JP5776531B2 - 無端金属リングの製造装置及び製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、無端金属リングの製造装置及び製造方法に関するものである。
従来、この種の無端金属リングは、無段変速機(CVT)の動力伝達用の変速機用ベルトなどに用いられている。無段変速機用ベルトは、周長が少しずつ異なる複数の無端金属リングを径方向に相互に積層して形成したリング積層体と、このリング積層体により結束される、環状に連ねられた複数のエレメントとから構成される。この無段変速機用ベルトは、駆動プーリ及び従動プーリに掛け回され、相互に接触するエレメント間の押し力で該駆動プーリ及び該従動プーリに沿って回転し、駆動力を駆動プーリから従動プーリに伝達する。このような無端金属リングの製造装置としては、例えば、特許文献1に記載された周長補正装置が知られている。
この特許文献1に記載された周長補正装置は、駆動ローラおよび従動ローラと、それらのローラ間に巻回された無端金属リングの周方向の一部を、内側から外側に向けて局所的に押圧するための矯正ローラとから構成されている。この周長補正装置を用いることにより、無端金属リングには、幅方向の断面において外周側に凸状を成す円弧状形状が付与される。無端金属リングは、前記円弧状形状により、それが複数積層された際においてその積層状態が容易に保持されるようになる。
しかし、この特許文献1に記載された周長補正装置により製造された無端金属リングにおいては、無端金属リングの内周面側が外周側に向けて局部的に押圧されることによりその無端金属リングの内周部に引張残留応力が付与されるために、その内周部の強度が必要強度に対して余裕がなくなり、耐久性が低下するという問題があった。
そこで、本出願人は、特許文献2として挙げる特開2011−185300号公報において、この問題を解決した積層リングの製造方法を提案している。
この公開公報に記載された積層リングの製造方法は、帯状金属部材の周長を調整する周長調整工程後に行われる残留応力付与工程において、2個の固定ローラ間に巻き掛けられた帯状金属部材に対して、移動ローラを用いてその帯状金属部材の外周面側から内周面側に向けて押圧することにより、帯状金属部材の内周部に圧縮残留応力を付与し、帯状金属部材の耐久性を高めようとしたものである。
特開2009−22991号公報 特開2011−185300号公報
しかしながら、この残留応力付与工程においては、以下のような問題があった。
すなわち、積層リングの製造方法において、2個の固定ローラ間に巻き掛けられた帯状金属部材に、帯状金属部材を外周面側から内周面側に向けて移動ローラにより押圧すると、前の周長調整工程によって調整された帯状金属部材の周長に影響を与え、帯状金属部材の周長の寸法精度が低下するなどの問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、周長の寸法精度が向上すると共に耐久性に優れた無端金属リングの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
上記の問題点を解決するために、本発明の無端金属リングの製造装置は、次の構成を有している。
(1)無端金属リングの製造装置であって、前記無端金属リングの内周側に配置される保持用ローラと、前記保持用ローラにより前記無端金属リングに張力が付与される位置と、張力が付与されない位置との間で前記保持用ローラを移動可能な保持用ローラ移動手段と、前記無端金属リングの外周側に配置される外周側ローラと、前記外周側ローラが前記無端無端金属リングを外周側から押圧する位置と押圧しない位置との間で前記外周側ローラを移動可能な外周側ローラ移動手段と、前記外周側ローラ移動手段によって前記無端金属リングを押圧する位置に前記外周側ローラを移動させる際、前記保持用ローラ移動手段または外周側ローラ移動手段によって前記保持用ローラ間の間隔を目標とする無端金属リングの周長に応じて調整する制御手段と、から構成したことを特徴とする。
(2)(1)に記載する無端金属リングの製造装置において、前記制御手段は、前記外周側ローラ移動手段によって前記外周側ローラの移動量を一定に保つと共に、前記保持用ローラ移動手段によって前記保持用ローラ間の間隔を目標とする無端金属リングの周長に応じて調整するように制御することを特徴とする。
(3)(1)に記載する無端金属リングの製造装置において、前記保持用ローラに一定の荷重を付与すると共に、前記外周側ローラ移動手段によって前記外周側ローラの移動量を変更することにより前記保持用ローラ間の間隔を目標とする無端金属リングの周長に応じて調整するように制御することを特徴とする。
(4)(3)に記載する無端金属リングの製造装置において、前記保持用ローラと前記外周側ローラとの水平距離を一定としたことを特徴とする。
(5)(1)乃至(4)に記載の無端金属リングの製造装置において、前記制御手段は、前記無端金属リングの周長及び前記無端金属リングに付与される引張荷重に基づいて制御することを特徴とする。
上記の問題点を解決するために、本発明の無端金属リングの製造装置は、次の構成を有している。
