JP5785378B2 - 組織培養法 - Google Patents

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Description

本発明は組織培養法、より具体的にはヤトロファ属植物の組織培養法に関する。
近年、石油などの化石燃料資源の枯渇に備え、トウモロコシやサトウキビなどの植物体からバイオディーゼル燃料を生産する試みが数多く行われている。この植物体として、ヤトロファ属の植物が注目を浴びている。ヤトロファ属の植物は非食用植物であって、害虫や病原体に強い耐性を有し、痩せた土地でも栽培できるので食糧や農地との競合がなく、また、ヤトロファの種子には約30〜40%の油脂が含まれているので高い収率で油脂を回収できるという種々の利点があるからである。
しかしながら、ヤトロファ属の植物は亜熱帯から熱帯地域でしか栽培することができず、結実回数も年に1回であり、実の大きさも小さいので、自然栽培では多くの採油量を望むことができない。
そこで、植物培養細胞(カルス)を安定的に生産し、カルスからバイオディーゼル燃料を生産することが試みられている。例えば、特許文献1(特開2009−148192号公報)には、ヤトロファ属の植物から誘導したカルス細胞からヤトロファ油を抽出する方法が開示されている。この方法は、植物細胞培養用のMS(Murashige and Skoog)培地とIA(Indole acetic acid)やIBA(Indole butyric acid)、2,4−D(2,4-dichlorophenoxyacetic acid)などの種々の植物成長調節物質(PGR:Plant Growth Regulator)を用いて誘導したカルスを液体培地で増殖させ、その後増殖させたカルスから油脂を抽出する方法である。しかしながら、この方法ではカルスに含まれる油脂量が少なく、多量の油脂を生産するには不向きである。
栽培されたヤトロファ属植物からの生産量を増大させるためには、例えば、耐乾燥性や耐寒性などの耐ストレス性の改良や種子中の油脂を増やす改良を行うことが望まれる。これらの改良には人工交配や突然変異を利用することが考えられるが、その実現可能性は低い。従って、植物細胞に標的遺伝子を導入し、所望する性質を付与するという細胞工学を利用する方法が選択される。
ところで、細胞工学を利用する場合、標的遺伝子を導入した植物細胞から植物体へと再分化させる必要がある。これまでにもヤトロファ属の植物において、植物細胞から再分化させて植物体を再生させる試みが数多く報告されている。
例えば、特許文献2(US公開2008−0196121号公報)には、初期培地におい外植体からシュート形成する工程と、増殖及び伸長用の培地にシュートを移植する工程と、伸長したシュートを発根用の培地に移植する工程とにより、ヤトロファ属植物の植物体を再生する方法が開示されている。この方法においては、各培地として植物成長調節物質が0.01mg/L〜10mg/Lの濃度で加えられたMS培地等が用いられ、増殖及び伸長用の培地及び発根用の培地にはそれぞれ異なる植物成長調節物質、例えば前者にはBAP(6-Benzyl amino purine)が、後者にはIBA(Indole acetic acid)が加えられた培地が用いられている。
特許文献3(WO2008/012832公報)には、ヤトロファ属植物の葉片をTDZ(thidiazuron)とBAPとIBAを含む初期培地を用いて大量培養する工程と、TDZとBAPとジベレリン酸(gibberellic acid)とIBAを含む培地で増殖及び伸長させる工程と、IBAを含む培地で発根させる工程とによって、カルスを経ることなくヤトロファ属植物の植物体を再生させる方法が開示されている。
非特許文献1(Li et al., Establishment of an Agrobacterium-mediated cotyledon disc transformation method for Jatropha curcas, Plant Cell Tiss. Organ. Cult., 2008, Vol.92, No2, pp.173-181)には、アグロバクテリウム法により遺伝子導入されたヤトロファの形質転換体から子葉を形成させる方法が開示されている。この方法では、子葉外植体の形質転換体から、植物成長調節物質としてBA(Benzyl adenine)とIBAを含むMS培地でカルス形成が行われ、形成されたカルスからBAとIBAとGA3(gibberellic acid)を含む培地でシュート形成が行われている。そして、IBAを含む1/2濃度のMS培地(1/2MS培地)において発根が行われている。
