており、このアクチュエータの駆動によって調整されるスワールコントロールバルブ66の開度に応じてノーマルポート15aを通過する空気の流量が変更できるようになっている。そして、スワールコントロールバルブ66の開度が大きいほど、ノーマルポート15aから気筒内に吸入される空気量が増加する。このため、スワールポート(図2では図示省略)により発生したスワールは相対的に弱まり、気筒内は低スワール(スワール速度が低い状態)となる。逆に、スワールコントロールバルブ66の開度が小さいほど、ノーマルポート15aから気筒内に吸入される空気量が減少する。このため、スワールポートにより発生したスワールは相対的に強められ、気筒内は高スワール(スワール速度が高い状態)となる。
排気系7は、シリンダヘッド15に形成された上記排気ポート71に接続される排気マニホールド72を備え、この排気マニホールド72に対して、排気通路を構成する排気管73,74が接続されている。また、この排気通路には、NOx吸蔵触媒(NSR触媒:NOx Storage Reduction触媒)75及びDPNR触媒(Diesel Paticulate−NOx Reduction触媒)76を備えたマニバータ(排気浄化装置)77が配設されている。以下、これらNSR触媒75及びDPNR触媒76について説明する。
NSR触媒75は、吸蔵還元型NOx触媒であって、例えばアルミナ(Al23)を担体とし、この担体上に例えばカリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)のようなアルカリ土類、ランタン(La)、イットリウム(Y)のような希土類と、白金(Pt)のような貴金属とが担持された構成となっている。
このNSR触媒75は、排気中に多量の酸素が存在している状態においてはNOxを吸蔵し、排気中の酸素濃度が低く、かつ還元成分(例えば燃料の未燃成分(HC))が多量に存在している状態においてはNOxをNO2若しくはNOに還元して放出する。NO2やNOとして放出されたNOxは、排気中のHCやCOと速やかに反応することによってさらに還元されてN2となる。また、HCやCOは、NO2やNOを還元することで、自身は酸化されてH2OやCO2となる。即ち、NSR触媒75に導入される排気中の酸素濃度やHC成分を適宜調整することにより、排気中のHC、CO、NOxを浄化することができるようになっている。本実施形態のものでは、この排気中の酸素濃度やHC成分の調整を上記燃料添加弁26からの燃料添加動作によって行うことが可能となっている。
一方、DPNR触媒76は、例えば多孔質セラミック構造体にNOx吸蔵還元型触媒を担持させたものであり、排気ガス中のPMは多孔質の壁を通過する際に捕集される。また、排気ガスの空燃比がリーンの場合、排気ガス中のNOxはNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵され、空燃比がリッチになると、吸蔵したNOxは還元・放出される。さらに、DPNR触媒76には、捕集したPMを酸化・燃焼する触媒(例えば白金等の貴金属を主成分とする酸化触媒)が担持されている。
ここで、ディーゼルエンジンの燃焼室3及びその周辺部の構成について、図2を用いて説明する。この図2に示すように、エンジン本体の一部を構成するシリンダブロック11には、各気筒(4気筒)毎に円筒状のシリンダボア12が形成されており、各シリンダボア12の内部にはピストン13が上下方向に摺動可能に収容されている。
ピストン13の頂面13aの上側には上記燃焼室3が形成されている。つまり、この燃焼室3は、シリンダブロック11の上部にガスケット14を介して取り付けられたシリンダヘッド15の下面と、シリンダボア12の内壁面と、ピストン13の頂面13aとにより区画形成されている。そして、ピストン13の頂面13aの略中央部には、キャビティ(凹陥部)13bが凹設されており、このキャビティ13bも燃焼室3の一部を構成している。
尚、このキャビティ13bの形状としては、その中央部分(シリンダ中心線P上)では凹陥寸法が小さく、外周側に向かうに従って凹陥寸法が大きくなっている。つまり、図2に示すようにピストン13が圧縮上死点付近にある際、このキャビティ13bによって形成される燃焼室3としては、中央部分では比較的容積の小さい狭小空間とされ、外周側に向かって次第に空間が拡大される(拡大空間とされる)構成となっている。
上記ピストン13は、コネクティングロッド18の小端部18aがピストンピン13cにより連結されており、このコネクティングロッド18の大端部はエンジン出力軸であるクランクシャフトに連結されている。これにより、シリンダボア12内でのピストン13の往復移動がコネクティングロッド18を介してクランクシャフトに伝達され、このクランクシャフトが回転することでエンジン出力が得られるようになっている。また、燃焼室3に向けてグロープラグ19が配設されている。このグロープラグ19は、エンジン1の始動直前に電流が流されることにより赤熱し、これに燃料噴霧の一部が吹きつけられることで着火・燃焼が促進される始動補助装置として機能する。
上記シリンダヘッド15には、燃焼室3へ空気を導入する上記吸気ポート15aと、燃焼室3から排気ガスを排出する上記排気ポート71とがそれぞれ形成されていると共に、吸気ポート15aを開閉する吸気バルブ16及び排気ポート71を開閉する排気バルブ17が配設されている。これら吸気バルブ16及び排気バルブ17はシリンダ中心線Pを挟んで対向配置されている。つまり、本エンジン1はクロスフロータイプとして構成されている。また、シリンダヘッド15には、燃焼室3の内部へ直接的に燃料を噴射する上記インジェクタ23が取り付けられている。このインジェクタ23は、シリンダ中心線Pに沿う起立姿勢で燃焼室3の略中央上部に配設されており、上記コモンレール22から導入される燃料を燃焼室3に向けて所定のタイミングで噴射するようになっている。
更に、図1に示す如く、このエンジン1には、過給機(ターボチャージャ)5が設けられている。このターボチャージャ5は、タービンシャフト51を介して連結されたタービンホイール52及びコンプレッサホイール53を備えている。コンプレッサホイール53は吸気管64内部に臨んで配置され、タービンホイール52は排気管73内部に臨んで配置されている。このためターボチャージャ5は、タービンホイール52が受ける排気流(排気圧)を利用してコンプレッサホイール53を回転させ、吸気圧を高めるといった所謂過給動作を行うようになっている。本実施形態におけるターボチャージャ5は、可変ノズル式ターボチャージャであって、タービンホイール52側に可変ノズルベーン機構(図示省略)が設けられており、この可変ノズルベーン機構の開度を調整することにより、エンジン1の過給圧を調整することができる。
