以下に添付図面を参照して、開示の光伝送装置および光伝送システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態1)
(光伝送装置の構成)
図1は、実施の形態1にかかる光伝送装置の構成例を示す図である。実施の形態1にかかる光伝送装置100は、伝送ファイバ10により信号光を伝送する光伝送システムの送信側の光伝送装置である。伝送ファイバ10は、光を伝送するための光ファイバである。
光伝送装置100は、アンプ101と、光可変減衰器102(VOA:Variable Optical Attenuator)と、光カプラ103〜105と、励起光源106と、光カプラ107と、パワーモニタ108,109と、算出部110と、送信レベル決定部111と、対応情報記憶部112と、入力レベル記憶部113と、パワーモニタ114と、差分検出部115と、パワー制御部116と、を備えている。
アンプ101には、前段からの信号光が入力される。たとえば、光伝送装置100を中継装置として用いる場合は、光伝送装置100の前段の光伝送装置から伝送された信号光がアンプ101に入力される。また、光伝送装置100を送信装置として用いる場合は、アンプ101の前段の回路において生成された信号光がアンプ101に入力される。アンプ101は、入力された信号光を増幅して光可変減衰器102へ出力する。
光可変減衰器102は、アンプ101から出力された信号光を可変の減衰量によって減衰させる。光可変減衰器102は、減衰させた信号光を光カプラ103へ出力する。光可変減衰器102における減衰量は、パワー制御部116によって制御される。光カプラ103は、光可変減衰器102から出力された信号光を、光カプラ104およびパワーモニタ114へ出力する。光カプラ104は、光カプラ103から出力された信号光と、光カプラ107から出力された励起光と、を光カプラ105へ出力する。
光カプラ105は、光カプラ104から出力された光を伝送ファイバ10へ入力する。光カプラ105から伝送ファイバ10へ入力された光は、伝送ファイバ10を伝播して光伝送装置100の後段の光伝送装置へ送信される。また、光カプラ105は、伝送ファイバ10から光伝送装置100へ戻ってきた光をパワーモニタ109へ出力する。
励起光源106、パワーモニタ108,109および算出部110は、伝送ファイバ10のラマン利得効率(非線形性)を測定する測定手段である。具体的には、励起光源106(励起手段)は、励起光を生成して光カプラ107へ出力する。励起光源106が生成する励起光は、連続光でもよいし変調された光でもよい。励起光源106が生成する励起光は、たとえば光伝送装置100によって伝送される信号光と同じ波長帯の励起光である。また、励起光源106は、光伝送装置100の制御回路の制御にしたがって、パワーを変化させながら励起光を出力する。
光カプラ107は、励起光源106から出力された励起光を光カプラ104およびパワーモニタ108へ出力する。パワーモニタ108(第一モニタ)は、伝送ファイバ10へ入力される励起光のパワーをモニタする。具体的には、パワーモニタ108は、光カプラ107から出力された励起光のパワーをモニタする。パワーモニタ108はモニタ結果を算出部110へ出力する。
パワーモニタ109(第二モニタ)は、伝送ファイバ10へ入力された励起光によって伝送ファイバ10において発生した増幅雑音光のパワーをモニタする。具体的には、励起光源106からの励起光が伝送ファイバ10へ入力されると、伝送ファイバ10における自然ラマン散乱現象により発生した増幅雑音光が光伝送装置100へ戻ってくる。
パワーモニタ109は、光カプラ105から出力された光のパワーをモニタすることで増幅雑音光をモニタすることができる。パワーモニタ109によってモニタされる増幅雑音光は、伝送ファイバ10におけるラマン利得(誘導ラマン散乱利得)を示している。パワーモニタ109はモニタ結果を算出部110へ出力する。
算出部110は、パワーモニタ108,109から出力された各モニタ結果に基づいて、伝送ファイバ10のラマン利得効率を算出する。たとえば、算出部110は、パワーモニタ108からのモニタ結果に対するパワーモニタ108からのモニタ結果の比率を算出することでラマン利得効率を算出する。算出部110は、算出したラマン利得効率を送信レベル決定部111へ出力する。
また、算出部110は、光伝送装置100(自装置)と伝送ファイバ10との間の接続損失(ランプロス)を算出する損失算出手段としての機能を有していてもよい。算出部110は、パワーモニタ108,109から出力された各モニタ結果に基づいて接続損失を算出し、算出した接続損失を送信レベル決定部111へ出力する。
送信レベル決定部111は、算出部110から出力されたラマン利得効率に基づいて、信号光の伝送ファイバ10への入力レベルを決定する。たとえば、対応情報記憶部112には、ラマン利得効率と入力レベルとの対応情報が記憶されている。送信レベル決定部111は、対応情報記憶部112に記憶された対応情報を読み出し、読み出した対応情報と算出部110から出力されたラマン利得効率とに基づいて入力レベルを決定する。
または、送信レベル決定部111は、算出部110から出力されたラマン利得効率に基づいて入力レベルを仮決定し、算出部110から出力された接続損失に基づいて仮決定した入力レベルを補正することで入力レベルを決定してもよい。送信レベル決定部111は、決定した入力レベルを入力レベル記憶部113へ出力する。
入力レベル記憶部113は、送信レベル決定部111から出力された入力レベルを記憶する。パワーモニタ114は、光カプラ103から出力された信号光のパワーをモニタし、モニタ結果を差分検出部115へ出力する。差分検出部115は、入力レベル記憶部113に記憶された入力レベルを読み出す。そして、差分検出部115は、入力レベル記憶部113から読み出した入力レベルと、パワーモニタ114から出力されたモニタ結果と、の差分を検出し、検出した差分をパワー制御部116へ出力する。
パワー制御部116は、差分検出部115から出力された差分が小さくなる方向に光可変減衰器102の減衰量を制御する。これにより、伝送ファイバ10へ入力する信号光のレベルを、送信レベル決定部111によって決定された入力レベルとなるように制御することができる。ここでは光可変減衰器102によって信号光のレベルを制御する構成について説明したが、アンプ101を可変利得アンプとし、パワー制御部116によってアンプ101の利得を調節することで信号光のレベルを制御する構成としてもよい。
上述した算出部110、送信レベル決定部111、差分検出部115およびパワー制御部116は、たとえばDSP(Digital Signal Processor)などの演算手段によって実現することができる。上述した対応情報記憶部112および入力レベル記憶部113は、それぞれメモリによって実現することができる。
