JP5816879B2 - 磁気式ジャイロ - Google Patents
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Description
勿論いかなる手段で算出しても回転角速度の算出時間を0とすることは不可能であることから、応答遅れ時間を0とするのは困難である。しかし、計算方法の工夫により、遅れ時間を短縮することは可能と考えられる。
該3軸磁気センサによって時系列的に検出される上記磁気ベクトルのデータを検出時の時刻データと共に蓄積するメモリと、
該メモリに蓄積された上記磁気ベクトルのデータに基づいて、上記被測定体の回転運動の基準とする回転軸を決定する回転軸決定手段と、
上記メモリに蓄積された上記磁気ベクトルのデータと上記時刻データとに基づいて、上記回転運動の回転角速度を算出する回転角速度算出手段と、
該回転角速度算出手段によって算出した上記回転角速度を出力する回転角速度出力手段とを有し、
上記回転角速度算出手段は、上記3軸磁気センサによって検出した上記磁気ベクトルHと、該磁気ベクトルHから、該磁気ベクトルHよりも微小時間Δt前の時点において測定した磁気ベクトルH’を引いたベクトルΔH(=H−H’)と、上記回転軸と上記磁気ベクトルHとの間の角度αを、下記数式
|ω|=|H×ΔH|/(|H|2・sinα・Δt)
に代入することにより、上記被測定体の回転角速度ベクトルωの絶対値|ω|(以下、回転角速度|ω|と記す。)を、上記回転角速度として算出するよう構成されていることを特徴とする磁気式ジャイロにある(請求項1)。
この場合には、測定精度がよい場合のみ、回転角速度を出力することができる。すなわち、回転角速度又は上記パラメータ値が閾値よりも小さい場合(第1回転状態)は、微小時間Δt内における磁気ベクトルHの変化量ΔHが小さいため、上記数式を用いて回転角速度|ω|を算出すると誤差が大きくなりやすい。そのため、第1回転状態において回転角速度を出力すると、誤差の大きい回転角速度を出力することになる。
これに対して、被測定体の回転角速度又は上記パラメータ値が閾値以上である場合(第2回転状態)は、微小時間Δt内における磁気ベクトルHの変化量ΔHがある程度以上に大きくなるため、回転角速度|ω|の誤差が小さくなりやすい。したがって、閾値を適切に設定した上で、第2回転状態の場合のみ回転角速度を出力することにより、測定精度の高い場合のみ、回転角速度を出力することが可能になる。
なお、回転状態判断手段は、回転角速度|ω|を使って、回転状態を判断することもできるが、上記パラメータ、例えば磁気ベクトルの単位時間における変化割合や、磁気ベクトルの差分ベクトルの大きさが一定の大きさを越えるまでの時間や、加速度ベクトルの変化割合等のパラメータを採用することもできる。
この場合には、回転角速度を用いることにより、微小時間Δt内における、被測定体の回転角度を算出することが可能となり、回転角度を必要とするアプリケーションに求めた値を利用することができる。上記磁気式ジャイロは回転角速度の算出時間が短いため、被測定体の回転角度の算出及び出力も、実際の被測定体の動きに対する出力遅れ時間を短くすることができる。
この場合には、磁気式ジャイロは第1姿勢算出手段と第2姿勢算出手段との2つの姿勢算出手段を備えるため、これら2つの姿勢算出手段を、被測定体の運動状態に応じてより精度の高い出力ができる方を選択することにより、使い分けることができる。これにより、状況に応じて被測定体の上記姿勢をより正確に算出することが可能となる。すなわち、第1姿勢算出手段は、3軸磁気センサと3軸加速度センサとの2種類のセンサを用いて、被測定体の姿勢を算出する。後述するように、この2種類のセンサを用いると、被測定体が静止している状態では、加速度センサの検出値は重力加速度と等しくなるため、地球座標系に対する被測定体の姿勢を直接、正確に算出することができ、被測定体の回転が静止しているか、比較的遅い場合において、大きな誤差なく姿勢を算出可能になる。その一方で、3軸加速度センサは、被測定体が回転等の運動をすると、その検出値には、被測定体自身の加速度が本来測定したい重力加速度に加算されることになる。それに対し、第2姿勢算出手段は3軸磁気センサのみを用いて姿勢を算出するため、被測定体自身の運動による加速度の影響を排除した算出をすることができる。そのため、これら2つの姿勢算出手段を使い分けることにより、被測定体の姿勢の算出精度をより高めることが可能になる。