吸気系6の吸気管64には、ターボチャージャ5での過給によって昇温した吸入空気を強制冷却するためのインタークーラ61が設けられている。
このインタークーラ61よりも更に下流側に設けられた上記スロットルバルブ62は、その開度を無段階に調整することができる電子制御式の開閉弁であり、所定の条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有している。
また、エンジン1には、吸気系6と排気系7とを接続する排気還流通路(EGR通路)8が設けられている。このEGR通路8は、排気の一部を適宜吸気系6に還流させて燃焼室3へ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させるものである。また、このEGR通路8には、電子制御によって無段階に開閉され、同通路を流れる排気流量を自在に調整することができるEGRバルブ81と、EGR通路8を通過(還流)する排気を冷却するためのEGRクーラ82とが設けられている。これらEGR通路8、EGRバルブ81、EGRクーラ82等によってEGR装置(排気還流装置)が構成されている。
−センサ類−
エンジン1の各部位には、各種センサが取り付けられており、それぞれの部位の環境条件や、エンジン1の運転状態に関する信号を出力する。
例えば、上記エアフローメータ43は、吸気系6内のスロットルバルブ62上流において吸入空気の流量(吸入空気量)に応じた検出信号を出力する。吸気温センサ49は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気の温度に応じた検出信号を出力する。吸気圧センサ48は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気圧力に応じた検出信号を出力する。A/F(空燃比)センサ44は、排気系7のマニバータ77の下流において排気中の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する。排気温センサ45は、同じく排気系7のマニバータ77の下流において排気ガスの温度(排気温度)に応じた検出信号を出力する。レール圧センサ41はコモンレール22内に蓄えられている燃料の圧力に応じた検出信号を出力する。スロットル開度センサ42はスロットルバルブ62の開度を検出する。
−ECU−
ECU100は、図3に示すように、CPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104などを備えている。ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリである。バックアップRAM104は、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
以上のCPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104は、バス107を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース105及び出力インターフェース106と接続されている。
入力インターフェース105には、上記レール圧センサ41、スロットル開度センサ42、エアフローメータ43、A/Fセンサ44、排気温センサ45、吸気圧センサ48、吸気温センサ49が接続されている。さらに、この入力インターフェース105には、エンジン1の冷却水温に応じた検出信号を出力する水温センサ46、アクセルペダルの踏み込み量に応じた検出信号を出力するアクセル開度センサ47、エンジン1の出力軸(クランクシャフト)が一定角度回転する毎に検出信号(パルス)を出力するクランクポジションセンサ40、及び、筒内圧力を検出する筒内圧センサ4Aなどが接続されている。
一方、出力インターフェース106には、上記サプライポンプ21、インジェクタ23、燃料添加弁26、スロットルバルブ62、スワールコントロールバルブ66、EGRバルブ81、及び、上記ターボチャージャ5の可変ノズルベーン機構(可変ノズルベーンの開度を調整するアクチュエータ)54も接続されている。
そして、ECU100は、上記した各種センサからの出力、その出力値を利用する演算式により求められた演算値、または、上記ROM102に記憶された各種マップに基づいて、エンジン1の各種制御を実行する。
例えば、ECU100は、インジェクタ23の燃料噴射制御として、パイロット噴射(副噴射)とメイン噴射(主噴射)とを実行する。
上記パイロット噴射は、インジェクタ23からのメイン噴射に先立ち、予め少量の燃料を噴射する動作である。また、このパイロット噴射は、メイン噴射による燃料の着火遅れを抑制し、安定した拡散燃焼に導くための噴射動作であって、副噴射とも呼ばれる。また、本実施形態におけるパイロット噴射は、上述したメイン噴射による初期燃焼速度を抑制する機能ばかりでなく、気筒内温度を高める予熱機能をも有するものとなっている。つまり、このパイロット噴射の実行後、燃料噴射を一旦中断し、メイン噴射が開始されるまでの間に圧縮ガス温度(気筒内温度)を十分に高めて燃料の自着火温度(例えば1000K)に到達させるようにし、これによってメイン噴射で噴射される燃料の着火性を良好に確保するようにしている。
上記メイン噴射は、エンジン1のトルク発生のための噴射動作(トルク発生用燃料の供給動作)である。このメイン噴射での噴射量は、基本的には、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態に応じ、要求トルクが得られるように決定される。例えば、エンジン回転数(クランクポジションセンサ40の検出値に基づいて算出されるエンジン回転数)が高いほど、また、アクセル操作量(アクセル開度センサ47により検出されるアクセルペダルの踏み込み量)が大きいほど(アクセル開度が大きいほど)エンジン1のトルク要求値としては高く得られ、それに応じてメイン噴射での燃料噴射量としても多く設定されることになる。また、上記パイロット噴射によって気筒内の予熱が十分に行われている場合には、メイン噴射で噴射された燃料は、直ちに自着火温度以上の温度環境下に晒されて熱分解が進み、噴射後は直ちに燃焼が開始されることになる。
