JP5800702B2 - 内視鏡システム - Google Patents

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Description

本発明は、内視鏡システムに関し、特に、対物光学系を移動させるための形状記憶素子を備えたアクチュエータを有する内視鏡システムに関する。
従来より、内視鏡システムは、医療分野及び工業分野において広く用いられている。被写体は、内視鏡挿入部の先端部に設けられた撮像素子により撮像され、被写体像がモニタ装置に表示される。術者等は、そのモニタに映し出された被写体の画像を見て、観察を行うことができる。撮像素子と観察光学系が、内視鏡挿入部の先端部に内蔵されている。
近年、被写体像のフォーカシング機能のために、観察光学系のレンズ枠を光軸方向に移動させる機構を挿入部内に有している内視鏡装置であって、そのレンズ枠を移動させるアクチュエータとして、形状記憶合金を用いるものが提案されている。
形状記憶合金ワイヤは、ワイヤに流れる電流を制御することによって伸縮する。例えば、形状記憶合金ワイヤは、電流が流れることにより発熱し、高温状態になると縮み、電流が流れないと、放熱することにより伸びる。
その提案では、形状記憶合金のこのような特性を利用して、観察光学系のフォーカシング制御が行われる。
また、形状記憶合金を用いたアクチュエータに関しては、例えば特開2010−48120号公報に開示されているように、形状記憶合金ワイヤに電流を流したときにおける最大抵抗値と最小抵抗値を記憶して、形状記憶合金ワイヤに流れる抵抗値に基づく抵抗制御を行うアクチュエータシステムが提案されている。
そのアクチュエータシステムでは、アクチュエータシステムの起動時に、アクチュエータの移動範囲における最小抵抗値を検出してキャリブレーションを行い、そのキャリブレーションの補正値を用いて、抵抗制御が行われる。
特開2010−48120号公報
しかし、そのようなアクチュエータを用いて内視鏡のフォーカシング制御を行う場合、対物光学系の遠点フォーカス位置、近点フォーカス位置等の制御ポイントとなる力量変化ポイントにおける正確な抵抗値が必要となるが、例えば、キャリブレーション時に、単にアクチュエータに一定値電流を印加して各力量変化ポイントにおける抵抗値を検出するようにしても、抵抗値の変化が小さいため、各力量変換ポイントを精度良く特定し難いという問題がある。
また、上記の特開2010−48120号公報には、キャリブレーション時におけるアクチュエータの力量変換ポイントを精度良く特定するための手段は開示されていない。
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであり、キャリブレーション時におけるアクチュエータの力量変換ポイントを精度良く特定することができる内視鏡システムを提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、被写体を撮像する撮像素子と対物光学系を備えた内視鏡システムであって、形状記憶素子を有し、前記対物光学系を第1及び第2のフォーカス位置へ移動させるための移動部材を駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動部と、前記移動部材の位置を検出するために前記形状記憶素子の抵抗値を検出する抵抗値検出部と、前記対物光学系の動作指示を入力する指示入力部と、前記指示入力部に入力された指示と、前記抵抗値検出部により検出された抵抗値に対応する前記移動部材の位置に基づいて、前記アクチュエータ駆動部への駆動信号を出力する制御部と、前記制御部に接続された記憶部と、を備えた内視鏡システムにおいて、前記制御部は、キャリブレーションが指示された時、所定の開始電流値から所定の最大電流値まで所定の割合で時間経過と共に単調増加する電流を前記アクチュエータへ供給するための前記駆動信号を、前記アクチュエータ駆動部へ出力すると共に、前記抵抗値検出部により検出された前記形状記憶素子の抵抗値と前記単調増加後に検出された前記形状記憶素子の抵抗値との差分の前記時間経過における差の絶対値が所定の閾値以上となった抵抗値を、前記対物光学系の前記第1又は前記第2のフォーカス位置を示す抵抗値として前記記憶部に記憶することを特徴とする内視鏡システムを提供することができる。
本発明によれば、キャリブレーション時におけるアクチュエータの力量変換ポイントを精度良く特定することができる内視鏡システムを実現することができる。
本実施の形態に係わる内視鏡システムの構成を示す構成図である。 本実施の形態に係わる、挿入部7の先端部12における対物光学系のアクチュエータの構成を説明するための図である。 本実施の形態に係わる、SMAワイヤ21の伸縮を制御する制御回路の構成を示すブロック図である。 本実施の形態に係わる検出回路53の構成を示す回路図である。 本実施の形態に係わるノイズ除去回路64の回路図である。 本実施の形態に係わるキャリブレーション処理の流れの例を示すフローチャートである。 本実施の形態に係わる、抵抗値検出レンジ決定処理(S2)の流れの例を示すフローチャートである。 本実施の形態に係わる、時間経過に沿った、キャリブレーション処理時のSMAワイヤ21へ供給する電流値Iと、SMAワイヤ21の検出抵抗値Rdetectの変化を示すグラフである。 本実施の形態に係わる加熱電流決定処理(S4)の流れの例を示すフローチャートである。 本実施の形態に係わる、加熱期間における、時間経過に沿った加熱電流I(t)の変化を示す図である。 本発明の実施の形態に係わる抵抗値判定処理(S5)の処理の流れの例を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態に係わる、遠点端検出を説明するための図である。 本発明の実施の形態に係わる、近点端検出を説明するための図である。 本発明の実施の形態に係わる、キャリブレーション端検出を説明するための図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(全体構成)
図1は、本実施の形態に係わる内視鏡システムの構成を示す構成図である。本実施の形態の電子内視鏡システム(以下、単に内視鏡システムという)1は、被写体を撮像する撮像素子と対物光学系を備えた内視鏡システムである。内視鏡システム1は、電子内視鏡(以下、単に内視鏡という)2と、光源装置3と、ビデオプロセッサ(以下、プロセッサという)5と、カラーモニタ(以下、モニタという)6と、が電気的に接続されて構成されている。
内視鏡2は、挿入部7と、この挿入部7が延設された操作部8とを有し、操作部8から延出するユニバーサルコード9が、スコープコネクタ10を介して光源装置3に接続されている。また、スコープコネクタ10には、スコープケーブル4の一端部の電気コネクタが着脱自在に接続されている。そして、このスコープケーブル4の他端部の電気コネクタは、プロセッサ5に接続されている。
