JP5809765B1 - 熱特性評価方法および装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱特性評価の信頼性が高く、統一的な標準評価指標となり得る熱特性評価方法および装置を提供する。【解決手段】試験体1が設置される基体2と、主流路6を確保する構造3と、外側空間7を確保する構造4と、環境気体8A,8Bを供給する気体供給部と、試験体1に当接する温度調整部22と、を備えた評価装置を用いる。試験体1は、被評価材層11を形成した基板12と、熱流センサ13と、調整層14とを備えている。基体2には、試験体1を収容可能な収容部21が形成されている。収容部21は、被評価材層11の表面11aと基体2の主面2aとが面一となるように試験体1を設置可能である。温度調整部22は、自らの温度を一定に維持でき、かつ試験体1との間で熱伝導により熱の授受が可能である。流路6、7に環境気体8A,8Bを流通させつつ、熱流センサ13によって熱流を測定し、測定値に基づいて被評価材の熱特性を評価する。【選択図】図2

Description

本発明は、塗料などの熱特性を評価する方法および装置に関する。
我が国における省エネルギー対策は喫緊の課題であり、特に住宅・建築物等の民生部門ではエネルギー消費の増加幅が大きいことから、さらなる省エネルギー対策を進めることが急務とされている。
住宅の屋根、外壁等に塗布される塗料は、塗膜による被塗物の表面保護、美観の維持などが本来の機能であるが、近年では省エネルギー性能(エネルギー移動に関する特性)に優れた機能性塗料(省エネルギー塗料)が提案されている。
例えば、前述の機能性塗料を建築物の屋根、外壁等に使用すれば、熱線吸収の抑制などにより室内の温度上昇を抑制できるため、夏季の冷房の使用を少なくし、消費電力を削減できる。このため、この種の塗料を利用した省エネルギー対策の推進が期待されている。
省エネルギー性能の評価には熱特性の評価が不可欠である。塗料の熱特性の評価方法としては、例えば、特許文献1〜4および非特許文献1に記載された方法がある。これらの評価方法では、主に日射反射率を基準として熱特性の評価を行っている。非特許文献1および特許文献4に記載の評価方法では、熱流の測定により熱特性の評価を行っている。
特開2013−194295号公報 特開2005−90042号公報 特開2013−147571号公報 特許第5589151号公報
株式会社 三菱化学テクノリサーチ、 "平成24年度エネルギー使用合理化基盤整備事業(塗料の省エネルギー性能評価方法調査)「経済産業省委託事業」報告書" 平成25年3月、[平成26年4月28日検索]、インターネット<URL:http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2013fy/E003071.pdf>
省エネルギー塗料には、反射機能による熱線吸収抑制のほかに、断熱機能による熱伝導抑制、放射機能による熱放出などを特徴とするものがある。
しかし、特許文献1〜3に記載された評価方法は、主に日射反射率を熱特性の評価に用いているため、断熱機能および放射機能を含めた熱移動に関する機能を総合的に評価できるとはいえなかった。また、これらの評価方法は、試験方法に互いに異なる点があるため、評価結果を互いに比較することができない場合があった。非特許文献1に記載された評価方法は、測定値の変動が大きく、再現性の点で問題があった。特許文献4に記載された評価方法でも、境界条件の設定幅および測定精度などの点で改善の余地があった。そのため、これらの評価方法では、評価の信頼性をさらに高めることが要望されていた。
また、利用者が製品を選択するにあたって、熱特性を評価するための指標がないことは大きな問題であり、統一的に標準化された指標を確立することは、この種の塗料の利用拡大に向けての課題であった。
本発明は、前記課題を鑑みてなされたものであって、熱特性評価の信頼性が高く、統一的な標準評価指標となり得る熱特性評価方法および装置を提供することを目的とする。
本発明は、被評価材の熱特性を評価する方法であって、前記被評価材からなる被評価材層を有する試験体が設置される基体と、前記基体の主面側に、環境流体が流通する主流路を確保する主流路構造と、少なくとも前記主流路に前記環境流体を供給する流体供給部と、前記試験体に当接可能な温度調整部と、前記主流路の、前記基体とは反対側に外側空間を確保する外側空間構造と、を備えた評価装置を用い、前記試験体は、第1面に前記被評価材層が形成され、かつ前記第1面とは反対側の第2面に、熱流センサと、前記熱流センサとは平面視位置を違えた調整層とが設けられ、前記調整層の厚さ方向の熱抵抗は、前記熱流センサの厚さ方向の熱抵抗と同等であり、前記基体には、前記被評価材層を前記主流路に露出させ、かつ前記熱流センサおよび前記調整層を前記温度調整部に当接させた状態で前記試験体を収容可能な収容部が形成され、前記収容部は、前記被評価材層の表面と前記基体の前記主面とが面一となるように前記試験体を設置可能であり、前記温度調整部は、自らの温度を一定に維持でき、かつ前記試験体との間で熱伝導により熱の授受が可能であり、前記外側空間は、前記環境流体が流通する流路であり、前記試験体を前記収容部に設置し、前記流体供給部からの環境流体を少なくとも前記主流路に流通させつつ、前記熱流センサによって熱流を測定し、前記熱流の測定値に基づいて前記被評価材の熱特性を評価する熱特性評価方法を提供する。
前記温度調整部は、前記試験体を載置可能なヒートシンクであることが好ましい。
前記主流路構造は、前記基体の前記主面から間隔をおいて設けられて前記主流路を区画する主流路区画板を備え、前記主流路区画板は、外部の光を採り入れる光導入口を有し、前記光導入口には、透明板が設置され、前記光導入口の大きさおよび位置は、前記外部の光が前記試験体の前記被評価材層の表面で反射した光の80%以上を前記透明板が受けるように定められることが好ましい。
前記調整層は、平面視において前記熱流センサを囲む枠状に形成されていることが好ましい。
本発明は、被評価材の熱特性を評価する装置であって、前記被評価材からなる被評価材層を有する試験体が設置される基体と、前記基体の主面側に、環境流体が流通する主流路を確保する主流路構造と、少なくとも前記主流路に前記環境流体を供給する流体供給部と、前記試験体に当接可能な温度調整部と、前記主流路の、前記基体とは反対側に外側空間を確保する外側空間構造と、を備え、前記試験体は、第1面に前記被評価材層が形成され、かつ前記第1面とは反対側の第2面に、熱流センサと、前記熱流センサとは平面視位置を違えた調整層とが設けられ、前記調整層の厚さ方向の熱抵抗は、前記熱流センサの厚さ方向の熱抵抗と同等であり、前記基体には、前記被評価材層を前記主流路に露出させ、かつ前記熱流センサおよび前記調整層を前記温度調整部に当接させた状態で前記試験体を収容可能な収容部が形成され、前記収容部は、前記被評価材層の表面と前記基体の前記主面とが面一となるように前記試験体を設置可能であり、前記温度調整部は、自らの温度を一定に維持でき、かつ前記試験体との間で熱伝導により熱の授受が可能であり、前記流体供給部は、前記外側空間が前記環境流体を流通させる流路となるように、前記外側空間に前記環境流体を供給可能である熱特性評価装置を提供する。