尚、上述したパイロット噴射及びメイン噴射の他に、アフタ噴射やポスト噴射が必要に応じて行われる。アフタ噴射は、排気ガス温度を上昇させるための噴射動作である。具体的には、供給された燃料の燃焼エネルギがエンジン1のトルクに変換されることなく、その大部分が排気の熱エネルギとして得られるタイミングでアフタ噴射は実行される。また、ポスト噴射は、排気系7に燃料を直接的に導入して上記マニバータ77の昇温を図るための噴射動作である。例えば、DPNR触媒76に捕集されているPMの堆積量が所定量を超えた場合(例えばマニバータ77の前後の差圧を検出することにより検知)、ポスト噴射が実行されるようになっている。
また、ECU100は、エンジン1の運転状態に応じてEGRバルブ81の開度を制御し、吸気マニホールド63に向けての排気還流量(EGR量)を調整する。このEGR量は、上記ROM102に予め記憶されたEGRマップに従って設定される。具体的に、このEGRマップは、エンジン回転数及びエンジン負荷をパラメータとしてEGR量(EGR率)を決定するためのマップである。尚、このEGRマップは、予め実験やシミュレーション等によって作成されたものとなっている。つまり、上記クランクポジションセンサ40の検出値に基づいて算出されたエンジン回転数及びスロットル開度センサ42によって検出されたスロットルバルブ62の開度(エンジン負荷に相当)とをEGRマップに当て嵌めることでEGR量(EGRバルブ81の開度)が得られるようになっている。
更に、ECU100は、上記スワールコントロールバルブ66の開度制御を実行する。このスワールコントロールバルブ66の開度制御としては、燃焼室3内に噴射された燃料の噴霧の単位時間当たり(または単位クランク回転角度当たり)における気筒内の周方向の移動量を変更するように行われる。
−燃料噴射圧−
燃料噴射を実行する際の燃料噴射圧は、コモンレール22の内圧により決定される。このコモンレール内圧として、一般に、コモンレール22からインジェクタ23へ供給される燃料圧力の目標値、即ち目標レール圧は、エンジン負荷(機関負荷)が高くなるほど、及び、エンジン回転数(機関回転数)が高くなるほど高いものとされる。即ち、エンジン負荷が高い場合には燃焼室3内に吸入される空気量が多いため、インジェクタ23から燃焼室3内に向けて多量の燃料を噴射しなければならず、よってインジェクタ23からの噴射圧力を高いものとする必要がある。また、エンジン回転数が高い場合には噴射可能な期間が短いため、単位時間当たりに噴射される燃料量を多くしなければならず、よってインジェクタ23からの噴射圧力を高いものとする必要がある。このように、目標レール圧は一般にエンジン負荷及びエンジン回転数に基づいて設定される。尚、この目標レール圧は例えば上記ROM102に記憶された燃圧設定マップに従って設定される。つまり、この燃圧設定マップに従って燃料圧力を決定することで、インジェクタ23の開弁期間(噴射率波形)が制御され、その開弁期間中における燃料噴射量を規定することが可能になる。
尚、本実施形態では、エンジン負荷等に応じて燃料圧力が30MPa〜200MPaの間で調整されるようになっている。
上記パイロット噴射やメイン噴射などの燃料噴射パラメータについて、その最適値はエンジン1や吸入空気等の温度条件によって異なるものとなる。
例えば、上記ECU100は、コモンレール圧がエンジン運転状態に基づいて設定される目標レール圧と等しくなるように、即ち燃料噴射圧が目標噴射圧と一致するように、サプライポンプ21の燃料吐出量を調量する。また、ECU100はエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量及び燃料噴射形態を決定する。具体的には、ECU100は、クランクポジションセンサ40の検出値に基づいてエンジン回転速度を算出するとともに、アクセル開度センサ47の検出値に基づいてアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を求め、このエンジン回転速度及びアクセル開度に基づいて総燃料噴射量(パイロット噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和)を決定する。
−燃焼形態の概略説明−
次に、本実施形態に係るエンジン1における燃焼室3内での燃焼形態の概略について説明する。
図4は、エンジン1の一つの気筒に対して吸気マニホールド63及び吸気ポート15aを経てガス(空気)が吸入され、燃焼室3内へインジェクタ23からの燃料噴射によって燃焼が行われると共に、その燃焼後のガスが排気ポート71を経て排気マニホールド72へ排出される様子を模式的に示した図である。
この図4に示すように、気筒内に吸入されるガスには、吸気管64からスロットルバルブ62を介して吸入された新気と、上記EGRバルブ81が開弁された場合にEGR通路8から吸入されるEGRガスとが含まれる。吸入される新気量(質量)と吸入されるEGRガス量(質量)との和に対するEGRガス量の割合(即ち、EGR率)は、運転状態に応じて上記ECU100により適宜制御されるEGRバルブ81の開度に応じて変化する。
このようにして気筒内に吸入された新気及びEGRガスは、吸気行程において開弁している吸気バルブ16を介し、ピストン13(図4では図示省略)の下降に伴って気筒内に吸入されて筒内ガスとなる。この筒内ガスは、エンジン1の運転状態に応じて決定されるバルブ閉弁時にて吸気バルブ16が閉弁することにより筒内に密閉され(筒内ガスの閉じ込め状態)、その後の圧縮行程においてピストン13の上昇に伴って圧縮される。そして、ピストン13が上死点近傍に達すると、上述したECU100による噴射量制御によって所定時間だけインジェクタ23が開弁されることで燃料を燃焼室3内に直接噴射する。具体的には、ピストン13が上死点に達する前に上記パイロット噴射が実行され、燃料噴射が一旦停止された後、所定のインターバルを経て、ピストン13が上死点近傍に達した時点で上記メイン噴射が実行されることになる。
図5は、この燃料噴射時における燃焼室3及びその周辺部を示す断面図であり、図6は、この燃料噴射時における燃焼室3の平面図(ピストン13の上面を示す図)である。図6に示すように、本実施形態に係るエンジン1のインジェクタ23には、周方向に亘って等間隔に8個の噴孔が設けられており、これら噴孔からそれぞれ均等に燃料が噴射されるようになっている。尚、この噴孔数としては8個に限るものではない。
そして、この各噴孔から噴射された燃料の噴霧A,A,…は略円錐状に拡散していく。また、各噴孔からの燃料噴射(上記パイロット噴射やメイン噴射)は、ピストン13が圧縮上死点近傍に達した時点で行われるため、図5に示すように、各燃料の噴霧A,A,…は上記キャビティ13b内で拡散していくことになる。