挿入部7は、先端から順に、先端部12と、湾曲部13と、可撓管部7aと、が連設されて構成されている。先端部12の先端面には、先端開口部、観察窓、2つの照明窓、観察窓洗浄口、及び観察物洗浄口が配設されている。
挿入部7の先端部12の観察窓の背面側には、先端部12に内蔵される撮像装置が配設されている。撮像装置は、被写体を撮像する撮像素子と、対物光学系とを有する。また、2つの照明窓の背面側には、光源装置3からの照明光を伝送する、先端部12からユニバーサルコード9の内部に挿通する、図示しないライトガイドバンドルが設けられている。
操作部8は、下部側の側部に配設される鉗子口11bと、中途部のグリップ部18と、上部側に設けられた2つの湾曲操作部14と、送気送水制御部15と、吸引制御部16と、複数のスイッチ17aから構成された主に撮像機能を操作するスイッチ部17と、から構成されている。
複数のスイッチ17aの中には、フォーカス機能のための1つあるいは2つのスイッチがあり、対物光学系を移動する指示を入力するための指示入力部を構成する。
(先端部におけるアクチュエータの構成)
図2は、挿入部7の先端部12における対物光学系のアクチュエータの構成を説明するための図である。図2に示すアクチュエータ20は、挿入部7の先端側に設けられ、形状記憶素子を有し対物光学系を挿入部7内で移動させるための移動部材を駆動するアクチュエータである。
図2に示すように、アクチュエータ20の駆動用の形状記憶素子である形状記憶合金(Shape Memory Alloys。以下、SMAと略す)のワイヤ21は、直径が数十μm(マイクロメートル)で、可撓性を有するチューブ22内に挿通されている。SMAワイヤ21の基端部は、挿入部7内の固定部材23に固定されている。
一方、観察光学系のレンズ群の中の1つの対物光学系であるレンズ24は、レンズ枠25に固定されている。レンズ24は、レンズ枠25の移動に伴い移動する。第1のコイルバネ26が、バネ固定部材27とレンズ枠25の間に配置されており、バネ固定部材27は、挿入部7の先端部12の図示しない先端硬質部材に固定されている。本構造により、レンズ枠25は、弾性部材であるコイルバネ26により、挿入部7の基端側に押圧されている。
ワイヤ21の先端部は、カシメ部材28により、ステンレス(SUS)製のワイヤ29の一端に接続されている。ワイヤ29の他端は、レンズ枠25に向かって進退すなわち移動する移動部材30に接着され固定されている。すなわち、SMAワイヤ21は、ワイヤ29を介して移動部材30に接続されている。SMAワイヤ21を移動部材30に直接接続しないのは、挿入部7の先端部12に設けられている撮像素子(図示せず)がSMAワイヤ21の発熱の影響を受けないようにするためである。
パイプ31の一端は、移動部材30の基端部に接続され固定されている。パイプ31の他端は、パイプ32の先端側内部に挿通されて、パイプ32内に挿通されている第2のコイルバネ33の先端部に接触している。パイプ32は、図示しない先端硬質部材に対して固定されている。パイプ31は、パイプ32内において、軸方向に沿って摺動可能に挿通されている。レンズ枠25に当接する移動部材30は、弾性部材であるコイルバネ33により、先端側へ押圧されている。コイルバネ33のバネ力量は、コイルバネ26のバネ力量よりも大きい。コイルバネ26と33は、共に圧縮された状態で、それぞれバネ固定部材27とパイプ32内に設けられる。
パイプ34の基端部が、チューブ22の先端部に挿通されて固定されている。パイプ34の先端部が、パイプ32の基端側において、内部に挿通されて固定されている。パイプ34の先端部は、パイプ32内においてコイルバネ33の基端部に当接している。
ワイヤ29は、パイプ22,31,32,34及びコイルバネ33の内側空間内に挿通され、カシメ部材28を介して接続されたSMAワイヤ21も、パイプ22内に挿通されている。SMAワイヤ21には、図示しない2本のケーブルが接続され、そのケーブルを介して電流が流せるようになっている。
また、先端硬質部材内には、レンズ24の動作を規制するレンズストッパー35が固定されて設けられている。レンズストッパー35は、移動部材30が基端側に移動したときにレンズ枠25と突き当たって、レンズ枠25が所定のレンズ位置を超えて動かないようにするための部材である。
図2において、状態SS1は、SMAワイヤ21に電流が流れていないときの状態を示す。SMAワイヤ21は、チューブ22内で、図2において点線で示すように、いくらかの弛みを持ちながら、伸びた状態にある。パイプ31がコイルバネ33のバネ力量により先端側に押圧されている。コイルバネ33の伸びようとするバネ力量は、コイルバネ26の伸びようとするバネ力量よりも大きいので、パイプ31は、移動部材30を先端側に押圧する。そのとき、移動部材30がレンズ枠25を先端側に押圧するため、レンズ枠25はバネ固定部材27に当接し、先端方向に向かってバネ固定部材27を押圧している状態にある。バネ固定部材27は、レンズ24の動作を規制する部材である。状態SS1では、移動部材30の先端が、第1の位置P1に位置している。移動部材30の先端が第1の位置P1にあるとき、レンズ枠25に固定されたレンズ24の位置は、対物光学系の遠点フォーカス位置である。
状態SS1においてSMAワイヤ21に電流を流すと、SMAワイヤ21は発熱し、収縮を開始する。SMAワイヤ21の収縮につれて、図2において実線で示すように、ワイヤ21の弛み分がとれ、ワイヤ29を基端側へ引っ張る力が次第に大きくなり、その引っ張る力とコイルバネ26のバネ力量の和が、コイルバネ33の伸びようとするバネ力量よりも大きくなると、ワイヤ21に連結されたワイヤ29が基端側に移動する。
ワイヤ29の移動の途中で、レンズ枠25が、レンズストッパー35に当接すると、図2において状態SS2として示すように、レンズ24の基端側への移動は停止する。状態SS2では、移動部材30の先端が、第2の位置P2に位置している。移動部材30が第2の位置P2にあるとき、レンズ枠25に固定されたレンズ24の位置は、対物光学系の近点フォーカス位置である。
レンズ枠25がレンズストッパー35に当接した後も、ワイヤ21に電流を流し続けると、SMAワイヤ21はさらに発熱して収縮する。SMAワイヤ21の収縮により、ワイヤ29が基端側に移動するため、移動部材30も基端側に移動する。移動部材30は、パイプ32の先端部に当接して、停止する(状態SS3)。状態SS3では、移動部材30の先端が、第3の位置P3に位置している。移動部材30が第2の位置P2から第3の位置P3に移動しても、レンズ枠25の移動は、レンズストッパー35により阻止されているので、レンズ枠25に固定されたレンズ24の位置は、近点フォーカス位置のままである。状態SS3では、レンズ枠25は、コイルバネ26により基端方向に向かってレンズストッパー35に押圧された状態で静止した状態にある。第3の位置P3が、キャリブレーション端の位置である。