本発明の熱特性評価装置は、前記試験体の前記被評価材層に光を照射する光源を備えていることが好ましい。
本発明によれば、試験体との間で熱伝導により熱の授受を行う温度調整部を用いるため、環境気体により試験体の下面側の温度条件を調整する方法に比べ、試験体の下面側の温度条件を確実かつ正確に調整できる。そのため、熱流センサによる測定の精度を高めることができる。
また、主流路の外側に外側空間があるため、主流路構造の温度条件を精度よく調整することができることから、試験体が主流路構造から受ける影響を正確に把握することができる。
これらのことから、本発明によれば、信頼性が高い測定値が得られる。従って、本発明は、熱特性の評価における統一的、標準的な指標を提供できる。
本発明の熱特性評価装置の一実施形態の概略構成図である。 図1の熱特性評価装置の一部を示す構成図である。 図1の熱特性評価装置の分解斜視図である。 試験体の一例の構造を示す断面図である。 前図の試験体の平面図である。 熱特性評価装置の他の例の一部を示す構成図である。 試験体の他の例の構造を示す断面図である。 実施例の評価装置を用いた場合の熱流を示すグラフである。
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明の熱特性評価装置(以下、評価装置という)の一実施形態である評価装置10の概略構成図である。図2は評価装置10の一部を示す構成図である。図3は装置本体10Aの分解斜視図である。
以下の説明において、「上」および「下」は、図1および図2における上下に即している。基体2に対して第1区画板31側を上側という。また、高さ方向とは図1における上方である。「平面視」とは、基体2の厚さ方向(上下方向)から見ることをいう。
図1および図2に示すように、評価装置10は、装置本体10Aと、装置本体10Aに環境気体8A,8B(環境流体)を供給する気体供給部5A,5B(流体供給部)と、を備えている。
装置本体10Aは、試験体1が設置される基体2と、基体2の主面2a(上面)側に主流路6を確保する主流路構造3と、主流路6の上側(基体2とは反対側)に外側空間7を確保する外側空間構造4と、試験体1に当接可能な温度調整部22と、試験体1に光を照射する光源9と、を備えている。
装置本体10Aは、支持体61によって床面64上に支持されている。
図2および図3に示すように、基体2は例えば平面視矩形とすることができる。基体2は、例えば合成樹脂、木材などからなる。基体2は、光源9からの光に関して不透明である(遮光性を有する)ことが好ましい。この例では、基体2の主面2aは、水平とされている。
基体2の中央部には、試験体1が設置される収容部21が形成されている。
収容部21は、例えば基体2を厚さ方向に貫通して形成された空間である。収容部21は、例えば平面視矩形とされ、その幅および長さは、試験体1の幅および長さに合わせて定めることができる。
収容部21の幅寸法は試験体1の幅とほぼ同じまたはこれよりやや大きくすることができる。収容部21の長さ寸法は試験体1の長さとほぼ同じまたはこれよりやや長くすることができる。
図2に示す例では、収容部21の幅寸法は試験体1の幅とほぼ同じであり、収容部21の長さ寸法は試験体1の長さとほぼ同じであるため、収容部21は、内側面21aに対してほとんど隙間なく試験体1を設置できる。
収容部21の深さ、すなわち図2の深さD1は、試験体1の上面と基体2の主面2aとが面一となるように設定される。
なお、収容部21は、基体2の主面2aに形成された凹部であってもよい。図1および図2に示す例では、収容部21は試験体1の全体を収容しているが、収容部21は試験体1の一部のみを収容する構造であってもよい。
収容部21に設置された試験体1は、上面(被評価材層11の表面11a)の少なくとも一部が主流路6に露出する。図示例では、試験体1は上面全体が主流路6に露出している。
収容部21の上部開口は、試験体1によって実質的に気密に閉止されることが好ましい。これによって、主流路6内の環境気体8Aが収容部21を通して外部に漏出するのを防ぎ、主流路6内の環境気体8Aの流れの乱れを防ぐことができる。
温度調整部22は、例えば内部に流路(図示略)を有するブロック状とされている。温度調整部22は、例えば直方体状とすることができる。上面22aは平坦であることが好ましい。温度調整部22は、一部または全部を収容部21内に設けることができる。
温度調整部22の上面22aは試験体1の下面に当接する。詳しくは、温度調整部22の上面22aは、試験体1の熱流センサ13の外面および調整層14の外面に当接する。
温度調整部22の上面22aは、その面積が試験体1の下面の面積と同じまたは試験体1の下面の面積より大きくされることが好ましい。これによって、試験体1の下面全域に当接可能となる。
温度調整部22の上面22aの高さ位置は、試験体1の上面(被評価材層11の表面11a。主流路6側の表面)の高さ位置が、基体2の主面2a(上面)の高さ位置と同じとなるように定められる。試験体1の上面と基体2の主面2aとは面一となる。
「面一」とは、2つの面の高低差が5mm以下(好ましくは1mm以下)であることをいう。図示例では、試験体1の上面と基体2の主面2aとの高さ位置は互いに同じであるが、試験体1の上面と基体2の主面2aとの高さ位置が異なる場合でも、それらの高低差が5mm以下(好ましくは1mm以下)であれば、これら2つの面は面一である。
試験体1の上面と基体2の主面2aとが面一となることによって、主流路6内の環境気体8Aの流れの乱れを抑制できる。
温度調整部22は、ヒートシンクであることが好ましい。温度調整部22は、上面22aに載置された試験体1との間で熱伝導により熱の授受が可能である。
温度調整部22は、内部に流路を有する構造とすることができる。温度調整部22には、前記流路に熱媒体を導入する導入路23aと、前記流路から熱媒体を導出する導出路23bとが接続されている(図3参照)。
熱媒体は、図示せぬ温度調整器によって温度を任意に調整可能である。温度調節器は、例えば熱媒体の温度を検出する温度センサと、熱媒体を加温するヒータ(加温手段)と、熱媒体を冷却するクーラ(冷却手段)と、温度センサの検出値に基づいてヒータまたはクーラの出力を制御する制御部と、を有する構造を採用できる。熱媒体としては、例えば水、空気などを使用できる。
温度調整部22は、熱媒体によって任意の温度とすることができるため、自らの温度を一定に維持でき、試験体1との間で熱伝導によって確実かつ正確に熱を伝えることができる。
図2および図3に示すように、主流路構造3は、主流路6を区画する第1区画板31(主流路区画板)と、第1区画板31の下面31bに設けられた一対の断熱壁32,32と、主流路6の入口部(入口6aおよびその近傍を含む部分)に設けられたフィルタ33と、第1区画板31に設置された透明板35とを有する。