このように、インジェクタ23に形成されている各噴孔から噴射された燃料の噴霧A,A,…は、時間の経過に伴って筒内ガスと混ざり合いながら混合気となって筒内においてそれぞれ円錐状に拡散していき、自己着火によって燃焼する。つまり、この各燃料の噴霧A,A,…は、それぞれ筒内ガスと共に略円錐状の燃焼場を形成し、その燃焼場(本実施形態では8箇所の燃焼場)でそれぞれ燃焼が開始されることになる。
そして、この燃焼により発生したエネルギは、ピストン13を下死点に向かって押し下げるための運動エネルギ(エンジン出力となるエネルギ)、燃焼室3内を温度上昇させる熱エネルギ、シリンダブロック11やシリンダヘッド15を経て外部(例えば冷却水)に放熱される熱エネルギとなる。
そして、燃焼後の筒内ガスは、排気行程において開弁する排気バルブ17を介し、ピストン13の上昇に伴って排気ポート71及び排気マニホールド72へ排出されて排ガスとなる。
−NOx排出量目標値の設定動作−
次に、本実施形態の特徴とする動作であるNOx排出量目標値の設定動作について説明する。このNOx排出量目標値の設定動作は、エンジン1の設計初期段階で行われるものであって、所定の車両走行モード(例えば欧州のテストモードであるECモード)に応じた車両走行シミュレーションを行った場合に、エンジン1の各運転動作点(エンジン回転数及びトルク(負荷)により規定される各運転動作点;格子点)における排気変化感度(NOx排出量変化感度;車両の加減速が行われた際のNOxの排出し易さ、言い換えると、エンジン1の運転状態が定常運転状態から変化する際におけるNOx排出量に対する影響度合い)を考慮して、各運転動作点におけるNOx排出量目標値(NOx排出量の制限値となる目標値;制御マップ上の制御目標値)を設定するものとなっている。つまり、エンジン1の具体的設計(各種構成部品の設計)を行う前段階で、エンジン1の各運転動作点における目標値であるNOx排出量目標値を、このNOx排出量目標値設定動作によって設定しておく。そして、その後に、定常運転状態において(車両の加減速が行われる前段階において)そのNOx排出量目標値が達成されるようなエンジン1を設計するための設計指針としてNOx排出量目標値が利用されることになる
尚、上述したようにエンジン1の各運転動作点毎にNOx排出量変化感度が異なる理由としては、加速時や減速時には筒内での燃料燃焼状態が時々刻々と変化し、その変化状態が各運転動作点毎に異なっていることが挙げられる。
NOx排出量目標値の設定動作の手順としては、図7に示すように、「定常要求出力Pc(t)」の算出ステップ(ステップST1)、「要求車両加速度a(t)」の算出ステップ(ステップST2)、「総要求出力Pv(t)」の算出ステップ(ステップST3)、「走行加減速状態指標St(t)」の算出ステップ(ステップST4)、「加減速排気変化係数Ctd」の算出ステップ(ステップST5)、「基本平均排気目標値Eet(t)」の算出ステップ(ステップST6)、「定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe)」の算出ステップ(ステップST7)が順に行われる。以下、各ステップについて順に説明する。
<定常要求出力Pc(t)の算出ステップ>
この定常要求出力Pc(t)は、上記所定の車両走行モード(車両走行パターン)に応じて車両を走行させた際(走行シミュレーションにより走行させた際)に、車両走行状態が定常走行状態(エンジン回転数及びエンジン負荷を略一定に維持した状態での運転)であると仮定した場合に、現在の車速を維持するために必要となる(エンジン1に対して要求される)エンジン出力(本発明でいう「内燃機関が定常運転状態にある場合に要求される出力である定常要求出力」)に相当する。
図8を用いて具体的に説明する。この図8は、エンジン1の運転状態変化時における運転動作点の変化を説明するための図である。図中の曲線R/Lは、変速機の所定変速段(例えば第3速段)における走行負荷抵抗(「Road Load」と呼ばれる)であり、この曲線R/L上でのエンジン運転状態にあっては、エンジン出力は走行負荷抵抗と釣り合っており、車両は現在の車速を維持することになる。例えば、図中の運転動作点Eaでは、エンジン回転数がNEaでありエンジントルクがTaとなって、車両は現在の車速(エンジン回転数、変速機の変速比、デファレンシャルギヤのギヤ比、タイヤの半径によって定まる車速)を維持した状態となる。
尚、上記走行負荷抵抗R/Lは、路面抵抗、車両の空力特性、車両重量及び各部のフリクションロスによって車速毎に一義的に定まる。上述した如く車速は、エンジン回転数、変速機の変速比(変速段)及びデファレンシャルギヤのギヤ比(最終減速比)並びにタイヤの半径に基づいて定まるため、定常走行状態において、ある車速をある変速比で得るためのエンジン出力は、上述した各種要素に応じて予め決定される。
また、車両の走行負荷抵抗R/Lは、車速の関数(二次関数)で表される。ある時間tにおける車両の走行負荷抵抗RL(t)は以下の式(1)となる。
RL(t)=αv2+βv+γ …(1)
上記vは車速〔m/s〕であり、α,β,γは各項の係数である。
また、ある時間tにおける時間間隔Δt〔sec〕における定常要求出力Pc(t)〔Ws〕は、走行負荷抵抗及び車速によって定められ、以下の式(2)により算出される。
c(t)=RL・v・Δt …(2)
RLは走行負荷抵抗である。
このように、定常要求出力Pc(t)は、車両の走行負荷抵抗PL及び車速vによって決まるため、車両を所定の走行モードで走行させると仮定した場合には、上記定常要求出力Pc(t)は車両の種類毎に車速に応じて一律の値として得られることになる。例えば、図8における運転動作点Ea(定常走行状態での運転動作点)にあっては、定常要求出力Pc(t)は図中のPc−aとなる。
尚、上記所定の走行モードとしては、種々のものが挙げられる。例えば、上述した欧州のテストモードであるECモードの他に、10・15モード、JC08モード、ディーゼル13モード、米国LA−4モード等がある。これら走行モードは任意のもの(例えば車両が対象とする販売国で規定されているテストモード)が採用可能である。
<要求車両加速度a(t)の算出ステップ>
上述した走行モードで車両を走行させる場合、その車両走行条件は時間に対する車速の変化として与えられる。そして、この走行モードにおいて車両を加速(減速の場合には負の加速)させる走行パターンにあっては上記車速から加速度(減速の場合には負の加速度)を求めることができる。つまり、ある時間tでの時間間隔Δt〔sec〕における平均加速度を、車速を利用して要求車両加速度a(t)〔m/s2〕として算出できる。この要求車両加速度a(t)(本発明でいう「車両が加速または減速する際に要求される加速度である要求車両加速度」に相当)は車速を時間微分する以下の式(3)により算出される。
