JP5792754B2 - ぬれ時間推定装置および方法 - Google Patents
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Description
このため、気温および相対湿度の年平均値から確率値を導いて、これを用いて簡易にTOWの近似値を算出する方法が提案されており(例えば、非特許文献1など参照)、多くの既往研究・文献ではこの方法が使用されている。本発明では、この方法により算出されたぬれ時間を規定ぬれ時間TOWaという。
また、式(4)において、β(Rha/100;4.67;1.78)は、年平均相対湿度Rhaに関する、係数a=4.67、係数b=1.78、Rhaの下限値=0、Rhaの上限値=100のベータ分布における累積ベータ確率分布である。
これは、規定TOWaの算出に用いた気象観測データの気温・相対湿度分布と、日本における気象観測データの気温・相対湿度分布とが、乖離していることが原因であると見られる。
このため、ぬれ時間を推定する対象となる推定対象地域で得た気象観測データが用いられるだけでなく、気温・相対湿度の確率分布として、複数の異なる確率分布が候補として用いられるため、より多くの推定対象地域に対応した確率分布を選択することができる。
したがって、ISO9223に規定されているものとは異なる気温・相対湿度の確率分布を持つ地域であっても、時別値を用いて算出した基準ぬれ時間に対して誤差の小さい推定ぬれ時間を、気温および相対湿度の年平均値から算出することが可能となる。
[ぬれ時間推定装置]
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかるぬれ時間推定装置10について説明する。図1は、ぬれ時間推定装置の構成を示すブロック図である。
例えば、気温Tの確率分布DTを正規分布DNで定義し、相対湿度Rhの確率分布DRhをベータ分布Dβで定義した場合、推定ぬれ時間TOWeは、次の式(5)で表される。
また、B(a,b)は、係数a(a>0),係数b(b>0),下限値Kmin=0、上限値Kmax=100のベータ分布のうち、下限値Kminから上限値Kmaxまでの累積確率を示しており、次の式(6)で表される。
本発明では、より多くの推定対象地域に対応するため、気温および相対湿度ごとに複数の異なる確率分布を用意して、これら気温および相対湿度の確率分布の組合せごとに最適確率分布パラメータを推定する。
通信I/F部11は、データ通信回路からなり、通信回線を介して外部装置とデータ通信を行うことにより、各種データを送受信する機能を有している。
操作入力部12は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータ操作を検出して演算処理部15へ出力する機能を有している。
画面表示部13は、LCDなどの画面表示装置からなり、演算処理部15から出力された操作メニューや演算結果などの各種データを画面表示する機能を有している。
プログラム14Pは、演算処理部15のCPUで実行されることにより、ぬれ時間の推定処理を行う各種処理部を実現するプログラムであり、通信I/F部11を介して接続された外部装置や記録媒体から、予め記憶部14に格納されている。
気象観測データ14Aは、ぬれ時間の推定対象となる推定対象地域で観測された気象データであり、地域別および観測年月日ごとに、気温および相対湿度の時別値が登録されている。図2は、気象観測データの構成例である。ここでは、東京の2011年4月1日における気温および相対湿度の時別値が示されている。
演算処理部15で実現される主な処理部として、データ取得部15A、基準ぬれ時間算出部15B、規定ぬれ時間算出部15C、確率分布パラメータ推定部15D、最適確率分部選択部15E、および推定ぬれ時間算出部15Fがある。
次に、図3および図4を参照して、本実施の形態にかかるぬれ時間推定装置の動作について説明する。図3は、ぬれ時間推定処理を示すフローチャートである。図4は、ぬれ時間推定処理を示すフロー図である。