第1区画板31は、基体2の主面2aと平行であり、主面2aの上方に、主面2aから間隔をおいて設置されている。主流路6は、主面2aと第1区画板31の下面31bとの間の空間である。
第1区画板31は、例えば平面視矩形とすることができる。第1区画板31は、例えば合成樹脂、木材などからなる。第1区画板31は、光源9からの光に関して不透明であり、遮光性を有することが好ましい。
主流路6の高さH1は、特に限定されないが、50mm以下が好ましい。高さH1をこの範囲とすることによって、環境気体8Aの流れの乱れが生じにくくなるため、環境気体8Aは主流路6の全体にわたり均一に流れる。
そのため、主流路6における環境条件を安定化することができる。よって、主流路6と試験体1との間の表面熱伝達率を精度よく調整することができる。
主流路6の高さH1は、10mm以上が好ましい。高さH1をこの範囲とすることによって、主流路6の流通抵抗を小さくできる。
第1区画板31の中央部には、外部の光を採り入れる光導入口34が形成されている。光導入口34には、透明板35を設置することができる。
光導入口34は、第1区画板31を厚さ方向に貫通して形成された開口部である。光導入口34は、例えば平面視矩形とされている。図示例では、光導入口34の幅寸法は透明板35の幅とほぼ同じであり、光導入口34の長さ寸法は透明板35の長さとほぼ同じであるため、光導入口34の内側面34aに対してほとんど隙間なく透明板35を設置できる。
光導入口34の大きさおよび平面視位置は、平面視において試験体1を含み、かつ光導入口34の面積が試験体1の面積より大きくなるように定められる。
光導入口34の大きさおよび平面視位置は、光源9からの光が試験体1の上面(表面11a)で反射した反射光のうち透明板35が受ける光の割合に基づいて設定することができる。例えば、前記反射光の60%以上を透明板35が受けるように設定することができる。前記反射光を透明板35が受ける割合は、80%以上が好ましく、99%以上がさらに好ましい。
前記反射光のうち透明板35が受ける光の割合は、試験体1から透明板35への形態係数から算出することができる。試験体1から透明板35への形態係数F1,2は次の式(1)で表される。式(1)において、試験体1の上面の幅寸法をcとし、長さ寸法をdとする。透明板35の下面の幅寸法をaとし、長さ寸法をbとする。試験体1と透明板35との距離をhとする。
Figure 0005809765
光導入口34は、透明板35によって気密に閉止されることが好ましい。これによって、主流路6内の環境気体8Aが光導入口34を通して外側空間7に漏出するのを防ぐとともに、外側空間7内の環境気体8Bが光導入口34を通して主流路6に侵入するのを防ぐことができる。よって、主流路6内の環境気体8Aおよび外側空間7内の環境気体8Bの流れの乱れを防ぐことができる。
第1区画板31の上面31aは、透明板35の上面35aと面一となることが好ましい。第1区画板31の下面31bは、透明板35の下面35bと面一となることが好ましい。
光導入口34の内面34aには、透明板35を保持するための保持構造を設けることができる。この保持構造は、例えば、透明板35の周縁部を支持する支持突起、透明板35の端面を支持する傾斜面などであってよい。この保持構造によって、透明板35は光導入口34内に安定に保持される。
なお、光導入口34の形成位置は、第1区画板31の中央部に限定されず、中央部よりも周縁寄りの位置であってもよい。
また、第1区画板31は、全体を透明板(ガラス板等)で構成してもよく、その場合には第1区画板31を通して光を取り入れることができるため、光導入口は形成しなくてもよい。
透明板35は、試験体1に照射される光(この例では光源9からの光)が透過可能な材料からなり、例えばガラス板、合成樹脂板などが使用できる。透明板35の材料としては、いわゆる高透過性ガラスの使用が好ましい。高透過性ガラスは、JIS R 3106による日射透過率が88.0%以上であることが好ましい。高透過性ガラスは、JIS R 3106の付表2(日射透過率、日射反射率、および日射吸収率を計算するための重価係数)の波長のうち380〜2100nmの範囲での分光透過率の最大値と最小値との差が0.05以下のものが好ましい。
断熱壁32は断熱材からなる。断熱材としては、ポリウレタン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、フェノール樹脂発泡体等の合成樹脂発泡体などの多孔質材を使用できる。断熱壁32は遮光性を有することが好ましい。
断熱壁32は、第1区画板31の長さ方向(主流路6に沿う方向)に沿って配置された直方体状とされている。2つの断熱壁32は第1区画板31の幅方向に互いに間隔をおいて設置され、これら2つの断熱壁32と、第1区画板31と、基体2とで区画される断面矩形の空間が主流路6である。主流路6の内側面6cは断熱材からなる。
主流路6の内面は、日射吸収率を0.90以上とするか、またはつや消し仕上げとしてもよい。これによって、主流路6の内面で反射した反射光が熱流の測定に悪影響を及ぼすのを回避できる。主流路6の内面は、内側面6c、底面(基体2の主面2a(上面))、および天面(第1区画板31の下面31b)である。
なお、主流路構造3は、主流路6の内面のうち内側面以外の面、例えば底面(基体2の主面2a(上面))、または天面(第1区画板31の下面31b)に、断熱材からなる断熱層を形成してもよい。
フィルタ33は、主流路6に導入される環境気体8Aの流れを均一化するために設けられる。フィルタ33は、気体が流通可能であり、気体が通過する際に抵抗(流通抵抗)を示す構造体(通気抵抗体、流通抵抗体)である。
フィルタ33としては、不織布、織布、メッシュ(網目状シート)等からなる通気性繊維層を用いることができる。通気性繊維層を構成する材料としては、ポリエステル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアミドなどの合成樹脂を用いることができる。フィルタ33は、主流路6を塞いで設置される。
フィルタ33は、一定の厚さの層状とすることによって、通気抵抗を全域で均等化することができる。フィルタ33は、厚さ方向を主流路6の形成方向(環境気体8Aの流通方向)に一致させて設置することが好ましい。
図1に示すように、気体供給部5Aから導管51を通して主流路6に導入された環境気体8Aは、フィルタ33の通気抵抗により、主流路6の全体に均等に広がって流れる。このため、環境気体8Aは、主流路6の一部(例えば中央部)に偏らず、主流路6の断面全体にわたり均一に流れる。
フィルタ33は、環境気体8A中の塵埃等を除去する機能も有する。
図2および図3に示すように、外側空間構造4は、外側空間7を区画する第2区画板41(外側空間区画板)と、第2区画板41の下面41bに設けられた一対の断熱壁42,42と、外側空間7の入口部(入口7aおよびその近傍を含む部分)に設けられたフィルタ43と、第2区画板41に設置された透明板45とを有する。
第2区画板41は、第1区画板31の上面31aと平行であり、上面31aの上方に、上面31aから間隔をおいて設置されている。外側空間7は、上面31aと第2区画板41の下面41bとの間の空間である。