(6)無端金属リングの製造方法であって、前記無端金属リングの内周側に配置される保持用ローラにより前記無端金属リングを保持する保持工程と、前記保持工程で保持された前記無端金属リングの外周側から外周側ローラによって押圧する残留応力付与工程と、を備え、前記残留応力付与工程において前記無端金属リングの周長を調整することを特徴とする。
(7)無端金属リングの製造方法であって、前記無端金属リングの内周側に配置される第1の保持用ローラによって前記無端金属リングの周長が調整される周長調整工程と、前記第1の保持用ローラよりも径が大きい第2の保持用ローラによって前記無端金属リングを保持する保持工程と、前記保持工程で保持された前記無端金属リングの外周側から外周側ローラによって押圧する残留応力付与工程と、前記外周側ローラを前記無端金属リングから退避させる退避工程と、前記第2の保持用ローラを移動させて前記無端金属リングの張力を解除する解除工程と、を備え、前記残留応力付与工程において前記無端金属リングの周長を調整することを特徴とする。
上記構成を有する本発明の無端金属リングの製造装置及び製造方法の作用・効果について説明する。
本発明の無端金属リングの製造装置では、
(1)無端金属リングの製造装置であって、前記無端金属リングの内周側に配置される保持用ローラと、前記保持用ローラにより前記無端金属リングに張力が付与される位置と、張力が付与されない位置との間で前記保持用ローラを移動可能な保持用ローラ移動手段と、前記無端金属リングの外周側に配置される外周側ローラと、前記外周側ローラが前記無端金属リングを外周側から押圧する位置と押圧しない位置との間で前記外周側ローラを移動可能な外周側ローラ移動手段と、前記外周側ローラ移動手段によって前記無端金属リングを押圧する位置に前記外周側ローラを移動させる際、前記保持用ローラ移動手段または外周側ローラ移動手段によって前記保持用ローラ間の間隔を目標とする無端金属リングの周長に応じて調整する制御手段と、から構成したので、無端金属リングの外周側および内周側に付与される圧縮残留応力に悪影響を与えることなく、無端金属リングの周長の寸法精度を向上させることができ、不良率が低下すると共にする無端金属リングの耐久性が向上するという優れた効果を奏する。
(2)(1)に記載する無端金属リングの製造装置において、前記制御手段は、前記外周側ローラ移動手段によって前記外周側ローラの移動量を一定に保つと共に、前記保持用ローラ移動手段によって前記保持用ローラ間の間隔を目標とする無端金属リングの周長に応じて調整するように制御するので、無端金属リングの外周側および内周側に付与される圧縮残留応力に悪影響を与えることなく、無端金属リングの周長の寸法精度を向上させることができ、不良率が低下すると共にする無端金属リングの耐久性が向上する。
(3)(1)に記載する無端金属リングの製造装置において、前記保持用ローラに一定の荷重を付与すると共に、前記外周側ローラ移動手段によって前記外周側ローラの移動量を変更することにより前記保持用ローラ間の間隔を目標とする無端金属リングの周長に応じて調整するように制御するので、無端金属リングの外周側および内周側に付与される圧縮残留応力に悪影響を与えることなく、無端金属リングの周長の寸法精度を向上させることができ、不良率が低下すると共にする無端金属リングの耐久性が向上する。
(4)(3)に記載する無端金属リングの製造装置において、前記保持用ローラと前記外周側ローラとの水平距離を一定としたので、変数が少なくなって計算処理が簡単となる。
(5)(1)乃至(4)に記載の無端金属リングの製造装置において、前記制御手段は、前記無端金属リングの周長及び前記無端金属リングに付与される引張荷重に基づいて制御するので、無端金属リングに良好な残留応力を付与しながら無端金属リングの周長の寸法精度を向上させることができ、不良率が低下すると共にする無端金属リングの耐久性が向上する。
また、本発明の無端金属リングの製造方法では、
(6)無端金属リングの製造方法であって、前記無端金属リングの内周側に配置される保持用ローラにより前記無端金属リングを保持する保持工程と、前記保持工程で保持された前記無端金属リングの外周側から外周側ローラによって押圧する残留応力付与工程と、を備え、前記残留応力付与工程において前記無端金属リングの周長を調整するので、無端金属リングの外周側および内周側に付与される圧縮残留応力に悪影響を与えることなく、無端金属リングの周長の寸法精度を向上させることができ、不良率が低下すると共にする無端金属リングの耐久性が向上するという優れた効果を奏する。
(7)無端金属リングの製造方法であって、前記無端金属リングの内周側に配置される第1の保持用ローラによって前記無端金属リングの周長が調整される周長調整工程と、前記第1の保持用ローラよりも径が大きい第2の保持用ローラによって前記無端金属リングを保持する保持工程と、前記保持工程で保持された前記無端金属リングの外周側から外周側ローラによって押圧する残留応力付与工程と、前記外周側ローラを前記無端金属リングから退避させる退避工程と、前記第2の保持用ローラを移動させて前記無端金属リングの張力を解除する解除工程と、を備え、前記残留応力付与工程において前記無端金属リングの周長を調整するので、無端金属リングの外周側及び内周側に圧縮残留応力を効果的に付与することが可能であり、また、無端金属リングの外周側および内周側に付与される圧縮残留応力に悪影響を与えることなく、無端金属リングの周長の寸法精度を向上させることができ、不良率が低下すると共にする無端金属リングの耐久性が向上する。
