以下、本発明に係るシートベルト用リトラクタについて具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
[概略構成]
先ず、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の概略構成について図1乃至図3に基づき説明する。
図1は本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の外観斜視図である。図2はシートベルト用リトラクタ1の分解斜視図である。図3は図1のX1−X1矢視の全断面図である。
図1乃至図3に示すように、シートベルト用リトラクタ1は、車両のウエビング3を巻き取るための装置であって、ハウジングユニット5と、巻取ドラムユニット6と、巻取バネユニット7と、メカニズムカバーユニット8とから構成されている。
メカニズムカバーユニット8は、巻取ドラムユニット6を構成するクラッチユニット9の外側を覆った状態でハウジングユニット5の外側に、一体に形成された各ナイラッチ8Aによって固設され、クラッチユニット9と協働してウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止するロック機構10を構成する。(図31参照)。
また、巻取バネユニット7は、ハウジングユニット5の外側にバネケース11(図7参照)に一体形成された各ナイラッチ11Aによって固設される。
そして、終端部に抜け止めピン12が固定されたウエビング3が挿通されて巻装される巻取ドラムユニット6は、ハウジングユニット5に固設された巻取バネユニット7とメカニズムカバーユニット8との間に回転自在に支持される。
[ハウジングユニットの概略構成]
次に、ハウジングユニット5の概略構成について図2乃至図6に基づいて説明する。
図4は図1のX2−X2矢視の全断面図である。図5はハウジングのメカニズムカバーユニット8側の側面図である。図6はハウジングの巻取バネユニット7側の側面図である。
図2及び図3に示すように、ハウジングユニット5は、平面視コの字状のハウジング15と、ナイロン等の合成樹脂で形成されてウエビング3が引き出される平面視横長四角形の貫通孔16が形成された横長枠状のプロテクタ17とから構成されている。
また、ハウジング15は、車体に固定される背板部18と、その背板部18の両側縁部から相対向する一対の側壁部21、22が延出されて平面視コの字状に形成され、これら側壁部21、22は連結部材23によって互いに連結されている。また、背板部18の中央部には、開口部が形成され、軽量化及びウエビング3の取り付け作業の効率化等が図られている。
また、プロテクタ17は、背板部18側の側縁部から下方に延出された壁部25が形成され、この壁部25の下端中央部に外側方向に突出する係合突起26が形成されている。そして、プロテクタ17の壁部25を背板部18に当接させつつ、相対向する各側壁部21、22の間に配置するように押し込むことによって、プロテクタ17の係合突起26が、背板部18に形成された開口部の上端縁部に弾性的に係止され、固定される。
また、プロテクタ17の貫通孔16の長手方向の幅寸法は、ウエビング3の幅寸法とほぼ等しい長さに形成されている。また、この貫通孔16の短手方向の幅寸法は、ウエビング3の最小巻き径から最大巻き径までの外周面にほぼ対向するように形成されているため、ウエビング3の引き出し及び巻き取りをスムーズに行うことができる。
図2、図4及び図5に示すように、メカニズムカバーユニット8が取り付けられる側壁部21のほぼ中央部には、円形状の貫通孔28が形成され、更に、この貫通孔28の内周面には全周に渡って山形状の係合歯28Aが形成されている。この係合歯28Aは、後述のように巻取ドラムユニット6の外周面から出没自在に配置されたパウル29が係合することによって、ウエビング引出方向の巻取ドラムユニット6の回転が停止されるように構成されている(図32参照)。
また、側壁部21には、貫通孔28の背板部18側の周縁部に、内側方向(図4中、左側方向である。)へ断面略半円形状に窪む補強溝31が、貫通孔28と同心となるように円弧状に形成されている。また、側壁部21には、上端縁部の両隅と、貫通孔28の中心軸28Bのほぼ真下の下端縁部との3箇所に外側方向(図2中、左側方向である。)へ所定高さ(例えば、高さ約1.5mmである。)突出するようにバーリング加工された各取付孔32が貫通して形成されている。
そして、メカニズムカバーユニット8の各ナイラッチ8Aが、各取付孔32に嵌入されて取り付けられる。また、各ナイラッチ8Aの基端部の周囲は、バーリング加工により外側方向へ所定高さ突出した各取付孔32の先端部に当接するため、各取付孔32に取り付けられた当該各ナイラッチ8Aの先端部が、側壁部21の内側面から突出する突出高さを低くすることができる(例えば、突出高さを約2mmから約0.5mmに低くすることができる。)。
また、側壁部21の貫通孔28の下方には、貫通孔28の中心軸28Bのほぼ真下から背板部18側の部分に、略四角形の開口部33が形成されている。この開口部33には、メカニズムカバーユニット8のセンサーカバー35(図8参照)が、閉じられた状態で嵌入される。
図2、図4乃至図6に示すように、巻取バネユニット7が取り付けられる側壁部22の中央部には、ウエビング引出方向側が貫通孔28の中心軸28Bを中心とする略半円弧状に開設された半円弧状部36と、この半円弧状部36に連続して側壁部22の下端縁部側へ略U字状に開設された拡大部37とから構成された貫通孔38が形成されている。
また、図5及び図6に示すように、側壁部22に形成された半円弧状部36の内周径は、側壁部21に形成された貫通孔28の係合歯28Aの先端の内周径D1よりも小さくなるように形成されている。また、半円弧状部36の上端縁部の内周面には、複数個(図6中、7個である。)の小さな山形突起39が半径R1の内周径で形成されている。また、側壁部22に形成された略U字状の拡大部37は、半円弧状部36の両下端部から少し左右方向外側へ少し広がりつつ下方へ延び、下端縁部が側壁部21の貫通孔28よりも下方に形成された開口部33に対向するように開設されている。
また、図4及び図6に示すように、側壁部22には、半円弧状部36と拡大部37の背板部18側の周縁部に、内側方向(図4中、右側方向である。)へ断面略半円形状に窪む補強溝41が形成されている。この補強溝41は、半円弧状部36の周縁部に沿って、当該半円弧状部36と同心の円弧状に形成されると共に、拡大部37の周縁部に沿って、背板部18側へ近づくように少し傾斜しつつ下方へ延出されて、下端部が貫通孔28の下端にほぼ対向する高さとなっている。
また、側壁部22には、上端縁部の両隅と、補強溝41の下方の下端縁部との3箇所に外側方向(図2中、右側方向である。)へ所定高さ(例えば、高さ約1.5mmである。)突出するようにバーリング加工された各取付孔42が貫通して形成されている。そして、巻取バネユニット7のカバーケース11に設けられた各ナイラッチ11Aが、各取付孔42に嵌入されて取り付けられる。
