しかし、上記した特許文献1に記載されるような従来の誘導加熱装置では、加熱部自体を発熱させ、その熱を熱媒体に伝達させて熱媒体を加熱する、所謂間接誘導加熱であるため、ロスが生じ、加熱効率の点で問題がある。そこで、加熱部の熱を熱媒体に多く伝達させるために、加熱部と熱媒体との接触面積を大きくすることが考えられるが、この場合、装置の大型化が懸念される。
一方、一般に広く知られている風力発電システムでは、出力平滑化のため蓄電システムが設置されているが、蓄電システムには電力を蓄電池に蓄えるためにコンバータなどの部品が必要である。そのため、システムの複雑化、電力損失の増大を招く。また、大型の風力発電システムの場合では、発電量に応じた大容量の蓄電池が必要であり、システム全体としてのコスト増大を招く。
また、風力発電システムの故障原因の多くは、増速機、より具体的にはギアボックスのトラブルによるものである。ギアボックスが故障すると、通常はギアボックスを交換することで対処しているが、塔の上部にナセルが設置されている場合は、ギアボックスの取り付け・取り外しに多大な時間と労力を要する。そこで最近では、増速機を必要としないギアレスの可変速風力発電機もある。
しかし、ギアレスの場合、具体的には発電機の極数を増やすこと(多極発電機)で対応するが、増速機を使用する場合と比較して、発電機が大型・重量化する。特に、5MWクラスの大型の風力発電システムでは、発電機の重量が300トン(300000kg)を超えるものと考えられ、ナセル内に配置することが困難である。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、熱媒体を直接誘導加熱し、この熱媒体の熱を電気エネルギーに変換して発電する発電システムを提供することにある。
本発明の発電システムは、熱媒体を加熱する誘導加熱装置と、前記熱媒体の熱を電気エネルギーに変換する発電部とを備え、熱媒体が導電性流体である。誘導加熱装置は、熱媒体を収容する配管と、この配管の外部に設けられ、変動磁束を発生する磁束発生部とを備える。そして、磁束発生部の変動磁束により、配管内の熱媒体に電磁誘導を生じせしめ、熱媒体を直接誘導加熱することを特徴とする。
本発明の発電システムは、誘導加熱装置を利用して加熱した熱媒体の熱を発電に利用するものであり、従来にない新規な発電システムである。一例としては、加熱した熱媒体を発電部側に送り、熱交換器により蒸気を生成し、その蒸気を利用して蒸気タービンにより発電機を回転させて発電することが挙げられる。そして、本発明の発電システムによれば、熱を電気エネルギーに変換する構成としたことで、蓄熱器を用いて熱としてエネルギーを蓄えることができ、安定した発電システムを実現できる。また、熱を蓄熱器に蓄えると同時に蓄熱器から発電に必要な熱を取り出すことができる発電システムは、蓄電システムに比べて簡易であり、蓄熱器も蓄電池に比べれば安価である。
さらに、本発明の発電システムでは、熱媒体に導電性流体を用い、この熱媒体に電磁誘導により電流を生じさせ、熱媒体自体を発熱させる(所謂、直接誘導加熱)ため、加熱効率(発熱効率)が高く、誘導加熱装置を小型化できる。なお、ここでいう導電性流体とは、液体状態で電流を流すことができ、導電率が1000S/m以上を満たすものをいう。
本発明の発電システムの一形態としては、熱媒体が、溶融金属、溶融塩、及び電解液からなる群から選択される少なくとも一種であることが挙げられる。
上記列挙した導電性流体は通常、いずれも液体状態で導電性を有し、水に比較して導電率が高い特性があることから、熱媒体に好適に利用できる。