非特許文献2(Ajay C. Deore et al., High-frequency plant regeneration from leaf-disc cultures of Jatropha curcas L.: an important biodiesel plant, Plant Biotechnol. Rep., 2008, 2, 7-11)には、植物成長調節物質としてTDZとIBAとBAの2種又は3種の組み合わせにより、ヤトロファ属植物の葉片から不定芽シュートを形成させ、さらに、BAとKN(Kinetin)とIAAとGA3を含むMS培地にて多芽化及び伸長を起こさせたことが報告されている。この報告によると、BAとIBAの組み合わせはカルス形成にはよいが、不定芽の誘導にはTDZとBAとIBAの組み合わせが好ましいとされている。
一方、ヤトロファ属植物の組織培養にあたっては、形質転換法も重要な要素となる。例えば、非特許文献3(Harold N. Trick et al., SAAT: Sonication-assited Agrobacterium-mediated transformation, Transgenic Research 6, 329-336, 1997)や非特許文献4(Malabika Roy Pathak et al., An effective method of sonication-assisted Agrobacterium-mediated transformation of chickpeas, Plant Cell Tiss. Organ. Cult., 2008, 93, 65-71)には、アグロバクテリウム菌の存在下で超音波処理を行って遺伝子を導入する方法(SAAT法)が開示されている。そして、非特許文献3では、超音波処理を行って遺伝子を導入した形質転換体から植物体への再分化が試みられている。これによると、植物ホルモンとして2,4−DとBAPとIAAとアセトシリンゴン(acetosyringon)を含む培地で形質転換体からカルスを形成し、その後、BAPとKNとIAAを含むMS培地でシュート形成した後、NAA(1-naphthaleneacetic acid)とIAAとKNを含むMS培地で発根させ、当該発根したシュートを1/2MS培地に移植している。SAAT法によると、遺伝子が安定に導入されるだけでなく、遺伝子の導入率や再分化する確率が高められる。
また、ヤトロファ属植物以外の植物においても種々の組織培養が行われている。例えば特許文献4(特開平5−316895号公報)には、メンタ属植物からのシュートから植物体に再分化させる際に、プリン塩基系のサイトカイニンを含む培地にてシュートを伸長させ、次いで植物成長調節物質を含まない培地に移植して発根させる方法が開示されている。
特開2009−148192号公報 US公開2008−0196121号公報 WO2008/012832公報 特開平5−316895号公報
Li et al., Establishment of an Agrobacterium-mediated cotyledon disc transformation method for Jatropha curcas, Plant Cell Tiss. Organ. Cult., 2008, Vol.92, No2, pp.173-181) Ajay C. Deore et al., High-frequency plant regeneration from leaf-disc cultures of Jatropha curcas L.: an important biodiesel plant, Plant Biotechnol. Rep., 2008, 2, 7-11 Harold N. Trick et al., SAAT: Sonication-assited Agrobacterium-mediated transformation, Transgenic Research 6, 329-336, 1997 Malabika Roy Pathak et al., An effective method of sonication-assisted Agrobacterium-mediated transformation of chickpeas, Plant Cell Tiss. Organ. Cult., 2008, 93, 65-71