このようにすると、被測定体の、より正確な姿勢を出力することができる。すなわち、第1姿勢算出手段では、3軸加速度センサと3軸磁気センサとの2種類のセンサを用いるため、被測定体が静止しているか、又は比較的遅い速度で回転している場合には、被測定体の姿勢を直接、正確に算出することができる。また、被測定体自身が静止していない場合は、加速度センサの検出値に被測定体自身の加速度が加わり、測定誤差となるが、上記磁気式ジャイロは、被測定体が第1回転状態となり、前記した誤差の影響が無視できる程度に小さくなった場合のみ、3軸加速度センサを利用する第1姿勢算出手段の姿勢算出結果を出力する。そのため、被測定体自身の運動状況に応じ、適切に3軸加速度センサの検出値を被測定体の姿勢計算に利用して、正確な姿勢を出力することができる。
上記中間姿勢は、上記回転角速度がより遅い回転状態になるほど上記第1姿勢に近づき、上記回転角速度がより速い回転状態になるほど上記第2姿勢に近づき、かつ上記第1姿勢と上記第2姿勢との間で連続的に変化し、
上記中間姿勢算出手段によって算出された上記中間姿勢を出力する中間姿勢出力手段を備え、
上記中間姿勢算出手段は、上記回転状態判断手段において用いることが可能な上記パラメータ値を用いて、上記回転状態を定めていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、被測定体の回転速度が変化した場合に、上記第1姿勢と上記第2姿勢との間の中間姿勢を出力できるため、姿勢の出力値が、回転角速度の閾値を境に、第1姿勢から第2姿勢に切り替わったり、又は第2姿勢から第1姿勢に切り替わった場合に、出力値が不連続に変化する不具合を防止できる。
また、第1姿勢算出手段は、被測定体の姿勢を直接、算出できるが、被測定体が静止していない場合には、第1回転状態の範囲であっても、3軸加速度センサの出力値は、重力加速度とずれが生じることになり、その影響で姿勢の算出結果に誤差が生じる原因となる。また、第2姿勢算出手段は、3軸加速度センサを用いないため、被測定体自身の運動状態による影響はないものの、姿勢の上記初期値に、微小時間内に算出される姿勢変化量を積算するため、3軸磁気センサ自身の測定誤差が累積しやすい。また、この誤差は、回転速度が遅く磁気ベクトルの変化が小さいほど顕著になる。このように、第1姿勢算出手段は被測定体の回転が遅い場合に比較的誤差が小さくなるという特徴を有し、第2姿勢算出手段は、逆に被測定体の回転が速い場合に比較的誤差が小さくなるという特徴を有しているため、瞬間瞬間の被測定体の状態から最も誤差が小さくなると考えられる第1姿勢と第2姿勢の中間姿勢を算出することにより、被測定体の回転状態がいかなる状況であっても精度の良い姿勢値を算出し、出力することができる。
また、ここで用いるパラメータ値は、回転状態判断手段により用いることのできるパラメータ、すなわち、後述の実施例1にて説明しているような回転状態を表現できるパラメータであれば良く、必ずしも回転状態判断手段で用いたパラメータと同一である必要はない。例えば回転状態判断手段では、加速度センサの誤差の問題を考慮して、加速度ベクトルの絶対値の変化量をパラメータ値として用い、中間姿勢を求める際には回転角速度|ω|を用いるようにすることもできる。
