以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。この車両用冷暖房装置は、電気自動車の冷暖房装置として具体化されたものである。
車両用冷暖房装置100は、圧縮機2、補助凝縮器3、室外熱交換器5、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置100は、冷媒としての代替フロン(HFO−1234yf)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
圧縮機2、室外熱交換器5およびアキュムレータ8は、車室外(エンジンルーム)に設けられている。一方、車室内には空気の熱交換が行われるダクトが設けられ、そのダクトにおける空気の流れ方向上流側に蒸発器7が配設され、下流側に補助凝縮器3が配設されている。補助凝縮器3は、室内凝縮器として構成されている。
車両用冷暖房装置100は、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。この冷凍サイクルは、補助凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として直列又は並列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。この冷凍サイクルでは、冷房運転時に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、除湿運転時に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室外熱交換器5→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→室外熱交換器5→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第1冷媒循環通路と第2冷媒循環通路とで逆方向となっている。
具体的には、圧縮機2の吐出室につながる通路が分岐し、その一方である第1通路21が室外熱交換器5の一方の出入口につながり、他方である第2通路22が補助凝縮器3の入口につながっている。室外熱交換器5の他方の出入口は第3通路23を介して蒸発器7の入口に接続され、蒸発器7の出口は第4通路24(戻り通路)を介してアキュムレータ8の入口に接続されている。第1通路21、第3通路23および第4通路24により第1冷媒循環通路が形成される。
補助凝縮器3の出口は第5通路25を介して第3通路23に接続されている。第1通路21は室外熱交換器5の近傍でバイパス通路26に分岐し、バイパス通路26はアキュムレータ8の入口に接続されている。さらに、第5通路25は中間部においてバイパス通路27に分岐し、バイパス通路27は第1通路21に接続されている。第2通路22、第5通路25、第3通路23およびバイパス通路26により第2冷媒循環通路が形成される。一方、第2通路22、第5通路25、第3通路23および第4通路24により第3冷媒循環通路が形成される。
第1冷媒循環通路と第3冷媒循環通路とは、冷房運転時において補助凝縮器3と室外熱交換器5を圧縮機2に対して並列につなぐ並列循環通路を形成する。一方、冷房運転時においてバイパス通路27が開放されることにより、補助凝縮器3と室外熱交換器5を圧縮機2に対して直列につなぐ直列循環通路が形成されるようになるが、その詳細については後述する。
第4通路24におけるバイパス通路26との合流点よりも下流側は、第1冷媒循環通路、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路の共用の通路である第1共用通路41となっている。また、第3通路23における第5通路25との合流点よりも下流側は、第1冷媒循環通路と第3冷媒循環通路との共用の通路である第2共用通路42となっている。そして、第1共用通路41と第2共用通路42を部分的に挿通するように内部熱交換器10が配設されている。
第1通路21と第2通路22との分岐点および第1通路21とバイパス通路27との合流点を含むように第1制御弁4が設けられている。第3通路23と第5通路25との合流点には第2制御弁6が設けられている。第4通路24とバイパス通路26との合流点には第3制御弁9が設けられている。さらに、第3通路23における内部熱交換器10の下流側には比例弁33が設けられている。
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。
補助凝縮器3は、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助的な凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が補助凝縮器3を通過する際に放熱する。車室内に導入された空気は、補助凝縮器3を通過する過程で温められる。すなわち、ダクトに取り込まれて蒸発器7にて冷却および除湿された空気のうち、図示しないエアミックスドアにて振り分けられた空気が補助凝縮器3を通過することにより適度に加熱される。補助凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが補助凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整される。
室外熱交換器5は、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外熱交換器5が蒸発器として機能する際には、膨張装置(後述の比例弁52)の通過により低温・低圧となった冷媒が、室外熱交換器5を通過する際に蒸発する。
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、膨張装置(後述の比例弁33)の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。車室内に導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却され、除湿される。このとき冷却・除湿された空気は、補助凝縮器3の通過過程で加熱される。
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。
第1制御弁4は、共用のボディに比例弁34,37,38を収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。比例弁34は「第2弁」として機能する大口径の弁であり、第1通路21の開度を調整する。比例弁37は「第3弁」として機能する大口径の弁であり、第2通路22の開度を調整する。比例弁38は「第1弁」として機能する大口径の弁であり、バイパス通路27の開度を調整する。本実施形態では、第1制御弁4として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。第1制御弁4の具体的構成については後述する。
第2制御弁6は、共用のボディに比例弁51と比例弁52を収容する複合弁として構成されている。比例弁51と比例弁52は共用のアクチュエータにて駆動される。比例弁51は「第4弁」として機能する大口径の弁であり、第5通路25を開閉する。比例弁52は大口径の第1弁と小口径の第2弁とを有する複合弁であり、第3通路23の開度を調整する。比例弁52は膨張装置としても機能する。本実施形態では、第2制御弁6として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。第2制御弁6の具体的構成については後述する。
比例弁33は、室外熱交換器5から第3通路23を介して導入された冷媒、または補助凝縮器3から第5通路25を介して導入された冷媒を絞り膨張させて下流側に導出する「膨張装置」としても機能する。本実施形態では、比例弁33として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。なお、変形例においては、比例弁33に代えて、例えば蒸発器7の出口側の温度を感知してその出口側の過熱度が適正となるよう冷媒流量を調整する温度式膨張弁を設けてもよい。あるいは、オリフィスその他の膨張装置を設けてもよい。
第3制御弁9は、共用のボディに比例弁35と比例弁36とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。第3制御弁9のボディには、第4通路24を構成する第1内部通路とバイパス通路26を構成する第2内部通路が設けられている。比例弁35は大口径の弁であり、第2内部通路に設けられてその開度を調整する。比例弁36は大口径の弁であり、第1内部通路に設けられてその開度を調整する。本実施形態では、第3制御弁9として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。第3制御弁9の具体的構成については後述する。
内部熱交換器10は、第1共用通路41と第2共用通路42を部分的に挿通して両共用通路を流れる冷媒の熱交換をさせる。これにより、補助凝縮器3または室外熱交換器5から蒸発器7に向かって流れる冷媒が、アキュムレータ8から圧縮機2に向かって流れる冷媒によって冷却される一方、アキュムレータ8から圧縮機2に向かって流れる冷媒が、補助凝縮器3または室外熱交換器5から蒸発器7に向かって流れる冷媒によって加熱され、冷凍サイクルの熱交換率が高められる。なお、図示のように、第3通路23と第5通路25との合流点は、内部熱交換器10の入口の上流側に設けられている。また、比例弁33は、内部熱交換器10の出口の下流側に設けられている。
以上のように構成された車両用冷暖房装置100は、図示しない制御部により制御される。制御部は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各制御弁の制御量(弁開度や開閉状態)を決定し、その制御量が実現されるようアクチュエータに電流を供給する。本実施例ではアクチュエータとしてステッピングモータを用いるため、制御部は、各制御弁の制御量が実現されるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。このような制御により、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。なお、本実施形態ではこのような制御を実現するために、補助凝縮器3の出口、室外熱交換器5の出入口、蒸発器7の入口と出口、内部熱交換器10の入口と出口のそれぞれの温度を検出するための複数の温度センサが設置されている。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2および図3は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。図2は冷房運転時の状態を示し、(A)は通常冷房運転時の状態を示し、(B)は特定冷房運転時の状態を示し、(C)は特殊冷房運転時の状態を示している。なお、「特定冷房運転」は、冷房運転において除湿の機能を高めた運転状態である。「特殊冷房運転」は、冷房運転において除湿の機能を高めるとともに熱交換効率を高めた運転状態である。図3は暖房運転時の状態を示し、(A)は特定暖房運転時の状態を示し、(B)は通常暖房運転時の状態を示し、(C)は特殊暖房運転時の状態を示している。「特定暖房運転」は、暖房運転において除湿の機能を高めた運転状態である。「特殊暖房運転」は、室外熱交換器5を機能させない運転状態である。
各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜hはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。
図2(A)に示すように、通常冷房運転時においては、第1制御弁4において比例弁34が開弁状態とされ、比例弁37,38が閉弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁51が閉弁状態とされ比例弁52が開弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ比例弁36が開弁状態とされる。それにより、第1冷媒循環通路のみが開放される。このため、圧縮機2から吐出冷媒は室外熱交換器5および蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室外熱交換器5を経ることで凝縮され、比例弁33にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7に導入される。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器7から導出された冷媒は、比例弁36を経てアキュムレータ8に導入される。制御部は、室外熱交換器5の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御するか、または圧縮機2の入口側の温度に基づき、その入口側の過熱度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。前者の場合、比例弁33の入口または内部熱交換器10の入口の温度に基づいてその過冷却度を調整するようにしてもよい。
なお、このとき、内部熱交換器10により、アキュムレータ8から圧縮機2に送られる冷媒と室外熱交換器5から比例弁33に送られる冷媒との熱交換が行われる。その結果、蒸発器7の入口と出口の入口とのエンタルピの差が大きくなり、冷凍サイクルの成績係数を大きくできるため、システムの効率および冷凍能力を向上させることができる。
