JP5800336B2 - 放射線測定方法及び放射線測定装置 - Google Patents
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Description
この記述から明らかなように、特許文献1の温度補償回路は、光電子増倍管の外側近傍の温度をサーミスタにより検知し、サーミスタの抵抗値変化によって光電子増倍管のゲイン補償を行う構成となっている。
しかし、特許文献1に開示された温度補償回路では、サーミスタが検出した光電子増倍管の外側近傍温度によって温度補償を実行しているので、高精度な温度補償は期待できない。また、熱伝導により光電子増倍管の内外温度差がなくなる十分な時間を設けた上で、光電子増倍管の外側近傍温度をサーミスタで検出して温度補償を実行することも可能ではあるが、この場合は測定に長い時間が必要となる。
測定部の一部又は周囲の温度を温度センサで測定し、
温度センサで測定した温度の時間的変化に基づき測定部の温度を推定し、
当該推定した測定部の温度に基づき測定データを補正することを特徴とする。
測定部の周囲に設けた温度センサにより当該測定部の周囲の温度を測定する温度測定ステップと、
温度センサで測定した温度の時間的変化に基づき測定部の温度を推定する温度推定ステップと、
当該推定した測定部の温度に基づき測定部から出力された放射線データを補正するデータ補正ステップと、を含むことを特徴とする。
温度測定ステップでは、測定部内の熱伝導時間を考慮した時定数よりも小さな時間間隔で測定部の周囲の温度を測定し、
温度推定ステップでは、温度センサで測定した温度の時間的変化に基づき、時定数に関連付けて、測定部の温度を推定することが好ましい。
例えば、前記温度推定ステップでは、前の温度測定時点における温度センサによる測定温度と前の温度測定時点における測定部の推定温度から、温度測定時点における前記測定部の温度を推定する。
例えば、時定数に関連付けた次式(1)に相当する演算式をもって、測定部の温度を推定することが可能である。
なお、測定部の温度の推定に用いる演算式は、上式(1)に限定されるものではなく、同式と同じか又は近似した結果が得られる演算式であればよい。
データ処理部は、温度センサで測定した温度の時間的変化に基づき測定部の温度を推定するとともに、当該推定した測定部の温度に基づき測定部から出力された放射線データを補正する機能を有することを特徴とする。
測定部を有し、当該測定部に入射してきた放射線のもつエネルギを検出して当該エネルギに相当する波高のアナログ電気信号を出力する放射線検出器と、
放射線検出器から出力されたアナログ電気信号を増幅して出力する積分アンプと、
積分アンプからの出力信号を、あらかじめ設定されたサンプリング間隔でデジタル変換するA/Dコンバータと、を備え、
データ処理部は、
デジタル変換された電気信号をデータ処理して、検出器に入力した放射線エネルギの波高値を求める波高値検出手段と、
温度センサで測定した温度の時間的変化に基づき測定部の温度を推定する温度推定手段と、
推定した測定部の温度に基づき放射線エネルギの波高値を補正する波高値補正手段と、
補正した放射線エネルギの波高値ごとにヒストグラムを作成する解析手段と、を含む構成とする。
メモリには、波高値検出手段、温度推定手段、波高値補正手段及び解析手段の機能を実行するためのデータ処理プログラムを保存し、
中央処理部が、当該データ処理プログラムを実行する構成とすれば、データ処理に必要なハードウエアを削減して装置の小型化を実現することができる。
〔放射線測定装置の全体構成〕
まず、本実施形態に係る放射線測定装置の全体構成を説明する。
図1は本実施形態に係る放射線測定装置の全体構成を示すブロック回路図、図2及び図3は本実施形態に係る放射線測定装置の計測部を示すブロック回路図である。