a(t)=dv/dt=Δv/Δt …(3)
ΔvはΔt期間での車速の変化量である。
<総要求出力Pv(t)の算出ステップ>
総要求出力Pv(t)は、上記所定の車両走行モードに応じて車両を走行させた場合に、車両加速要求などに応じてエンジン1に要求される出力である。つまり、現在の車速を維持するための上記定常要求出力Pc(t)と加速に要する出力(減速の場合には負の出力)との総和として総要求出力Pv(t)は求められる。このため、走行モードにおける車両の加速時には、エンジン1に対する総要求出力Pv(t)は上記定常走行状態での要求出力(定常要求出力Pc(t))よりも大きくなる。逆に、車両の減速時には、エンジン1に対する総要求出力Pv(t)は上記定常走行状態での要求出力よりも小さくなる。
この総要求出力Pv(t)〔Ws〕は、上記要求車両加速度a(t)や車両総重量等の車両諸元から算出できる。具体的には、以下の式(4)により算出される。
v(t)=Mv・a・v・Δt …(4)
上記Mvは車両総重量〔kg〕であり、aは時間間隔Δtでの車両加速度〔m/s2〕であって上記式(3)により算出される。
例えば、エンジン1の運転状態が、図8における運転動作点Ebにある場合(加速要求時)には、エンジン回転数がNEaでありエンジントルクがTbとなって、総要求出力Pv(t)は図中のPv−bとなり、上記エンジン回転数がNEaの場合における定常要求出力Pc−aよりも大きくなる。
<走行加減速状態指標St(t)の算出ステップ>
以上のようにして算出された定常要求出力Pc(t)及び総要求出力Pv(t)から加減速要求出力Pt(t)を算出し、この加減速要求出力Pt(t)を利用して走行加減速状態指標St(t)(本発明でいう「総要求出力と定常要求出力との偏差に基づく走行加減速状態指標」に相当)を求める。
具体的に、上記加減速要求出力Pt(t)は、加減速要求(車両の加速要求または減速要求)分に相当する出力であって、上記総要求出力Pv(t)から定常要求出力Pc(t)を減算することにより求められる。つまり、以下の式(5)により算出される。
t(t)=Pv(t)−Pc(t) …(5)
例えば、エンジン1の運転状態が、図8における運転動作点Ebにある場合には、加減速要求出力Pt(t)は図中のPt−bとなる。
このようにして算出された加減速要求出力Pt(t)を利用して走行加減速状態指標St(t)を求める。この走行加減速状態指標St(t)の求め方としては以下の2つが挙げられる。
先ず、上記加減速要求出力Pt(t)をそのまま走行加減速状態指標St(t)とするものである(以下の式(6)を参照)。
t(t)=Pt(t) …(6)
この場合、エンジン1の定常運転時には、加減速要求出力Pt(t)が「0」であるため、走行加減速状態指標St(t)も「0」として算出され、加速要求時には、加減速要求出力Pt(t)が「正の値」であるため、走行加減速状態指標St(t)も「正の値」として算出され、減速時には、加減速要求出力Pt(t)が「負の値」であるため、走行加減速状態指標St(t)も「負の値」として算出されることになる。
一方、定常要求出力Pc(t)に対する総要求出力Pv(t)の比として走行加減速状態指標St(t)を算出するようにしてもよい(以下の式(7)を参照)。
t(t)=Pv(t)/Pc(t) …(7)
この場合、エンジン1の定常運転時には、総要求出力Pv(t)は定常要求出力Pc(t)に等しいため、走行加減速状態指標St(t)は「1」として算出され、加速要求時には、総要求出力Pv(t)が定常要求出力Pc(t)に対して大きいため、走行加減速状態指標St(t)は「1よりも大きな値」として算出され、減速時には、総要求出力Pv(t)が定常要求出力Pc(t)に対して小さいため、走行加減速状態指標St(t)は「1よりも小さな値」として算出されることになる。
<加減速排気変化係数Ctdの算出ステップ>
上述の如く求められた走行加減速状態指標St(t)から加減速排気変化係数Ctd(本発明でいう「車両が加速または減速する際におけるNOx排出量に対する影響度合いを表す係数である加減速排気変化係数」に相当)を求める。この加減速排気変化係数Ctdは、エンジン1の運転動作点に応じたNOx排出量変化感度を示す値であり、この値が大きいほど、エンジン1の運転状態として定常運転状態から加速運転状態に移った際のNOx排出量が多くなりやすい状態であることを示すものである。
具体的には、図9や図10に示す加減速排気変化係数マップに従って加減速排気変化係数Ctdを求める。この加減速排気変化係数マップは、走行加減速状態指標St(t)と加減速排気変化係数Ctdとの関係を規定している。図9に示すものは、走行加減速状態指標St(t)を加減速要求出力Pt(t)とした場合に採用される加減速排気変化係数マップであり、図10に示すものは、定常要求出力Pc(t)に対する総要求出力Pv(t)の比として走行加減速状態指標St(t)を求めた場合に採用される加減速排気変化係数マップである。
図9に示す加減速排気変化係数マップにあっては、走行加減速状態指標St(t)が「0」の場合には加減速排気変化係数Ctdとしては「0」に設定される。そして、走行加減速状態指標St(t)が正の値である場合には、その値が大きいほど加減速排気変化係数Ctdとしても正の値で大きな値に設定される。逆に、走行加減速状態指標St(t)が負の値である場合には、その値が小さいほど加減速排気変化係数Ctdとしても負の値で小さな値に設定される。この図9に示すものでは、走行加減速状態指標St(t)の変化に対する加減速排気変化係数Ctdの変化としては二次関数(走行加減速状態指標St(t)の二乗に加減速排気変化係数Ctdが比例する)で与えられている。これに限らず、走行加減速状態指標St(t)に対して加減速排気変化係数Ctdが正比例するものであってもよい。
図10に示す加減速排気変化係数マップにあっては、走行加減速状態指標St(t)が「1」の場合には加減速排気変化係数Ctdとしては「0」に設定される。そして、走行加減速状態指標St(t)が「1」よりも大きいほど加減速排気変化係数Ctdとしては正の値で大きな値に設定される。逆に、走行加減速状態指標St(t)が「1」よりも小さいほど加減速排気変化係数Ctdとしては負の値で小さな値に設定される。この図10に示すものでも、走行加減速状態指標St(t)の変化に対する加減速排気変化係数Ctdの変化としては二次関数で与えられている。これに限らず、走行加減速状態指標St(t)に対して加減速排気変化係数Ctdが正比例するものであってもよい。