図2(B)に示すように、特定冷房運転時においては、第1制御弁4において比例弁34が閉弁状態とされ、比例弁37,38が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁51が閉弁状態とされ比例弁52が開弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ比例弁36が開弁状態とされる。それにより、バイパス通路27が開放されて直列循環通路が形成される。この直列循環通路は、第1冷媒循環通路に対して補助凝縮器3を経由する冷媒通路を追加した構成を有し、補助凝縮器3を室内凝縮器、室外熱交換器5を室外凝縮器として直列につなぐ構成を実現する。このため、圧縮機2から吐出冷媒は、補助凝縮器3および室外熱交換器5を通過して蒸発器7に導かれる。
このとき、比例弁38の開度が調整されて差圧制御が実行される。このとき、比例弁38には前後差圧ΔPが発生する。その結果、補助凝縮器3の凝縮圧力(凝縮温度)が、室外熱交換器5の凝縮圧力(凝縮温度)よりも高く維持され、車室内の温度が必要以上に低下することが抑制される。具体的には、ドライバの足元の温度をある程度高く維持することができる。制御部は、室外熱交換器5の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御するか、または圧縮機2の入口側の温度に基づき、その入口側の過熱度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。
図2(C)に示すように、特定冷房運転時においては、第1制御弁4において比例弁34および比例弁37が共に開弁状態とされ、比例弁38が閉弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁51および比例弁52が共に開弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ比例弁36が開弁状態とされる。それにより第1冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放され、第2冷媒循環通路は遮断される。このため、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室外熱交換器5を経て蒸発器7に導かれ、他方で補助凝縮器3を経て蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、一方で補助凝縮器3を、他方で室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、補助凝縮器3を経由した冷媒と室外熱交換器5を経由した冷媒とが合流して比例弁33にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。このとき、蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入される。制御部は、比例弁33の入口または内部熱交換器10の入口の温度に基づいてその過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御するか、または圧縮機2の入口側の温度に基づき、その入口側の過熱度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。
ここで、図2(B)に示す特定冷房運転と図2(C)に示す特殊冷房運転とを適宜切り替えることにより、除湿機能を高めた冷房運転の効率を高く維持することができる。すなわち、図2(B)に示す特定冷房運転においては、圧縮機2から吐出された冷媒の全てが補助凝縮器3を経由することになるため、その補助凝縮器3での圧力損失を見越して圧縮機2の動力を大きくする必要がある。しかし、圧縮機2から吐出された高温のガス冷媒を全て補助凝縮器3に供給できるため、その補助凝縮器3のヒータとしての機能を最大限に発揮させることができる。一方、図2(C)に示す特殊冷房運転においては、圧縮機2から吐出された冷媒が室外熱交換器5へ向かうものと補助凝縮器3へ向かうものに所定の比率で振り分けられるため、圧縮機2から吐出された高温のガス冷媒はその比率に応じた流量のみが補助凝縮器3に供給されることになる。このため、補助凝縮器3はそのヒータとしての機能を最大限に発揮させることはできない。しかし、補助凝縮器3へ供給される冷媒がその比率に応じた流量に留まるため、補助凝縮器3での圧力損失は少なくなり、その分、圧縮機2の動力は小さくて済む。
すなわち、補助凝縮器3のヒータとしての機能の必要性に応じて特定冷房運転と特殊冷房運転とを適宜切り替えることにより、その機能を担保しつつ、冷凍サイクルの効率(成績係数)を高く維持できるようになる。しかも、特定冷房運転による凝縮器の直列運転と、特殊冷房運転による凝縮器の並列運転とが、バイパス通路27を設けるという簡易な構成と、第1制御弁4の開閉状態を切り替えるという簡易な制御により実現されている。
図3(A)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁34,38が閉弁状態とされ比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁51および比例弁52が共に開弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。このとき、比例弁52は、小口径の第2弁が開弁状態となる。さらに、第3制御弁9において比例弁35および比例弁36が共に開弁状態とされる。このとき、比例弁52が膨張装置として機能する。それにより、第1冷媒循環通路が遮断され、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は、一方で室外熱交換器5に導かれ、他方で蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、補助凝縮器3を経て凝縮される。補助凝縮器3から導出された冷媒は、一方で比例弁52にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器5を通過する際に蒸発される。室外熱交換器5から導出された冷媒は、比例弁35を経てアキュムレータ8に導入される。また、補助凝縮器3から導出された冷媒は、他方で比例弁33にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7を通過する際に蒸発される。蒸発器7から導出された冷媒は、比例弁36を経てアキュムレータ8に導入される。
このとき、制御部は、室外熱交換器5による熱吸収と蒸発器7による除湿とを適正に行うべく、室外熱交換器5における冷媒の蒸発量と蒸発器7における冷媒の蒸発量との比率を適正に調整する。室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率は、比例弁52と比例弁33の弁開度の比率により制御される。制御部は、比例弁52の開度と比例弁33の開度との比率を調整することにより両蒸発器における蒸発量を調整する。その際、制御部は、蒸発器7が凍結することがないよう、蒸発器7の出口側の温度が適正範囲に保たれるように制御する。
また、制御部は、比例弁35および比例弁36の一方の全開状態を維持したまま他方の開度を調整する。本実施形態では、図3(A)の左上段のモリエル線図に示すように、室外熱交換器5よりも蒸発器7の温度が低い場合には比例弁36を全開状態にして比例弁35の開度を制御する。一方、図3(A)の右上段のモリエル線図に示すように、蒸発器7よりも室外熱交換器5の温度が低い場合には比例弁35を全開状態にして比例弁36の開度を制御する。
例えば、前者のように室外熱交換器5よりも蒸発器7の温度が低く、室外熱交換器5の出口側に過熱度(スーパーヒート)が発生している場合、比例弁35の開度を絞ることによりその過熱度が設定値(ゼロまたは小さな適正値)に近づくように制御する。このとき、室外熱交換器5における外部からの熱吸収量は、その比例弁35の絞り量により調整される。すなわち、比例弁36を全開状態に維持しつつ比例弁35の開度を絞ることで、室外熱交換器5の蒸発圧力Poと蒸発器7の出口の圧力Peとの差圧ΔP=Po−Peが適正となり、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整することができる。すなわち、差圧ΔPが大きくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、差圧ΔPが小さくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。制御部は、室外熱交換器5の出口側に過熱度に応じて比例弁35の開度を制御して差圧ΔPを適正に調整することで、特定暖房運転時における除湿機能を確保する。なお、室外熱交換器5の出口側の過熱度の有無およびその大きさは、室外熱交換器5の入口側の温度と出口側の温度を検出することで特定することができる。
逆に、後者のように蒸発器7よりも室外熱交換器5の温度が低く、蒸発器7の出口側に過熱度が発生している場合、比例弁36の開度を絞ることによりその過熱度が設定過熱度(ゼロまたは小さな適正値)に近づくように制御する。すなわち、比例弁35を全開状態に維持しつつ比例弁36の開度を絞ることで、蒸発器7の出口の圧力Peと室外熱交換器5の蒸発圧力Poとの差圧ΔP=Pe−Poが適正となり、特定暖房運転時における除湿機能を確保することができる。なお、蒸発器7の出口側の過熱度の有無およびその大きさは、蒸発器7の入口側の温度と出口側の温度を検出することで特定することができる。
図3(B)に示すように、通常暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁34,38が閉弁状態とされ比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁51,52が開弁状態とされる。比例弁33は閉弁状態とされる。このとき、比例弁52が膨張装置として機能する。さらに、第3制御弁9において比例弁35が開弁状態とされ、比例弁36が閉弁状態とされる。それにより第2冷媒循環通路のみが開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は第3通路23を介して室外熱交換器5に導かれる。このとき、蒸発器7には冷媒が供給されないため、蒸発器7は実質的に機能しなくなり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能するようになる。制御部は、補助凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁52の開度を制御する。
図3(C)に示すように、特殊暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁34,38が閉弁状態とされ、比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁51が開弁状態とされ、比例弁52が閉弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ、比例弁36が開弁状態とされる。それにより第3冷媒循環通路のみが開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は第2通路22を介して蒸発器7に導かれる。室外熱交換器5は実質的に機能しなくなる。蒸発器7に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を除湿する。このような特殊冷暖房運転は、外部からの吸熱が困難な場合、例えば車両が極寒状況におかれた場合などに有効に機能する。制御部は、補助凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御するか、または圧縮機2の入口側の温度に基づき、その入口側の過熱度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。
次に、本実施形態の制御弁の具体的構成について説明する。
図4は、第1制御弁4の構成および動作を表す断面図である。第1制御弁4は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体101とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体101は、有底筒状のボディ104に大口径の比例弁34,37,38を同軸状に収容して構成されている。
ボディ104の一方の側部には第1導入ポート110と第2導入ポート112が設けられ、他方の側部には第1導出ポート114と第2導出ポート116が設けられている。ボディ104の上方から順に第2導入ポート112、第1導出ポート114、第1導入ポート110、第2導出ポート116が配置されている。第1導入ポート110は圧縮機2の吐出室に連通し、第2導入ポート112はバイパス通路27に連通し、第1導出ポート114は第1通路21に連通し、第2導出ポート116は第2通路22に連通する。
ボディ104の上半部には、円筒状の区画部材118が配設されている。区画部材118は、シール部材を介してボディ104に同心状に組み付けられている。区画部材118の下部の内径が縮径されて弁孔120が形成され、その下端開口端縁により弁座122が形成されている。また、区画部材118の中央部の内径も縮径されて弁孔124が形成され、その上端開口端縁により弁座126が形成されている。区画部材118における第2導入ポート112との対向面および第1導出ポート114との対向面には、それぞれ内外を連通する連通孔が設けられている。区画部材118の下端開口部は第1導入ポート110に連通している。
ボディ104の下半部は内径が縮径された小径部となっており、その上端部には弁孔128が形成され、その上端開口端縁により弁座130が形成されている。ボディ104の下部にはガイド孔132が形成されている。