これらの図に示すように、本実施形態の放射線測定装置は、シンチレーション検出器10及び化合物半導体検出器20という2種類の放射線検出器を備えており、セレクタ30によっていずれか一方の放射線検出器10又は20からの測定データを選択する構成となっている。
これらの放射線検出器10、20は、入射してきた放射線のもつエネルギを検出し、当該エネルギに相当する波高のアナログ電気信号を出力する機能を有している。
積分アンプ50は、図4(a)に示すように、オペアンプを利用した構成となっており、入力したアナログ電気信号の電荷は、コンデンサCfに蓄えられた後、抵抗Rfを介して徐々に放電されていく。
積分アンプ50からは、放射線のエネルギに相当するピーク波高値V1、V2から徐々に波高値が減少していく三角波の電気信号が出力される(図4(c))。
また、シンチレーション検出器10に立て続けに放射線が入射すると、同検出器10から短い間隔でアナログ電気信号が出力される。その場合、図4(d)に示すように積分アンプ50からの出力信号は、例えばピーク波高値V1から徐々に波高値が減少していく三角波状の電気信号に対して、次に出力されたピーク波高値V2の三角波の電気信号が重なり合った鋸歯状波の状態で出力される。重なった電気信号のピーク波高値V2は、その交わった点を起点にして求めることができる。
このように設定することで、積分アンプ50からの出力信号のピーク波高値又はその近傍の波高値を、確実にA/Dコンバータ70でサンプリングすることができる。積分アンプ50からの出力信号のピーク波高値は、シンチレーション検出器10で検出した放射線のエネルギに相当する値であり、かかるピーク波高値か少なくともその近傍の波高値をサンプリング可能とすることで、高精度な放射線のエネルギを求めることができる。
そして、化合物半導体検出器20に放射線が入射すると、その放射線のもつエネルギに相当する波高のアナログ電気信号が出力される。この化合物半導体検出器20から出力されたアナログ電気信号は、積分アンプ51により増幅される。積分アンプ51は、図4(a)に示した積分アンプ50と同様の機能を有している。この積分アンプ51で増幅されたアナログ電気信号は、第2アンプ80でさらに増幅され、セレクタ30を経由して可変ゲインアンプ60でゲイン調整されて、図3に示すA/Dコンバータ70へ送られる。A/Dコンバータ70は、既述したように、入力したアナログ電気信号をあらかじめ設定されたサンプリング間隔でデジタル変換する。
図6は中央処理部におけるデータ処理の流れを示すブロックダイアグラムである。
中央処理部101は、あらかじめメモリ102に保存されているデータ処理プログラムに基づき、マルチチャンネルアナライザ(MCA)として機能する。すなわち、中央処理部101は、A/Dコンバータ70でデジタル変換された信号(A/Dデータ)をスムージング処理した後(ステップS1)、その信号から放射線エネルギの波高値におけるボトム位置とトップ位置を検出する(ステップS2、S3)。
中央処理部101は、同図(a)に示すようなA/Dデータを微分処理して同図(b)に示すようなデータに変換する。微分処理された同図(b)のデータにおいて、A/Dデータの微分値が負から正に変わる点が波高値のボトム位置であり、また正から負に変わる点が波高値のトップ位置である。
同図(c)は微分処理されたデータの波高値付近を拡大して示している。本実施形態では、波高値のボトム位置を示す点の前後にある複数点(例えば3点)に着目し、複数点でA/Dデータの微分値が負で、続く複数点が正のときにその中間点はボトム位置であると判断している。この方式によれば、低エネルギの位置に現れる電気的ノイズと放射線エネルギに相当するピーク波高値とを高精度に区別することが可能となる。すなわち、電気的ノイズのときは、A/Dデータの微分値が負から正及び正から負へ変わる間隔が短いため、負から正に変わった後に正の値が複数点続くことはない。
さらに、A/Dデータがゼロの軸を若干正方向へオフセットすることで、電気的ノイズはA/Dデータの微分値が負から正に変わることが無くなるため、いっそう明確に電気的ノイズを除去することが可能となる。
