以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の一実施の形態にかかるシール部材は、パーフルオロエラストマー(FFKM)にカーボンナノファイバーが分散した炭素繊維複合材料を成形したシール部材であって、前記炭素繊維複合材料は、パーフルオロエラストマー(FFKM)100質量部に対して平均直径が9nm〜20nmのカーボンナノファイバー10質量部以上25質量部以下と平均粒径が10nm〜500nmのカーボンブラック0質量部以上50質量部以下とが配合されるか、またはパーフルオロエラストマー(FFKM)100質量部に対して平均直径が60nm〜110nmのカーボンナノファイバー15質量部以上35質量部以下と平
均粒径が10nm〜500nmのカーボンブラック15質量部以上50質量部以下とが配合され、前記炭素繊維複合材料の架橋体は、200℃、最大引張応力2N/mm、周波数1Hzの引裂き疲労試験における破断回数が10,000回以上であり、前記パーフルオロエラストマー(FFKM)は、JIS K6261に準じた低温弾性回復試験(TR試験)におけるTR−10値が−10℃以下であり、前記炭素繊維複合材料の架橋体は、動的粘弾性試験における損失正接(tanδ)のピークの温度が−15℃以下であることを特徴とする。
シール部材に用いるパーフルオロエラストマーは、いわゆるFFKMであって、主鎖炭素(C)−炭素(C)結合を構成する炭素原子に結合している水素原子(H)が完全にフッ素化されているフッ素ゴムである。一般的に、パーフルオロエラストマーは耐熱性と耐薬品性に優れているが、低温特性に劣っており、例えばJIS K6261に準じた低温弾性回復試験(TR試験)におけるTR−10値が通常0℃付近である。これに対し、本実施の形態に用いるパーフルオロエラストマーは、低温特性に優れ、JIS K6261に準じた低温弾性回復試験(TR試験)におけるTR−10値が−10℃以下であり、さらにTR−10値が−15℃以下であることができ、特にTR−10値が−20℃以下であることができる。このように、低温特性に優れたパーフルオロエラストマーを用いることにより、耐薬品に優れかつ低温環境から高温環境まで幅広い温度領域で使用できるシール部材とすることができる。このような低温特性に優れたパーフルオロエラストマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)/パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)系共重合体などを挙げることができ、ここで用いることができるパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)としては、例えば、パーフルオロメトキシビニルエーテル(PMOVE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)およびその他の同様の化合物を挙げることができる。
シール部材に用いるカーボンナノファイバーは、平均直径(繊維径)が0.4nm〜230nmである。さらに、シール部材に用いるカーボンナノファイバーは、平均直径(繊維径)が9nm〜110nmであることができ、特に9nm〜20nmまたは60nm〜110nmであることができる。カーボンナノファイバーは、その平均直径が比較的細いため、比表面積が大きく、マトリックスであるパーフルオロエラストマーとの表面反応性が向上し、パーフルオロエラストマー中におけるカーボンナノファイバーの分散不良を改善しやすい傾向がある。平均直径(繊維径)が0.4nm〜230nmであるカーボンナノファイバーを用いることで、パーフルオロエラストマーを補強することができる。カーボンナノファイバーによって形成される微小セル構造は、カーボンナノファイバーが3次元に張り巡らされた網目構造によってマトリックス材料を囲むように形成されることができる。これまでの研究結果から1つのセルの最大径はおおよそカーボンナノファイバーの平均直径の2倍〜10倍程度になることが判っている。カーボンナノファイバーの平均直径は、電子顕微鏡による観察によって計測することができる。カーボンナノファイバーは、その表面におけるパーフルオロエラストマーとの反応性を向上させるために、酸化処理することもできる。なお、本発明の詳細な説明においてカーボンナノファイバーの平均直径及び平均長さは、電子顕微鏡による例えば5,000倍の撮像(カーボンナノファイバーのサイズによって適宜倍率は変更できる)から200箇所以上の直径及び長さを計測し、その算術平均値として計算して得ることができる。
炭素繊維複合材料におけるカーボンナノファイバーの配合量は、所望の特性に応じて適宜配合することができる。炭素繊維複合材料の架橋体が優れた耐摩耗特性として、例えば、200℃、最大引張応力2N/mm、周波数1Hzの引裂き疲労試験における破断回数が10,000回以上であるためには、炭素繊維複合材料においてパーフルオロエラストマー(FFKM)100質量部に対して平均直径が9nm〜20nmのカーボンナノファイバー10質量部以上25質量部以下と平均粒径が10nm〜500nmのカーボンブラック0質量部以上50質量部以下とが配合されるか、またはパーフルオロエラストマー(FFKM)100質量部に対して平均直径が60nm〜110nmのカーボンナノファイバー15質量部以上35質量部以下と平均粒径が10nm〜500nmのカーボンブラック15質量部以上50質量部以下とが配合されることができる。なお、引裂き疲労試験は、後述するように、炭素繊維複合材料の耐摩耗特性を評価することに採用できる。カーボンブラックの配合量は、カーボンナノファイバーの平均直径や配合量に応じて調整することができる。カーボンナノファイバーとして、特に平均直径が9nm〜20nmのカーボンナノファイバーを用いた場合には比較的少量であっても耐摩耗特性が向上する傾向があり、また、10質量部未満の配合量であれば、他の補強剤、例えば平均粒径が10nm〜500nmのカーボンブラックを比較的大量に配合することによって耐摩耗特性を向上することができる。平均直径が60nm〜110nmのカーボンナノファイバーを用いた場合には、他の補強材、例えば平均粒径が10nm〜500nmのカーボンブラックを配合することによって耐摩耗特性を向上することができる。ここで、「質量部」は、特に指定しない限り「phr」を示し、「phr」は、parts per hundred of resin or rubberの省略形であって、ゴム等に対する添加剤等の外掛百分率を表すものである。
カーボンナノファイバーは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面(グラフェンシート)を巻いて筒状にした形状を有するいわゆる多層カーボンナノチューブ(MWNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)であり、平均直径が9nm〜20nmのカーボンナノファイバーとしては、例えばバイエルマテリアルサイエンス社のバイチューブ(Baytubes)C150P及びC70P並びにナノシル(Nanocyl)社のNC−7000などを挙げることができ、平均直径が60nm〜110nmのカーボンナノファイバーとしては、例えば保土谷化学工業社のNT−7などを挙げることができる。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブ、気相成長炭素繊維といった名称で称されることもある。