これら図9や図10に示した加減速排気変化係数マップは、過去の車両走行パターンでのエンジン運転状態の変化とNOx排出量の変化感度との関係を表したデータベース等を利用して作成される。または、過去の車両走行パターンでのエンジン運転状態の変化とNOx排出量の変化感度との経験則に基づいて作成するようにしてもよい。
<基本平均排気目標値Eet(t)の算出ステップ>
基本平均排気目標値Eet(t)は、上記走行モードで規定されている走行パターンの全走行距離を走行させた場合における単位出力当たりのNOx排出量の平均値を表すものであり、上記全走行距離を走行させた場合のNOx総排出量を、全走行距離を走行させた場合の全走行総出力により除算することにより求められる。この基本平均排気目標値Eet(t)が、「内燃機関の所定の運転状態におけるNOx排出量の平均値がNOx排出量規制値を満たす基本制御目標値」に相当する。以下、具体的に説明する。
先ず、下記の式(8)によって全走行距離を走行させた場合における全走行総出力Pa(t)〔Ws〕を算出する。
Figure 0005817342
ここで、Tは上記走行モードでの走行時間〔sec〕である。
このようにして全走行総出力Pa(t)を算出した後、下記の式(9)によって基本平均排気目標値Eet(t)〔g/kWh〕を算出する。
et(t)=(Evt×L)/(Pa(t)/1000/3600) …(9)
上記Evtは単位走行距離当たりにおける排気排出目標値(NOxの排出目標値;g/km)であって予め設定されたNOx排出量規制値に従って設定される。また、Lは上記走行モードでの全走行距離〔km〕である。
これにより、規制により与えられたNOxの排出目標値(NOx排出規制値以下の目標値)を実現するための単位出力当たりにおけるNOx排出量〔g/kWh〕の平均値が基本平均排気目標値Eet(t)として算出されることになる。つまり、上記車両走行パターンの全走行距離を走行させた場合における単位出力当たりにおけるNOx排出量の平均値が、この基本平均排気目標値Eet(t)を満たすようにエンジン設計を行えば、そのエンジンはNOx排出量規制を満たすことになる。
<定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe)の算出ステップ>
この定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe)は、上記ECU100のROM102に記憶される制御マップ(定常運転状態を対象とした制御マップ)の各格子点(運転動作点;エンジン回転数及びトルクにより規定される運転動作点)毎の設定値であるNOx排出量目標値を規定するものである。そして、この定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe)の算出ステップでは、算出された上記基本平均排気目標値Eet(t)に対し、各運転動作点に応じた上記NOx排出量の変化感度を表す値である上記加減速排気変化係数Ctdによる補正を行うことによって各運転動作点におけるNOx排出量目標値を算出する。以下、具体的に説明する。
車両の加速要求時にはNOx排出量が増加することになるため、上記加減速排気変化係数Ctdを利用して、上記基本平均排気目標値Eetを補正し、これにより、対象とする運転動作点でのNOx排出量目標値Eeti(t)〔g/kWh〕を算出する。つまり、定常運転状態から加速要求運転状態に移行した際のNOx排出量の増加を見越して、この定常運転状態でのNOx排出量を制限するように、上記NOx排出量目標値を算出することになる。具体的には、以下の式(10)によって算出する。
eti(t)=Eet/(1+Ctd(t)) …(10)
このようにして、NOx排出量目標値Eeti(t)は、加減速排気変化係数Ctdが大きいほど小さな値として算出されることになる。そして、このNOx排出量目標値Eeti(t)は、対象とする運転動作点から車両の加速要求が生じた場合であっても、その際(過渡時)のNOx排出量が規制値以下となるためのNOx排出量目標値として得られる。
そして、このようにして求められたNOx排出量目標値Eeti(t)が適用される運転動作点(エンジン回転数Ne及びトルクTqe)は以下の算出式により求められる。
エンジン回転数Ne〔rpm〕は、時間tでの車速v〔m/sec〕、総ギヤ比gr、タイヤの半径R〔m〕から以下の式(11)により算出される。ここで、上記総ギヤ比grは、変速機の変速比とデファレンシャルギヤのギヤ比との積である。
Ne=v・gr・60/(2πR) …(11)
このエンジン回転数Ne〔rpm〕と総出力Pa〔Ws〕より、エンジン1に対する要求軸トルクTqe〔Nm〕は以下の式(12)により算出される。
qe=Pa/(Ne・2π/60) …(12)
このようにして、上記式(10)で算出されたNOx排出量目標値Eeti(t)が適用される運転動作点(エンジン回転数Ne及びトルクTqe)が求められることにより、その運転動作点における排気目標値は以下の式(13)で与えられることになる。
etmap(Ne,Tqe)=Eeti(t) …(13)
以上の動作を、所定の車両走行モードに応じた車両走行シミュレーションを行いながら所定時間毎または所定走行距離毎に実行していき、複数の運転動作点それぞれにおける排気目標値(定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe))を算出していく。これにより、定常運転状態における各運転動作点それぞれに対して排気目標値が設定された制御用マップが得られることになる。そして、この制御用マップにおいて設定されている定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe)は、対象とする運転動作点からの加速要求が生じたとしても、NOx排出量が規制値を超えることのない値として取得されていることになる。
このようにして走行モードに応じたエンジン1の運転状態変化を考慮した(運転動作点に応じたNOx排出量の変化感度を考慮した)排気目標値(NOx排出量目標値Eeti(t))を規定したことにより、エンジン1の開発初期段階における初期の設計諸元や規制要求値からエンジンの種類や過渡の動作状態を考慮して適正な目標値の設定が可能となり、実機完成時の実機を用いた適合時における工数を大幅に削減することができ、適合時間の大幅な短縮化を図ることができる。また、実機完成前に各種エンジンモデルを用いたシミュレーションの目標値としても有効に活用することができることになる。
