図1は、本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置の一例の構成を示し、図2は、図1の放射線画像検出装置のセンサパネルの構成を示す。
放射線画像検出装置1は、放射線露光によって蛍光を発するシンチレータ(蛍光体)18を有する放射線画像変換パネル2と、放射線画像変換パネル2のシンチレータ18の蛍光を光電変換する光電変換素子26の2次元配列を有するセンサパネル3と、を備えている。
放射線画像変換パネル2は、支持体11を有し、シンチレータ18は支持体11上に形成されている。放射線画像変換パネル2は、センサパネル3とは別に構成され、支持体11とは反対側のシンチレータ18の面をセンサパネル3の光電変換素子26の2次元配列に対向させ、シンチレータ18と光電変換素子26とを光学的に結合させる樹脂層を介してセンサパネル3に貼り合わされている。
本例において、放射線は、センサパネル3側から照射され、センサパネル3を透過してシンチレータ18に入射する。放射線が入射したシンチレータ18において蛍光が発生し、ここで発生した蛍光がセンサパネル3の光電変換素子26によって光電変換される。このように構成された放射線画像検出装置1においては、蛍光を多く発生させるシンチレータ18の放射線入射側が光電変換素子26に隣設されるため、感度が向上する。
センサパネル3は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)からなるスイッチ素子28が絶縁性基板12に形成されたTFT基板16を有し、光電変換素子26の2次元配列はTFT基板16上に形成されている。そして、TFT基板16上には、これらの光電変換素子26を覆い、TFT基板16の表面を平坦化するための平坦化層23が形成されている。そして、放射線画像変換パネル2とセンサパネル3とを貼り合わせるための接着層25が平坦化層23上に形成されている。平坦化層23及び接着層25が上記の樹脂層を形成する。なお、樹脂層として、透明な液体又はゲルからなるマッチングオイルなども用いることができる。樹脂層の厚みは、感度、及び画像の鮮鋭度の観点から、50μm以下であることが好ましく、5μm〜30μmであることがより好ましい。
各光電変換素子26は、シンチレータ18の蛍光が入射されることにより電荷を生成する光導電層20と、この光導電層20の表裏面に設けられた一対の電極とで構成されている。光導電層20のシンチレータ層18側の面に設けられた電極22は、光導電層20にバイアス電圧を印加するためのバイアス電極であり、反対側の面に設けられた電極24は、光導電層20で生成された電荷を収集する電荷収集電極である。
スイッチ素子28は、光電変換素子26の2次元配列に対応してTFT基板16に2次元に配列されており、各光電変換素子26の電荷収集電極24は、TFT基板16の対応するスイッチ素子28に接続されている。各電荷収集電極24に収集された電荷は、スイッチ素子28を介して読み出される。
TFT基板16には、一方向(行方向)に延設され各スイッチ素子28をオン/オフさせるための複数本のゲート線30と、ゲート線30と直交する方向(列方向)に延設されオン状態のスイッチ素子28を介して電荷を読み出すための複数の信号線(データ線)32が設けられている。そして、TFT基板16の周縁部には、個々のゲート線30及び個々の信号線32が接続された接続端子38が配置されている。この接続端子38は、図2に示すように、接続回路39を介して回路基板(図示せず)に接続される。この回路基板は、外部回路としてのゲート線ドライバ、及び信号処理部を有する。
各スイッチ素子28は、ゲート線ドライバからゲート線30を介して供給される信号により行単位で順にオン状態とされる。そして、オン状態とされたスイッチ素子28によって読み出された電荷は、電荷信号として信号線32を伝送されて信号処理部に入力される。これにより、電荷が行単位で順に読み出され、上記の信号処理部において電気信号に変換され、デジタル画像データが生成される。
以下、放射線画像変換パネル2及びそのシンチレータ18について詳細に説明する。
図3は、放射線画像変換パネル2の構成を模式的に示す。
放射線画像変換パネル2は、支持体11と、支持体11上に形成されたシンチレータ18とを有している。
支持体11としては、カーボン板、CFRP(carbon fiber reinforced plastic)、ガラス板、石英基板、サファイア基板、鉄、スズ、クロム、アルミニウムなどから選択される金属シート、等を用いることができるが、その上にシンチレータ18を形成することができる限りにおいて上記のものに限定されない。
シンチレータ18を形成する蛍光物質には、例えば、CsI:Tl、GOS(Gd2O2S:Tb)、NaI:Tl(タリウム賦活ヨウ化ナトリウム)、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、等を用いることができ、なかでも、発光スペクトルがa−Siフォトダイオードの分光感度の極大値(550nm付近)と適合する点で、CsI:Tlが好ましい。
シンチレータ18は、支持体11とは反対側に設けられた柱状部34と、支持体11側に設けられた非柱状部36とで構成されている。柱状部34及び非柱状部36は、支持体11上で層状に重なって連続的に形成され、詳細は後述するが、例えば、気相堆積法により形成することができる。なお、柱状部34及び非柱状部36は同じ蛍光物質により形成されるが、Tl等の賦活剤の添加量は異なっていてもよい。
柱状部34は、上記の蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成されている。なお、近隣の複数の柱状結晶が結合して一つの柱状結晶を形成する場合もある。隣り合う柱状結晶の間には空隙が置かれ、各柱状結晶は互いに独立して存在する。
非柱状部36は、蛍光物質の結晶が比較的小径の略球状に成長してなる球状結晶の群によって形成されている。球状結晶の群によって形成される非柱状部36においては、結晶同士が不規則に結合したり重なり合ったりするため、結晶間に明確な空隙は生じ難い。なお、非柱状部36には、上記の蛍光物質の非晶質体が含まれる場合もある。