第2区画板41は、例えば平面視矩形とすることができる。第2区画板41は、例えば合成樹脂、木材などからなる。第2区画板41は、光源9からの光に関して不透明であり、遮光性を有することが好ましい。
断熱壁42は断熱材からなる。断熱材としては、上述の断熱壁32に使用可能な合成樹脂発泡体などの多孔質材を使用できる。
断熱壁42は、第2区画板41の長さ方向(外側空間7における環境気体8Bの流れ方向)に沿って配置された直方体状とされている。2つの断熱壁42は第2区画板41の幅方向に互いに間隔をおいて設置され、これら2つの断熱壁42と、第2区画板41と、基体2とで区画される断面矩形の空間が外側空間7である。外側空間7の内側面7cは断熱材からなる。
外側空間7の内面は、日射吸収率を0.90以上とするか、またはつや消し仕上げとしてもよい。これによって、外側空間7の内面で反射した反射光が熱流の測定に悪影響を及ぼすのを回避できる。外側空間7の内面は、内側面7c、天面(第2区画板41の下面41b)、および底面(第1区画板31の上面31a)である。
なお、外側空間構造4は、外側空間7の内面のうち内側面以外の面、例えば天面(第2区画板41の下面41b)、または底面(第1区画板31の上面31a)に、断熱材からなる断熱層を形成してもよい。
外側空間7の高さH2は、特に限定されないが、50mm以下が好ましい。高さH2をこの範囲とすることによって、環境気体8Bの流れの乱れを抑制できる。外側空間7の高さH2は、10mm以上が好ましい。高さH2をこの範囲とすることによって、外側空間7の流通抵抗を小さくできる。
第2区画板41の中央部には、外部の光を採り入れる光導入口44が形成されている。光導入口44には、透明板45を設置することができる。
光導入口44は、第2区画板41を厚さ方向に貫通して形成された開口部である。光導入口44は、例えば平面視矩形とされている。図示例では、光導入口44の幅寸法は透明板45の幅とほぼ同じであり、光導入口44の長さ寸法は透明板45の長さとほぼ同じであるため、光導入口44の内側面44aに対してほとんど隙間なく透明板45を設置できる。
光導入口44の大きさおよび平面視位置は、平面視において第1区画板31の光導入口34を含むように定められる。平面視における光導入口44の面積は、光導入口34の面積と同じでもよいし、光導入口34の面積より大きくてもよい。
図1〜図3に示す例では、光導入口44の平面視形状は矩形であり、光導入口34と同じ形状である。光導入口44の大きさは光導入口34の大きさに等しい。
光導入口44は、透明板45によって気密に閉止されることが好ましい。これによって、外側空間7内の環境気体8Bが光導入口44を通して外部に漏出するのを防ぐとともに、外部の空気が光導入口44を通して外側空間7に侵入するのを防ぐことができる。よって、外側空間7内の環境気体8Bの流れの乱れを防ぐことができる。
第2区画板41の下面41bは、透明板45の下面45bと面一となることが好ましい。
光導入口44の内面44aには、透明板45を保持するための保持構造を設けることができる。この保持構造は、例えば、透明板45の周縁部を支持する支持突起、透明板45の端面を支持する傾斜面などであってよい。この保持構造によって、透明板45は光導入口44内に安定に保持される。
なお、光導入口44の形成位置は、第2区画板41の中央部に限定されず、中央部よりも周縁寄りの位置であってもよい。
また、第2区画板41は、全体を透明板(ガラス板等)で構成してもよく、その場合には第2区画板41を通して光を取り入れることができるため、光導入口は形成しなくてもよい。
透明板45は、試験体1に照射される光が透過可能な材料からなり、例えばガラス板、合成樹脂板などが使用できる。透明板45としては、いわゆる高透過性ガラスが好ましい。
外側空間7は、第1区画板31によって主流路6から隔てられている。外側空間7と主流路6とは互いに独立した流路であることが好ましい。図3に示す主流路6の幅W1と外側空間7の幅W2とは互いに等しいことが望ましい。
外側空間7の高さH2と主流路6の高さH1とは互いに等しくてもよいし、互いに異なっていてもよい。
フィルタ43は、外側空間7に導入される環境気体8Bの流れを均一化するために設けられる。フィルタ43としては、上述のフィルタ33に使用可能な合成樹脂製の通気性繊維層を用いることができる。フィルタ43は、外側空間7を塞いで設置される。
フィルタ43は、一定の厚さの層状とすることによって、通気抵抗を全域で均等化することができる。フィルタ43は、厚さ方向を外側空間7の形成方向(環境気体8Bの流通方向)に一致させて設置することが好ましい。
図1に示すように、気体供給部5Bから導管52を通して外側空間7に導入された環境気体8Bは、フィルタ43の通気抵抗により、外側空間7の全体に均等に広がって流れる。このため、環境気体8Bは、外側空間7の一部(例えば中央部)に偏らず、外側空間7の断面全体にわたり均一に流れる。
フィルタ43は、環境気体8B中の塵埃等を除去する機能も有する。
なお、基体2、第1区画板31、および第2区画板41の平面視形状は矩形に限らず、任意の形状、例えば円形としてもよい。
図示例の装置本体10Aは、基体2、第1区画板31および第2区画板41が水平となるように設置されているが、装置本体10Aは、基体2、第1区画板31および第2区画板41の、水平面に対する傾斜角度を任意に調整できる構造としてもよい。
基体2等の傾斜角度を調整可能とする場合は、例えば、基体2等を水平面に対して0°を越え、かつ90°未満の角度で傾斜させたり、水平面に対して垂直とすることができる。
基体2等の傾斜角度を調整する機構は特に限定されないが、例えば、図1に示す支持体61は、補助支持部63の長さを調整することで、基体2等の傾斜角度を調整することができる。
基体2等の傾斜角度を調整可能とすることによって、例えば塗料の塗布対象となる建材の被塗面の傾斜角度、太陽の日周運動、季節などに合わせて、被評価材(塗膜等)が置かれる環境を模擬的に再現することができ、その環境において被評価材が受ける影響について調べることができる。
気体供給部5A,5Bは、図示せぬ温度調整器をそれぞれ備えており、装置本体10Aに供給する環境気体8A,8Bの温度を任意に調整可能である。
温度調節器は、例えば環境気体8A,8Bの温度を検出する温度センサと、環境気体8A,8Bを加温するヒータ(加温手段)と、環境気体8A,8Bを冷却するクーラ(冷却手段)と、温度センサの検出値に基づいてヒータまたはクーラの出力を制御する制御部と、環境気体8A,8Bの流量を検出する流量計と、環境気体8A,8Bの流量を調節する流量調節器とを有する構造を採用できる。
環境気体8Aの温度を検出する温度センサ24は、例えば主流路6内に設けることができる。環境気体8Bの温度を検出する温度センサ25は、例えば外側空間7内に設けることができる。
この例の評価装置10で用いられる流体は気体であるため、気体供給部5A,5Bは、環境気体8A,8Bの湿度を調整する湿度調整器を備えていてもよい。