ボディ104の上端部には、段付円筒状の区画部材125が配設されている。区画部材125は、弁本体101の内部とモータユニット102の内部とを区画する。区画部材125の上端中央部には、円ボス状の軸受部127が設けられている。軸受部127の内周面には雌ねじ部が設けられ、外周面は滑り軸受として機能する。区画部材125の内方にはガイド孔129が形成されている。弁孔120,124,128およびガイド孔129,132は、モータユニット102の軸線に沿って同軸状に配置されている。
ボディ104の内方には、弁作動体134、伝達部材136、弁体138、弁駆動体140が同軸状に配設されている。弁体138は、弁孔124と第2導入ポート112との間の圧力室に配置され、弁孔124に接離して比例弁38の開度を調整する。弁体138は、有底円筒状をなし、その下端部の外周面にはリング状の弾性体(例えばゴム)が嵌着されており、その弾性体が弁座126に着座することにより、比例弁38を完全に閉じることが可能になる。
弁体138は、その上端部がガイド孔129に摺動可能に支持されている。弁体138の摺動面には、シール部材としてのOリング142が嵌着されている。弁体138の下端部には、弁孔124に摺動しつつ支持される複数の脚部(同図にはその1つのみ表示)が延設されている。弁体138は、その下端部の複数の脚部が弁孔124に沿って摺動し、上端部がガイド孔129に沿って摺動することにより、軸線方向に安定に動作することができる。区画部材125と弁体138とに囲まれた空間により背圧室144が形成されている。伝達部材136と弁体138との間に所定のクリアランスが存在するため、弁孔124の下流側の下流側圧力Pout1がそのクリアランスを介して背圧室144に導入される。区画部材125と弁体138との間には、弁体138を閉弁方向に付勢するスプリング146(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
弁作動体134の下端部には、伝達部材136が連結されている。伝達部材136は、長尺状をなし、弁体138の中央部を軸線方向に貫通している。伝達部材136の上端部は弁作動体134の底部に固定されている。伝達部材136は、弁駆動体140の側に延在し、その軸線方向中間部には半径方向外向きに突出した係止部148が設けられている。伝達部材136は、弁体138に対して相対変位可能であるが、係止部148が弁体138に係止されることによりその上方への相対変位が規制される。
弁体138の内方には緩衝部材150がスプリング151(「付勢部材」として機能する)を介して支持されている。緩衝部材150は、スプリング151の付勢力によりその上端部が弁作動体134の側に突出する。弁作動体134が弁体138に当接する際には、まず緩衝部材150が弁作動体134に当接してスプリング151の反力を伝達することにより、弁作動体134が弁体138に過度な負荷を与えることを防止する。
弁駆動体140は段付円筒状をなし、その軸線方向中央の縮径部が弁孔128を貫通するように配設されている。弁駆動体140の上端部には共用弁体154が設けられ、下端部には区画部156が設けられている。すなわち、共用弁体154は、弁孔120および弁孔128の上流側にて第1導入ポート110に連通する圧力室に配置されている。一方、区画部156は、弁孔128の下流側にて第2導出ポート116に連通する圧力室に配置され、ガイド孔132に摺動可能に支持されている。
共用弁体154は段付円柱状をなし、その上端部に第1弁体153が嵌着され、下端部に第2弁体155が嵌着されている。第1弁体153および第2弁体155は、ともに環状の弾性体(本実施形態ではゴム)からなる。第1弁体153は、弁座122に接離して比例弁34の開度を調整する。一方、第2弁体155は、弁座130に接離して比例弁37の開度を調整する。
共用弁体154の上端部には、弁孔120に摺動しつつ支持される複数の脚部(同図にはその1つのみ表示)が延設されている。区画部156の外周面にはシール部材としてのOリング157が嵌着されている。弁駆動体140は、その上端部の複数の脚部が弁孔120に沿って摺動し、下端部の区画部156がガイド孔132に沿って摺動することにより、軸線方向に安定に動作することができる。ボディ104の底部と区画部156との間には背圧室158が形成されている。また、共用弁体154を軸線方向に貫通する連通路159が形成されている。この連通路159は、第1導出ポート114と背圧室158とを連通させる。このため、背圧室158には常に、第1導出ポート114から導出される下流側圧力Pout1が満たされる。ボディ104の底部と区画部156との間には、スプリング160(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
また、共用弁体154の脚部の内方には有蓋状のストッパ162が設けられ、そのストッパ162に囲まれる空間に円板状のばね受け164が配設されている。ストッパ162は、ばね受け164を上方から係止可能であり、その外部への脱落を阻止する。共用弁体154の上端部とばね受け164との間には、スプリング166(「付勢部材」として機能する)が介装されている。伝達部材136は、その下端部がストッパ162を貫通してばね受け164に当接可能となっている。
弁作動体134と弁駆動体140とが伝達部材136を介して作動連結可能に構成されている。すなわち、図示のように伝達部材136がばね受け164に当接した状態となることで、モータユニット102の駆動力が弁作動体134、伝達部材136、ばね受け164、スプリング166を介して弁駆動体140に伝達される。弁駆動体140と弁作動体134とは、比例弁34と比例弁37がともに開弁状態であるときはスプリング166の付勢力により突っ張った状態で一体変位するが、いずれか一方が閉弁状態になれば軸線方向に相対変位可能となる。
なお、スプリング166の荷重は、Oリング157とガイド孔132との間の摺動抵抗(弁駆動体140の摺動力)とスプリング160の荷重との合力よりも大きくなるように設定されている。それにより、弁作動体134と弁駆動体140とが一体動作しているときにスプリング166が縮むことなく、比例弁34および比例弁37の弁開度を正確に制御できるようになっている。
弁作動体134は、段付円筒状をなし、その外周部に雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、軸受部127の雌ねじ部に螺合する。弁作動体134の上端部には半径方向外向きに延出する複数(本実施形態では4つ)の脚部152が設けられており、モータユニット102のロータに嵌合している。弁作動体134は、モータユニット102の回転駆動力を受けて回転し、その回転力を並進力に変換する。すなわち、弁作動体134が回転すると、ねじ機構(「作動変換機構」として機能する)によって弁作動体134が軸線方向に変位し、伝達部材136を介して共用弁体154を軸線方向(比例弁34、比例弁37の開閉方向)に駆動する。また、弁作動体134が回転して伝達部材136が引き上げられることにより、係止部148を介して弁体138に開弁方向の駆動力を付与することができる。
本実施形態においては、弁孔120の有効径Aと弁孔128の有効径Bとガイド孔132の有効径Cとが等しく設定されている。また、弁孔124の有効径Dとガイド孔129の有効径Eとが等しく設定されている。このため、弁駆動体140、弁体138に作用する冷媒圧力の影響がキャンセルされる。なお、本実施形態では、有効径A〜Eが等しく設定されている。
一方、モータユニット102は、ロータ172とステータ173とを含むステッピングモータとして構成されている。モータユニット102は、有底円筒状のスリーブ170の内方にロータ172を回転自在に支持するようにして構成されている。スリーブ170の外周には、励磁コイル171を収容したステータ173が設けられている。スリーブ170は、その下端開口部がボディ104に組み付けられており、ボディ104とともに第1制御弁4のボディを構成する。
ロータ172は、円筒状に形成された回転軸174と、その回転軸174の外周に配設されたマグネット176を備える。本実施形態では、マグネット176は24極に磁化されている。回転軸174の内方にはモータユニット102のほぼ全長にわたる内部空間が形成されている。回転軸174の内周面の特定箇所には、軸線に平行に延びるガイド部178が設けられている。ガイド部178は、後述する回転ストッパと係合するための突部を形成するものであり、軸線に平行に延びる一つの突条により構成されている。
回転軸174の下端部はやや縮径され、その内周面に軸線に平行に延びる4つのガイド部180が設けられている。ガイド部180は、軸線に平行に延びる一対の突条により構成され、回転軸174の内周面に90度おきに設けられている。この4つのガイド部180には、上述した弁作動体134の4つの脚部152が嵌合し、ロータ172と弁作動体134とが一体に回転できるようになっている。ただし、弁作動体134は、ロータ172に対する回転方向の相対変位は規制されるものの、そのガイド部180にそった軸線方向の変位は許容される。すなわち、弁作動体134は、ロータ172とともに回転しつつ各弁体の開閉方向に駆動される。
ロータ172の内方には、その軸線に沿って長尺状のシャフト182が配設されている。シャフト182は、その上端部がスリーブ170の底部中央に圧入されることにより片持ち状に固定され、ガイド部178に平行に内部空間に延在している。シャフト182は、弁作動体134と同一軸線上に配置されている。シャフト182には、そのほぼ全長にわたって延在する螺旋状のガイド部184が設けられている。ガイド部184は、コイル状の部材からなり、シャフト182の外面に嵌着されている。ガイド部184の上端部は折り返されて係止部186となっている。
ガイド部184には、螺旋状の回転ストッパ188が回転可能に係合している。回転ストッパ188は、ガイド部184に係合する螺旋状の係合部190と、回転軸174に支持される動力伝達部192とを有する。係合部190は一巻きコイルの形状をなし、その下端部に半径方向外向きに延出する動力伝達部192が連設されている。動力伝達部192の先端部がガイド部178に係合している。すなわち、動力伝達部192は、ガイド部178の一つの突条に当接して係止される。このため、回転ストッパ188は、回転軸174により回転方向の相対変位は規制されるが、ガイド部178に摺動しつつその軸線方向の変位が許容される。
すなわち、回転ストッパ188は、ロータ172と一体に回転し、その係合部190がガイド部184にそってガイドされることで、軸線方向に駆動される。ただし、回転ストッパ188の軸線方向の駆動範囲はガイド部178の両端に形成された係止部により規制される。同図には、回転ストッパ188が中間位置にある状態が示されている。回転ストッパ188が上方へ変位して係止部186に係止されると、その位置が上死点となる。回転ストッパ188が下方へ変位すると、その下死点にて係止される。
ロータ172は、その上端部がシャフト182に回転自在に支持され、下端部が軸受部127に回転自在に支持されている。具体的には、回転軸174の上端開口部を封止するように有底円筒状の端部部材194が設けられている。そして、その端部部材194の中央に設けられた円筒軸196の部分が、スリーブ170の底部に突設された円ボス部に支持されている。すなわち、軸受部127が一端側の軸受部となり、スリーブ170における円筒軸196との摺動部が他端側の軸受部となっている。
以上のように構成された第1制御弁4は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、第1制御弁4の流量制御において、車両用冷暖房装置の図示しない制御部は、設定開度に応じたステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、励磁コイル171に駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ172が回転し、弁作動体134が回転駆動されて比例弁34,37,38の開閉状態および開度が調整される。一方、回転ストッパ188がガイド部184にそって駆動されることにより、各弁体の動作範囲が規制される。
同図には、比例弁34が全開し、比例弁37,38が閉弁した状態が示されている。この状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されると、伝達部材136が引き上げられる。その結果、スプリング160の付勢力によって弁駆動体140が押し上げられ、比例弁37が開弁するとともに比例弁34が閉弁方向に動作する。その動作過程において比例弁34および比例弁37のそれぞれの開度が調整される。そして、比例弁34が閉弁状態となった後に、さらにロータ172が同方向に回転駆動されると、係止部148が弁体138に当接する。その後、弁体138が伝達部材136を介して吊り上げられるようにして比例弁38が開弁し、その開度が調整される。
図5は、第2制御弁6の構成および動作を表す断面図である。
第2制御弁6は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体501とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体501は、有底筒状のボディ504に比例弁51と比例弁52とを同軸状に収容して構成される。比例弁51および比例弁52は、1つのモータユニット102により開閉駆動される。
ボディ504の一方の側部には導入出ポート510および導入ポート512が設けられ、他方の側部には導出ポート514が設けられている。導入出ポート510は第3通路23の室外熱交換器5の出入口に連通し、導入ポート512は第5通路25に連通し、導出ポート514は内部熱交換器10の入口に連通する。
ボディ504の上半部には、円筒状の区画部材516が配設されている。区画部材516は、シール部材を介してボディ504に同心状に組み付けられている。区画部材516の下端部は弁孔520を形成している。また、弁孔520の下端開口端縁により弁座522が形成されている。区画部材516における導入ポート512との対向面には、内外を連通する連通孔が設けられている。区画部材125と区画部材516との間に挟まれるように円筒状のガイド部材517が設けられている。ガイド部材517と区画部材516との間には、シール用のOリング519が設けられている。一方、ボディ504の下部には弁孔524が設けられ、その上端開口端縁により弁座526が形成されている。弁孔524は、弁孔520と同軸状に配置される。