また、算出部110による接続損失の算出結果を出力する出力部を光伝送装置100に設けてもよい。たとえば、出力部は、算出部110による接続損失の算出結果をユーザへ出力するユーザインタフェースである。また、たとえば、出力部は、算出部110によって算出された接続損失と閾値との比較結果を出力する。具体的には、出力部は、算出部110によって算出された接続損失が閾値を超えていた場合はユーザへ警告を出力する。これにより、ユーザは、接続損失が閾値を超えていることを知ることができる。
(入力レベルと伝送性能の関係)
光伝送装置100によって伝送される信号光の受信側におけるOSNR[dB]は、たとえば下記(1)式によって示すことができる。
OSNR = Pin − Loss − NF + h・ν・Δf …(1)
上記(1)式において、Pinは、信号光の伝送ファイバ10への入力レベルを示している。Lossは、伝送ファイバ10における信号光のスパンロスを示している。NF(Noise Figure)は、アンプ101の雑音指数を示している。定数のhはプランク乗数、νは光周波数、Δfは規格化帯域を示している。
図2は、伝送ファイバへの入力レベルとOSNRとの関係を示すグラフである。図2において、横軸は伝送ファイバ10への信号光の入力レベル[dBm]を示し、縦軸は受信側におけるOSNR[dB]を示している。縦軸のOSNRは、値が大きいほど伝送性能が高いことを示している。
関係201は、上記(1)式に示した入力レベルPinに対する受信側のOSNRの計算例を示している。ただし、ここではスパンロスLossを30[dB]とし、アンプ101のNFを5[dB]とした。上記(1)式および関係201に示すように、受信側におけるOSNRは、入力レベルPinを大きくするほど向上する。
図3は、伝送ファイバへの入力レベルと伝送ペナルティとの関係を示すグラフである。図3において、横軸は伝送ファイバ10への信号光の入力レベル[dBm/ch]を示し、縦軸は受信側における伝送ペナルティ[dB]を示している。縦軸の伝送ペナルティは、波形劣化を示しており、値が大きいほど伝送性能が低い。伝送ペナルティは、伝送ファイバ10の非線形現象による波形劣化がない場合の伝送性能に対する、伝送ファイバ10の非線形現象による波形劣化がある場合の伝送性能の劣化度合いを示している。
関係301〜303は、同一変調方式の信号について、それぞれ伝送ファイバA〜Cにおける、入力レベルPinに対する受信側の伝送ペナルティの計算例を示している。伝送ファイバA〜Cは、伝送ファイバ10に適用される伝送ファイバであり、有効断面積Aeffおよび損失係数αが互いに異なる。
関係301〜303に示すように、受信側における伝送ペナルティは、入力レベルPinを大きくするほど劣化する。また、関係301〜303に示すように、同じ変調方式の信号光を伝送する場合でも、伝送ファイバ10の有効断面積Aeffおよび損失係数αなどの伝送ファイバ10のパラメータによって非線形現象の発生度合いが異なる。このため、伝送ファイバ10のパラメータによって波形劣化の大きさが異なる。
図4は、伝送ファイバへの入力レベルと伝送性能との関係を示すグラフである。図4において、横軸は伝送ファイバ10への信号光の入力レベル[dBm/ch]を示し、縦軸は受信側における伝送性能[dB]を示している。縦軸の伝送性能は、図2の縦軸に示したOSNRと、図3の縦軸に示した伝送ペナルティと、を合わせた伝送性能である。関係401〜403は、それぞれ伝送ファイバA〜Cにおける、入力レベルPinに対する伝送性能の計算例を示している。
上述したように、入力レベルPinを大きくするほどOSNRは向上し、入力レベルPinを大きくするほど伝送ペナルティは劣化する。したがって、入力レベルPinの変化に対してOSNRと伝送ペナルティはトレードオフの関係にある。このため、関係401〜403に示すように、OSNRと伝送ペナルティを合わせた伝送性能が最も高くなる入力レベルPinが存在する。
また、関係401〜403に示すように、伝送性能が最も高くなる入力レベルPinは、伝送ファイバ10のパラメータによって異なる。たとえば、伝送ファイバAを用いる場合は、入力レベルPinが約4[dBm/ch]のときに伝送性能が最も高くなる。また、伝送ファイバBを用いる場合は、入力レベルPinが約6.2[dBm/ch]のときに伝送性能が最も高くなる。また、伝送ファイバCを用いる場合は、入力レベルPinが約10[dBm/ch]のときに伝送性能が最も高くなる。
図5は、図4に示した関係のばらつきを示すグラフである。図5において、横軸は伝送ファイバ10への信号光の入力レベルを示し、縦軸は受信側における伝送性能を示している。関係501は、製造ばらつきがない伝送ファイバを伝送ファイバ10に用いた場合の入力レベルPinと伝送性能との関係を示している。関係501において伝送性能が最も高くなる入力レベルPinをPin1とし、そのときの伝送性能を伝送性能P1とする。
関係502,503は、それぞれ製造ばらつきがある伝送ファイバを伝送ファイバ10に用いた場合における入力レベルPinと伝送性能との関係を示している。関係502において伝送性能が最も高くなる入力レベルPinをPin2とし、そのときの伝送性能を伝送性能P2とする。関係503において伝送性能が最も高くなる入力レベルPinをPin3とし、そのときの伝送性能を伝送性能P3とする。
関係502では、関係501に比べて非線形現象による波形劣化が発生しにくくなっている。このため、入力レベルPin2は入力レベルPin1よりも高くなる。関係503では、関係501に比べて非線形現象による波形劣化が発生しやすくなっている。このため、入力レベルPin3は入力レベルPin1よりも低くなる。このように、伝送ファイバ10の製造ばらつきによる伝送ファイバ10のパラメータの変化に応じて、伝送性能が最も高くなる入力レベルPinが異なるため、実際に敷設された伝送路ファイバに対しては、この製造ばらつきも考慮して、スパンごとに最適入力レベルを設定することが伝送性能の向上に繋がる。
図6は、入射端における接続損失を示す図(その1)である。図6においては、図1に示した光伝送装置100を簡略化して図示している。光伝送装置610は、光伝送装置100から伝送された信号光を受信する光伝送装置である。入射端接続ポイント601は、アンプ101により増幅された信号光が伝送ファイバ10へ入射される部分を示している。入射端接続ポイント601においては、局舎内におけるファイバ取り回しの関係で、コネクタ接続やスプライス接続が行われることが多いため接続損失が発生しやすい。
図7は、入射端における接続損失を示す図(その2)である。図7のグラフにおいて、横軸は伝送ファイバ10の距離[km]を示し、縦軸は伝送ファイバ10を伝播する信号光の信号レベル[dBm]を示している。関係701は、入射端接続ポイント601における接続損失がない場合の伝送ファイバ10の距離と信号レベルとの関係を示している。関係701における入射端接続ポイント601(伝送ファイバ10の距離=0[km])の信号レベルをPin_aとする。