また、各ナイラッチ11Aの基端部の周囲は、バーリング加工により外側方向へ所定高さ突出した各取付孔42の先端部に当接するため、各取付孔42に取り付けられた当該各ナイラッチ11Aの先端部が、側壁部22の内側面から突出する突出高さを低くすることができる(例えば、突出高さを約2mmから約0.5mmにすることができる。)。
[巻取バネユニットの概略構成]
次に、巻取バネユニット7の概略構成について図2乃至図4と図7に基づいて説明する。図7は巻取バネユニット7の分解斜視図である。
図2乃至図4と図7に示すように、巻取バネユニット7は、渦巻バネ45と、この渦巻バネ45の外側端45Aが内側周縁部の底面から立設されたリブ46に固定されると共にこの渦巻バネ45を収容するバネケース11と、渦巻バネ45の内側端45Bが連結されてバネ力が付勢されるバネシャフト47と、バネケース11に取り付けられて渦巻バネ45を覆うスプリングシート48とから構成されている。
バネシャフト47は、バネケース11の底面部の略中心位置に立設されたピン49が、底面部の貫通孔47Aに挿入されて底面部側が回転可能に支持されている。また、バネシャフト47のスプリングシート48側の端部は、スプリングシート48の中央部に設けられた略円筒状のボス部48Aの基端部の周囲に形成された断面円形状の段差部に回転可能に支持されている。そして、スプリングシート48は、外周部の3箇所に設けられた各係止突起48Bをバネケース11の開放側周縁部に設けられた各係止孔11Bに弾性的に係止することによって固定されている。
また、巻取ドラムユニット6のスプリング側シャフト51は、基端部がスプリングシート48の中央部に設けられた略円筒状のボス部48Aに嵌挿されて回転可能に支持されると共に、断面H字状に形成された先端部が、バネシャフト47の断面H字状に形成された筒内に嵌挿されて、当該バネシャフト47に対して相対回転不能に連結されている。これにより、バネシャフト47を介して渦巻バネ45の付勢力が、巻取ドラムユニット6にウエビング3の巻取方向へ回動するように常時付勢する構造とされている。
また、スプリングシート48の側壁部22側の面には、巻取ドラムユニット6の端縁部の外周部を覆うようにリング状のリブ52が立設され、このリブ52の外周面から半径方向外側へ放射状に複数の補強リブ53が外周部まで立設されている。また、この複数の補強リブ53のうち、ハウジング15の側壁部22に形成された拡大部37に対向する各補強リブ53の上端部には、リブ52の外周面から拡大部37の内周面に対向する位置まで側壁部22の厚さにほぼ等しい高さで突出する位置決め部53Aが形成されている。
また、スプリングシート48のリブ52の外側には、円筒状の位置決めボス54が立設されている。これにより、側壁部22の半円弧状部36の連結部材23側の周縁部に形成された位置決孔56(図6参照)に位置決めボス54を嵌入しつつ、巻取バネユニット7を各ナイラッチ11Aを介して側壁部22の各取付孔42に固定した場合には、図3に示すように、各補強リブ53の位置決め部53Aは、側壁部22の内側面とほぼ同一の高さとなるように拡大部37内に嵌入される。
[メカニズムカバーユニットの概略構成]
次に、メカニズムカバーユニット8の概略構成について図2乃至図4と図8に基づいて説明する。図8はメカニズムカバーユニット8の分解斜視図である。
図2乃至図4と図8に示すように、メカニズムカバーユニット8は、ハウジング15の側壁部21の外側に各ナイラッチ8Aによってクラッチユニット9を覆うように取り付けられるメカニズムカバー58と、メカニズムカバー58のセンサー収容部59に収容される緊急ロック起動装置としての車両加速度センサ61とから構成されている。
メカニズムカバー58は、クラッチユニット9に対向する内側面に、側壁部21の貫通孔28の中心軸28Bに対して同軸に円環状のリブ部62が立設され、このリブ部62の内周面には、後述のようにロックアーム63の係合爪65が係合するロックギヤ66が形成されている(図31参照)。このロックギヤ66は、後述のようにクラッチユニット9がウエビング引出方向へ回転したときのみ、ロックアーム63の係合爪65と係合するように構成されている(図31参照)。
また、円環状のリブ部62内の中央部には、略円筒状の支持ボス67が立設されている。この支持ボス67には、巻取ドラムユニット6のメカニズム側シャフト68の先端部が、ベアリングキャップ71を介して摺動回転可能に嵌入されて軸支される。
また、センサー収容部59は、断面略四角形の凹形状に形成されて、両側壁部の奥側に形成された一対の係止孔72が形成されている。
そして、車両加速度センサ61の左右両側に設けられた一対の係止爪73を各係止孔72に嵌入して係止後、センサーカバー35の係止爪75をセンサ収容部59の上端部に設けられた係止孔76に嵌入して係止することによって、メカニズムカバーユニット8が構成される。また、円環状のリブ部62の下方にセンサー収容部59に連通する開口部77が形成される。
[車両加速度センサの概略構成]
ここで、車両加速度センサ61の概略構成を図8乃至図17に基づいて説明する。
図9は車両加速度センサ61の分解斜視図である。図10は図9のセンサーホルダ82を奥側から見た斜視図である。図11はセンサーレバー85のセンサーホルダ82への取り付け側から見た正面図である。図12は図11のX3ーX3矢視断面図である。図13乃至図17は、慣性質量体83の移動によって上下に揺動するセンサーレバー85の動作状態を説明する説明図である。
図8及び図9に示すように、車両加速度センサ61は、上面に開放される略箱形で底面部にすり鉢状の載置部81が形成された樹脂製のセンサーホルダ82と、スチール等の金属で球状体に形成されて載置部81上に移動可能に載置された慣性質量体83と、慣性質量体83の上側に配置されてセンサーホルダ82に揺動可能に支持される樹脂製のセンサーレバー85とから構成されている。
また、図8乃至図12に示すように、センサーレバー85は、長手方向の一方の端部の両側面部から、各軸部86、87がそれぞれ外側方向へ同一軸心上に突設されている。また、車両加速度センサ61をセンサ収容部59内に収容した場合に、センサー収容部59の奥側に位置する軸部86の外径は、センサーカバー35側に位置する軸部87よりも少し太くなるように形成されている。また、軸部86の基端部には、軸方向所定厚さ(例えば、厚さ約0.7mm〜1.0mmである。)で正面視略軸径幅の矩形状に形成された突出部88が、上方へ突設されている。
また、図9及び図10に示すように、センサーホルダ82の各軸部86、87に対向する各側壁部82A、82Bの一方の端部には、それぞれ上方へ一対の支持壁部91、92が突出するように設けられている。また、各支持壁部91、92の上方側には、各支持孔91A、92Aが、各軸部86、87の直径にほぼ等しい内径で厚さ方向に貫通するように形成されている。
また、支持壁部91の内側面には、支持孔91Aの中心から上端まで支持孔91Aの内径にほぼ等しい幅で、突出部88の厚さにほぼ等しい深さで切り欠かれた回転ストッパー部としての切欠溝93が形成されている。また、切欠溝93の載置部81側の内壁は、支持孔91Aの外周部から上端まで斜め外側方向(図10中、右上方向である。)へ傾斜するように形成されている。