溶融金属は通常、溶融塩や電解液に比較して高い導電率を有することから、特に好適である。溶融金属を利用する場合、配管内を流通させることを考慮して、使用温度範囲(熱媒体を発熱させるときの目標設定温度の範囲)内において液体状態(溶融状態)となる融点と沸点とを有することが好ましい。溶融金属としては、例えば、Na、Mg、Al、Zn、Ga、Sn、Pb、及びその合金(例えば、半田合金)が挙げられる。これらの金属の中では、Na、Sn、Pb、半田合金は融点が低い。また、これらの金属の中では、Na、Mg、Alは軽量であるので、配管内を流通させ易い。これらの金属は、常温常圧下では固体状態で存在するが、固体状態であっても電流を流すことができるので、電磁誘導により直接加熱することができる。そのため、配管内に収容されている溶融金属が冷えて固体状態になっていたとしても、電磁誘導により直接加熱して、液体状態に戻すことができる。このとき、配管内の熱媒体のうち電磁誘導により直接加熱されない箇所の熱媒体は、電磁誘導により直接加熱された熱媒体の熱が伝導することによって加熱され、液体状態にすることが可能である。
溶融塩は、溶融金属に比較して軽量であるので、配管内を流通させ易い。溶融塩としては、例えば、ZnCl2、BeCl2、LiClO3が挙げられ、これらの溶融塩の中では、導電率や取り扱い性を考慮するとZnCl2が好適である。これらの溶融塩は通常、常温常圧下では固体状態で存在するが、固体状態では電流を流すことができないので、電磁誘導により直接加熱することができない。そこで、配管内に収容されている溶融塩が冷えて固体状態にならないように、例えば、配管に溶融塩を加熱するヒータなどの保温手段を設けたり、誘導加熱装置を停止するときに、配管から保温機能を有する容器に溶融塩を回収すると共に、誘導加熱装置を起動するときに、容器から配管に溶融塩を供給したりすることが挙げられる。
電解液は、溶融金属に比較して軽量であるので、配管内を流通させ易い。また、電解液は、常温常圧下でも液体状態で存在するので、溶融塩のように上記した保温手段を別途設ける必要がない。電解液としては、例えば、KCl、NaClが挙げられる。溶融塩や電解液を利用する場合、導電率を高めるために、例えば、Al、Cu、炭素からなる導電性フィラーを含有してもよい。
一方、配管は、熱媒体と反応せず(耐食性)、耐熱性を有する材料で形成すればよく、ステンレス鋼などの導電性材料で形成したり、セラミックスなどの非導電性材料(絶縁体)で形成してもよい。例えば、オーステナイト系ステンレス鋼やハステロイなどの金属材料や、アルミナなどのセラミックスで形成することが挙げられる。配管に金属材料を用いた場合、外部からの変動磁束により、配管自体も誘導加熱されるが、本発明では熱媒体の自体の発熱により、熱媒体の加熱を主として行う。そのため、加熱部の熱を熱媒体に専ら伝達させるために、配管と熱媒体との接触面積を大きくする必要がない。また、上記列挙した導電性流体は通常、水に比較して沸点が高く、例えば100℃超まで加熱しても液体状態を維持することができるので、蒸気化による内圧の上昇を防ぐことができる。そのため、配管の薄肉化が可能である。
本発明の発電システムにおいて、誘導加熱装置における配管の形態としては、以下の第1〜第3の形態とすることが挙げられる。
第1の形態は、配管が、磁束発生部の変動磁束を横切るように配置されている形態である。
この形態では、配管内の熱媒体に変動磁束が鎖交し、熱媒体に磁束が貫通することで、熱媒体に電磁誘導により渦電流が発生し、熱媒体の電気抵抗により熱媒体が発熱する。
第2の形態は、配管が、磁束発生部の変動磁束が通る磁路の周囲に配置され、その周方向に連続する環状部を有する形態である。
この形態では、変動磁束が通る磁路の周囲に配置された配管の環状部内に収容された熱媒体が、電気的な閉回路を構成している。そのため、変動磁束が磁路を通ることで、電気的な閉回路を構成する環状部内の熱媒体に誘導電流が発生し、熱媒体の電気抵抗により熱媒体が発熱する。
第3の形態は、配管が、磁束発生部の変動磁束が通る磁路の周囲に配置され、コイル状に巻回されたコイル部を有する。そして、コイル部の軸方向に沿って配置され、コイル部内の上流側と下流側の前記熱媒体を電気的に繋ぐ接続導体を備える形態である。
この形態では、変動磁束が通る磁路の周囲に配置された配管のコイル部内に収容された熱媒体と、接続導体とで電気的な閉回路を構成している。そのため、変動磁束が磁路を通ることで、電気的な閉回路を構成するコイル部内の熱媒体に誘導起電力(逆起電力)が生じ、この誘導起電力によってコイル部内の熱媒体に誘導電流が発生し、熱媒体の電気抵抗により熱媒体が発熱する。