上記のように、ヤトロファ属植物の組織培養において、シュート形成、伸長、発根の各段階において、使用する植物成長調節物質の種類や濃度を変えることが行われているが、これまでの培養方法は培地に用いられる植物成長調節物質を数多く組み合わせる必要がああったり、その培養環境には工夫を要するものであった。また、発芽数や発根までに至る成功率が低いという問題もある。
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであって、数少ない種類の植物成長調節物質の使用によりカルスから植物体への再分化・再生を可能にする方法を提供することを目的としている。
本発明の組織培養法は、ヤトロファ属植物の子葉細胞を用いた組織培養法であって、植物成長調節物質として0.05〜0.6mg/LのIBAと1.5〜3.5mg/LのBAのみを含むMS培地でヤトロファ属植物の細胞からシュートを形成させる工程と、前記形成されたシュートを植物成長調節物質として1.5〜3.5mg/LのBAのみを含むMS培地に移植して伸長させる工程と、前記伸長させたシュートを植物成長調節物質として0.1〜0.5mg/LのIBAのみを含む1/2MS培地に移植して発根させる工程を有する方法である。
本発明によれば、数少ない種類の植物成長調節物質の使用でありながら、高い形成頻度でもって組織培養法により植物体を再生させることができる。
導入されたGUS活性を指標としたアグロバクテリウム菌の感染方法による相違を示す図である。 シュート形成頻度を指標としたアグロバクテリウム菌の感染方法による相違を示す図である。 シュート形成頻度を指標とした植物成長調節物質による相違を示す図である。 伸長用培地におけるシュートの伸長経過を示す画像であって、(a)は移植後2週間後の状態、(b)は移植後4週間後の状態である。 発根用培地におけるシュートを示す画像であって、(a)は0.2mg/LのIBAを含む1/2MS培地による場合を、(b)は植物成長調節物質を含まない1/2MS培地による場合を示す。
本発明の組織培養法は、ヤトロファ属植物の細胞を用いた組織培養法であって、植物成長調節物質としてIBAとBAのみを含むMS培地でヤトロファ属植物の細胞からシュートを形成させる工程と、前記形成されたシュートを植物成長調節物質としてIBAのみを含むMS培地に移植して伸長させる工程と、前記伸長させた細胞を植物成長調節物質としてIBAのみを含む1/2MS培地に移植して発根させる工程を有する。ここで、1/2MS培地は、通常のMS培地成分をそれぞれ1/2の濃度に調節した培地である。
本発明において、植物成長調節物質とは植物の伸長や分化に影響を及ぼす物質を言い、細胞分裂に関与すると言われているサイトカイニン、細胞伸長に関与していると言われているオーキシンの両者を含むものであり、植物ホルモンを含む意味で用いられる。
本発明において、シュートとは細胞培養において通常用いられる意義で用いられ、茎葉分化できる状態にある状態を意味する。
本発明が適用される植物はヤトロファ属植物(Jatropha属植物)である。ヤトロファ属植物は、熱帯地方原産のトウダイグサ科の潅木で、ヤトロファ・ポダグリカ(Jatropha podagurica:和名 サンゴアブラギリ)、ヤトロファ・ムルチフィダ(Jatropha multifida:和名 サケバヤトロファ)、ヤトロファ・ベルランディエリ(Jatropha berlandieri:和名 ニシキサンゴ)、ヤトロファ・インテゲリマ(Jatropha integerrima:和名 ナンヨウサクラ)、ヤトロファ・クルカス(Jatropha curcas:和名ナンヨウアブラギリ)等がある。本発明で使用されるヤトロファ属植物は特に限定されないが、現油脂含量が多いという点で、ヤトロファ・クルカスが好適に用いられる。
