JP5589151B1 - 熱特性評価方法および装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱特性評価の信頼性が高く、統一的な標準評価指標となり得る熱特性評価方法および装置を提供する。
【解決手段】検体1が設置される仕切板2と、外側流路6を確保する構造3と、内側流路7を確保する構造4と、環境気体8A,8Bを供給する気体供給部と、を備えた評価装置を用いる。検体1は、被評価材層11を形成した基板12と、熱流センサ13と、熱流センサ13とは平面視位置が異なる調整層14とを備えている。調整層14の厚さ方向の熱抵抗は、熱流センサ13の厚さ方向の熱抵抗と同等である。仕切板2には、検体1を収容可能な収容部21が形成されている。収容部21は、被評価材層11の表面11aと仕切板2の外面2aとが面一となるように検体1を設置可能である。流路6、7に環境気体8A,8Bを流通させつつ、熱流センサ13によって熱流を測定し、測定値に基づいて被評価材の熱特性を評価する。
【選択図】図2

Description

本発明は、塗料などの材料の熱特性を評価する方法および装置に関する。
我が国における省エネルギー対策は喫緊の課題であり、特に住宅・建築物等の民生部門ではエネルギー消費の増加幅が大きいことから、さらなる省エネルギー対策を進めることが急務とされている。
住宅の屋根、外壁等に塗布される塗料は、塗膜による被塗物の表面保護、美観の維持などが本来の機能であるが、近年では省エネルギー性能(エネルギー移動に関する特性)に優れた機能性塗料(省エネルギー塗料)が提案されている。
例えば、前述の機能性塗料を建築物の屋根、外壁等に使用すれば、熱線吸収の抑制などにより室内の温度上昇を抑制できるため、夏季の冷房の使用を少なくし、消費電力を削減できる。このため、この種の塗料を利用した省エネルギー対策の推進が期待されている。
省エネルギー性能の評価には熱特性の評価が不可欠である。塗料の熱特性の評価方法としては、例えば、特許文献1〜3および非特許文献1に記載された方法がある。これらの評価方法では、主に日射反射率を基準として熱特性の評価を行っている。
特開2013−194295号公報 特開2005−90042号公報 特開2013−147571号公報
株式会社 三菱化学テクノリサーチ、 "平成24年度エネルギー使用合理化基盤整備事業(塗料の省エネルギー性能評価方法調査)「経済産業省委託事業」報告書" 平成25年3月、[平成26年4月28日検索]、インターネット<URL:http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2013fy/E003071.pdf>
省エネルギー塗料には、反射機能による熱線吸収抑制のほかに、断熱機能による熱伝導抑制、放射機能による熱放出などを特徴とするものがある。
しかし、特許文献1〜3に記載された評価方法は、主に日射反射率を熱特性の評価に用いているため、断熱機能および放射機能を含めた熱移動に関する機能を総合的に評価できるとはいえなかった。また、非特許文献1に記載された評価方法では、測定値の変動が大きく、再現性の点で問題があった。
このため、これらの評価方法では、評価の信頼性の点で改善が要望されていた。また、これらの評価方法は、試験方法に互いに異なる点があるため、評価結果を互いに比較することができない場合があった。
利用者が製品を選択するにあたって、熱特性を評価するための指標がないことは大きな問題であり、統一的に標準化された指標を確立することは、この種の塗料の利用拡大に向けての課題であった。
本発明は、前記課題を鑑みてなされたものであって、熱特性評価の信頼性が高く、統一的な標準評価指標となり得る熱特性評価方法および装置を提供することを目的とする。
本発明は、被評価材の熱特性を評価する方法であって、前記被評価材からなる被評価材層を有する検体が設置される仕切板と、前記仕切板の外面側に外側流路を確保する外側流路構造と、前記仕切板の内面側に、前記仕切板によって前記外側流路から隔てられた内側流路を確保する内側流路構造と、前記外側流路および前記内側流路にそれぞれ環境流体を供給する流体供給部と、を備えた評価装置を用い、前記検体は、第1面に前記被評価材層が形成された基板と、前記基板の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた熱流センサと、前記第2面に前記熱流センサとは平面視位置を違えて設けられた調整層と、を備え、前記調整層の厚さ方向の熱抵抗は、前記熱流センサの厚さ方向の熱抵抗と同等であり、前記仕切板には、前記被評価材層を前記外側流路に露出させ、かつ前記熱流センサおよび前記調整層を前記内側流路に露出させた状態で前記検体を収容可能な収容部が形成され、前記収容部は、前記被評価材層の表面と前記仕切板の前記外面とが面一となるように前記検体を設置可能であり、前記検体を前記収容部に設置し、前記流体供給部からの環境流体を前記外側流路および前記内側流路に流通させつつ、前記熱流センサによって熱流を測定し、前記熱流の測定値に基づいて、前記被評価材の熱特性を評価する熱特性評価方法を提供する。
前記調整層は、平面視において前記熱流センサを囲む枠状に形成されていることが好ましい。
前記収容部は、前記調整層の表面と前記仕切板の前記内面とが面一となるように前記検体を設置可能であることが好ましい。
前記外側流路と前記内側流路の断面形状は互いに同じであり、前記外側流路と前記内側流路の断面積は互いに同じであることが好ましい。
本発明の熱特性評価方法は、前記外側流路の入口部および前記内側流路の入口部に、前記環境流体が通過する際に流通抵抗を示す流通抵抗体がそれぞれ設けられ、前記環境流体は、前記流通抵抗体を通過して前記外側流路および前記内側流路に流入することが好ましい。
本発明は、被評価材の熱特性を評価する装置であって、前記被評価材からなる被評価材層を有する検体が設置される仕切板と、前記仕切板の外面側に外側流路を確保する外側流路構造と、前記仕切板の内面側に、前記仕切板によって前記外側流路から隔てられた内側流路を確保する内側流路構造と、前記外側流路および前記内側流路にそれぞれ環境流体を供給する流体供給部と、を備え、前記検体は、第1面に前記被評価材層を形成した基板と、前記基板の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた熱流センサと、前記第2面に前記熱流センサとは平面視位置を違えて形成された調整層と、を備え、前記調整層の厚さ方向の熱抵抗は、前記熱流センサの厚さ方向の熱抵抗と同等であり、前記仕切板には、前記被評価材層を前記外側流路に露出させ、かつ前記熱流センサおよび前記調整層を前記内側流路に露出させた状態で前記検体を収容可能な収容部が形成され、前記収容部は、前記被評価材層の表面と前記仕切板の前記外面とが面一となるように前記検体を設置可能である熱特性評価装置を提供する。