移動部材30がパイプ32の先端部に当接して停止した後、SMAワイヤ21に電流を流し続けても、SMAワイヤ21は、ワイヤ29が伸びないため、収縮することが出来ない(状態SS3)。
従って、SMAワイヤ21への電流を制御することにより、移動部材30の先端は、第1の位置P1から第3の位置P3の差の範囲で移動可能である。しかし、上述したように、レンズ枠25の稼動範囲(すなわちレンズ24の稼動範囲)は、第1の位置P1と第2の位置P2の間である。
内視鏡2の使用時は、SMAワイヤ21の抵抗値に基づいてSMAワイヤ21への電流供給を制御することによって、レンズ24の位置の制御が行われる。非加熱時、アクチュエータ20の状態は、状態SS1である。状態SS1のとき、非加熱時のSMAワイヤ21の長さは、最大長L1であり、そのときの抵抗値は、最大抵抗値Rmaxである。加熱時でかつアクチュエータ20の状態が状態SS3のとき、SMAワイヤ21の長さは、最小長L3であり、そのときの抵抗値は、最小抵抗値Rminである。状態SS2のとき、SMAワイヤ21の長さは、L2であり、そのときの抵抗値は、(Rmin+α1)である。したがって、レンズ24は、最大抵抗値Rmaxと抵抗値(Rmin+α1)の範囲で移動する。
また、内視鏡2の挿入部7の先端側には、湾曲部13がある。よって、チューブ22は、湾曲部13の湾曲動作の影響を受けて湾曲する。SMAワイヤ21とワイヤ29には、上述したように縮もうとするテンションがかかっているため、常に直線状になろうとする。SMAワイヤ21とワイヤ29は、細いため、チューブ22及びパイプ31,32,34内で軸に直交する方向に移動可能である。よって、チューブ22が湾曲したときに、SMAワイヤ21とワイヤ29の湾曲形状は、チューブ22の湾曲形状と同様とならない。そのため、移動部材30の先端が第3の位置P3にあるとき、チューブ22が湾曲すると、そのチューブ22の曲率半径とワイヤ21と29の曲率半径の差(以下、曲率半径差という)に起因して、移動部材30が先端側に押し出される現象が発生し得る。
そのため、移動部材30が湾曲動作に起因して先端側に押し出されるように移動しても、移動部材30がレンズ枠25を動かさないようにするためのクリアランス領域Lcが、予め設けられている。クリアランス領域Lcは、位置P2とP3間である。クリアランス領域Lcは、曲率半径差に起因する移動部材30の移動量以上に設定される。
状態SS3においてSMAワイヤ21へ供給する電流値を下げると、移動部材の先端30は、位置P2に向かって移動する。SMAワイヤ21への供給電流の電流値をさらに下げる、あるいはその供給電流を0にすると、移動部材30の先端は、位置P2を越えて位置P1まで移動して戻る。その結果、レンズ24は、遠点フォーカス位置になる。
従って、位置P1と位置P2の範囲は、レンズ稼動範囲すなわちレンズ稼働領域Lmであり、位置P2と位置P3の範囲は、クリアランス範囲すなわちクリアランス領域Lcである。
(制御回路)
図3は、SMAワイヤ21の伸縮を制御する制御回路の構成を示すブロック図である。制御回路41は、プロセッサ5に含まれる。図3は、プロセッサ5内のSMAワイヤ21の伸縮を制御する制御回路のみを示している。制御回路41は、制御部としての中央処理装置(以下、CPUという)51と、アクチュエータ駆動部としての出力制御回路52と、抵抗値検出部としての検出回路53と、切替回路54とを含む。切替回路に、SMAワイヤ21が接続されている。出力制御回路52は、アクチュエータ20を駆動するアクチュエータ駆動部を構成する。検出回路53は、移動部材30の位置を検出するためのSMAワイヤ21の抵抗値を検出する抵抗値検出部を構成する。切替回路54は、アクチュエータ駆動部である出力制御回路52と、抵抗値検出部である検出回路53とを、アクチュエータ20へ選択的に接続する接続切替部を構成する。
制御部としてのCPU51は、ユーザによる操作部8のスイッチ17aへの操作に応じて、図示しない制御プログラムに基づき、上記アクチュエータ20の駆動制御を実行する。すなわち、CPU51は、指示入力部であるスイッチ17aに入力された指示と、抵抗値検出部である検出回路53により検出された抵抗値に対応する移動部材30の位置に基づいて、アクチュエータ駆動部である出力制御回路52への駆動信号を出力する制御部を構成する。
また、制御部としてのCPU51は、ユーザによるプロセッサ5に対する所定の操作に応じて、図示しないメモリに記憶されたキャリブレーションプログラムに基づき、後述する内視鏡システム1のアクチュエータ20のキャリブレーションを実行する。
CPU51は、出力制御回路52に駆動信号Drを供給し、出力制御回路52は、受信した駆動信号Drに基づく電流信号を切替回路54に出力する。また、CPU51は、加熱制御期間と抵抗値検出期間とからなる基本制御期間を繰り返すことにより、SMAワイヤ21への供給電流の制御を行う。すなわち、CPU51は、加熱制御期間T1と抵抗値検出期間T2を繰り返すように、切替回路54に切替信号Swを供給する。よって、切替回路54は、加熱制御期間T1では、出力制御回路52からの電流信号をSMAワイヤ21に出力し、抵抗値検出期間T2では、所定の抵抗検出用電流をSMAワイヤ21に供給し、SMAワイヤ21の両端で生じる電圧降下値からSMAワイヤ21の抵抗値を検出するように、切り替わる。
例えば、基本制御期間は、12ミリ秒であり、そのうち最初の10ミリ秒が加熱制御期間T1であり、続く2ミリ秒が抵抗値検出期間T2である。よって、SMAワイヤ21への電流の供給あるいは停止は、間欠的に、加熱制御期間T1の間だけ行われ、SMAワイヤ21の抵抗値の検出すなわち測定も、間欠的に、抵抗値検出期間T2に行われる。
なお、基本制御期間、加熱制御期間T1及び抵抗値検出期間T2は、それぞれ、ここに例示した値に限定されず、例えば、6ミリ秒、5ミリ秒、1ミリ秒の値でもよい。
従って、内視鏡2の使用時、CPU51は、ユーザによる操作部8の所定のスイッチの操作に応じて、レンズ24を近点フォーカス位置に駆動するときは、加熱制御期間T1にSMAワイヤ21に所定の駆動用電流を供給し、抵抗値検出期間T2に所定の検出用電流をSMAワイヤ21に供給してSMAワイヤ21の抵抗値を検出する。検出回路53は、検出された抵抗値のデジタル信号DsをCPU51に供給する。
また、操作部8の所定のスイッチによりレンズ24の遠点フォーカス位置へ移動が指示されると、CPU51は、加熱制御期間T1にSMAワイヤ21に所定の駆動電流を供給せず、抵抗値検出期間T2に所定の抵抗検出用電圧をSMAワイヤ21に供給してSMAワイヤ21の抵抗値を検出する。加熱用の電流が供給されないため、SMAワイヤ21は収縮することが出来ず、レンズ24は、遠点フォーカス位置になる。
従って、CPU51は、レンズ24が遠点フォーカス位置にあるのか、近点フォーカス位置にあるのかを、抵抗値検出期間T2のおいて得られた検出抵抗値に基づいて判定して、そのレンズ位置に応じてSMAワイヤ21の加熱制御をしてフォーカス制御を行うことができる。
