JP5804488B2 - マイクロ波手術器 - Google Patents

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本発明は、医療用手術刃を含むマイクロ波手術器に関する。
手術用のメスとは正式にscalpelやlancetと呼ばれ、止血を顧みずに皮膚や臓器を刃で切開、切離するナイフ様デバイスである。エネルギーデバイスとしてのメスは高周波電気メスが実用化されているのみである。この高周波電気メスは高電圧短絡による組織破壊により、止血しながら組織を切ることができる。しかし、極めて高い電圧のため、周囲組織も破壊される一方で止血能は充分ではない。また、リンパ管のシーリングも不充分である。
高周波に代わり、組織から出血させないで切断できるエネルギーデバイスは超音波以外になかったが、我々はマイクロ波により、高周波やマイクロ波よりもシーリング力が高く、止血能力の高いデバイスを開発してきた。
特許文献1には本来手術で使われているエネルギーを使わないメス刃をマイクロ波エネルギーデバイスに近接させた構造の手術器が記載されている。また、本発明者等はマイクロ波伝送用同軸ケーブルの中心導体と直接接続された刃、絶縁体、及び外部導体によって構成され、外部導体から刃先が露出したデバイスを特許出願した(特許文献2)。
特開昭60-24835号公報 特開2008-54925号公報
一般的に使用されている手術用メスに近い形をし、組織を切開又は切離する際に確実に生体組織の血管系等をシーリングし、出血しないまたは少量の出血ですみ、しかも近接組織を損傷しにくい手術器を提供する。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、外部導体及び絶縁体から突出した手術刃の先端部の露出幅を調整することにより、切開の操作時に生体組織にマイクロ波を印加し血管系をシーリングした直後に手術刃の刃線を生体組織に接触させることができることを見出し本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下からなる。
1.中心導体、絶縁体、及び外部導体からなる同軸状のマイクロ波伝送部とその先端に平らに成形された刃部を含む医療用手術器であって、その刃部は、該中心導体に直接接続されている幅広の中心導体からなる手術刃、その手術刃を刃先端部を除いて覆う絶縁体、その絶縁体を覆う外部導体を備え、該刃先端部は外部導体および絶縁体から突出し、刃線は曲線でありその両脇の外部導体の端部の中央に位置し、刃線と外部導体端部の距離が2mm以下であるマイクロ波手術器。
2.刃線と外部導体端部の距離が0.5mm以上1.5mm以下である前項1に記載のマイクロ波手術器。
3.手術刃の刃線は正確な切開創を得るための長さを有している前項1または2に記載のマイクロ波手術器。
4.刃線の長さが5mm以上45mm以下である前項3に記載のマイクロ波手術器。
5.同軸状のマイクロ波伝送部が軟性の同軸ケーブルであることを特徴とする前項1〜4のいずれか一に記載のマイクロ波手術器。
本発明の手術器は、操作性と切開機能に優れ、出血しない又は殆ど出血しない手術器である。本発明の手術器は、従来手術で使っていたメスの形に近く従来の切り方もペンホールドの持ち方もできるマイクロ波手術器であり、生体組織に当てた後、水平移動して創を真っ直ぐに長くする操作が可能となり正確な切開創を得ることができるようになった。その際刃線周辺に発射されたマイクロ波が生体組織が切開される直前に生体組織に印加され、刃線が生体組織に接触する直前又は同時に周辺組織脈管を凝固でき、結果として出血しない切開創となる効果を有する。
さらに、本発明の手術器は小電力で切開手術が可能であり、近接組織を損傷しない安全性の高い手術器である。
マイクロ波手術器の一態様を示す図である。 刃線と外部導体の距離が2mmの本発明手術器のマイクロ波照射シミュレーションを示す図である。空気中においても生体組織内を模した海水中の条件においてもマイクロ波照射部により刃の一部が覆い隠せなくなっている。 刃線と外部導体の距離が1mmの本発明手術器のマイクロ波照射シミュレーションを示す図である。空気中においても生体組織内を模した海水中の条件においても刃はマイクロ波照射部により覆われている。 犬の腸間膜動、静脈を切離中のメスと数秒後の切断後の写真で、脈管が出血なく切離されていることを示す。