そして、センサーホルダ82の載置部81に慣性質量体83を載置後、センサーレバー85の各軸部86、87を、各支持孔91A、92Aに上方から嵌合することによって、センサーレバー85が上下方向に回転可能に支持される。また、後述のように、軸部86の基端部に形成された突出部88が、支持孔91Aから上方に形成された切欠溝93内に遊嵌されて、センサーレバー85の上方への最大回転角度が規制される(図17参照)。
また、図9乃至図13に示すように、センサーレバー85は、長手方向の一方の端縁部から下側方向へ、幅方向(図11中、左右方向である。)全幅に渡って所定厚さ(例えば、厚さ約2mmである。)で各軸部86、87よりも下側まで延出された延出部95が形成されている。更に、この延出部95の下端部には、軸部87側の内側角部から、延出部95の回動軸方向の全幅の約1/3の幅で、且つ、延出部95の厚さの約半分の厚さで更に下方に延出された断面矩形状の当接レバー96が設けられている。尚、当接レバ−96を延出部95の下端部の軸部86側の内側角部から下方に延出するようにしてもよい。
また、センサーホルダ82の各支持壁部91、92の載置部81に対して幅方向外側の側縁部の基端側の間には、センサーホルダ82の側壁部の上端から更に上方に延出された規制壁部97が設けられている。図13に示すように、この規制壁部97の上端は、各支持壁部91、92に軸支されたセンサーレバー85の延出部95の下端部よりも少し下側に位置するように形成され、当接レバー96の下端部が規制壁部97の内側面に当接して、センサーレバー85の下方への回転範囲が規制される。この延出部95と当接レバー96が当接部として機能する。
また、図9乃至図13に示すように、センサーレバー85は、慣性質量体83の上側を覆う碗状のカバー部98が設けられている。このカバー部98の延出部95に対して反対側の上面には、斜め上方向に向けて突出するロック爪99が突設されている。また、載置部81に載置された慣性質量体83とその周囲を囲むセンサーホルダ82の内壁面とは、周方向全周に渡って適宜隙間が形成されており、所定値を超える加速度によって慣性質量体83が載置部81上を移動して、その隙間の範囲で移動可能に構成されている。
また、カバー部98の下面側には、碗状に窪む接触部98Aが、静止している慣性質量体83の外側表面部に対向するように形成されている。そして、この慣性質量体83が載置部81上を移動して、カバー部98の下面側の碗状に窪む接触部98Aに接触して上方へ押動することによりセンサーレバー85が上方へ回転される。尚、載置部81の中心部には下面に連通する連通孔101が形成されている。
ここで、センサーレバー85の上下方向の回転範囲について図13乃至図17に基づいて説明する。
図13及び図16に示すように、慣性質量体83が載置部81の底部に静止している静止状態においては、センサーレバー85が自重によって下方へ回転して、当接レバー96の下端部が規制壁部97の内側面に当接して、当該センサーレバー85の下側方向への回転範囲が規制されている。また、カバー部98の下面側の碗状に窪む接触部98Aと慣性質量体83との相互間には所定距離の隙間102(例えば、距離約0.5mmの隙間である。)が形成されている。
また、軸部86の基端部に形成された突出部88と、支持壁部91の切欠溝93の載置部81側の内壁面との間には、狭い隙間が形成されている。
従って、車両の加速度の変動が、慣性質量体83がセンサーレバー85の接触部98Aに接触しない変動範囲内の場合には、センサーレバー85が上下方向に揺動しても、センサーレバー85の接触部98Aと慣性質量体83との接触を防止することができる。
また、図14、図15及び図17に示すように、車両の所定値以上(例えば、0.4G以上である。尚、1G≒9.8m/s2とする。)の加速度の変化に対応して、慣性質量体83が載置部81上を移動して、カバー部98の下面側の接触部98Aに接触して押動する。そして、この場合におけるセンサーレバー85が上側方向に回転する位置は、ロック爪99が後述のクラッチユニット9を構成するロッキングクラッチ106のクラッチギヤ112(図31参照)に接触する位置までであるが、車両加速度センサ61のみの状態においては、センサーレバー85の上側方向への最大回転位置は、ロック爪99がクラッチギヤ112に接触する位置よりも上方に設定されている。
具体的には、センサーレバー85の上側方向への最大回転位置は、軸部86の基端部に形成された突出部88が、支持壁部91の切欠溝93の載置部81に対して反対側の内壁面に当接して、当該センサーレバー85の上側方向への回転範囲が規制されることによって設定されている。
また、センサーレバー85が上側方向の最大回転位置に到達したときにおけるセンサーレバー85とセンサーホルダ82の周壁部との相互間の隙間103は、慣性質量体83の直径よりも小さい隙間になるように構成されている。また、センサーレバー85の当接レバー96の下端部は、規制壁部97の内側面から離間して載置部81側へ回動している。尚、当接レバー96の下端部とセンサーホルダ82の底面部とは、接触しないように構成されて、センサーレバー85は上下方向へスムーズに回転するように構成されている。
[巻取ドラムユニットの概略構成]
次に、巻取ドラムユニット6の概略構成について図2乃至図4、図18及び図19に基づいて説明する。図18は巻取ドラムユニット6の分解斜視図である。図19はクラッチユニット9の分解斜視図である。
図2乃至図4、図18及び図19に示すように、巻取ドラムユニット6は、ウエビング3が巻回される巻取ドラム105と、ハウジング15の側壁部21に形成された貫通孔28の係合歯28Aに係合するパウル29と、クラッチユニット9と、ベアリングキャップ71とから構成されている。また、クラッチユニット9は、ロッキングクラッチ106、ロックアーム63、センサースプリング107及びリターンスプリング108とから構成されている。
このロッキングクラッチ106は、メカニズムカバー58の円環状のリブ部62の外径よりも大きい直径の円板状の底面部111の全周からメカニズムカバー58側へ円環状に立設されて、外周部に車両加速度センサ61のセンサーレバー85のロック爪99に係合するクラッチギヤ112が形成されている。このクラッチギヤ112は、ロッキングクラッチ106がウエビング引出方向へ回転した時のみ、センサーレバー85のロック爪99と係合するように形成されている(図31参照)。
また、ロッキングクラッチ106の底面部111の中心部には、略円筒状のボス113がメカニズムカバー58側の面に立設され、巻取ドラム105側へ連通している。また、ロッキングクラッチ106の底面部111には、ボス113に隣接してピボット軸115が、クラッチギヤ112とほぼ同じ高さで立設されている。そして、ボス113を囲むように略弓形に形成された合成樹脂製のロックアーム63は、長手方向略中央部のボス113側の端縁部に形成された貫通孔116内に、ピボット軸115が挿入されて、回転可能に軸支される。