術中、術者は、必要に応じて、この近点フォーカス位置と遠点フォーカスを切り替えながら被写体内の内視鏡画像を見て、体腔内の検査などを行う。プロセッサ5のCPU51は、観察モードが近点観察モードであるかあるいは遠点観察であるかに応じて、測光方式、測光エリア、画像処理パラメータ、光源装置3のモード等を変更する。
例えば、測光方式は、近点観察モードではピーク測光方式で、遠点観察モードでは平均測光方式となるように、かつ測光エリアも、近点観察モードでは画面の中央部で、遠点観察モードでは画面全体となるように、CPU51は、測光方式と測光エリアを変更するように制御する。
また、近点観察モードでは、内視鏡画像がハレーション気味になるため、光源装置3における調光における検波方式及び応答性に関する処理パラメータを、遠点観察モード時とは異なるように、CPU51は処理パラメータを調整する。
さらに、輪郭強調、構造強調などの画像強調処理における強調すべき周波数帯域及び強調レベルが近点観察モードと遠点観察モードでは異なるように、CPU51は、周波数帯域パラメータなどを調整する。
さらに、近年は、近点観察モードでは、病変部の詳細観察を実施するために、狭帯域光などの特殊光観察も併せて行われることがある。そこで、プロセッサ5は、近点観察モードでは、特殊光観察用の照明光への切替が自動的に行われるように、ユーザにより設定が可能となっている。よって、CPU51は、その設定内容に応じて、光源装置3の照明光の切替制御を行う。
さらにまた、電子ズームの倍率を、近点観察モードでは2倍とし、遠点観察モードでは1倍とするように、CPU51は、電子ズームの倍率を近点観察モードと遠点観察モードでは異なるように、自動設定する。
ユーザは、モニタ6に設定画面のためのメニュー設定画面を表示することによって、近点観察モードと遠点観察モードにおけるこのような各種パラメータの変更のための設定を行うことができる。
上述したように、近点観察のための近点フォーカス位置へのレンズ24の駆動及び遠点観察のための遠点フォーカス位置へのレンズ24の駆動のためには、CPU51は、レンズ24が近点フォーカス位置にあるのか遠点フォーカス位置にあるのかを正確に検出しなければならない。そのために、CPU51は、キャリブレーションにおいて、近点フォーカス位置におけるSMAワイヤ21の抵抗値と、遠点フォーカス位置におけるSMAワイヤ21の抵抗値を検出し、その検出した各抵抗値を内視鏡2のメモリ2aに格納する。メモリ2aは、不揮発性のメモリであり、例えば操作部7内に配置されている。
CPU51は、内視鏡2の使用時に、メモリ2aに格納されたこれらの抵抗値のデータを読み出して、それらの抵抗値のデータを用いて、アクチュエータシステム20の制御を行う。従って、メモリ2aは、制御部であるCPU51に接続された記憶部を構成する。なお、メモリ2aには、内視鏡2の種類を示す識別情報も格納されており、内視鏡2がプロセッサ5に接続されると、プロセッサ5のCPU51は、接続された内視鏡2の識別情報を読み出して取得することができる。
図4は、検出回路53の構成を示す回路図である。検出回路53は、デジタルアナログ変換器(以下、DAコンバータという)61と、アナログデジタル変換器(以下、ADコンバータという)62と、演算増幅器63と、ノイズ除去回路64と、抵抗器65,66,67とを有する。
DAコンバータ61は、CPU51からのデジタル信号Asを入力して、アナログ信号に変換して、演算増幅器63の非反転入力端子へ出力する。ADコンバータ62は、演算増幅器63の出力端子の出力電圧をデジタル信号Dsに変換して、CPU51へ出力する。
演算増幅器63の反転入力端子と出力端子間には、抵抗器65が接続され、反転入力端子には、抵抗器66が接続されている。
ノイズ除去回路64は、SMAワイヤ21と抵抗器67の接続点C1の電圧を入力として、出力は、抵抗器66に接続されている。
図5は、ノイズ除去回路64の回路図である。図5に示すように、ノイズ除去回路64は、抵抗器68とコンデンサ69とから構成されたローパスフィルタ70と、反転入力端子と出力端子が接続された演算増幅器から構成されたボルテージフォロワ回路71とを有する。
ノイズ除去回路64は、電気メスなどの外乱ノイズを発生する機器と共に内視鏡2が使用される場合にその外乱ノイズによる制御回路41の誤動作を防止するためにノイズ信号を除去するための回路である。電気メスなどは高周波電流を用いるため、高周波ノイズが検出回路53の検出結果に影響を与える虞がある。そのようなノイズにより、検出されるSMAワイヤ21の検出抵抗値が誤った値となって検出回路41で検出されると、アクチュエータ20が正しく制御されない。
ノイズ除去回路64は、演算増幅器63の入力側に設けられている。ノイズ除去回路64は、ローパスフィルタ70を有し、ローパスフィルタ70は、電気メスなどによるノイズ周波数より十分低いカットオフ周波数を有する。ローパスフィルタ70の出力は、インピーダンス変換手段としてのボルテージフォロワ回路71を介して演算増幅器63に供給される。
このようなノイズ除去回路64により、電気メスなどの機器からのノイズがあっても、アクチュエータ20の適切な制御を実現することができる。
(キャリブレーション)
次に、アクチュエータ20の制御のための内視鏡2のキャリブレーションについて説明する。キャリブレーションは、工場出荷時に行われる。なお、このキャリブレーションは、工場出荷後にユーザが使用を開始する前に行うようにしてもよい。
キャリブレーションでは、SMAワイヤ21の抵抗値を検出するための検出レンジ、SMAワイヤ21へ流す最大電流値、等の決定処理と、近点フォーカス位置の抵抗値、遠点フォーカス位置等の制御ポイントとなる力量変化ポイントにおけるSMAワイヤ21の抵抗値の決定処理とが、行われる。
図6は、キャリブレーション処理の流れの例を示すフローチャートである。キャリブレーションを行う内視鏡2をプロセッサ5に接続し、ユーザが所定の指示入力をプロセッサ5に対して行うと、CPU51は、キャリブレーション処理を実行する。
CPU51は、まず初期設定を行う(S1)。初期設定では、時間サイクルに関する変数tを0に、tサイクル目の加熱電流I(t)の電流値を0に、遠点端検出完了フラグ(FARfin)を0に、近点端検出完了フラグ(NEARfin)を0に、キャリブレーション端検出完了フラグ(CALfin)を0に設定する。
次に、抵抗値検出レンジ決定処理が実行される(S2)。SMAワイヤ21には個体差があるため、S2の処理においてSMAワイヤ21の抵抗値の検出レンジDRが決定される。さらに、決定された検出レンジDRに基づいて最大電流値Imaxも決定される。抵抗値検出レンジ決定処理(S2)が実行されている間は、CPU51は、SMAワイヤ21に加熱電流を流さずに、抵抗値検出用電流を流すように、切替回路54を制御する。よって、抵抗値検出レンジ決定処理(S2)の期間は、SMAワイヤ21を加熱しない非加熱期間である。