放射線画像変換パネル2は、支持体11とは反対側のシンチレータ18の面、即ち柱状部34の各柱状結晶の先端をセンサパネル3の光電変換素子26の2次元配列に対向させ、センサパネル3に貼り合わされている。従って、シンチレータ18の放射線入射側には、柱状結晶の群からなる柱状部34が配置される。
柱状部34の各柱状結晶に発生した蛍光は、柱状結晶とその周囲の間隙(空気)との屈折率差に起因して柱状結晶内で全反射を繰り返すことで拡散を抑制され、その柱状結晶が対向する光電変換素子26に導光される。それにより、画像の鮮鋭度が向上する。
そして、柱状部34の各柱状結晶に発生した蛍光のうち、センサパネル3とは反対側、即ち支持体11側に向かう蛍光については、非柱状部36においてセンサパネル3側に向けて反射される。それにより、蛍光の利用効率が高まり、感度が向上する。
また、柱状部34の各柱状結晶は、その成長初期においては比較的細く、結晶の成長が進むにつれて太くなる。柱状部34の非柱状部36との接合部分34Aにおいては、細径の柱状結晶が林立しており、比較的大きい空隙が結晶の成長方向に多数延在しており、空隙率が大きい。一方の非柱状部36は、小径の球状結晶若しくはその凝集体によって形成され、個々の空隙は比較的小さく、柱状部34に比べて緻密であって空隙率は小さい。支持体11との柱状部34との間に非柱状部36が介在することにより、支持体11とシンチレータ18との密着性が向上する。それにより、支持体11とセンサパネル3のTFT基板16との線膨張差に起因する反りや衝撃などによって作用する応力に対する耐性が向上し、シンチレータ18が支持体11から剥離することが防止される。
図4は、シンチレータ18の図3におけるIV‐IV断面を示す電子顕微鏡写真である。
図4に明らかなように、柱状部34においては、柱状結晶が結晶の成長方向に対しほぼ均一な断面径を示し、かつ、柱状結晶の周囲に間隙を有し、柱状結晶が互いに独立して存在することがわかる。柱状結晶の結晶径は、光ガイド効果、機械的強度、そして画素欠陥防止の観点から、2μm以上8μm以下であることが好ましい。結晶径が小さすぎると、各柱状結晶の機械的強度が不足し、衝撃等により損傷する懸念があり、結晶径が大きすぎると、光電変換素子26毎の柱状結晶の数が少なくなり、結晶にクラックが生じた際にその素子が欠陥となる確率が高くなる懸念がある。
ここで、結晶径は、柱状結晶の成長方向上面から観察した結晶の最大径を示す。具体的な測定方法としては、柱状結晶の膜厚方向に対して垂直な面からSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することで柱径(結晶径)を測定する。1回の撮影でシンチレータを表面から見た時に柱状結晶が100本から200本観察できる倍率(約2000倍程度)で観察し、1撮影に含まれる結晶全てに対し、柱状結晶の柱径の最大値を測定して平均した値を採用している。柱径(μm)は小数点以下2桁まで読み、平均値をJIS Z 8401に従い小数点以下2桁目を丸めた値とした。
図5は、シンチレータ18の図3におけるV‐V断面を示す電子顕微鏡写真である。
図5に明らかなように、非柱状部36においては、結晶同士が不規則に結合したり重なり合ったりして結晶間の明確な空隙は、柱状部34ほどは認めらない。非柱状部36を形成する結晶の径は、密着性及び光反射の観点から、0.5μm以上7.0μm以下であることが好ましい。結晶径が小さすぎると、空隙が0に近づき、光反射の機能が低下する懸念があり、結晶径が大きすぎると、平坦性が低下し、支持体11との密着性が低下する懸念がある。また、非柱状部36を形成する結晶の形状は、光反射の観点から、略球状であることが好ましい。
ここで、結晶同士が結合している場合の結晶径の測定は、隣接する結晶間に生じる窪み(凹)同士を結んだ線を結晶間の境界と見なし、結合した結晶同士を最小多角形となるように分離して柱径及び柱径に対応する結晶径を測定し、柱状部34における結晶径と同様にして平均値をとり、その値を採用した。
柱状部34及び非柱状部36の厚みについて、柱状部34の厚みをt1とし、非柱状部36の厚みをt2としたとき、(t2/t1)が0.01以上0.25以下であることが好ましく、0.02以上0.1以下であることがより好ましい。(t2/t1)が上記範囲にあることで、蛍光効率、光拡散防止及び光反射が好適な範囲となり、感度及び画像の鮮鋭度が向上する。
また、柱状部34の厚みt1は、放射線のエネルギーにもよるが、柱状部34における十分な放射線吸収及び画像の鮮鋭度の観点から、200μm以上700μm以下であることが好ましい。柱状部34の厚みが小さすぎると、放射線を十分に吸収することができず、感度が低下する虞があり、厚みが大きすぎると光拡散が生じ、柱状結晶の光ガイド効果によっても画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
非柱状部36の厚みt2は、支持体11との密着性及び光反射の観点から、5μm以上125μm以下であることが好ましい。非柱状部36の厚みが小さすぎると、支持体11との十分な密着性が得られない虞があり、また厚みが大きすぎると、非柱状部36における蛍光の寄与、及び非柱状部36での光反射による拡散が増大し、画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
更に、本放射線画像変換パネル2においては、非柱状部36の厚み分布が不均一とされている。柱状部34及び非柱状部36は、同じ蛍光物質の結晶によって連続して形成されることから、柱状部34と非柱状部36との接合は、柱状部34と支持体11等の異種材料との接合に比較して強い。しかし、柱状部34の各柱状結晶は、非柱状部36の比較的小さな球状結晶を核としてそこを起点に成長し、成長の初期においては比較的細く、結晶の成長が進むにつれて太くなる。柱状部34の非柱状部36との接合部分34Aにおいては、細径の柱状結晶が林立しており、比較的大きい空隙が結晶成長方向に延びている。更に、各柱状結晶の成長が進んで太くなり、近隣の複数の柱状結晶が接触したとしても、それらが結合(融着)しているとは限らない。従って、柱状部34の接合部分34Aにおいて、衝撃などによって作用する応力に対する耐性が不足する懸念がある。そこで、非柱状部36の厚み分布を不均一とすることにより、接合部分34Aにおける応力耐性を補う。