また、上述したNOx排出量目標値の設定動作の一連の手順を自動化した場合には、各運転動作点におけるNOx排出量目標値の自動設定が可能になる。
−エンジン制御動作−
次に、上述したNOx排出量目標値の設定動作によってNOx排出量目標値が設定された場合において、実際の車両走行時に行われるエンジン1の制御動作について説明する。つまり、上記定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe)を利用したエンジン1の制御動作について説明する。
このエンジン制御動作の手順としては、図11に示すように、「ドライバの要求出力Pd」の算出ステップ(ステップST11)、「定常要求出力Pc」の算出ステップ(ステップST12)、「走行加減速状態指標St」の算出ステップ(ステップST13)、「加減速動作点排気目標値Etrg」の算出ステップ(ステップST14)、「制御目標状態量CPtrg」の算出ステップ(ステップST15)、「フィードバック制御」の実行(ステップST16)が順に行われる。以下、各ステップについて順に説明する。
<ドライバの要求出力Pdの算出ステップ>
先ず、実際の車両走行時における現在のエンジン回転数Ne及び要求トルクTqbからドライバの要求出力Pd(kWh〕を算出する。
具体的には、先ず、上述した式(11)により現在のエンジン回転数Ne〔rpm〕を算出する。また、上記クランクポジションセンサ40の検出値に基づいてエンジン回転数を算出するようにしてもよい。
また、ドライバの要求トルクTqb〔Nm〕の算出ステップとしては、上記アクセル開度センサ47の出力信号により検出されるアクセル開度と現在のエンジン回転数とから要求トルクを求めるか、または、現在の燃料噴射量から要求トルクを求める。この燃料噴射量としては、ディーゼルエンジンの場合、予め作成された燃料噴射量マップまたは燃料噴射量演算式を利用し、上記アクセル開度及び現在のエンジン回転数に応じて求められる。尚、ガソリンエンジンの場合には、現在の吸入空気量から要求トルクを求める。この吸入空気量としては、上記アクセル開度と現在のエンジン回転数に応じて調整されることになる。
このようにして求められたエンジン回転数Ne及び要求トルクTqbから以下の式(14)を用いてドライバの要求出力Pd〔Ws〕を算出する。
d=Tqb・(Ne・2π/60) …(14)
<定常要求出力Pcの算出ステップ>
現在の車両走行状態における定常要求出力Pcを、上述した定常要求出力Pc(t)の算出ステップにおける式(1)及び式(2)を用いて求める。
<走行加減速状態指標Stの算出ステップ>
上述した走行加減速状態指標St(t)の算出ステップと同様に、上記式(5)により加減速要求出力Pt(t)を求め、式(6)または式(7)により走行加減速状態指標Stを算出する。
<加減速動作点排気目標値Etrgの算出ステップ>
上述の如く算出された走行加減速状態指標St(t)を用い、上記加減速排気変化係数Ctdの算出ステップと同様にして加減速排気変化係数Ctdを算出する。
一方、上述したNOx排出量目標値の設定動作において求められた各運転動作点毎の定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe)のうち、現在の車両走行状態(現在の運転動作点)に対応する定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe)を制御マップから読み込み、これを定常動作点排気目標値Eetcとして設定する(下記の式(15)を参照)。
etc=Eetmap(Ne,Tqe) …(15)
そして、この定常動作点排気目標値Eetcを現在の加減速排気変化係数Ctdによって補正し、これにより、現在の加減速動作点排気目標値Etrgを算出する。具体的には、以下の式(16)によって算出する。
trg=Eetc×(1+Ctd) …(16)
この式(16)では加減速排気変化係数Ctdが大きいほど加減速動作点排気目標値Etrgとしては大きな値が算出されることになる。つまり、上述したNOx排出量目標値の設定動作において求められた定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe)は、エンジン1が定常運転状態から加速運転状態に移行した場合であってもNOx排出量が規制値を超えることのない値として設定されているため、この定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe)に従って設定されている定常動作点排気目標値Eetcに対して上記加減速排気変化係数Ctdによる補正(過渡運転に移行したことで増量されるNOx排出量を求めるための補正)を行うことで、過渡運転状態に移行した際に、実際のNOx排出量が上記式(16)によって算出されることになる。尚、実際の車両走行状態が上記走行モードにおいて規定されている加速パターン以下の加速度であった場合には、ここで算出される加減速動作点排気目標値Etrgとしては、NOx排出量規制値を超えることのない値として求められることになる。
<制御目標状態量CPtrgの算出ステップ>
このようにして現在の加減速動作点排気目標値Etrgが算出された後、予め規定されている制御目標状態量CPtrgと排気目標値との関係から制御目標状態量CPtrgを算出する(以下の式(17)を参照)。
CPtrg=func(Etrg,Disp,…) …(17)
ここで、Dispは排気量である。また、この式(17)における変数(パラメータ)としては、加減速動作点排気目標値Etrg及び排気量Dispに限らず、燃焼に影響を与える各種の設計諸元が適用可能である。
図12は、制御目標状態量CPtrgを筒内の酸素濃度とした場合に、加減速動作点排気目標値EtrgであるNOx排出量から制御目標状態量CPtrgである酸素濃度を求めるための制御目標状態量マップを示す図である。このマップにより、上記式(16)によって求められた加減速動作点排気目標値Etrgから制御目標状態量CPtrgとしての筒内酸素濃度が求められることになる。具体的に、図12において、加減速動作点排気目標値EtrgであるNOx排出量がYであった場合には、制御目標状態量CPtrgである酸素濃度はXとして求められることになる。そして、この求められた筒内酸素濃度に従って、上記EGR率が算出され、この算出されたEGR率が目標EGR率として設定されることになる。
<フィードバック制御>