この場合には、上記第2回転状態において、被測定体の姿勢の算出値に誤差が累積する不具合を防止できる。すなわち第2姿勢算出手段は、微小時間Δt毎に、3軸磁気センサを用いて検出した姿勢変化量を1ステップ前に算出済みの姿勢算出値に積算していくことにより、最新の姿勢を算出するため、1回の磁気センサの検出により生じた誤差が、姿勢変化量を積算していくことによって累積していくことになる。これに対して第1姿勢算出手段は、後述するように、磁気ベクトルのデータと加速度ベクトルのデータとを用いて、算出に用いた磁気ベクトルと加速度ベクトルの測定時刻における被測定体の姿勢を直接、算出できるため、第2姿勢算出手段のように誤差が累積されることがない。そのため、第2回転状態から第1回転状態に移った場合に、第1姿勢算出手段を用いて正確な姿勢を算出し、再び第2回転状態に移った際に、第2回転状態に移る直前の計算ステップにおいて第1姿勢算出手段を用いて算出した姿勢のデータを基準の姿勢値とし、この姿勢値に最新のステップにおける第2姿勢算出手段で算出した姿勢変化量を積算するようにする。これにより、第2姿勢算出手段において使用する、基準となる姿勢値をリセットでき、姿勢に誤差が累積して算出精度が低下することを防止できる。
磁気式ジャイロに係る実施例について、図1〜図5を用いて説明する。
図1に示すごとく、本例の磁気式ジャイロ1は、3軸磁気センサ2と、メモリ3と、回転軸決定手段10と、回転角速度算出手段11と、回転角速度出力手段12とを備える。3軸磁気センサ2は、被測定体に固定された3軸直交座標系100(図5参照)における磁気ベクトルとして地磁気を検出する。メモリ3は、3軸磁気センサ2によって時系列的に検出される磁気ベクトルのデータを検出時の時刻データと共に蓄積する。
|ω|=|H×ΔH|/(|H|2・sinα・Δt) ・・・(1)
に代入することにより、被測定体の回転角速度|ω|を、回転角速度として算出する。
cosα=(H,(ΔH×ΔH’))/|H||ΔH×ΔH’|(ここで(H,(ΔH×ΔH’))は、Hと(ΔH×ΔH’)の内積を意味する。)
によりcosαを求め、
sinα=√(1−cos2α)によりsinαを求め、これを(1)式に代入することにより、|ω|を算出できる。
また、Kは、被測定体の回転運動の中心となる回転軸である。nは、上記中心点Oを始点とし、回転軸Kに平行な単位ベクトルである。αは、回転軸Kと磁気ベクトルHとのなす角度である。この場合において、回転角速度|ω|は、前記した通り(1)式で求めることができる。
|ω|=|H×ΔH|/(|H|2・sinα・Δt) ・・・(1)
なお、回転角速度ベクトルωは、下記の式によって定義することができる。
ω=|ω|・n
本例の回転状態判断手段は、回転角速度|ω|を用いて回転状態を判断している。なお、上述したように、例えば磁気ベクトルHの単位時間における変化割合や、磁気ベクトルHの差分ベクトルの大きさが一定の大きさを越えるまでの時間や、加速度ベクトルAの変化割合等のパラメータを採用することもできる。
第2姿勢算出手段52は、回転角度算出手段14によって算出された回転角度θに基づいて、微小時間Δt内における被測定体の姿勢変化量を算出し、該姿勢変化量を、被測定体の回転状態が第1回転状態であった際に第1姿勢算出手段51により算出した姿勢の初期値に積算することにより、被測定体の最新の姿勢を算出する。
姿勢出力手段53は、回転状態判断手段13によって、被測定体の回転運動が第1回転状態であると判断された場合は、第1姿勢算出手段51によって算出した姿勢を出力し、上記回転運動が第2回転状態であると判断された場合は、第2姿勢算出手段52によって算出した姿勢を出力する。
また、鉛直方向の単位ベクトルeUは、加速度ベクトルAと方向が一致するため、下記数式(4)によって算出できる。
また、北方向の単位ベクトルeNは、下記数式(3)に示すごとく、東方向の単位ベクトルeEと鉛直方向の単位ベクトルeUとの外積に等しい。
δ=tan−1(Uy/Uz)
φ=sin−1(−Ux)
又はφ=tan−1(−Ux/(Uy・sinδ+Uz・cosδ))
η=tan−1(Nx/Ex)
このように、微小時間Δt毎に回転行列Rkを算出し、第1姿勢算出手段51によって算出した、姿勢行列Pの初期値P0に回転行列Rkを順次掛け続けることにより、被測定体の最新の姿勢を表す姿勢行列Pkを算出することができる。