本発明の熱特性評価装置は、前記検体の前記被評価材層に光を照射する光源を備えていることが好ましい。
本発明によれば、収容部に設置された検体の外側流路側の表面と仕切板の外面とが面一となるため、外側流路内の環境流体の流れが検体によって乱されることはない。このため、外側流路における流れの乱れを原因とする測定精度の低下を回避できる。
また、検体は収容部に収容されるため、検体の内側流路側の表面と仕切板の内面との高低差が小さくなることから、内側流路内の環境流体の流れが乱されない。このため、内側流路における流れの乱れを原因とする測定精度の低下を回避できる。
さらに、検体の熱流センサと調整層との熱抵抗が互いに同等であるので、熱移動に関する特性を検体内で均等化できる。このため、熱流センサによる測定の精度を高めることができる。
熱流は、熱移動を定量的に表すことができる指標である。また、熱流の測定によって、反射機能だけでなく、断熱機能および放射機能を含めた、熱移動に関する機能を総合的に評価できる。
よって、本発明によれば、信頼性が高い測定値が得られる。従って、本発明は、熱特性の評価における統一的、標準的な指標を提供できる。
本発明の熱特性評価装置の一実施形態の概略構成図である。 図1の熱特性評価装置の一部を示す構成図である。 図1の熱特性評価装置の分解斜視図である。 検体の一例の構造を示す断面図である。 前図の検体の平面図である。 熱特性評価装置の他の例の一部を示す構成図である。 検体の他の例の構造を示す断面図である。 実施例の評価装置を用いた場合の熱流を示すグラフである。 参考例の評価装置を用いた場合の熱流を示すグラフである。 日射反射率と熱流との関係を示すグラフである。 塗膜厚さと熱流との関係を示すグラフである。 放射率と熱流との関係を示すグラフである。
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明の熱特性評価装置(以下、単に評価装置という)の一実施形態である評価装置10の概略構成図である。図2は評価装置10の一部を示す構成図である。図3は装置本体10Aの分解斜視図である。
以下の説明において、「上」および「下」は、図1における上下に即している。また、高さ方向とは、図1における上方である。「平面視」とは、仕切板2の厚さ方向(上下方向)から見ることをいう。
図1および図2に示すように、評価装置10は、装置本体10Aと、装置本体10Aに環境気体8A,8B(環境流体)を供給する気体供給部5A,5B(流体供給部)とを備えている。
装置本体10Aは、検体1が設置される仕切板2と、仕切板2の外面2a(上面)側に外側流路6を確保する外側流路構造3と、仕切板2の内面2b(下面)側に内側流路7を確保する内側流路構造4と、検体1に光を照射する光源9と、を備えている。
装置本体10Aは、支持体61によって床面64上に支持されている。
図2および図3に示すように、仕切板2は例えば平面視矩形とすることができる。仕切板2は、例えば木材、合成樹脂などからなる。仕切板2は、光源9からの光に関して不透明である(遮光性を有する)ことが好ましい。
仕切板2の中央部には、検体1が設置される収容部21が形成されている。
収容部21は、仕切板2を厚さ方向に貫通して形成された開口部である。収容部21は、例えば平面視矩形とされ、その幅および長さは、検体1の幅および長さに合わせて定めることができる。
収容部21の幅寸法は検体1の幅とほぼ同じまたはこれよりやや大きくすることができる。収容部21の長さ寸法は検体1の長さとほぼ同じまたはこれよりやや長くすることができる。図示例では、収容部21の幅寸法は検体1の幅とほぼ同じであり、収容部21の長さ寸法は検体1の長さとほぼ同じであるため、収容部21は、内側面21aに対してほとんど隙間なく検体1を設置できる。
収容部21の深さ、すなわち図2の深さD1は、検体1の厚みT1に等しいことが好ましい。この例では、収容部21の深さD1は仕切板2の厚さに等しい。
収容部21に設置された検体1は、上面(被評価材層11の表面11a)の少なくとも一部が外側流路6に露出し、下面(調整層14の下面14bおよび熱流センサ13の下面13b)の少なくとも一部が内側流路7に露出する。図示例では、検体1は上面全体が外側流路6に露出し、下面全体が内側流路7に露出している。
なお、検体1が外側流路6に露出するのは上面の一部領域のみであってもよい。また、内側流路7に露出するのは検体1の下面の一部領域のみであってもよい。
収容部21は、検体1によって閉止されるため、外側流路6内の環境気体8Aが収容部21を通して内側流路7に漏出することはない。また、内側流路7内の環境気体8Bが収容部21を通して外側流路6に漏出することもない。
収容部21に検体1が収容されると、検体1の上面(被評価材層11の表面11a。外側流路6側の表面)の高さ位置は、仕切板2の外面2a(上面)の高さ位置と同じとなり、検体1の上面と仕切板2の外面2aとは面一となる。
「面一」とは、2つの面の高低差が5mm以下(好ましくは1mm以下)であることをいう。図示例では、検体1の上面と仕切板2の外面2aとの高さ位置は互いに同じであるが、検体1の上面と仕切板2の外面2aとの高さ位置が互いに異なる場合でも、それらの高低差が5mm以下(好ましくは1mm以下)であれば、これら2つの面は面一である。
検体1の上面と仕切板2の外面2aとが面一となることによって、外側流路6内の環境気体8Aの流れが乱れるのを防ぐことができる。
収容部21に収容された検体1は、下面(内側流路7側の表面)が、仕切板2の内面2b(下面)と面一となることが好ましい。検体1は、少なくとも調整層14の下面14bが仕切板2の内面2bと面一となることが好ましい。
これによって、内側流路7内の環境気体8Bの流れが乱れるのを防ぐことができる。
仕切板2には、収容部21内に検体1を保持するための保持構造を設けることができる。この保持構造は、例えば、検体1の周縁部を支持する支持突起、検体1の端面を支持する傾斜面などであってよい。この保持構造によって、検体1は収容部21内に安定に保持される。
なお、収容部21の形成位置は、仕切板2の中央部に限定されず、中央部よりも周縁寄りの位置であってもよい。