実施形態1に係る車両用ベルト式無段変速機の伝動ベルトの周方向の一部を示す斜視図である。 帯状金属部材について、それを幅方向の断面と共に示す斜視図である。 帯状金属部材の横断面に垂直な方向の残留応力の厚み方向の分布を示す図である。 積層リングの製造工程を説明するための工程図である。 図4の周長調整工程で用いられる周長調整装置を概念的に示す図である。 図4の周長調整工程終了直前の引張応力および曲げ応力を加算した総応力の内、 降伏応力を超える正側の総応力の厚み方向の分布を示す図である。 自由状態とされた帯状金属部材に残留する残留応力の厚み方向の分布を示す図である。 図4の残留応力付与工程P9にて用いられる残留応力付与装置を概念的に示す図である。 残留応力付与装置の移動ローラ付近を示す断面図である。 残留応力付与装置の加圧ローラ付近を示す断面図である。 図4の残留応力付与工程において、帯状金属部材に与えられる総応力の厚み方向の分布を示す図である。 図4の残留応力付与工程後において、帯状金属部材の降伏応力の変化を説明する図である。 自由状態とされた帯状金属部材に残留する残留応力のうち、図4の周長調整工程において帯状金属部材に付与された残留応力を除いた応力に起因して残留する応力の厚み方向の分布を示す図である。 自由状態とされた帯状金属部材に残留する応力の厚み方向の分布を示す図である。 図4の窒化処理によって帯状金属部材に付与される残留応力の厚み方向の分布を示す図である。 周長調整工程及び残留応力付与工程の詳細な工程を示す図である。 残留応力付与工程P9において、帯状金属部材へ付与される引張応力と帯状金属部材の中立面よりも外周側および内周側に残留する圧縮残留応力との関係を示す図である。 残留応力付与工程P9において、帯状金属部材へ付与される引張応力と帯状金属部材の周長との関係を示す図である。 図16に示す残留応力付与工程P9の各ステップにおける各部の動作状況を時間の経過とともに示す説明図である。 残留応力付与工程P9の残留応力付与ステップS26において制御装置が実行するフローチャートであり、(A)は、帯状金属部材の1本目の加工時に使用されるフローチャートであり、(B)は、帯状金属部材の2本目以降の加工時に使用されるフローチャートである。 実施形態2に係る周長調整装置の移動ローラを移動させて帯状金属部材に付与される張力(第1荷重F1)を調整するためのローラ移動装置を示す図である。 実施形態3に係る残留応力付与装置を示す図である。 図16に示す残留応力付与工程P9の各ステップにおける各部の動作状況を時間の経過とともに示す説明図である。 加圧ローラの移動量と帯状金属部材に作用する張力との関係を示す図である。 実施形態4に係る残留応力付与装置を示す図である。
(実施形態1)
以下、本発明に係る無端金属リングの製造装置について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は、適宜簡略化或いは変形誇張されて描画されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも実施例と同一ではない。
図1は、本発明に係る無端金属リングの製造装置により製造される薄板状無端金属リングを用いた車両用ベルト式無段変速機の伝動ベルト10の周方向の一部を示す斜視図である。図1において、伝動ベルト10は、それぞれ複数の薄板状無端の帯状金属部材(この発明の無端金属リングに相当)12が密着状態でそれぞれ積層されて成る相互に並列に配設された一対の積層リング14と、その積層リング14に沿ってそれぞれ厚み方向に環状に連ねられた板状の金属から成る複数の金属エレメント18とを備えている。
この金属エレメント18の幅方向の両側面には、それぞれ幅方向の中央に向けて略水平に延びる一対のリング保持溝20が形成されている。一対の積層リング14は、前記複数の金属エレメント18を支持するために、それら複数の金属エレメント18にそれぞれ形成された一対のリング保持溝20内にそれぞれ挿入されている。積層リング14は、例えば、周長が内周側から外周側に向かうほど順次大きくなるように調整された複数の帯状金属部材12が、内周側から順に積層されて成る。なお、図1では、便宜上、3個の帯状金属部材12から成る積層リング14が図示されているが、6個とか10個の帯状金属部材12により構成しても差し支えない。