なお、加速度ベクトルA(k)の成分を(ax,ay,az)とした場合、|A(k)|は、下記の式により算出することができる。
|A(k)|=√(ax 2+ay 2+az 2)
ここで得られた差分の時間変化率ベクトルv1及びv2の外積をLとおく。
すなわち、例えばL<5000(mG/秒)2の場合には、第1回転状態であると判定し、L≧5000(mG/秒)2の場合には、第2回転状態であると判定する。
まず、3軸磁気センサ2によって検出した磁気ベクトルデータについて、その変化割合を把握するために、前記した磁気ベクトルデータの取得及びメモリの保存とは別に、検出された磁気ベクトルH2と、直前に採取した磁気ベクトルH1との差(差分ベクトルn1の大きさ)が、所定の大きさ(例えば100mG)を超えたときに、次のデータとしてメモリ3に蓄積(採取)する。
そこで、磁気ベクトルのデータの今回の採取時刻t2が、前回の採取時刻t1から、所定時間(例えば500m秒)以上経過したか否かによって判別することができる。すなわち、例えばt2−t1=Δt<500m秒の場合には、第2回転状態であると判定し、Δt≧500m秒の場合には、第1回転状態であると判定する。
数式(1)に含まれる磁気ベクトルH、ΔH、角度αは、軌跡円の中心点や半径を算出しなくても求めることができる。そのため、被測定体の回転角速度|ω|を算出するための演算処理を簡単にすることができ、回転角速度を短時間で算出することが可能になる。これにより、アプリケーション等を使用する際に、被測定体の回転運動をアプリケーションに素早く反映させることが可能になり、応答性を向上させることができる。特に、被測定体の動きに対する出力遅れ時間をできるだけ短縮化したいアプリケーションに適用する場合、大きな効果が得られる。
このようにすると、測定精度がよい場合のみ、回転角速度を出力することができる。すなわち、被測定体の回転運動が低速(静止も含む)である場合(第1回転状態)は、微小時間Δt内における磁気ベクトルHの変化量ΔHが小さいため、数式(1)を用いて回転角速度|ω|を算出すると、誤差が大きくなりやすい。そのため、第1回転状態において回転角速度を出力すると、誤差の大きい回転角速度を出力することになる。
これに対して、被測定体が上記第2回転状態である場合は、閾値を適切に設定することにより、微小時間Δt内における磁気ベクトルHの変化量ΔHが計算上問題にならない程度に大きい値となるため、回転角速度|ω|の誤差が小さくなりやすい。したがって、第2回転状態の場合のみ回転角速度を出力することにより、測定精度の高い場合のみ、回転角速度を出力することが可能になる。なお、回転状態判断手段は、前記した通り、磁気ベクトル及び/又は加速度ベクトルの検出データから得られた、回転角速度や上記パラメータ値を用いて、被測定体が第1回転状態であるか第2回転状態であるかを判断する。
このようにすると、回転角速度|ω|を用いることにより、微小時間Δt内における、被測定体の回転角度θを算出することが可能となる。回転角度θが求まれば、例えば、地球座標系に対する被測定体の姿勢変化量を算出することができ、この変化量を積算することにより、被測定体の最新姿勢を算出することができる。本例の磁気式ジャイロ1は回転角速度|ω|の算出時間が短いため、被測定体の姿勢の算出時間も短くすることができ、被測定体の実際の姿勢変化に対する出力遅れ時間を短縮することができる。