また、ロッキングクラッチ106の底面部111には、ボス113の外周面から半径方向外側へ延出されたリブ部に突設されたバネ支持ピン117が設けられている。そして、このバネ支持ピン117にセンサースプリング107の一端側を嵌め込むと共に、ロックアーム63の係合爪65と反対側の端部に形成された凹部118内に、センサースプリング107の他端側を嵌め込む。
これにより、ロックアーム63はピボット軸115の軸心に対してウエビング引出方向側へ回動するように所定荷重で付勢され、係合爪65と反対側の端縁部が、底面部111に立設されたストッパ119に当接されている。一方、後述のようにロックアーム63がセンサスプリング107の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されてロックギヤ66に係合した場合には、係合爪65の外側端縁部が、ロッキングクラッチ106の底面部111に立設された断面略三角形の回り止め121に当接可能に構成されている(図31参照)。
また、ロッキングクラッチ106の底面部111には、バネ支持ピン117の半径方向外側に、パウル29の係合爪29A側の側面部から突設された連動ピン122が摺動自在に嵌合される細長状の突出ガイド溝123が形成されている。この突出ガイド溝123は、ウエビング引出方向側の端縁部が、底面部111の中心から徐々に離れるように形成されている。これにより、後述のように、クラッチユニット9がロックされて巻取ドラム105だけがウエビング引出方向へ回転した場合には、突出ガイド溝123は、パウル29を半径方向外側へ案内して貫通孔28の係合歯28Aに係合させる(図32参照)。
また、ロッキングクラッチ106の底面部111の巻取ドラム105側には、リターンスプリング108の一端側が嵌入される凹部が形成されたバネ取付部125(図3参照)が、軸方向巻取ドラム105側へ突設されている。従って、図18に示すように、クラッチユニット9は、バネ取付部125にリターンスプリング108の一端側を嵌入した状態で、ボス113をメカニズム側シャフト68の基端部に嵌入させると共に、パウル29の連動ピン122を突出ガイド溝123に嵌入させる。
また同時に、クラッチユニット9は、リターンスプリング108を縮めた状態で、当該リターンスプリング108とバネ取付部125が、巻取ドラム105の端面に形成された横長の嵌合凹部126内に配置される。そして、クラッチユニット9のボス113から突出したメカニズム側シャフト68の先端部に形成されたスプラインに、ベアリングキャップ71を嵌入して相対回転不能に固定する。これにより、通常時には、クラッチユニット9はウエビング引出方向側へリターンスプリング108によって押動されて、パウル29を巻取ドラム105内に引き込んだ状態で、当該巻取ドラム105と同行回転される。
[巻取ドラムの概略構成]
続いて、巻取ドラム105の概略構成について図3、図20乃至図24に基づいて説明する。図20は巻取ドラム105にパウル29を挿入した正面図である。図21は図20の左側面図である。図22は図20の右側面図である。図23は図20のX5−X5矢視断面図である。図24は図20のX6−X6矢視断面図である。
図20乃至図24に示すように、アルミ材等で形成された巻取ドラム105は、軸方向中央にウエビング巻取部131が設けられ、このウエビング巻取部131の両端には、ウエビング3の巻き取り、引き出しをガイドするメカニズムカバーユニット8側のメカニズム側フランジ部132と、巻取バネユニット7側の巻取バネ側フランジ部133とが設けられている。そして、メカニズム側フランジ部132の軸方向外側端面の中心位置にメカニズム側シャフト68が立設され、巻取バネ側フランジ部133の軸方向外側端面の中心位置にスプリング側シャフト51が立設されている。
図20及び図24に示すように、ウエビング巻取部131には、ウエビング3を挿通するスリット135が、メカニズム側フランジ部132と巻取バネ側フランジ部133との間の全幅に渡って、回転軸を含む径方向に開口されている。また、スリット135のウエビング3を挿入する挿入口136は、抜け止めピン12を載置できるように周方向対称に拡大され、抜け止めピン12に巻回されたウエビング3が、ウエビング巻取部131のウエビング巻回面よりも内側に位置するように構成されている。
図22及び図24に示すように、メカニズム側フランジ部132と巻取バネ側フランジ部133は、ウエビング巻取部131の回転中心と同軸で、ほぼ同じ大きさの円形に形成されている。また、図23に示すように、メカニズム側フランジ部132と巻取バネ側フランジ部133のそれぞれの外径D2は、側壁部21の貫通孔28の内周面に形成された係合歯28の先端の内周径D1よりも若干小さくなるように設定されている。
そして、図20乃至図24に示すように、メカニズム側フランジ部132には、リターンスプリング108が収納される嵌合凹部126に対して径方向反対側に、パウル29を外周部よりも内側に出没可能に収容する略弓形のパウル収容凹部137が形成されている。また、パウル収容凹部137は、パウル29の厚さとほぼ同じ深さになるように形成されると共に、パウル29の出口側の軸方向外側は、パウル案内用フランジ138で覆われている。
また、パウル案内用フランジ138のウエビング巻取方向側の端縁部には、パウル29の側面部に立設された連動ピン122が摺動自在に挿通される案内溝139が、外周面から内側方向へ切り欠かれている。また、案内溝139から突出した連動ピン122が摺動自在にロッキングクラッチ106の突出ガイド溝123に嵌合される。
また、メカニズム側フランジ部132の軸方向外側の端縁部には、パウル収容凹部137のパウル出口側の開口部分を除く外周面から半径方向外側へ延出されて、鍔部の一例として機能する正面視略C形の抜け止め用フランジ141が設けられている。また、図21に示すように、抜け止め用フランジ141の外径D3は、側壁部21の貫通孔28の内周面に形成された係合歯28の先端の内周径D1よりも大きくなるように設定されている。従って、巻取ドラム105の回転軸と側壁部21の貫通孔28の中心軸28Bとが一致した状態では、抜け止め用フランジ141は軸方向内側に隣接する係合歯28Aの先端の内周径D1よりも半径方向外側に突出する。
また、メカニズム側フランジ部132のウエビング巻取部131側の端縁部には、パウル収容凹部137のパウル出口側の開口部分を含む周縁部分から、つまり、パウル29と係合歯28Aとの係合部分に対向する周縁部分から、当該パウル29の突出移動方向に略円弧状に突出して突出部の一例として機能する突出フランジ142が設けられている。また、突出フランジ142のパウル29側の側面とパウル収容凹部137の底面部とは同一平面上に位置するように形成され、パウル29の側面部がスムーズに摺動移動するように構成されている。
また、図23に示すように、この突出フランジ142とメカニズム側フランジ部132とのなす最大外形寸法D4は、側壁部21の貫通孔28の内周面に形成された係合歯28の先端の内周径D1よりも大きくなるように設定されている。従って、巻取ドラム105の回転軸と側壁部21の貫通孔28の中心軸28Bとが一致した状態では、突出フランジ142は軸方向外側に隣接する係合歯28Aの先端の内周径D1よりも半径方向外側に突出する。
