JP5803019B2 - 印刷方法および印刷用治具 - Google Patents
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Description
三次元顔面成形体は、人形体の顔の一部を模した立体的な造形物として形成されており、当該立体的な造形物の表面に、インク噴射式印刷機を用いて目、口、鼻等の顔画像を印刷するものである。そして、印刷が完了した三次元顔面成形体をキャラクター本体の頭部に嵌め込むことで、印刷による目、口、鼻等の顔画像が設けられた人形体の頭部を形成するものである。
このように人形体の頭部を2分割体としたのは、立体物の表面に印刷しようとすると、水平移動するインク噴射式印刷機のノズルと、立体的である被印刷面との間に高低差が生じ、ノズルと被印刷面との間隔に印刷の限界を超えた部分が生じて印刷できない箇所が発生するからである。
また、印刷のためだけに立体物を複数の部品で構成するのは設計上および製品制作上の工数面から見ても無駄である。本発明は当該事情に鑑み発明されたものであって、被印刷物となる立体物を分割することなく、インク噴射式印刷機を用いて立体物の表面に印刷を行うことができる方法および当該方法に用いる治具を提供することを目的とするものである。
本発明は当該事情に鑑み発明されたものであって、従来と同様のインク噴射式印刷機を用いつつ、印刷範囲を広げることができる方法および当該方法に用いる治具を提供することも目的の一つとするものである。
立体的な被印刷物を固定する固定面を有した印刷治具と、当該印刷治具を装着可能な印刷部を有したインク噴射式印刷機を用いた印刷方法であって、
前記印刷治具の固定面を、インク噴射式印刷機が有するノズルの移動面に対して傾斜した傾斜面によって構成し、
前記被印刷物を前記傾斜面に固定した後に、前記ノズル部に対向し近接した当該被印刷物の表面に印刷を行い、
前記印刷の後、前記傾斜面に固定した被印刷物の反転若しくは被印刷物を固定した固定面自体の回動若しくは固定面の傾斜方向を異ならせた他の印刷治具への装着によって、前記印刷が行われた部位と印刷が行われていない部位を入れ代え、新たに前記ノズル部に対向し近接した被印刷物の印刷が行われていない部位に印刷を行うことを特徴とする。
また、インク噴射式印刷機の印刷部に装着可能な立体的な被印刷物の印刷治具であって、
前記被印刷物を着脱可能に装着することができる固定面を有するとともに、
当該固定面をインク噴射式印刷機が有するノズルの移動面に対して傾斜させたことを特徴とする。
最も単純な例は、発明を実施するための形態に記載した如く、被印刷物を45度傾斜した取付面に固定して印刷を行い、一方の面を印刷した後にノズル部からの距離が遠いために印刷が行われない領域を、被印刷物を付け替え(若しくは別の印刷治具に付け直し、あるいは印刷治具が備える機構による被印刷物の回動)によって印刷ができるようにノズル部に対向させるというものである。
一般的なインク噴射式印刷機は、一定の送り量で移動する被印刷物の表面に、一軸上を往復移動するノズル部によってインクを噴射するものである。したがって、通常の使用形態としては2次元的な平面上に印刷を行うものであるから、高度なプログラムによって動作するロボットアームを有する塗装機械のような三次元的な動作によって立体表面に印刷を行うものではない。
しかしながら、本発明は平面用の印刷機を用いた場合であっても、印刷品質が悪化することのないインクの到達可能距離の範囲で被印刷物の向きを変えつつ、複数回に分けて印刷を行うことによって、安価かつ容易に立体物の表面にも印刷を行うことができるという効果を有するものである。
印刷治具1は、平板状に形成されたトレー3を有している。当該トレー3は、アルミニウムや鉄等の金属板によって形成されたものであり、印刷装置内の印刷位置に着脱可能に固定されるように形成されたものである。
トレー3の上面には、複数個の固定具5が取付けられている。当該固定具5は、一例として細幅の金属板を板金加工によって長手方向に沿って折り曲げた形状に形成されている。そして、折り曲げた金属板の一方をトレー3に対する固定部とし、他方をトレー3の表面に対して45度の角度で傾斜させた取付面4としたものである。当該取付面4には、頭部模型2が設定された位置および姿勢で着脱可能に精度良く取り付けられるようになっている。