図3に示すように、外側流路構造3は、上板31と、上板31の下面31bに設けられた一対の断熱壁32,32と、外側流路6の入口部(入口6aおよびその近傍を含む部分)に設けられたフィルタ33と、上板31に設置された透明板35とを有する。
上板31は例えば平面視矩形とすることができる。上板31は、例えば木材、合成樹脂などからなる。上板31は、光源9からの光に関して不透明である(遮光性を有する)ことが好ましい。
上板31の中央部には、透明板35が設置される採光窓34が形成されている。
採光窓34は、上板31を厚さ方向に貫通して形成された開口部である。採光窓34は、例えば平面視矩形とされ、その幅および長さは、透明板35の幅および長さに合わせて定めることができる。
採光窓34の幅寸法は透明板35の幅とほぼ同じまたはこれよりやや大きくすることができる。収容部21の長さ寸法は検体1の長さとほぼ同じまたはこれよりやや長くすることができる。図示例では、採光窓34の幅寸法は透明板35の幅とほぼ同じであり、収容部21の長さ寸法は検体1の長さとほぼ同じであるため、採光窓34は、内側面34aに対してほとんど隙間なく透明板35を設置できる。
採光窓34の大きさは検体1の大きさと同じまたはこれより大きいことが好ましい。採光窓34は、通過した光が検体1の上面(表面11a)の全域に当たるようにその位置が定められる。
採光窓34は、透明板35によって閉止されるため、外側流路6内の環境気体8Aが採光窓34を通して外部に漏出することはない。
上板31の下面31bは、透明板35の下面35bと面一となることが好ましい。
採光窓34の内面34aには、透明板35を保持するための保持構造を設けることができる。この保持構造は、例えば、透明板35の周縁部を支持する支持突起、透明板35の端面を支持する傾斜面などであってよい。この保持構造によって、透明板35は採光窓34内に安定に保持される。
なお、採光窓34の形成位置は、上板31の中央部に限定されず、中央部よりも周縁寄りの位置であってもよい。
また、上板31は、全体を透明板(ガラス板等)で構成してもよく、その場合には上板31を通して光を取り入れることができるため、採光窓は形成しなくてもよい。
透明板35は、検体1に照射される光(この例では光源9からの光)が透過可能な材料からなり、例えばガラス板、合成樹脂板などが使用できる。透明板35の材料としては、特に、いわゆる高透過性ガラス(日射透過率90%以上)の使用が好ましい。
断熱壁32は断熱材からなる。断熱材としては、ポリウレタン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、フェノール樹脂発泡体等の合成樹脂発泡体などの多孔質材を使用できる。断熱壁32は遮光性を有することが好ましい。
断熱壁32は、上板31の長さ方向(外側流路6に沿う方向)に沿って配置された直方体状とされている。2つの断熱壁32は上板31の幅方向に互いに間隔をおいて設置され、これら2つの断熱壁32と、上板31と、仕切板2とで区画される断面矩形の空間が外側流路6である。このため、外側流路6の内側面6cは断熱材からなる。
なお、外側流路構造3は、外側流路6の内側面以外の面、例えば底面(仕切板2の外面2a(上面))または天面(上板31の下面31b)に、断熱材からなる断熱層を形成してもよい。
フィルタ33は、外側流路6に導入される環境気体8Aの流れを均一化するために設けられる。フィルタ33は、気体が流通可能であり、気体が通過する際に抵抗(流通抵抗)を示す構造体(通気抵抗体、流通抵抗体)である。
フィルタ33としては、不織布、織布、メッシュ(網目状シート)等からなる通気性繊維層を用いることができる。通気性繊維層を構成する材料としては、ポリエステル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアミドなどの合成樹脂を用いることができる。フィルタ33は、外側流路6を塞いで設置される。
フィルタ33は、一定の厚さの層状とすることによって、通気抵抗を全域で均等化することができる。フィルタ33は、厚さ方向を外側流路6の形成方向(環境気体8Aの流通方向)に一致させて設置することが好ましい。
図1に示すように、気体供給部5Aから導管51を通して外側流路6に導入された環境気体8Aは、フィルタ33の通気抵抗により、外側流路6の全体に均等に広がって流れる。このため、環境気体8Aは、外側流路6の一部(例えば中央部)に偏らず、外側流路6の全体にわたり均一に流れる。
フィルタ33は、環境気体8A中の塵埃等を除去する機能も有する。
図3に示すように、内側流路構造4は、下板41と、下板41の上面41aに設けられた一対の断熱壁42,42と、内側流路7の入口部(入口7aおよびその近傍を含む部分)に設けられたフィルタ43とを有する。
下板41は、例えば平面視矩形とすることができる。下板41は、例えば木材、合成樹脂などからなる。下板41は、光源9からの光に関して不透明である(遮光性を有する)ことが好ましい。
断熱壁42は断熱材からなる。断熱材としては、上述の断熱壁32に使用可能な合成樹脂発泡体などの多孔質材を使用できる。
断熱壁42は、下板41の長さ方向(内側流路7に沿う方向)に沿って配置された直方体状とされている。2つの断熱壁42は下板41の幅方向に互いに間隔をおいて設置され、これら2つの断熱壁42と、下板41と、仕切板2とで区画される断面矩形の空間が内側流路7である。このため、内側流路7の内側面7cは断熱材からなる。
なお、内側流路構造4は、内側流路7の内側面以外の面、例えば天面(仕切板2の内面2b)または底面(下板41の上面41a)に、断熱材からなる断熱層を形成してもよい。
内側流路7は、仕切板2によって外側流路6から隔てられている。
仕切板2の収容部21が検体1で塞がれた状態では、内側流路7と外側流路6とは互いに独立した流路となる。
図3に示す内側流路7の幅W2と外側流路6の幅W1とは互いに等しいことが望ましい。内側流路7の高さH2と外側流路6の高さH1とは互いに等しいことが望ましい。
外側流路6と内側流路7の断面形状は互いに同じであることが好ましい。外側流路6と内側流路7の断面積は互いに等しいことが好ましい。
外側流路6と内側流路7の断面形状を互いに同じとし、かつ断面積を互いに同じとすることによって、外側流路6と内側流路7との環境気体8A,8Bの流れ状態や流量を互いに均等にし、外側流路6と内側流路7との条件の差異を小さくできる。