図7は、抵抗値検出レンジ決定処理(S2)の流れの例を示すフローチャートである。CPU51は、まず、DAコンバータ61の分解能に応じた設定値DAsetの最上位ビット(MSB)の値を、変数iにセットする(S11)。設定値DAsetは、DAコンバータ61へ入力されるデジタル信号Asの値である。DAコンバータ61の入力が「15」から「0」までの16ビットであれば、設定値DAsetの最上位ビット(MSB)は、例えば15である。
次に、CPU51は、設定値DAsetの全てのビットに、0を代入し(S12)、i番目のビットに1を代入する(S13)。最初は、例えば、16ビットの最上位ビットだけに、1が代入される。
図4に示すように、DAコンバータ61は入力されたデジタル信号Asとしての設定値DAsetに応じた電圧を出力し、演算増幅器63は、その入力された電圧と、SMAワイヤ21の検出抵抗値との差に応じた出力電圧を出力する。ADコンバータ62は、その演算増幅器63の出力電圧に応じたデジタル信号DsをCPU51へ出力する。
CPU51は、デジタル信号Ds に基づくSMAワイヤ21の検出抵抗値Rdetectと、設定値DAsetに対応する設定抵抗値Rsetとを比較し(S14)、検出抵抗値Rdetectが設定抵抗値Rset以下の場合(S14:YES)、変数iをビットシフトし、次の検出サイクルの抵抗検出を行う(S15)。検出抵抗値Rdetectが設定抵抗値Rsetを超える場合(S14:NO)、0を設定値DAsetのi番目のビットに0を代入し(S16)、処理は、S15へ移行する。
S15の後、変数iが0未満になったか否かを判定し(S17)、変数iが0未満でないとき(S17:NO)、処理は、S13へ戻る。変数iが0未満であるとき(S17:YES)、処理は、終了し、その終了した時の設定値DAset [i〜0]の値が、最大抵抗値Rmaxとなる。そして、その最大抵抗値Rmaxに基づいて検出レンジDRを決定する(S18)
以上のように、抵抗値検出レンジ決定処理(S2)では、CPU51は、設定値DAset [i〜0]の最上位ビットから2分探索により求めて、最大抵抗値Rmaxを決定し、検出レンジDRを決定する。検出レンジDRは、最大抵抗値Rmaxを基準に所定の幅を有するように決定される。
図8は、時間経過に沿った、キャリブレーション処理時のSMAワイヤ21へ供給する電流値Iと、SMAワイヤ21の検出抵抗値Rdetectの変化を示すグラフである。図8に示すように、DAコンバータ61へ供給する設定抵抗値Rsetの値が2分探索するように変更されるので、検出抵抗値Rdetectは、最大抵抗値Rmaxに収束するように変化して、最終的に、検出抵抗値Rdetectが最大抵抗値Rmaxに一致あるいは略一致する。
次に、最大電流値Imaxの決定について説明する。
アクチュエータ20は、SMAワイヤ21の発熱量を制御することによって制御されるが、内視鏡2のフォーカス制御に用いられるSMAワイヤ21の線径は極めて小さいので、SMAワイヤ21の線径のバラツキは、SMAワイヤ21の発熱量のバラツキに大きく影響する。そのようなSMAワイヤ21に大きな電流が流れてSMAワイヤ21が過大に加熱されると、SMAワイヤ21に対してかかる負荷が大きくなり、SMAワイヤ21自体の耐久性、いわゆるライフ耐性、の劣化を招く。
そこで、ここでは、線径に個体差を有するSMAワイヤ21毎に、SMAワイヤ21に流す電流の最大値が設定され、制御回路41は、SMAワイヤ21にその最大電流値Imax以上の電流を流さないように、制御する。最大電流値Imaxは、内視鏡2の使用時においてSMAワイヤ21へ供給する加熱電流だけでなく、キャリブレーション時においてSMAワイヤ21へ供給する加熱電流に関係する。
キャリブレーション時に、最大電流値Imaxを、SMAワイヤ21の最大抵抗値Rmaxから次のようにして決定する(S18)。
図4の検出回路53の演算増幅器63の増幅率をAとし、演算増幅器63の非反転入力端子に入力される入力電圧をVとし、抵抗器67の抵抗値をRとし、SMAワイヤ21に印加される電圧をVとしたとき、伸びきった状態のSMAワイヤ21の抵抗値Rsmaは、演算増幅器63の出力電圧Voutから、次の式(1)により求められる。
Rsma=V×A×R/(A×V−Vout)−R ・・・式(1)
そして、SMAワイヤ21の電気抵抗率をρとし、SMAワイヤ21の長さをLとし、SMAワイヤ21の断面積をSとしたとき、SMAワイヤの断面積Sは、次の式(2)から求められる。
S=ρ×L/Rsma ・・・式(2)
SMAワイヤ21の電気抵抗率ρと長さLは、予め判っており、伸びきった状態のSMAワイヤ21の抵抗値Rsmaが最大抵抗値Rmaxであるので、SMAワイヤの断面積Sは、上記の式(2)から求められる、すなわち推定される。
SMAワイヤの断面積S(あるいは断面積Sから算出される線径)が推定して得られれば、その推定された断面積S(あるいは断面積Sから算出される線径)に応じた最大電流値Imaxを決定することができる。
以上のように、SMAワイヤ21の最大抵抗値Rmaxが決定されて、CPU51は、その最大抵抗値Rmaxに基づいて、抵抗値の検出レンジDRと最大電流値Imaxを決定することができる。すなわち、CPU51は、SMAワイヤ21の線径情報に基づいて、アクチュエータ20のSMAワイヤ21へ供給する電流信号である駆動信号の最大電流値Imaxを決定する。
図6に戻り、CPU51は、時間サイクルに関する変数tを0に設定し(S3)、加熱電流決定処理を実行する(S4)。
図9は、加熱電流決定処理(S4)の流れの例を示すフローチャートである。加熱電流決定処理(S4)では、CPU51は、所定の初期電流値I(0)から徐々に加熱電流I(t)を増加させるように、SMAワイヤ21へ流す加熱電流I(t)の電流値を決定する。決定した電流値に対応する駆動信号Drは、基本制御期間の加熱制御期間T1の間、出力制御回路52へ出力される。
加熱電流決定処理(S4)において、CPU51は、まず加熱電流I(t)の電流値が、最大電流値Imax以上であるか否かを判定する(S21)。時間サイクルt(0)の前は、SMAワイヤ21へ流す電流Iの電流値は、抵抗検出レンジ決定処理(S2)で使用した検出用電流値であるので、加熱電流決定処理(S4)に入った直後の電流Iの電流値は、最大電流値Imax未満である。よって、S21では、電流Iの電流値は最大電流値Imax未満と判定され(S21:YES)、時間サイクルtが0でないか否かが判定される(S22)。
加熱電流決定処理(S4)の最初の時間サイクルでは、時間サイクルtが0(すなわち時間サイクルt0であるので(S22:NO)、CPU51は、加熱電流I(t)に、予め設定されている初期電流値I(0)を代入する(S23)。
初期電流値I(0)は、内視鏡毎に決められて、メモリ2aに予め記憶されている。これは、SMAワイヤ21の長さ等は、内視鏡2の種類によって異なる場合があるので、SMAワイヤ21の長さ等に応じた初期電流値I(0)が、メモリ2aに予め設定されて記憶されている。よって、CPU51は、接続された内視鏡2のメモリ2aから初期電流値I(0)を読み出して、S23の処理を行うことができる。