上述した放射線測定装置は、温度補正に関する機能を備えている。次に、この温度補正に関する機能について説明する。
図9に示すように、シンチレーション検出器10の測定部11は、シンチレータ11aとフォトマル(光電子増倍管)11bで構成されており、シンチレータ11aに入射してきた放射線を光に変換し、フォトマル11bにより電気信号に変換し、増幅して出力する。この測定部11の内部温度が変化すると、その温度変化に伴い、シンチレーション検出器10で検出された放射線エネルギの出力値が大きく変動する。そのため、本実施形態の放射線測定装置には、温度補正に関する機能が組み込まれている。
まず、測定部11内の温度に対する放射線エネルギスペクトルのピーク位置(エネルギ)の変化、すなわち、温度特性を測定する。具体的には、安定状態における温度依存性を正確に測定するために、標準放射線源、例えばセシウム137と測定部11を恒温炉に閉じ込め、各測定温度において温度が安定してから、時定数τより充分長い間(例えば、約30分)、時定数τよりも充分に短い間隔(例えば、約60秒)で、スペクトルピークのエネルギを検出し、安定状態におけるエネルギの測定値の平均値を求める。また、温度安定状態を直接に判定する方法として、たとえばエネルギの連続10個の測定値の移動平均値を求め、連続する移動平均値が変化しない場合を安定状態とみなす方法が可能である。なお、エネルギの検出は、本実施形態のエネルギ測定を温度補正無し、すなわち補正係数=1.0の状態で行う。本実施形態では、測定温度範囲を−20℃から50℃としたが、システム仕様よりも広く測定することが好ましい。
すなわち、測定部11における温度上昇時の時定数τと温度下降時の時定数τが異なると仮定して、測定部11内の温度を最小から最大、そして、最大から最小に変化させる。さらに、サーミスタ13の測定温度と測定部11内の温度の差がなくなるまで、最大温度と最小温度を充分長い時間保持する。このような条件下において、温度変化中のエネルギを測定する。エネルギの測定は、温度補正無しの状態で行う。なお、各測定点における測定中の温度変化は無視できるものと仮定する。そのために、測定時間中にカウント数が充分取れるように線源の強さと距離を定める。
時定数τは、次のように求める。測定部11内の温度は図12を用いてエネルギから推定できるが、式(1)からわかるようにサーミスタ温度との関係は温度変化過程に依存するため、計算が複雑である。簡単な方法として、時定数τの仮定値から式1で測定部11内の温度を計算し、温度特性の近似関数から計算エネルギ値を求め、実測エネルギ値と比較する方法を紹介する。具体的に、ピークエネルギの測定値と計算値とのフィッティングが最適になるまで時定数τを置き換えて計算を繰り返す。最適化方法として最小二乗法で測定値と計算値の残差二乗和が最小になる時定数τを求める方法が可能である。
まず、時定数τを設定し(ステップS10)、温度変化中の放射線エネルギを計算する(ステップS11)。次いで、計算値と測定値の差分(残差と呼ぶ)の二乗和を記憶して(ステップS12)、時定数τを増加させる(ステップS13)。ここで、温度変化中のエネルギに関する計算値と測定値の残差の二乗和の増減を調べ(ステップS14)、残差の二乗和が減少した場合はさらに時定数τを増加させる(ステップS13)。一方、残差の二乗和が増加した場合は時定数τを減少させる(ステップS15)。これらステップS13乃至S15を繰り返し、温度変化中のエネルギに関する計算値と測定値とがほぼ一致した時、すなわち残差の二乗和が、あらかじめ定めた一定値以下になった時の時定数τを用いる。
シンチレーション検出器10の測定部11内の温度を−20℃から50℃の範囲で変化させたときの放射線エネルギの相対的な変動幅を求めた。
図15は、温度補正なしの場合と、現在の測定値による温度補正した場合と、本発明の温度補正をした場合とを比較したグラフである。
