JP5816450B2 - 揚鉱管の昇降方法と揚鉱管 - Google Patents
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このような海底から海上に浮かぶ船舶にガスや石油、鉱物等を海底から搬送するライザーシステムが提案されている。
このようなシステムでは、揚鉱管の敷設時には、船舶の上で鋼管を1本ずつつなぎながら海中に降ろしていくようにしている。そして、フレキシブル管を含む揚鉱管を構成する複数の鋼管から一部の鋼管を交換したりメンテナンス等を行う場合、揚鉱管を上側から船舶へ直線状に順次引き上げて鋼管の交換や機器の修理等を行っている。そして鋼管の交換やメンテナンス等が終了すると、各鋼管同士を接続し直して海中へ順次降下させるようにしている。
また、垂直に延びる揚鉱管を敷設する場合、鋼管を順次垂直方向に接続するため端部把持機構も強力なものが要求される。搬送物が腐食性のものであったり鉱石を含むスラリで鋼管内部に腐食等が発生したりして補修が必要になった場合には、作業船によって揚鉱管を垂直に引き上げつつ鋼管を分断して順次鋼管の検査と補修を行うため、手間がかかりメンテナンス性に劣る構造となっていた。
また、特許文献3では、パイプの他にパイプの長手方向に所定間隔で設置した浮体や浮体に高圧空気を供給するための高圧空気供給ホース及び電磁切換弁等が必要であり、浮体や高圧空気供給ホース及び電磁切換弁の設置や管理をしなければならず、構造が複雑でコスト高になるという欠点があった。
しかも、揚鉱管は各鋼管に浮体が設けられたことで海上では揚鉱管全体に浮力が働いて全長に亘る作業や検査を行うことができ、作業効率が高い。また、海中に沈める揚鉱管の水深が深くなっても鋼管の接続部に大きな耐引っ張り応力が要求されないから、鋼管の継ぎ手部分をフランジボルト等で固定できる等、継ぎ手の構造を簡単にできて経済的であり、鋼管の交換や間引き等を簡単に行えて劣化した部分を容易に排除または補修できてメンテナンスや補修を容易に行える。
図1に示す揚鉱管の敷設システム1は、海上に作業船2が浮かんでおり、作業船2から海底に向けて複数の鋼管3を接続してなる揚鉱管4を例えば略垂直に垂下させている。揚鉱管4は海底で掘削された鉱石、或いは海底井戸に埋設された石油または天然ガス等を作業船2に揚げるようになっている。そして、作業船2では、揚鉱管4を海上に略水平に浮かばせることで、メンテナンスしたり損傷や故障等した一部の鋼管3または部品等を交換したり修理することができるようになっている。
本実施形態における敷設システム1の揚鉱管4は、作業船2で揚鉱管4の上端を支持してこれを中心に、海底に垂下された状態と海上に浮かんだ略水平状態との間で回動できるように保持されている。
塗覆装6は本来鋼管3に防食性を与えるために被覆形成するものであり、例えばポリエチレン等からなり、鋼管3の外周面に粘着材を介して全周に亘って被覆されている。しかも、本実施形態では、揚鉱管4の浮力を増大させるために塗覆装6は海水より比重が小さく浮力を持たせており、そのために防食に必要以上の厚みtを形成している。
また、揚鉱管4内部の海水を空気に置換して、揚鉱管4が垂直状態から海上に近い位置まで浮かんだ傾斜状態になった場合に、ダイバー等によって揚鉱管4の下端部には下端開口4bを封止する下端盲フランジ部12が固定され、この下端盲フランジ部12には揚鉱管4の内部に残存する海水を抜くための水抜き逆流防止バルブ13が取り付けられている。
揚鉱管4の要素として、複数の鋼管3からなる揚鉱管4、各鋼管3の外周面に被覆された所定厚みtの塗覆装6を備えている。
そして、図2(b)に示すように、
鋼管3の内径:rcm、
鋼管3の外径:Rcm、
塗覆装6を含めた鋼管3の外径:Rocm、
塗覆装6の比重:α g/cm3、
とする。
また、定数として、
海水の比重=1.02≒1g/cm3、
鋼材の比重=7.85g/cm3
とする。また、空気の比重はほぼ0とする。
まず、条件1として、鋼管3内部が中空即ち空気が充填されている場合、内部も含めた鋼管3に塗覆装6を含む全体の比重が海水よりも軽いことを要する。また、条件2として、鋼管3内部が海水で満たされた場合、内部も含めた鋼管3に塗覆装6を含む全体の比重が海水よりも重いことを要する。
以下、条件1および条件2を満足する条件式を導出する。
本計算は以下の仮定に基づき単位長さ(1cm)について解くこととする。
鋼管3の継手は、フランジ部3aまたは溶接または機械継ぎ手を採用できるが、計算の便宜のために、継手部分の鋼材重量は鋼管3に分散されて加算されるとして鋼管3の重量分布は均一であると仮定している。また、塗覆装6は均一な比重であるとし、鋼管3の外面に均一に配設されていると仮定する。また、鋼管3の内面に塗覆装は設けないとする。