ボディ504の内方には、弁駆動体532、弁体533、弁作動体134、伝達部材536が同軸状に配設されている。弁駆動体532は段付円筒状をなし、その下半部に弁体部538が設けられ、上半部にガイド部540が設けられている。弁体部538とガイド部540は、縮径部を介して一体に設けられている。弁体部538は、弁孔520と弁孔524との間の圧力室に配置されている。一方、ガイド部540は、導入ポート512に連通する圧力室に配置され、Oリング519に摺動可能に支持されている。
弁体部538は、その上端部に大径の弁体541が設けられ、下端部に小径の弁体542が設けられている。弁体541は、弁座522に着脱可能な環状の弾性体(本実施形態ではゴム)を有し、弁孔520に接離して比例弁51の開度を調整する。弁体542は、いわゆるニードル弁体として構成されている。一方、弁体533は、その大径の本体に弁座526に着脱可能な環状の弾性体(本実施形態ではゴム)を有する。弁体533の下端部には弁孔524に摺動しつつ支持される複数の脚部(同図には1つのみ表示)が延設されている。弁体533は、弁孔524に接離して比例弁52の第1弁の開度を調整する。
弁体533の内方には、小径の弁孔528が設けられ、その上端開口端縁により弁座529が形成されている。弁体542の尖った先端部は弁孔528に挿抜される。つまり、弁体542は、弁座529に接離して比例弁52の第2弁の開度を調整する。弁体533と弁体541との間には、弁体533を閉弁方向に付勢するスプリング544(「付勢部材」として機能する)が介装されている。スプリング544の荷重は比較的小さく、弁体533は逆止弁としても機能する。
ガイド部540と区画部材125との間には背圧室548が形成される。また、弁駆動体532を軸線方向に貫通する連通路550が形成されている。連通路550は、弁体部538の側部にて導出ポート514に連通している。このため、背圧室548には常に、導出ポート514から導出される下流側圧力Poutが満たされる。
本実施形態においては、弁孔520の有効径Aと、ガイド部540の摺動部の有効径B(Oリング519の内径)とが等しく設定されている。このため、弁駆動体532に作用する冷媒圧力の影響はキャンセルされる。特にOリング519を設けたことにより、ガイド部540の摺動部のシール性が確保されるとともに、その摺動部にゴミなどが挟み込まれることが防止されている。
弁駆動体532のガイド部540の内方には、ばね受け552、伝達部材536、ばね受け553が同軸状に挿通されている。ばね受け552は円板状をなし、その中央部を伝達部材536が貫通している。ガイド部540の上端開口部とばね受け552との間には、スプリング554(「付勢部材」として機能する)が介装されている。一方、ガイド部540の下端部とばね受け553との間には、スプリング558(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
そして、弁作動体134と弁駆動体532とが伝達部材536を介して作動連結可能に構成されている。すなわち、伝達部材536の上端部は弁作動体134の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて弁作動体134に連結されている。伝達部材536の側部には半径方向外向きに突出した係止部560が設けられ、その係止部560がばね受け552に係止されることで、弁作動体134と弁駆動体532とが上方に一体動作可能となるように構成されている。また、伝達部材536の下端がばね受け553に係止されることで、弁作動体134と弁駆動体532とが下方に一体動作可能となるように構成されている。弁駆動体532と弁作動体134とは、比例弁51と比例弁52がともに開弁状態であるときはスプリング554,558の付勢力により突っ張った状態で一体変位するが、いずれか一方が閉弁状態になれば軸線方向に相対変位可能となる。
なお、スプリング554,558は、いずれもその荷重が弁駆動体532とOリング519との間の摺動抵抗(弁駆動体532の摺動力)よりも大きくなるように設定されている。それにより、弁作動体134と弁駆動体532とが一体動作しているときにスプリング554,558が縮むことなく、比例弁51および比例弁52の弁開度を正確に制御できるようになっている。
以上のように構成された第2制御弁6は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。車両用冷暖房装置の図示しない制御部は、設定開度に応じたステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、励磁コイル171に駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ172が回転し、一方で弁作動体134が回転駆動されて比例弁51および比例弁52の開度が設定開度に調整される。
同図は比例弁51が閉弁状態となり、比例弁52の第1弁が全開状態となる場合を示している。この状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されることにより弁駆動体532が比例弁51の開弁方向に変位し、比例弁51と比例弁52がともに開弁した状態となる。すなわち、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって下降し、伝達部材536がその係止部560にてばね受け553に係止された状態で、弁作動体134が弁体部538を押し下げるようにして変位させる。比例弁51の弁開度は、その弁体部538が駆動されることで調整される。ロータ172がさらに同方向に回転駆動されると、弁駆動体532が比例弁52の閉弁方向に変位する。このとき、弁体533が弁座526に着座した第1弁の閉弁状態であれば、第2弁の弁開度は、弁体542の弁座529からのリフト量により調整される。比例弁52が膨張弁として機能する場合には、その第2弁の開度が調整される。
図6は、第3制御弁9の構成および動作を表す断面図である。第3制御弁9は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体301とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体301は、有底筒状のボディ304に大口径の比例弁35と大口径の比例弁36とを同軸状に収容して構成され、一方の弁の全開状態を維持しつつ他方の弁の開度を設定開度に調整する比例弁として構成されている。
ボディ304の一方の側部には第1導入ポート310および第2導入ポート312が設けられ、他方の側部には導出ポート314が設けられている。第1導入ポート310は第4通路24に連通し、第2導入ポート312はバイパス通路26に連通し、導出ポート314は下流側通路に連通する。その下流側通路はアキュムレータ8の入口につながっている。ボディ304には、第1導入ポート310と導出ポート314とをつなぐ内部通路と、第2導入ポート312と導出ポート314とをつなぐ内部通路が形成される。
ボディ304は、その上端開口部から底部に向けてその上部、中央部、下部の内径が段階的に小さくなる穴形状を有し、その上部に第2導入ポート312が設けられ、中央部に導出ポート314が設けられ、下部に第1導入ポート310が設けられている。そして、下部の上端開口部に弁孔320が設けられている。
ボディ304の上部には、円筒状の区画部材330が内挿されている。区画部材330は、ボディ304に同心状に組み付けられており、その第2導入ポート312との対向面には内外を連通する連通孔が形成されている。また、区画部材330の下端面とボディ304との間に挟まれるようにシール部材としてのOリング322が設けられている。
ボディ304の上端部には、段付円筒状の区画部材325が配設されている。区画部材325は、弁本体301の内部とモータユニット102の内部とを区画する。区画部材325の中央部には軸受部127が設けられている。軸受部127の内周面には雌ねじ部が設けられ、軸受部127の外周面は滑り軸受として機能する。区画部材325の下端部には、リング状の弁座部材336が嵌着されている。弁座部材336は、ゴム等の弾性体からなり、シール部材としても機能する。区画部材325の内方にはガイド孔338が形成されている。
ボディ304の内方には、弁駆動体340および弁作動体134が同軸状に(同一軸線上に)配設されている。弁駆動体340は、有底筒状の本体342と導入管344とを含む二重管構造を有する。導入管344は、本体342を軸線に沿って貫通するように配置され、その下端部が本体342の底部中央に固定されている。導入管344の上部には区画部346が一体に設けられている。区画部346は、導入管344の上部から半径方向外向きに延出し、その外周面がガイド孔338に摺動可能に支持されている。区画部346、区画部材325およびモータユニット102に囲まれる空間により背圧室348が形成される。
導入管344は、その上端部が小径化されて弁作動体134の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部350となっている。弁作動体134の底部と係止部350との間には、導入管344を上方に付勢するスプリング352(「付勢部材」として機能する)が介装されている。このため、通常の状態においては、弁作動体134と区画部346とが互いを係止し、弁作動体134と弁駆動体340とが一体動作可能に作動連結した状態となる。導入管344は、第1導入ポート310と背圧室348とを連通させ、第1導入ポート310から導入される上流側圧力Pin1を背圧室348に導入する。
弁駆動体340は、その開口端部に設けられた第1弁体354と、底部に設けられた第2弁体356とを一体に含む。第1弁体354が弁座部材336に接離することにより比例弁35の開度が調整される。また、第2弁体356が弁孔320に接離することにより比例弁36の開度が調整される。本体342の側部には、その内部と導出ポート314とを連通させる連通孔が設けられている。本体342の外周部のシールは、Oリング322により実現されている。Oリング322は、本体342を摺動可能に支持するガイド部を構成する。
なお、スプリング352は、その荷重が弁駆動体340とOリング322との間の摺動抵抗(弁駆動体340の摺動力)よりも大きくなるように設定されている。それにより、弁作動体134と弁駆動体340とが一体動作しているときにスプリング352が縮むことなく、比例弁35および比例弁36の弁開度を正確に制御できるようになっている。
ここで、本実施形態においては、第1弁体354の有効受圧径Aと弁駆動体340の摺動部の有効受圧径Bとが等しく設定され、また、弁孔320の有効径C(第2弁体356の有効受圧径)とガイド孔338の有効径D(区画部346の有効受圧径)とがほぼ等しく設定されているため、弁駆動体340に作用する冷媒圧力の影響がほぼキャンセルされる。このため、冷媒圧力の変化によりモータユニット102に過度な負荷がかかることがなく、弁開度の制御を安定に行うことができる。なお、本実施形態では、弁孔320の有効径Cをガイド孔338の有効径Dよりも若干(予め定める微少量)大きくすることで、第2弁体356の前後差圧が若干開弁側に作用するようにし、比例弁36が不用意に閉弁することを防止している。変形例においては、弁孔320の有効径Cとガイド孔338の有効径Dとを等しく設定してもよい。
以上のように構成された第3制御弁9は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて比例弁35を閉弁状態とし、比例弁36を全開状態とする場合、図示の状態とされる。
一方、比例弁35または比例弁36の開度を調整する場合、図示の状態からロータ172を一方向に回転駆動(正転)する。それにより、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって下降し、弁駆動体340(つまり第1弁体354および第2弁体356)を押し下げるようにして変位させ、比例弁35が開弁状態となる。そして、比例弁35および比例弁36のいずれか一方の開度を小さくしてその開度を制御することにより、その小さくした側の弁を流れる冷媒の流量を調整することができる。このとき、開度が大きくなる側の弁は、その開度が大きくなっても冷媒の流量は飽和状態となり、全開状態を維持する。このように、比例弁35と比例弁36は、共用のモータユニット102により駆動され、一方の開度の制御状態において他方の全開状態が維持される。それにより、複合弁でありながら、その一方の比例弁の開度を正確に制御することが可能となっている。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、冷媒循環通路や一部の制御弁の構成が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図7は、第2実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。
車両用冷暖房装置200の冷凍サイクルは、内部熱交換器10を有しておらず、第1実施形態の冷凍サイクルよりも簡素な構成となっている。補助凝縮器3の出口につながる第5通路25は、その下流側にて第1分岐通路28と第2分岐通路29とに分岐しており、それぞれ第3通路23に接続されている。第1分岐通路28と第2分岐通路29との分岐点には第2制御弁206が設けられている。
第2制御弁206は、共用のボディに比例弁31,32,33を収容する複合弁として構成されている。比例弁31,32は共用のアクチュエータにて駆動され、比例弁33はもう1つのアクチュエータにて駆動される。比例弁31は、第3通路23における第1分岐通路28との合流点と第2分岐通路29との合流点との間に設けられている。