演算処理部15は、操作入力部12で検出されたユーザによる推定開始指示操作に応じて、図3のぬれ時間推定処理を開始する。なお、ぬれ時間推定処理の開始に先立って、記憶部14には、気象観測データ14Aおよび算出定義データ14Bが、予め記憶部14に格納されているものとする。
本発明では、確率分布パラメータ推定部15Dにおいて、観測年次ごとに成立する各推定ぬれ時間算出式について、前述した回帰分析を行うことにより、観測年次ごとの基準ぬれ時間TOWと、各組合せGkの気温確率分布DTiおよび相対湿度確率分布DRhjで求めた観測年次ごとの仮定ぬれ時間TOWakとの誤差が、最小となる確率分布パラメータを最適確率分布パラメータとして得ている。回帰分析の具体的手法としては、例えば非線形最小二乗法などの公知の手法を用いればよい。
また、推定ぬれ時間算出部15Fは、最適組合せGsにかかる各観測年次の仮定ぬれ時間TOWskと各観測年次の基準ぬれ時間TOWとの平均誤差ΔTOWsを算出する機能と、各観測年次の規定ぬれ時間TOWaと各観測年次の基準ぬれ時間TOWとの平均誤差ΔTOWaを算出する(ステップ107)。
この際、推定ぬれ時間算出部15Fは、得られた推定ぬれ時間TOWeを、画面表示部13で画面表示し、記憶部14に保存し、あるいは通信I/F部11を介して外部装置へ通知する。
図5〜図7においては、いずれの場合にも、TOWaに比べてTOWとの誤差が小さいTOWeが得られていることがわかる。
相関値については、Ra2とRe2についてそれほど大差がないものの、平均誤差については、ΔTOWaの30%〜50%程度までΔTOWeが削減されており、精度の高いぬれ時間が推定されていることがわかる。
このように、本実施の形態は、確率分布パラメータ推定部15Dで、気温の確率分布を示す複数の異なる気温確率分布DTiと相対湿度の確率分布を示す複数の異なる相対湿度確率分布DRhjの組合せGkごとに、基準ぬれ時間TOWを従属変数とし、各観測年次における気温および相対湿度の年平均値Ta,Rhaと当該組合せGkの気温確率分布DTiおよび相対湿度確率分布DRhjを規定する確率分布パラメータとを独立変数として回帰分析を行うことにより、観測年次ごとの基準ぬれ時間TOWと、当該組合せの気温確率分布DTiおよび相対湿度確率分布DRhjで求めた観測年次ごとの仮定ぬれ時間TOWakとの誤差が、最小となる確率分布パラメータからなる最適確率分布パラメータを、これら組合せGkごとに推定するようにしたものである。
このため、ぬれ時間を推定する対象となる推定対象地域で得た気象観測データが用いられるだけでなく、気温・相対湿度の確率分布として、複数の異なる確率分布が候補として用いられるため、より多くの推定対象地域に対応した確率分布を選択することができる。
なお、本実施の形態では、図4では、このような平均誤差ΔTOWsと平均誤差ΔTOWaとの比較に応じた推定用確率分布Deを変更する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、このような推定用確率分布Deの変更処理を省略して、例えば、ステップ105の後、ステップ109へ移行するようにしてもよい。
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
Claims (4)
- 気温>0℃および相対湿度>80%の確率分布に基づいて、入力年次における気温および相対湿度の年平均値から、当該入力年次における推定ぬれ時間を算出するぬれ時間推定装置であって、
各観測年次に推定対象地域で観測された気温および相対湿度の時別値を含む気象観測データから、これら観測年次ごとに当該時別値を用いた基準ぬれ時間を算出する基準ぬれ時間算出部と、
気温>0℃の確率分布を示す複数の異なる気温確率分布と相対湿度>80%の確率分布を示す複数の異なる相対湿度確率分布の組合せごとに、前記基準ぬれ時間を従属変数とし、前記各観測年次における気温および相対湿度の年平均値と当該組合せの気温確率分布および相対湿度確率分布を規定する確率分布パラメータとを独立変数として回帰分析を行うことにより、前記観測年次ごとの前記基準ぬれ時間と、当該組合せの気温確率分布および相対湿度確率分布で求めた前記観測年次ごとの仮定ぬれ時間との誤差が、最小となる確率分布パラメータからなる最適確率分布パラメータを、これら組合せごとに推定する確率分布パラメータ推定部と、