非柱状部36の厚み分布が不均一であることにより、接合部分34Aは面方向に不揃いとなる。厚みが小さい非柱状分36の領域に成長する各柱状結晶は、その接合部分34Aを周囲の緻密な非柱状部36によって囲まれる。また、厚みが大きい非柱状部36の領域に成長する各柱状結晶の接合部分34Aは、厚みが小さい非柱状部36の領域において成長が進み比較的大径となった周囲の柱状結晶によって囲まれる。それにより、せん断力等の応力に対する耐性を高め、強度を向上させることができる。
非柱状部36の各部の厚みは、支持体11との密着性及び光反射の観点から、上記の5μm以上125μm以下の範囲で分布していることが好ましい。なお、本放射線画像変換パネル2においては、非柱状部36は、全体にわたって一様に不均一な厚み分布を有しているが、複数の領域に区分した場合に、各領域における不均一性(最大厚と最小厚との差、ないし厚み分布の偏差)が異なっていてもよい。
次に、上述したシンチレータ18の製造方法の一例について説明する。
シンチレータ18は、気相堆積法によって支持体11の表面に直接形成されることが好ましい。気相堆積法によれば、非柱状部36及び柱状部34をこの順に連続して一体に形成することができる。以下では、蛍光物質としてCsI:Tlを用いた場合を例に説明する。
気相堆積法は常法により行うことができる。真空度0.01〜10Paの環境下、CsI:Tlを抵抗加熱式のるつぼに通電するなどの手段で加熱して気化させ、支持体11の温度を室温(20℃)〜300℃としてCsI:Tlを支持体上に堆積させればよい。
気相堆積法により支持体11上にCsI:Tlの結晶相を形成する際、当初は直径の比較的小さな球状結晶若しくはその凝集体が形成される。そして、真空度及び支持体11の温度の少なくとも一方の条件を変更することで、非柱状部36を形成した後に連続して柱状部34を形成することができる。即ち、球状結晶を所定の厚みに堆積させた後、真空度を上げる、及び/又は支持体11の温度を高くすることで、柱状結晶を成長させることができる。
そして、非柱状部36を形成する工程において、真空度を変化させながら堆積させることで、非柱状部36に不均一な厚み分布を付与する。真空度を変化させると、CsI:Tlの融液状態が変化し、融液状態が安定するまでに時間を要するが、融液状態が不安定の間に堆積を継続することで、非柱状部36に不均一な厚み分布を付与することができる。
以上によりシンチレータ18を効率よく、容易に製造することができる。また、この製造方法によれば、シンチレータ18の製膜における真空度や支持体温度を制御することで、簡易に種々の仕様のシンチレータを設計通りに製造することができるという利点をも有する。
以上、説明したように、放射線画像変換パネル2及びこれを備える放射線画像検出装置1によれば、シンチレータ18の非柱状部36の厚みを不均一としており、柱状部34の非柱状部36との接合部分34Aを面方向に不揃いとしている。それにより、せん断力等の応力に対する耐性を高め、放射線画像変換パネル2の強度を向上させることができる。
なお、上述した放射線画像検出装置1においては、センサパネル3側から放射線が入射されるものとして説明したが、放射線画像変換パネル2側から放射線が入射される構成を採ることもできる。
また、上述した放射線画像検出装置1においては、平坦化層23及び接着層25を介して放射線画像変換パネル2とセンサパネル3とを重ね合わせているが、放射線画像変換パネル2とセンサパネル3との重ね合わせ方法には特に制限はなく、放射線画像変換パネル2のシンチレータ18とセンサパネル3の光電変換素子26の配列とが光学的に結合されればよく、シンチレータ18と光電変換素子26の配列とを直接密着させる方法を採ることもできる。この場合に、必ずしも両者の表面が完全に密着する必要はなく、シンチレータ18の表面に凹凸が存在する場合でも、両者を重ね合せて配置することで光学的に結合していればよく、シンチレータ18において発生した蛍光が光電変換素子26の配列に入射すれば本発明の効果を奏することになる。
図6は、前述した放射線画像変換パネル2の変形例を示す。
本変形例において、非柱状部36は、全体にわたって不均一な厚み分布を有するが、その中央領域36Aにおける最大厚と最小厚との差が、周縁領域36Bにおける最大厚と最小厚との差よりも小さく設定されている。換言すれば、中央領域36Aにおける厚み分布の偏差が、周縁領域36Bにおける厚み分布の偏差より小さく設定されている。
シンチレータ18は、光電変換素子26の2次元配列を覆うように、光電変換素子26の2次元配列と同じか、それより大きなサイズに形成される。一方、光電変換素子26の2次元配列において周縁領域の素子にはノイズが重畳しやすいといった理由から、一般には中央領域(有効撮像領域)の素子が放射線画像の検出に用いられる。そのため、主として、上記の有効撮像領域に重なるシンチレータ18の中央領域が放射線画像検出に寄与し、有効撮像領域を除く周縁領域の寄与は相対的に低い。
シンチレータ18の非柱状部36は、上述のとおり光反射の機能を有しており、非柱状部36における厚みの不均一は、光反射の不均一を誘起する場合がある。そこで、上記の有効撮像領域に重なる非柱状部36の中央領域36Aにおける最大厚と最小厚との差を小さくすることにより、その領域における光反射の不均一を低減し、画像に与える影響を低減することができる。
一方、非柱状部36の周縁領域36Bは、上述のとおり放射線画像検出に対する寄与が相対的に低く、最大厚と最小厚との差を大きく設定しても特に支障ない。そして、シンチレータ18の周縁領域は、反りや衝撃による応力の影響を受け易い。そこで、非柱状部36の周縁領域36Bにおける最大厚と最小厚との差を大きく設定することによって、柱状部34と非柱状部36との接合部に作用する応力に対する耐性を確保することができる。