比例弁31は小口径の弁であり、第3通路23の開度を調整する。比例弁32は小口径の弁であり、第1分岐通路28の開度を調整する。比例弁33は「第4弁」としても機能する小口径の弁であり、第2分岐通路29の開度を調整する。これら比例弁31,32,33は、膨張装置としても機能する。本実施形態では、第2制御弁206として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図8および図9は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。図8は冷房運転時の状態を示し、(A)は通常冷房運転時の状態を示し、(B)は特定冷房運転時の状態を示し、(C)は特殊冷房運転時の状態を示している。図9は暖房運転時の状態を示し、(A)は特定暖房運転時の状態を示し、(B)は通常暖房運転時の状態を示し、(C)は特殊暖房運転時の状態を示している。
図8(A)に示すように、通常冷房運転時においては、第1制御弁4において比例弁34が開弁状態とされ、比例弁37,38が閉弁状態とされる。また、第2制御弁206において比例弁31が開弁状態とされ比例弁32,33が閉弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ比例弁36が開弁状態とされる。それにより、第1冷媒循環通路のみが開放される。このため、圧縮機2から吐出冷媒は室外熱交換器5および蒸発器7に導かれる。室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室外熱交換器5を経ることで凝縮され、比例弁31にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7に導入される。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器7から導出された冷媒は、比例弁36を経てアキュムレータ8に導入される。制御部は、室外熱交換器5の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁31の開度を制御する。
図8(B)に示すように、特定冷房運転時においては、第1制御弁4において比例弁34が閉弁状態とされ、比例弁37,38が開弁状態とされる。また、第2制御弁206において比例弁31が開弁状態とされ比例弁32,33が閉弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ比例弁36が開弁状態とされる。それにより、バイパス通路27が開放されて直列循環通路が形成される。このため、圧縮機2から吐出冷媒は、補助凝縮器3および室外熱交換器5を通過して蒸発器7に導かれる。このとき、比例弁38の開度が調整されて差圧制御が実行されるが、第1実施形態と同様であるため、その説明については省略する。
図8(C)に示すように、特定冷房運転時においては、第1制御弁4において比例弁34および比例弁37が共に開弁状態とされ、比例弁38が閉弁状態とされる。また、第2制御弁206において比例弁31,33が開弁状態とされ、比例弁32が閉弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ比例弁36が開弁状態とされる。それにより第1冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放され、第2冷媒循環通路は遮断される。このため、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室外熱交換器5を経て蒸発器7に導かれ、他方で補助凝縮器3を経て蒸発器7に導かれる。室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、一方で補助凝縮器3を、他方で室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、補助凝縮器3を経由した冷媒が比例弁33にて断熱膨張され、室外熱交換器5を経由した冷媒が比例弁31にて断熱膨張され、それぞれ冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。このとき、蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入される。制御部は、室外熱交換器5の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁31の開度を制御する。また、制御部は、補助凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。
なお、図8(B)に示す特定冷房運転と図8(C)に示す特殊冷房運転とを適宜切り替えることにより、除湿機能を高めた冷房運転の効率を高く維持することができのは第1実施形態と同様である。
図9(A)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁34,38が閉弁状態とされ比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁206において比例弁31が閉弁状態とされる一方、比例弁32,33が共に開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35および比例弁36が共に開弁状態とされる。それにより、第1冷媒循環通路が遮断され、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は、一方で室外熱交換器5に導かれ、他方で蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、補助凝縮器3を経て凝縮される。補助凝縮器3から導出された冷媒は、一方で比例弁32にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器5を通過する際に蒸発される。室外熱交換器5から導出された冷媒は、比例弁35を経てアキュムレータ8に導入される。また、補助凝縮器3から導出された冷媒は、他方で比例弁33にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7を通過する際に蒸発される。蒸発器7から導出された冷媒は、比例弁36を経てアキュムレータ8に導入される。
このとき、制御部は、室外熱交換器5による熱吸収と蒸発器7による除湿とを適正に行うべく、室外熱交換器5における冷媒の蒸発量と蒸発器7における冷媒の蒸発量との比率を適正に調整するが、第1実施形態と同様であるため、その説明については省略する。
図9(B)に示すように、通常暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁34,38が閉弁状態とされ比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁206において比例弁32が開弁状態とされ、比例弁31,33は閉弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が開弁状態とされ、比例弁36が閉弁状態とされる。それにより第2冷媒循環通路のみが開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は第3通路23を介して室外熱交換器5に導かれる。このとき、蒸発器7には冷媒が供給されないため、蒸発器7は実質的に機能しなくなり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能するようになる。制御部は、補助凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁32の開度を制御する。
図9(C)に示すように、特殊暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁34,38が閉弁状態とされ、比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁206において比例弁31,32が共に閉弁状態とされ、比例弁33が開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ、比例弁36が開弁状態とされる。それにより第3冷媒循環通路のみが開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は第2通路22を介して蒸発器7に導かれる。室外熱交換器5は実質的に機能しなくなる。制御部は、補助凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。
次に、本実施形態の制御弁の具体的構成について説明する。なお、第1制御弁4および第3制御弁9の構成は第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。図10は、第2制御弁206の構成および動作を表す断面図である。図11は、第2制御弁206の弁本体の部分を示す拡大断面図である。
図10に示すように、第2制御弁206は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体201と2つのモータユニット102,202とを組み付けて構成されている。弁本体201は、有底筒状のボディ204に小口径の比例弁31と小口径の比例弁32とを同軸状に収容するとともに、その軸線に対して小口径の比例弁33を直角方向に組み付けるようにして構成されている。比例弁31と比例弁32は共用のモータユニット102により駆動され、比例弁33はもう一つのモータユニット202により駆動される。なお、モータユニット202は、モータユニット102と同様の構成を有する。2つのモータユニット102,202は、互いの軸線が直交するようにボディ204に組み付けられている。第2制御弁206は、比例弁31および比例弁32の一方の閉弁状態を維持しつつ他方の開度が設定開度に調整される複合弁として構成され、また、その複合弁と比例弁33とを共用のボディ204に組み込んだ集合弁として構成されている。
ボディ204の一方の側部には導入ポート210、導入出ポート212および導出ポート214が設けられている。導入ポート210は第5通路25を介して補助凝縮器3に連通し、導入出ポート212は第3通路23を介して室外熱交換器5に連通し、導出ポート214は第3通路23を介して蒸発器7に連通する。すなわち、ボディ204には、導入ポート210と導入出ポート212とをつなぐ第1内部通路と、導入ポート210と導出ポート214とをつなぐ第2内部通路と、導入出ポート212と導出ポート214とをつなぐ第3内部通路が形成される。第1分岐通路28および第2分岐通路29は、ボディ204の内部に形成されている。
図11に示すように、ボディ204の中間部には、段付円筒状の区画部材220が上下に延在するように組み付けられている。そして、区画部材220の上端開口部に上方から弁体218が挿通され、下端開口部に下方から弁体224が挿通されている。また、区画部材220の側面には、上方から導入ポート210に連通する連通孔226、導入出ポート212に連通する連通孔228、導出ポート214に連通する連通孔230が設けられている。区画部材220の下端部はボディ204との間に室229を形成している。区画部材220の外周面における連通孔226と連通孔228との間、連通孔228と連通孔230との間、連通孔230と室229との間には、それぞれシール用のOリングが嵌着されている。
区画部材220における連通孔226と連通孔228とをつなぐ通路には弁孔232が形成され、その上端開口端縁により弁座234が形成されている。弁孔232は、区画部材220の上端開口部よりも内径がやや小さく構成されている。弁体218が上方から弁座234に接離することにより比例弁32の開度が調整される。また、区画部材220における連通孔228と連通孔230とをつなぐ通路には弁孔236が形成され、その下端開口端縁により弁座238が形成されている。弁孔236は、区画部材220の下端開口部よりも内径がやや小さく構成されている。弁体224が下方から弁座238に接離することにより比例弁31の開度が調整される。また、区画部材220には、その軸線からずれた位置にその軸線に平行な複数の貫通孔240が設けられている。貫通孔240の一端は導入ポート210に連通し、他端は室229に連通している。そして、その複数の貫通孔240を貫通するように長尺状の伝達ロッド242がそれぞれ配設されている。なお、本実施形態では区画部材220の軸線の周りに3つの貫通孔240と3つの伝達ロッド242が設けられるが(同図には1つのみ表示)、変形例においては貫通孔240と伝達ロッド242を2つずつ設けてもよい。
ボディ204の内方には、小径の弁体218、小径の弁体224、および弁作動体134が同軸状に配設されている。弁体218と弁体224は、軸線に沿って対向配置されている。弁体218は段付円柱状をなし、その下半部が区画部材220の上端開口部に摺動可能に挿通され、その先端部が弁座234に対向配置されている。弁体218は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔232に挿抜される。そして、弁体218が弁座234に接離することにより比例弁32の開度が調整される。弁体218の上半部はやや縮径されて弁作動体134の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部235となっている。弁作動体134の上端部と係止部235との間には、弁体218を閉弁方向(係止部235を弁作動体134の底部に押しつける方向)に付勢するスプリング244(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