上記した第1〜第3のいずれの形態であっても、熱媒体を直接誘導加熱することができる。中でも、磁束発生部が発生する変動磁束の磁路の周囲に配管内の一部の熱媒体が電気的な閉磁路を構成するよう配管を配置した第2、第3の形態は、磁束発生部が発生する変動磁束の磁路を横切るように配管を配した第1の形態に比較して、発熱効率を高めることができる。これは、第1の形態では、外部から配管内の熱媒体に磁束を貫通させるために、第2、第3の形態に比べて、磁場発生部に高い起磁力が必要となるためである。
本発明の発電システムにおいて、誘導加熱装置における磁束発生部から発生する変動磁束が、コイルによるものであることが好ましい。
磁束の発生手段としては、永久磁石やコイル(電磁石)を用いることができる。コイルとしては、銅線などの常電導コイルや超電導線材を用いた超電導コイルが挙げられる。コイルを用いる場合、永久磁石を用いる場合と比較して、強い磁場を発生させることができる。具体的には、コイルに通電する電流を大きくすることで、強い磁場を発生させることができ、通電電流を制御することで磁場の強さを調整することも可能である。発熱量は磁場強度の2乗に比例することから、発熱量の更なる向上が期待できる。また、コイルであれば、永久磁石と比較して、温度上昇による磁気特性の低下や、経時的な磁気特性の劣化が起こり難い。したがって、磁束発生部から発生する磁束がコイルによるものである場合、通電電流を大きくして十分な磁場強度を維持し易く、熱媒体を発電に適した温度(例えば、100℃〜600℃)まで発熱させるのに十分な性能(熱エネルギー)を得ることができる。例えば、上記した特許文献1の誘導加熱装置では、加熱部に対向し、加熱部の近い位置に永久磁石が配置されているため、加熱部からの熱の影響により永久磁石の温度が上昇し易く、結果的に磁気特性が低下して、熱媒体を上記の温度まで加熱できない虞があると考えられる。
さらに、コイルに電流を流し、磁場を発生させる場合、超電導コイルであれば、電気抵抗が極めて小さく、大電流を流してもコイルに発熱(損失)が実質的に生じない。そのため、常電導コイルに比較して、大電流を流すことによるコイルの発熱(損失)を抑制することができ、電力損失が小さいながらも極めて強い磁場を発生させることができる。
本発明の発電システムは、誘導加熱装置を利用して加熱した熱媒体の熱を発電部により電気エネルギーに変換して発電することができる。そして、熱媒体が導電性流体であり、熱媒体を直接誘導加熱する構成としたことで、発熱効率が高く、誘導加熱装置を小型化できる。
本発明の実施の形態を、図を用いて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
本発明の発電システムは、熱媒体を加熱する誘導加熱装置と、熱媒体の熱を電気エネルギーに変換する発電部とを備える。ここでは、まず、誘導加熱装置について説明し、次いで、発電システム全体について説明する。
<誘導加熱装置>
(実施の形態1)
図1〜3に示す実施の形態1に係る誘導加熱装置101は、熱媒体を収容する配管14と、磁束を発生する磁束発生部15とを備え、その他、磁束発生部15が設けられる回転体11と、配管14が取り付けられるステータ部12とを備える。以下、誘導加熱装置101の構成を詳しく説明する。
回転体11は、回転可能に支持された回転軸21を有し、軸方向から見た外形形状が、径方向に突出する複数の凸部111を有する歯車形状に形成されている。この例では、8つの凸部111を有し、各凸部111が周方向に等間隔に形成されている。また、回転体11の外周には、後述する磁束発生部(この例ではコイル15)が設けられている。なお、ここでは、回転体11が反時計方向に回転するものとする(図2中の矢印は回転方向を示す)。
回転体11を形成する材料としては、磁性材料、非磁性材料を問わず、機械的強度を有し、コイル15を支持可能な材料であればよく、構造強度と長期耐久性(耐候性及び耐食性)に優れる材料が好ましい。例えば、構造用材料に使用される鉄、鋼、ステンレス、アルミニウム合金、マグネシウム合金、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの複合材料が挙げられる。