なお、非柱状部36の中央領域36Aにおける厚み分布を均一としてもよく、それによれば、中央領域34Aにおける光反射を均一なものとして、検出画像に与える影響をより低減することができる。なお、均一な厚み分布とは、最大厚と最小厚との差が5μm未満であることを言うものとする。
非柱状部36の中央領域36Aにおける厚み分布の偏差が小さく、また厚み分布が均一なシンチレータ18は、例えば、非柱状部36を形成する工程において、真空度を変化させながらCsI:Tlの結晶を堆積させ、更に、真空度を変化させる期間の少なくとも一部において、CsI:Tlの融液を収容するるつぼの開口中央部をシャッターで覆うことによって製造することができる。上述の通り、真空度を変化させることによってCsI:Tlの融液状態が変化し、融液状態が不安定の間に堆積を継続することで、不均一な厚み分布を付与することができ、その際に、非柱状部36の中央領域36Aに対応するるつぼの開口中央部をシャッターで覆っておくことにより、中央領域36Aには結晶が堆積され難くなり、結果、中央領域36Aにおける厚み分布の偏差が小さくなり、又は厚み分布が均一となる。
図7は、本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置の他の例を示す図である。なお、前述した放射線画像検出装置1と共通する要素には、同一の符号を付すことにより、説明を省略ないし簡略する。
図7に示す放射線画像検出装置101において、放射線画像変換パネル102のシンチレータ118は、光電変換素子26の2次元配列が設けられたセンサパネル3の表面上に直接形成されている。即ち、シンチレータ118の支持体としてセンサパネル3が用いられている。
シンチレータ118は、柱状部134と非柱状部136とで構成されており、センサパネル3の表面上に、非柱状部136、柱状部134の順に層状に重なって連続的に形成されている。センサパネル3と柱状部134との間に非柱状部136が介在することによって、センサパネル3とシンチレータ118との密着性が向上し、シンチレータ118がセンサパネル3から剥離することが防止される。そして、非柱状部136は不均一な厚み分布を有しており、柱状部134と非柱状部136との接合部に作用するせん断力等の応力に対する耐性が高まり、強度が向上する。柱状部134及び非柱状部136は、上述した気相堆積法によりセンサパネル3の表面上に形成することができる。
なお、本放射線画像検出装置101においては、シンチレータ118の柱状部134とセンサパネル3の光電変換素子26の2次元配列との間にシンチレータ118の非柱状部136が介在することとなる。この場合に、非柱状部136での光反射は、柱状部134の各柱状結晶に生じた蛍光が対応する光電変換素子26に入射することの妨げる懸念がある。よって、非柱状部136の厚みは、センサパネル3との密着性が確保される範囲で小さい程好ましい。
上述の各放射線画像検出装置は、放射線画像を高感度、高精細に検出しうるため、低放射線照射量で鮮鋭な画像を検出することを要求される、マンモグラフィなどの医療診断用のX線撮影装置をはじめ、様々な装置に組み込んで使用することができる。例えば、工業用のX線撮影装置として非破壊検査に用いたり、或いは、電磁波以外の粒子線(α線、β線、γ線)の検出装置として用いたりすることができ、その応用範囲は広い。
以下、センサパネル3を構成する各要素に用いることのできる材料について説明する。
[光電変換素子]
上述した光電変換素子26の光導電層20(図1参照)としては、例えばアモルファスシリコン等の無機半導体材料が用いられることが多いが、例えば特開2009−32854号公報に記載された有機光電変換(OPC;Organic photoelectric conversion)材料も用いることができる。このOPC材料により形成された膜(以下、OPC膜という)を光導電層20として使用できる。OPC膜は、有機光電変換材料を含み、蛍光体層から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。このように有機光電変換材料を含むOPC膜であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、蛍光体層による発光以外の電磁波がOPC膜に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線がOPC膜で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
OPC膜を構成する有機光電変換材料は、蛍光体層で発光した光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、蛍光体層の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長と蛍光体層の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければ蛍光体層から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、蛍光体層の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えば、アリーリデン系有機化合物、キナクリドン系有機化合物、及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、蛍光体層の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、OPC膜で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