関係702は、入射端接続ポイント601における接続損失がある場合の伝送ファイバ10の距離と信号レベルとの関係を示している。関係702における入射端接続ポイント601(伝送ファイバ10の距離=0[km])の信号レベルをPin_bとする。信号レベルPin_bは、信号レベルPin_aよりも接続損失Llossの分だけ低下する。すなわち、入射端接続ポイント601における接続損失がある場合は、光可変減衰器102においてレベルが制御された信号光のレベルが入射端接続ポイント601において接続損失Lloss分だけ低下する。
(入力レベルの決定)
パワーモニタ109によってモニタされるラマン利得Gaは、たとえば下記(2)式によって示すことができる。下記(2)式において、gRはラマン利得係数[m/W]を示している。P0は伝送ファイバ10へ入力される励起光のパワー[W]を示している。Leffは伝送ファイバ10の有効長[m]を示している。Aeffは伝送ファイバ10の有効断面積[m^2]を示している。
Ga = exp(gR・P0・Leff/Aeff) …(2)
算出部110によって算出される伝送ファイバ10のラマン利得効率(ラマン増幅効率)は、ラマン利得GaとパワーP0の比率Ga/P0によって示すことができる。したがって、上記(2)式により、ラマン利得効率Ga/P0は、伝送ファイバ10のパラメータであるLeff/Aeffに依存して決まることが分かる。
図8は、励起光のパワーとラマン利得との関係(接続損失なし)を示すグラフである。図8において、横軸は伝送ファイバ10へ入力される励起光のパワーP0[mW]を示し、縦軸はラマン利得Ga[dB]を示している。また、図8においては、入射端接続ポイント601における接続損失Llossがない場合について示している。
励起光のパワーP0とラマン利得Gaの関係801〜803の各傾きは、それぞれラマン利得効率Ga/P0を示しており、Leff/Aeffに依存して決まる。光伝送装置100の制御回路は、たとえば、光伝送装置100の起動時(信号光を疎通させる前)に、励起光源106から励起光を出力させる。このとき、光伝送装置100の制御回路は、励起光源106の励起光のパワーP0を変動させることにより、算出部110は、パワーP0ごとのラマン利得Gaを取得することができる。
算出部110は、取得したパワーP0ごとのラマン利得Gaに基づいてパワーP0に対するラマン利得Gaの比率を算出することで、ラマン利得効率Ga/P0の近似値(たとえば関係801〜803のいずれか)を算出する。送信レベル決定部111は、算出部110によって算出されたラマン利得効率Ga/P0と対応情報記憶部112の対応情報に基づいて入力レベルPinを決定することができる。
図9は、励起光のパワーとラマン利得との関係(接続損失あり)を示すグラフである。図9において、図8に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図9においては、入射端接続ポイント601の接続損失Llossがある場合について示している。入射端接続ポイント601の接続損失Llossがある場合は、励起光のパワーP0が接続損失Llossの分だけ減衰して伝送ファイバ10へ入力される。
このため、図9に示すように、関係801〜803が接続損失Llossの分だけシフトする。たとえば、励起光のパワーP0が入射端接続ポイント601の接続損失Lloss以下の範囲においては、励起光のパワーP0が増加しても伝送ファイバ10において非線形現象が発生せず、ラマン利得Gaが発生しない。そして、励起光のパワーP0が入射端接続ポイント601の接続損失Lloss以上の範囲においては、関係801〜803の各傾きは、図8に示した関係801〜803の各傾きと同様になる。
算出部110は、取得したパワーP0ごとのラマン利得Gaに基づいて、入射端接続ポイント601の接続損失Llossを算出する。たとえば、算出部110は、ラマン利得Gaが増加しないパワーP0の範囲を特定し、特定した範囲の大きさを接続損失Llossとして算出する。
また、算出部110は、励起光のパワーP0が接続損失Lloss以上の範囲のラマン利得効率Ga/P0を算出する。たとえば、算出部110は、パワーP0が接続損失Lloss以上の範囲におけるパワーP0ごとのラマン利得Gaを取得し、取得したパワーP0ごとのラマン利得Gaに基づいてラマン利得効率Ga/P0の近似値を算出する。
送信レベル決定部111は、算出部110によって算出されたラマン利得効率Ga/P0と対応情報記憶部112の対応情報に基づいて入力レベルPinを仮決定するとともに、仮決定した入力レベルPinを接続損失Llossにより補正する。たとえば、送信レベル決定部111は、仮決定した入力レベルPinに接続損失Llossを加えることによって入力レベルPinを補正する。送信レベル決定部111は、補正した入力レベルPinを入力レベル記憶部113へ出力する。
図10は、伝送ファイバのパラメータと適切な入力レベルとの関係を示すグラフである。図10において、横軸は伝送ファイバ10のパラメータLeff/Aeff[1e−9/m]を示し、縦軸は適切な(たとえば伝送性能が最も高くなる)入力レベルPin[dBm]を示している。図10のプロット点a〜eは、伝送ファイバ10のパラメータLeff/Aeffに対する適切な入力レベルPinの計算例を示しており、関係1001はプロット点を近似化した関係を示している。
関係1001に示すように、伝送ファイバ10のパラメータLeff/Aeffと適切な入力レベルPinとの間には相関があることが分かる。たとえば、Leffが小さい(すなわち損失係数αが大きい)場合やAeffが大きい場合は、伝送ファイバ10において非線形現象が発生しにくく、比較的高い入力レベルPinで伝送性能が最も高くなる。
一方、Leffが大きい(すなわち損失係数αが小さい)場合やAeffが小さい場合は、伝送ファイバ10において非線形現象が発生しやすく、比較的低い入力レベルPinで伝送性能が最も高くなる。このように、ラマン利得効率Ga/P0はLeff/Aeffに依存するとともに、Leff/Aeffと適切な入力レベルPinとの間には相関がある。したがって、送信レベル決定部111は、ラマン利得効率Ga/P0に基づいて適切な入力レベルPinを決定することができる。
たとえば、ラマン利得効率Ga/P0と適切な入力レベルPinとを対応付ける対応情報をあらかじめ光伝送装置100の対応情報記憶部112に記憶しておく。送信レベル決定部111は、算出部110から出力されたラマン利得効率Ga/P0と、対応情報記憶部112に記憶された対応情報とに基づいて適切な入力レベルPinを決定する。
図11は、ラマン利得効率と適切な入力レベルとの関係を示すグラフである。図11において、横軸はラマン利得効率Ga/P0[dB/mW]を示し、縦軸は適切な(たとえば伝送性能が最も高くなる)入力レベルPin[dBm/ch]を示している。図11のプロット点a〜eは、ラマン利得効率Ga/P0に対する適切な入力レベルPinの計算例を示しており、それぞれ図10に示したプロット点a〜eに対応している。