このようにすると、磁気式ジャイロ1は第1姿勢算出手段51と第2姿勢算出手段52との2つの姿勢算出手段51,52を備えるため、これら2つの姿勢算出手段を使い分けることができる。これにより、状況に応じて被測定体の姿勢をより正確に算出することが可能となる。すなわち、第1姿勢算出手段51は、3軸磁気センサ2と3軸加速度センサ4との2種類のセンサを用いて、被測定体の姿勢を算出する。上記数式(2)〜(5)に示すごとく、この2種類のセンサを用いると、2種類のセンサによって検出したデータの測定時刻における、地球座標系に対する被測定体の姿勢行列を直接、正確に算出することができ、この姿勢行列から、ピッチ角δ、ロール角φ、ヨー角ηを求めることにより、被測定体の姿勢を算出できる。また、3軸加速度センサ4は、被測定体が静止していない場合、その動きによって生じる加速度がセンサの検出値に影響を及ぼすこととなるが、第2姿勢算出手段52は3軸磁気センサ2のみを用いて姿勢を算出するため、被測定体自身の動きによる加速度の影響を皆無にすることができる。そのため、これら2つの姿勢算出手段51,52を使い分けることにより、被測定体の姿勢の算出精度をより高めることが可能になる。
このようにすると、被測定体の、より正確な姿勢を出力することができる。すなわち、第1姿勢算出手段51では、3軸加速度センサ4と3軸磁気センサ2との2種類のセンサを用いるため、被測定体の姿勢を直接、正確に算出することができる。また、被測定体を速く回転させると遠心力等の被測定体自身の加速度が発生し、加速度センサの検出値に、本来測定したい重力加速度以外の加速度誤差が加わることになるため、姿勢の算出結果に誤差が発生することがあるが、本例の磁気式ジャイロ1は、被測定体が第1回転状態となり、3軸加速度センサ4の検出値に対する被測定体自身の加速度の影響が小さいと判断できる場合のみ、3軸加速度センサ4を利用する第1姿勢算出手段51の姿勢算出結果を出力する。そのため、被測定体の運動状態に関係なく、3軸加速度センサ4を被測定体の姿勢計算に利用して、正確な姿勢を出力することができる。
このようにすると、第2回転状態において、被測定体の姿勢の算出値に誤差が累積する不具合を防止できる。すなわち、第2姿勢算出手段52は、姿勢(姿勢行列)の初期値P0に、3軸磁気センサ2を用いて算出した、姿勢変化量を表現する回転行列Rkを掛け続けることにより最新の姿勢を算出するため、測定した磁気ベクトルの検出値1つ1つに存在する誤差が姿勢変化量の積算によって累積していくことになる。これに対して第1姿勢算出手段51は、磁気ベクトルHのデータと加速度ベクトルAのデータとを用いて、数式(5)から、2種類のセンサの検出値の測定時刻における被測定体の姿勢を直接、算出できるため、第2姿勢算出手段52のように誤差が累積されることがない。そのため、第2回転状態から第1回転状態に移った場合に、第1姿勢算出手段51を用いて正確な姿勢(姿勢行列P)を算出し、再び第2回転状態に移った際に、第2姿勢算出手段52の算出において基準となる姿勢行列を、1ステップ前(第2回転状態に移る直前であって、第1回転状態の最後の算出)において、第1姿勢算出手段51により算出した姿勢行列に置き換え、この姿勢行列にその後の微小時間Δt毎に算出した姿勢変化量を意味する回転行列を掛け合わせることにより、最新の姿勢を算出する。これにより、姿勢に誤差が累積することを防止できる。
本例は、図6に示すごとく、第1姿勢算出手段51によって算出した被測定体の姿勢である第1姿勢と、第2姿勢算出手段52によって算出した被測定体の姿勢である第2姿勢との間の中間姿勢を算出する中間姿勢算出手段54を設けた例である。中間姿勢は、回転角速度や上記パラメータ値が、回転が遅いことを示す値となるほど第1姿勢に近づき、回転角速度や上記パラメータ値が、回転が速いことを示す値となるほど第2姿勢に近づき、かつ第1姿勢と第2姿勢との間で連続的に変化する。また、本例の磁気式ジャイロ1は、中間姿勢算出手段54によって算出された中間姿勢を出力する中間姿勢出力手段55を備える。なお、本例の中間姿勢算出手段54は、上記中間姿勢の算出に、回転角速度|ω|を用いている。
P2kQk=P1k
tanα=|m’|/(q11+q22+q33−1) (但し0°≦α≦180°)
α=tan−1(|m’|/(q11+q22+q33−1))
f(0)=1
f(∞)=0
すなわち、回転軸単位ベクトルm=(mx,my,mz)としたとき、上記第2姿勢を中間姿勢に変換するための回転行列R’kは、下記数式により表される。
P’k=P2kR’k ・・・(9)