また、図20乃至図23に示すように、突出フランジ142の軸方向外側の側面には、パウル収容凹部137のパウル出口側の開口部分よりも周方向両外側の部分に、軸方向外側へパウル29の厚さよりも低い高さ(例えば、高さ約1mmである。)で突出する各内側段差部143が設けられている(図18参照)。各内側段差部143は、巻取ドラム105の回転軸と側壁部21の貫通孔28の中心軸28Bとが一致した状態で、軸方向外側に隣接する係合歯28Aの先端の内周径D1よりも半径方向外側に突出するように突出フランジ142の周方向両端縁部に設けられている。
また、抜け止め用フランジ141の軸方向内側の側面には、パウル収容凹部137のパウル出口側の開口部分よりも周方向両外側の部分で、各内側段差部143に対向する部分において、軸方向内側へパウル29の厚さよりも低い高さ(例えば、高さ約1mmである。)で突出する各外側段差部145が設けられている(図18参照)。従って、図20及び図23に示すように、パウル29は、各内側段差部143の間と、各外側段差部145の間とを移動して貫通孔28の内周面に形成された係合歯28Aに係合する係合位置へ移動する(図32参照)。
また、図3、図20及び図22に示すように、外径D2の巻取バネ側フランジ部133の軸方向外側端面には、略円環状のリブ部146が、巻取ドラム105の回転軸と側壁部21の貫通孔28の中心軸28Bとが一致した状態で、側壁部22よりも軸方向外側まで達するように同軸に立設されている。また、略円環状のリブ部146の外径D5は、側壁部22の半円弧状部36の内周面に形成された山形突起39の先端の半径R1の内周径よりも小さくなるように設定されている(図29参照)。
また、円環状のリブ部146の軸方向外側の端縁部の外周面から全周に渡って半径方向外側へ延出された、他側鍔部の一例として機能する正面視円環状の外側フランジ147が設けられている。また、外側フランジ147の外径D6は、側壁部22の半円弧状部36の内周面に形成された山形突起39の先端の半径R1の内周径よりも大きく、且つ、半円弧状部36の内周径と同程度になるように設定されている。
従って、後述のように、巻取ドラム105の回転軸と側壁部21の貫通孔28の中心軸28Bとが一致した状態では、外側フランジ147は軸方向内側に隣接する半円弧状部36の内周面に形成された山形突起39の先端の半径R1の内周径よりも半径方向外側に突出する(図29参照)。また、後述のように、外側フランジ147は側壁部22の拡大部37内へ進入可能である(図27参照)。
ここで、巻取ドラムユニット6をハウジング15の各側壁部21、22間に挿入する方法について図25乃至図30に基づいて説明する。図25乃至図30は、巻取ドラムユニット6のハウジング15内への挿入方法を説明する説明図である。
先ず、図25及び図26に示すように、巻取ドラム105のメカニズム側フランジ部132に形成された突出フランジ142の周方向略中央部が、鉛直方向上側に位置するように巻取ドラムユニット6のクラッチユニット9を把持する。
そして、巻取バネ側フランジ部133がメカニズム側フランジ部132よりも下側になるように巻取ドラムユニット6を傾けた状態で、巻取バネ側フランジ部133をハウジング15の側壁部21に形成された貫通孔28からハウジング15内へ挿通し、更に、突出フランジ142を貫通孔28からハウジング15内へ挿通する。また、巻取ドラム105のスプリング側シャフト51は、側壁部22に形成された貫通孔38の拡大部37から外側へ少し突出する。
続いて、図27及び図28に示すように、巻取バネ側フランジ部133がメカニズム側フランジ部132よりも下側になるように巻取ドラムユニット6を傾けた状態で、巻取ドラムユニット6を少し上に持ち上げつつ、更に側壁部21の貫通孔28へ挿入して、メカニズム側フランジ部132をハウジング15内へ挿通する。また、メカニズム側フランジ部132の軸方向外側の端縁部に設けられた抜け止め用フランジ141の上側周縁部が、側壁部21の外側面に当接される。
また、巻取ドラム105の外側フランジ147及び巻取バネ側フランジ部133は、下側方向へ傾いた状態で、側壁部22に形成された貫通孔38の半円弧状部36と拡大部37の連続する部分へ挿通される。このため、外側フランジ147の上側周縁部が、側壁部22の半円弧状部36から外側へ突出することとなる。
そして、図29及び図30に示すように、巻取ドラム105の外側フランジ147及び巻取バネ側フランジ部133を上方向に持ち上げて、巻取ドラム105をほぼ水平にして、当該巻取ドラム105の回転軸105Aと側壁部21の貫通孔28の中心軸28Bとが一致した状態にする。つまり、図3に示すように、メカニズムカバーユニット8によって巻取ドラムユニット6のメカニズム側シャフト68を軸支すると共に、巻取バネユニット7によって巻取ドラムユニット6のスプリング側シャフト51を軸支する。
これにより、メカニズム側フランジ部132に設けられた突出フランジ142が、側壁部21の貫通孔28の内周面に設けられた係合歯28Aの先端の内周径D1よりも外側に突出すると共に、メカニズム側フランジ部132が係合歯28Aの先端の内周径D1よりも内側に位置する。また、メカニズム側フランジ部132の抜け止め用フランジ141の半径方向外側の周縁部が、貫通孔28の内周面に設けられた係合歯28Aの先端の内周径D1よりも外側に突出する。
また、突出フランジ142の軸方向外側の側面に設けられた各内側段差部143と、抜け止め用フランジ141の軸方向内側の側面に設けられた各外側段差部145が、それぞれ隣接する係合歯28の先端の内周径D1よりも外側に突出する。また、巻取バネ側フランジ部133と外側フランジ147は、側壁部22の貫通孔38の半円弧状部36の内周面に設けられた山形突起39の先端の半径R1の内周径よりも外側に突出する。また、巻取バネ側フランジ部133の軸方向外側に立設されたリブ部146の外周面が、半円弧状部36の内周面に設けられた山形突起39の先端の半径R1の内周径よりも内側に位置する。
また、図4、図29及び図30に示すように、側壁部22の貫通孔38の半円弧状部36と拡大部37との周縁部に沿って、断面略半円形状に窪むように形成された補強溝41は、側壁部22の内側への突出部が、巻取ドラム105の巻取バネ側フランジ部133の軸方向内側面と略同一高さとなるように、側壁部22の内側方向(図4中、右側方向である。)へ突出している。また、側壁部22に設けられた補強溝41は、巻取ドラム105のウエビング巻取部131に巻回されたウエビング3の巻き径が、巻取バネ側フランジ部133の外径D2になった場合に、ウエビング3の側縁部が当該補強溝41に対向するように設けられている。
また、側壁部22に設けられた補強溝41は、巻取ドラム105のウエビング巻取部131に巻回されたウエビング3の巻き径が、最大巻き径D7になった場合にも、ウエビング3の側縁部が当該補強溝41に対向するように拡大部37の周縁部に沿って設けられている。従って、ウエビング3の引き出し・巻き取り時において、ウエビング3の側壁部22に対向する側縁部は、巻取バネ側フランジ部133の軸方向内側面又は補強溝41に当接され、側縁部が巻取バネ側フランジ部133に乗り上げないように整列されて巻回される。