本発明はヤトロファ属植物の細胞を組織培養し、植物体に再分化、再生させるための方法であり、当該細胞として子葉が好適に用いられる。また、再分化する頻度や再生する頻度を高めるためには、葉脈を構成する細胞が望ましく用いられる。また、カルス誘導方法は特に限定されることはなく、例えばMS培地やSH123培地などの基本培地に、2,4−DやNAA、TDZ、BA、IBAなどの植物成長調節物質が添加された培地を用いた誘導法が用いられる。
本発明の組織培養法は、形質転換させた細胞、形質転換されていない細胞のいずれの細胞にでも適用できる。形質転換方法として、アグロバクテリウム菌を利用した方法、ガンシューティング法による方法などが例示されるが、いずれの方法によってもよい。また、アグロバクテリウム菌を感染させる方法としても限定されるものではなく、培地中でアグロバクテリウム菌と単純接触させるだけでなく、例えば非特許文献3に記載されたように、アグロバクテリウム菌と接触させる際に超音波処理を行うSAAT法やアグロバクテリウム菌の懸濁液に砂を加えた状態で振動を与えるSandvortex法などアグロバクテリウム菌の感染力を高める方法が好ましい。なお、形質転換はカルス誘導前に行われる。
Sandvortex法は本願発明者らによって考案された方法である。当該方法は、植物細胞と標的遺伝子を保持するアグロバクテリウム菌を含む懸濁液に砂を加え、振動を与える方法である。砂の種類や粒子径は特に制約されるものではないが、目開きが3mm程度(6メッシュ)の篩いを通過し、目開きが0.1mm程度(100メッシュ)の篩いに残留する砂が好ましい。砂の粒子径がこれよりも大きいと植物細胞に十分に傷を付けることができず、また小さい場合には植物細胞への傷が大きくなりカルス形成ができなくなるおそれが高くなる、遺伝子の導入効率が却って低下するなどの懸念がある。具体的には、50〜70メッシュサイズの白石英砂が好適に使用できる。
振動の付与には砂と植物細胞が接触して植物細胞に傷を与えることができる限り任意の装置を用いることができるが、その作業効率を考慮すると、ロータリー式の振動装置、例えば商品名Vortex Mixerとして知られている振動装置が好適に用いられる。この振動装置は高速で回転運動をする円盤状の回転部材を有する。この回転部材に試験管などの容器の底を接触させると、回転部材との接触部分が回転し、手が容器を掴んだ箇所が支点となって容器が円錐状に回転して容器に振動が加えられ、内容物が攪拌される。
振動を加える時間は適宜調整される。砂の粒子径や容器の形状、容器の容量などによっても異なるが、その目安としては概ね10秒〜3分程度、好ましくは10〜30秒である。10秒よりも短いと十分な傷を与えられず遺伝子の導入が不十分となりやすい。また、3分よりも長くなると傷が大きくなり、植物へのダメージが大きくなりカルスの形成頻度が低下するなど遺伝子の導入効率が低下するおそれがある。
本発明においては、植物成長調節物質としてIBAとBAのみを含むMS培地によりシュート形成が行われる。IBA濃度は0.05〜1.0mg/L(MS培地)であり、好ましくは0.1〜0.5mg/L、最適には0.5mg/Lである。また、BA濃度は1.5〜3.5mg/L(MS培地)、好ましくは2〜3mg/Lであり、最適には3mg/Lである。これらの濃度外では、シュートの形成数が低下したりシュートの安定した成長が見られなくなる。なお、シュート形成には、前記培地に0.7%程度の寒天が加えられた固体培地が好ましく用いられる。MS培地にIBAとBAとTDZを加えた培地においても同様に高い頻度でシュートが形成されるが、TDZを加えた場合にはシュート形成数や発芽数はTDZを加えない場合よりも多い。しかしながら、TDZを加えた場合にはシュートの伸長はTDZを加えない場合よりも遅くなる傾向にある。
シュート形成は、4〜8週間、温度や湿度、照明時間が管理された人工的な環境下で行われる。温度、湿度などの培養条件は適宜変更されうるが、例えば25〜30℃、65〜85%RH、約2,000Luxの照明の下、16時間の明時間という培養条件が例示される。