カーボンナノファイバーは、気相成長法によって得ることができる。気相成長法は、触媒気相合成法(Catalytic Chemical Vapor Deposition:CCVD)とも呼ばれ、炭化水素等のガスを金属系触媒の存在下で気相熱分解させて未処理の第1のカーボンナノファイバーを製造する方法である。より詳細に気相成長法を説明すると、例えば、ベンゼン、トルエン等の有機化合物を原料とし、フェロセン、ニッケルセン等の有機遷移金属化合物を金属系触媒として用い、これらをキャリアーガスとともに高温例えば400℃〜1000℃の反応温度に設定された反応炉に導入し、浮遊状態あるいは反応炉壁に第1のカーボンナノファイバーを生成させる浮遊流動反応法(Floating Reaction Method)や、あらかじめアルミナ、酸化マグネシウム等のセラミックス上に担持された金属含有粒子を炭素含有化合物と高温で接触させてカーボンナノファイバーを基板上に生成させる触媒担持反応法(Substrate Reaction Method)等を用いることができる。平均直径が9nm〜20nmのカーボンナノファイバーは触媒担持反応法によって得ることができ、平均直径が60nm〜110nmのカーボンナノファイバーは浮遊流動反応法によって得ることができる。カーボンナノファイバーの直径は、例えば金属含有粒子の大きさや反応時間などで調節することができる。平均直径が9nm〜20nmのカーボンナノファイバーは、窒素吸着比表面積が10m2/g〜500m2/gであることができ、さらに100m2/g〜350m2/gであることができ、特に、150m2/g〜300m2/gであることができる。
カーボンブラックを用いる場合には、種々の原料を用いた種々のグレードのカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックは、平均粒径が10nm〜500nmであることができ、さらに平均粒径が10nm〜250nmであることができ、特に平均粒径が40nm〜230nmであることができる。カーボンブラックの平均粒径は、基本構成粒子の算術平均粒径である。このようなカーボンブラックとしては、例えば、SAF,ISAF,HAF,SRF,T,GPF,FT,MTなどの補強用カーボンブラックなどを用いることができる。
シール部材は炭素繊維複合材料を成形して架橋して得られるが、炭素繊維複合材料の架橋体は動的粘弾性試験における損失正接(tanδ)のピークの温度が−15℃以下である。炭素繊維複合材料の架橋体の損失正接(tanδ)のピークはエラストマーのガラス転移点(Tg)付近の領域であって、このピークよりも低温の領域では炭素繊維複合材料が硬くなりすぎてクッション性を失うので、炭素繊維複合材料としての使用限界温度であって、使用最低温度ということができる。一般にパーフルオロエラストマーはフッ素ゴム(FKM)よりも耐薬品性には優れているものの耐寒性に劣るが、本実施の形態におけるパーフルオロエラストマーはTR−10値が−10℃以下であり、したがって、炭素繊維複合材料の架橋体は耐寒性、耐熱性及び耐薬品性に優れる性能を有することができる。損失正接(tanδ)は、JIS K6394に基づいて動的粘弾性試験を行い、動的貯蔵弾性率(E’、単位はdyn/cm2)と動的損失弾性率(E’’、単位はdyn/cm2)とを求め、損失正接(tanδ=E’’/E’)を計算して得ることができる。損失正接(tanδ)のピーク温度は、こうして計算して得られた損失正接(tanδ)曲線におけるピーク値が表れる温度である。
シール部材の製造方法
本発明の一実施の形態にかかるシール部材の製造方法は、パーフルオロエラストマー(FFKM)に、カーボンナノファイバーを混合した後、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロールを用いて、0℃ないし50℃で薄通しを行って炭素繊維複合材料を得る工程と、前記炭素繊維複合材料を成形してシール部材を得る工程と、を含み、前記炭素繊維複合材料は、パーフルオロエラストマー(FFKM)100質量部に対して平均直径が9nm〜20nmのカーボンナノファイバー10質量部以上25質量部以下と平均粒径が10nm〜500nmのカーボンブラック0質量部以上50質量部以下とが配合されるか、またはパーフルオロエラストマー(FFKM)100質量部に対して平均直径が60nm〜1
10nmのカーボンナノファイバー15質量部以上35質量部以下と平均粒径が10nm〜500nmのカーボンブラック15質量部以上50質量部以下とが配合され、前記炭素繊維複合材料の架橋体は、200℃、最大引張応力2N/mm、周波数1Hzの引裂き疲労試験における破断回数が10,000回以上であり、前記パーフルオロエラストマー(FFKM)は、JIS K6261に準じた低温弾性回復試験(TR試験)におけるTR−10値が−10℃以下であり、前記炭素繊維複合材料の架橋体は、動的粘弾性試験における損失正接(tanδ)のピークの温度が−15℃以下であることを特徴とする。シール部材の製造方法について図1〜図3を用いて詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明の一実施形態にかかるオープンロール法によるシール部材の製造方法を模式的に示す図である。
図1〜図3に示すように、2本ロールのオープンロール2における第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、例えば0.5mm〜1.5mmの間隔で配置され、図1〜図3において矢印で示す方向に回転速度V1,V2で正転あるいは逆転で回転する。まず、図1に示すように、第1のロール10に巻き付けられたパーフルオロエラストマー30の素練りを行ない、パーフルオロエラストマー分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成する。素練りによって生成されたパーフルオロエラストマーのフリーラジカルがカーボンナノファイバーと結びつきやすい状態となる。
次に、図2に示すように、第1のロール10に巻き付けられたパーフルオロエラストマー30のバンク34に、カーボンナノファイバー80及び必要に応じて図示していない充填剤を投入し、混練する。この混練におけるパーフルオロエラストマー30の温度は、例えば0℃〜50℃であることができ、さらに10℃〜20℃であることができる。パーフルオロエラストマー30とカーボンナノファイバー80とを混合する工程は、オープンロール法に限定されず、例えば密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。
さらに、図3に示すように、第1のロール10と第2のロール20とのロール間隔dを、例えば0.5mm以下、より好ましくは0〜0.5mmの間隔に設定し、混合物36をオープンロール2に投入して薄通しを行なう。薄通しの回数は、例えば1回〜10回程度行なうことができる。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05〜3.00であることができ、さらに1.05〜1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。このように狭いロール間から押し出された炭素繊維複合材料50は、パーフルオロエラストマーの弾性による復元力で図3のように大きく変形し、その際にパーフルオロエラストマーと共にカーボンナノファイバーが大きく移動する。薄通しして得られた炭素繊維複合材料50は、ロールで圧延されて所定厚さのシート状に分出しされる。この薄通しの工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ロール温度を例えば0〜50℃、より好ましくは5〜30℃の比較的低い温度に設定して行われ、パーフルオロエラストマーの実測温度も0〜50℃に調整されることができる。このようにして得られた剪断力により、パーフルオロエラストマーに高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノファイバーがパーフルオロエラストマー分子に1本ずつ引き抜かれるように相互に分離し、パーフルオロエラストマー中に分散される。特に、パーフルオロエラストマーは、弾性と、粘性と、カーボンナノファイバーとの化学的相互作用と、を有するため、カーボンナノファイバーを容易に分散することができる。そして、カーボンナノファイバーの分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維複合材料50を得ることができる。
より具体的には、オープンロールでパーフルオロエラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するパーフルオロエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、パーフルオロエラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。カーボンナノファイバーの表面の活性が適度に高いと、特にパーフルオロエラストマー分子と結合し易くなることができる。次に、パーフルオロエラストマーに強い剪断力が作用すると、パーフルオロエラストマー分子の移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるパーフルオロエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、パーフルオロエラストマー中に分散されることになる。本実施の形態によれば、炭素繊維複合材料が狭いロール間から押し出された際に、パーフルオロエラストマーの弾性による復元力で炭素繊維複合材料はロール間隔より厚く変形する。その変形は、強い剪断力の作用した炭素繊維複合材料をさらに複雑に流動させ、カーボンナノファイバーをパーフルオロエラストマー中に分散させると推測できる。そして、一旦分散したカーボンナノファイバーは、パーフルオロエラストマーとの化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。
パーフルオロエラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる工程は、前記オープンロール法に限定されず、密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。要するに、この工程では、凝集したカーボンナノファイバーを分離できる剪断力をパーフルオロエラストマーに与えることができればよい。特に、オープンロール法は、ロール温度の管理だけでなく、混合物の実際の温度を測定し管理することができるため、好ましい。パーフルオロエラストマーとカーボンナノチューブとの混合前、混合中、あるいは薄通し後の分出しされた炭素繊維複合材料に、架橋剤を混合することができ、架橋して架橋体の炭素繊維複合材料とすることができる。パーフルオロエラストマーの架橋は、例えば、耐熱性に優れたパーオキサイド加硫を用いることができる。
シール部材は、炭素繊維複合材料を一般に採用されるゴムの成形加工例えば、射出成形法、トランスファー成形法、プレス成形法、押出成形法、カレンダー加工法などによって所望の形状例えば無端状に成形することで得ることができる。シール部材は、架橋された炭素繊維複合材料からなることができる。
本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、通常、パーフルオロエラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、軟化剤、可塑剤、補強剤、充填剤、着色剤などを挙げることができる。これらの配合剤は、混合の過程の適切な時期にパーフルオロエラストマーに投入することができる。架橋剤としては、パーオキサイドを用いることができ、例えばカーボンナノファイバーをパーフルオロエラストマーへ混合する前、カーボンナノファイバーと一緒、あるいはカーボンナノファイバーとパーフルオロエラストマーを混合した後に投入することができ、例えばスコーチ防止のために架橋剤は薄通し後の未架橋の炭素繊維複合材料に配合することができる。
このように成形されたシール部材は、パーフルオロエラストマーをカーボンナノファイバーによって補強することによって、高温における物性に優れ、しかも耐摩耗性に優れることができる。そのため、シール部材は、静的シール部材及び動的シール部材のどちらにも使用することができる。シール部材は、公知の形態を有することができ、例えば無端状であることができ、いわゆるOリングや、断面形状が矩形の角シール、断面形状がD字状のいわゆるDリング、断面形状がX字状のいわゆるXリング、断面形状がE字状のいわゆるEリング、断面形状がV字状のいわゆるVリング、断面形状がU字状のUリング、断面形状がL字状のLリングなどを採用することができる。また、シール部材は、例えばマッドモータなどの流体駆動用モータのステータまたはロータとすることができる。
図4は、本発明の一実施形態にかかるシール部材の引裂き疲労試験を模式的に示す図である。
図4に示すように、本実施の形態におけるシール部材の引裂き疲労試験は、架橋体の炭素繊維複合材料を長さ10mm×幅4mm×厚さ1mmの短冊状の試験片100に打ち抜き、その試験片100の長辺102の中心から幅方向へ深さ1mmの切込み106を入れ、試験片100の両端の短辺104,104付近をチャック110,110にて保持して、200℃の大気雰囲気中、周波数1Hzの条件で図4の矢印T方向に繰り返し引張荷重(0N/mm〜2N/mm)をかけ、破断するかあるいは20万回までの繰り返し回数(引裂き疲労寿命)を測定することができる。試験片100の切込み106は、カミソリ刃によって1mmの深さに切込むことで形成することができる。ゴム組成物の耐摩耗性試験は、これまでも幾つかの測定方法が提案されていたが、このような引裂き疲労試験によって耐摩耗性の評価を行うことができると考えられる。ゴム組成物が摩擦によって摩耗する現象は、被接触面にゴム組成物が引きちぎられるようにして起こると考えられるので、試験片に切込み106を入れて引裂き疲労試験を行い、破断するまでの回数が多ければシール部材の耐摩耗性が良好であると推測できる。また、シール部材の高圧における耐摩耗特性の指標として、上記引裂き疲労寿命(第1の回数)に対する、引張荷重を0N/mm〜2.5N/mmに上げる他は同様に引裂き疲労試験を行って得られる引裂き疲労寿命(第2の回数)の比(第2の回数/第1の回数)を計測することができる。この疲労寿命の比が1に近いほど高圧における耐摩耗特性に優れていると推測でき、疲労寿命は例えば0.5〜1.0であることができ、さらに0.6〜1.0であることができる。
また、カーボンナノファイバーの周囲には、パーフルオロエラストマーの一部が混練中に分子鎖切断され、それによって生成されたフリーラジカルがカーボンナノファイバーの表面をアタックして吸着したパーフルオロエラストマー分子の凝集体と考えられる界面相が形成される。界面相は、例えばエラストマーとカーボンブラックとを混練した際にカーボンブラックの周囲に形成されるバウンドラバーに類似するものと考えられる。このような界面相は、カーボンナノファイバーを被覆して保護し、また、カーボンナノファイバーを所定量以上配合することで界面相同士が連鎖した界面相に囲まれてナノメートルサイズに分割されたパーフルオロエラストマーの小さなセルを形成すると推定される。このような小さなセルが炭素繊維複合材料の全体にほぼ均質に形成されることで、単に2つの材料を複合したことによる効果を超えた効果を期待することができる。
さらに、本発明の一実施形態によれば、シール材は、過酷な条件を備えた油田用途に使用可能である。上述のように、このシール材は、優れた耐熱性、耐薬品性及び低温特性を有しているからである。以下に、油田用途を詳述する。