[ロック機構の動作]
次に、ロック機構10の動作について図31及び図32に基づいて説明する。図31はロック機構10の動作説明図である。図32はパウル29が係合歯28Aに係合したロック状態を示す側面図である。
ロック機構10の動作には、ウエビング3の急激な引き出しによってウエビング3の引き出しを停止する「ウエビング感応式ロック機構」と、車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止する「車体感応式ロック機構」とがある。
[ウエビング感応式ロック機構の動作説明]
先ず、「ウエビング感応式ロック機構」の動作について説明する。
図31及び図32に示すように、ロックアーム63はロッキングクラッチ106のピボット軸115によって回動自在に支持されているため、ウエビング3の引出加速度が所定加速度(例えば、約2.0Gである。尚、1G≒9.8m/s2とする。)を超えた場合には、ロッキングクラッチ106のウエビング引出方向(矢印151方向である。)への回転に対してロックアーム63に慣性遅れが生じる。
このため、ストッパ119に当接していたロックアーム63は、センサースプリング107の付勢力に抗して初期位置を維持するため、当該ロッキングクラッチ106に対してピボット軸115を中心に、ウエビング引出方向と反対方向(図31中、時計方向である。)へ回動され、回り止め121に当接するまで回動される。そのため、ロックアーム63の係合爪65は、ロッキングクラッチ106の回転軸に対して半径方向外側へ回動されて、メカニズムカバー58のリブ部62のロックギヤ66に係合し、ここに、ロッキングクラッチ106の巻取ドラム105との同行回転が停止される。
そして、ウエビング3の引き出しが所定加速度を超えて継続された場合には、巻取ドラム105の回転に伴ってパウル29の側面部に立設された連動ピン122は、突出ガイド溝123内を摺動移動する。この摺動移動に伴って、連動ピン122は巻取ドラム105のパウル案内用フランジ138に形成された案内溝139内を摺動移動して、半径方向外側へ突出移動され、側壁部21の貫通孔28の内周面に形成された係合歯28Aに係合爪29Aが係合される。これにより、巻取ドラム105の回転が阻止され、ウエビング3の引き出しが停止される。
また、ウエビング3の急激な引き出しが解除されると、ロックアーム63はセンサースプリング107の付勢力によってストッパ119に当接される初期位置に復帰する。そのため、ロックアーム63の係合爪65とメカニズムカバー58のリブ部62のロックギヤ66との係合が解除される。そして、リターンスプリング108の付勢力によって、ロッキングクラッチ106は巻取ドラム105に対してウエビング引出方向(矢印151方向である。)へ相対回転され、この回転によって連動ピン122は突出ガイド溝123内を摺動移動して、図31に示す初期位置に復帰する。
また、この摺動移動に伴って、連動ピン122は巻取ドラム105のパウル案内用フランジ138に形成された案内溝139内を摺動移動して、半径方向内側へ引き込み移動され、パウル収容凹部137内に収容移動されてメカニズム側フランジ部132に埋没収容される。ここに、ロッキングクラッチ106の巻取ドラム105との同行回転が開始され、ウエビング3の引き出しや巻き取りが可能な状態に復帰する。
[車体感応式ロック機構の動作説明]
次に、「車体感応式ロック機構」の動作について説明する。
図31及び図32に示すように、車両加速度センサ61の球体状の慣性質量体83は、センサーホルダ82のすり鉢状の載置部81上に載置されているため、車両の衝突や急ブレーキ等によって車体の揺れや傾きなどによる急激な加速度が所定加速度(例えば、約0.4Gである。)を超えた場合には、載置部81上を移動して、センサーレバー85の接触部98Aに接触して上方へ押動する。
そして、センサーレバー85が質量慣性体83によって上方へ押動されて、センサーレバー85のロック爪99が、メカニズムカバー58の開口部77から突出して、ロッキングクラッチ106の外周部に形成されたクラッチギヤ112に係合され、ここに、ロッキングクラッチ106の巻取ドラム105との同行回転が停止される。このため、ウエビング3に引出方向の負荷が作用した場合には、リターンスプリング108の付勢力に抗して巻取ドラム105がウエビング引出方向(矢印151方向である。)へ回転する。
この巻取ドラム105の回転に伴ってパウル29の側面部に立設された連動ピン122は、突出ガイド溝123内を摺動移動する。この摺動移動に伴って、連動ピン122は巻取ドラム105のパウル案内用フランジ138に形成された案内溝139内を摺動移動して、半径方向外側へ突出移動され、側壁部21の貫通孔28の内周面に形成された係合歯28Aに係合爪29Aが係合される。これにより、巻取ドラム105の回転が阻止され、ウエビング3の引き出しが停止される。
また、車両の急激な加速度の変化が解除されると、慣性質量体83は重力作用によってセンサーホルダ82の載置部81上を移動して、載置部81の中央位置へ戻される。そして、ウエビング3の引出方向の負荷が解除されると、リターンスプリング108の付勢力によって、ロッキングクラッチ106は巻取ドラム105に対してウエビング引出方向(矢印151方向である。)へ相対回転され、この回転によって連動ピン122は突出ガイド溝123内を摺動移動して、図31に示す初期位置に復帰する。
また同時に、センサーレバー85は自重によって下方へ回動されて、センサーレバー85の一端側に形成された延出部95から下方へ延出された当接レバー96が、センサーホルダ82の規制壁部97の内側面に当接されて、慣性質量体83と接触部98Aとの間に所定隙間102が形成される(図13参照)。また、センサーレバー85のロック爪99は、下方へ回動されてメカニズムカバー58の開口部77内へ収容される。
また、連動ピン122の突出ガイド溝123内の摺動移動に伴って、連動ピン122は巻取ドラム105のパウル案内用フランジ138に形成された案内溝139内を摺動移動して、半径方向内側へ引き込み移動され、パウル収容凹部137内に収容移動されてメカニズム側フランジ部132に埋没収容される。ここに、ロッキングクラッチ106の巻取ドラム105との同行回転が開始され、ウエビング3の引き出しや巻き取りが可能な状態に復帰する。
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、車両加速度センサ61は、センサーホルダ82の各支持壁部91、92の載置部81に対して幅方向外側の側縁部の基端側の間に、センサーホルダ82の側壁部の上端から更に上方に延出された規制壁部97が設けられている。そして、センサーレバー85の各軸部86、87よりも下側まで延出された延出部95の下端部の軸部87側の内側角部から、下方に延出された当接レバー96が、規制壁部97の内側面に当接して、センサーレバー85の下方への回転範囲が規制される。