鋼管3内空断面積をS1として、S1=πr2(cm2) …(1)
鋼管3外径断面積をS2として、S2=πR2(cm2) …(2)
塗覆装6を含む断面積をS3として、S3=πRo2(cm2) …(3)。
また、単位長さ(1cm)あたりの鋼管3と塗覆装6の重量は、
鋼管3の重量をWS(g)として、WS={S2(cm2)−S1(cm2)}×7.85 (g/cm3)×1(cm) …(4)となり、
塗覆装6の重量をWC(g)として、WC={S3(cm2)−S2(cm2)}×α(g/cm3)×1(cm) …(5)となる。
WF={WS(g)+WC(g)}/(S3(cm2)×1(cm) ) …(6)となる。
そのため、条件1を満たすには、下記(7)式を満足する必要がある。
WF(g/cm3)<1(g/cm3) …(7)
鋼管3の内部に注水される海水の重量をWW(g)とすると、次式(8)になる。
WW=S1(cm2)×1 (g/cm3)×1(cm) …(8)
また、鋼管3内に海水を満たした状態における見かけの鋼管3全体の比重WD(g/cm3)とすると、次式(9)が得られる。
WD={WS(g)+WC(g)+WW(g)}/(S3(cm2)×1(cm) ) …(9)
そのため、条件2を満たすには、下記(10)式を満足する必要がある。
WD(g/cm3)>1(g/cm3) …(10)
π(R2-r2)×7.85+π(Ro2-R2)×α<πRo2<π(R2-r2)×7.85+π(Ro2-R2)×α+πr2 …(11)
そのため、
条件1
(R2-r2)×7.85+R2α<(1−α)Ro2
{(R2-r2)×7.85+R2α}/(1−α)< Ro2
条件2
Ro2<(R2-r2)×7.85+(Ro2-R2)×α+r2
{(R2-r2)×7.85+R2α+r2}/(1−α)> Ro2
となる。従って、(11)式を満たす塗覆装6の外径として設計すればよいこととなる。
そのため、(11)式及びR<Roから、
条件1…25.35cm<Ro
条件2…Ro<31.02cm
となる。
従って、塗覆装6を含めた外径Roは条件1及び条件2で導き出されるから、
25.35cm<Ro<31.02cm
に収めればよいことになる。
逆に人、ROV等が近接してメンテナンス、交換等が可能な海面近辺の揚鉱管4部分においては高価な浮力材を適用する必要はなく、また鋼管も安い鋼材、または他の材料で頻繁に交換することで本発明で目指している揚鉱管4の機能を実現することができる。
以上のように、深度に応じて適切な揚鉱管4の材料及び仕様の選定と浮力材の組み合わせによる設計により揚鉱管4の機能を満足させつつ、システム全体のライフサイクルコストを低減することができる。
先ず、図1及び図2(a)に示すように複数の鋼管3を両端のフランジ部3a同士で直線状に連結した揚鉱管4を、作業船2から海底まで略垂直に垂下させた状態にあり、海底から鉱石や石油等を作業船2へ流送するものとする。そのため、この状態で揚鉱管4の上端開口4aと下端開口4bは開放状態にある。
そして、鋼管3や他の部品等の修理や交換等のために揚鉱管4を引き上げる場合、図3に示すように、揚鉱管4の上端開口4aに上端盲フランジ部9を固定して封止し、上端盲フランジ部9にコンプレッサー10を連結して気体として例えば空気を揚鉱管4内に充填する。すると、揚鉱管4内の海水が次第に空気に置換されて浮力が増大し、揚鉱管4の全体比重が海水の比重より小さくなると、作業船2で上端を把持された揚鉱管4は上端の把持部を中心に回転し、垂直方向から水平方向に向けて次第にその傾斜角度が小さくなっていく。
これにより、その後、コンプレッサー10から揚鉱管4内に充填される空気が浮上しつつある下端開口4bから抜けることを防止できる。しかも、揚鉱管4内に充填される空気によって押圧される揚鉱管4内に残存する海水は水抜き逆流防止弁13から海中に排出される。このようにして、揚鉱管4内が海水から空気に置換されることによって、揚鉱管4の中間部分をしならせながら下端部が海面に浮上し、揚鉱管4はほぼ海上に水平状態に保持される。
その際、途中で揚鉱管4の上端盲フランジ部9を取り外せば、或いはバルブ11を開放すれば、空気が上端開口4aからも抜けるので、揚鉱管4の降下が促進される。こうして、揚鉱管4は図1に示すように海中に略垂直に垂下させられた状態になり、揚鉱管4内は海水で埋められる。
揚鉱管4を海中に沈める場合、作業船2を停止状態で揚鉱管4を降下させてもよいが、海上に浮かぶ揚鉱管4の方向に作業船2を移動、例えば後退させながら揚鉱管4の下端を降下させるようにしてもよい。このようにすることで揚鉱管4の降下が一層スムーズになる。