油田用途
油田用途のシール部材は、例えば、油田装置(Oilfield Apparatus)に用いることができる。油田装置のシール部材は、静的シール部材及び動的シール部材に用いることができ、例えば、検層装置(logging tool)やモータのような回転機械やピストンのような往復動機械などに用いる場合には動的シール部材において高い効果を得ることができる。油田装置の代表的な実施形態について以下に説明する。
図5〜図12を用いて、検層装置に用いられる本発明の一実施形態のシール部材について説明する。図5は、ダウンホール装置の使用状態を説明する模式図である。図6は、ダウンホール装置の一部を示す模式図である。図7は、ダウンホール装置の圧力容器の連結部分を示す縦断面図である。図8は、ダウンホール装置用のOリングの他の一使用形態を示す縦断面図である。図9は、ダウンホール装置用のOリングの他の一使用形態を示す縦断面図である。図10は、本発明の一実施形態にかかる地下用途の検層装置を模式的に示す断面図である。図11は、本発明の一実施形態にかかる図10の検層装置を模式的に示す部分断面図である。図12は、図11の検層装置のマッドモータを模式的に示すX−X’断面図である。
検層装置は、例えば掘削された坑井(borehole)内及び坑井周辺の地層、油層などの物理的特性や坑井あるいはケーシングの幾何学的特性(孔径、方位、傾斜等)、油層の流れの挙動などを深度毎に記録するための装置であって、例えば油田(oilfield)において用いることができる。油田用途の検層装置としては、例えば、図5に示す海底(subsea)用途と、図10に示す地下(underground)用途と、を挙げることができる。検層装置には、ワイヤーライン検層(Wireline log/logging)や泥水検層(Mud logging)などがあり、測定機器が掘削編成に装備されている掘削同時検層(LWD:Logging While Drilling)や掘削同時測定(MWD:Measurement While Drilling)などがある。これらの検層装置は、地中の深い位置で作業するため、周囲環境はシール部材にとって苛酷になり、高温特に175℃以上にさらされた状態で摩擦に耐えて液密状態を保たなければならない場合があり、HNBRの複合材よりも高い耐熱性が要求されることがある。
図5に示すように、地下資源の探査は、例えば海52に浮くプラットホーム51から海底54に設けられた縦穴や横穴などで構成される井戸56内にダウンホール装置60を進入させ、地中の地質構造などを探査し、目標物質である例えば石油の有無を探査する。ダウンホール装置60は、例えばプラットホーム51から延びる長いロッドの先端に固定され、図6に示すような複数の圧力容器62a、62bを有し、さらにその先端に図示しないドリルビットを有してもよい。圧力容器62a、62bは、その両端の連結部64a、64b、64cで隣接する圧力容器と液密にシールして連結している。圧力容器62a、62bの内部には、例えば音波検層システムなどの電子機器63a,63bが封入され、地中の地質構造などを探査することが可能である。
図7に示すように、圧力容器62aの端部66aは、圧力容器62bの端部66bの内径よりも多少小さな外径を有する円筒状であり、端部66aの外周に設けられた無端状溝68aに無端状シール部材例えばOリング70がはめ込まれている。Oリング70は、耐熱シール材を用いて形成されかつ外形が連続する円形の無端状シール部材であって、横断面が円形である。圧力容器62aの端部66aが圧力容器62bの端部66bの内側に入り込み、Oリング70を偏平に押しつぶして組み付けられることによって圧力容器62a、62bの連結部64bは液密にシールされている。ダウンホール装置60は、地中深く掘られた井戸56内で作業するため、高温・高圧力下で圧力容器62a,62b内を液密に保たなければならない。本実施形態にかかるダウンホール装置60用のOリング70は、高温によるエラストマーの劣化が少なく、しかも高温においても高い柔軟性と高い強度を維持することができる。
図8に示すように、例えば、Oリング70と共に無端状溝68a内に樹脂製のバックアップリング72を設置してもよいし、図9に示すように、例えばOリング70a,70bを2本並べて無端状溝68a内に設置してシール性を向上させてもよい。
図10に示すように、地表155における、掘削編成に装備された測定機器による地下資源の探査は、例えば坑井(borehole)156の上方に配置されたプラットホーム及びデリック編成151と、デリック編成151から地下に設けられた縦穴や横穴などで構成される坑井156内に配置された検層装置として例えば坑底機器編成(BHA:bottom hole assembly)160と、を有する。デリック編成151は、例えば、フック151aと、回転スイベル(rotary swivel)151bと、ケリー(kelly)151cと、回転テーブル151dと、を含むことができる。坑底機器編成160は、例えばデリック編成151から延びる長いドリル・ストリング(drill string)153の先端に固定される。ドリル・ストリング153の内部には、図示していないポンプから回転スイベル151bを介して泥水が送り込まれ、坑底機器編成160の流体駆動モータを駆動させることができる。なお、坑底機器編成160は、一実施形態として、ドリルビット162と、回転操作システム164と、マッドモータ166と、掘削同時測定モジュール168と、掘削同時検層モジュール170と、を有する例について説明したが、これに限らず、検層用途に合わせて選択して組み合わせることができる。
図11に示す回転操作システム164は、ドリルビット162を回転させたまま一定の方向へビットを偏向させる図示しない偏向機構を有し、傾斜制御掘削を可能とするシステムである。回転操作システム164は、本発明の一実施形態のシール部材を適用することができる。回転操作システム164は、例えば最大約210℃において高い耐摩耗性をもったシール部材や、様々な泥水への暴露に対する高い耐薬品性を有するシール部材が必要である。従来のシール部材は、ゴムの摩耗及び断裂によって機能しなくなる傾向があった。特に、厳しい化学的環境においては、問題は深刻となる傾向があった。米国特許出願公開第2006/0157283号に示されているようなロータリー・ステアラブル・システムのためのシール部材は、高い摺動速度(〜100mm/sec)で機能を果たすことが要求されるが、使用温度におけるエラストマーの特性低下及び掘削流体の摩耗特性により、シール部材の前記問題が助長される傾向があった。これに対して、本発明の一実施形態のシール部材を回転操作システム164のシール部材に用いることによって、上述のシール部材の特性に加えて、粒子を含む掘削マッドから密閉するための高い耐摩耗性、広範な掘削流体に対するより優れた耐薬品性、及び断裂を減少させる高温におけるより優れた機械的特性により、上記の諸課題を解決することができる。回転操作システム164は、回転しない円筒形の筐体164aと、筐体164a内を貫通してマッドモータ166の回転力をドリルビット162へ伝える伝達軸164bと、伝達軸164bを筐体164a内で回転可能に支持するシール部材164cとを有する。シール部材164cは、筐体164aに設けられた環状溝にはめ込まれた例えば無端状のOリングであることができ、回転する伝達軸164bの表面との間で密封する機能を有する。このシール部材164cが前記製造方法で得られたシール部材であることで、高温例えば200℃程度までの地下の過酷な環境においても耐摩耗性に優れるため、長時間密封機能を維持することができる。このようなシール部材の使用は、例えば、本明細書において全体として援用される米国特許出願公開第2006/0157283号と米国特許第7,188,685号とにおいて見られる。より詳細に述べると、米国特許出願公開第2006/0157283号の図5は、ロータリー可変アセンブリのバイアス装置の穴30を密閉するピストン36上のシール部材38を示している。米国特許第7,188,685号は、バイアス装置を示している。