被印刷物を定められた位置および姿勢で配置するために、取付部6となる孔は被印刷物(頭部模型2)の外形的特徴に合致した嵌合部を構成するようになっている。孔の最適な形成方法はレーザー加工機を用いた加工であり、同一形状の孔を同一ピッチで精度良く形成できるものとなっている。
なお、上記取付部として形成した孔には、後述する図7に示した印刷治具のように上端を開放した切欠を有する孔も含まれる。
頭部模型2は、頭頂部を模した円柱形状部9と背面側に設けた突起(係合部)7を有している。当該突起7は孔として形成した前記取付部6と精度良く嵌合することで、トレー3上における頭部模型2の位置および姿勢を精度良く固定するようになっている。
また、取付面4上に設けた取付部6(孔)の位置は、トレー3の底面を基準として定められた高さに設けられている。トレー3の底面は、印刷に用いるインク噴射式印刷機に装着される際の基準面となる部位であるので、前記取付部6(孔)の位置は、トレー3の底面を基準として定められている。その結果、頭部模型2の位置および姿勢が印刷装置の内部で精度良く保たれるようになっている。
複数の固定具5の各上縁10は、トレー3に固定された状態でトレー3の底面からの高さが一定となるように形成されている。印刷機のノズルは、上下せずに水平移動を行うものであるので、この水平移動の際にノズルと固定具5が接触することがないように、上縁10の位置が定められている。
当該目的のため、取付部6のヌキ形状は、第1にトレー3の底面と平行に設けられた2本の平行な側縁11(11a、11b)部を有している。当該2本の平行な側縁11の間隔は、頭部模型2背面の突起(係合部)7の幅と嵌合可能な程度に一致している。
また、上記2本の平行部の両端には、上下方向に幅を拡幅した形状の膨出部12が設けられている。当該膨出部12の大きさは、装着された頭部模型2の円柱形状部9が丁度嵌る程度の大きさに形成されている。
はじめに、固定具5の取付面4上に頭部模型2を装着する。取付面4は45度傾斜した斜面として形成されているので、取付面4上に装着された頭部模型2も傾斜した状態で取り付けられる。このため、傾斜した状態で取り付けられた頭部模型2の表面の概ね半分の面積である半面13が被印刷面として上方を向くようになっている。
次いで、上記頭部模型2を装着したトレー3を、インク噴射式印刷機に対して装着する。インク噴射式印刷機は、プログラムに従いノズルPを水平駆動しながら下方にインクを噴射することで印刷を行うようになっている。ノズルPから噴射されたインクは、ノズルPからの距離が遠くなるに従って拡散するので、遠すぎると印刷品質が著しく劣化する。本願発明で使用するインク噴射式印刷機は、ノズルPからの距離が2mmを超えるとインクの飛散によって印刷品質が劣化するので、一度に印刷する領域はノズルPからの距離H2が2mmを超えない範囲となっている。
また、印刷機を破損しないよう、ノズルPから固定具5の最上点までの距離H1は必ず設けられるようになっている。
上記図5(a)に示す状態で印刷を行うと、円柱表面の略半分である半面13に印刷を行うことができる。図示した例では、頭部模型2の顔の半分に目、鼻、口が印刷されている。上記半面の印刷が終わった後、頭部模型2を固定具5から一旦取り外し、向きを変えて再び装着し印刷を行う。
図5(b)は、半面13の印刷の後、頭部模型2の向きを変えてトレー3に装着した状態を表している。頭部模型2の向きを反転させると、前工程では印刷可能範囲に無かった半面14をノズルPと対向する位置に表出させることができる。この半面14は、ノズルPからの距離H2が2mmを超えない位置に設けられている領域であるので印刷が可能となっている。
また、本実施の形態では、向きを変える前の被印刷物と向きを変えた後の被印刷物を一つのトレー3に装着するようにしているが、被印刷物が複雑な立体的形状を成している場合には、それぞれの向き固有のトレーを設けても差し支えがないものである。すなわち、被印刷物が複雑な形状を有している場合には、片面毎に異なるトレーに装着して印刷を行うようにしてもよいものである。