この例では、回転体11(凸部111を含む)が非磁性材料で形成されている。コイル15に常電導コイルを用いる場合は、回転体11を磁性材料で形成することが好ましい。一方、超電導コイルを用いる場合は、回転体11は磁性材料、非磁性材料のいずれで形成してもよい。
コイル15は、回転体11の各凸部111に巻回され取り付けられており、回転体11の径方向に磁場を発生する。また、各コイル15には、図示しない直流電源が接続される。この例では、各コイル15に通電する直流電流の向きを制御して、発生させる磁場(磁束)の方向を決定しており、隣り合うコイル15の極性が互いに異なるようにしている(図2参照)。各コイル15は、超電導コイルであり、周囲を図示しない冷却用ジャケットで覆われ、冷却することによって超電導状態に保持されている。コイル15には常電導コイルを用いてもよく、コイル15に代えて永久磁石を用いてもよい。また、コイル15には、例えばスリップリングを介して外部の電源と接続し、電流を供給すればよい。
配管14は、回転体11の径方向外側に回転体11と間隔をあけて配置されている。この例では、回転体11の周方向に複数有し、各配管14は回転体11の軸方向に沿って延びるように設けられている。つまり、各配管14は、コイル15から発生する磁束を横切るように配置されており、各配管14には、コイル15から発生する磁束が通過する。また、配管14は、後述する熱媒体と反応せず(耐食性)、耐熱性を有する材料で形成されており、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼やハステロイなどの金属材料や、アルミナなどのセラミックスで形成されている。
この例では、配管14が直線状に設けられている(図1、図3参照)。例えば、図3に示すように、配管14の一端側から熱媒体を供給し、他端側から排出する構成とする他、配管14の他端側において、配管14と別の配管14とを接続する接続部(図示せず)を設け、配管14の一端側から熱媒体を供給し、接続部を介して、別の配管14の一端側から排出する構成とすることも可能である。即ち、前者の場合は片道の流路、後者の場合は往復の流路となり、後者の場合、前者の場合と比較して、一つの流路を構成する配管における熱媒体の発熱区間(熱媒体を直接誘導加熱する区間)を長くすることができる。
また、配管14の外周には、断熱材(図示せず)を配置してもよい。断熱材には、例えば、ロックウール、グラスウール、発泡プラスチック、レンガ、セラミックスなどを用いることができる。
熱媒体には、例えば、溶融金属や溶融塩、電解液といった導電性流体(導電率:1000S/m以上)が用いることができる。熱媒体に用いる導電性流体としては、更に次の条件を満たすことが好ましい。(1)導電率が高い(例えば、導電率:10000S/m以上)、(2)使用温度範囲(熱媒体を発熱させるときに目標とする設定温度の範囲)内において液体状態となる融点と沸点を有する(例えば、融点:450℃以下、沸点:800℃以上)、(3)軽量(密度が小さい)である(例えば、密度:3g/cm3以下)。
溶融金属としては、例えば、Na、Mg、Al、Zn、Ga、Sn、Pb、及びその合金(例えば、半田合金)が挙げられ、中でもNaが好適である。溶融塩としては、例えば、ZnCl2、BeCl2、LiClO3が挙げられ、中でもZnCl2が好適である。電解液としては、例えば、KCl、NaClが挙げられる。溶融塩や電解液を利用する場合、導電率を高めるために、例えば、Al、Cu、炭素からなる導電性フィラーを含有してもよい。この例では、熱媒体にNaを利用する。
ここで、例えば、熱媒体に溶融塩を利用する場合、溶融塩は固体状態では電流を流すことができないので、溶融塩を液体状態に維持するために、配管に溶融塩を加熱するヒータなどの保温手段を設けてもよい。或いは、配管内の溶融塩が冷えて固体状態にならないように、誘導加熱装置を停止するときに、配管から保温機能を有する容器に溶融塩を回収すると共に、誘導加熱装置を起動するときに、容器から配管に溶融塩を供給する構成としてもよい。一方、熱媒体に溶融金属を利用する場合は、固体状態であっても電流を流すことができるが、溶融金属を液体状態に維持するために、溶融塩を利用する場合と同じように、上記した保温手段を別途設けてもよい。