図12に示すマッドモータ166は、ダウンホール・モーターとも呼ばれ、泥水の流力を動力として、ドリルビット162を回転させるための流体駆動モータである。マッドモータ166は、例えば、偏距坑井掘削用(for deviated wellbore drilling applications)のマッドモータを挙げることができ、本発明の一実施形態のシール部材を適用することができる。マッドモータ166は、例えば、最大約150℃〜200℃の高温特性を持ったシール部材、極度の摩耗条件下で機能することができるシール部材、あるいは様々な掘削マッドを取り扱うための耐薬品性を有するシール部材が必要である。従来のマッドモータのシール部材は、例えば、シール部材の膨張、クラック及びシール部材本体の大きな断片の脱落(チャンキング現象)による密閉不足、高温における摩耗による密閉不足、そしてシール部材の摩耗作用によるシール部材の局部加熱及びさらなる劣化が生じる傾向があった。これに対して、本発明の一実施形態のシール部材をマッドモータ166のシール部材に用いることによって、上述のシール部材の特性に加えて、高温におけるより優れた機械的特性により断裂及び脱落を減少させ、優れた耐薬品性による広範な掘削流体に対する耐性、より優れた熱伝導性による局部加熱部分の減少などにより、上記の諸課題を解決することができる。マッドモータ166は、円筒形の筐体166aと、筐体166aの内周面には管状のステータ166が固定され、ステータ166dの内側にはロータ166cが回転可能に配置されている。ステータ166bの内周面166dは、例えば5本の螺旋状の溝が回転操作システム164側から掘削同時測定モジュール168側へと延びている。ステータ166bは、前記製造方法で得られた本発明の一実施形態のシール部材を用いることができる。例えば金属製のロータ166cの外周面166eは、例えば4本の螺旋状に突出したねじ山を有し、ステータ166bの内周面166dの溝に沿って配置されている。ステータ166bの内周面166dとロータ166cの外周面166eとは、図12のように一部で接触し、内周面166dと外周面166eとの隙間166fに泥水を流す流路が形成される。この隙間166fを流れる泥水とロータ166cの外周面166eが接触することによって、ロータ166cがステータ166b内を例えば図11,図12の矢印の方向へ偏心回転することができる。このとき、ステータ166bの内周面166dとロータ166cの外周面166eとは、接触し、かつ、泥水によって偏心回転するため、ステータ166bの内周面166dはいわゆるシール部材と同様に機能する。したがって、前記したような地下の過酷な環境においても耐摩耗性に優れるため、マッドモータ166のロータ166cを長時間回転駆動させることができる。なお、本実施の形態においては、流体駆動モータとしてマッドモータ166を用いて説明したが、同様の構造を有しかつ流体を用いて駆動する他の流体駆動モータに採用することができ、また、ロータを前記製造方法で得られたシール部材で形成し、ステータを例えば金属で形成することもできる。このようなシール部材の使用は、例えば、本明細書において全体として援用される米国特許出願公開第2006/0216178号と、米国特許第6,604,922号とにおいて見られる。より詳細に述べると、米国特許出願公開第2006/0216178号の図3は、ロータを密閉してロータ上に掘削トルクを発生するエラストマーステータ(ライニング)としてのシール部材を示している。マッドは、ステータとロータの間を流れる。また、同じく図4は、ステータを密閉する、ロータに取り付けられたエラストマースリーブとしてのシール部材を示している。同じく図5は、ステータを密閉するロータ上のエラストマースリーブとしてのシール部材を示している。米国特許第6,604,922号の図4は、ステータに取り付けられたライナーの弾性層は密閉機能を有することを示し、この弾性層がシール部材として機能する。同じく図13は、エラストマー層からなるロータライニングが密閉機能を有することを示し、このエラストマー層がシール部材として機能する。
掘削同時測定モジュール168は、ドリルカラー(drill collar)と呼ばれる厚い壁を有するパイプの壁部に設けられたチャンバー168a内に図示しない掘削同時測定器具が配置されている。掘削同時測定器具は、各種センサを含み、例えば、方位、傾斜、ビットの向き、荷重、トルク、温度、圧力等の坑底データを計測するとともに、これらの計測データをリアルタイムに地上へ伝送することができる。
掘削同時検層モジュール170は、ドリルカラー(drill collar)と呼ばれる厚い壁を有するパイプの壁部に設けられたチャンバー170a内に図示しない掘削同時検層機器が配置されている。掘削同時検層機器は、各種センサを含み、例えば、比抵抗、孔隙率、音波速度及びガンマ線等を測定し、物理検層データを取得することができ、この物理検層データをリアルタイムに地上へ伝送することができる。
掘削同時測定モジュール168及び掘削同時検層モジュール170は、各種センサを泥水などから守るため、チャンバー168a,170a内において前記製造方法で得られた本発明の一実施形態のシール部材を用いることができる。
油田用途は、前記検層装置に限定されない。例えば、ワイヤーライン検層に用いられるダウンホール・トラクターに、本発明の一実施形態のシール部材を適用することができる。このようなダウンホール・トラクターの一例としては、シュルンベルジェ社のMaxTRAC又はTuffTRAC(いずれもシュルンベルジェ社の商標)がある。このようなダウンホール・トラクターは、高い耐摩耗性をもった往復動シール部材を、最大約175℃において、長期の運用年数と信頼性のために必要とする。
これまでのシール部材は、ダウンホール・トラクターにあるシーリングピストンの表面に対して高度な研磨を必要としていた。このようにシール部材を研摩することで、製造の際に鏡面加工されたピストンやシリンダの表面の高い歩留まりにつながっていた。通常のエラストマーからなる従来のシール部材は、摩耗、漏洩、機器の寿命の低下、故障が発生していた。また、シール部材は、最大2000ft/hourの高い摺動速度で使用される場合もある。ダウンホール・トラクターに用いられるシール部材は、両側に油圧オイルが存在する状態又は一方の側に油圧オイルが存在し、他方の側に場合によっては粒子を含む泥水又は流体が存在する状態で機能する必要がある。また、トラクター作業においては、牽引距離よりも大きな摺動距離にわたって摺動シール部材が十分に機能することが必要となる。例えば、10,000フィートのトラクター作業では、シール部材は最大20,000フィート以下の累積摺動距離にわたって確実に機能することが求められる。さらに、シール部材は、通常、最大で200psiの差圧を受けることになる。
これに対して、本発明の一実施形態のシール部材をダウンホール・トラクターに用いることによって、上述のシール部材の特性により、上記の諸課題を解決することができる。特に、密閉性のピストンや円筒の表面に対する加工が緩和され、製造費用を低減することができる。また、優れた耐摩耗性は、より長寿命かつ信頼できるシール機能に役立つことになる。さらに、長寿命は、低摩擦性によっても可能となる。
このようなシール部材の使用は、例えば、本明細書において全体として援用される米国特許第6,179,055号において見られる。より詳細に述べると、この米国特許の図7A及び図8Aはピストン上のシール部材を示している。この特許の図7B,10B,12も同様である。この特許の図15,12,16Bは、管材及びハウジングを密封するピストン上のシール部材を示している。また、この米国特許の図16Bは、ロッド上のシール部材を示している。