また、本実施形態による揚鉱管4は、複数の鋼管3を各鋼管3の両端フランジ部3aでフランジボルト等によって連結して構成したから、損傷や劣化した鋼管3を簡単に交換したり間引いたり補修したりできてメンテナンスが容易に行える。また、揚鉱管4内に空気を充填する際、高圧空気供給ホース等の他の部品が必要なく、しかも塗覆装6は常に浮体として機能し、海水または空気を充填する作業も必要ない。
しかも、従来、海中に略垂直に保持した揚鉱管では、水深が深くなるほど揚鉱管とブイとの接続部に鋼管継ぎ手を設けて耐引っ張り応力や耐久力の引き上げが必要であったが、本実施形態によれば各鋼管3毎に塗覆装6を設けて浮力を付与したから、水深が深くなっても耐引っ張り応力の増大を考慮することなく揚鉱管4及びその敷設システム1を製造でき、構造がシンプルであり製造コストを低減できて経済的である。
図6は本発明の変形例を示すものであり、揚鉱管4の下端に例えば揚重機15を接続してもよい。更にスラリーポンプ(図示せず)を設置してもよい。このような構成にすれば、揚鉱管4を海底に沈めた後で揚重機15やスラリーポンプを接続する必要がなく作業が簡単になる。しかも、揚重機15やスラリーポンプは揚鉱管4を沈める際の重りとなる。
また、揚重機15の上部にバラストタンク16を取り付け、揚鉱管4の下端開口4bにゴム等からなる可撓管17を取り付けてもよい。そして、コンプレッサー10から揚鉱管4及び可撓管17を介して空気を供給すれば、バラストタンク16に空気が溜まり浮体として機能するので、揚重機15を揚鉱管4と共に浮上させることができる。
また、浮体として各鋼管3に塗覆装6と浮力調整部材7の両方を設置してもよい。
また、コンプレッサー10等の気体注入手段で注入する気体は空気に限定されることなく、不活性ガス等、比重が海水より小さい各種のガスを採用できる。
2 作業船
3 鋼管
3a フランジ部
4 揚鉱管
4a 上端開口
4b 下端開口
6 塗覆装
9 上端盲フランジ部
10 コンプレッサー
12 下端盲フランジ部
13 水抜き逆流防止弁
15 揚重機
16 バラストタンク
Claims (8)
- 海底で掘削した流送物を海上に搬送する揚鉱管を海中に沈めたり海上に浮かべたりする昇降方法において、
前記揚鉱管は複数の管体を連結して構成され、各管体にはそれぞれ浮体が設置されており、前記浮体は、前記揚鉱管の各鋼管に被覆された塗覆装であり、
前記揚鉱管を海中に沈める場合には、前記揚鉱管中に海水を注入して気体と置換することで前記揚鉱管内の海水及び前記揚鉱管及び浮体のトータルの比重を海水の比重より重くし、
前記揚鉱管を海中から海上に浮かべる場合には、前記揚鉱管の上端開口を上端盲フランジ部で封止して気体を注入することで海水と置換し、前記揚鉱管内の気体及び前記揚鉱管及び浮体のトータルの比重を海水の比重より軽く設定するようにしたことを特徴とする揚鉱管の昇降方法。 - 前記揚鉱管を海中から海上に浮かべる場合には、前記揚鉱管の上端開口は上端盲フランジ部によって封止されると共に、前記上端盲フランジ部に設けた気体注入手段によって前記揚鉱管中に空気を注入して海水と置換するようにした請求項1に記載された揚鉱管の昇降方法。
- 前記揚鉱管を海中に保持された状態から内部に気体を注入して海水と置換して海上に浮かべる途中工程で、前記揚鉱管の下端開口を水抜き逆流防止弁を設けた下端盲フランジ部で封止することによって、前記揚鉱管から水抜き逆流防止弁を介して海水を排出させるようにした請求項1または2に記載された揚鉱管の昇降方法。
- 前記揚鉱管を海中に沈ませる際、前記下端盲フランジ部を揚鉱管から取り外して海水を浸入させるようにした請求項3に記載された揚鉱管の昇降方法。
- 前記揚鉱管の下端に海底で作業する作業機械を連結させて、前記揚鉱管と共に作業機械を降下させ、また浮上させるようにした請求項1乃至4のいずれか1項に記載された揚鉱管の昇降方法。
- 複数の鋼管を連結して形成されていて内部を通して流送物を引き上げる揚鉱管であって、
前記各鋼管にはそれぞれ浮体が設置されており、
連結された前記複数の鋼管の上端開口は着脱可能な上端盲フランジ部によって封止されると共に、前記上端盲フランジ部から前記揚鉱管中に空気を注入する気体注入手段が設けられており、
前記複数の鋼管内で海水と空気を互いに置換することで上昇と降下を制御するようにしたことを特徴とする揚鉱管。 - 請求項6に記載された揚鉱管であって、
前記浮体は鋼管の外面に形成されている塗覆装であり、該塗覆装を海水の比重より軽くすることで前記鋼管に浮力が設定されている揚鉱管。 - 請求項6または7に記載された揚鉱管であって、
沈下された前記複数の鋼管を浮上させる途中工程で、前記複数の鋼管の下端開口は離脱可能に封止する下端盲フランジ部と、該下端フランジ部に設けた水抜き逆流防止弁を介して海水を外部に排出させるようにした揚鉱管。
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