バイアス電極22及び電荷収集電極24の間に設けられる有機層の少なくとも一部をOPC膜によって構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び層間接触改良部位等の積み重ね若しくは混合により形成することができる。
上記有機層は、有機p型化合物又は有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これらに限らず、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いることができる。
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これらに限らず、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いることができる。
p型有機色素又はn型有機色素としては、公知のものを用いることができるが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)等が挙げられる。
1対の電極間に、p型半導体層とn型半導体層とを有し、p型半導体とn型半導体の少なくともいずれかが有機半導体であり、かつ、それらの半導体層の間に、p型半導体及びn型半導体を含むバルクヘテロ接合構造層を中間層として有する光電変換膜(感光層)を好適に用いることができる。このように、光電変換膜において、バルクへテロ接合構造層を含ませることにより有機層のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換効率を向上させることができる。なお、上記バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266号公報において詳細に説明されている。
光電変換膜の厚みは、蛍光体層からの光を吸収する点では膜厚は大きいほど好ましいが、電荷分離に寄与しない割合を考慮すると、30nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。
上述したOPC膜に関するその他の構成は、例えば、特開2009−32854号公報の記載が参考となる。
[スイッチ素子]
スイッチ素子28の活性層としては、例えばアモルファスシリコン等の無機半導体材料が使われることが多いが、例えば特開2009−212389号公報に記載されたように、有機材料を使用することができる。有機TFTはいかなるタイプの構造でもよいが、最も好ましいのは電界効果型トランジスタ(FET)構造である。このFET構造は、絶縁性基板上面の一部にゲート電極を設け、更に電極を覆い、かつ電極以外の部分で基板と接するように絶縁体層を設けている。更に絶縁体層の上面に半導体活性層を設け、その上面の一部に透明ソース電極と透明ドレイン電極とを隔離して配置している。なお、この構成はトップコンタクト型素子と呼ばれるが、ソース電極とドレイン電極とが半導体活性層の下部にあるボトムコンタクト型素子も好ましく用いることができる。また、キャリアが有機半導体膜の膜厚方向に流れる縦型トランジスタ構造であってもよい。
(活性層)
ここでいう有機半導体材料とは、半導体の特性を示す有機材料のことであり、無機材料からなる半導体と同様に、正孔(ホール)をキャリアとして伝導するp型有機半導体材料(あるいは単にp型材料、正孔輸送材料とも言う。)と、電子をキャリアとして伝導するn型有機半導体材料(あるいは単にn型材料、電子輸送材料とも言う。)がある。有機半導体材料は一般にp型材料の方が良好な特性を示すものが多く、また、一般に大気下でのトランジスタ動作安定性もp型トランジスタの方が優れているため、ここでは、p型有機半導体材料について説明する。
有機薄膜トランジスタの特性の一つに、有機半導体層中のキャリアの動きやすさを示すキャリア移動度(単に移動度とも言う)μがある。用途によっても異なるが、一般に移動度は高い方がよく、1.0×10-7cm2/Vs以上であることが好ましく、1.0×10-6cm2/Vs以上であることがより好ましく、1.0×10-5cm2/Vs以上であることが更に好ましい。移動度は電界効果トランジスタ(FET)素子を作製したときの特性や飛行時間計測(TOF)法により求めることができる。
上記p型有機半導体材料は、低分子材料でも高分子材料でも良いが、好ましくは低分子材料である。低分子材料は、昇華精製や再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの様々な精製法が適用できるため高純度化が容易であること、分子構造が定まっているため秩序の高い結晶構造を取りやすいこと、などの理由から高い特性を示すものが多い。低分子材料の分子量は、好ましくは100以上5000以下、より好ましくは150以上3000以下、更に好ましくは200以上2000以下である。
このようなp型有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物又はナフタロシアニン化合物を例示することができ、具体例を以下に示す。なお、Mは金属原子、Buはブチル基、Prはプロピル基、Etはエチル基、Phはフェニル基をそれぞれ表す。
(活性層以外のスイッチ素子の構成要素)
ゲート電極、ソース電極、又はドレイン電極を構成する材料としては、必要な導電性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、ITO(インジウムドープ酸化スズ)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、SnO2、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO2、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)などの透明導電性酸化物、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸)などの透明導電性ポリマー、カーボンナノチューブなどの炭素材料が挙げられる。これらの電極材料は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、溶液塗布法等の方法で成膜することができる。