フィルタ43は、内側流路7に導入される環境気体8Bの流れを均一化するために設けられる。フィルタ43は、気体が流通可能であり、気体が通過する際に抵抗(流通抵抗)を示す構造体(通気抵抗体、流通抵抗体)である。フィルタ43としては、上述のフィルタ33に使用可能な合成樹脂製の通気性繊維層を用いることができる。フィルタ43は、内側流路7を塞いで設置される。
フィルタ43は、一定の厚さの層状とすることによって、通気抵抗を全域で均等化することができる。フィルタ43は、厚さ方向を内側流路7の形成方向(環境気体8Bの流通方向)に一致させて設置することが好ましい。
図1に示すように、気体供給部5Bから導管52を通して内側流路7に導入された環境気体8Bは、フィルタ43の通気抵抗により、内側流路7の全体に均等に広がって流れる。このため、環境気体8Bは、内側流路7の一部(例えば中央部)に偏らず、内側流路7の全体にわたり均一に流れる。
フィルタ43は、環境気体8B中の塵埃等を除去する機能も有する。
なお、仕切板2、上板31、下板41の平面視形状は矩形に限らず、任意の形状、例えば円形としてもよい。
図示例の装置本体10Aは、仕切板2、上板31および下板41が水平となるように設置されているが、装置本体10Aは、仕切板2、上板31および下板41の、水平面に対する傾斜角度を任意に調整できる構造としてもよい。
仕切板2等の傾斜角度を調整可能とする場合は、例えば、仕切板2等を水平面に対して0°を越え、かつ90°未満の角度で傾斜させたり、水平面に対して垂直とすることができる。
仕切板2等の傾斜角度を調整する機構は特に限定されないが、例えば、図1に示す支持体61は、補助支持部63の長さを調整することで、仕切板2等の傾斜角度を調整することができる。
仕切板2等の傾斜角度を調整可能とすることによって、例えば塗料の塗布対象となる建材の被塗面の傾斜角度、太陽の日周運動、季節などに合わせて、被評価材(塗膜等)が置かれる環境を模擬的に再現することができ、その環境において被評価材が受ける影響について調べることができる。
気体供給部5A,5Bは、図示せぬ温度調整器をそれぞれ備えており、装置本体10Aに供給する環境気体8A,8Bの温度を任意に調整可能である。
温度調節器は、例えば環境気体8A,8Bの温度を検出する温度センサと、環境気体8A,8Bを加温するヒータ(加温手段)と、環境気体8A,8Bを冷却するクーラ(冷却手段)と、温度センサの検出値に基づいてヒータまたはクーラをON/OFF制御する制御部と、環境気体8A,8Bの流量を検出する流量計と、環境気体8A,8Bの流量を調節する流量調節器とを有する構造を採用できる。
この例の評価装置10で用いられる流体は気体であるため、気体供給部5A,5Bは、環境気体8A,8Bの湿度を調整する湿度調整器を備えていてもよい。
湿度調整器は、例えば環境気体8A,8Bの湿度を検出する湿度センサと、水分吸着剤を充填した吸着器と、加湿器と、湿度センサの検出値に基づいて、吸着器または加湿器に供給する環境気体8A,8Bの量を調整する制御部と、環境気体8A,8Bの流量を検出する流量計と、環境気体8A,8Bの流量を調節する流量調節器とを有する構造を採用できる。
気体供給部5A,5Bは、導管51、52を介してそれぞれ外側流路構造3および内側流路構造4に接続されており、外側流路6および内側流路7に、互いに独立に環境気体8A,8Bを供給できる。
気体供給部5A,5Bは、外側流路6および内側流路7に供給する環境気体8A,8Bの条件、例えば温度、湿度、流量などを互いに独立に設定できる。このため、外側流路6の環境条件と内側流路7の環境条件とを互いに異なるように設定することもできるし、互いに同じとなるように設定することもできる。
光源9としては、太陽光に近い分光分布を有する光を発することができる光源が好ましい。例えば、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、LED等が使用できる。
光源9は、透明板35を通して被評価材層11に光を照射できる位置に設置される。
光源9は、検体1に対する照射角度および光量を任意に設定できるように、その設置位置を調整できるように構成してもよい。詳しくは、光源9は、平面視位置、高さ、姿勢などを調整可能としてよい。また、光源9は光量が調節可能であるものを用いることができる。
光源9の設置位置を調整可能とすることによって、塗料の塗布対象となる建材の被塗面の傾斜角度、太陽の日周運動、季節などに合わせて、被評価材(塗膜等)が置かれる環境を模擬的に再現することができ、その環境において被評価材が受ける影響について調べることができる。
上述のように、仕切板2等の傾斜角度等を調整可能とする場合には、光源9の設置位置を、仕切板2等の傾斜角度等に応じて選択することができる。
次に、検体1について説明する。図4は、検体の一例である検体1の構造を示す断面図である。図5は、検体1の平面図(下面図)である。
図4および図5に示すように、検体1は、被評価材層11を第1面12a(上面)に形成した基板12と、第2面12b(下面)に設けた熱流センサ13と、第2面12bに、熱流センサ13とは平面視位置を違えて設けられた調整層14と、を備えている。
被評価材層11は、被評価材からなる層であって、例えば評価対象である塗料を塗布して得られた塗膜である。
基板12の材料には、例えば金属材料(アルミニウム、ステンレス鋼等)、無機材料(スレート、セメント等)などが使用できる。基板12は、例えば平面視矩形とすることができる。
図4に示すように、熱流センサ13は、熱流センサ本体17と、熱流センサ本体17の第1面17a(上面)に設けられた外装層16と、熱流センサ本体17の第2面17b(下面)に設けられた外装層18と、を備えている。
外装層16,18は、例えば、内面側(熱流センサ本体17側)から粘着層、ベース樹脂層、熱伝導層、絶縁樹脂層を積層した構造であってよい。ベース樹脂層は樹脂(ポリイミド等)からなり、熱伝導層は例えば金属(銅、アルミニウム等)からなり、絶縁樹脂層は樹脂(シリコーン樹脂、ポリイミド等)からなる。
外装層16は、エポキシ樹脂などからなる中間層20を介して熱流センサ本体17の第1面17aに設けることができる。外装層18は、エポキシ樹脂などからなる中間層20を介して熱流センサ本体17の第2面17bに設けることができる。
熱流センサ本体17としては、熱電対を有するセンサを使用できる。
熱流センサ本体17は、例えば、絶縁性基板(熱抵抗体)に形成された複数の貫通孔に、互いに異なる第1,第2金属からなる第1,第2金属接続体が交互に設けられ、これら第1,第2金属接続体が、絶縁性基板の両面に形成された表面金属層によって直列に接続された構造を有する(例えば、特開2009−192431号公報を参照)。