これにより、センサーホルダ82の各支持壁部91、92の載置部81に対して幅方向外側の側縁部の基端側の間に、上方に延出された規制壁部97を形成するため、規制壁部97に必要とされる寸法精度を低くすることが可能となると共に、規制壁部97の厚さ寸法を大きくして当該規制壁部97に必要とされる機械的強度を容易に満たすことができる。
また、センサーレバー85の当接レバー96を各軸部86、87の回転中心から離れた位置で規制壁部97の内側に当接させることができるため、延出部95及び当接レバー96や規制壁部97に必要とされる寸法精度を低くすることが可能となると共に、延出部95及び当接レバー96の厚さ寸法を大きくして、当該延出部95及び当接レバー96に必要とされる機械的強度を容易に満たすことができる。
従って、車両加速度センサ61は、センサーレバー85の当接レバー96をセンサーホルダ82の規制壁部97の内側に当接させるように構成することによって、高精度及び高強度でセンサーレバー85の回転範囲を規制することができる。また、当接レバー96を延出部95の下端部の軸部87側の内側角部から下方へ延出することによって、慣性質量体83の規制壁部97側への移動距離を容易に大きくでき、センサーホルダ82の小型化を図ることができる。また、車両加速度センサ61は、センサーレバー85及びセンサーホルダ82に必要とされる寸法精度を低くすることができると共に、当該センサーレバー85及びセンサーホルダ82に必要とされる機械的強度を容易に満たすことができ、容易に実用化することができる。
また、慣性質量体83の載置部81上の移動により接触して押動されるセンサーレバー85の接触部98Aと、載置部81の底部に静止している該慣性質量体83との相互間に所定距離の隙間102が設けられている。これにより、簡易な構成でセンサーレバー85の接触部98Aと慣性質量体83との相互間に所定距離の隙間102を形成することができると共に、所定距離の隙間102の寸法精度の高精度化を図ることができる。
また、センサーレバー85の接触部98Aと慣性質量体83との相互間の隙間102を精度よく形成することによって、車両の走行路面状態等による小さな加速度の変化の繰り返しに慣性質量体83が反応する状況において、慣性質量体83がセンサーレバー85へ接触する頻度を低減することができる。また、慣性質量体83がセンサーレバー85に接触して、センサーレバー85が揺動した場合でも、揺動するセンサーレバー85が慣性質量体83に再度、接触する頻度を低減することができ、車両走行時のノイズの低減化を図ることが可能となる。
また、センサーレバー85が上側方向の最大回転位置に到達したときには、軸部86の基端部に形成された突出部88が、センサーホルダ82の支持壁部91の支持孔91Aから上方に形成された切欠溝93の載置部81に対して反対側の内壁面に当接して、当該センサーレバー85の上側方向への回転範囲が規制される。これにより、突出部88を軸部86の回転中心から離れた位置で切欠溝93の載置部81に対して反対側の内壁面に当接させることができ、突出部88及び切欠溝93に必要とされる寸法精度を低くして、センサーレバー85の上方への回転範囲を規制する構造に必要とされる寸法精度を低くすることが可能となる。
また、軸部86の外径を軸部87の外径よりも大きくして、突出部88の回動方向の幅寸法を大きくすることによって、センサーレバー85に必要とされる機械的強度を満たすことができ、車両加速度センサ61を容易に実用化することができる。また、センサーレバー85の上側方向の最大回転位置におけるセンサーレバー85とセンサーホルダ82との相互間の隙間103が、慣性質量体83よりも小さいため、車両加速度センサ61の組立後における慣性質量体83の不用意な離脱を防止でき、車両加速度センサ61の組み付け作業の効率化を図ることができる。
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
尚、以下の説明において上記図1乃至図32の前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成等と同一符号は、該前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
(A)例えば、上記センサーレバー85に替えて、図33及び図34に示すセンサーレバー155又は図35及び図36に示すセンサーレバー156を車両加速度センサ61に取り付けるようにしてもよい。図33はセンサーレバー155のセンサーホルダ82への取り付け側から見た正面図である。図34は図33のX7ーX7矢視断面図である。図35はセンサーレバー156のセンサーホルダ82への取り付け側から見た正面図である。図36は図35のX8ーX8矢視断面図である。
図33及び図34に示すように、センサーレバー155は、上記センサーレバー85とほぼ同じ構成である。但し、当接レバー96の下端部に、規制壁部97の内側面に当接するように所定高さ(例えば、高さ約0.5mmである。)突出した突起部157が設けられている。この突起部157は、底面が当接レバー96の幅よりも狭い、幅方向に長い略横長四角形で、断面三角形の三角柱状に形成されている。従って、当接レバー96の下端部に設けられた突起部157の頂部が、規制壁部97の内側面に当接して、センサーレバー155の下方への回転範囲が規制される。
また、図35及び図36に示すように、センサーレバー156は、上記センサーレバー85とほぼ同じ構成である。但し、当接レバー96の下端部に、規制壁部97の内側面に当接するように所定高さ(例えば、高さ約0.5mmである。)突出した突起部158が設けられている。この突起部158は、底面が当接レバー96の幅よりも狭い、円形で、略半球状に形成されている。従って、当接レバー96の下端部に設けられた突起部158の頂点部が、規制壁部97の内側面に当接して、センサーレバー156の下方への回転範囲が規制される。
従って、各センサーレバー155、156では、当接レバー96の下端部に所定高さ突出した各突起部157、158が規制壁部97の内側面に当接する。これにより、車両の走行路面状態等による小さな加速度の繰り返しに慣性質量体83が反応する状況において、慣性質量体83が各センサーレバー155、156に接触して、各センサーレバー155、156が揺動しても、各突起部157、158が規制壁部97の内側面に当たることによって、車両加速度センサ61から発生するノイズの更なる低減化を図ることができる。
尚、各突起部157、158は、三角柱状や略半球状に限らず、三角錐、四角錐、底面が矩形で断面略半円形状の半円柱形等であってもよい。
(B)また、例えば、上記センサーレバー85に替えて、図37乃至図39に示す各センサーレバー161、162、163を車両加速度センサ61に取り付けるようにしてもよい。図37乃至図39は、各センサーレバー161、162、163のセンサーホルダ82への取り付け側から見た正面図である。