図2は、積層リング14を構成する複数の帯状金属部材12のうちの1の帯状金属部材12について、それを幅方向の断面と共に示す斜視図である。図2において、帯状金属部材12は、例えばマルエージング鋼またはステンレス鋼などの鋼から成るものである。そして、帯状金属部材12は、幅方向の断面が外周側(図2においては上側)に凸状を成す円弧状(クラウニング)となるように形成されている。これにより、帯状金属部材12は、複数積層されたときにおいて、内周面22および外周面24がその内周側および外周側にそれぞれ設けられる帯状金属部材の外周面および内周面とそれぞれ係合することで、互いの積層状態が容易に保持されるようになっている。
図3は、自由状態(平板に伸ばした状態)における帯状金属部材12の横断面に垂直な方向の残留応力σ(MPa又はN/mm)の厚み方向の分布を示す図である。帯状金属部材12は、図2に示すように厚みtを有しており、図3のtはこれに対応している。図3に示すように、帯状金属部材12の厚み方向の外周部および内周部には、σ=0を示す破線よりも負側(左側)に示される圧縮残留応力がそれぞれ残留している。そして、帯状金属部材12の厚み方向の中央部には、σ=0を示す破線よりも正側(右側)に示される引張残留応力が残留している。図3の2点鎖線は、伝動ベルト10の積層リング14を例えば6個の帯状金属部材12で構成する場合に最低限圧縮側に要求される残留応力の厚み方向の分布を示しており、帯状金属部材12の残留応力が2点鎖線で示す残留応力分布よりも圧縮側すなわち図3の左側であれば、その帯状金属部材12が必要な強度を有していることになる。本実施例の帯状金属部材12は、厚み方向のどの位置においても残留応力が2点鎖線で示す残留応力よりも圧縮側に分布しているので、図1に示す伝動ベルト10の積層リング14を例えば6個の帯状金属部材12で構成する場合に必要な予め設定された強度を有していることになる。
図4は、図1に示す積層リング14の製造工程を説明するための工程図である。以下、この図4の工程図を参照して積層リング14の製造方法を説明する。
図4において、先ず、帯鋼切断工程P1では、例えばマルエージング鋼またはステンレス鋼などの帯鋼30が所定の長さに切断されて、平板32が形成される。
次いで、溶接工程P2では、平板32の一方および他方の切断面同士が互いに溶接されて、円筒状部材34が形成される。
次いで、第1溶体化工程P3では、溶接工程P2における溶接時の熱により溶接部位付近が部分的に硬くなった円筒状部材34の硬度を均質化するために、その円筒状部材34に第1の溶体化処理が施される。
次いで、円筒状部材切断工程P4では、円筒状部材34が軸心方向の所定長さ毎に上記軸心に直交する方向に切断されて、複数の短円筒状部材36がそれぞれ形成される。
次いで、バレル研磨工程P5では、上記短円筒状部材36の全部又はその一部が回転または振動する所定容器内に研磨材と共に入れられて研磨される。
次いで、圧延工程P6では、上記研磨された短円筒状部材36が所定の厚みに圧延され
て、環状部材38が形成される。
次いで、第2溶体化工程P7では、圧延工程P6における圧延により変形させられた環
状部材38の金属組織の形状を元に復元させるために、その環状部材38に第2の溶体化
処理が施される。
次いで、周長調整工程P8では、上記第2の溶体化処理が施された環状部材38が予め
定められた所定の周長に調整される。図5は、図4の周長調整工程P8で用いられる周長調整装置40を概念的に示す図である。図5において、周長調整装置40は、軸心C1まわりの回転可能に設けられた位置固定の固定ローラ42と、軸心C1に平行な軸心C2まわりの回転可能且つ固定ローラ42に対して接近および離間可能に設けられた移動ローラ44とを備えている。上記固定ローラ42および移動ローラ44の外周面は、軸心C1およびC2を通る断面において外周側に凸状を成す円弧状にそれぞれ形成されている。なお、本実施例では、移動ローラ44の半径rAと固定ローラ42の半径rBとは、等しく設定されている。なお、前記固定ローラ42および移動ローラ44によって本発明の保持用ローラおよび第1の保持用ローラが構成される。
周長調整工程P8では、上記のように構成される周長調整装置40が用いられ、図16に詳細な工程を示すように、まず、帯状金属部材12が固定ローラ42および移動ローラ44に弛みのない状態で巻き掛けられる(ステップ10、以下S10と称す:セット工程)。その後、電動機(図示せず)により移動ローラ44が回転駆動されることで、図5の矢印fで示すように帯状金属部材12が周方向に回転させられつつ、図5の矢印bで示すように移動ローラ44が固定ローラ42から離間させられることによって、帯状金属部材12が周方向に引き伸ばされて帯状金属部材12に張力(引張応力)が付与されるように第1荷重F1が掛けられる(S12:張力付与工程)。本実施例では、予め実験的に求められた関係から、図5に1点鎖線で示す移動ローラ44の原位置からの変位Yに基づいて、帯状金属部材12の周長が予め定められた所定値に調整される。
なお、帯状金属部材12は、上記周長の調整に際して固定ローラ42および移動ローラ44の外周面の形状が転写されことにより、幅方向の断面が外周側に凸状を成す円弧状に形成される。その後、帯状金属部材12に張力が付与された状態が一定時間保持された(S14:張力保持工程)後、移動ローラ44が固定ローラ42に近づくように、つまり、図5の矢印aで示す方向に移動させられることで、帯状金属部材12に付与された張力が解除され(S16:張力解除工程)、それにより、帯状金属部材12は、移動ローラ44および固定ローラ42から取り外すことが可能となる(S18:取外し工程)。なお、移動ローラ44は、例えば、油圧式、電気式または空気圧式等の色々な方式のアクチュエータが用いて移動させることが可能である。