また、配管内に熱媒体を流通させる場合、配管に熱媒体を所定の流量で連続的に供給してもよい。或いは、配管に熱媒体を供給し、熱媒体が所定の温度まで発熱した後、配管から熱媒体を排出する、即ち、熱媒体を供給→収容→排出を繰り返すように、配管に熱媒体を間欠的に供給してもよい。
ステータ部12は、回転体11から見て配管14より更に径方向外側に配置された筒状の部材であり、内周面に配管14が取り付けられている。このステータ部12は、回転しないように固定されている。この例では、ステータ部12が円筒状であり、磁性材料で形成されているが、これに限定されるものではない。
次に、誘導加熱装置101における熱媒体の発熱メカニズムについて詳しく説明する。
誘導加熱装置101では、コイル15が通電されることで回転体11の径方向に磁束が発生し、回転体11と共にコイル15が回転することによりコイル15と配管14との間の距離が狭小→広大、或いは広大→狭小になり、配管14を通過する磁束が周期的に変化する(図2参照)。つまり、この誘導加熱装置101においては、回転体11と共にコイル15が回転することにより生成される変動磁束に対して配管14が横切るように配置されている状態であり、配管14を変動磁束が通過する。そして、配管14内の熱媒体(導電性流体)に変動磁束が鎖交することで、熱媒体に電磁誘導により渦電流が発生し、電気抵抗により熱媒体が発熱することによって熱媒体を直接誘導加熱する。
この誘導加熱装置101では、熱媒体が導電性流体であり、熱媒体が直接誘導加熱されるので、従来の誘導加熱装置に比較して、加熱効率(発熱効率)が高く、誘導加熱装置を小型化できる。
ここで、誘導加熱装置101では、隣り合うコイル15の極性が互いに異なることから、配管14にN極のコイル15が対向する場合とS極のコイル15が対向する場合とでは、配管14内の熱媒体を貫通する磁束(磁場)の向きが異なる。N極のコイル15が対向するときは、熱媒体を通る磁束の向きが回転体11側からステータ部12側方向(径方向の+方向)となる。一方、S極のコイル15が対向するときは、熱媒体を通る磁束の向きがステータ部12側から回転体11側方向(径方向の−方向)となる。つまり、回転体11と共にコイル15が回転することにより磁束(磁場)の方向が周期的に逆転しながら変化するので、交番磁束が生成される。
また、回転体11の周方向に設けられるコイル15の数は、適宜設定することができる。ここで、コイル15の数をある程度増やすことで、磁束の変動周期を短くすることができる。発熱量は、変動磁束の周波数に比例関係にあることから、磁束の変動周期を短くすることで、発熱効率の向上が期待できる。その他、熱媒体を通る磁束を増やすために、磁性材料からなる磁性フィラーを熱媒体に含有させてもよい。
上記した実施の形態1に係る誘導加熱装置101では、図3に例示したように、回転体11(ステータ部12)の軸方向と平行するように直線状に配管が設けられている場合を例に説明したが、これに限定されるものでない。例えば、ステータ部12の周方向に蛇行するように配管14を折曲げ形成して配設してもよい。
(実施の形態2)
図4〜6に示す実施の形態2に係る誘導加熱装置102は、配管14の形態が、図1〜3を用いて説明した実施の形態1に係る誘導加熱装置101と主として相違しており、以下ではその相違点を中心に説明する。