次いで、カルスから得られたシュートは、植物成長調節物質としてBAのみを含むMS培地に移植され、さらに伸長される。移植は、シュートからの発芽が視認され、その後安定して成長したことが確認できた際に行われる。BA濃度は1.5〜3.5mg/L(MS培地)、好ましくは2〜3mg/Lであり、最適には2mg/Lである。この濃度外では伸長速度が遅くなったり発芽数が少なくなる傾向にある。この培地にも0.7%程度の寒天が加えられた固体培地が好ましく用いられる。当該培地においては、シュートが伸長するだけでなく、新たなシュートも形成される。
シュートが2〜3cm程度の大きさになると伸長したシュートは発根用の培地に移植される。当該発根用の培地は、MS培地濃度を半分にした1/2MS培地に、植物成長調節物質としてIBAのみが加えられた培地である。IBA濃度は0.1〜0.5mg/L(1/2MS培地)、好ましくは0.1〜0.2mg/L、最適には0.2mg/Lである。当該培地も0.7%程度の寒天が添加された固体培地が用いられる。なお、シュートの伸長及び発根は、シュート形成時とほぼ同じ培養条件で行われる。
以上のように本発明においては、シュート形成、シュート伸長、発根の各段階において使用される植物成長調節物質はIBAとBAの2つの物質のみであり、数少ない植物成長調節物質で植物細胞(カルス)から植物体への分化を行える。
次に実施例に基づきさらに本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲及びこれと均等に含まれるすべての変更が本発明に含まれることが意図される。
〔植物細胞の調整〕
ヤトロファ属植物の植物細胞として、ヤトロファ・クルカス(Jatropha curcas)の子葉を使用した。種皮を取り除いた種子核を70%濃度のエタノールに10分、続いて15〜30%に希釈したアンチホルミンに5分浸漬して滅菌した後、3%ショ糖を含むMS培地にて発芽させた。
〔形質転換法の検討〕
アグロバクテリウム菌の調整:アグロバクテリウム菌は、そのTiプラスミドを無害化したLBA4404株(M. W. Bevan et al. Nucleic Acids Res. 12:8711-8721(1984))を使用した。形質転換の確認のために、市販品として入手可能なβ−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子をバイナリーベクターに組み込んで作られたプラスミドpBI121を購入して使用し、アグロバクテリウム菌に形質転換した(R. A. Jefferson et al. EMBO J. 6:3901-3907(1987)参照)。前記のβ−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を保有するアグロバクテリウム菌LBA4404/pBI121を、マーカーであるカナマイシンを50μg/mlの濃度で含有するL−液体培地にて、30℃で一晩培養した。
次に、MS培地に3%のショ糖を加え、植物成長調節物質として2mg/LのBAと0.2mg/LのIBAを添加した培地に、上記ヤトロファ属植物の幼芽組織片を、ナイフで5mm程度の大きさに切断して移植し、30℃、16時間明期8時間暗期の光条件で1週間前培養した。
上記方法で調整したアグロバクテリウム菌LBA4404/pBI121を、光波長600nm、光路長1cmで細胞濁度0.5になるようにして懸濁液を作製した。この液10〜12.5mLを50mLのプラスティックチューブに分注し、前記の前培養した子葉片を加えた。ここに50〜70メッシュサイズの白石英砂(Sigma-Aldrich社製)を適量加え、ロータリー式の振動装置(VORTEX-GENIE 2 エムエス機器株式会社)によって振動を付与し(Sandvortex法)、あるいは子葉片を加えた懸濁液を超音波処理(超音波付与)によって組織片に傷害を与えた(各処理時間は表1による。)。そして25℃、遮光条件下で3日間静置培養して、アグロバクテリウム菌を感染させた。
その後、アグロバクテリウム菌を感染させた植物片(子葉片)よりアグロバクテリウム菌を除くために、200μg/mLのCefotaximeを加えた滅菌水に数分間浸漬した後、MS培地に3%のショ糖と200μg/mLのCefotaxime、植物成長調節物質として2mg/LのBAと0.2mg/LのIBAを添加した培地に移植した。