図6は、前記帯状金属部材12の前記周長調整工程P8終了直前の引張応力σTAおよび曲げ応力σbAを加算した総応力の内、降伏応力σy0を超える正側の総応力σ1の厚み方向の分布を示す図である。周長調整工程P8の終了直前において、帯状金属部材12には、図6に1点鎖線で示される前記移動ローラ44による引張応力σTAと、図6に2点鎖線で示される移動ローラ44による曲げ応力σbAとが付与される。
図6において、総応力が帯状金属部材12の降伏応力σy0を超える降伏領域S100は、その総応力が取り除かれてもひずみが残る領域である。上記降伏応力σy0は、帯状金属部材12の材質により定まる固有値である。前記周長調整工程P8終了直前に帯状金属部材12は、中立面Nよりも外周側が外周側に向かうほど大きく周方向に塑性変形し、中立面Nよりも内周側が弾性変形した状態とされる。
帯状金属部材12は、上記のような状態から張力T1が取り除かれて自由状態とされると、ひずみを元に戻そうと変形するが、中立面Nよりも外周側にはひずみが残る。そして、上記変形の際に、帯状金属部材12の外周部は、残留ひずみが大きい外周側ほど周方向に圧縮される。図7は、上記自由状態とされた帯状金属部材12に残留する応力すなわち残留応力σrAの厚み方向の分布を示す図である。図7に示すように、帯状金属部材12の外周部には、外周側ほど大きい圧縮残留応力が残留し、内周部には、所定の引張残留応力σrA1が残留する。
図4に戻って、周長調整工程P8に次いで、残留応力付与工程P9では、周長が調整された前記帯状金属部材12の内周部に圧縮残留応力が付与される。図8は、残留応力付与工程P9にて用いられる残留応力付与装置66を概念的に示す図である。図8において、残留応力付与装置66は、軸心C3まわりに回転可能に設けられた位置固定の固定ローラ67と、軸心C3に平行な軸心C4まわりに回転可能且つ固定ローラ67に対して接近および離間可能に設けられた移動ローラ68と、軸心C3、C4にそれぞれ平行な軸心C5まわりに回転可能に設けられた金属製の加圧ローラ70とから構成される。前記固定ローラ67及び移動ローラ68の径は、前記周長調整装置40の固定ローラ42及び移動ローラ44の径に比べて1.2〜2倍に設定されており、また、前記加圧ローラ70は、前記周長調整装置40の固定ローラ42及び移動ローラ44の径と同じに設定され、つまり前記固定ローラ67及び移動ローラ68の径よりも小径に設定されている。なお、固定ローラ67と移動ローラ68とによりこの発明の保持用ローラ及び第2の保持用ローラが構成される。また、加圧ローラ70によりこの発明の外周側ローラが構成される。
上記固定ローラ67および移動ローラ68の外周面は、軸心C3およびC4を通る断面において外周側に凸状を成す円弧状にそれぞれ形成されている。また、上記加圧ローラ70は、軸心C5を通る断面において凹状を成す円弧状に形成され、その曲率半径は、上記固定ローラ67および移動ローラ68の外周面と略同じかそれよりもやや小さく形成されている。また、前記固定ローラ67、移動ローラ68及び加圧ローラ70は、鉄やアルミニウムなどの金属材料により形成されている。
前記帯状金属部材12は、前記固定ローラ67及び移動ローラ68に巻き掛けられた状態で支持される。つまり、前記固定ローラ67及び移動ローラ68は、前記帯状金属部材12の内側に位置することとなり、また、加圧ローラ70は、前記帯状金属部材12の外側に位置することとなる。
図9は、図8に示された残留応力付与装置66の移動ローラ68付近を示す断面図である。図9に示すように、保持力調整装置49は、支持壁48に固定された油圧式アクチュエータ50と、その油圧式アクチュエータ50の出力ロッド52の先端部に固定され、移動ローラ68の回転軸54の両端部を回転可能に支持する支持部材56と、油圧式アクチュエータ50の出力ロッド52に作用する軸心方向の力を測定することで移動ローラ68から帯状金属部材12へ作用する第3荷重F3を間接的に測定し、その測定結果を制御装置65に出力するロードセル60と、上記移動ローラ68の回転軸54を回転駆動する電動機58とを備えている。上記油圧式アクチュエータ50は、第1油圧室62に油圧源61から油圧制御部63を介して油圧が供給されることにより、出力ロッド52およびそれに連結された移動ローラ68を、図8および図9に矢印aで示す固定ローラ67に接近する方向へ移動させ、また、油圧源61から油圧制御部63を介して第2油圧室64に油圧が供給されることにより、出力ロッド52およびそれに連結された移動ローラ68を、図8および図9に矢印bで示す固定ローラ67から離間する方向へ移動させ、それにより、前記固定ローラ67及び移動ローラ68に巻き掛けられた状態の前記帯状金属部材12に第3荷重F3(引張)を付与することができる。なお、保持力調整装置49により本発明の保持用ローラ移動手段が構成される。