上述の如く算出された制御目標状態量CPtrgと現在の制御目標状態量CPtrgと比較し、その差分だけ制御パラメータの補正が行われて現在の制御目標状態量CPtrgが達成されるようにフィードバック制御が行われる。上述した如く制御目標状態量CPtrgが筒内酸素濃度であった場合には、上記目標EGR率が達成されるように(現在のEGR率に対する目標EGR率の差分に応じて)EGRバルブ81の開度がフィードバック制御されることになる。
以上の動作がエンジン1の運転中に繰り返して実行される。このため、エンジン1が定常運転状態にある場合には、上記制御用マップにおいて設定されている定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe)をNOx排出量目標値として筒内の酸素濃度が制御される。また、この定常運転状態から過渡運転状態に移行した際には、上述した如く、その加速度が上記走行モードでの加速パターン以下であった場合には、この加速途中でのNOx排出量は規制値を超えることのないものとなる。
以上のようにして、定常動作点排気目標値Eetmap(Ne,Tqe)を利用したエンジンの制御動作が行われることにより、規制等で規定された過渡運転状態を実際の走行状態の目標状態を如何なる走行状態であっても排気目標値として反映することができ、環境への影響を最小化することが可能になる。また、制御状態量目標(NOx排出量目標値)は、現象に基づき設計諸元をパラメータ化した変換手段で、車両企画毎に変化する排気目標に対し、設計諸元や規制値の情報のみで適合定数を変化することなく目標の排気目標へ制御可能となり、多種多様なニーズに対して対応が可能である。
−他の実施形態−
以上説明した実施形態は、自動車に搭載される直列4気筒ディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明は、自動車用に限らず、その他の用途に使用されるエンジンにも適用可能である。また、気筒数やエンジン形式(直列型エンジン、V型エンジン、水平対向型エンジン等の別)についても特に限定されるものではない。
また、上述したエンジン制御動作では、制御目標状態量CPtrgを筒内酸素濃度とし、EGR率を制御パラメータとした場合について説明した。本発明はこれに限るものではなく、例えばインジェクタ23からの燃料噴射量やターボチャージャ5の過給特性を変更するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、通電期間においてのみ全開の開弁状態となることにより燃料噴射率を変更するピエゾインジェクタ23を適用したエンジン1について説明したが、本発明は、可変噴射率インジェクタを適用したエンジンへの適用も可能である。
加えて、上記実施形態では、マニバータ77として、NSR触媒75及びDPNR触媒76を備えたものとしたが、NSR触媒75及びDPF(Diesel Paticulate Filter)を備えたものとしてもよい。
本発明は、自動車に搭載されるコモンレール式筒内直噴型多気筒ディーゼルエンジンの設計初期段階における各運転動作点毎のNOx排出量目標値の設定手法に適用可能である。
1 エンジン(内燃機関)
81 EGRバルブ
100 ECU
c(t) 定常要求出力
a(t) 要求車両加速度
v(t) 総要求出力
t(t) 走行加減速状態指標
t(t) 加減速要求出力
td 加減速排気変化係数
et(t) 基本平均排気目標値
eti(t) NOx排出量目標値
etmap(Ne,Tqe) 定常動作点排気目標値
d ドライバの要求出力
trg 加減速動作点排気目標値
etc 定常動作点排気目標値
CPtrg 制御目標状態量

Claims (2)

  1. 内燃機関に対する規制または要求に応じたNOx排出量の目標値を設定する制御目標値設定方法であって、
    上記内燃機関が搭載された車両を、予め規定された車両走行テストモードに応じて走行させた場合において、上記内燃機関が定常運転状態にある場合に要求される出力である定常要求出力を算出するステップ、
    上記車両走行テストモードに応じて車両を走行させた場合において、車両が加速または減速する際に要求される加速度である要求車両加速度を算出するステップ、
    上記車両走行テストモードに応じて車両を走行させた場合において、上記定常要求出力と加速に要する出力との総和である総要求出力を算出するステップ、
    上記総要求出力と上記定常要求出力との偏差に基づく値であって、上記定常要求出力に対して上記総要求出力が大きく且つその差が大きいほど大きな値として算出される走行加減速状態指標を算出するステップ、
    上記走行加減速状態指標と、上記車両が加速または減速する際におけるNOx排出量に対する影響度合いを表す係数である加減速排気変化係数との関係を表す加減速排気変化係数マップに従って、上記走行加減速状態指標が大きいほど大きな値として算出される加減速排気変化係数を算出するステップ、
    上記車両走行テストモードで規定されている走行パターンの全走行距離を走行させた場合における単位出力当たりのNOx排出量の平均値であって、この全走行距離を走行させた場合のNOx総排出量を、この全走行距離を走行させた場合の全走行総出力により除算した値が、NOx排出量規制値を満たすように算出される基本平均排気目標値を算出するステップ、
    以下の式(10)
    eti (t)=E et /(1+C td (t)) …(10)
    eti (t):運転動作点でのNOx排出量目標値
    et (t):基本平均排気目標値
    td :加減速排気変化係数
    によって上記基本平均排気目標値を上記加減速排気変化係数により補正して、上記内燃機関の定常運転時における所定の運転動作点でのNOx排出量目標値を算出すると共に、
    以下の式(13)
    etmap (Ne,T qe )=E eti (t) …(13)
    etmap (Ne,T qe ):定常動作点排気目標値
    Ne:運転動作点での内燃機関の回転数
    qe :運転動作点での内燃機関のトルク
    によって上記NOx排出量目標値である定常動作点排気目標値を、その定常運転での運転動作点における制御目標値として算出するステップを順に行うことを特徴とする内燃機関の制御目標値設定方法。
  2. 請求項1記載の内燃機関の制御目標値設定方法によって設定された定常動作点排気目標値を、上記運転動作点における定常運転状態でのNOx排出量目標値としてEGR率を制御する構成とされていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
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