なお、初期電流値I(0)は、内視鏡2の種類を示す識別情報に基づいて、CPU51が決定してもよい。内視鏡2の種類毎の初期電流値I(0)の情報を図示しないメモリに予め記憶しておき、CPU51は、接続された内視鏡2の識別情報(例えば、メモリ2aに格納されている)に基づいて、そのメモリの初期電流値I(0)の情報を参照して、初期電流値I(0)を決定するようにしてもよい。
さらになお、初期電流値I(0)は、上記の抵抗検出レンジ決定処理(S2)で決定した最大電流値Imaxに基づいて決定してもよい。初期電流値I(0)は、最大電流値Imaxよりも低い値である。
S23の処理の結果、CPU51は、最初の時間サイクルt0においては、初期電流値I(0)に応じた駆動信号Drを出力制御回路52へ出力する。
時間サイクルtが進むと、時間サイクルtは0でないので(S22:YES)、CPU51は、SMAワイヤ21へ供給する加熱電流I(t)の電流値を、前回の時間サイクル(t-1)の加熱電流I(t-1)に所定の増加量ΔIだけ加えた電流値をするように、加熱電流I(t-1)に所定の増加量ΔIだけ加えた電流を、加熱電流I(t)に代入する(S24)。
S24の処理の結果、CPU51は、時間サイクルtが進むにつれて、加熱電流I(t)の電流値は、単調増加して、その単調増加した加熱電流I(t)に応じた駆動信号Drを出力制御回路52へ出力する。
また、加熱電流I(t)が最大電流値Imax以上になると(S21:NO)、加熱電流I(t)に最大電流値ImaxI(t)を代入する(S25)。よって、図8に示すように、加熱期間に入ると、SMAワイヤ21には、単調増加する加熱電流I(t)が供給される。S24により、加熱電流I(t)は、時間サイクルtが1つ進む毎に、電流値が所定の増加量ΔIだけ増えるが、S25により、加熱電流I(t)の電流値は最大電流値Imaxを超えない。従って、加熱電流I(t)の電流値が最大電流値Imaxを超えないように、加熱電流I(t)の出力は制御される。
図10は、加熱期間における、時間経過に沿った加熱電流I(t)の変化を示す図である。図10に示すように、時間サイクルtが進むにつれて、加熱制御期間T1における加熱電流I(t)は、段階的に増加する。よって、制御部であるCPU51は、所定の開始電流値である初期電流値I(0)から所定の最大電流値Imaxmまで、所定の割合で単調増加する電流値の電流をアクチュエータ20のSMAワイヤ21へ供給する駆動信号Drを、出力制御回路52へ出力する。
以上のように、抵抗検出レンジ決定処理(S2)の期間が過ぎると、加熱電流決定処理(S4)と抵抗値判定処理(S5)が、基本制御期間単位で繰り返し実行されて、加熱期間となる。加熱期間では、加熱電流決定処理(S4)によって決定された電流値によるSMAワイヤ21の加熱が、基本制御期間の加熱制御期間T1に行われ、抵抗値判定処理(S5)によるSMAワイヤ21の抵抗値の検出が、基本制御期間の抵抗値検出期間T2に行われる。
図6に戻り、加熱電流決定処理(S4)の後に、抵抗値判定処理(S5)が実行される。図11は、抵抗値判定処理(S5)の処理の流れの例を示すフローチャートである。CPU51は、まず、遠点端検出完了フラグ(FARfin)が1であるか否かを判定する(S31)。初期設定(S1)において遠点端検出完了フラグ(FARfin)が0に設定されており、遠点端が検出されるまで遠点端検出完了フラグ(FARfin)は0である(S31:NO)。よってCPU51は、検出抵抗値R(t)に基づいて、次の式(3)を満たすが否かを判定する(S32)。
|(R(t-1)-R(t))-(R(t-2)-R(t-1))| > α ・・・式(3)
この式(3)は、遠点端検出のための式である。なお、検出抵抗値R(t)が3個得られるまでは、S32の判定がNOとなるように、所定の値が検出抵抗値R(t-2)とR(t-1)に代入される。
ここで、加熱期間における検出抵抗値の変化を説明する。上述したように、SMAワイヤ21は、最初チューブ22内では弛んでいる状態にある。図8において、位置P0は、SMAワイヤ21がチューブ22内で弛んでいる状態のタイミングに対応する。SMAワイヤ21に単調増加の加熱電流I(t)が流れ始めると、まず、SMAワイヤ21は発熱し始めて収縮を開始し、チューブ22内の弛みが無くなるまで収縮する。図8において、範囲R1は、SMAワイヤ21のチューブ22内での弛みが取れている期間に相当する。
位置P 0以降、SMAワイヤ21には、単調増加の所定の加熱電流I(t)が流し続けられているので、SMAワイヤ21の温度は上昇し続け、収縮力が大きくなる。単調増加する加熱電流I(t)をSMAワイヤ21に流すことによって、検出抵抗値Rdetectの変化における変曲点を検出し易くなっている。
位置P 0以降、位置P 1で、コイルバネ26と33が動き始める。位置P 1は、コイルバネ26のバネ力量とSMAワイヤ21の収縮力の和がコイルバネ33のバネ力量よりも大きくなり、コイルバネ26と33が動き始めるタイミングである。すなわち、位置P 1で、コイルバネ26は、伸長し始め、コイルバネ33は、収縮し始める。よって、図8に示すように、位置P 1以降は、SMAワイヤ21は短くなっていくので、検出抵抗値Rdetectは大きく低下し始める。
図12は、遠点端検出を説明するための図である。図12に示すように、位置P 1の前後では、検出抵抗値Rdetectの傾きが変化する。位置P1は、遠点フォーカス位置に対応する力量変化ポイントである。
従って、上記式(3)により、検出抵抗値の差分(R(t-1)-R(t))と検出抵抗値の差分(R(t-2)-R(t-1))の差の絶対値が所定の閾値αよりも大きいとき(S32:YES)、すなわち、検出抵抗値の二次微分の絶対値が所定の値より大きいとき、検出抵抗値Rdetectの傾きの変曲点が存在すると判定することができる。よって、そのときの検出抵抗値R(t-1)を、遠点端抵抗値(Far端抵抗値)とし、かつ遠点端検出完了フラグ(FARfin)に1を代入する(S33)。また、検出抵抗値の差(R(t-1)-R(t))と検出抵抗値の差(R(t-2)-R(t-1))の差が所定の閾値αよりも大きくないとき(S32:NO)、処理は、そのまま終了する。
遠点端抵抗値が検出された後の時間サイクルでは、遠点端検出完了フラグ(FARfin)が1となるので(S31:YES)、CPU51は、近点端検出完了フラグ(NEARfin)が1であるか否かを判定する(S34)。初期設定(S1)において近点端検出完了フラグ(NEARfin)が0に設定されており、近点端が検出されるまで近点端検出完了フラグ(NEARfin)は0である(S34:NO)。よって、CPU51は、検出抵抗値R(t)に基づいて、次の式(4)を満たすが否かを判定する(S35)。