図12は、ラマン利得効率と適切な入力レベルとの対応情報の一例を示す図である。図12に示すテーブル1200は、対応情報記憶部112に記憶される対応情報の一例を示している。テーブル1200は、ラマン利得効率Ga/P0(Ga_1〜Ga_N)と適切な入力レベルPin(Pin_1〜Pin_N)とを対応付けている。
テーブル1200の各行は、たとえば図11に示したプロット点a〜eを示している。または、ラマン利得効率Ga/P0(Ga_1〜Ga_N)のそれぞれは、たとえばGa/P0=0.010〜0.015[dB/mW]、Ga/P0=0.015〜0.020[dB/mW]、…のようにラマン利得効率Ga/P0の範囲を示していてもよい。
送信レベル決定部111は、算出部110から出力されたラマン利得効率Ga/P0とテーブル1200において対応付けられている入力レベルPinを取得し、取得した入力レベルPinを入力レベル記憶部113へ出力する。
なお、ラマン利得効率Ga/P0と適切な入力レベルPinとの関係は、伝送する信号光の種類、伝送スパン数、分散マップ、アンプ101のNFなどの各パラメータによって異なる。このため、各パラメータごとにテーブル1200を対応情報記憶部112に記憶しておいてもよい。この場合は、送信レベル決定部111は、複数のテーブル1200のうちの各パラメータに該当するテーブル1200を取得し、取得したテーブル1200に基づいて入力レベルPinを決定する。
また、対応情報記憶部112に記憶される対応情報は、テーブル1200に限らず、ラマン利得効率Ga/P0と適切な入力レベルPinとを対応付ける情報であればよい。たとえば、ラマン利得効率Ga/P0と適切な入力レベルPinとの関係を示す関係式(近似式)を対応情報として対応情報記憶部112に記憶してもよい。この場合は、送信レベル決定部111は、対応情報記憶部112に記憶された関係式とラマン利得効率Ga/P0に基づいて入力レベルPinを算出することで入力レベルPinを決定する。
(光伝送装置の動作)
図13は、図1に示した光伝送装置の動作の一例を示すフローチャートである。光伝送装置100は、光伝送装置100の制御回路による制御により、たとえば以下の動作を行う。まず、光伝送装置100が起動すると(ステップS1301)、励起光源106が、パワーを変化させながら励起光を出力する(ステップS1302)。
つぎに、算出部110が、ステップS1302によって励起光が出力されている状態で、パワーモニタ108,109からの各モニタ結果に基づいてラマン利得効率Ga/P0と接続損失Llossを算出する(ステップS1303)。つぎに、送信レベル決定部111が、対応情報記憶部112から対応情報を読み出す(ステップS1304)。
つぎに、送信レベル決定部111が、ステップS1303によって算出されたラマン利得効率Ga/P0と、ステップS1304によって読み出された対応情報と、に基づいて入力レベルPinを仮決定する(ステップS1305)。つぎに、送信レベル決定部111が、ステップS1305によって仮決定された入力レベルPinを、ステップS1303によって算出された接続損失Llossに基づいて補正する(ステップS1306)。
つぎに、励起光源106が、励起光の出力を停止する(ステップS1307)。つぎに、アンプ101によって増幅される信号光の後段の光伝送装置への伝送を開始する(ステップS1308)。つぎに、パワー制御部116が、ステップS1306によって補正された入力レベルPinとなるように、信号光の伝送ファイバ10への入力レベルを制御し(ステップS1309)、一連の動作を終了する。以降、パワー制御部116が、ステップS1309による入力レベルの制御を継続してもよい。
信号光の伝送時に励起光の出力を停止する場合について説明したが、信号光の伝送時にも励起光を出力して、信号光をラマン増幅しながら伝送するようにしてもよい。この場合は、たとえば、信号光の伝送時には、励起光源106によって出力する励起光のパワーを一定にする。これにより、信号光のラマン増幅に用いる励起光源106などの構成を利用して、伝送ファイバ10のラマン利得効率Ga/P0を測定することができる。
このように、実施の形態1にかかる光伝送装置100は、伝送ファイバ10のラマン利得効率Ga/P0を測定し、測定結果に基づいて信号光の入力レベルPinを決定する。伝送ファイバ10への信号光の最適な入力レベルPinはラマン利得効率Ga/P0に依存するため、ラマン利得効率Ga/P0の測定結果に基づいて入力レベルPinを決定することで、伝送性能を向上させることができる。
(実施の形態2)
(光伝送装置の構成)
図14は、実施の形態2にかかる光伝送装置の構成を示す図である。図14において、図1に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施の形態2にかかる光伝送装置1400は、波長チャネルch1〜chnの各信号光を伝送するWDM(Wavelength Division Multiplexing)伝送システムにおける光伝送装置である。
図14に示すように、光伝送装置1400は、図1に示した光伝送装置100の構成に加えて、可変減衰部1410と、光カプラ1421〜142nと、波長多重化部1430と、パワーモニタ1440と、を備えている。可変減衰部1410には、波長チャネルch1〜chnの各信号光が入力される。可変減衰部1410は、それぞれ波長チャネルch1〜chnに対応する光可変減衰器1411〜141nを備えている。
光可変減衰器1411〜141nは、入力された波長チャネルch1〜chnの各信号それぞれ可変の減衰量によって減衰させる。光可変減衰器1411〜141nの各減衰量の比率はパワー制御部116によって制御される。光可変減衰器1411〜141nは、減衰させた各信号光をそれぞれ光カプラ1421〜142nへ出力する。
光カプラ1421〜142nは、それぞれ光可変減衰器1411〜141nから出力された各信号光を波長多重化部1430およびパワーモニタ1440へ出力する。波長多重化部1430は、光カプラ1421〜142nから出力された各信号光を波長多重する。波長多重化部1430は、波長多重した信号光をアンプ101へ出力する。アンプ101は、波長多重化部1430から出力された信号光を増幅する。パワーモニタ1440は、それぞれ光可変減衰器1411〜141nから出力された各信号光のパワーの比率をモニタし、モニタ結果をパワー制御部116へ出力する。
励起光源106は、制御回路の制御にしたがって励起光の波長を切り替える可変波長光源とする。パワーモニタ108,109および算出部110は、ラマン利得効率Ga/P0の測定を波長チャネルch1〜chnごとに行う。送信レベル決定部111は、入力レベルPinの決定を波長チャネルch1〜chnごとに行う。パワー制御部116は、波長チャネルch1〜chnごとに決定された入力レベルPinに基づいて、波長チャネルch1〜chnごとの信号光の入力レベルを制御する。
具体的には、差分検出部115は、入力レベル記憶部113に記憶された波長チャネルch1〜chnごとの入力レベルPinを読み出す。そして、差分検出部115は、入力レベル記憶部113から読み出した各入力レベルPinの合計パワーと、パワーモニタ114から出力されたモニタ結果と、の差分をパワー制御部116へ出力する。