ボディ104の上端部には、円板状の区画部材125が配設されている。区画部材125は、弁本体101の内部とモータユニット102の内部とを区画する。区画部材125の中央部には軸受部127が設けられている。区画部材125と区画部材220との間には、円板状の伝達部材246が配設されている。伝達部材246の中央には貫通孔が設けられ、弁体218の上半部がこれを貫通している。伝達部材246の下面は伝達ロッド242の上端面に当接している。一方、伝達部材246と区画部材125との間には、伝達部材246を下方に付勢するスプリング248が介装されている。このような構成により、伝達部材246に作用する付勢力は伝達ロッド242を介して下方に伝達される。
弁体224は段付円柱状をなし、区画部材220の下端開口部に摺動可能に挿通され、その上端部が弁座238に対向配置されている。弁体224の外周面にはシール部材としてのOリング251が嵌着されている。弁体224は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔236に挿抜される。そして、弁体224が弁座238に接離することにより比例弁31の開度が調整される。弁体224の下端部には半径方向外向きに延出するフランジ部249が設けられ、室229に配置されている。フランジ部249の上面は伝達ロッド242の下端面に当接している。一方、フランジ部249の下面とボディ204の底部との間には、弁体224を閉弁方向に付勢するスプリング250(「付勢部材」として機能する)が介装されている。このような構成により、伝達ロッド242による伝達力が弁体224に伝達されるようになる。
一方、ボディ204の下半部には、側方から比例弁33が組み込まれている。比例弁33は、比例弁32と近似した構造を有する。すなわち、ボディ204の下半部には、段付円筒状の区画部材260が左右に延在するように組み付けられている。区画部材260は、区画部材220の上半部と区画部材125とを一体化したような構造を有する。区画部材260には、弁体262および弁作動体134が同軸状に挿通されている。また、区画部材260には、導入ポート210に連通する連通孔264、導出ポート214に連通する連通孔266が設けられている。
区画部材260における連通孔264と連通孔266とをつなぐ通路には弁孔268が形成され、その開口端縁により弁座270が形成されている。弁孔268が弁座270に接離することにより比例弁33の開度が調整される。弁体262は段付円柱状をなし、その一端側が区画部材260に摺動可能に挿通され、その先端部が弁座270に対向配置されている。弁体262は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔268に挿抜される。そして、弁体262が弁座270に着脱することにより比例弁33が開閉される。弁体262の他端側はやや縮径されて弁作動体134の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部235となっている。弁作動体134の上端部と係止部235との間には、弁体262を閉弁方向に付勢するスプリング244が介装されている。
以上のように構成された第2制御弁206は、モータユニット102,202の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、比例弁31を閉弁状態、比例弁32を開弁状態、比例弁33を閉弁状態とする場合、図10および図11に示す状態とされる。このとき、弁作動体134が伝達部材246から離間しているため、モータユニット102の駆動力が弁体224に伝わることはない。一方、スプリング244の付勢力により係止部235が弁作動体134の底部に押しつけられており、弁体218が弁作動体134に対して下死点に位置するため、モータユニット102の駆動力がそのまま弁体218に作用する。その結果、弁体218は、ロータ172の回転量に応じて変位し、比例弁32が設定開度に制御される。すなわち、弁体218が全開状態と全閉位置との間の範囲で駆動されることにより比例弁32の開度が調整される。
一方、比例弁31を閉弁状態とし、比例弁32および比例弁33を開弁状態とする場合、図10の状態からモータユニット202のロータ172を一方向に回転駆動(正転)する。それにより、弁体262が弁座270から離間し、比例弁33が開弁状態となる。弁体262は、ロータ172の回転量に応じて変位し、比例弁33が設定開度に制御される。すなわち、弁体262が全開状態と全閉位置との間の範囲で駆動されることにより比例弁33の開度が調整される。
比例弁31および比例弁32をともに閉弁状態とし、比例弁33を開弁状態とする場合、図10の状態からモータユニット102のロータ172を一方向に回転駆動(正転)する。それにより、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって下降し、弁体218が弁座234に着座し、比例弁32が閉弁状態となる。このとき、弁作動体134が伝達部材246に当接するまでにロータ172の回転を停止させることで、比例弁31についても閉弁状態を維持することができる。なお、弁体218が弁座234に着座すると、弁体218がその反力によりスプリング244を押し縮めることで弁作動体134に対して相対変位可能となるため、弁体218が弁座234に対して過度に押しつけられることはない。また、図10の状態からモータユニット202のロータ172を一方向に回転駆動(正転)する。それにより、弁体262が弁座270から離間し、比例弁33が開弁状態となる。弁体262は、ロータ172の回転量に応じて変位し、比例弁33が設定開度に制御される。すなわち、弁体262が全開状態と全閉位置との間の範囲で駆動されることにより比例弁33の開度が調整される。
比例弁31を開弁状態とし、比例弁32を閉弁状態とし、比例弁33を開弁状態とする場合、モータユニット102のロータ172をさらに同方向に回転駆動する。それにより、モータユニット102による駆動力が弁作動体134、伝達部材246および伝達ロッド242を介して弁体224に伝達され、弁体224が押し下げられ、比例弁31が開弁状態となる。すなわち、弁体224が全閉状態と全開位置との間の範囲で駆動されることにより比例弁31の開度が調整される。
比例弁31を開弁状態とし、比例弁32および比例弁33を閉弁状態とする場合、モータユニット202のロータ172を他方向に回転駆動(逆転)する。それにより、比例弁33については図10の閉弁状態に戻す。
このように、比例弁31と比例弁32は、共用のモータユニット102により駆動され、一方の開度の制御状態において他方は閉弁状態に維持される。それにより、複合弁でありながら、その一方の比例弁の開度を正確に制御することが可能となっている。一方、比例弁33については個別のモータユニット202により駆動するため、比例弁31および比例弁32とは独立して弁開度が制御可能となっている。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、そのシステム構成が第2実施形態と近似するが、冷凍サイクルにおいて複合弁を構成する弁の組合せおよび各複合弁の構成が第2実施形態と異なる。以下、第1,第2実施形態との相違点を中心に説明し、第1,第2実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図12は、第3実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。
車両用冷暖房装置300の冷凍サイクルは、第5通路25にて第1分岐通路28、第2分岐通路29に順次分岐している。そして、比例弁34と比例弁37とを含む制御弁305(「第1の複合弁」として機能する)、比例弁33と比例弁38とを含む制御弁308(「第2の複合弁」として機能する)、比例弁31と比例弁32とを含む制御弁306(「第3の複合弁」として機能する)、比例弁35と比例弁36とを含む制御弁309(「第4の複合弁」として機能する)が構成されている。すなわち、第2実施形態とは異なり、冷凍サイクルに配設される全ての複合弁が2つの弁を含むように構成されている。各複合弁は、それぞれ2つの弁に共用のボディと共用のアクチュエータを有するが、その具体的構成については後述する。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図13および図14は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。図13は冷房運転時の状態を示し、(A)は通常冷房運転時の状態を示し、(B)は特定冷房運転時の状態を示し、(C)は特殊冷房運転時の状態を示している。図14は暖房運転時の状態を示し、(A)は特定暖房運転時の状態を示し、(B)は通常暖房運転時の状態を示し、(C)は特殊暖房運転時の状態を示している。なお、本実施形態における冷凍サイクルの動作は図示のとおりであり、第2実施形態と実質的に同様である。このため、その説明については省略する。
次に、本実施形態の制御弁の具体的構成について説明する。図15は、制御弁305の構成および動作を表す断面図である。
制御弁305は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体601とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体601は、有底筒状のボディ604に大口径の比例弁34と大口径の比例弁37とを同軸状に収容して構成されている。制御弁305は、一方の比例弁の全開状態を維持しつつ他方の比例弁の開度が設定開度に調整される複合弁として構成されている。
ボディ604の一方の側部には導入ポート110が設けられ、他方の側部には上下に第1導出ポート114、第2導出ポート116が設けられている。導入ポート110は圧縮機2の吐出室に連通し、第1導出ポート114は第1通路21に連通し、第2導出ポート116は第2通路22に連通する。
ボディ604の上半部には、円筒状の区画部材618が配設されている。区画部材618は、シール部材を介してボディ604に同心状に組み付けられている。区画部材618の下端部は弁孔120を形成している。また、弁孔120の下端開口端縁により弁座122が形成されている。区画部材618における第1導出ポート114との対向面には、内外を連通する連通孔が設けられている。ボディ604の上端部には、段付円筒状の区画部材625が配設されている。区画部材625の上端部中央には軸受部127が設けられている。区画部材625の内方にはガイド孔129が形成され、その下端部にシール部材としてのOリング630が嵌着されている。
ボディ604の内方には、弁駆動体632、弁作動体134、伝達部材636が同軸状に配設されている。弁駆動体632は段付円筒状をなし、その軸線方向中央の縮径部が弁孔120を貫通するように配設されている。伝達部材636は、その縮径部を貫通する長尺柱状をなし、その上端および下端がそれぞれ外方に加締められて係止部となっている。弁駆動体632の下端部には共用弁体638が設けられ、上端部にはガイド部640が設けられている。すなわち、共用弁体638は弁孔120の上流側にて導入ポート110に連通する圧力室に配置されている。一方、ガイド部640は、弁孔120の下流側にて第1導出ポート114に連通する圧力室に配置され、区画部材625に摺動可能に支持されている。
共用弁体638は段付円柱状をなし、その上端部に第1弁部材641が嵌着され、下端部に第2弁部材642が嵌着されている。第1弁部材641および第2弁部材642は、ともに環状の弾性体(本実施形態ではゴム)からなる。導入ポート110と第2導出ポート116とをつなぐ通路には弁孔128が設けられ、その上端開口端縁に弁座130が形成されている。第1弁部材641は、弁座122に接離して比例弁34の開度を調整する。一方、第2弁部材642は、弁座130に接離して比例弁37の開度を調整する。
共用弁体638の下端部には弁孔128に摺動しつつ支持される複数の脚部(同図にはその1つのみ表示)が延設されている。すなわち、弁駆動体632は、その下端部の複数の脚部が弁孔128に沿って摺動し、上端部のガイド部640がガイド孔129に沿って摺動することにより、軸線方向に安定に動作することができる。ガイド部640と区画部材625との間には背圧室648が形成される。背圧室648には常に、第2導出ポート116から導出される下流側圧力Pout2が満たされる。
共用弁体638の内方は凹状に形成されたばね収容部649となっている。ばね収容部649の内方には、ばね受け651と伝達部材636が同軸状に挿通されている。ばね受け651は円板状をなし、その中央部を伝達部材636の下端部が貫通している。ばね収容部649の上底部とばね受け651との間には、スプリング655(「付勢部材」として機能する)が介装されている。なお、ばね収容部649の下端開口部が加締められて係止部となっており、ばね受け651の脱落が防止されている。
本実施形態においては、弁孔120の有効径Aと、弁孔128の有効径Bと、ガイド孔129の有効径C(正確にはOリング630の内径)とが等しく設定されている。このため、共用弁体638に作用する冷媒圧力の影響はキャンセルされる。特にOリング630を設けたことにより、ガイド部640の摺動部のシール性が確保されるとともに、その摺動部にゴミなどが挟み込まれることが防止されている。
弁駆動体632のガイド部640の内方には、ばね受け652と伝達部材636が同軸状に挿通されている。ばね受け652は円板状をなし、その中央部を伝達部材636の上端部が貫通している。ガイド部640の底部とばね受け652との間には、スプリング654(「付勢部材」として機能する)が介装されている。なお、ガイド部640の上端開口部が加締められて係止部となっており、ばね受け652の脱落が防止されている。