本発明のマイクロ波手術器は、従来から手術で使用されている手術用メスに近い形を有するマイクロ波手術器であって、出血をしない、または出血しても少量ですむ手術器に関する。
本発明のマイクロ波手術器は、中心導体、絶縁体、及び外部導体からなる同軸状のマイクロ波伝送部とその先端に平らに成形された刃部を含む。本発明において、マイクロ波は、900〜6000MHzのものが同等に利用可能である。好ましくは2450±50MHzである。
マイクロ波伝送部の先端には刃部が設けられている。刃部は平らな形をしており、マイクロ波伝送部の中心導体に直接接続されている幅広の中心導体からなる手術刃、刃の先端部を除いて手術刃を覆う絶縁体、その絶縁体を覆う外部導体を備えている。該手術刃の刃線は曲線でありその両脇に該外部導体の両端部が略等距離に位置し、刃線と外部導体端部の距離が2mm以下である。該手術刃の先端部は外部導体および絶縁体から突出している。
刃部は生体組織を切開する機能、切開する直前にマイクロ波を印加する機能、切開する直前または同時に生体組織を凝固する機能を有する。
手術刃は、同軸構造の中心導体より幅広で刃に成形された中心導体であり、その先端部(刃先)が絶縁体および外部導体から突出している。このとき刃線と外部導体端部の距離(刃の露出)が2mm以下であると、通常の治療に使用する電力では刃線がマイクロ波の照射領域に入り、刃が生体組織に接触する前にマイクロ波が生体組織に印加され、切開する直前または同時に生体組織を凝固させることができ、出血を最小限に抑えることができる。
刃線は曲線でありその両脇の外部導体の端部の中央に位置する。すなわち、刃線は曲線でありその両脇の外部導体の端部も好適には曲線であり、刃線からその両脇の外部導体端までの距離は略等距離である。この構造において、刃線と外部導体端部の距離が2mm以下であることが本発明の特徴である。
本発明の手術器のマイクロ波シミュレーションで示すように、刃線と外部導体の距離が2mmを超えるとマイクロ波が刃の先端部(刃先)から外部導体に飛ぶ範囲が刃線を覆い隠す状況ではなくなり(図2)、実際に組織に当てた場合には切開機能を持つ刃線の付近で凝固が起こらず、小電力で凝固できるマイクロ波の機能が損なわれてしまう。一方、刃線と外部導体との距離が2mm以下になれば、マイクロ波は刃線を覆い隠すことができ(図3)、組織に当たった刃線の周辺はマイクロ波で凝固止血されており出血が抑えられる。
なお、シミュレーションは、図2中、図3中の左に示す構造の手術器を用いて、空気中と生体組織内を模した海水中の条件においてマイクロ波を照射し、高周波シミュレータにより解析した。(使用機器:HFSS(高周波3次元電磁界シミュレータ)、同軸ケーブル:外径8mm、マイクロ波周波数:2.45GHz、出力:1W)
この刃線と外部導体の近接構造は縦長の刃の長さを持つことを許容し、針としてではなく従来のメス刃の形を形成することを可能とした。そして、切開対象部位を水平に移動させて創を広げることを可能とした。また、出血したところにピンポイントで先端部を当てることにより、止血効果が期待でき、切開に伴う止血にも対応できる。
本発明の手術器は、中心導体、外部導体の先端部が平たくなって刃部を形成し、先端縁にそって中心導体が刃の先端部(刃先)として2mm以下露出した構造である。つまり切開機能を持つ刃線部、マイクロ波を強く発射する露出した刃の部位およびマイクロ波が指向する部位が近接(2mm以下)していることにより切開と同時に組織を止血凝固する効果を奏する。
また、針先のような針状凝固芯では刃を移動させて真っ直ぐに切開創を広げることは不可能であり、切開創を広げるには手術刃の刃線はある一定の長さを持つ必要があるところ、本発明は、刃線と外部導体との距離を2mm以下とすることにより、出血が少なく切開創を広げることのできる手術刃を提供することができた。本発明の本構造により刃長が15mmを超える大きさのメスを開発することができた。