パワー制御部116は、差分検出部115から出力された差分が小さくなる方向に光可変減衰器102の減衰量を制御する。また、パワー制御部116は、入力レベル記憶部113に記憶された波長ごとの入力レベルPinの比率を取得する。そして、パワー制御部116は、取得した比率と、パワーモニタ1440から出力される比率と、が近づく方向に光可変減衰器1411〜141nの各減衰量の比率を制御する。これにより、波長チャネルch1〜chnの各信号光のレベルを、入力レベル記憶部113に記憶された波長チャネルch1〜chnごとの入力レベルとなるように制御することができる。
図15は、波長チャネルごとの対応情報の一例を示す図である。図15に示すテーブル1501〜150nは、図14に示した対応情報記憶部112に記憶される波長チャネルch1〜chnごとの対応情報の一例を示している。テーブル1501〜150nは、それぞれ波長チャネルch1〜chnに対応している。テーブル1501〜150nのそれぞれは、図12に示したテーブル1200と同様に、ラマン利得効率Ga/P0(Ga_1〜Ga_N)と入力レベルPin(Pin_1〜Pin_N)とを対応付けている。
送信レベル決定部111は、テーブル1501〜150nのうちの、励起光源106において出力されている励起光の波長に対応するテーブルを読み出す。そして、送信レベル決定部111は、読み出したテーブルにおいて、算出部110から出力されたラマン利得効率Ga/P0と対応付けられている入力レベルPinを取得し、取得した入力レベルPinを入力レベル記憶部113へ出力する。
(光伝送装置の動作)
図16は、図14に示した光伝送装置の動作の一例を示すフローチャートである。光伝送装置1400は、光伝送装置1400の制御回路による制御により、たとえば以下の動作を行う。図16に示すステップS1601〜S1606は、それぞれ図13に示したステップS1301〜S1306と同様であるため説明を省略する。
ステップS1606によって入力レベルPinを補正すると、つぎに、すべての波長チャネルについてステップS1605,S1606により入力レベルPinを決定したか否かを判断する(ステップS1607)。すべての波長チャネルについて決定していない場合(ステップS1607:No)は、励起光源106が生成する励起光の波長を、まだ入力レベルPinを決定していない波長チャネルの波長に切り替え(ステップS1608)、ステップS1602へ戻る。
ステップS1607において、すべての波長チャネルについて入力レベルPinを決定した場合(ステップS1607:Yes)は、ステップS1609へ移行する。図16に示すステップS1609〜S1611は、それぞれ図13に示したステップS1307〜S1309と同様であるため説明を省略する。ただし、ステップS1611においては、波長チャネルごとの信号光の伝送ファイバ10への入力レベルをそれぞれ制御する。
このように、実施の形態2にかかる光伝送装置1400は、複数の波長チャネルの各信号光を伝送するWDMシステムにおいて、波長チャネルごとのラマン利得効率を測定することで波長チャネルごとの入力レベルPinを決定する。これにより、光伝送装置1400は、波長チャネルごとの信号のレベルをそれぞれ制御し、各波長チャネルの信号の伝送性能を向上させることができる。
(実施の形態3)
(光伝送装置の構成)
図17は、実施の形態3にかかる光伝送装置の構成を示す図である。図17において、図1に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図17に示す光伝送システム1700は、光伝送装置1710から光伝送装置1720へ伝送ファイバ11により信号光を伝送する光伝送システムである。
光伝送装置1710は、光伝送システム1700の送信側の光伝送装置である。光伝送装置1710は、図1に示したアンプ101、光可変減衰器102、パワーモニタ114、入力レベル記憶部113、差分検出部115およびパワー制御部116と、光カプラ1711と、監視チャネル受信部1712(OSC:Optical Supervisory Channels)と、を備えている。
光カプラ103は、光可変減衰器102から出力された光を伝送ファイバ11へ入力する。光カプラ103から伝送ファイバ11へ入力された光は、伝送ファイバ11を伝播して光伝送装置1720へ送信される。また、光カプラ103は、光可変減衰器102から出力された信号光をパワーモニタ114へ出力する。
光カプラ1711は、光伝送装置1720から伝送ファイバ12を介して送信された信号光を監視チャネル受信部1712へ出力する。監視チャネル受信部1712は、光カプラ1711から出力された信号光に含まれるOSCを受信し、受信したOSCに含まれる入力レベルPinを入力レベル記憶部113へ出力する。入力レベル記憶部113は、監視チャネル受信部1712から出力された入力レベルPinを記憶する。
光伝送装置1720は、光伝送システム1700の受信側の光伝送装置である。光伝送装置1720は、図1に示した光カプラ104、光カプラ105、励起光源106、光カプラ107、パワーモニタ108,109、算出部110、送信レベル決定部111および対応情報記憶部112と、監視チャネル送信部1721(OSC)と、光カプラ1722と、を備えている。
光カプラ104は、伝送ファイバ11を介して光伝送装置1710から送信された光を光カプラ105へ出力する。また、光カプラ104は、光カプラ107から出力された励起光を伝送ファイバ11へ入力する。これにより、伝送ファイバ11における自然ラマン散乱現象により発生した増幅雑音光が光伝送装置1720へ戻ってくる。このため、パワーモニタ109(第二モニタ)は、伝送ファイバ11へ入力された励起光によって伝送ファイバ11において発生した増幅雑音光のパワーをモニタすることができる。
送信レベル決定部111は、決定した入力レベルPinを監視チャネル送信部1721へ出力する。監視チャネル送信部1721は、送信レベル決定部111から出力された入力レベルPinを含むOSCを光カプラ1722へ出力する。光カプラ1722は、監視チャネル送信部1721から出力されたOSCを伝送ファイバ12へ入力する。これにより、OSCが伝送ファイバ12を介して光伝送装置1710へ送信される。
このように、受信側の光伝送装置1720から送信側の光伝送装置1710へ向かって伝送ファイバ11へ励起光を入力し、光伝送装置1720において伝送ファイバ11のラマン増幅利得を測定してもよい。光伝送装置1720は、測定したラマン増幅利得に基づいて入力レベルPinを決定し、決定した入力レベルPinを光伝送装置1710へ送信することで、伝送ファイバ11へ入力される信号光のレベルを制御する。