また、油田用途として、例えば、地層検査及び油層流体サンプリング機器(Formation testing and reservoir fluid sampling tool)にも、本発明の一実施形態のシール部材を適用することができる。このような機器は、例えば、シュルンベルジェ社のモジュラー・フォーメーション・ダイナミックス・テスター(MDT:シュルンベルジェ社の商標)を含む。このような地層検査及び油層流体サンプリング機器は、ポンプアウトモジュール及びその他ピストンにおいて、高い耐摩耗性を持ったシール部材を必要とする。また、地層検査及び油層流体サンプリング機器は、坑井を密封するために、高い耐摩耗性と最大約210℃の高温特性を持ったシール部材を必要とする。
これまでのシール部材は、ポンプアウトモジュールの移動装置(displacement unit)のピストンにおいては、多数の往復動が、油層流体を移動し、抽出し、供給して、サンプリングと、機器作動と、分析とをしていた。通常のシール部材を使用した従来のピストンシール部材は摩耗し、限られた寿命後に機能しなくなる傾向があった。この問題は、より高い温度において顕著に発生した。また、流体中の粒子の存在は、シール部材の摩耗及び破損を加速した。
これに対して、本発明の一実施形態のシール部材を地層検査及び油層流体サンプリング機器に用いることによって、上述のシール部材の特性により、上記の諸課題を解決することができる。特に、高温において高い耐摩耗性を有するシール部材は、寿命を向上することができる。低摩擦性を有するシール部材は、摩耗の減少及び寿命を向上することができる。また、高温における高い機械的特性を有するシール部材は、寿命及び信頼性を向上することができる。さらに、高い耐薬品性を有するシール部材は、高温における油井及び流体へ暴露する使用もできる。
このようなシール部材の使用は、例えば、本明細書において全体として援用される米国特許第6,058,773号及び米国特許第3,653,436号において見られる。より詳細に述べると、米国特許第6,058,773号の図2は、ポンプアウトモジュールに設けられた移動装置(DU)内のシャトルピストン上の往復運シール部材を示している。また、米国特許第3,653,436号の図2、図3、図4は、マッドケーキでライニングされた坑井表面を密閉しているエラストマー部材を示している。
また、油田用途として、例えば、その場流体サンプリングボトル(In situ fluid sampling bottles)及びその場流体分析・サンプリングボトル(In situ fluid analysis and sampling bottles)にも、本発明の一実施形態のシール部材を適用することができる。このような機器は、例えば、地層検査及び油層流体サンプリング機器やワイヤーライン検層に用いることができる。このようなその場流体サンプリングボトル及びその場流体分析・サンプリングボトルは、低温及び高温において、高圧での使用を可能とするシール部材を必要とする。また、このようなその場流体サンプリングボトル及びその場流体分析・サンプリングボトルは、産出された様々な流体に暴露された場合に、高い耐薬品性を有するシール部材を必要とする。さらに、このようなその場流体サンプリングボトル及びその場流体分析・サンプリングボトルは、耐ガス性を有するシール部材を必要とする。
このようなその場流体サンプリングボトル及びその場流体分析・サンプリングボトルにおいて、油層流体は、高圧高温を有する現場の油層条件で回収されていた。これらのボトルを地表まで回収すると、温度が低下するけれども圧力は高いままであった。回収後、サンプルは他の貯蔵用、輸送用又は分析用の容器に移された。サンプルボトル内の摺動ピストン上のシール部材は、サンプルの回収中はサンプルの輸送中と同様に、以下に説明する重要な機能を担っていた。例えば、地表まで回収する際に高圧低温密封ができない場合の深海域等におけるサンプルのロス、回収時の地表におけるサンプルのロス、サンプルとの化学的な不適合性及びガス吸収による膨張によって生じる密閉不良によるサンプルのロス、ガス吸収したシール部材が膨張してピストンの摩擦と抗力が増加する、シール部材の過度の膨張によりサンプルをボトルから他の貯蔵場所又は分析装置に移す際に固着及び密閉不足又はその他の問題、及び作業時に複数のサンプルボトルが重ねて使用されことによる問題などがあった。回収時の地表におけるサンプルのロスは、特にサンプルがH2S、CH4,CO2などの物質を含む場合に、何らかの問題につながる可能性があった。
これに対して、本発明の一実施形態のシール部材をその場流体サンプリングボトル及びその場流体分析・サンプリングボトルに用いることによって、上述のシール部材の特性に加え、高い耐ガス性と、高い耐薬品性と、高圧高温要求特性を満たしながら優れた低温密閉性能を達成することにより、上記の諸課題を解決することができる。
このようなシール部材の使用は、例えば、本明細書において全体として援用される米国特許第6,058,773号、米国特許第4,860,581号、及び米国特許第6,467,544号(brown他)において見られる。より詳細に述べると、米国特許第6,058,773号の図5は、サンプルボトル内のピストン上のシール部材を示している。米国特許第4,860,581号の図2における2つのボトルからなる構成は、サンプルボトル内のピストン上のシール部材を示している。米国特許第6,467,544号の図1は、シール弁を示している。
また、油田用途として、例えば、その場流体分析機器(IFA:InSitu Fluid Analysis tool)にも、本発明の一実施形態のシール部材を適用することができる。このようなその場流体分析機器は、ダウンホールPVT用の高い耐摩耗性及び耐ガス性を有するシール部材を必要とする。PVTは、圧力、体積、及び温度を分析することを意味する。また、その場流体分析機器は、産出した流体を取り扱うための高い耐薬品性有するシール部材を必要とする。さらに、その場流体分析機器は、高圧と最大約210℃の高温特性と高い耐ガス性とを持ったフローライン固定シール部材を必要とする。フローラインは、サンプリングした流体に暴露される領域のことである。
その場流体分析機器は、例えば、ダウンホールPVTでは、油層流体サンプルを回収し、圧力を減少させてガス生成を開始させると共にバブルポイントを決定することが必要となっていた。減圧は非常に急速で例えば3000psi/分超であり、PVTサンプル室に直接接続されたシール部材において急激な減圧が生じることがあった。シール部材は、200以上のPVTサイクルに耐えることができなければならなかった。また、ダウンホールPVT用のシール部材は、急激な減圧によるガスによって機能しなくなることがあった。そのため、従来の市販のシール部材では、210℃でダウンホールPVTを行うことができなかった。従来のシール部材では、フローライン中において、膨張による不良及びガス透過による水泡形成が生じることがあった。
これに対して、本発明の一実施形態のシール部材をその場流体分析機器に用いることによって、上記の諸課題を解決することができる。高圧高温における機械的特性が優れているシール部材は、膨張傾向を減少することができる。カーボンナノファイバーによってシール部材中の空隙が減少したシール部材は、耐ガス性を向上することができる。シール部材の材料特性の向上によって、膨張及び急激な減圧に対する耐性を向上することができる。耐薬品性に優れたシール部材は、広範な産出流体に対して耐薬品性を向上することができる。