|(R(t-2)-R(t-1))-(R(t-1)-R(t))| > β ・・・式(4)
この式(4)は、近点端検出のための式である。
位置P1以降、SMAワイヤ21は、収縮していく。その後、レンズ枠25がレンズストッパー35に当接し、コイルバネ26の伸長は停止する。コイルバネ33のバネ力量よりも、SMAワイヤ21の収縮力が大きくなったときに、コイルバネ33のみの収縮が始まる。
レンズ枠25がレンズストッパー35に当接した後は、SMAワイヤ21の収縮は、コイルバネ26の伸長力を受けられないため、コイルバネ33の収縮は、わずかの期間、一旦止まるので、検出抵抗値Rdetectの低下も一旦止まる。その後、再度、コイルバネ33の収縮が開始される。
位置P2は、コイルバネ26が動かなくなったタイミングである。正確には、位置P2は、コイルバネ26の動きが停止し、SMAワイヤ21の収縮が一旦停止したタイミングである。
図13は、近点端検出を説明するための図である。図13に示すように、位置P 2の前後では、検出抵抗値Rdetectの傾きが変化する。位置P2は、近点フォーカス位置に対応する力量変化ポイントである。
従って、上記式(4)により、検出抵抗値の差分(R(t-2)-R(t-1))と検出抵抗値の差分(R(t-1)-R(t))の差の絶対値が所定の閾値βよりも大きいとき(S35:YES)、すなわち、検出抵抗値の二次微分の絶対値が所定の値より大きいとき、検出抵抗値Rdetectの傾きの変曲点が存在すると判定することができる。よって、そのときの検出抵抗値R(t-1)を、近点端抵抗値(Near端抵抗値)とし、かつ近点端検出完了フラグ(NEARfin)に1を代入する(S36)。また、検出抵抗値の差(R(t-2)-R(t-1))と検出抵抗値の差(R(t-1)-R(t))の差が所定の閾値βよりも大きくないとき(S35:NO)、処理は、そのまま終了する。
近点端抵抗値が検出された後の時間サイクルでは、近点端検出完了フラグ(NEARfin)と1となるので(S34:YES)、CPU51は、連続する最新の所定数の(ここでは5個の)検出抵抗値Rdetectと最新の検出抵抗値Rdetectとの差が、所定の閾値γ内にあるいか否かが判定される(S37からS41)。
図10に示したように、SMAワイヤ21に単調増加の加熱電流I(t)が流れるので、SMAワイヤ21は、収縮を続けるが、移動部材30はパイプ32の先端部に当接して、SMAワイヤ21の収縮が停止する。
図8において、位置P3は、コイルバネ33の動きが停止するタイミングである。位置P3以降も、SMAワイヤ21には加熱電流I(t)が流し続けられる。
始めに、S37では、5個の連続する最新の検出抵抗値Rdetectにおいて、最も古い5個前の検出抵抗値R(t-5)と4個前の検出抵抗値R(t-4)との差が、所定の閾値γよりも小さいか判定される。検出抵抗値R(t-5)と検出抵抗値R(t-4)との差が所定の閾値γ以上であると(S37:NO)、処理は、終了する。
検出抵抗値R(t-5)と検出抵抗値R(t-4)との差が所定の閾値γ未満であると(S37:YES)、5個前の検出抵抗値R(t-5)と3個前の検出抵抗値R(t-3)との差が、所定の閾値γよりも小さいか判定される(S38)。検出抵抗値R(t-5)と検出抵抗値R(t-3)との差が所定の閾値γ以上であると(S38:NO)、処理は、終了する。
検出抵抗値R(t-5)と検出抵抗値R(t-3)との差が所定の閾値γ未満であると(S38:YES)、5個前の検出抵抗値R(t-5)と2個前の検出抵抗値R(t-2)との差が、所定の閾値γよりも小さいか判定される(S39)。検出抵抗値R(t-5)と検出抵抗値R(t-2)との差が所定の閾値γ以上であると(S39:NO)、処理は、終了する。
検出抵抗値R(t-5)と検出抵抗値R(t-2)との差が所定の閾値γ未満であると(S39:YES)、5個前の検出抵抗値R(t-5)と1個前の検出抵抗値R(t-1)との差が、所定の閾値γよりも小さいか判定される(S40)。検出抵抗値R(t-5)と検出抵抗値R(t-1)との差が所定の閾値γ以上であると(S40:NO)、処理は、終了する。
検出抵抗値R(t-5)と検出抵抗値R(t-1)との差が所定の閾値γ未満であると(S40:YES)、5個前の検出抵抗値R(t-5)と最新の検出抵抗値R(t)との差が、所定の閾値γよりも小さいか判定される(S41)。検出抵抗値R(t-5)と検出抵抗値R(t)との差が所定の閾値γ以上であると(S41:NO)、処理は、終了する。
検出抵抗値R(t-5)と検出抵抗値R(t)との差が所定の閾値γ未満であると(S41:YES)、移動部材30がパイプ32の先端部に当接して停止し、その結果、SMAワイヤ21の収縮も停止した状態であるとし、そのときの検出抵抗値R(t)をキャリブレーション端抵抗値(Cal端抵抗値)とし、かつキャリブレーション端検出完了フラグ(CALfin)に1を代入する(S42)。
図14は、キャリブレーション端検出を説明するための図である。図14に示すように、位置P 3以降、検出抵抗値Rdetectは変化しない。位置P3は、キャリブレーション端に対応する力量変化ポイントである。
なお、位置P3以降の検出抵抗値Rdetectが所定の時間、所定の範囲内にあって、変化しないことの判定は、以上のようなS37からS41のような判定方法以外でもよい。
従って、S37〜S41の判定により、5個の検出抵抗値に所定値以上の変化がないとき(S37〜S41:YES)、SMAワイヤ21の状態がキャリブレーション端の状態にあると判定することができる。
以上のようにして、抵抗値判定処理(S5)において、遠点端抵抗値(Far端抵抗値)と近点端抵抗値(Near端抵抗値)とキャリブレーション端抵抗値(Cal端抵抗値)とが決定される。
図6に戻り、キャリブレーションが終了か否かが判定される(S6)。その判定は、キャリブレーション端検出完了フラグ(CALfin)が1であるか否か、あるいはキャリブレーションの開始から時間が所定の時間を経過したか否かによって、行われる。
キャリブレーション端検出完了フラグ(CALfin)が1であれば、図10に示すように遠点端抵抗値(Far端抵抗値)と近点端抵抗値(Near端抵抗値)とキャリブレーション端抵抗値(Cal端抵抗値)の3つの抵抗値が決定されたので、処理は終了する。また、キャリブレーションの時間が、所定の時間以上掛かっている場合は、何らかの異常が発生しているとして、制御ポイントの3つの抵抗値が決定されない場合にも、キャリブレーションは終了する。なお、この所定の時間は、SMAワイヤ21のバラツキを考慮して予め設定される時間であり、SMAワイヤ21のライフ耐性を損なわない時間である。
キャリブレーションが終了でないと判定された場合(S6:NO)、CPU51は、時間サイクルを1つだけインクリメントして(S7)、処理は、S4へ戻る。