図18は、図17に示した光伝送装置の変形例を示す図である。図18において、図17に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図18に示すように、光伝送装置1710は、図17に示した構成に加えて、光カプラ1811、光カプラ1812、励起光源1813、光カプラ1814、パワーモニタ1815,1816、算出部1817、送信レベル決定部1818、対応情報記憶部1819、監視チャネル送信部1820(OSC)および光カプラ1821を備えていてもよい。
光カプラ1811、光カプラ1812、励起光源1813、光カプラ1814、パワーモニタ1815,1816、算出部1817、送信レベル決定部1818、対応情報記憶部1819、監視チャネル送信部1820および光カプラ1821は、それぞれ図17に示した光カプラ104、光カプラ105、励起光源106、光カプラ107、パワーモニタ108,109、算出部110、送信レベル決定部111、対応情報記憶部112、監視チャネル送信部1721および光カプラ1722と同様の構成である。
光カプラ1811は、光伝送装置1710の前段の光伝送装置から伝送ファイバ13により送信された光を光カプラ1812へ出力する。光カプラ1821は、送信レベル決定部1818からのOSCを伝送ファイバ14へ入力する。これにより、入力レベルPinを含むOSCが伝送ファイバ14を介して光伝送装置1710の前段の光伝送装置へ送信される。このように、図17に示した光伝送システム1700を多段に構成してもよい。
図19は、図17に示した光伝送システムの動作の一例を示すシーケンス図である。光伝送装置1710および光伝送装置1720は、たとえば以下の動作を行う。まず光伝送装置1720が、パワーを変化させながら励起光を出力する(ステップS1901)。ステップS1901によって出力される励起光は伝送ファイバ11へ入力される。つぎに、光伝送装置1720が、ステップS1901によって励起光が出力されている状態でラマン利得効率Ga/P0を算出する(ステップS1902)。
つぎに、光伝送装置1720が、対応情報を読み出す(ステップS1903)。つぎに、光伝送装置1720が、ステップS1902によって算出されたラマン利得効率Ga/P0と、ステップS1903によって読み出された対応情報と、に基づいて入力レベルPinを決定する(ステップS1904)。
つぎに、光伝送装置1720が、励起光の出力を停止する(ステップS1905)。つぎに、光伝送装置1720が、ステップS1904によって決定された入力レベルPinを光伝送装置1710へ送信する(ステップS1906)。つぎに、光伝送装置1710が、光伝送装置1720への信号光の伝送を開始する(ステップS1907)。
つぎに、光伝送装置1710が、ステップS1906によって送信された入力レベルPinとなるように、ステップS1907によって伝送を開始された信号光の伝送ファイバ11への入力レベルを制御し(ステップS1908)、一連の動作を終了する。以降、光伝送装置1710が、ステップS1908による入力レベルの制御を継続してもよい。
このように、実施の形態3にかかる光伝送装置1720は、伝送ファイバ11のラマン利得効率Ga/P0を測定し、測定結果に基づいて信号光の入力レベルPinを決定する。そして、光伝送装置1720は、決定した入力レベルPinを光伝送装置1710へ送信することで、伝送ファイバ11へ入力される信号光の入力レベルを制御することができる。これにより、伝送性能を向上させることができる。
(実施の形態4)
(光伝送装置の構成)
図20は、実施の形態4にかかる光伝送装置の構成を示す図である。図20において、図17に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図20に示すように、実施の形態4にかかる光伝送装置2000は、図17に示した光カプラ104、光カプラ105、励起光源106、光カプラ107、パワーモニタ108,109および算出部110と、アンプ2001と、DCM2002と、ファイバタイプ推定部2003と、対応情報記憶部2004と、出力部2005と、を備えている。
光カプラ105は、光カプラ104から出力された光をアンプ2001およびパワーモニタ109へ出力する。アンプ2001は、光カプラ105から出力された光を増幅して後段へ出力する。また、アンプ2001にはDCM2002が設けられている。DCM2002は、アンプ2001によって増幅される光の分散補償を行う。算出部110は、算出したラマン利得効率Ga/P0をファイバタイプ推定部2003へ出力する。
ファイバタイプ推定部2003は、算出部110から出力されたラマン利得効率Ga/P0に基づいて、伝送ファイバ11の種類を推定する。たとえば、対応情報記憶部2004には、ラマン利得効率Ga/P0と伝送ファイバ11の種類との対応情報が記憶されている。ファイバタイプ推定部2003は、対応情報記憶部2004に記憶された対応情報を読み出し、読み出した対応情報と算出部110から出力されたラマン利得効率Ga/P0とに基づいて伝送ファイバ11の種類を推定する。ファイバタイプ推定部2003は、伝送ファイバ11の種類の推定結果を出力部2005へ出力する。
出力部2005は、ファイバタイプ推定部2003から出力された伝送ファイバ11の種類の推定結果を出力する。たとえば、出力部2005は、伝送ファイバ11の種類をユーザへ通知するユーザインタフェースである。これにより、ユーザは、伝送ファイバ11の種類を知ることができる。たとえば、ユーザは、出力部2005によって出力された伝送ファイバ11の種類に基づいて、DCM2002のパラメータを設定したり、設定されたDCM2002のパラメータが適切か否かを確認したりすることができる。
また、図20に示した光伝送装置2000の構成に加えて、送信レベル決定部111、対応情報記憶部112、監視チャネル送信部1721および光カプラ1722を光伝送装置2000に設けてもよい。これにより、適切な入力レベルPinを決定して伝送性能を向上させるとともに、伝送ファイバ11の種類の推定結果を得ることができる。
ここでは図17に示した光伝送装置1720の構成を光伝送装置2000に用いる場合について説明したが、たとえば図1に示した光伝送装置100の構成を光伝送装置2000に用いてもよい。この場合は、伝送ファイバ11の入力側の光伝送装置100において伝送ファイバ11の種類を得ることができる。
図21は、ラマン利得効率とファイバの種類との対応情報の一例を示す図である。図21に示すテーブル2100は、対応情報記憶部2004に記憶される対応情報の一例を示している。テーブル2100は、ラマン利得効率Ga/P0(Ga_1〜Ga_N)と伝送ファイバ11の種類(FT_1〜FT_N)とを対応付けている。
ラマン利得効率Ga/P0(Ga_1〜Ga_N)のそれぞれは、たとえばGa/P0=0.010〜0.015[dB/mW]、Ga/P0=0.015〜0.020[dB/mW]、…のようにラマン利得効率Ga/P0の範囲を示していてもよい。ファイバタイプ推定部2003は、算出部110から出力されたラマン利得効率Ga/P0とテーブル2100において対応付けられている伝送ファイバ11の種類を取得し、取得した伝送ファイバ11の種類を出力部2005へ出力する。