結果は、図15に示すとおり、温度補正なしのときが+/−16.5%の変動幅、サーミスタ13で検出した温度により温度補正したときが+/−6.8%の変動幅であったのに対し、上述した本発明の実施形態により温度補正したときは+/−1.5%の変動幅であった。
ちなみに、サーミスタ13で検出した温度により温度補正した場合は、温度変化が速いほど誤差が増加した。
また、図16は、温度補正なしの場合と、450秒前の測定値による温度補正をした場合と、本発明の温度補正をした場合とを比較したグラフである。すなわち、図16では、遅延時定数450秒を考慮し、図15のサーミスタで検出した温度の代わりに、450秒前に検出した温度で補正した結果を示している。
図16に示すとおり、450秒前に検出した温度で補正したときが+/−3.1%の変動幅であった。
Claims (8)
- 測定部を有し、当該測定部に入射してきた放射線を検出して当該放射線のエネルギに相当する波高の電気信号を出力する放射線検出器と、前記測定部の周囲の温度を測定する温度センサと、を含む放射線測定装置を用いた放射線測定方法であって、
前記放射線検出器で検出した放射線のエネルギに相当する電気信号の波高値を求めるステップと、
前記温度センサで測定した温度の時間的変化に基づき前記測定部の温度を推定する温度推定ステップと、
前記推定した測定部の温度に基づき、前記放射線検出器で検出した放射線のエネルギに相当する電気信号の波高値を補正する波高値補正ステップと、
を含むことを特徴とする放射線測定方法。 - さらに、前記測定部に入射してきた放射線のカウント数と、当該放射線につき前記波高値補正ステップで補正した電気信号の波高値とに基づき、放射線エネルギのヒストグラムを作成するステップを含むことを特徴とする請求項1の放射線測定方法。
- 前記測定部内の熱伝導時間を考慮した時定数よりも小さな時間間隔で前記測定部の周囲の温度を前記温度センサで測定する温度測定ステップを含むとともに、
前記温度推定ステップでは、前記温度センサで測定した温度の時間的変化に基づき、前記時定数に関連付けて、前記測定部の温度を推定することを特徴とした請求項1又は2の放射線測定方法。 - 前記温度推定ステップでは、前の温度測定時点における温度センサによる測定温度と前の温度測定時点における測定部の推定温度から、温度測定時点における前記測定部の温度を推定することを特徴とした請求項3の放射線測定方法。
- 測定部を有し、当該測定部に入射してきた放射線を検出して当該放射線のエネルギに相当する波高の電気信号を出力する放射線検出器と、前記測定部の周囲の温度を測定する温度センサと、前記放射線検出器から出力される電気信号を処理するデータ処理部と、を備えた放射線測定装置において、
前記データ処理部は、
前記放射線検出器で検出した放射線のエネルギに相当する電気信号の波高値を求める波高値検出手段と、
前記温度センサで測定した温度の時間的変化に基づき前記測定部の温度を推定する温度推定手段と、
前記推定した測定部の温度に基づき、前記放射線検出器で検出した放射線のエネルギに相当する電気信号の波高値を補正する波高値補正手段と、
を含むことを特徴とする放射線測定装置。 - さらに、前記測定部に入射してきた放射線のカウント数と、当該放射線につき前記波高値補正ステップで補正した電気信号の波高値とに基づき、放射線エネルギのヒストグラムを作成する解析手段を含むことを特徴とする請求項6の放射線測定装置。
- 前記放射線検出器から出力された電気信号を増幅して出力する積分アンプと、
前記積分アンプからの出力信号を、あらかじめ設定されたサンプリング間隔でデジタル変換するA/Dコンバータと、を備え、
前記波高値検出手段は、前記デジタル変換された電気信号をデータ処理して、前記測定部に入力した放射線のエネルギに相当する電気信号の波高値を求める構成であることを特徴とする請求項6又は7の放射線測定装置。
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