絶縁層に用いられる材料としては、必要な絶縁効果を有するものであれば特に制限はないが、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナなどの無機材料、ポリエステル(PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)など)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリパラキシリレン樹脂、ノボラック樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)、PS(ポリスチレン)、などの有機材料が挙げられる。これらの絶縁膜材料は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、溶液塗布法等の方法で成膜することができる。
上述した有機TFTに関するその他の構成は、例えば、特開2009−212389号公報の記載が参考となる。
また、スイッチ素子28の活性層には、例えば特開2010−186860号公報に記載された非晶質酸化物も使用することができる。ここで、特開2010−186860号に記載された電界効果型トランジスタが有する非晶質酸化物含有の活性層について示す。この活性層は、電子又はホールの移動する電界効果型トランジスタのチャネル層として機能する。
活性層は、非晶質酸化物半導体を含んだ構成とされている。この非晶質酸化物半導体は、低温で成膜可能であるために、可撓性のある基板上に好適に形成される。活性層に用いられる非晶質酸化物半導体としては、好ましくはIn、Sn、Zn、又はCdよりなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む非晶質酸化物であり、より好ましくは、In、Sn、Znよりなる群より選ばれる少なくとも1種を含む非晶質酸化物、更に好ましくは、In、Znよりなる群より選ばれる少なくとも1種を含む非晶質酸化物である。
活性層に用いられる非晶質酸化物としては、具体的には、In2O3、ZnO,SnO2、CdO,Indium−Zinc−Oxide(IZO)、Indium−Tin−Oxide(ITO)、Gallium−Zinc−Oxide(GZO)、Indium−Gallium−Oxide(IGO)、Indium−Gallium−Zinc−Oxide(IGZO)が挙げられる。
活性層の成膜方法としては、酸化物半導体の多結晶焼結体をターゲットとして、気相成膜法を用いるのが好ましい。気相成膜法の中でも、スパッタリング法、パルスレーザー蒸着法(PLD法)が適している。更に、量産性の観点から、スパッタリング法が好ましい。例えば、RFマグネトロンスパッタリング蒸着法により、真空度及び酸素流量を制御して成膜される。
成膜された活性層は、周知のX線回折法によりアモルファス膜であることが確認される。活性層の組成比は、RBS(ラザフォード後方散乱)分析法により求められる。
また、この活性層の電気伝導度は、好ましくは10−4Scm−1以上102Scm−1未満であり、より好ましくは10−1Scm−1以上102Scm−1未満である。この活性層の電気伝導度の調整方法としては、公知の酸素欠陥による調整方法や、組成比による調整方法、不純物による調整方法、酸化物半導体材料による調整方法が挙げられる。
上述した非晶質酸化物に関するその他の構成は、例えば、特開2010−186860号公報の記載が参考となる。
[絶縁性基板]
絶縁性基板12としては、例えば、ガラス、石英、プラスチックフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。また、これらのプラスチックフィルムに、有機あるいは無機のフィラーを含有させてもよい。また、フレキシブルでかつ低熱膨張、高強度といった、既存のガラスやプラスチックでは得られない特性を有するアラミド、バイオナノファイバーなどを用いて形成されたフレキシブル基板も好適に使用しうる。
(アラミド)
アラミド材料は、ガラス転移温度315℃という高い耐熱性、ヤング率が10GPaという高い剛性、熱膨張率が−3〜5ppm/℃という高い寸法安定性を有する。このため、アラミド製のフィルムを用いると、一般的な樹脂フィルムを用いる場合と比べて、半導体層の高品質の成膜が容易に行える。また、アラミド材料の高耐熱性により、電極材料を高温硬化させて低抵抗化できる。更に、ハンダのリフロー工程を含むICの自動実装にも対応できる。また更に、ITO(indium tin oxide)やガス・バリア膜、ガラス基板と熱膨張係数が近いために、製造後の反りが少ない。そして、割れにくい。ここで、ハロゲンを含まないハロゲンフリー(JPCA−ES01−2003の規定に適合)なアラミド材料を用いることが環境負荷低減の点で好ましい。アラミドフィルムは、ガラス基板やPET基板と積層されてもよいし、デバイスの筐体に貼り付けられてもよい。
アラミドの分子間の凝集力(水素結合力)の高さによる溶媒への低溶解性を分子設計によって解決することにより、無色透明で薄いフィルムへの成形が容易とされたアラミド材料についても、好適に用いることができる。モノマーユニットの秩序性、及び芳香環上の置換基種・位置を制御する分子設計により、アラミド材料の高剛性や寸法安定性に繋がる直線性の高い棒状の分子構造を維持しつつ、溶解性が良い成形の容易さが得られる。この分子設計により、ハロゲンフリーをも実現できる。
また、フィルムの面内方向の特性が最適化されたアラミド材料についても、好適に用いることができる。成型中に逐次変化するアラミドフィルムの強度に応じて、溶液キャスト、縦延伸、横延伸の工程ごとに張力条件を制御することにより、直線性の高い棒状分子構造であって物性に異方性が生じやすいアラミドフィルムの面内方向の特性をバランスできる。