図22は、図20に示した光伝送装置の変形例を示す図である。図22において、図20に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図22に示すように、光伝送装置2000は、図20に示した構成に加えて、DCMメニュー取得部2201と、比較部2202と、を備えていてもよい。
DCMメニュー取得部2201は、DCM2002に適用されているDCMメニューを取得する。DCMメニューは、DCM2002のパラメータの情報である。DCMメニュー取得部2201は、たとえば光伝送装置2000を管理する上位システムに問い合わせることでDCMメニューを取得する。DCMメニュー取得部2201は、DCMメニューを比較部2202へ出力する。
比較部2202は、DCMメニュー取得部2201から出力されたDCMメニューと、ファイバタイプ推定部2003から出力された伝送ファイバ11の種類と、を比較する。たとえば、比較部2202には、伝送ファイバ11の種類ごとに適切なDCMメニューが記憶されており、比較部2202は、伝送ファイバ11の種類に対してDCMメニューが適切なものか否かを判断する。
比較部2202は、判断結果を出力部2005へ出力する。出力部2005は、比較部2202から出力された判断結果を出力する。たとえば、出力部2005は、伝送ファイバ11の種類に対してDCMメニューが適切なものでない旨の判断結果が比較部2202から出力されると、ユーザに対して警告を出力する。これにより、ユーザは、DCM2002が適切なものでないことを知ることができる。
たとえば、手配オペレーションミスなどによってDCM2002に想定外のDCMが配置されていた場合に、出力部2005によってユーザに対して警告を出力することができる。これにより、ユーザは、信号光の伝送開始を中止したり、信号光の伝送開始の前にDCM2002を交換したりすることが可能になる。
図23は、図20に示した光伝送装置の動作の一例を示すフローチャートである。光伝送装置2000は、光伝送装置2000の制御回路による制御により、たとえば以下の動作を行う。まず、光伝送装置2000が起動すると(ステップS2301)、励起光源106が、パワーを変化させながら励起光を出力する(ステップS2302)。
つぎに、算出部110が、ステップS2302によって励起光が出力されている状態で、パワーモニタ108,109からの各モニタ結果に基づいてラマン利得効率Ga/P0を算出する(ステップS2303)。つぎに、ファイバタイプ推定部2003が、対応情報記憶部2004に記憶された対応情報を読み出す(ステップS2304)。
つぎに、ファイバタイプ推定部2003が、ステップS2303によって算出されたラマン利得効率Ga/P0と、ステップS2304によって読み出された対応情報と、に基づいて伝送ファイバ11の種類を推定する(ステップS2305)。つぎに、出力部2005が、ステップS2305によって推定された伝送ファイバ11の種類を出力し(ステップS2306)、一連の動作を終了する。
このように、実施の形態4にかかる光伝送装置2000は、測定されたラマン利得効率Ga/P0に基づいて伝送ファイバ11の種類を推定し、推定結果を出力する。ラマン利得効率Ga/P0は伝送ファイバ11のパラメータLeff/Aeffに依存する(たとえば図10参照)ため、ラマン利得効率Ga/P0の測定結果を用いることで伝送ファイバ11の種類を推定することができる。
(実施の形態5)
(光伝送装置の構成)
図24は、実施の形態5にかかる光伝送装置の構成を示す図である。図24において、図17に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図24に示すように、実施の形態5にかかる光伝送装置2400は、図17に示した光伝送装置1720の構成に加えて、光カプラ2401と、アンプ2402と、可変分散補償器2403と、分散測定部2404と、分散マップ決定部2405と、を備えている。
光カプラ105は、光カプラ104から出力された光を光カプラ2401およびパワーモニタ109へ出力する。光カプラ2401は、光カプラ105から出力された光をアンプ2402および分散測定部2404へ出力する。アンプ2402は、光カプラ2401から出力された光を増幅して後段へ出力する。
また、アンプ2402には可変分散補償器2403が設けられている。可変分散補償器2403は、アンプ2402によって増幅される光を可変の補償量によって分散補償する。可変分散補償器2403の補償量は、分散マップ決定部2405から出力される分散マップに基づいて設定される。
分散測定部2404は、光カプラ1722から出力された光の波長分散を測定する。これにより、伝送ファイバ11において発生する信号光の波長分散を測定することができる。分散測定部2404は、測定した波長分散を分散マップ決定部2405へ出力する。
分散マップ決定部2405は、分散測定部2404から出力された波長分散に基づいて、可変分散補償器2403において用いる分散マップを決定する。たとえば、分散マップ決定部2405には、波長分散と適切な分散マップとの対応情報が記憶されており、分散マップ決定部2405は、分散測定部2404から出力された波長分散と対応情報に基づいて分散マップを決定する。分散測定部2404は、決定した分散マップを可変分散補償器2403および送信レベル決定部111へ出力する。
送信レベル決定部111は、算出部110から出力されたラマン利得効率Ga/P0と、分散測定部2404によって測定された波長分散と、に基づいて入力レベルPinを決定する。具体的には、送信レベル決定部111は、算出部110から出力されたラマン利得効率Ga/P0と、分散マップ決定部2405から出力された分散マップと、に基づいて入力レベルPinを決定する。たとえば、対応情報記憶部112には、ラマン利得効率と入力レベルとの対応情報が分散マップごとに記憶されている。
図25は、分散マップごとの対応情報の一例を示す図である。図25に示すテーブル2501〜250mは、図24に示した対応情報記憶部112に記憶される分散マップごとの対応情報の一例を示している。テーブル2501〜250mは、それぞれ分散マップ1〜mに対応している。テーブル2501〜250mのそれぞれは、図12に示したテーブル1200と同様であり、ラマン利得効率Ga/P0(Ga_1〜Ga_N)と適切な入力レベルPin(Pin_1〜Pin_N)とを対応付けている。
送信レベル決定部111は、テーブル2501〜250mのうちの、分散マップ決定部2405から出力された分散マップに対応するテーブルを読み出す。そして、送信レベル決定部111は、読み出したテーブルにおいて、算出部110から出力されたラマン利得効率Ga/P0と対応付けられている入力レベルPinを取得し、取得した入力レベルPinを監視チャネル送信部1721へ出力する。