配管14は、周方向に連続する環状部140を有する。この例では、同形状の第1配管141と第2配管142とで一つの流路を構成し、第1・第2の配管141,142のそれぞれに環状部140を有している(図6(A)参照)。また、図6(A)に示すように、第1・第2の配管141,142の同じ他端側において、第1・第2の配管141,142同士を接続する接続部143を設け、第1配管141の一端側から熱媒体を供給し、接続部143を介して、第2配管142の他端側から排出する構成としている。第1・第2の配管141,142において、環状部140は、一端側と他端側との間に設けられ、一端側から他端側に向けて流路の途中から分岐した後、再び合流するように形成されており、その周方向に流路(内部空間)が連続する。即ち、第1配管141の一端側から供給された熱媒体は、環状部140で二手に分かれた後再び合流し、他端側まで到達する。次いで、熱媒体は、接続部143を介して第2配管142の方に流れ、第1配管141のときと同じように環状部140を通って、第2配管142の一端側から排出される。ここで、配管14の環状部140内に熱媒体が流通(収容)されているとき、熱媒体が導電性流体であるため、環状部140内の熱媒体で電気的な閉回路を構成することができる。
ステータ部12は、磁性材料からなる円筒状のヨーク部125と、このヨーク部125の内周面から求心方向(径方向内方)に突出する磁性材料からなる突起部121とを有する。この例では、ステータ部12が複数(8個)の突起部121を有し、各突起部121が周方向に等間隔に設けられており、各突起部121がヨーク部125に接続されヨーク部125を介して連結されている(図5参照)。つまり、回転体11の突部111の数とステータ部12の突起部121の数が等しい。また、各突起部121は、ステータ部12の軸方向に対して平行で、突出方向と直交する断面が略矩形の四角柱状である。
そして、配管14は、環状部140の中央に形成された孔にステータ部12の突起部121が嵌め込まれるようにステータ部12に取り付けられ、突起部121の周囲に環状部140が配置される(図4、図6(B)参照)。
次に、誘導加熱装置102における熱媒体の発熱メカニズムについて詳しく説明する。
回転体11と共にコイル15が回転することにより、配管14を通過する磁束が周期的に変化し、配管14内の熱媒体に変動磁束が鎖交することで、渦電流が発生し、熱媒体自体が発熱する点は、実施例1の誘導加熱装置101と同様である。さらに、誘導加熱装置102では、ステータ部12の突起部121に変動磁束が通過し、突起部121が変動磁束が通る磁路となる(図5参照)。その結果、突起部121を変動磁束が通ることで、電気的な閉回路を構成する環状部140内の熱媒体に誘導電流が発生し、電気抵抗により熱媒体が発熱することによって熱媒体を直接誘導加熱する。
この誘導加熱装置102では、突起部121の周囲に配管14(環状部140)内の熱媒体が電気的な閉磁路を構成するように環状部140を配置したことで、実施例1の誘導加熱装置101に比較して、発熱効率を高めることができる。
上記した実施の形態2に係る誘導加熱装置102では、図6に例示したように、環状部140を有する第1・第2の配管141,142を接続部143で接続し、2つの配管141,142で配管14を構成し、ステータ部12の隣り合う2つの突起部121の周囲に第1・第2の配管141,142の環状部140を配置する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、各配管でそれぞれ一つの流路を構成してもよいし、3つ以上の複数の配管を接続部で接続し、複数の配管で一つの流路を構成してもよい。
(実施の形態3)
図7〜9に示す実施の形態3に係る誘導加熱装置103は、配管14の形態が、図4〜6を用いて説明した実施の形態2に係る誘導加熱装置102と主として相違しており、以下ではその相違点を中心に説明する。
配管14は、コイル状に巻回されたコイル部145を有すると共に、このコイル部145の軸方向に沿って接続導体147が配置されている(図9参照)。この接続導体147は、コイル部145内の上流側と下流側の熱媒体を電気的に繋ぐためのものであり、例えば、アルミニウムや銅などの導電性材料で形成されている。この例では、コイル部145の上流側と下流側のそれぞれの周壁に貫通孔を設け、接続導体147の一端側を上流側の貫通孔に、他端側を下流側の貫通孔にシールした状態でそれぞれ差し込むことで、接続導体147がコイル部145内の上流側と下流側の熱媒体と電気的に接触するように構成している。この接続導体147によってコイル部145内の上流側と下流側の熱媒体が電気的に繋がれることになる。ここで、配管14のコイル部145内に熱媒体が流通(収容)されているとき、熱媒体が導電性流体であるため、コイル部145内の熱媒体と接続導体147とで電気的な閉回路を構成することができる。