このようなシール部材の使用は、例えば、本明細書において全体として援用される米国特許出願公開第2009/0078412号、米国特許第6,758,090号、米国特許第4,782,695号、及び米国特許第7,461,547号において見られる。より詳細に述べると、米国特許出願公開第2009/0078412号の図5は弁上のシール部材を示し、図5はピストンシール装置上のシール部材を示している。米国特許第6,758,090号の図21aは、弁及びピストン上のシール部材を示している。米国特許第4,782,695号は、ニードルとPVT処理室の間のシール部材を示している。米国特許第7,461,547号は、PVT分析用PVCU(圧力体積制御装置)内のピストンスリーブ装置のシール部材として、PVCUにおいて流体を隔離するための弁上のシール部材を示している。
また、油田用途として、例えば、ワイヤーライン検層、掘削同時検層、坑井試験、穿孔(perforation)、サンプリング作業に用いられる全ての機器にも、本発明の一実施形態のシール部材を適用することができる。このような機器は、例えば、低温及び高温における高圧密閉を可能にするシール部材を必要とする。
このような機器は、例えば、深海における利用では、低温から高温にかけて広い温度範囲で機能するシール部材が要求され、低温においてシール部材が正常に機能しない場合には、電子部品等の空気室への漏洩や機器の故障が生じる可能性があった。また、深海域や北海等の冷水域でのサンプリングにおいて、シール部材は、低温から高温にかけて広い温度範囲で機能しなければならなかった。このような水域において、地中で回収したときのサンプルは高温であるが、地表へ運んだサンプルの温度は地表温度まで低下するからである。例えば、シール部材による高圧低温における密閉が不十分な場合には、サンプルの漏洩やロス及びその他の問題が生じる可能性があった。このような機器の多くは、油圧オイルで充填され、100〜200psiに加圧されるため、低温において十分に機能するシール部材を使用しない場合には、冷表面条件においてオイルの漏洩が生じたり、低温の深海部からの回収時に不具合が生じたりする可能性があった。
これに対して、本発明の一実施形態のシール部材をこのような機器に用いることによって、上述のシール部材の特性に加え、優れた低温密封性、高温におけるより優れた機械的特性による高圧高温における優れた密閉性によって、上記の諸課題を解決することができる。
また、油田用途として、例えば、側壁コアリング機器(Side wall Coring Tool)にも、本発明の一実施形態のシール部材を適用することができる。このような側壁コアリング機器は、例えば、低摩擦性・高耐摩耗性を有するシール部材、長い寿命及び高い密閉信頼性を有するシール部材、最大約200℃の高温特性を持ったシール部材、あるいはデルタPが100psi以下(低速摺動)であるシール部材を必要とする。ここで、デルタPはピストンのシール部材両側における圧力差であり、例えばシール部材が低摩擦性を有することで、デルタPは小さくなり、すなわち小さな圧力差でピストンを動かすことができることを示す。
このような側壁コアリング機器は、例えば、シール部材が固着又は摩擦力の増加をもたらす場合には、コアリングを停止する場合があった。また、各コアの掘削では、地層を切断する間、シール部材と係合させることによってドリルビットを回転・摺動させることが要求された。さらに、高いコア掘削効率を維持するためには、シール部材における低いシーリング摩擦性が重要であった。
これに対して、本発明の一実施形態のシール部材をこのような機器に用いることによって、上述のシール部材の特性に加え、以下の特性によって、上記の諸課題を解決することができる。低摩擦性のシール部材は、コア掘削作業及び作動/移動のための電力消費量を減少することができる。また、低摩擦性のシール部材は、固着(sticking)及び転がり摩耗(rolling)の傾向が減少し、コア掘削作業の効率を向上することができる。さらに、高い耐摩耗性を有するシール部材は、摩耗性を有する流体中における密閉寿命を向上することができる。
このようなシール部材の使用は、例えば、本明細書において全体として援用される米国特許公開第2009/0133932号、米国特許第4,714,119号、及び米国特許第7,191,831号において見られる。より詳細に述べると、米国特許公開第2009/0133932号の図4及び図5は、モータによって駆動されるコアリングアセンブリのコアリングビット上のシール部材を示している。米国特許第4,714,119号の図3B、図5、図6は、最大2000rpmでモータによって試錐孔からコアを採掘するように駆動されたドリルビット上のシール部材を示している。米国特許第7,191,831号の図2A及び図2Bは、モータによって駆動されるコアリングビット及びコアリングアセンブリ間のシール部材を示し、図3及び図4で符号201〜204で示される部品の境界又は図6Bのビットとハウジング間には、本実施形態のシール部材のような低摩擦性シール部材を用いることで高い効率を達成することができる。
また、油田用途として、例えば、掘削用途のためのテレメトリー・発電機器(Telemetry and power generation tool in Drilling applications)にも、本発明の一実施形態のシール部材を適用することができる。このようなテレメトリー・発電機器は、例えば、高い耐摩耗性を有する回転シール部材、低摩擦性を有する回転・摺動シール部材、最大約175℃の高温特性を持ったシール部材を必要とする。
このようなテレメトリー・発電機器、例えば、米国特許第7,083,008号に開示されているようなマッドパルステレメトリ装置は、オイルで充填された機器の内部を、回転シール部材によって坑井流体(掘削泥水)から保護することが要求された。しかしながら、坑井流体中に粒子が含まれるため、シール部材の摩耗や断裂が増加する傾向があった。また、シール部材の摩滅及び摩耗による不十分な密閉により、泥水が侵入すると機器の故障が発生する可能性があった。また、米国特許第7,083,008号に開示されているテレメトリー及び発電機器は、外部流体で内部油圧を補償するピストン上の摺動シール部材を使用して動作しており、シール部材の摩耗、摩滅、膨張、固着により、外部流体の侵入による機器の故障が発生する可能性があった。
これに対して、本発明の一実施形態のシール部材をテレメトリー・発電機器に用いることによって、上述のシール部材の特性に加え、シール部材の耐摩耗性及び低摩擦性の向上により、より信頼性の高い作業及びより長いシール寿命が得られることによって、上記の諸課題を解決することができる。
このようなシール部材の使用は、例えば、本明細書において全体として援用される米国特許第7,083,008号において見られる。より詳細に述べると、米国特許第7,083,008号の図2はロータ間のシール部材/軸受アセンブリにおけるロータリシール部材を示し、図3aは圧力補償室内において油と坑井流体(マッド)を分離する補償形ピストン上の摺動シール部材を示している。
また、油田用途として、例えば、サンプリング及び地層検査のために坑井の一部を隔離するために使用される膨張パッカー(inflate packer)にも、本発明の一実施形態のシール部材を適用することができる。このような膨張パッカーにおけるシール部材は、坑井内の複数の位置における膨張・収縮の繰り返し作業を可能とするために高い摩耗強度と高温特性を有することが必要である。
従来のパッカーにおけるシール部材は、所望の高温特性を有していないために密閉機能に劣化・低下する傾向があった。また、従来のパッカーのシール部材は、所望の寿命を満たさない傾向があった。
これに対して、本発明の一実施形態のシール部材を膨張パッカーに用いることによって、シール部材がより優れた耐摩耗性及びより高い高温特性を有することにより、パッカー部材の寿命と信頼性を向上することができる。