具体的に、溶液キャスト工程では、溶媒の乾燥速度の制御による面内厚み方向の物性の等方化、溶媒を含んだ状態のフィルムの強度とキャスト・ドラムからの剥離強度の最適化、を図る。縦延伸工程では、延伸中に逐次変化するフィルムの強度、溶媒の残留量に応じた延伸条件を精密に制御する。横延伸工程では、加熱によって変化するフィルム強度の変化に応じた横延伸の条件の制御、フィルムの残留応力を緩和するための横延伸の条件の制御を図る。このようなアラミド材料の使用により、成型後のアラミドフィルムがカールしてしまう問題を解決できる。
上記の成形容易さに対する工夫、及びフィルム面内方向の特性のバランスに対する工夫のいずれにおいても、アラミドならではの直線性の高い棒状の分子構造が維持されているので、熱膨張係数を低く維持できる。製膜時の延伸条件の変更などにより、熱膨張係数を更に低減することも可能である。
(バイオナノファイバー)
ナノファイバーは、光の波長に対して十分に小さなコンポーネントは光散乱を生じないことから、透明でフレキシブルな樹脂材料の補強として用いることができる。そして、ナノファイバーの中でも、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと、可視光波長に対して約1/10のサイズでかつ、高強度、高弾性、低熱膨である特徴を有しており、このバクテリアセルロースと透明樹脂との複合材料(バイオナノファイバーということがある)を好適に用いることができる。
バクテリアセルロースシートにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を約60〜70%と高い比率で含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示す透明バイオナノファイバーが得られる。このバイオナノファイバーにより、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(約3〜7ppm)、鋼鉄並の強度(約460MPa)、及び高弾性(約30GPa)が得られる。
上述したバイオナノファイバーに関する構成は、例えば、特開2008−34556号公報の記載が参考となる。
[平坦化層及び接着層]
シンチレータ18と光電変換素子26とを光学的に結合させる樹脂層としての平坦化層23及び接着層25は、シンチレータ18の蛍光を減衰させることなく光電変換素子26に到達させ得るものであれば特に制限はない。平坦化層23としては、ポリイミドやパリレンなどの樹脂を用いることができ、製膜性が良好なポリイミドを用いることが好ましい。接着層25としては、例えば、熱可塑性樹脂、UV硬化接着剤、加熱硬化型接着剤、室温硬化型接着剤、両面接着シート、等が挙げられるが、画像の鮮鋭度を低下させないという観点から、素子サイズに対して十分に薄い接着層を形成し得る低粘度エポキシ樹脂製の接着剤を用いることが好ましい。
以下、放射線画像検出装置の具体的な作製例について説明するが、本発明はこれらの作製例に制限されるものではない。
[作製例1]
1.放射線画像変換パネルの作製
支持体11として、液晶用の無アルカリガラス基板(0.7mm厚)を準備した。まず、支持体11に、シンチレータとの密着性向上を目的としてArプラズマで表面処理した。その後、表面処理した支持体をシンチレータ成膜用の真空チャンバーにセットした。真空チャンバーは原料のCsI、Tlをそれぞれ独立に加熱するための複数のるつぼを備えている。チャンバーを排気した後、Arを一定量流入することで装置真空度を0.75Paに設定した。原料るつぼを加熱して原料の融液状態が安定した時点で、支持体を真空装置の装置機構により同心円状に回転させ、シャッターを開き、非柱状部36の蒸着を開始した。
この条件で製膜を行い、非柱状部36の厚(t2)が5μmとなった時点で真空度を1Paに上げ、柱状部34の蒸着を開始した。なお、真空度を変更する際には原料の融液状態が変化するため、一度シャッターを閉じ、融液状態が安定したのを確認してから再度シャッターを開き、蒸着を再開した。柱状部34の厚(t1)が500μmとなった時点で原料るつぼの加熱を止め、真空装置に吸気して支持体上に蒸着により、非柱状部36と柱状部34とを有するシンチレータ18を形成した。
2.シンチレータの物性評価
2−1.非柱状部の厚み(t2)及び柱状部の厚み(t1)の測定
シンチレータ18の任意の一部を割断し、柱状結晶の成長方向にSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することで柱状部34及び非柱状部36の膜厚を測定した。膜厚の値は切り出した部分から無作為に10カ所を選択して測定した値の平均値を用いた。なお、CsIは非導電性のため、Auを約200ÅスパッタしてからSEM観察を行った。
2−2.結晶径の測定
シンチレータ18の一部を支持体11から剥離し、柱状結晶の成長方向に対して垂直な面からSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することで柱径(柱状結晶の断面径)を測定した。1回の撮影でシンチレータ18を表面から見た時に柱状結晶が100本から200本観察できる倍率(約2000倍程度)で観察し、1撮影に含まれる結晶全てに対し、結晶径の最大値を測定して平均した。なお、非柱状部36の如く、結晶同士が結合している場合には、隣接結晶間に生じる窪み(凹)同士を結んだ線を結晶間の粒界と見なし、結合した結晶同士を最小多角形となるように分離して結晶径を測定した。結晶径(um)は小数点以下2桁まで読み、平均値をJIS Z 8401に従い小数点以下2桁目を丸めた値とした。
支持体11からシンチレータ18が剥離しにくい場合には、支持体11から100um程度の位置にてシンチレータ18を柱状結晶の成長方向に垂直にスライスし、支持体11に付着したCsI結晶の界面付近の形状が観察できる距離までArイオンでエッチングした後、エッチング面から観察した。CsIは非導電性のため、Auを約20ÅスパッタしてからSEM観察を行った。
3.放射線画像検出装置の作製