そして、配管14は、コイル部145をステータ部12の突起部121の周囲に嵌め込むように取り付け、突起部121の周囲にコイル部145が配置される(図7、図9参照)。
次に、誘導加熱装置103における熱媒体の発熱メカニズムについて説明すると、実施例2の誘導加熱装置102とほぼ同様である。この誘導加熱装置103では、ステータ部12の突起部121に変動磁束が通過し、突起部121が変動磁束が通る磁路となる(図8参照)。その結果、突起部121を変動磁束が通ることで、電気的な閉回路を構成するコイル部145内の熱媒体に誘導起電力が生じ、この誘導起電力によってコイル部145内の熱媒体に誘導電流が発生する。そして、この誘導電流と電気抵抗により熱媒体が発熱することによって熱媒体を直接誘導加熱する。
この例では、熱媒体に溶融金属のNaを利用している。ここで、上記した実施の形態3に係る誘導加熱装置103において、熱媒体に溶融塩又は電解液を利用する場合、熱媒体が接続導体147と電気的に接触する箇所で電気分解反応が起こることが懸念される。しかし、上述したように突起部121を通過する磁束は交番磁束であるため、誘導電流の向きも交互に反転することから、電気分解の反応が進行しないものと考えられる。
上記した実施の形態2、3に係る誘導加熱装置102,103では、ステータ部12の突起部121の断面(突出方向と直交する方向の断面)が略矩形の四角柱状である場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図10に示すように、突起部121をステータ部12の軸方向に対して傾斜させたスキュー構造とすることが挙げられる。スキュー構造を採用することで、コギングトルクを低減して、回転体11の回転を滑らかにすることができる。また、回転体11の凸部111をスキュー構造としてもよい。
<発電システム>
次に、図11を用いて、本発明に係る発電システムの全体構成の一例を説明する。図11に示す発電システムPは、誘導加熱装置10と、風車20と、熱交換器50と、発電部60とを備える。塔91の上部に設置されたナセル92に風車が取り付けられ、ナセル92内に誘導加熱装置10が格納されている。また、塔91の下部(土台)に建てられた建屋93に熱交換器50及び発電部60が設置されている。以下、発電システムPの構成を詳しく説明する。
誘導加熱装置10は、例えば、上記した実施の形態1〜3に係る誘導加熱装置101,102,103を利用している。また、回転軸21の他端側が後述する風車20に直結され、回転体を回転させる動力に風力を利用している。
風車20は、水平方向に延びる回転軸21を中心に、3枚の翼201を回転軸21に放射状に取り付けた構造である。出力が5MWを超える風力発電システムの場合、直径が120m以上、回転数が10〜20rpm程度である。
誘導加熱装置10の配管の排出口には、誘導加熱装置10を利用して加熱した熱媒体を熱交換器50に送る送り管31が接続され、一方、誘導加熱装置10の配管の供給口には、熱交換器50から熱媒体を誘導加熱装置10に戻す戻し管32が接続されており、戻し管32に設けられた循環ポンプ33によって熱媒体が誘導加熱装置10と熱交換器50との間を循環する。送り管31及び戻し管32は、上述した配管と同種の材料で形成することができる。また、送り管31及び戻し管32には、上述した配管と同じように、外周に断熱材(図示せず)を配置したり、ヒータなどの保温手段を設けてもよい。