これら組合せのうち、前記誤差が最小となった最適組合せの最適確率分布パラメータで規定される気温および相対湿度の確率分布を、最適確率分布として選択する最適確率分布選択部と、
前記最適確率分布に基づいて、前記入力年次における気温および相対湿度の年平均値から、当該入力年次における推定ぬれ時間を算出する推定ぬれ時間算出部と
を備えることを特徴とするぬれ時間推定装置。 - 請求項1に記載のぬれ時間推定装置において、
予め定めた規定確率分布に基づいて、前記各観測年次における気温および相対湿度の年平均値から、前記観測年次ごとに規定ぬれ時間を算出する規定ぬれ時間算出部をさらに備え、
前記推定ぬれ時間算出部は、前記入力年次における推定ぬれ時間を算出する際、前記最適組合せにかかる前記各観測年次の仮定ぬれ時間と前記各観測年次の基準ぬれ時間との平均誤差が、前記各観測年次の規定ぬれ時間と前記各観測年次の基準ぬれ時間との平均誤差より大きい場合、前記最適確率分布に代えて前記規定確率分布を用いることにより、前記入力年次における気温および相対湿度の年平均値から、当該入力年次における推定ぬれ時間を算出する
ことを特徴とするぬれ時間推定装置。 - 気温>0℃および相対湿度>80%の確率分布に基づいて、入力年次における気温および相対湿度の年平均値から、当該入力年次における推定ぬれ時間を算出するぬれ時間推定装置で用いられるぬれ時間推定方法であって、
基準ぬれ時間算出部が、各観測年次に推定対象地域で観測された気温および相対湿度の時別値を含む気象観測データから、これら観測年次ごとに当該時別値を用いた基準ぬれ時間を算出する基準ぬれ時間算出ステップと、
確率分布パラメータ推定部が、気温>0℃の確率分布を示す複数の異なる気温確率分布と相対湿度>80%の確率分布を示す複数の異なる相対湿度確率分布の組合せごとに、前記基準ぬれ時間を従属変数とし、前記各観測年次における気温および相対湿度の年平均値と当該組合せの気温確率分布および相対湿度確率分布を規定する確率分布パラメータとを独立変数として回帰分析を行うことにより、前記観測年次ごとの前記基準ぬれ時間と、当該組合せの気温確率分布および相対湿度確率分布で求めた前記観測年次ごとの仮定ぬれ時間との誤差が、最小となる確率分布パラメータからなる最適確率分布パラメータを、これら組合せごとに推定する確率分布パラメータ推定ステップと、
最適確率分布選択部が、これら組合せのうち、前記誤差が最小となった最適組合せの最適確率分布パラメータで規定される気温および相対湿度の確率分布を、最適確率分布として選択する最適確率分布選択ステップと、
推定ぬれ時間算出部が、前記最適確率分布に基づいて、前記入力年次における気温および相対湿度の年平均値から、当該入力年次における推定ぬれ時間を算出する推定ぬれ時間算出ステップと
を備えることを特徴とするぬれ時間推定方法。 - 請求項3に記載のぬれ時間推定方法において、
規定ぬれ時間算出部が、予め定めた規定確率分布に基づいて、前記各観測年次における気温および相対湿度の年平均値から、前記観測年次ごとに規定ぬれ時間を算出する規定ぬれ時間算出ステップをさらに備え、
前記推定ぬれ時間算出ステップは、前記入力年次における推定ぬれ時間を算出する際、前記最適組合せにかかる前記各観測年次の仮定ぬれ時間と前記各観測年次の基準ぬれ時間との平均誤差が、前記各観測年次の規定ぬれ時間と前記各観測年次の基準ぬれ時間との平均誤差より大きい場合、前記最適確率分布に代えて前記規定確率分布を用いることにより、前記入力年次における気温および相対湿度の年平均値から、当該入力年次における推定ぬれ時間を算出する
ことを特徴とするぬれ時間推定方法。
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