〔カルス及びシュートの形成〕
引き続いてアグロバクテリウム菌を感染させた子葉片を、MS培地に3mg/LのBAと0.1mg/LのIBA、3%ショ糖及び200μg/mLのCefotaxime、マーカーであるカナマイシンを20μg/mlで添加した固体培地(0.7%の寒天を含む。)に移植した。その後、形成されたカルスを3mg/LのIBAと0.5mg/LのBA、0.7%の寒天、さらに20μg/mlのカナマイシンを含むMS固体培地に移植し、25℃の温度、2,000lux16時間の明時間の環境下で8週間培養し、シュートを形成させた。得られたシュート中に発現したGUS活性を、Kosugiらの方法(Kosugi et al., An improved Assay for beta-Glucuronidase in Transformed Cell: Methanol Almost Completely Suppresses a Putative Endogenous beta- Glucuronidase Activity. Plant Science. 70, 133-140(1990))に従って測定した。また、比較対象として、Sandvortexの替わりに従来法である単純振とう及び超音波処理により細胞に傷害を与え、Sandvoretx法との対比を行った。GUS活性における比較結果を表1及び図1に、カルス形成数及びシュート形成数における比較結果を表2及び図2に示した。これらの結果は3回の繰り返し実験を行った結果を平均したものである。いずれの処理においても標的遺伝子が安定に導入され、導入された遺伝子が発現されていることが確認された。また、20秒程度のSandvortex処理によって従来方法に比べて効率よく形質転換されていることが確認された。このように、Sandvortex法が従来方法である振とう法やSAAT法に比べて有利であることが証明された。もっともSAAT法も振とう法に比べて有利に形質転換できる。
次に、形質転換の処理方法の相違に基づく遺伝子の発現安定性について検討を加えた。β−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子及びハイグロマイシン抵抗性遺伝子を組み込んだプラスミドpREXH1−GUS使用して、上記と同様な方法により遺伝子導入を試みた。遺伝子の導入は、超音波処理により植物体の葉にアグロバクテリウム菌を感染させることにより行った。その結果を表3に示す。なお、培養には上記組成にさらにハイグロマイシン20μg/mlを添加した培地を用いた。表3には、発現したGUSを顕微鏡観察により5段階評価(発現量大:5〜発現量小:1)を行い、その結果を平均値((1st score+2nd score+・・・+nth score)×100/5n:但しnはサンプル数)で示したGUS発現量(GUS transient expression)とカルス形成率を示した。GUS発現量は一過性の発現の程度を示す指標であり、カルス形成率は安定した発現の程度を示す指標であるが、植物体の葉を用いた場合には、いずれの指標においても1分の超音波処理が効果的であることが判明した。
〔シュート形成のための培地検討〕
シュート形成のための培地条件の検討を行った。Sandvortex法(15秒間の振動)によって形質転換された細胞から得られたカルスを用いてシュート形成を試みた。植物成長調節物質としてBAとIBAとTDZを用いた。表に示す組み合わせ及び濃度で2種又は3種の植物成長調節物質をMS培地に添加し、0.7%の寒天を含む固体培地を作製した。25℃の温度、2,000Luxの照明下16時間の明時間の培養条件で6週間培養した。シュート形成した外植体の数を計数し、用いた外植体の数に対してシュート形成された外植体の数の割合(頻度(%))を求めた。その結果を表及び図3に示した。これらの結果は3回の繰り返し実験の結果を平均したものである。BA(1mg/L)とTDZ(0.5又は1mg/L)とIBA(0.1mg/L)の組み合わせが最も高い頻度でシュートを形成したが、それよりもBA濃度が高いBA(2又は3mg/L)とIBA(0.1mg/L)の組み合わせでもそれとほぼ同じ頻度でシュートを形成し、少ない種類の植物成長調節物質を用いても高い頻度でシュート形成されることが見いだされた。