図37に示すように、センサーレバー161は、上記センサーレバー85とほぼ同じ構成である。但し、延出部95の下端部には、軸部87側の内側角部と軸部86側の内側角部とのそれぞれから、当接レバー96が下方に延出されている。これにより、センサーレバー161の下方への回転範囲を規制する機械的強度の更なる向上を図ることができる。また、各当接レバー96の各軸部86、87の回転軸方向の幅寸法を狭くすることが可能となり、つまり、各当接レバー96間の隙間を広くすることが可能とる。これにより、慣性質量体83の規制壁部97側への移動距離を容易に大きくでき、センサーホルダ82の小型化を図ることができる。
また、図38に示すように、センサーレバー162は、上記センサーレバー85とほぼ同じ構成である。但し、延出部95の下端部には、軸部87側の内側角部と軸部86側の内側角部とのそれぞれから、当接レバー96が下方に延出され、更に、各当接レバー96の下端部に、規制壁部97の内側面に当接するように所定高さ(例えば、高さ約0.5mmである。)突出した突起部157(図33、図34参照。)が設けられている。
また、図39に示すように、センサーレバー163は、上記センサーレバー85とほぼ同じ構成である。但し、延出部95の下端部には、軸部87側の内側角部と軸部86側の内側角部とのそれぞれから、当接レバー96が下方に延出され、更に、各当接レバー96の下端部に、規制壁部97の内側面に当接するように所定高さ(例えば、高さ約0.5mmである。)突出した突起部158(図35、図36参照。)が設けられている。
従って、各センサーレバー162、163では、上記センサーレバー161の奏する効果に加えて、各当接レバー96の下端部に所定高さ突出した各突起部157、158が規制壁部97の内側面に当接する。これにより、車両の走行路面状態等による小さな加速度の変化の繰り返しに慣性質量体83が反応する状況において、慣性質量体83が各センサーレバー162、163に接触して、当該各センサーレバー162、163が揺動しても、各突起部157、158が規制壁部97の内側面に当たることによって、車両加速度センサ61から発生するノイズの更なる低減化を図ることができる。
(C)また、例えば、上記車両加速度センサ61に替えて、図40に示す車両加速度センサ165をメカニズムカバー58のセンサー収容部59に収容するようにしてもよい。図40は車両加速度センサ165の慣性質量体83が静止している状態を示す中央断面図である。
図40に示すように、車両加速度センサ165を構成するセンサーレバー166は、上記センサーレバー85とほぼ同じ構成である。但し、延出部95の下端部には、当接レバー96が設けられていない。
また、車両加速度センサ165を構成するセンサーホルダ167は、上記センサーホルダ82とほぼ同じ構成である。但し、各支持壁部91、92の載置部81に対して幅方向外側の側縁部の間には、上端側に所定幅の上方規制壁部168が架設されている。また、この上方規制壁部168の下端縁部と規制壁部97の上端縁部とによって正面視矩形の開口部169が形成されている。尚、規制壁部97の高さを低くしてもよい。
また、この上方規制壁部168の厚さ寸法及び幅寸法は、各支持壁部91、92に軸支されたセンサーレバー166の延出部95の下端部が、開口部169内に進入して、当該上方規制壁部168の内側下端縁部に当接して、センサーレバー166の下方への回転範囲が規制されるように構成されている。また、カバー部98の下面側の碗状に窪む接触部98Aと慣性質量体83との相互間には所定距離の隙間102(例えば、距離約0.5mmの隙間である。)が形成されている。従って、この延出部95が当接部として機能する。
これにより、センサーホルダ167の上方規制壁部168は、各支持壁部91、92の上端側の側縁部の間に架設されて下方に開口部169を形成するため、センサーホルダ167に必要とされる寸法精度を低くすることが可能となると共に、開口部169を各軸部86、87の回転中心から離して形成することができる。従って、センサーレバー166の延出部95の下端部を各軸部86、87の回転中心から更に離れた位置で上方規制壁部168の内側下端縁部に当接させることができ、延出部95及び上方規制壁部168に必要とされる寸法精度を低くすることができると共に、高精度及び高強度でセンサーレバー166の回転範囲を規制することができる。
(D)また、例えば、上記車両加速度センサ61に替えて、図41に示す車両加速度センサ171をメカニズムカバー58のセンサー収容部59に収容するようにしてもよい。図41は車両加速度センサ171の慣性質量体83が静止している状態を示す中央断面図である。
図41に示すように、車両加速度センサ171を構成するセンサーレバー172は、上記センサーレバー85とほぼ同じ構成である。但し、延出部95の下端部には、当接レバー96が設けられていない。
また、センサーレバー172のカバー部98は、接触部98Aの延出部95に対して反対側の下端部から略水平に外側方向に延出された延出部173が設けられている。この延出部173は、延出部173の下面に対向する車両加速度センサ171を構成するセンサーホルダ175の側壁部176の外壁面よりも水平方向外側に突出しないように形成されている。
また、センサーホルダ175は、センサーレバー172の延出部173の下面に対向する側壁部176の上端面から上方に延出されて、慣性質量体83が接触部98Aに接触していないときに、当該延出部173の下面に当接する隙間規制壁部177が設けられている。従って、センサーレバー172の延出部173の下端面が、隙間規制壁部177の上端部に当接して、センサーレバー172の下方への回転範囲が規制されるように構成されている。また、カバー部98の下面側の碗状に窪む接触部98Aと、載置部81上で静止状態の慣性質量体83との相互間には所定距離の隙間102(例えば、距離約0.5mmの隙間である。)が形成されている。
これにより、センサーホルダ175の隙間規制壁部177は、側壁部176の上端面から上方へ延出されているため、隙間規制壁部177を各軸部86、87の回転中心から離して形成することができる。従って、センサーレバー172の延出部173の下端部を各軸部86、87の回転中心から更に離れた位置で隙間規制壁部177の上端部に当接させることができ、延出部173及び隙間規制壁部177に必要とされる寸法精度を低くすることができると共に、高精度及び高強度でセンサーレバー172の回転範囲を規制することができる。
(E)また、例えば、上記センサーホルダ82に替えて、図42に示すセンサーホルダ181を車両加速度センサ61に取り付けるようにしてもよい。図42はセンサーホルダ181の載置部182を示す部分拡大中央断面図である。
図42に示すように、センサーホルダ181は、上記センサーホルダ82とほぼ同じ構成である。但し、載置部81に替えて、載置部182が設けられている点で異なっている。
この載置部182は、上記載置部81とほぼ同じ構成であるが、半径方向外側の周縁部の全周に渡って、傾斜角が半径方向内側部分の傾斜角よりも大きい減速領域183が、平面視同心円状に形成されている。これにより、慣性質量体83が載置部182の周縁部まで移動したときの速度を効果的に減速させることができ、慣性質量体83のセンサーホルダ181からの不用意な離脱を防止して、車両加速度センサ61の組立作業の更なる容易化を図ることができる。