図26は、図24に示した光伝送システムの動作の一例を示すシーケンス図である。光伝送装置1710および光伝送装置2400は、たとえば以下の動作を行う。図26に示すステップS2601〜S2602は、図19に示したステップS1901〜S1902と同様であるため説明を省略する。ステップS2602の後、光伝送装置2400が、伝送ファイバ11の波長分散を測定する(ステップS2603)。
つぎに、光伝送装置2400が、ステップS2603によって測定された波長分散に基づいて分散マップを決定する(ステップS2604)。ステップS2605〜S2610は、図19に示したステップS1903〜S1908と同様であるため説明を省略する。ただし、ステップS2605においては、光伝送装置2400が、ステップS2604によって決定された分散マップに対応する対応情報を読み出す。
このように、実施の形態5にかかる光伝送装置2400によれば、伝送ファイバ11の波長分散を測定し、測定した波長分散に基づいて決定した分散マップにより可変分散補償器2403で分散補償を行うことができる。これにより、伝送ファイバ11において発生する波長分散を精度よく補償し、伝送性能を向上させることができる。
また、対応情報記憶部112には分散マップごとに対応情報を記憶しておき、送信レベル決定部111は、決定された分散マップに対応する対応情報を読み出して入力レベルPinを決定する。ラマン利得効率Ga/P0に対する適切な入力レベルPinは、伝送ファイバ11の波長分散によって変化するため、決定された分散マップに応じた対応情報を用いることで、より伝送性能を向上させる入力レベルPinを決定することができる。
ここでは分散マップごとに対応情報を記憶する場合について説明したが、波長分散ごとに対応情報を記憶してもよい。この場合は、分散測定部2404は、測定した波長分散を分散マップ決定部2405および送信レベル決定部111へ出力する。送信レベル決定部111は、分散測定部2404から出力された波長分散に対応する対応情報を対応情報記憶部112から読み出し、読み出したテーブルに基づいて入力レベルPinを決定する。
以上説明したように、光伝送装置および光伝送システムは、伝送ファイバのラマン利得効率を測定する。そして、伝送ファイバへの信号光の最適な入力レベルがラマン利得効率に依存することを利用して、信号光の入力レベルをラマン利得効率の測定結果に応じたレベルに制御することで伝送性能を向上させることができる。
たとえば、何百、何千kmにも及ぶ全ての伝送ファイバのパラメータ(Aeffやα)を事前に把握しなくても、測定したラマン利得効率に基づいて入力レベルを決定することで伝送性能を向上させることができる。このため、伝送性能を容易に向上させることができる。上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)伝送ファイバにより信号光を伝送する光伝送システムの光伝送装置において、
前記伝送ファイバのラマン利得効率を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定されたラマン利得効率に基づいて前記信号光の入力レベルを決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された入力レベルとなるように前記伝送ファイバへ入力される信号光のレベルを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする光伝送装置。
(付記2)前記測定手段は、
前記伝送ファイバへパワーを変化させながら励起光を入力する励起手段と、
前記励起手段によって入力された励起光のパワーをモニタする第一モニタと、
前記励起手段によって入力された励起光によって前記伝送ファイバにおいて発生した増幅雑音光のパワーをモニタする第二モニタと、
前記第一モニタおよび前記第二モニタによる各モニタ結果に基づいて前記ラマン利得効率を算出する算出手段と、
を備えることを特徴とする付記1に記載の光伝送装置。
(付記3)前記測定手段は、前記伝送ファイバへ前記信号光が入力されていない状態で前記ラマン利得効率を測定することを特徴とする付記2に記載の光伝送装置。
(付記4)ラマン利得効率と入力レベルとの対応情報を記憶する記憶手段を備え、
前記決定手段は、前記記憶手段によって記憶された対応情報と前記ラマン利得効率に基づいて前記入力レベルを決定することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の光伝送装置。
(付記5)自装置と前記伝送ファイバとの間の接続損失を算出する損失算出手段を備え、
前記決定手段は、前記損失算出手段によって算出された接続損失と前記ラマン利得効率に基づいて前記入力レベルを決定することを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の光伝送装置。
(付記6)前記信号光は、複数の波長チャネルの各信号光を含み、
前記測定手段は、前記波長チャネルごとの前記ラマン利得効率を測定し、
前記決定手段は、前記波長チャネルごとの前記入力レベルを決定し、
前記制御手段は、前記波長チャネルごとの信号光のレベルを制御することを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載の光伝送装置。
(付記7)前記測定手段によって測定されたラマン利得効率に基づいて前記伝送ファイバの種類を推定する推定手段と、
前記推定手段による推定結果を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載の光伝送装置。
(付記8)前記伝送ファイバにおいて前記信号光に発生する波長分散を測定する分散測定手段を備え、
前記決定手段は、前記分散測定手段によって測定された波長分散と前記ラマン利得効率に基づいて前記入力レベルを決定することを特徴とする付記1〜7のいずれか一つに記載の光伝送装置。
(付記9)前記損失算出手段による前記接続損失の算出結果を出力する出力手段を備えることを特徴とする付記5に記載の光伝送装置。
(付記10)伝送ファイバにより信号光を伝送する光伝送システムにおいて、
前記伝送ファイバのラマン利得効率を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定されたラマン利得効率に基づいて前記信号光の入力レベルを決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された入力レベルとなるように前記伝送ファイバへ入力される信号光のレベルを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする光伝送システム。
(付記11)伝送ファイバにより信号光を伝送する光伝送方法において、
前記伝送ファイバのラマン利得効率を測定する測定工程と、
前記測定工程によって測定されたラマン利得効率に基づいて前記信号光の入力レベルを決定する決定工程と、
前記決定工程によって決定された入力レベルとなるように前記伝送ファイバへ入力される信号光のレベルを制御する制御工程と、
を含むことを特徴とする光伝送方法。