JP5781417B2 - アラミド心線及び動力伝動用ベルト - Google Patents
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アラミド心線は、アラミド繊維のフィラメント群を無撚りでリボン状に引き揃えたアラミド繊維フィラメントの束(アラミド繊維単糸という)を2〜3本収束して下撚り係数0〜1の範囲で下撚りし、この下撚り糸を通常2〜3本程度引き揃えて、この下撚り糸の撚り方向と逆方向もしくは同一方向に上撚り係数1〜4の範囲で撚糸したコードである。
このアラミド繊維コードを、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の固形分質量をRFLの固形分質量1に対して0.2〜0.4の割合で混合した第1のRFL液に浸漬した後に加熱乾燥し、このRFL液をフィラメント群の内部(フィラメント群の隙間)まで含浸、付着させ、さらに前記第1のRFL液と同じ組成であって、固形分濃度が前記第1のRFL液より小さい第2のRFL液で処理をした工程と、この第2のRFL液で処理をしたアラミド繊維コードをゴム糊に浸漬して乾燥させる工程と、を経て作製される。
本発明においてアラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維)としては、パラ系アラミドとメタ系アラミドのいずれを用いることもできるが、心線に用いるアラミド繊維としてはモジュラスが高いパラ系アラミドが好ましい。例えばコポリパラフェニレン−3,4′オキシジフェニレン・テレフタルアミド(例えば帝人(株)の「テクノーラ」)、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド(例えば帝人(株)の「トワロン」、東レ・デュポン(株)の「ケブラー」)などを挙げることができる。
前記第1のRFL液では、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物とゴムラテックス、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂とを混合して調製されるものであり、前記ラテックスの種類は特に限定されるものではなく、接着対象となるゴムの種類に応じて適宜選択することができる。例えば、後述のようにRFL処理後に付着させるゴム糊のゴム組成物がエチレン・α−オレフィンゴムを主成分とするものの場合には、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体からなるニトリル(NBR)、ブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムのラテックス等を好適に使用することができる。勿論、ラテックスとしてはこれら以外に、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、水素化ニトリルゴム、天然ゴムなどのラテックスを用いることもできる。これらのラテックスは1種を単独で用いる他、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
次に、このように上撚りをかけたアラミド繊維コードを第2のRFL液で処理する。第2のRFL液としては、上記の第1のRFL液と同様の組成であるレゾルシンとホルマリンの初期縮合物とゴムラテックス、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂とを混合して調製されるものであるが、第2のRFL液は、水などの溶媒でその濃度を2〜7質量%に調整して用いられるものである。そして、この第2のRFL液に、第1のRFL液で処理したアラミド繊維コードを浸漬して、乾燥させることによって、第2のRFL液の被膜を形成する。浸漬や乾燥の条件は、特に限定されるものではないが、浸漬の時間は1〜10秒程度に設定し、乾燥は180〜240℃で1〜5分程度行なうのが好ましい。
の結束性を高める効果が不十分になる。一方、第2のRFL液の濃度が7質量%を超えて高くなると、形成されるRFL被膜の膜厚が厚くなり、上記の第1のRFL液で形成される被膜との合計厚みが過度に大きくなる。このため、RFL被膜内部に破壊が発生し易くなって、RFL処理による接着効果が却って損なわれるおそれがあると共に、アラミド心線の柔軟性が損なわれて屈曲疲労性が低下するおそれもある。
上記のように上撚りしたアラミド繊維コードを第2のRFL液で処理した後、このアラミド繊維コードをゴム糊で処理する。ゴム糊としては、心線の表面にゴム層を形成するために従来から使用されているものを用いることができるものであり、後述の接着ゴム層のゴムとの接着性が優れるものであれば何でもよい。例えは、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、エチレン−α・オレフィン(EPM、EPDMなど)などのゴム成分とイソシアネート化合物、エポキシ化合物などの樹脂成分とを、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶剤に溶解乃至分散したものを用いることができる。ゴム糊の濃度は特に限定されるものではないが、2〜10質量%程度の範囲が好ましい。
尚、ゴム被膜を形成する材料として、ゴムと架橋剤とを含む市販の接着剤を用いてもよい。そのような接着剤としては、例えばケムロック402(ロードコーポレーション製)が挙げられる。
図1は上記のようにして作製したアラミド心線1を用いた動力伝動用ベルトの一例を示すものである。アラミド心線1は接着ゴム層6に埋設してベルト長手方向に沿って配置され、この接着ゴム層6の内周の伝動面側に隣接して圧縮ゴム層2を積層すると共に、接着ゴム層6の背面側に隣接して伸長ゴム層8を積層している。圧縮ゴム層2にはその内周面にV溝を切削することによって、ベルト長手方向に沿う複数本のリブ9が形成されている。図1において短繊維10は圧縮ゴム層2に含有され、ベルト幅方向に配列し、ベルトの耐側圧性を維持している。また、ベルト背面には、織物、不織布、編物などで形成される補強布(図示せず)を積層してもよい。
1670dtex(フィラメント数1000本)のアラミド繊維(帝人(株)製「テクノーラ」)からなる無撚りでリボン状に引き揃えたアラミド繊維フィラメントの束(アラミド繊維単糸という)1本を、下撚り数を3.7回/10cmで下撚り(Z撚り)した後、これを2本束ね、上撚り数を13.1回/10cmで下撚りと同じ方向に上撚り(Z撚り)し、アラミド繊維コードを作製した。