なお、油圧制御部63は、ロードセル60の測定結果に基づいて制御装置65により制御され、それにより帯状金属部材12付与される第3荷重F3(張力)がコントロールされる。また、制御装置65は、周知のCPU、ROM及びRAM等により構成されている。なお、制御装置65により本発明の制御手段が構成され、また、第3荷重F3(引張)が本発明の引張荷重に相当する。
前記加圧ローラ70は、前記固定ローラ67及び前記移動ローラ68上に支持された帯状金属部材12の外周面を内周側に向けて局部的に押圧する方向、およびそれとは反対の帯状金属部材12から離間する方向にそれぞれ移動可能に設けられている。前記加圧ローラ70により圧縮残留応力付与機構(圧縮残留応力付与手段)が構成される。
図10は、図8に示された残留応力付与装置66の加圧ローラ70付近を示す断面図である。図10に示すように、応力付与装置71は、支持壁72に固定された油圧式アクチュエータ74と、その油圧式アクチュエータ74の出力ロッド76の先端部に固定され、加圧ローラ70の回転軸78の両端部を回転可能に支持する支持部材80と、油圧式アクチュエータ74の出力ロッド76に作用する軸心方向の力を測定することで加圧ローラ70から帯状金属部材12へ作用する第2荷重F2を間接的に測定し、その測定結果を制御装置65に出力するロードセル82とを備えている。上記油圧式アクチュエータ74は、油圧源61から油圧制御部85を介して第1油圧室84に油圧が供給されることにより、出力ロッド76およびそれに連結された加圧ローラ70を、図8および図10に矢印dで示す帯状金属部材12の外周面24を弾性ローラ69に向かって内周側へ押圧する方向へ移動させ、また、油圧源61から油圧制御部85を介して第2油圧室86に油圧が供給されることにより、出力ロッド76およびそれに連結された加圧ローラ70を、図8および図10に矢印eで示す帯状金属部材12から離間する方向へ移動させるものである。
なお、油圧制御部85は、ロードセル82の測定結果に基づいて制御装置65により制御され、それにより帯状金属部材12付与される第2荷重F2がコントロールされる。
したがって、前記制御装置65によって、前記保持力調整装置49の油圧式アクチュエータ50は、ロードセル60から供給される第3荷重F3を表す信号に基づいて、また、前記応力付与装置71の油圧式アクチュエータ74は、ロードセル82から供給される第2荷重F2を表す信号に基づいて、帯状金属部材12のうち加圧ローラ70による曲げ応力σbCの中立面N(図11参照)よりも内周側だけを塑性変形させるような、且つ固定ローラ67および移動ローラ68によっては塑性変形させずに加圧ローラ70によってのみ塑性変形させるような応力を、帯状金属部材12に与えるために、第2荷重F2及び第3荷重F3が制御される。
図8に戻って、残留応力付与工程P9では、上記のように構成される残留応力付与装置66が用いられ、図16に詳細な工程を示すように、まず、帯状金属部材12が固定ローラ67及び移動ローラ68に弛みのない状態でそれぞれ巻き掛けられる(S20:セットステップ)。その後保持力調整装置49により移動ローラ68が移動させられて帯状金属部材12に引張応力が付与され(S22:張力付与ステップ)、と同時に前記電動機58により移動ローラ68の一方が回転駆動されることで、図8の矢印fで示すように帯状金属部材12が周方向に回転させられて引張応力が付与された状態が保持される(S24:張力保持ステップ)。この状態で、図8の矢印dで示すように、第2荷重F2の力でもって加圧ローラ70が帯状金属部材12の外周面24を内周側へ押圧する方向へ移動させられることによって、加圧ローラ70により帯状金属部材12の中立面N(図11参照)よりも内周側だけを塑性変形させるような所定の応力が帯状金属部材12に与えられる(S26:残留応力付与ステップ)。
図11は、図4の残留応力付与工程P9において前記帯状金属部材12に与えられる複数の応力を加算した総応力σ2の厚み方向の分布を示す図である。残留応力付与工程P9において帯状金属部材12には、図11に1点鎖線で示される前記固定ローラ67及び移動ローラ68による引張応力σTCと、図11に2点鎖線で示される加圧ローラ70による曲げ応力σbCとが付与される。また、長破線で示されるのは、周長調整工程P8において帯状金属部材12に付与された残留応力σrAである。ここで、残留応力付与工程P9実行時の帯状金属部材12の降伏応力は、前工程による加工硬化によって、図12に矢印gで示すように降伏応力σy0から降伏応力σy1に増加している。
図11において、総応力σ2が帯状金属部材12の降伏応力σy1を超える降伏領域S200は、その総応力σ2が取り除かれてもひずみが残る領域である。残留応力付与工程P9において帯状金属部材12は、中立面Nよりも内周側の一部が内周側に向かうほど大きく周方向に塑性変形し、上記一部よりも外周側が弾性変形した状態とされる。