この例の熱流センサ本体17は、表面金属層と第1,第2金属接続体との接続部が熱電対になるため、複数の熱電対が直列に接続された構造を有する。熱流センサ本体17は、前記熱電対で発生する熱起電力の総和を両面の温度差に相当する電気信号として配線19を介して出力できる。
なお、熱流センサとしては、熱電対に限らず、サーミスタなどを用いてもよい。
熱流センサ本体17および外装層16,18は、例えば平面視矩形とすることができる。なお、熱流センサの平面視形状は矩形に限らず、任意の形状、例えば円形としてもよい。
熱流センサ13は、上面(外装層16の表面)が粘着材15を介して基板12の第2面12bの中央部に貼り付けられている。熱流センサ13は、切り欠き14aに露出した部分の基板12の第2面12bのほぼ全領域を覆って設けることができる。
なお、熱流センサ13は、粘着材を介さず、基板12の第2面12bに直接、形成されていてもよい。
粘着材15としては、樹脂(シリコーン樹脂など)を基材とし、高熱伝導性の充てん剤を含むものを使用できる。高熱伝導性の充てん剤としては、金属(アルミニウム、銅など)、酸化物(アルミナ、シリカなど)、窒化物(窒化アルミニウム、窒化ケイ素など)などからなるものを使用できる。
調整層14は、平面視において基板12と同じ外形を有する。図示例の調整層14は平面視矩形であり、調整層14の全幅は基板12の幅と等しく、調整層14の全長は基板12の長さと等しい。
調整層14は、平面視において熱流センサ13を囲む矩形の枠状とすることが好ましい。調整層14を枠状に形成することによって、熱移動に関する特性を検体1内で均等化しやすくなる。
調整層14は、熱流センサ13の貼付け部位に相当する切り欠き14aを有する枠状とすることができる。切り欠き14aは平面視矩形とすることができ、調整層14の中央部に形成されていることが望ましい。切り欠き14aの平面視形状は調整層14の外形と相似形であることが好ましい。
切り欠き14aの幅および長さは、熱流センサ13の幅および長さに合わせて定められている。切り欠き14aの幅寸法は熱流センサ13の幅とほぼ同じまたはこれよりやや大きくすることができる。切り欠き14aの長さ寸法は熱流センサ13の長さとほぼ同じまたはこれよりやや長くすることができる。
図示例では、調整層14は正方形であり、切り欠き14aも正方形である。調整層14の幅(内周縁と外周縁との距離)は全周にわたり一定であることが望ましい。
調整層14は、粘着材15によって基板12の第2面12bに貼り付けられている。
調整層14を基板12に貼り付ける粘着材15は、熱流センサ13を基板12に貼り付けるのに用いた粘着材15と同じ材料からなることが好ましい。これによって、熱流センサ13と調整層14とにおける熱移動に関する特性を均等化しやすくなる。
調整層14を基板12に貼り付ける粘着材15の層の厚みは、熱流センサ13を基板12に貼り付ける粘着材15の層の厚みと等しい(または同等である)ことが好ましい。
なお、調整層14は、粘着材を介さず、基板12の第2面12bに直接、形成されていてもよい。
調整層14の厚み方向の熱抵抗は、熱流センサ13の厚み方向の熱抵抗と同等である。
「熱抵抗が同等」とは、調整層14の(厚み方向の)熱抵抗が、熱流センサ13の(厚み方向の)熱抵抗に対してプラスマイナス10%の範囲内にあることをいう。
例えば、熱流センサ13の熱抵抗が1℃/Wである場合には、調整層14の熱抵抗が0.9〜1.1℃/Wの範囲にあれば、調整層14の熱抵抗は熱流センサ13の熱抵抗と同等ということができる。
調整層14の内部構造は、特に限定されないが、熱流センサ13と同じ構造とすれば、調整層14の熱抵抗を熱流センサ13の熱抵抗と同等するのが容易である。このため、調整層14は、熱流センサ13と同様に、熱流センサ本体17と外装層16,18とを備えた構造とすることができる(図4参照)。
調整層14の厚みT3は、熱流センサ13の厚みT2と同等であることが望ましい。厚みが同等とは、例えば、厚みT3が厚みT2に対して、プラスマイナス20%(好ましくは10%)の範囲内にあることである。例えば、熱流センサ13の厚みT2が0.9mmである場合には、調整層14の厚みT3は0.72〜1.08mmとすることができる。
なお、調整層14の熱抵抗が熱流センサ13の熱抵抗と同等であれば、調整層14の厚みT3は、熱流センサ13の厚みT2と同等でなくてもよい。
調整層14は、熱流センサ13とは位置を違えて基板12に形成されているため、調整層14の下面14bと熱流センサ13の下面13bとの高低差は小さい。図示例では、調整層14の下面14bと熱流センサ13の下面13bとは面一となっている。
調整層14の下面14bと熱流センサ13の下面13bとの高低差が小さいことは、内側流路7における環境気体8Bの流れの乱れを防ぎ、環境気体8Bの流れを安定化するうえで有利である。
図1に、装置本体を支持する支持体の一例である支持体61(高さ調整機構)を示す。支持体61は、装置本体10Aの下面(下板41の下面41b)の中央部を支持する主支持部62と、装置本体10Aの下面の周辺部を支持する複数の補助支持部63とを有する。
主支持部62は、基部62aと、基端部が基部62aに回動自在に接続された一対のアーム部62bと、アーム部62bの先端部が回動自在に接続された受け部62cとを備えた構造としてよい。アーム部62bは、互いに回動可能に連結された下部アーム62b1と上部アーム62b2とからなる。
主支持部62は、アーム62b1、62b2の傾斜角度を調整することによって、受け部62cの高さ位置を調整することができるため、装置本体10Aの高さ位置を任意に設定することができる。
補助支持部63は、長さ寸法を調整可能とされており、任意の高さの装置本体10Aの周辺部を支えることができる。
評価装置10では、支持体61によって装置本体10Aの高さ位置を調整することによって、光源9に対する距離を調整し、検体1に照射される光量を調節することができる。
支持体は、液体作動式(油圧ジャッキ等)、空気式(エアジャッキ等)、機械式(ネジジャッキ等)の構造であってもよい。
次に、評価装置10を使用する場合を例として、本発明の熱特性評価方法の一例を説明する。
図1および図2に示すように、検体1を仕切板2の収容部21に設置する。検体1は、被評価材層11を外側流路6に向け、かつ熱流センサ13および調整層14を内側流路7に向けた姿勢とする。