センサパネル3を準備し、表面にスピンコーターで、溶媒で希釈した低粘度エポキシ樹脂接着剤(ハンツマン社製アラルダイト2020)を溶媒揮発後の厚さが15μmとなるように塗布して接着層25を形成した。センサパネル3に形成された接着層25と、シンチレータ18の柱状部34側を対向させたのち、加熱することで放射線画像変換パネル2とセンサパネル3とを接着層25を介して貼り合わせた。
その後、センサパネル3の端子部にTFT駆動用の回路基板と、電荷読み取り用の集積回路ICを異方性導電膜により貼り付け、駆動制御とAD変換を行うための回路基板に接続して作製例1の放射線画像検出装置を作製した。
放射線がセンサパネル3側から入射するように配置し、放射線画像の読み取りは、放射線画像検出装置1とケーブルで接続した走査用のPCを制御することにより実施した。
[作製例2〜6]
作製例1において、非柱状部36の膜厚を、真空度が0.75Pa時の蒸着時間を変更することで表1に記載のように調整した他は作製例1と同様にして、作製例2〜6の放射線画像検出装置を作製した。
[作製例7〜11]
作製例1において、非柱状部36の製膜に際して、真空度を表1に示すものに変えて、非柱状部36における結晶径を表1に記載のように調製した他は作製例1と同様にして、作製例7〜11の放射線画像検出装置を作製した。
[作製例12]
支持体として、作製例1で用いたガラス基板に変えて、ウェットエッチングにより表面に5μmピッチで高さ5μm程度の凹凸を設けたガラス基板を用いた。シンチレータ18の形成において、非柱状部の蒸着は行わずに、支持体上に直接柱状部の蒸着を実施した以外は作製例1と同様にして作製例12の放射線画像検出装置を作製した。
[作製例13]
支持体として、作製例3で用いたガラス基板に変えて、センサパネル3の表面に直接シンチレータ18を、作製例3と同様の条件にて製膜して形成した。本態様では、サンサパネル3の近傍に非柱状部36がまず形成され、その後、柱状部34が形成されることになり、熱硬化性の接着剤による貼り合わせは実施していない。この処理以外は、作製例3と同様に行った。
4.放射線画像検出装置の特性評価
4−1.感度
放射線としてX線を使用した。X線照射時にセンサパネル3を電気回路で駆動させ、シンチレーション光により各光電変換素子26で発生した電荷を読み出し、チャージアンプで増幅した後にAD変換することで発生電荷量を計算した。
X線非照射時の読み取り電荷(検出系のノイズ)量を事前に測定し、X線照射時の発生電荷量から差し引いた値を感度とした。結果を表1に示す。なお、作製例12における感度を100とした時の相対値で示す。
4−2.MTF(Modulation Transfer Function)
IEC規格に準拠し、W(タングステン)製のMTFエッジを撮影して得られたエッジ像を演算することでMTF曲線を得た。結果を表1に示す。なお、2cycle/mmの値で比較し、作製例12の値を100とした時の相対値で示す。
4−3.総合判断
上記感度及びMTFの評価結果の積を指標として放射線画像検出装置の性能を判断した。感度とMTFの積は120以上であると画像を官能評価した際に性能の違いがはっきりと認識され好ましい。
表1に明らかなように、作製例1〜11の放射線画像検出装置は、シンチレータ18が柱状部34のみで構成される作製例12に比べて、高感度でかつ、画像のボケなどの画質低下が抑制され、得られる画像の鮮鋭度が高いことがわかる。
また、作製例1〜11により、柱状部34の厚み(t1)と非柱状部36の厚み(t2)との比(t2/t1)が好ましい範囲にあるもの、非柱状部36の結晶径が好ましい範囲にあるものは、特に感度が良好で、画像のボケが抑制されることがわかる。
以上、説明したように、本明細書には、放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質を含有した蛍光体を備える放射線画像変換パネルであって、前記蛍光体は、前記蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成された柱状部と、非柱状部と、を有し、前記柱状部及び前記非柱状部は、前記柱状部における結晶成長方向に重なって一体に形成されており、前記非柱部の前記結晶成長方向に沿う厚みが、前記非柱状部の少なくとも一部の領域において不均一である放射線画像変換パネルが開示されている。
また、本明細書に開示された放射線画像変換パネルは、前記非柱状部の中央領域における最大厚と最小厚との差が、前記非柱状部の周辺領域における最大厚と最小厚との差より小さい。
また、本明細書に開示された放射線画像変換パネルは、前記非柱状部の中央領域における厚み分布の偏差が、前記非柱状部の周辺領域における厚み分布の偏差より小さい。
また、本明細書に開示された放射線画像変換パネルは、前記非柱状部の周縁領域においてのみ厚みが不均一である。
また、本明細書に開示された放射線画像変換パネルは、前記非柱状部の厚みが、5μm以上125μm以下の範囲で分布している放射線画像変換パネル。
また、本明細書には、上記いずれかの放射線画像変換パネルの製造方法であって、真空度及び支持体温度の少なくとも一方の条件を変更して、気相堆積法によって前記支持体上に前記蛍光物質の結晶を堆積させて、前記非柱状部及び前記柱状部を順次支持体上に形成し、前記非柱状部を形成する工程において、真空度を変化させながら前記支持体上に前記蛍光物質の結晶を堆積させる放射線画像変換パネルの製造方法が開示されている。
また、本明細書には、上記いずれかの放射線画像変換パネルと、前記放射線画像変換パネルから発せられる蛍光を検出して電気信号に変換するセンサパネルと、を備える放射線画像検出装置が開示されている。
また、本明細書に開示された放射線画像検出装置は、前記蛍光体の前記柱状部側の表面が前記センサパネルに対向するように、前記放射線画像変換パネルと前記センサパネルとが貼り合わされている。
また、本明細書に開示された放射線画像検出装置は、前記センサパネル側に放射線入射面を有する。
また、本明細書に開示された放射線画像検出装置は、前記放射線画像変換パネル側に放射線入射面を有する。