帯状金属部材12は、上記のような状態から、まず、油圧源61から油圧制御部85を介して第2油圧室86に油圧が供給されることにより、出力ロッド76およびそれに連結された加圧ローラ70を、図8および図10に矢印eで示す帯状金属部材12から離間する方向へ移動させて第2荷重F2が取り除かれる(S28:退避ステップ)。その後、第1油圧室62に油圧源61から油圧制御部63を介して油圧が供給されることにより、出力ロッド52およびそれに連結された移動ローラ68を、図8および図9に矢印aで示す固定ローラ67に接近する方向へ移動させて第3荷重F3が取り除かれる(S30:張力解除ステップ)。その後、固定ローラ67及び移動ローラ68から帯状金属部材12が取り外される(S32:取外しステップ)。
これにより帯状金属部材12は自由状態となってひずみを元に戻そうと変形するが、中立面Nよりも内周側の一部にはひずみが残る。その変形の際に、帯状金属部材12の内周部は、残留ひずみが大きい内周側ほど周方向に圧縮される。図13は、上記自由状態とされた帯状金属部材12に残留する応力すなわち残留応力σrのうち、前記残留応力σrAを除いた応力に起因して残留する応力すなわち残留応力σrCの厚み方向の分布を示す図である。図13に示すように、帯状金属部材12の内周部には、内周側ほど大きい圧縮残留応力が付与される。図14は、上記自由状態とされた帯状金属部材12に残留する残留応力σrの厚み方向の分布を示す図である。図14に示すように、帯状金属部材12の内周部および外周部には、内周側および外周側ほど大きい圧縮残留応力がそれぞれ残留し、また、中央部には、引張残留応力が残留する。
今までこの残留応力付与工程P9では、帯状金属部材12の周長が殆ど変化しないものとして取り扱われてきたが、実際には、中立面Nよりも内周側の一部が内周側に向かうほど大きく周方向に塑性変形するため、帯状金属部材12の周長が僅かであるが伸び、前工程の周長調整工程P8で調整した帯状金属部材12の周長の寸法精度が低下することがあることを本発明者らは発見した。
帯状金属部材12は、複数枚積層されて最終的に積層リング14が製作されるため、積層される各帯状金属部材12の周長の寸法精度は、数μmオーダーで要求される。
かといって、残留応力付与工程P9において帯状金属部材12に付与される第2荷重F2及び第3荷重F3が少ない、つまり、帯状金属部材12に付与される引張応力が少ないと、帯状金属部材12の周長の寸法精度は確保できるが、帯状金属部材12の中立面Nよりも内周側に十分な圧縮残留応力を残留させることができない。
したがって、この残留応力付与工程P9では、前工程の周長調整工程P8で付与された帯状金属部材12の中立面Nよりも外周側の圧縮残留応力、残留応力付与工程P9で付与される帯状金属部材12の中立面Nよりも内周側の圧縮残留応力および帯状金属部材12の周長の寸法精度を考慮して第2荷重F2及び第3荷重F3を制御する必要がある。
図17は、残留応力付与工程P9において、帯状金属部材12へ付与される引張応力と帯状金属部材12の中立面Nよりも外周側および内周側に残留する圧縮残留応力との関係を示す図であり、図18は、残留応力付与工程P9において、帯状金属部材12へ付与される引張応力と帯状金属部材12の周長との関係を示す図である。
本実施例では、図17に示すように、帯状金属部材12へ付与される引張応力を調整した場合の、帯状金属部材12の中立面Nよりも外周側および内周側に残留する圧縮残留応力の変化が許容されるとすれば、図18に示すように、その許容される帯状金属部材12の中立面Nよりも外周側および内周側に残留する圧縮残留応力の変化の範囲内で帯状金属部材12へ付与される引張応力を調整して帯状金属部材12の周長を調整し、それにより、帯状金属部材12の周長の寸法精度を向上させることが可能となった。この結果、本実施例の残留応力付与工程P9では、前工程の周長調整工程P8で付与された帯状金属部材12の中立面Nよりも外周側の圧縮残留応力、および残留応力付与工程P9で付与される帯状金属部材12の中立面Nよりも内周側の圧縮残留応力を許容範囲内に収めつつ、帯状金属部材12の周長の寸法精度を向上させることができ、その結果、周長の寸法精度に起因する不良率が低下すると共に耐久性に優れた帯状金属部材12が提供できることとなった。
図19は、図16に示す残留応力付与工程P9の各ステップにおける各部の動作状況を時間の経過とともに示す説明図である。
本実施例においては、残留応力付与ステップS26において、前工程の周長調整工程P8で付与された帯状金属部材12の中立面Nよりも外周側の圧縮残留応力、および残留応力付与工程P9で付与される帯状金属部材12の中立面Nよりも内周側の圧縮残留応力の許容範囲内で第2荷重F2を順次増加させて、帯状金属部材12の周長を最終目標に調節することを特徴とし、以下に図面を参照して詳細に説明する。
図20は、残留応力付与工程P9の残留応力付与ステップS26において制御装置65が実行するフローチャートであり、(A)は、帯状金属部材12の1本目の加工時に使用されるフローチャートであり、(B)は、帯状金属部材12の2本目以降の加工時に使用されるフローチャートである。