気体供給部5A,5Bで予め温度等を調整した環境気体8A,8Bを、それぞれ導管51、52を通して外側流路6および内側流路7に供給する。環境気体8A,8Bは空気が好ましい。なお、環境気体8A,8Bは他の気体であってもよい。
環境気体8A,8Bの温度等の条件は、想定する環境に応じて設定することができる。
導管51を通して外側流路6に導入された環境気体8Aは、フィルタ33を通過し、外側流路6を入口6aから出口6bに向けて流れる。
外側流路6の入口部にはフィルタ33が設けられているため、環境気体8Aは、フィルタ33の通気抵抗により外側流路6の全体にわたり均一に流れる。
導管52を通して内側流路7に導入された環境気体8Bは、フィルタ43を通過し、内側流路7を入口7aから出口7bに向けて流れる。
内側流路7の入口部にはフィルタ43が設けられているため、環境気体8Bは、フィルタ43の通気抵抗により内側流路7の全体にわたり均一に流れる。
外側流路6および内側流路7内の温度等の条件が安定した後、光源9からの光を、透明板35を通して検体1の被評価材層11に当てる。
なお、光源9は、予め放射照度を安定化させておくのが好ましい。
図2に示すように、検体1の上面(被評価材層11の表面11a)と仕切板2の外面2aとは面一となる。このため、外側流路6内の環境気体8Aの流れが検体1によって乱されることはない。このため、外側流路6における流れの乱れを原因とする測定精度の低下を回避できる。
これに対し、図6に示す評価装置100では、検体101が仕切板102の外面102aから外側流路106側に突出し、外面102aと検体101との間に段差が生じているため、ここで環境気体108Aの流れが乱れるおそれがある。
また、図2に示す評価装置10では、上板31の下面31bと透明板35の下面35bとの高低差が小さいため、環境気体8Aの流れが採光窓34によって乱されることはない。
これに対し、図6に示す評価装置100では、採光窓134において、上板31の下面と透明板135との間に段差が生じているため、ここで環境気体108Aの流れが乱れるおそれがある。
また、図2に示す評価装置10では、検体1の下面と仕切板2の内面2b(下面)との高低差が小さくなるため、内側流路7内の環境気体8Bの流れが収容部21によって乱されることはない。このため、内側流路7における流れの乱れを原因とする測定精度の低下を回避できる。
これに対し、図6に示す評価装置100では、開口部122において、仕切板102の内面102bと検体101との間に段差が生じているため、ここで環境気体108Bの流れが乱れるおそれがある。
また、評価装置100では、仕切板102の内面102b(下面)側の内側空間107が広いため、環境気体108Bの流れは一定になりにくい。
このように、図2に示す評価装置10では、外側流路6および内側流路7の内面の段差構造を原因とする流れの乱れが生じず、しかも環境気体8A,8Bの流れが流路全体に均一化されるため、外側流路6および内側流路7の環境条件を安定化することができる。
外側流路6および内側流路7内の環境条件が安定した状態で、熱流センサ13の熱流センサ本体17によって熱流を測定する。詳しくは、熱流センサ本体17から、熱電対で発生する熱起電力の総和を両面の温度差に相当する電気信号として配線19を介して出力させる。得られた測定値は、光が照射された際の被評価材層11の熱特性を反映した値となる。
この評価方法では、検体1の熱流センサ13と調整層14との熱抵抗が互いに同等であるため、熱流センサ13と調整層14とにおける熱移動に関する特性を均等化し、熱流センサ13による測定の精度を高めることができる。
熱流は、熱移動を定量的に表すことができる指標である。また、熱流の測定によって、反射機能だけでなく、断熱機能および放射機能を含めた熱移動に関する機能を総合的に評価できる。
よって、この評価方法によれば、信頼性が高い測定値が得られる。従って、本評価方法は、熱特性の評価における統一的、標準的な指標を提供できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に限定されない。
まず、以下に示す試験における共通の条件を説明する。
図1等に示す評価装置10を用いた。
上板31、仕切板2および下板41は、平面視正方形(幅600mm、長さ600mm)とした。
上板31の採光窓34は平面視正方形(幅180mm、長さ180mm)とした。
透明板35としては、高透過性ガラス(オプティホワイト(登録商標)、日射透過率91.2%)(幅180mm、長さ180mm、厚さ3mm)を使用した。
光源9としては、4つのメタルハライドランプ(株式会社GSユアサ製、太陽光近似メタルハライドランプCMR360−L/BU−ND−TYW)を使用した。
仕切板2の収容部21は平面視正方形(幅180mm、長さ180mm)とした。
外側流路6および内側流路7の幅W1,W2は200mmとし、高さH1,H2は50mmとした。
検体1の基板12としては、JIS H 4000に規定するA1050P H24のアルミニウム板(幅180mm、長さ180mm、厚み1mm)を使用した。
熱流センサ13(幅50mm、長さ50mm、全体厚み0.9mm)は、江藤電気株式会社製、汎用熱流センサM55Aを使用した。
調整層14(幅180mm、長さ180mm、厚み0.9mm)は、熱流センサ13と同じ構成とした。
夏季を想定した試験では、外側流路6に供給する環境気体8Aの温度を35℃とし、内側流路7に供給する環境気体8Bの温度を28℃とした。
冬季を想定した試験では、外側流路6に供給する環境気体8Aの温度を10℃とし、内側流路7に供給する環境気体8Bの温度を18℃とした。
外側流路6および内側流路7における環境気体8A,8Bの流量は100L/minとした。
外側流路6および内側流路7の環境気体8A,8Bの温度は、入口6a,7a近傍に設置した温度センサ(熱電対)で測定した。
光源9の光量は、検体1の中央でのエネルギー密度が1kW/mまたは0.5kW/mとなるように設定した。1kW/mは夏季を想定した照射条件であり、0.5kW/mは冬季を想定した照射条件である。
日射反射率の測定は、JIS K 5602(2008)に準じて行った。測定には、分光光度計UV−3150(株式会社島津製作所製)を使用した。
放射率の測定では、JIS R 3106(1998)に準じて垂直放射率を求め、JIS R 3107(1998)により修正放射率を算出した。測定にはフーリエ変換赤外分光分析装置SPECTRUM100(波長範囲:5.5〜25μm)(株式会社パーキンエルマージャパン製)を使用した。