上述したように、角度βは、回転角速度|ω|が大きくなるほど連続的に0に近づき、逆に回転角速度|ω|が小さくなるほど連続的にαに近づく(図7参照)。そのため、角度βを使って中間姿勢行列P’kを求めると、この中間姿勢行列P’kは、回転角速度|ω|が大きくなるほど第2姿勢行列P2kに近づき、回転角速度|ω|が小さくなるほど第1姿勢行列P1kに近づく行列となる。
なお、本例では、関数fを回転角速度|ω|の関数として表現したが、このパラメータは、回転角速度以外のパラメータであっても、回転状態と関連するパラメータであれば構わない点は前記した通りである。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
本例は、回転角速度|ω|が所定の範囲内にある場合のみ、中間姿勢を出力するようにした例である。本例では図9に示すごとく、回転角速度|ω|に、第1閾値K1と第2閾値K2との2つの閾値を設定した。そして、回転角速度|ω|が0〜第1閾値K1の範囲にある場合は、第1姿勢算出手段51によって算出した第1姿勢を出力し、回転角速度|ω|が第1閾値K1〜第2閾値K2の範囲にある場合は、中間姿勢算出手段54によって算出した中間姿勢を出力するようにした。さらに、回転角速度|ω|が第2閾値K2以上の場合は、第2姿勢算出手段52によって算出した第2姿勢を出力するようにした。
その他、実施例2と同様の構成を備える。
その他、実施例2と同様の作用効果を有する。
本例は、中間姿勢を出力する時間を変更した例である。図10に示すごとく、本例では、回転角速度|ω|に1つの閾値Kを設定した。そして、回転角速度|ω|が閾値K未満の場合は、第1姿勢算出手段51によって算出した第1姿勢を出力し、閾値K以上の時は、第2姿勢算出手段52によって算出した第2姿勢を出力するようにした。また、回転角速度|ω|が次第に速くなって閾値Kを超えた後の所定時間w1内と、回転角速度|ω|が次第に遅くなって閾値Kよりも遅くなった後の所定時間w2内は、中間姿勢を出力するようにした。
すなわち、閾値Kを超えたり遅くなった直後においては、実施例3で言う中間速度領域である確率が高くなると考えられる。したがって、計算量が多くなる中間姿勢の計算を、この時間内に限定して行うことにより、計算量の増加を最低限に抑えることができ、出力の時間遅れを短縮することができる。
その他、実施例3と同様の構成および作用効果を有する。
10 回転軸決定手段
11 回転角速度算出手段
12 回転角速度出力手段
2 3軸磁気センサ
3 メモリ
4 3軸加速度センサ
ω 回転角速度ベクトル
H 磁気ベクトル
α 回転軸と磁気ベクトルHのなす角度
Claims (7)
- 被測定体に固定された3軸直交座標系における磁気ベクトルとして地磁気を検出する3軸磁気センサと、
該3軸磁気センサによって時系列的に検出される上記磁気ベクトルのデータを検出時の時刻データと共に蓄積するメモリと、
該メモリに蓄積された上記磁気ベクトルのデータに基づいて、上記被測定体の回転運動の基準とする回転軸を決定する回転軸決定手段と、
上記メモリに蓄積された上記磁気ベクトルのデータと上記時刻データとに基づいて、上記回転運動の回転角速度を算出する回転角速度算出手段と、
該回転角速度算出手段によって算出した上記回転角速度を出力する回転角速度出力手段とを有し、
上記回転角速度算出手段は、上記3軸磁気センサによって検出した上記磁気ベクトルHと、該磁気ベクトルHから、該磁気ベクトルHよりも微小時間Δt前の時点において測定した磁気ベクトルH’を引いたベクトルΔH(=H−H’)と、上記回転軸と上記磁気ベクトルHとの間の角度αを、下記数式
|ω|=|H×ΔH|/(|H|2・sinα・Δt)