また、前記本実施の形態は、頭部模型2の背面に取付用の突起(係合部)7を設け、印刷治具1の取付面4に対応する孔を形成したものである。しかしながら、頭部模型の形状は図示した形状に限らず様々な立体的形状を成すものであり、取付用の突起を設けない場合もある。この場合には、頭部模型の外観形状と嵌合する孔を取付面4に形成したり、孔とともに印刷を妨害しないようなガイド用の取付補助具を設けても差し支えがないものである。
図6は、取付面を回動可能に形成した印刷治具の他の例を表している。当該印刷治具は、平板状に形成されたトレー3aを有している。当該トレー3aは、樹脂、アルミニウムや鉄等の板状体によって形成されたものであり、印刷装置内の印刷位置に着脱可能に固定されるように形成されたものである。
トレー3aの上面には、複数個の固定具15が取付けられている。当該固定具15は、一例として細幅の金属板として形成された取付面4aを設けるとともに、両端部を折り曲げてトレー3aの軸部16によって回動可能に支持されるものである。取付面4a上には、前述した取付面4と同様に孔等による被印刷物2aの取付部が設けられている。
印刷治具20は、頭部模型21の取付部として孔22を有している。当該例における頭部模型21は、上方および側方に突出させた角のような突出部位を有した複雑な形状を成している。孔22の形状は、前記角状の部位と嵌合できるように頭部模型21に合わせた形状に形成されている。また、本実施例に係る印刷治具20は、前記角状の部位の形状が大きいので、孔22の一部に切欠23を設け上縁部に開口を設けたような形状になっている。
当該例における印刷治具20を用いた頭部模型21の印刷(塗装)も、印刷装置のノズル先端から顔半面部分を構成する被印刷面までの距離が概ね2mm以内となるようになっている。そして、頭部模型21表面の凹凸形状にあわせたプログラムの通りに彩色が行われるようになっている。また、半面の印刷が終わると、別途用意している(図示せず)反対面用の印刷治具に頭部模型21を装着し同様に残りの半面に彩色を行うようになっている。このように、表面形状が複雑な被印刷物であっても、印刷治具を用いることによって分割印刷を行うことができるようになっている。
2 頭部模型
3 トレー
4 取付面
5 固定具
6 取付部
7 突起(係合部)
8 平坦部
9 円柱形状部
10 上縁
11(11a、11b) 側縁
12 膨出部
13 半面
14 半面
H1 距離
H2 印刷距離
P 印刷機(ノズル)
Claims (2)
- 立体的な被印刷物を固定する取付面を有した印刷治具と、当該印刷治具を装着可能な印刷部を有したインク噴射式印刷機を用いた印刷方法であって、
前記印刷治具が有する前記取付面を、インク噴射式印刷機が有するノズルの移動面に対して一定の角度に傾斜した傾斜面によって構成するとともに、当該取付面に前記被印刷物に形成した取付用の突起と嵌合する孔を設け、
前記孔を2本の平行部を有する形状に形成し、当該孔と嵌合する前記被印刷物の突起によって当該被印刷物の回転、高さ方向および横方向の位置を抑制するものであり、
前記被印刷物を前記傾斜した取付面に固定した後に、前記ノズル部に対向し近接した当該被印刷物の表面に印刷を行い、
前記印刷の後、前記傾斜した取付面に固定した被印刷物の反転若しくは取付面の傾斜方向を異ならせた他の印刷治具への装着によって、前記印刷が行われた部位と印刷が行われていない部位を入れ代え、新たに前記ノズル部に対向し近接した被印刷物の印刷が行われていない部位に印刷を行うことを特徴とする印刷方法。 - インク噴射式印刷機の印刷部に装着可能な立体的な被印刷物の印刷治具であって、
立体的な被印刷物を固定する取付面を有し、
当該印刷治具が有する前記取付面を、インク噴射式印刷機が有するノズルの移動面に対して一定の角度に傾斜した傾斜面によって構成するとともに、当該取付面に前記被印刷物に形成した取付用の突起と嵌合する孔を複数個設け、
前記孔を2本の平行部を有する形状に形成し、当該孔と嵌合する前記被印刷物の突起によって当該被印刷物の回転、高さ方向および横方向の位置を抑制するものであることを特徴とする被印刷物の印刷治具。
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