熱伝導率の測定は、JIS R 2606(2001)に準じて行った。測定には、迅速熱伝導率計QTM−500(京都電子工業株式会社製)を用いた。測定方式は細線加熱法(ホットワイヤ法)を採用した。
塗膜の膜厚の測定は、JIS K 5600−1−7(1999)に準じて行った。測定には、膜厚計SWT−8000、プローブ(Fe−2.5)(株式会社サンコウ電子研究所製)、標準外側マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製)を使用した。
[試験1](測定精度)
(実施例1)
塗料サンプル(1−1)を基板12の第1面12aに塗布し、被評価材層11(厚み100μm)を形成して得た検体1を仕切板2の収容部21に設置した。
気体供給部5A,5Bで予め温度等の条件を設定した環境気体8A,8Bを、それぞれ導管51、52を通して外側流路6および内側流路7に供給した。
本試験では夏季を想定し、外側流路6に供給する環境気体8Aの温度は35℃とし、内側流路7に供給する環境気体8Bの温度は28℃とした。
外側流路6および内側流路7の温度が安定した後に、光源9からの光を透明板35を通して検体1の被評価材層11に当てた。光源9の光量は、検体1の中央でのエネルギー密度が1kW/mとなるように設定した。
熱流センサ13によって熱流を測定した。結果を図8に示す。
(参考例1)
図6および図7に示す評価装置100を作製した。以下、図2に示す評価装置10との共通構成については同じ符号を付して説明を省略する。
評価装置100は、検体101が設置される仕切板102と、仕切板102の外面102a(上面)側に外側流路106を確保する外側流路構造103と、仕切板102の内面102b(下面)側に、内側流路107を確保する内側流路構造104と、を備えている。符号135は透明板(ガラス板)である。
評価装置100では、仕切板102の外面102aに凹部がないため、外面102aに設置された検体101は、外面102aから外側流路106側に突出する。
仕切板102の内面102b(下面)側の内側空間107は、図2に示す評価装置10の内側流路7に比べて高さ寸法が大きい。
検体101は、被評価材層11を第1面112a(上面)に形成した基板112と、第2面112b(下面)の全領域に形成した調整層114と、その表面の中央部に粘着材15を介して貼り付けられた熱流センサ13とを備えている。
調整層114(厚さ2mm)は、発泡ポリエチレンからなり、熱伝導率は0.04W/(m・K)(20℃)である。調整層114は、熱流センサ13が設けられた中央部分とそれ以外の部分との熱抵抗の差を小さくし、測定精度を高めることを目的として設けられている。
この評価装置100を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を図9に示す。
図8に示すように、実施例1(評価装置10)では、図9に示す参考例1(評価装置100)に比べて熱流の変動が小さく、測定値が安定していた。
このように、実施例1では、測定精度を高めることができたことが確認された。
実施例1(評価装置10)において、安定した測定値が得られたのは、検体1の上面と仕切板2の外面2aとが面一となるため、外側流路6内の環境気体8Aの流れが検体1によって乱されず、流れの乱れを原因とする測定精度の低下を回避できたためであると推定することができる。
また、検体1の下面と仕切板2の内面2bとの高低差が小さいため、内側流路7内の環境気体8Bの流れが乱されないことも、測定精度の向上に寄与したと推定できる。
また、実施例1で用いられた検体1は、熱流センサ13と調整層14との熱抵抗が互いに同等であるため、熱流センサ13が形成された中央部分と、調整層14が形成された周辺部分との熱移動に関する特性を互いに均等化できたことから、測定の精度を高めることができたと推定することができる。
これに対し、参考例1で用いられた検体101は、熱流センサ13が調整層114の表面に形成されているため、中央部分と周辺部分との熱移動に関する特性が均等ではなかったと考えられる。
さらに、実施例1で用いられている検体1では、熱流センサ13と調整層14とが位置を違えて形成されているため、表面(下面)にほとんど凹凸がないことも、内側流路7の環境気体8Bの流れを安定化することに貢献した可能性がある。
[試験2](日射反射率)
塗料サンプル(2−1、2−2、2−3)について、JIS K 5602(2008)に準じて日射反射率を測定した。
次いで、各塗料サンプルにつき、実施例1と同様の試験を行い、熱流を測定した。結果を図10に示す。
図10より、塗膜の日射反射率と熱流との間には比例的な関係があることがわかる。
この結果より、塗膜の厚みが一定である場合、熱流は、日射反射率の効果を評価する際の基準となり得ることが確認された。
[試験3](熱抵抗)
塗料サンプル(3−1)について、実施例1と同様の試験を行い、熱流を測定した。塗膜(被評価材層11)の厚み0.6mm、1.7mm、3.3mm、6.3mmについて試験を行った。結果を図11に示す。
塗膜の厚みは、熱抵抗と比例的な関係があると考えられる。すなわち、塗膜の厚みが大きいほど熱抵抗が大きくなると考えられる。
図11より、塗膜の厚みが大きくなるほど熱流が小さくなる関係があることがわかる。この結果より、熱流は、熱抵抗を評価する際の基準となり得ると考えられる。
[試験4](放射率)
塗料サンプル(4−1、4−2、4−3)について、JIS R 3106(1998)に準じて垂直放射率を求め、JIS R 3107(1998)により修正放射率を算出した。
塗料サンプル(4−1)の放射率は0.88であり、塗料サンプル(4−2)の放射率は0.89であり、塗料サンプル(4−3)の放射率は0.94であった。
次いで、各塗料サンプルにつき、積算熱流を測定した。結果を図12に示す。
この試験は、冬季の夜間、屋外で行った。光源9による光照射は行わなかった。外側流路構造3を構成する上板31、透明板35、フィルタ33、断熱材32は仕切板2等から取り外した。内側流路7に供給する環境気体8Bの温度は18℃とした。
一定時間、環境気体8Bを内側流路7に供給し、温度が安定したことを確認した後、環境気体8Bの供給を停止し、内側流路7(出口側)を断熱材で塞ぎ、12時間の積算熱流値を測定した。
図12より、塗膜の放射率が高いほど、内側流路7側から外部に流れる熱流が大きくなる関係があることがわかる。