そして、弁作動体134と弁駆動体632とが伝達部材636を介して作動連結可能に構成されている。すなわち、伝達部材636の上端部は弁作動体134の底部を貫通し、その係止部が係止されることで、弁作動体134と伝達部材636とが上方に一体動作可能となるように構成されている。一方、伝達部材636の下端部に設けられた係止部がばね受け651に係止されることで、弁作動体134と弁駆動体632とが上方に一体動作可能となるように構成されている。また、弁作動体134の底部がばね受け652に係止されることで、弁作動体134と弁駆動体632とが下方に一体動作可能となるように構成されている。
弁駆動体632と弁作動体134とは、比例弁34と比例弁37がともに開弁状態であるときはスプリング654,655の付勢力により突っ張った状態で一体変位するが、いずれか一方が閉弁状態になれば軸線方向に相対変位可能となる。なお、スプリング654,655は、いずれもその荷重が弁駆動体632とOリング630との間の摺動抵抗(弁駆動体632の摺動力)よりも大きくなるように設定されている。それにより、弁作動体134と弁駆動体632とが一体動作しているときにスプリング654,655が縮むことなく、比例弁34および比例弁37の弁開度を正確に制御できるようになっている。
以上のように構成された制御弁305は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。図15は比例弁34が全開状態となり、比例弁37が閉弁状態となる場合を示している。制御弁305は、例えば通常冷房運転時においてこのような状態をとる。
この状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されると、弁駆動体632が比例弁37の開弁方向に変位し、比例弁34と比例弁37がともに開弁した状態となる。例えば特殊冷房運転時において状況に応じてそのような状態をとり得る。すなわち、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって上昇し、伝達部材636がばね受け651に係止された状態で、弁作動体134が弁駆動体632を吊り上げるようにして変位させる。比例弁37の弁開度が調整される状態においては、比例弁34の全開状態が維持される。なお、ここでいう「全開状態」とは、弁開度が大きくなって冷媒の流量が飽和状態となることを意味する。
ロータ172がさらに同方向に回転駆動されると、弁駆動体632が比例弁34の閉弁方向に変位する。例えば暖房運転時においてそのような状態をとる。なお、ロータ172を逆方向に回転駆動することにより、比例弁34を開弁させることができることは言うまでもない。
なお、比例弁34が閉弁する際にその閉弁と同時にロータ172が停止しなくとも、スプリング655の変形によって弁作動体134の変位が吸収されるため、弁座122に過度な面圧がかかることは防止される。同様に、比例弁37が閉弁する際にその閉弁と同時にロータ172が停止しなくとも、スプリング654の変形によって弁作動体134の変位が吸収されるため、弁座130に過度な面圧がかかることは防止される。
このように、比例弁34と比例弁37は共用のモータユニット102により駆動され、一方の開度の制御状態において他方は全開状態に維持される。それにより、複合弁でありながら、その一方の比例弁の開度を正確に制御することが可能となっている。
図16は、制御弁306の構成および動作を表す断面図である。
制御弁306は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体701とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体701は、有底筒状のボディ704に小口径の比例弁31と小口径の比例弁32とを同軸状に収容して構成される。制御弁306は、一方の弁の閉弁状態を維持しつつ他方の弁の開度を設定開度に調整する複合弁として構成されている。
ボディ704の一方の側部には導入ポート210および導出ポート214が設けられ、他方の側部には導入出ポート212が設けられている。導入ポート210は第1分岐通路28を介して補助凝縮器3に連通し、導入出ポート212は第3通路23を介して室外熱交換器5に連通し、導出ポート214は第3通路23を介して蒸発器7に連通する。
ボディ704の中間部には、段付円筒状の区画部材720が同心状に組み付けられている。そして、区画部材720の上端開口部に上方から弁体722が挿通され、下端開口部に下方から弁体724が挿通されている。区画部材720の側面には、上方から連通孔226,228,230が設けられている。区画部材720の下端部はボディ704との間に室229を形成している。区画部材720の外周面における連通孔間には、それぞれシール用のOリングが嵌着されている。
区画部材720における連通孔226と連通孔228とをつなぐ通路には弁孔232が形成され、その上端開口端縁により弁座234が形成されている。弁体722が上方から弁座234に着脱することにより比例弁32が開閉される。また、区画部材720における連通孔228と連通孔230とをつなぐ通路には弁孔236が形成され、その下端開口端縁により弁座238が形成されている。弁体724が下方から弁座238に着脱することにより比例弁31が開閉される。区画部材720の軸線からずれた位置にはその軸線に平行な複数の貫通孔240が設けられ、その貫通孔のそれぞれに伝達ロッド242が配設されている。
ボディ704の内方には、小径の弁体722、小径の弁体724、および弁作動体134が同軸状に配設されている。弁体722と弁体724は、軸線に沿って対向配置されている。弁体722は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔232に挿抜される。そして、弁体722が弁座234に着脱することにより比例弁32が開閉される。弁体722の上半部はやや縮径されて弁作動体134の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部235となっている。
区画部材125と区画部材720との間には、円板状の伝達部材246が配設されている。伝達部材246の中央には貫通孔が設けられ、弁体722の上半部がこれを貫通している。伝達部材246の下面は伝達ロッド242の上端面に当接している。一方、伝達部材246と区画部材125との間には、伝達部材246を下方に付勢するスプリング248(「付勢部材」として機能する)が介装されている。このような構成により、伝達部材246に作用する付勢力は伝達ロッド242を介して下方に伝達されるようになる。
また、弁体722の上部には、円板状の伝達部材746が固定されている。伝達部材746は、伝達部材246の下方に位置し、その周縁部近傍には各伝達ロッド242を貫通させるための貫通孔が設けられている。伝達部材746と区画部材125との間には、伝達部材746を下方に付勢するスプリング748(「付勢部材」として機能する)が介装されている。このような構成により、スプリング748による閉弁方向の付勢力が弁体722に作用するようになる。
一方、区画部材720の下端開口部にはリング状のガイド部材750,752がOリング251を間に挟むように圧入されている。弁体724は段付円柱状をなし、ガイド部材750,752(正確にはOリング251)に摺動可能に挿通され、その上端部が弁座238に対向配置されている。すなわち、本実施形態では、Oリング251が弁体724ではなく区画部材720に嵌着されている。弁体724は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔236に挿抜される。そして、弁体724が弁座238に着脱することにより比例弁31が開閉される。弁体724の下端部にはフランジ部249が設けられ、室229に配置されている。フランジ部249の上面は伝達ロッド242の下端面に当接している。一方、フランジ部249の下面とボディ704の底部との間には、弁体724を閉弁方向に付勢するスプリング250が介装されている。このような構成により、伝達ロッド242による伝達力が弁体724に伝達されるようになる。
以上のように構成された制御弁306は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、比例弁31を閉弁状態、比例弁32を開弁状態とする場合、図示の状態とされる。このとき、弁作動体134が伝達部材246から離間しているため、モータユニット102の駆動力が弁体724に伝わることはない。一方、スプリング748の付勢力により係止部235が弁作動体134の底部に押しつけられており、弁体722が弁作動体134に対して下死点に位置するため、モータユニット102の駆動力がそのまま弁体722に作用する。その結果、弁体722は、ロータ172の回転量に応じて変位し、比例弁32が設定開度に制御される。
比例弁31および比例弁32をともに閉弁状態とする場合、図示の状態からモータユニット102のロータ172を一方向に回転駆動(正転)する。それにより、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって下降するため、スプリング748の付勢力によって弁体722も押し下げられる。その結果、弁体722が弁座234に着座し、比例弁32が閉弁状態となる。このとき、弁作動体134が伝達部材246に当接するまでにロータ172の回転を停止させることで、比例弁31についても閉弁状態を維持することができる。なお、弁体722が弁座234に着座すると、弁体722がその反力によりスプリング748を押し縮めることで弁作動体134に対して相対変位可能となるため、弁体722が弁座234に対して過度に押しつけられることはない。
比例弁31を開弁状態とし、比例弁32を閉弁状態とする場合、モータユニット102のロータ172をさらに同方向に回転駆動する。それにより、モータユニット102による駆動力が弁作動体134、伝達部材246および伝達ロッド242を介して弁体224に伝達され、弁体224が押し下げられ、比例弁31が開弁状態となる。すなわち、弁体224が全閉状態と全開位置との間の範囲で駆動されることにより比例弁31の開度が調整される。
このように、比例弁31と比例弁32は、共用のモータユニット102により駆動され、一方の開度の制御状態において他方は閉弁状態に維持される。それにより、複合弁でありながら、その一方の比例弁の開度を正確に制御することが可能となっている。
図17は、制御弁308の構成および動作を表す断面図である。
制御弁308は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体801とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体801は、有底筒状のボディ804に大口径の比例弁38と小口径の比例弁33とを同軸状に収容して構成される。
ボディ804の一方の側部には導入ポート810が設けられ、他方の側部には上下に第1導出ポート812、第2導出ポート814が設けられている。導入ポート810は第5通路25を介して補助凝縮器3に連通し、第1導出ポート812はバイパス通路27を介して室外熱交換器5に連通し、第2導出ポート814は第2分岐通路29を介して蒸発器7に連通する。
ボディ804の上半部には、有底円筒状の区画部材816が配設されている。区画部材816は、その下端部の外周面にそれぞれ設けられたシール部材を介してボディ804に同心状に組み付けられている。区画部材816の下端部に弁孔124が形成され、その弁孔124の下端開口端縁により弁座126が形成されている。区画部材816における第1導出ポート812との対向面には、内外を連通する連通孔が設けられている。
ボディ804の内方には、大径の弁体830、小径の弁体832、および弁作動体134が同軸状に配設されている。弁体830が上流側から弁孔124に接離して比例弁38の開度を調整する。弁体830の外周面にはリング状の弾性体(例えばゴム)からなる弁部材836が嵌着されており、その弁部材836が弁座126に着座することにより、比例弁38を完全に閉じることが可能になる。
一方、ボディ804の下半部には、小円筒状のガイド部材840が配設されている。ガイド部材840は、導入ポート810と第2導出ポート814とをつなぐ通路の中央部に弁体830と同軸状に設けられ、その下半部がボディ804に圧入されている。ガイド部材840は、その上半部の内周面がガイド孔842を形成し、その下端部が弁孔268を形成している。また、弁孔268の上端開口端縁により弁座270が形成されている。ガイド部材840における導入ポート810との対向面には、内外を連通する連通孔が設けられている。図示のように、弁孔124および弁孔268の上流側に導入ポート810に連通する共通の高圧室815が形成され、弁孔124の下流側には第1導出ポート812に連通する低圧室817が形成され、弁孔268の下流側には第2導出ポート814に連通する低圧室819が形成されている。
弁体830は、縮径部を介してガイド部848が連設されている。すなわち、弁体830とガイド部848とが縮径部を介して一体化された段付円筒状の「弁駆動体」を構成している。ガイド部848は、低圧室817に配置されている。そして、ガイド部848がガイド孔129(正確にはOリング142)に摺動可能に支持されることにより、弁体830の開閉方向への安定した動作が確保されている。ガイド部848と区画部材125との間には背圧室144が形成される。また、弁体830とガイド部848とを貫通する連通路851が形成され、高圧室815と背圧室144とを連通させている。これにより、背圧室144には常に、導入ポート810から導入される上流側圧力Pinが満たされる。
本実施形態においては、弁孔124の有効径Aとガイド孔129の有効径Bとが等しく設定されているため(弁体830の有効受圧面積とガイド部848の有効受圧面積とが実質的に等しくされているため)、弁体830に作用する冷媒圧力の影響はキャンセルされる。