〔シュート伸長〕
次にシュート伸長のために、形成されたシュートを植物成長調節物質としてBA(2mg/L)のみを含むMS培地に移植した。0.7%の寒天を含む固体培地を用い、25℃の温度、2,000luxの照明下16時間の明時間の培養条件で6週間培養した。図4にはその伸長経過を示す画像を示した。図4からも理解されるようにBAのみを用いた場合でも良好にシュート伸長が観察された。
〔発根〕
引き続いて2〜3cm程度の高さに成長したシュートを、発根のために発根用の培地に移植した。発根用の培地には、植物成長調節物質としてIBA(0.2mg/L)のみを含み、基本培地であるMS培地濃度を半分にした1/2MS培地を用いた。比較としてIBA(0.2mg/L)を含まない1/2MS培地を用いた。図5には移植後2週間経過後のシュート画像を示した。培養条件は前記シュート伸長時と同じである。両培地において発根及びシュート伸長が確認されたが、IBAを含まない培地に比べると、IBAを含む培地の方が良好な発根、シュート伸長が確認された。以上の工程により、ヤトロファ・クルカスの子葉から植物体に再分化・再生させることができた。このように本発明の方法によってアグロバクテリウム菌による感染から約24週間でGUS遺伝子が導入された形質転換体であるヤトロファ属の再生体が得られた。
本発明の組織培養法は、バイオディーゼル燃料の原料として注目を浴びているヤトロファ属植物の大量培養、分子育種に貢献する。

Claims (7)

  1. ヤトロファ属植物の子葉細胞を用いた組織培養法であって、
    植物成長調節物質として0.05〜0.6mg/LのIBAと1.5〜3.5mg/LのBAのみを含むMS培地でヤトロファ属植物の細胞からシュートを形成させる工程と、
    前記形成されたシュートを植物成長調節物質として1.5〜3.5mg/LのBAのみを含むMS培地に移植して伸長させる工程と、
    前記伸長させたシュートを植物成長調節物質として0.1〜0.5mg/LのIBAのみを含む1/2MS培地に移植して発根させる工程を有することを特徴とする組織培養法。
  2. 0.5mg/LのIBAと2mg/L又は3mg/LのBAを含むMS培地でシュートを形成させる工程と、
    2mg/LのBAを含むMS培地で形成されたシュートを伸長させる工程と、
    0.2mg/LのIBAを含む1/2MS培地で発根させる工程を有することを特徴とする請求項1に記載の組織培養法。
  3. 前記ヤトロファ属植物の子葉細胞は、子葉片と砂とアグロバクテリウム菌を含む懸濁液にロータリー式振動装置による振動を付与してアグロバクテリウム菌を感染させた細胞であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組織培養法。
  4. 前記砂の粒子径は、50〜70メッシュである請求項3に記載の組織培養法。
  5. 前記砂は白石英砂である請求項3又は4に記載の組織培養方法。
  6. 前記ヤトロファ属植物の子葉細胞は、子葉片とアグロバクテリウム菌を含む懸濁液を超音波処理してアグロバクテリウム菌を感染させた細胞であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組織培養法。
  7. ヤトロファ属植物の子葉片と、砂と、外来遺伝子を組み込んだアグロバクテリウム菌とを含む懸濁液に、ロータリー式振動装置による振動を付与してアグロバクテリウム菌を感染させたヤトロファ属植物の形質転換細胞を得る工程;
    植物成長調節物質として0.05〜0.6mg/LのIBAと1.5〜3.5mg/LのBAのみを含むMS培地で、前記形質転換された細胞からシュートを形成させる工程と、
    前記形成されたシュートを植物成長調節物質として1.5〜3.5mg/LのBAのみを含むMS培地に移植して伸長させる工程と、
    前記伸長させたシュートを植物成長調節物質として0.1〜0.5mg/LのIBAのみを含む1/2MS培地に移植して発根させる工程を有することを特徴とする形質転換ヤトロファ属植物を高効率に生産する方法。
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