この結果より、熱流が、放射率を評価する際の基準となり得ることが確認された。
[試験5](再現性)
塗料サンプル(5−1)につき、実施例1と同様の試験を行い、熱流の測定結果を得た。
同じ試験を合計5回繰り返した結果、t分布の95%信頼区間は202±4W/m(t値2.776、自由度4)であった。
この結果より、評価装置10では、再現性の高い測定値が得られたと考えることができる。
試験1〜4より、評価装置10を用いた熱流の測定によって、反射機能だけでなく、断熱機能および放射機能を含めた熱移動に関する機能を総合的に評価できることがわかった。
また、試験5より、再現性が高い測定値が得られるため、信頼性の高い評価が可能となることが確認された。
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、図示例の評価装置10は光源9を備えているが、評価装置は光源を備えていない構造としてもよい。この場合は、光源9からの光に代えて、例えば太陽光を利用することができる。また、光を照射せずに、熱特性の評価試験を行うこともできる。
また、検体1は、熱流センサ13の設置位置は基板12の中央部であり、調整層14はこれを囲む枠状に形成されているが、これに限らず、熱流センサ13の設置位置は基板12の中央部よりも周縁寄りの位置であってもよい。例えば基板12の外周縁を含む位置にあってもよい。
熱流センサ13は、調整層14とは別体であるが、熱流センサと調整層とは一体に形成することもできる。
本発明の評価対象は塗料に限定されず、他の材料、例えば被覆材、屋根材、外壁材なども評価対象とすることができる。
また、上述の実施形態では、外側流路6および内側流路7に流通させる流体は気体(空気)であるが、外側流路および内側流路に流通させる流体は気体に限らず、液体であってもよい。
1・・・検体
2・・・仕切板
2a・・・仕切板の外面
2b・・・仕切板の内面
3・・・外側流路構造
4・・・内側流路構造
5・・・気体供給部(流体供給部)
6・・・外側流路
7・・・内側流路
8・・・環境気体(環境流体)
9・・・光源
10・・・評価装置
11・・・被評価材層
12・・・基板
12a・・・第1面
12b・・・第2面
13・・・熱流センサ
14・・・調整層
17・・・熱流センサ本体
21・・・収容部
32、42・・・断熱壁
33、43・・・フィルタ(流通抵抗体)

Claims (7)

  1. 被評価材の熱特性を評価する方法であって、
    前記被評価材からなる被評価材層を有する検体が設置される仕切板と、
    前記仕切板の外面側に外側流路を確保する外側流路構造と、
    前記仕切板の内面側に、前記仕切板によって前記外側流路から隔てられた内側流路を確保する内側流路構造と、
    前記外側流路および前記内側流路にそれぞれ環境流体を供給する流体供給部と、を備えた評価装置を用い、
    前記検体は、第1面に前記被評価材層が形成された基板と、前記基板の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた熱流センサと、前記第2面に前記熱流センサとは平面視位置を違えて設けられた調整層と、を備え、
    前記調整層の厚さ方向の熱抵抗は、前記熱流センサの厚さ方向の熱抵抗と同等であり、
    前記仕切板には、前記被評価材層を前記外側流路に露出させ、かつ前記熱流センサおよび前記調整層を前記内側流路に露出させた状態で前記検体を収容可能な収容部が形成され、
    前記収容部は、前記被評価材層の表面と前記仕切板の前記外面とが面一となるように前記検体を設置可能であり、
    前記検体を前記収容部に設置し、前記流体供給部からの環境流体を前記外側流路および前記内側流路に流通させつつ、前記熱流センサによって熱流を測定し、前記熱流の測定値に基づいて、前記被評価材の熱特性を評価することを特徴とする熱特性評価方法。
  2. 前記調整層は、平面視において前記熱流センサを囲む枠状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱特性評価方法。
  3. 前記収容部は、前記調整層の表面と前記仕切板の前記内面とが面一となるように前記検体を設置可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱特性評価方法。
  4. 前記外側流路と前記内側流路の断面形状は互いに同じであり、
    前記外側流路と前記内側流路の断面積は互いに同じであることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の熱特性評価方法。
  5. 前記外側流路の入口部および前記内側流路の入口部に、前記環境流体が通過する際に流通抵抗を示す流通抵抗体がそれぞれ設けられ、
    前記環境流体は、前記流通抵抗体を通過して前記外側流路および前記内側流路に流入することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の熱特性評価方法。
  6. 被評価材の熱特性を評価する装置であって、
    前記被評価材からなる被評価材層を有する検体が設置される仕切板と、
    前記仕切板の外面側に外側流路を確保する外側流路構造と、
    前記仕切板の内面側に、前記仕切板によって前記外側流路から隔てられた内側流路を確保する内側流路構造と、
    前記外側流路および前記内側流路にそれぞれ環境流体を供給する流体供給部と、を備え、
    前記検体は、第1面に前記被評価材層を形成した基板と、前記基板の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた熱流センサと、前記第2面に前記熱流センサとは平面視位置を違えて形成された調整層と、を備え、
    前記調整層の厚さ方向の熱抵抗は、前記熱流センサの厚さ方向の熱抵抗と同等であり、
    前記仕切板には、前記被評価材層を前記外側流路に露出させ、かつ前記熱流センサおよび前記調整層を前記内側流路に露出させた状態で前記検体を収容可能な収容部が形成され、
    前記収容部は、前記被評価材層の表面と前記仕切板の前記外面とが面一となるように前記検体を設置可能であることを特徴とする熱特性評価装置。
  7. 前記検体の前記被評価材層に光を照射する光源を備えていることを特徴とする請求項6に記載の熱特性評価装置。
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