弁体830の内方には長尺状の伝達ロッド852(「伝達部材」として機能する)が同軸状に挿通され、その伝達ロッド852の下端部に弁体832が作動連結可能に配設されている。伝達ロッド852の上端部は弁作動体134の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部854となっている。すなわち、伝達ロッド852は、その上端部が弁作動体134の底部に支持されている。伝達ロッド852の下端部は半径方向外向きに突出した係止部856となっている。伝達ロッド852の上部と弁作動体134との間には、ばね受け858が挟まれるように固定されている。そして、ガイド部848の上端部とばね受け858との間にスプリング860(「付勢部材」として機能する)が介装されている。すなわち、弁体830と伝達ロッド852とは軸線方向に相対変位可能となっているが、通常はスプリング860によりばね受け858がガイド部848に係止されるよう軸線方向に付勢され、図示のように突っ張った状態を維持する。
弁体832は、段付円柱状をなし、弁体830の下方に同軸状に配設されている。弁体832は、ガイド部材840に摺動可能に挿通され、その先端部が弁孔268に対向配置されいる。弁体832は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔268に挿抜される。そして、弁体832が弁座270に着脱することにより比例弁33が開閉される。
弁体832の上半部は円筒状の収容部となっており、伝達ロッド852の係止部856を軸線方向に相対変位可能に収容している。一方、弁体832の上端開口部が内方にやや加締められた係止部862となっており、係止部856の離脱を防止している。弁体830と弁体832との間には、弁体832を閉弁方向に付勢するスプリング864(「第2の付勢部材」として機能する)が介装されている。すなわち、弁体832と伝達ロッド852とはその収容部の長さだけ軸線方向に相対変位可能となっているが、通常はスプリング864により係止部862と係止部856とが係合する方向に付勢され、図示のように突っ張った状態を維持する。本実施形態においては、スプリング864の荷重がスプリング860の荷重よりも相当小さくなるように設定されている。例えば、図示の状態におけるスプリング860の荷重が600g重、スプリング864の荷重が100g重程度となるように設定される。一方、スプリング860の荷重とスプリング864の荷重との合力が、ガイド部848のOリング142における摺動抵抗(弁駆動体の摺動力:例えば600g重)よりも大きくなるように設定されている。なお、変形例においては、スプリング860の荷重を700g重とするなど、弁駆動体の摺動力よりも大きく設定してもよい。
以上のように構成された制御弁308は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ駆動式の制御弁として機能する。具体的には、大口径制御を実行する場合、図示の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されることにより、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって下降する。このとき、弁作動体134がばね受け858を介してガイド部848と一体となった状態でこれを押し下げるようにして弁体830を開弁方向に変位させる。弁体830は、全閉状態と全開位置との間の範囲で駆動され、比例弁38の開度が調整される。このとき、モータユニット102の駆動力としては、Oリング142の摺動力(摺動抵抗)とスプリング864の付勢力(反力)との合力に打ち勝つだけの大きさがあれば足りる。
すなわち、伝達ロッド852と弁体832との作動連結が解除され、伝達ロッド852が弁体830とともに変位可能であるため、スプリング860の付勢力は反力として作用しない。このため、モータユニット102は、荷重の小さいスプリング864の付勢力(例えば最大200g重)とOリング142の摺動力(例えば600g)との合力に打ち勝つだけの駆動力を発生すればよい。なお、弁体832の係止部862と伝達ロッド852の係止部856との係合状態が解除されるため、弁体832と弁座270との間に過度な押圧力が作用することもない。
逆に、比例弁38を開弁状態から閉弁状態に戻す場合には、ロータ172を他方向に回転駆動(逆転)させる。その場合、スプリング860の付勢力とスプリング864の付勢力との合力がOリング142の摺動力よりも大きいため、弁体830は弁作動体134との作動連結が維持されたまま一体となって閉弁方向に押し上げられる。このとき、スプリング864の付勢力がモータユニット102の駆動力と同方向に作用する。すなわち、モータユニット102の駆動力としては、Oリング142の摺動力(例えば600g重)とスプリング864の付勢力(100〜200g重)との差分(400〜500g重)に打ち勝つだけの大きさがあれば足りる。
また、小口径制御を実行する場合、図示の状態からロータ172が他方向に回転駆動(逆転)されることにより弁体832が開弁方向に変位し、比例弁33が開弁状態となる。すなわち、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって上昇し、係止部854を吊り上げるようにして伝達ロッド852および弁体832を開弁方向に変位させる。弁体832は、全閉状態と全開位置との間の範囲で駆動され、比例弁33の開度が調整される。このとき、モータユニット102の駆動力としては、スプリング860の付勢力(反力)とスプリング864の付勢力(反力)の合力に打ち勝つだけの大きさがあれば足りる。
すなわち、伝達ロッド852と弁体830との作動連結が解除され、伝達ロッド852が弁体832と一体に変位するため、背圧室144の摺動力は反力として作用しない。このため、モータユニット102は、スプリング860の付勢力(例えば最大700g重)とスプリング864の付勢力(例えば最大150g重)との合力に打ち勝つだけの駆動力を発生すればよい。なお、伝達ロッド852と弁体830との係合状態が解除されるため、弁体830と弁座126との間に過度な押圧力が作用することもない。
逆に、比例弁33を開弁状態から閉弁状態に戻す場合には、ロータ172を一方向に回転駆動(正転)させる。その場合、スプリング860の付勢力とスプリング864の付勢力との合力が閉弁方向に作用するため、モータユニット102の駆動力に対する反力は作用しない。
図18は、制御弁309の構成および動作を表す断面図である。
制御弁309は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体901とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体901は、有底筒状のボディ904に大口径の比例弁35と大口径の比例弁36とを同軸状に収容して構成される。すなわち、制御弁309は、一方の弁の全開状態を維持しつつ他方の弁の開度を設定開度に調整する複合弁として構成されている。
ボディ904の一方の側部には第1導入ポート310および第2導入ポート312が設けられ、他方の側部には導出ポート314が設けられている。ボディ904の中央部には、円筒状の区画部材930が内挿されている。区画部材930は、ボディ904に同心状に組み付けられており、その導出ポート314との対向面には内外を連通する連通孔が形成されている。区画部材930の下端面とボディ904との間には、リング状の弁座部材937が部分的に挟まれるように設けられている。区画部材125の下端面には弁孔920が形成されている。
ボディ904の内方には、弁駆動体940、弁作動体134および伝達ロッド936が同軸状に配設されている。弁作動体134の下端部には、伝達ロッド936が連結されている。弁駆動体940は段付円筒状をなし、大径の弁体部942と大径のガイド部944とが小径の縮径部946を介して一体に設けられている。
弁体部942は、縮径部946の下端にて拡径するように設けられた第1弁体950と、その第1弁体950に外挿されるように圧入された第2弁体952とを一体に含む。すなわち、弁駆動体940は、部分的に縮径部946と第2弁体952との二重管構造を有する。第1弁体950が弁座部材937に接離することにより比例弁35の開度が調整される。また、第2弁体952が弁孔920に接離することにより比例弁36の開度が調整される。第2弁体952の側部には、その内部と導出ポート314とを連通させる連通孔が設けられている。ガイド部944は、縮径部946の上端にて拡径するように設けられ、ガイド孔129に摺動可能に支持されている。ガイド部944の外周面には、シール用のOリング922が嵌着されている。
伝達ロッド936の上端部は弁作動体134の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部955となっている。また、伝達ロッド936の下端部がガイド部944の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部957となっている。弁作動体134とガイド部944との間には円板状のばね受け958が介装されている。ばね受け958の外周端部とガイド部944との間には、スプリング960(「付勢部材」として機能する)が介装されている。このため、通常の状態においては、弁作動体134と弁駆動体940とが伝達ロッド936を介して突っ張り、一体化した状態となる。
なお、スプリング960は、その荷重が弁駆動体940の摺動抵抗よりも大きくなるように設定されている。それにより、弁作動体134と弁駆動体940とが一体動作しているときにスプリング960が縮むことなく、比例弁35および比例弁36の弁開度を正確に制御できるようになっている。
ここで、本実施形態においては、第1弁体950の弁部の有効径Aとガイド部944の有効径Bとが等しく設定されているため、弁駆動体940に作用する冷媒圧力の影響が実質的にキャンセルされる。このため、冷媒圧力の変化によりモータユニット102に過度な負荷がかかることがなく、弁開度の制御を安定に行うことができる。
以上のように構成された制御弁309は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて比例弁35を閉弁状態とし、比例弁36を全開状態とする場合、図示の状態とされる。制御弁309は、例えば冷房運転時、特殊暖房運転時などにおいてこのような状態をとる。
一方、比例弁35または比例弁36の開度を調整する場合、図示の状態からロータ172を一方向に回転駆動(正転)する。それにより、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって上昇し、弁駆動体940(つまり第1弁体950および第2弁体952)を吊り上げるようにして変位させ、比例弁35が開弁状態となる。このとき、いずれか一方の開度を小さくしてその開度を制御することにより、その小さくした側の弁を流れる冷媒の流量を調整することができる。このとき、開度が大きくなる側の弁は、その開度が大きくなっても冷媒の流量は飽和状態となり、全開状態を維持する。
なお、本実施形態では、比例弁36がいわゆるスプール弁となっているため、第2弁体952が弁孔920に挿通され始めたタイミングでロータ172を停止制御することで、第2弁体952を区画部材125に突き当てることなく停止させることができる。また、比例弁35の閉弁と同時にロータ172が停止しなくとも、スプリング960が押し縮められて弁作動体134が伝達ロッド936に対して相対変位することで、弁座部材937に過度な面圧がかかることが防止される。
なお、本実施形態では図示のように、比例弁35については弁座部材937を配置して閉弁時のシール性を厳密に確保するのに対し、比例弁36についてはそのような構成としていない。これは、図14(B)に示したように、比例弁36を閉弁させるのは通常暖房運転時のみであるところ、その場合には図示のように蒸発器7が休止状態にあり、また、比例弁31および比例弁33が閉弁状態であるため、比例弁36には実質的に冷媒が流れ込んでこないためである。また、この運転は室外熱交換器5が低温状態で低圧となるときに行われるため、室外熱交換器5側からの逆流の心配も少ないためである。
このように、比例弁35と比例弁36は、共用のモータユニット102により駆動され、一方の開度の制御状態において他方の全開状態が維持される。それにより、複合弁でありながら、その一方の比例弁の開度を正確に制御することが可能となっている。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
上記実施形態においては、補助凝縮器として室内凝縮器を設ける例を示した。変形例においては、補助凝縮器を室外熱交換器とは別に設けられる熱交換器として構成してもよい。その熱交換器は、例えば車室外に配置され、冷却水(ブラインなどでもよい)を利用して熱交換を行うものでもよい。例えば図1における第1制御弁4と第2制御弁6との間に熱交換器を設ける一方、車室内に温水ヒータ等の放熱器を配置し、これら熱交換器と放熱器とを冷却水の循環回路にて接続してもよい。より具体的には、車室内のダクトにおける蒸発器7の下流側に温水ヒータを設け、補助凝縮器と温水ヒータとの間には、冷凍サイクルとは別の温水循環路を設けてもよい。補助凝縮器は、冷凍サイクルを流れる冷媒と、温水循環路を流れる冷却水との熱交換を行う。温水循環路には、その冷却水を循環させるためのポンプや、補助的に駆動されるPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータなどを設けてもよい。このようにすれば、圧縮機2から第1制御弁4へ向かう高温の冷媒と、循環回路を循環する冷却水との間で熱交換を行うことができる。このような構成においても、圧縮機2から吐出された冷媒を熱交換器により凝縮させて循環させることが可能となる。
上記実施形態では、上記冷凍サイクルを電気自動車の冷暖房装置に適用する例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を搭載したハイブリッド式の自動車の冷暖房装置に適用することが可能であることは言うまでもない。さらに、車両以外の冷暖房装置に適用することも可能である。