本発明の手術器は刃の先端部が絶縁体と外部導体から突出していることにより切開機能を有するものである。本発明のマイクロ波手術器の刃線と外部導体の距離は好ましくは0.5mm以上2mm以下である。より好ましい刃線と外部導体の距離は0.5〜1.7mm、さらに好ましくは、0.5〜1.5mm、さらに好ましくは、0.8〜1.2mmである。
刃線は、通常のメスの刃線と同様に曲線である。曲線であることにより生体組織の切開が容易となる。刃線の長さは、切開対象部位を水平に移動させて創を広げることを可能とし、正確な切開創を得るための長さであれば特に制限はないが、好ましくは、5〜45mmである。さらに好ましくは、20〜30mmである。
刃の材料は、一般的な導体であればよい。例えば、金もしくは銀メッキを施した銅、金もしくは銀メッキを施した黄銅、又はリン青銅等の銅合金等により形成される。
刃部は、平たくマイクロ波伝送部の前方に長く伸び、マイクロ波伝送部の直径と同程度の幅を有する。好ましい刃部の長さは5〜45mmである。さらに好ましくは、20〜30mmである。好ましい幅は、3〜15mm、さらに好ましくは、5〜12mmである。
本発明の手術器は中心導体、絶縁体、及び外部導体からなる同軸状のマイクロ波伝送部を含む。同軸状のマイクロ波伝送部の断面は、略円形である。開腹手術など、直視下での手術では、好ましくは施術者が把持するために絶縁体からなるホルダーにマイクロ波伝送部が覆われている。ホルダーに挿入されているマイクロ波伝送部は、10〜20cm程度、好ましくは、12〜16cm程度である。同軸状のマイクロ波伝送部は同軸ケーブルであることが好ましく、同軸ケーブルはマイクロ波発生装置に接続されマイクロ波が供給される。本発明の手術器は、マイクロ波伝送部が軟性の同軸ケーブルであることにより内視鏡および/またはカテーテルに挿入可能である。
本発明で用いられる同軸ケーブルは、例えばリン青銅からなる導電体の中心電極と、中心電極を覆う例えばテフロン(登録商標)からなる絶縁体のシールドチューブと、例えば真鍮からなる外部導体(導電体)のアースパイプからなる。同軸ケーブルのその外側はシールドホルダ(ガイドチューブともいう)で覆われていてもよい。シールドホルダは、非伝導性部材〔例えば、テフロン(登録商標)、りん青銅等の非磁性のコイル〕で構成されていることが好ましい。
本発明のマイクロ波手術器は、小電力で出血の殆どない切開を可能とし、安全性にも優れている。本発明において使用される電力は5W〜80W、好ましくは20W〜60Wである。さらに好ましくは40W〜50Wである。80Wより高ければ、周辺組織に損傷を及ぼす可能性がある。また、5W未満では、手術刃としての機能および止血効果が十分ではない。
以上説明したように、本発明のマイクロ波手術器は、水平に動かされて出血なく又は殆ど出血なく切開創を広げることができる。さらに小電力で切開を可能とするものである。従って、医療分野での外科的処置領域において、極めて安全性、操作性に優れている手術器である。
1 中心導体(手術刃)
2 絶縁体
3 外部導体

Claims (4)

  1. 中心導体、絶縁体、及び外部導体からなる同軸状のマイクロ波伝送部とその先端に平ら
    に成形された刃部を含む医療用手術器であって、その刃部は、該中心導体に直接接続され
    ている幅広の中心導体からなる手術刃、その手術刃を刃先端部を除いて覆う絶縁体、その
    絶縁体を覆う外部導体を備え、該刃先端部は外部導体および絶縁体から突出し、刃線は曲
    線でありその両脇の外部導体の端部の中央に位置し、刃線と外部導体端部の距離が0.5
    mm以上1.5mm以下であり、並びに、
    刃部に伝送するマイクロ波の周波数は、900MHz〜6000MHzであり、かつ使用する電力は5W〜80Wであるマイクロ波手術器。
  2. 手術刃の刃線は正確な切開創を得るための長さを有している請求項1に記載のマイクロ波手術器。
  3. 刃線の長さが5mm以上45mm以下である請求項2に記載のマイクロ波手術器。
  4. 同軸状のマイクロ波伝送部が軟性の同軸ケーブルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載のマイクロ波手術器。
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