実施例1と同じアラミド繊維単糸1本を、下撚り数を3.7回/10cmで下撚り(Z撚り)した後、これを2本束ね、上撚り数を13.1回/10cmで下撚りと同じ方向に上撚り(Z撚り)し、アラミド繊維コードを作製した。前記コードを表1に示す組成からなるRFL液(RFL7〜11)に浸漬して、乾燥する処理をした。また浸漬は、アラミド繊維単糸をRFL液に3秒間通過させることによって行ない、加熱乾燥は230℃、1.5分間の条件で行なった。次に、RFL処理したアラミド繊維コードを表1に示す組成からなる固形分濃度を変えた第2のRFL液(RFL18〜22)に浸漬して、乾燥する処理をした。処理条件は第1のRFL液の場合と同じである。
アラミド心線のホツレ性を評価するため、次の方法でVリブドベルトを作製した。まず、表面が平滑な円筒状の成形モールドの外周に、1プライのゴム付綿帆布を巻き付け、その外側に表5のゴム組成物の未加硫の接着ゴム用シートを巻き付けた。次にこの接着ゴム層用シートの上からアラミド心線をスピニングして巻き付け、さらにこの上に表4のゴム組成の未加硫接着ゴム層用シート及び未加硫の圧縮ゴム層用シートをこの順に巻き付けた。この後、圧縮ゴム層用シートの外側に加硫用ジャケットを配置した状態で、成形モールドを加硫缶に入れて加硫した。そして加硫して得られた筒状の加硫ゴムスリーブを成形モールドから取り出し、加硫ゴムスリーブの圧縮ゴム層をグラインダーによりV溝状に研削することによって複数のリブを形成した後、加硫ゴムスリーブを輪切りするようにカッターで周方向に切断することによって、Vリブドベルト(図1参照)に仕上げた。
屈曲疲労試験用の試験片を次のようにして作製した。まず表4に示す組成の未加硫のEPDM配合ゴムシート(厚み0.5mm)を円筒状の金型に巻き付け、この上にアラミド心線をスパイラル状に巻き付けた後、さらにこの上に同じ未加硫のEPDM配合ゴムシート(厚み0.5mm)を巻き付け、これにジャケットを被せて加熱することよって加硫し、加硫ゴムスリーブを作製した。そしてアラミド心線が2本埋設され、且つカットした側面にアラミド心線が露出しないように加硫ゴムスリーブを周方向にカッターでカットし、幅3mm、長さ50cm、厚み1.5mmの試験片を作製した。
強力保持率(%)=(屈曲後の強力/屈曲前の強力)×100
の式から強力保持率を算出した。そして強力保持率が60%以上であれば「◎」、40%以上60%未満であれば「○」、20%以上40%未満であれば「△」、20%未満であれば「×」と評価し、評価が「○」以上であれば耐屈曲疲労性は良好と判定した。
表5に示す組成の未加硫のEPDM配合ゴムシート(厚み4mm)の一方の面に、長さ150mmのアラミド心線を25mm幅となるように複数本平行に揃えて並べ(図3(a)にアラミド心線1を平行に揃えて並べた状態を示す)、EPDM配合ゴムシートの他方の面に帆布を重ねて、プレス板で0.2MPa(2kgf/cm2)の圧力をかけてプレスし、さらに160℃で30分間加熱して加硫することによって、剥離試験用の短冊試験片(幅25mm、長さ150mm、厚み4mm)を作製した。この試験片を用いて、JIS K6256に準拠して、引張速度50mm/minで剥離試験を行ない、アラミド心線とゴムとの接着力(加硫接着力)を室温雰囲気下で測定した。そして接着力が500N以上であれば「◎」、400N以上550N未満であれば「○」、250N以上400N未満であれば「△」、250N未満であれば「×」と評価し、評価が「○」以上であれば接着性は良好と判定した。
2 圧縮ゴム層
6 接着ゴム層
8 伸長ゴム層
9 リブ
Claims (3)
- 撚りをかけて形成されるアラミド繊維コードからなるアラミド心線であり、前記アラミド繊維コードを、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の固形分質量をレゾルシン・ホルマリン・ラテックスの固形分質量1に対して0.2〜0.4の割合で混合し、且つラテックスがニトリルゴムラテックスである、第1のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス液に浸漬して乾燥させる工程と、さらに前記第1のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス液と同じ組成であって、固形分濃度が前記第1のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス液より小さい第2のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス液で処理をした工程と、前記処理をしたアラミド繊維コードをゴム糊に浸漬して乾燥させる工程と、を経て作製されてなることを特徴とするアラミド心線。
- 前記第1のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス液の固形分濃度が10〜30質量%であり、前記第2のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス液の固形分濃度が2〜7質量%である請求項1記載のアラミド心線。
- ゴム中に心線としてアラミド心線を埋設し、ベルト側面を露出させた動力伝動用ベルトであり、前記アラミド心線がアラミド繊維フィラメント群からなる原糸を撚糸したコードを、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の固形分質量をレゾルシン・ホルマリン・ラテックスの固形分質量1に対して0.2〜0.4の割合で混合し、且つラテックスがニトリルゴムラテックスである、第1のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス液に浸漬して乾燥させる工程と、さらに前記第1のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス液と同じ組成であって、固形分濃度が前記第1のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス液より小さい第2のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス液で処理をした工程と、前記処理をしたアラミド繊維コードをゴム糊に浸漬して乾燥させる工程と、を経て作製されてなることを特徴とする動力伝動用ベルト。
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