誘導加熱装置10は、コイルが通電されると共に、風車20に連動して回転体が回転体することにより、配管内の熱媒体に電磁誘導を生じせしめ、導電性流体の熱媒体(ここでは、溶融金属(Na))に電流が発生することで、熱媒体を直接誘導加熱する。この誘導加熱装置10は、熱媒体を直接誘導加熱するため、発熱効率が高く、誘導加熱装置10を小型化できる。よって、誘導加熱装置10の設置スペースが小さくて済むため、ナセル92の小型化を図ることができる。誘導加熱装置10は、磁束発生部にコイルを用いているため、強い磁場を発生させることができ、熱媒体を例えば100℃〜600℃といった高温に発熱させることが可能である。また、誘導加熱装置10は、回転せず固定されたステータ部に配管が取り付けられ、配管が回転しない構造であるので、配管と送り管31及び戻し管32との接続に回転継手を用いる必要がなく、例えば溶接などを用いて、簡易な構成で、堅牢な接続を実現できる。さらに、熱媒体に溶融金属(Na)を用いているため、上記した温度まで発熱させても、蒸気化による内圧の上昇を防ぐことができ、配管、並びに、送り管31及び戻し管32の薄肉化が可能である。加えて、溶融金属(Na)であれば、配管内の発熱した熱媒体の熱が伝導することにより、配管内は勿論、送り管31及び戻し管32内の熱媒体も熱伝導によって加熱され、液体状態にすることが可能であるので、必ずしも上述した断熱材やヒータなどの保温手段を配管や送り管31及び戻し管32に設ける必要がない。
熱交換器50には、誘導加熱装置10の配管から排出された熱媒体が送り管31を通って加熱された熱媒体が送られる。この例では、熱交換器50内に、蓄熱材が充填されると共に、第1熱交換管51と第2熱交換管52とが配置されている。そして、第1熱交換管51に送り管31が接続され、誘導加熱装置10によって所定の温度に加熱された熱媒体が第1熱交換管51を流通することで、蓄熱材を加熱し、熱媒体の熱を蓄熱材に蓄える。また、第2熱交換管52には、二次熱媒体(例、水)が流通しており、蓄熱材と二次熱媒体との熱交換により、第2熱交換管52に流通する二次熱媒体を蒸気化する。生成した二次熱媒体の蒸気(例、高温高圧蒸気)は、第2熱交換管52を介して発電部60に送られる。つまり、この熱交換器50は、蓄熱器としての機能も兼ね備える。蓄熱材には、潜熱蓄熱材や顕熱蓄熱材などを用いることができ、これらを併用してもよい。一般的に、潜熱蓄熱材は、固体と液体との間の相変化を伴うものであり、顕熱蓄熱材に比べて蓄熱密度が高い。ここで、第1熱交換管51を通過し、熱交換が行われた熱媒体は、循環ポンプ33により戻し管32を通って、誘導加熱装置10の配管に供給される。
発電部60は、熱交換器50に蓄えられた熱を利用して発電する。この例では、蒸気タービン61と発電機62とを組み合わせた構成であり、熱交換器50から供給された蒸気によって蒸気タービン61が回転し、発電機62を駆動して発電する。
発電部60(蒸気タービン61)から排出された二次熱媒体の蒸気は、復水器71で冷却され液体に戻された後、循環ポンプ72により熱交換器50(第2熱交換管52)に供給されることにより、熱交換器50と発電部60との間で二次熱媒体が循環する。
この発電システムPによれば、誘導加熱装置10の回転軸に風車20を接続し、回転体の動力に風力を利用して、風のエネルギーを誘導加熱装置10により回転エネルギー→熱エネルギーに変換し、その熱エネルギー(熱媒体の熱)を発電部60により電気エネルギーとして取り出すことができる。そして、風力といった再生可能エネルギーを動力として回転エネルギーを得て熱を発生させ、その熱を蓄熱して発電することで、高価な蓄電池を用いなくても、需要に応じた安定的な発電を実現できる。加えて、従来の風力発電システムのように増速機を設ける必要がなく、ギアボックスのトラブルを回避することが可能である。さらに、誘導加熱装置10をナセル92に格納し、誘導加熱装置10により加熱した熱媒体を例えば塔の下部(土台)に設置した発電部60側に送る構成としたことで、ナセル92に発電部を格納する必要がなく、ナセルを小型・軽量化することができ。
上述した発電システムでは、二次熱媒体に水を例に挙げているが、その他、水よりも低温で蒸気化する低沸点媒体(例えば、アルコール、アンチモン、アンモニア、ペンタンなど)を二次熱媒体に用いることができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、熱媒体の種類、及び配管の材質や形態などを適宜変更することが可能である。