CPU51は、キャリブレーションの加熱期間が終了すると、加熱電流I(t)を0にセットする(S8)。そして、CPU51は、最大抵抗値Rmaxである遠点端抵抗値(Far端抵抗値)、近点端抵抗値(Near端抵抗値)及び最小抵抗値Rminであるキャリブレーション端抵抗値(Cal端抵抗値)の3つの抵抗値と、最大電流値Imaxとを、メモリ2aに格納する格納処理を実行し(S9)、処理を終了する。
以上のように、制御部であるCPU51は、キャリブレーションが指示された時、所定の開始電流値である初期電流値I(0)から所定の最大電流値Imaxまで所定の割合で単調増加する電流をアクチュエータ20のSMAワイヤ21へ供給するための駆動信号Drを、出力制御回路52へ出力すると共に、検出回路53により検出されたSMAワイヤ21の抵抗値の二次微分値の絶対値が所定の閾値以上となった抵抗値をメモリ2aに記憶する。
そして、CPU51は、検出回路53により検出されたSMAワイヤ21の抵抗値が、所定の時間、所定の変動の範囲内にあるとき、検出回路53により検出されたSMAワイヤ21の抵抗値を不揮発性のメモリ2aに記憶する。
その結果、内視鏡2が使用されるとき、CPU51は、メモリ2aに記憶されたこれらの制御ポイントのSMAワイヤ21の抵抗値に基づいて、アクチュエータ20の制御を適切に行うことができる。
なお、以上の例では、キャリブレーション時に、加熱期間である制御ポイント抵抗値判定期間内に、遠点端抵抗値(Far端抵抗値)と近点端抵抗値(Near端抵抗値)を検出しているが、キャリブレーション時には、位置P1からP3までの期間の検出抵抗値RdetectをRAM等のメモリにログすなわち記録しておき、キャリブレーション後に、記録された検出抵抗値Rdetectのデータに基づいて、上記の式(3)と式(4)を用いて、遠点端抵抗値(Far端抵抗値)と近点端抵抗値(Near端抵抗値)を判定するようにしてもよい。
以上のように、上述した実施の形態の内視鏡システムによれば、キャリブレーション時におけるアクチュエータの力量変換ポイントを精度良く特定することができる。よって、少なくとも精度の良い遠点端抵抗値(Far端抵抗値)と近点端抵抗値(Near端抵抗値)が得られているので、SMAを有するアクチュエータを用いた内視鏡のフォーカシング制御を精度良く行うことができる。
また、上述した内視鏡システムによれば、力量変化ポイントが得られるので、上述したキャリブレーション処理の結果は、内視鏡システムにおけるアクチュエータのレスポンス評価等にも利用することができる。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
1 内視鏡システム、2 内視鏡、3 光源装置、5 ビデオプロセッサ、6 カラーモニタ、7 挿入部、7a 可撓管部、8 操作部、9 ユニバーサルコード、10 スコープコネクタ、11b 鉗子口、12 先端部、13 湾曲部、14 湾曲操作部、15 送気送水制御部、16 吸引制御部、17 スイッチ部、17a スイッチ、18 グリップ部、20 アクチュエータ、21 SMAワイヤ、22 チューブ、23 固定部材、24 レンズ、25 レンズ枠、26、33 コイルバネ、27 バネ固定部材、28 カシメ部材、29 ワイヤ、30 移動部材、31、32、34 パイプ、35 レンズストッパー、51 中央処理装置(CPU)、52 出力制御回路、53 検出回路、54 切替回路、63 演算増幅器、64 ノイズ除去回路、70 ローパスフィルタ、71 ボルテージフォロワ回路。

Claims (5)

  1. 被写体を撮像する撮像素子と対物光学系を備えた内視鏡システムであって、
    形状記憶素子を有し、前記対物光学系を第1及び第2のフォーカス位置へ移動させるための移動部材を駆動するアクチュエータと、
    前記アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動部と、
    前記移動部材の位置を検出するために前記形状記憶素子の抵抗値を検出する抵抗値検出部と、
    前記対物光学系の動作指示を入力する指示入力部と、
    前記指示入力部に入力された指示と、前記抵抗値検出部により検出された抵抗値に対応する前記移動部材の位置に基づいて、前記アクチュエータ駆動部への駆動信号を出力する制御部と、
    前記制御部に接続された記憶部と、を備えた内視鏡システムにおいて、
    前記制御部は、キャリブレーションが指示された時、所定の開始電流値から所定の最大電流値まで所定の割合で時間経過と共に単調増加する電流を前記アクチュエータへ供給するための前記駆動信号を、前記アクチュエータ駆動部へ出力すると共に、前記抵抗値検出部により検出された前記形状記憶素子の抵抗値と前記単調増加後に検出された前記形状記憶素子の抵抗値との差分の前記時間経過における差の絶対値が所定の閾値以上となった抵抗値を、前記対物光学系の前記第1又は前記第2のフォーカス位置を示す抵抗値として前記記憶部に記憶することを特徴とする内視鏡システム。
  2. 前記第1のフォーカス位置は、前記対物光学系の遠点フォーカス位置であり、
    前記第2のフォーカス位置は、前記対物光学系の近点フォーカス位置であり、
    前記制御部は、前記時間経過における差の絶対値が前記所定の閾値以上となった抵抗値で、かつ前記差が大きくなったときの抵抗値を、前記遠点フォーカス位置である前記第1のフォーカス位置を示す抵抗値として、さらに、前記時間経過における差の絶対値が前記所定の閾値以上となった抵抗値で、かつ前記差が小さくなったときの抵抗値を、前記近点フォーカス位置である前記第2のフォーカス位置を示す抵抗値として、前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
  3. 前記制御部は、前記抵抗値検出部により検出された前記形状記憶素子の抵抗値が、所定の時間、所定の変動の範囲内にあるとき、前記抵抗値検出部により検出された前記形状記憶素子の抵抗値を、前記形状記憶素子の収縮が停止した状態時の抵抗値として前記記憶部に記憶する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡システム。
  4. 前記制御部は、前記形状記憶素子の線径情報に基づいて、前記所定の最大電流値を決定することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の内視鏡システム。
  5. 前記アクチュエータ駆動部と前記抵抗値検出部とを、前記アクチュエータへ選択的に接続する接続切替部をさらに備え、
    前記制御部は、前記キャリブレーションが指示された時、前記駆動信号を出力する前に、前記アクチュエータへ電流を印加せずに、前記抵抗値検出部により検出した前記形状記憶素子の抵抗値に基づき、前記所定の最大電流値を決定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の内視鏡システム。
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