湿度調整器は、例えば環境気体8A,8Bの湿度を検出する湿度センサと、水分吸着剤を充填した吸着器と、加湿器と、湿度センサの検出値に基づいて、吸着器または加湿器に供給する環境気体8A,8Bの量を調整する制御部と、環境気体8A,8Bの流量を検出する流量計と、環境気体8A,8Bの流量を調節する流量調節器とを有する構造を採用できる。
気体供給部5A,5Bは、導管51、52を介してそれぞれ主流路構造3および外側空間構造4に接続されており、主流路6および外側空間7に、互いに独立に環境気体8A,8Bを供給できる。
気体供給部5A,5Bは、主流路6および外側空間7に供給する環境気体8A,8Bの条件、例えば温度、湿度、流量などを互いに独立に設定できる。このため、主流路6の環境条件と外側空間7の環境条件とを互いに異なるように設定することもできるし、互いに同じとなるように設定することもできる。
環境気体8Aの流量は、主流路6と試験体1との間の表面熱伝達率を一定に維持できるよう定めることが好ましい。
光源9としては、太陽光に近い分光分布を有する光を発することができる光源が好ましい。例えば、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、LED等が使用できる。光源9としては、JIS C 8912に規定する等級B以上のものが好ましい。
光源9は、透明板45,35を通して被評価材層11に光を照射できる位置に設置される。
光源9は、試験体1への光の最大入射角が10°以内となるように設置されるのが好ましい。
また、光源9による、基体2の主面2aにおける有効照射領域は、試験体1の大きさに基づいて定めることができる。例えば、有効照射領域の幅寸法は、試験体1の幅寸法の105%以上とすることができる。有効照射領域の長さ寸法は、試験体1の長さ寸法の105%以上とすることができる。例えば、試験体1の幅および長さがそれぞれ180mmである場合には、有効照射領域の幅および長さはそれぞれ189mm以上とすることができる。
これによって、光源9からの光を、試験体1の全体に確実に照射することができる。
光源9は、試験体1に対する照射角度および光量を任意に設定できるように、その設置位置を調整できるように構成してもよい。詳しくは、光源9は、平面視位置、高さ、姿勢などを調整可能としてよい。また、光源9は光量が調節可能であるものを用いることができる。
光源9の設置位置を調整可能とすることによって、塗料の塗布対象となる建材の被塗面の傾斜角度、太陽の日周運動、季節などに合わせて、被評価材(塗膜等)が置かれる環境を模擬的に再現することができ、その環境において被評価材が受ける影響について調べることができる。
上述のように、基体2等の傾斜角度等を調整可能とする場合には、光源9の設置位置を、基体2等の傾斜角度等に応じて選択することができる。
次に、試験体1について説明する。図4は、試験体の一例である試験体1の構造を示す断面図である。図5は、試験体1の平面図(下面図)である。
図4および図5に示すように、試験体1は、被評価材層11を第1面12a(上面)に形成した基板12と、第2面12b(下面)に設けた熱流センサ13と、第2面12bに、熱流センサ13とは平面視位置を違えて設けられた調整層14と、を備えている。
被評価材層11は、被評価材からなる層であって、例えば評価対象である塗料を第1面12aに塗布して得られた塗膜である。
基板12の材料には、例えば金属材料(アルミニウム、ステンレス鋼等)、無機材料(スレート、セメント等)などが使用できる。基板12は、例えば平面視矩形とすることができる。
図4に示すように、熱流センサ13は、熱流センサ本体17と、熱流センサ本体17の第1面17a(上面)に設けられた外装層16と、熱流センサ本体17の第2面17b(下面)に設けられた外装層18と、を備えている。
外装層16,18は、例えば、内面側(熱流センサ本体17側)から粘着層、ベース樹脂層、熱伝導層、絶縁樹脂層を積層した構造であってよい。ベース樹脂層は樹脂(ポリイミド等)からなり、熱伝導層は例えば金属(銅、アルミニウム等)からなり、絶縁樹脂層は樹脂(シリコーン樹脂、ポリイミド等)からなる。
外装層16は、エポキシ樹脂などからなる中間層20を介して熱流センサ本体17の第1面17aに設けることができる。外装層18は、エポキシ樹脂などからなる中間層20を介して熱流センサ本体17の第2面17bに設けることができる。
熱流センサ本体17としては、熱電対を有するセンサを使用できる。
熱流センサ本体17は、例えば、絶縁性基板(熱抵抗体)に形成された複数の貫通孔に、互いに異なる第1,第2金属からなる、第1,第2金属接続体が交互に設けられ、これら第1,第2金属接続体が、絶縁性基板の両面に形成された表面金属層によって直列に接続された構造を有する(例えば、特開2009−192431号公報を参照)。
この例の熱流センサ本体17は、表面金属層と金属接続体との接続部が熱電対になるため、複数の熱電対が直列に接続された構造を有する。熱流センサ本体17は、前記熱電対で発生する熱起電力の総和を両面の温度差に相当する電気信号として配線19を介して出力できる。
なお、熱流センサとしては、熱電対に限らず、サーミスタなどを用いてもよい。
熱流センサ本体17および外装層16,18は、例えば平面視矩形とすることができる。なお、熱流センサの平面視形状は矩形に限らず、任意の形状、例えば円形としてもよい。
熱流センサ13は、上面(外装層16の表面)が粘着材15を介して基板12の第2面12bの中央部に貼り付けられている。熱流センサ13は、切り欠き14aに露出した部分の基板12の第2面12bのほぼ全領域を覆って設けることができる。
なお、熱流センサ13は、粘着材を介さず、基板12の第2面12bに直接、形成されていてもよい。
粘着材15としては、樹脂(シリコーン樹脂など)を基材とし、高熱伝導性の充てん剤を含むものを使用できる。高熱伝導性の充てん剤としては、金属(アルミニウム、銅など)、酸化物(アルミナ、シリカなど)、窒化物(窒化アルミニウム、窒化ケイ素など)などからなるものを使用できる。
調整層14は、平面視において基板12と同じ外形を有する。図示例の調整層14は平面視矩形であり、調整層14の全幅は基板12の幅と等しく、調整層14の全長は基板12の長さと等しい。
調整層14は、平面視において熱流センサ13を囲む矩形の枠状とすることが好ましい。調整層14を枠状に形成することによって、熱移動に関する特性を試験体1内で均等化しやすくなる。
調整層14は、熱流センサ13の貼付け部位に相当する切り欠き14aを有する枠状とすることができる。切り欠き14aは平面視矩形とすることができ、調整層14の中央部に形成されていることが望ましい。切り欠き14aの平面視形状は調整層14の外形と相似形であることが好ましい。
切り欠き14aの幅および長さは、熱流センサ13の幅および長さに合わせて定められている。切り欠き14aの幅寸法は熱流センサ13の幅とほぼ同じまたはこれよりやや大きくすることができる。切り欠き14aの長さ寸法は熱流センサ13の長さとほぼ同じまたはこれよりやや長くすることができる。