に代入することにより、上記被測定体の回転角速度ベクトルωの絶対値|ω|を、上記回転角速度として算出するよう構成されていることを特徴とする磁気式ジャイロ。 - 請求項1に記載の磁気式ジャイロにおいて、上記3軸直交座標系における加速度ベクトルとして重力加速度を検出する3軸加速度センサと、該3軸加速度センサによって時系列的に検出される上記加速度ベクトルのデータを検出時の時刻データと共に蓄積する加速度ベクトルデータ蓄積用メモリと、上記磁気ベクトルのデータおよび上記加速度ベクトルのデータの少なくとも一方に基づいて、上記被測定体の回転角速度又は該回転角速度と関連のあるパラメータ値が、基準となる閾値未満である第1回転状態か、又は上記閾値以上である第2回転状態であるかを判断する回転状態判断手段を備え、上記回転角速度出力手段は、上記回転状態判断手段によって、上記被測定体が上記第2回転状態であると判断された場合にのみ、上記回転角速度を出力する磁気式ジャイロ。
- 請求項1または請求項2に記載の磁気式ジャイロにおいて、上記回転角速度算出手段によって算出した上記回転角速度に基づいて、上記微小時間Δt内における、上記回転軸を中心とした上記被測定体の回転角度を算出する回転角度算出手段と、算出された上記回転角度を出力する回転角度出力手段とを備えることを特徴とする磁気式ジャイロ。
- 請求項2に記載の磁気式ジャイロにおいて、上記回転角速度算出手段によって算出した上記回転角速度に基づいて、上記微小時間Δt内における、上記回転軸を中心とした上記被測定体の回転角度を算出する回転角度算出手段と、算出された上記回転角度を出力する回転角度出力手段とを備えると共に、上記磁気ベクトルのデータと上記加速度ベクトルのデータとに基づいて、上記被測定体の姿勢を算出する第1姿勢算出手段と、上記回転角度算出手段によって算出された上記回転角度に基づいて、上記微小時間Δt内における上記被測定体の姿勢変化量を算出し、該姿勢変化量を、上記第1回転状態において上記第1姿勢算出手段が算出した上記姿勢の初期値に積算することにより、上記被測定体の最新の姿勢を算出する第2姿勢算出手段とを備えることを特徴とする磁気式ジャイロ。
- 請求項4に記載の磁気式ジャイロにおいて、上記回転状態判断手段によって、上記被測定体の回転運動が上記第1回転状態であると判断された場合は、上記第1姿勢算出手段によって算出した上記姿勢を出力し、上記回転運動が上記第2回転状態であると判断された場合は、上記第2姿勢算出手段によって算出した上記姿勢を出力する姿勢出力手段を備えることを特徴とする磁気式ジャイロ。
- 請求項4に記載の磁気式ジャイロにおいて、上記第1姿勢算出手段によって算出した上記被測定体の上記姿勢である第1姿勢と、上記第2姿勢算出手段によって算出した上記被測定体の上記姿勢である第2姿勢との間の中間姿勢を算出する中間姿勢算出手段を備え、
上記中間姿勢は、上記回転角速度がより遅い回転状態になるほど上記第1姿勢に近づき、上記回転角速度がより速い回転状態になるほど上記第2姿勢に近づき、かつ上記第1姿勢と上記第2姿勢との間で連続的に変化し、
上記中間姿勢算出手段によって算出された上記中間姿勢を出力する中間姿勢出力手段を備え、
上記中間姿勢算出手段は、上記回転状態判断手段において用いることが可能な上記パラメータ値を用いて、上記回転状態を定めていることを特徴とする磁気式ジャイロ。 - 請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の磁気式ジャイロにおいて、上記第2姿勢算出手段を用いて上記姿勢を算出した後、上記被測定体の回転運動が上記第1回転状態となり、再び上記第2回転状態に戻った場合に、上記第2姿勢算出手段によって算出する際の基準となる上記姿勢のデータを、上記第1姿勢算出手段によって算出した、上記第2回転状態に戻る直前に第1姿勢算出手段により求めた上記姿勢のデータと置き換える置換手段を備え、上記第2姿勢算出手段は、置き換え後の基準となる姿勢データに第2姿勢算出手段により求めた姿勢変化量を加算していくことにより、上記姿勢の算出を行うよう構成されていることを特徴とする磁気式ジャイロ。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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