このようなシール部材の使用は、例えば、本明細書において全体として援用される米国特許第7,578,342号、米国特許第4,860,581号、及び米国特許第7,392,851号において見られる。より詳細に述べると、米国特許第7,578,342号の図1A、図1B、図1Cは、シール部材が膨張して発破孔を密閉し、符号16で示される部材を隔離することを示している。また、図4Aのエラストマーシール部材(パッカー部材)又は図5、図6の符号712、812で示される部材がシール部材を示している。米国特許第4,860,581号の図1は、坑井を密閉する膨張パッカー部材を示している。米国特許第7,392,851号は、膨張パッカー部材を示している。
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて、本発明の範囲に含まれるものとする。
(1)実施例1〜13及び比較例1〜5のサンプルの作製
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
オープンロール(ロール温度10〜20℃、ロール間隔0.5mm〜1.0mm)に、パーフルオロエラストマー(FFKM)を投入し素練りした後、表1〜4に示す配合に従って、カーボンブラック(FEF−CB,MT−CB)及びカーボンナノファイバー(MWCNT−1〜3)をパーフルオロエラストマーに投入し、混練りを行った後、ロールから取り出した。さらに、その混合物をオープンロール(ロール温度10〜20℃、ロール間隔0.3mm)に巻きつけ、薄通しを繰り返し5回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。さらに、薄通しして得られた未架橋の炭素繊維複合材料に、表1〜4に示す配合に従って、架橋剤としてパーオキサイド(PO)及びトリアリルイソシアヌレート(TAIC)を加えて混練し、分出ししたシートをプレス加硫、二次加硫で成形して厚さ1mmの実施例1〜13及び比較例1〜5のシート状の炭素繊維複合材料の架橋体サンプルを得た。
表1〜4において、実施例1〜13及び比較例1〜4の「FFKM」はムーニー粘度(ML1+4100℃)の中心値が25、TR−10値が−30℃、損失正接(tanδ)のピーク値が−15℃のパーフルオロエラストマー、比較例5の「FFKM」はムーニー粘度(ML1+4100℃)の中心値が35、TR−10値が−2℃、損失正接(tanδ)のピーク値が14.8℃のパーフルオロエラストマー、「FEF−CB」は平均粒径43nmのFEFグレードのカーボンブラック、「MT−CB」は、平均粒径200nmのMTグレードのカーボンブラック、「MWCNT−1」は嵩密度45kg/cm3〜95kg/cm3の平均直径13nmの多層カーボンナノチューブ、「MWCNT−2」は嵩密度130kg/cm3〜150kg/cm3の平均直径13nmの多層カーボンナノチューブ、「MWCNT−3」は平均直径68nmの多層カーボンナノチューブであった。
(2)物理試験
実施例1〜13及び比較例1〜5の炭素繊維複合材料の架橋体サンプルについて、ゴム硬度(Hs(JIS−A))をJIS K 6253に基づいて測定した。
実施例1〜13及び比較例1〜5の炭素繊維複合材料の架橋体サンプルをJIS6号形のダンベル形状に打ち抜いた試験片について、島津製作所社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6251に基づいて引張試験を行い、50%応力(σ50(MPa))、100%応力(σ100(MPa))、引張強さ(TS(MPa))及び破断伸び(Eb(%))、を測定した。
実施例1〜13及び比較例1〜5の炭素繊維複合材料の架橋体サンプル(直径29.0±0.5mm、厚さ12.5±0.5mmの試験片)を、JIS K6262に準拠して、200℃、70時間、25%圧縮の条件で、圧縮永久ひずみ(CS(%))を測定した。
実施例1〜13及び比較例1〜5の炭素繊維複合材料の架橋体サンプルをJIS K 6252切込み無しのアングル形試験片に打ち抜き、島津製作所社製オートグラフAG−Xを用いて、引張速度500mm/minでJIS K 6252に準拠して引裂き試験を行い、最大引裂き力(N)を測定し、その測定結果を試験片の厚さ1mmで除して、引裂き強さ(TR(N/mm))を測定した。
実施例1〜13及び比較例1〜5の炭素繊維複合材料の架橋体サンプルを短冊形(40×1×2(巾)mm)に打ち抜いた試験片について、SII社製の動的粘弾性試験機DMS6100を用いて、チャック間距離20mm、測定温度−70〜400℃、周波数1Hz、動的ひずみ±0.05%でJIS K6394に基づいて動的粘弾性試験を行い損失正接(tanδ)を測定し、ガラス転移点(Tg)付近の領域における損失正接(tanδ)のピーク温度(℃)を測定した。
実施例1〜13及び比較例1〜5の炭素繊維複合材料の架橋体サンプルを短冊形(40×1×2(巾)mm)に打ち抜いた試験片について、SII社製の動的粘弾性試験機DMS6100を用いて、チャック間距離20mm、測定温度−70〜400℃、周波数1Hz、動的ひずみ±0.05%でJIS K6394に基づいて動的粘弾性試験を行い200℃における貯蔵弾性率(E’(MPa))を測定した。
実施例1〜13及び比較例1〜5の炭素繊維複合材料の架橋体サンプルを、図4に示すような10mm×幅4mm×厚さ1mmの短冊状の試験片に打ち抜き、その試験片の長辺の中心から幅方向へ深さ1mmの切込みを入れ、SII社製TMA/SS6100試験機を用いて、大気雰囲気中、150℃、最大引張応力2N/mm、周波数1Hzの条件で繰り返し引っ張り荷重(0N/mm〜2N/mm)をかけて引裂き疲労試験を行い、試験片が破断するかあるいは20万回までの引張回数((a)疲労(回))を測定した。なお、引張回数が20万回になっても破断しなかった場合には、表には「20万中断」と記載した。さらに、この引裂き疲労寿命を第1の回数((a)疲労(回))として、引張荷重を0N/mm〜2.5N/mmに上げる他は同様に引裂き疲労試験を行って得られる引裂き疲労寿命を第2の回数((b)疲労回数)として測定した。第1の回数に対する、第2の回数の比((b)/(a))を計算した。
各測定結果は、表5〜9において、ゴム硬度は「Hs(JIS−A)」、50%応力は「σ50(MPa)」、100%応力は「σ100(MPa)」、引張強さは「TS(MPa)」、破断伸びは「Eb(%)」、圧縮永久ひずみは「CS(%)」、引裂き強さは「TR(N/mm)」、損失正接のピーク温度は「tanδ(℃)」、貯蔵弾性率は「E’(200℃)(MPa)」、引裂き疲労寿命の第1の回数は「(a)疲労(回)」、引裂き疲労寿命の第2の回数は「(b)疲労(回)」及び引裂き疲労寿命の比は「(b)/(a)」と示した。
表5〜表8によれば、比較例5の架橋体サンプルにおける損失正接(tanδ)のピーク値が14.5℃であったのに対し、実施例1〜13の炭素繊維複合材料の架橋体サンプルは、損失正接(tanδ)のピーク値が−19℃以下であった。また、実施例1〜10、12及び13の炭素繊維複合材料の架橋体サンプルは、カーボンブラックを0質量部〜50質量部配合した比較例1〜5の架橋体サンプルよりも引裂き強さ(TR)が大きかった。
さらに、比較例1〜5の架橋体サンプルの引裂き疲労寿命回数((a)疲労回数)は1回〜8回であったのに対し、実施例1〜8の炭素繊維複合材料の架橋体サンプルの引裂き疲労寿命回数((a)疲労回数)は10,000回以上であり、耐摩耗特性に優れていると推測できた。特に、表9に示すように、引裂き疲労寿命の比は「(b)/(a)」は、比較例4に比べて実施例1〜3が1に近いかもしくは1であり、実施例1〜3の炭素繊維複合材料の架橋体サンプルは高圧における耐摩耗特性に優れていることが推測できた。