図示例では、調整層14は正方形であり、切り欠き14aも正方形である。調整層14の幅(内周縁と外周縁との距離)は全周にわたり一定であることが望ましい。
調整層14は、粘着材15によって基板12の第2面12bに貼り付けられている。
調整層14を基板12に貼り付ける粘着材15は、熱流センサ13を基板12に貼り付けるのに用いた粘着材15と同じ材料からなることが好ましい。これによって、熱流センサ13と調整層14とにおける熱移動に関する特性を均等化しやすくなる。
調整層14を基板12に貼り付ける粘着材15の層の厚みは、熱流センサ13を基板12に貼り付ける粘着材15の層の厚みと等しい(または同等である)ことが好ましい。
なお、調整層14は、粘着材を介さず、基板12の第2面12bに直接、形成されていてもよい。
調整層14の厚み方向の熱抵抗は、熱流センサ13の厚み方向の熱抵抗と同等である。
「熱抵抗が同等」とは、調整層14の(厚み方向の)熱抵抗が、熱流センサ13の(厚み方向の)熱抵抗に対してプラスマイナス10%の範囲内にあることをいう。
例えば、熱流センサ13の熱抵抗が1℃/Wである場合には、調整層14の熱抵抗が0.9〜1.1℃/Wの範囲にあれば、調整層14の熱抵抗は熱流センサ13の熱抵抗と同等ということができる。
調整層14の内部構造は、特に限定されないが、熱流センサ13と同じ構造とすれば、調整層14の熱抵抗を熱流センサ13の熱抵抗と同等するのが容易である。このため、調整層14は、熱流センサ13と同様に、熱流センサ本体17と外装層16,18とを備えた構造とすることができる(図4参照)。
調整層14の厚みT3は、熱流センサ13の厚みT2と同等であることが望ましい。厚みが同等とは、例えば、厚みT3が厚みT2に対して、プラスマイナス20%(好ましくは10%)の範囲内にあることである。例えば、熱流センサ13の厚みT2が0.9mmである場合には、調整層14の厚みT3は0.72〜1.08mmとすることができる。
なお、調整層14の熱抵抗が熱流センサ13の熱抵抗と同等であれば、調整層14の厚みT3は、熱流センサ13の厚みT2と同等でなくてもよい。
調整層14は、熱流センサ13とは位置を違えて基板12に形成されているため、調整層14の下面14bと熱流センサ13の下面13bとの高低差は小さい。図示例では、調整層14の下面14bと熱流センサ13の下面13bとは面一となっている。
試験体1は、調整層14の下面14bと熱流センサ13の下面13bとの高低差が小さいため、温度調整部22との間の熱移動のしやすさに関して、調整層14と熱流センサ13とを均等化することができる。図示例では、調整層14の下面14bと熱流センサ13の下面13bとは、温度調整部22の上面22aに全面にわたって隙間なく当接するため、温度調整部22からの熱は伝導により調整層14と熱流センサ13とに偏ることなく伝えられる。また、調整層14および熱流センサ13からの熱はいずれも高効率で温度調整部22に伝えられる。
図1に、装置本体を支持する支持体の一例である支持体61(高さ調整機構)を示す。
支持体61は、装置本体10Aの下面(第2区画板41の下面41b)の中央部を支持する主支持部62と、装置本体10Aの下面の周辺部を支持する複数の補助支持部63とを有する。
主支持部62は、基部62aと、基端部が基部62aに回動自在に接続された一対のアーム部62bと、アーム部62bの先端部が回動自在に接続された受け部62cとを備えた構造としてよい。アーム部62bは、互いに回動可能に連結された下部アーム62b1と上部アーム62b2とからなる。
主支持部62は、アーム62b1、62b2の傾斜角度を調整することによって、受け部62cの高さ位置を調整することができるため、装置本体10Aの高さ位置を任意に設定することができる。
補助支持部63は、長さ寸法を調整可能とされており、任意の高さの装置本体10Aの周辺部を支えることができる。
評価装置10では、支持体61によって装置本体10Aの高さ位置を調整することによって、光源9に対する距離を調整し、試験体1に照射される光量を調節することができる。
支持体は、液体作動式(油圧ジャッキ等)、空気式(エアジャッキ等)、機械式(ネジジャッキ等)の構造であってもよい。
次に、評価装置10を使用する場合を例として、本発明の熱特性評価方法の一例を説明する。
図1および図2に示すように、試験体1を基体2の収容部21に設置する。試験体1は、被評価材層11を主流路6に向けた姿勢とする。
気体供給部5A,5Bで予め温度等を調整した環境気体8A,8Bを、それぞれ導管51、52を通して主流路6および外側空間7に供給する。環境気体8A,8Bは空気が好ましい。なお、環境気体8A,8Bは他の気体であってもよい。
環境気体8A,8Bの温度等の条件は、想定する環境に応じて設定することができる。
導管51を通して主流路6に導入された環境気体8Aは、フィルタ33を通過し、主流路6を入口6aから出口6bに向けて流れる。主流路6の入口部にはフィルタ33が設けられているため、環境気体8Aは、フィルタ33の通気抵抗により主流路6の断面全体にわたり均一に流れる。
導管52を通して外側空間7に導入された環境気体8Bは、フィルタ43を通過し、外側空間7を入口7aから出口7bに向けて流れる。外側空間7の入口部にはフィルタ43が設けられているため、環境気体8Bは、フィルタ43の通気抵抗により外側空間7の断面全体にわたり均一に流れる。
主流路6および外側空間7内の温度等の条件が安定した後、光源9からの光を、透明板45,35を通して試験体1の被評価材層11に当てる。なお、光源9は、予め放射照度を安定化させておくのが好ましい。
図2に示すように、試験体1の上面(被評価材層11の表面11a)と基体2の主面2aとは面一となる。このため、主流路6内の環境気体8Aの流れが試験体1によって乱されることはない。
また、第1区画板31の下面31bと透明板35の下面35bとの高低差が小さいため、環境気体8Aの流れが光導入口34によって乱されることはない。このため、主流路6における流れの乱れを原因とする測定精度の低下を回避できる。
比較のため、図6に示す評価装置100について述べる。
評価装置100は、試験体1が設置される基体102と、基体102の外面102a(上面)側に外側流路106を確保する外側流路構造103と、基体102の内面102b(下面)側に内側流路107を確保する内側流路構造104と、を備えている。符号135は透明板(ガラス板)である。
外側流路構造103は、基体102の上方に間隔をおいて設置された区画板131を有する。外側流路106は、基体102と区画板131との間の空間である。
内側流路構造104は、基体102の下方に間隔をおいて設置された区画板141を有する。内側流路107は、基体102と区画板141との間の空間である。
評価装置100では、外側流路106において、試験体1が基体102の外面102aから突出し、外面102aと試験体1との間に段差が生じているため、ここで環境気体108Aの流れが乱れるおそれがある。また、光導入口134において、外側流路構造103の区画板131の下面と透明板135との間に段差が生じているため、ここでも環境気体108Aの流れが乱れるおそれがある。
内側流路107についても、開口部122において、基体102の内面102bと試験体1との間に段差が生じているため、ここで環境気体108Bの流れが乱れるおそれがある。
このように、評価装置100では、環境気体108A,108Bの流れの乱れが生じる可能性があるため、外側流路106および内側空間107における環境条件を安定させるのは容易ではない。
図2に示す評価装置10を用いた評価方法では、主流路6の内面の段差構造を原因とする流れの乱れが生じず、しかも環境気体8Aの流れが流路全体に均一化されるため、主流路6の環境条件を安定化することができる。
外側空間7においても、内面の段差構造を原因とする流れの乱れが生じず、しかも環境気体8Bの流れが流路全体に均一化されるため、外側空間7の環境条件を安定化することができる。
この評価方法では、試験体1との間で熱伝導により熱の授受が可能である温度調整部22を用いるため、環境気体108Bにより試験体1の下面側の温度条件を調整する方法に比べ(図6参照)、試験体1の下面側の温度条件を確実かつ正確に調整できる。
例えば、環境気体108Bにより試験体1の下面側の温度条件を調整する方法(図6参照)では、試験体1の下面の温度変動は比較的大きく、例えば約±1℃となる。
これに対し、図1および図2に示す評価装置10を用いた評価方法では、温度調整部22を用いるため、試験体1の下面の温度変動を小さく、例えば±0.5℃以内とすることができる。
温度調整部22は、調整層14の下面14bと熱流センサ13の下面13bとに当接し、温度調整部22からの熱を調整層14と熱流センサ13とに均等に伝えることができる。そのため、環境気体により試験体1の下面側の温度条件を調整する方法に比べ、熱流センサ13と調整層14とにおける熱的な条件を均等化し、熱流センサ13による測定の精度を高めることができる。
この評価方法では、主流路6の上側に外側空間7があるため、環境気体8Bにより外側空間7の温度を調整することによって、透明板35の温度を精度よく調整することができる。そのため、主流路6の温度を正確に調整できる。また、試験体1が透明板35から受ける実効放射の影響を正確に把握することができる。
主流路6および外側空間7内の環境条件が安定した状態で、熱流センサ13の熱流センサ本体17によって熱流を測定する。詳しくは、熱流センサ本体17から、熱電対で発生する熱起電力の総和を両面の温度差に相当する電気信号として配線19を介して出力させる。得られた測定値は、光が照射された際の被評価材層11の熱特性を反映した値となる。
この評価方法では、試験体1の熱流センサ13と調整層14との熱抵抗が互いに同等であるため、熱流センサ13と調整層14とにおける熱移動に関する特性を均等化し、熱流センサ13による測定の精度を高めることができる。
熱流は、熱移動を定量的に表すことができる指標である。また、熱流の測定によって、反射機能だけでなく、断熱機能および放射機能を含めた熱移動に関する機能を総合的に評価できる。
また、温度調整部22の使用により、試験体1の下面側の温度条件を確実かつ正確に調整できることから、熱流センサ13による測定の精度をさらに高めることができる。さらに、上述のように、主流路6の上側に外側空間7があるため、主流路6の温度を正確に調整するとともに、試験体1が透明板35から受ける実効放射の影響を正確に把握することができる。
これらのことから、計算結果と実測値との整合を図るのが容易となる。
このように、この評価方法によれば、信頼性が高い測定値が得られるため、熱特性の評価における統一的、標準的な指標を提供できる。
この評価方法には、試験体1の厚さの制約が小さいという利点もある。例えば、図6に示す評価装置100を用いた評価方法では、試験体1が厚いと、基体102の外面102aと試験体1との間の段差が大きくなり、環境気体108Aの流れに乱れが生じやすくなる。外面102aとの段差を小さくするために試験体1を開口部122に収容したとしても、試験体1の厚さによっては、内面102bとの間に段差が生じてしまう。
これに対し、図2に示す評価装置10を用いた評価方法では、温度調整部22の高さ位置を調整することで試験体1の上面と基体2の主面2aとが面一となるように試験体1の高さを設定すれば、環境気体8Aの乱れは生じない。そのため、任意の厚さの試験体1を使用できる。
試験体の厚さの制約が小さいため、例えば、図7に示す試験体71を使用することができる。試験体71は、被評価材層81と、被評価材層81の下面に設けられた熱流センサ13と、被評価材層81の下面に、熱流センサ13とは平面視位置を違えて設けられた調整層14とを備えている。
被評価材層81は、例えば金属材料(アルミニウム、ステンレス鋼等)、無機材料(スレート、セメント等)などからなる被評価材で構成される。被評価材は、例えば屋根材、外壁材、被覆材などである。
この評価方法によれば、厚さ寸法が大きい被評価材81を対象とする場合でも、精度の高い熱特性の評価が可能となる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に限定されない。
図1等に示す評価装置10を用いて、試験体1の熱特性の評価を試みた。装置の仕様および試験条件は以下の通りである。
基体2、第1区画板31、第2区画板41は、平面視正方形(幅520mm、長さ520mm)とした。
第1区画板31および第2区画板41の光導入口34,44は平面視正方形(幅500mm、長さ500mm)とした。
透明板35,45としては、高透過性ガラス(オプティホワイト(登録商標)、日射透過率91.2%)(幅520mm、長さ520mm、厚さ3mm)を使用した。
光源9としては、4つのメタルハライドランプ(株式会社GSユアサ製、太陽光近似メタルハライドランプCMR360−L/BU−ND−TYW)を使用した。
基体2の収容部21は平面視正方形(幅180mm、長さ180mm)とした。
主流路6および外側空間7の幅W1,W2は500mmとし、高さH1,H2は25mmとした。
温度調整部22は、水を熱媒体とする銅製ヒートシンク(幅180mm、長さ180mm、高さ19mm)を使用した。
試験体1の基板12としては、JIS H 4000に規定するA1050P H24のアルミニウム板(幅180mm、長さ180mm、厚み1mm)を使用した。
熱流センサ13(幅50mm、長さ50mm、全体厚み0.9mm)は、江藤電気株式会社製、汎用熱流センサM55Aを使用した。
調整層14(幅180mm、長さ180mm、厚み0.9mm)は、熱流センサ13と同じ構成とした。
主流路6および外側空間7に供給する環境気体8Aの温度を30℃とした。温度調整部22の温度を25℃とした。
主流路6および外側空間7における環境気体8A,8Bの流量は100L/minとした。
主流路6および外側空間7の環境気体8A,8Bの温度は、入口6a,7a近傍に設置した温度センサ(熱電対)で測定した。
光源9の光量は、試験体1の中央でのエネルギー密度が1kW/mとなるように設定した。
塗膜の膜厚の測定は、JIS K 5600−1−7(1999)に準じて行った。測定には、膜厚計SWT−8000、プローブ(Fe−2.5)(株式会社サンコウ電子研究所製)、標準外側マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製)を使用した。
(実施例1)
塗料サンプルを基板12の第1面12aに塗布し、被評価材層11(厚み100μm)を形成して得た試験体1を仕切板2の収容部21に設置した。
気体供給部5A,5Bで予め温度等の条件を設定した環境気体8A,8Bを、それぞれ導管51、52を通して主流路6および外側空間7に供給した。
外側流路6および内側流路7の温度が安定した後に、光源9からの光を透明板35,45を通して試験体1の被評価材層11に当てた。熱流センサ13によって熱流を測定した。結果を図8に示す。図8には、熱流量の測定値の変動を確認するため、測定値の拡大図を付した。
図8に示すように、実施例1では、拡大図においても測定値の変動が非常に小さいことから、測定値が安定していた。これにより、実施例1では高い測定精度が得られたと考えることができる。
実施例1において、安定した測定値が得られたのは、温度調整部22の使用により、試験体1の温度を安定化することができたためであると推定することができる。
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、図示例の評価装置10は光源9を備えているが、評価装置は光源を備えていない構造としてもよい。この場合は、光源9からの光に代えて、例えば太陽光を利用することができる。また、光を照射せずに、熱特性の評価試験を行うこともできる。
また、試験体1は、熱流センサ13の設置位置は基板12の中央部であり、調整層14はこれを囲む枠状に形成されているが、これに限らず、熱流センサ13の設置位置は基板12の中央部よりも周縁寄りの位置であってもよい。例えば基板12の外周縁を含む位置にあってもよい。
熱流センサ13は、調整層14とは別体であるが、熱流センサと調整層とは一体に形成することもできる。
また、上述の実施形態では、主流路6および外側空間7に流通させる流体は気体(空気)であるが、流体は気体に限らず、液体であってもよい。
上述の実施形態では、外側空間7には環境気体8Bを流通させるが、外側空間7の温度条件を安定化できれば、環境気体8Bは外側空間7に流通させなくてもよい。
また、本発明は、外側空間がない評価装置およびこれを用いた評価方法も包含するが、外側空間によって主流路の温度を正確に調整できるという効果を考慮すれば、外側空間を有する評価装置および評価方法が好ましい。
1,71・・・試験体
2・・・基体
2a・・・基体の主面
3・・・主流路構造
4・・・外側空間構造
5A,5B・・・気体供給部(流体供給部)
6・・・主流路
7・・・外側空間
8A,8B・・・環境気体(環境流体)
9・・・光源
10・・・評価装置
11,81・・・被評価材層
12・・・基板
12a・・・第1面
12b・・・第2面
13・・・熱流センサ
14・・・調整層
17・・・熱流センサ本体
21・・・収容部
22・・・温度調整部
31・・・第1区画板(主流路区画板)
34・・・光導入口
35・・・透明板

Claims (6)

  1. 被評価材の熱特性を評価する方法であって、
    前記被評価材からなる被評価材層を有する試験体が設置される基体と、
    前記基体の主面側に、環境流体が流通する主流路を確保する主流路構造と、
    少なくとも前記主流路に前記環境流体を供給する流体供給部と、
    前記試験体に当接可能な温度調整部と、
    前記主流路の、前記基体とは反対側に外側空間を確保する外側空間構造と、を備えた評価装置を用い、
    前記試験体は、第1面に前記被評価材層が形成され、かつ前記第1面とは反対側の第2面に、熱流センサと、前記熱流センサとは平面視位置を違えた調整層とが設けられ、
    前記調整層の厚さ方向の熱抵抗は、前記熱流センサの厚さ方向の熱抵抗と同等であり、
    前記基体には、前記被評価材層を前記主流路に露出させ、かつ前記熱流センサおよび前記調整層を前記温度調整部に当接させた状態で前記試験体を収容可能な収容部が形成され、
    前記収容部は、前記被評価材層の表面と前記基体の前記主面とが面一となるように前記試験体を設置可能であり、
    前記温度調整部は、自らの温度を一定に維持でき、かつ前記試験体との間で熱伝導により熱の授受が可能であり、
    前記外側空間は、前記環境流体が流通する流路であり、
    前記試験体を前記収容部に設置し、前記流体供給部からの環境流体を少なくとも前記主流路に流通させつつ、前記熱流センサによって熱流を測定し、前記熱流の測定値に基づいて前記被評価材の熱特性を評価することを特徴とする熱特性評価方法。
  2. 前記温度調整部は、前記試験体を載置可能なヒートシンクである請求項1に記載の熱特性評価方法。
  3. 前記主流路構造は、前記基体の前記主面から間隔をおいて設けられて前記主流路を区画する主流路区画板を備え、
    前記主流路区画板は、外部の光を採り入れる光導入口を有し、
    前記光導入口には、透明板が設置され、
    前記光導入口の大きさおよび位置は、前記外部の光が前記試験体の前記被評価材層の表面で反射した光の80%以上を前記透明板が受けるように定められる請求項1または2に記載の熱特性評価方法。
  4. 前記調整層は、平面視において前記熱流センサを囲む枠状に形成されている請求項1〜のうちいずれか1項に記載の熱特性評価方法。
  5. 被評価材の熱特性を評価する装置であって、
    前記被評価材からなる被評価材層を有する試験体が設置される基体と、
    前記基体の主面側に、環境流体が流通する主流路を確保する主流路構造と、
    少なくとも前記主流路に前記環境流体を供給する流体供給部と、
    前記試験体に当接可能な温度調整部と、
    前記主流路の、前記基体とは反対側に外側空間を確保する外側空間構造と、を備え、
    前記試験体は、第1面に前記被評価材層が形成され、かつ前記第1面とは反対側の第2面に、熱流センサと、前記熱流センサとは平面視位置を違えた調整層とが設けられ、
    前記調整層の厚さ方向の熱抵抗は、前記熱流センサの厚さ方向の熱抵抗と同等であり、
    前記基体には、前記被評価材層を前記主流路に露出させ、かつ前記熱流センサおよび前記調整層を前記温度調整部に当接させた状態で前記試験体を収容可能な収容部が形成され、
    前記収容部は、前記被評価材層の表面と前記基体の前記主面とが面一となるように前記試験体を設置可能であり、
    前記温度調整部は、自らの温度を一定に維持でき、かつ前記試験体との間で熱伝導により熱の授受が可能であり、
    前記流体供給部は、前記外側空間が前記環境流体を流通させる流路となるように、前記外側空間に前記環境流体を供給可能であることを特徴とする熱特性評価装置。
  6. 前記試験体の前記被評価材層に光を照射する光源を備えていることを特徴とする請求項に記載の熱特性評価装置。
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