すなわち、残留応力付与工程P9の残留応力付与ステップS26においては、先の張力付与ステップS22において移動ローラ68が固定ローラ67から離間する方向へ移動させて帯状金属部材12に引張応力が付与された状態であり、また、加圧ローラ70は、応力付与装置71によって帯状金属部材12の外周面24から移動量S2だけ帯状金属部材12の内周側に移動した状態にある。
なお、ここで、第3荷重F3:TUは、帯状金属部材12の降伏応力σy1(σy0)に相当する引張応力を付与できる荷重である。また、第3荷重F3:TLは、図17に示すように、前工程の周長調整工程P8で付与された帯状金属部材12の中立面Nよりも外周側の圧縮残留応力、および残留応力付与工程P9で付与される帯状金属部材12の中立面Nよりも内周側の圧縮残留応力が許容範囲内に収まる範囲での下限の荷重である。さらに、第3荷重F3:TCは、第3荷重F3:TUと第3荷重F3:TLとの中央の荷重である。
まず、1本目の帯状金属部材12の加工について説明する。
図20(A)において、S50では、帯状金属部材12に、図17および図18に示す引張応力の下限値と降伏応力との中央の引張応力が付与されるように、移動ローラ68に第3荷重F3:TCが保持力調整装置49により付与され、1本目の帯状金属部材12が加工される。なお、移動ローラ68に付与される第3荷重F3と、帯状金属部材12に付与される引張応力との関係は、実験的に求め、それにより帯状金属部材12に付与される引張応力は、第3荷重F3としてロードセル60の測定結果に基づいて制御装置65により制御される。また、第2荷重F2は、加圧ローラ70が移動量S2だけ移動するに必要な値に制御装置65により制御され、図19(C)に示すように、加工中は、移動量S2が一定に保たれる。
つぎに、S52において、1本目の帯状金属部材12の周長が計算により求められる。1本目の帯状金属部材12の周長は、移動ローラ68の半径rA1、固定ローラ67の半径rB1、加圧ローラ70の半径rC、移動量S2および移動ローラ68と固定ローラ67との軸間距離S1とに基づいて算出される。
つぎに、S54において、2本目以降の帯状金属部材12の目標周長が計算により求められる。2本目以降の帯状金属部材12の目標周長は、1本目の帯状金属部材12の周長と帯状金属部材12の厚みtに基づいて算出される。
本実施例では、積層リング14は、便宜上、3個の帯状金属部材12から構成されているため、2本目および3本目の帯状金属部材12の目標周長が算出される。
つぎに、2本目以降の帯状金属部材12の加工について説明する。
図20(B)において、S56では帯状金属部材12に、図17および図18に示す引張応力の下限値の引張応力が付与されるように、移動ローラ68に第3荷重F3:TLが保持力調整装置49により付与され、2本目以降の帯状金属部材12が加工される。
つぎに、S58において、帯状金属部材12の周長が計算により求められる。この際の周長の求め方は、前述のS52と同様である。
つぎに、S60において、S58において求められた周長が、前述のS54で求められた目標周長値以下であるかどうか判断される。もし、S58において求められた周長が目標周長未満でない場合(判断:No)、つまり周長が目標周長に達した場合には、つぎのS68において、そのときの第3荷重F3が保持されながら加圧ローラ70が退避させられ、後への工程に移る。
また、S60における判断が「Yes」の場合には、つぎのS62において、移動ローラ68に付与されている第3荷重F3が、ΔT分だけ増加される。
つぎに、S64において、ΔT分だけ増加された第3荷重F3が、図17および図18に示す降伏応力σy1(σy0)に相当する第3荷重F3:TU以下であるかどうかが判断され、以下であれば(判断:Yes)、ΔT分だけ増加された第3荷重F3でもって、引き続き加圧ローラ70により帯状金属部材12の中立面Nよりも内周側の圧縮残留応力が付与され、前述のS58に戻る。
このようにして、図19(D)に示すように、S58において求められた周長が目標周長に達するまで、ΔT分だけ第3荷重F3を増加して帯状金属部材12の周長を増加させ、帯状金属部材12の周長が目標周長に達したところで(S60:No)、残留応力付与ステップS26を修了して、次のステップS68(図16に示す退避ステップS28)に移行する。
また、S64の判断が「No」の場合には、S66に移行して加工が中止される。この場合、第3荷重F3が降伏応力と同じかそれ以上であるため、加工を継続しても帯状金属部材12が塑性変形して前工程の周長調整工程P8で付与された帯状金属部材12の中立面Nよりも外周側の圧縮残留応力が著しく減少し、帯状金属部材12の耐久性が低下する恐れがあり、加工が中止される。
したがって、本実施例の積層リング14の製造装置(方法)によれば、前工程の周長調整工程P8で付与された帯状金属部材12の中立面Nよりも外周側の圧縮残留応力、および残留応力付与工程P9で付与される帯状金属部材12の中立面Nよりも内周側の圧縮残留応力を許容範囲内に収めつつ、帯状金属部材12の周長の寸法精度を向上させることができ、したがって、帯状金属部材12の耐久性が向上するとともに、帯状金属部材12の寸法精度も向上し、寸法精度不良に起因する加工不良を低減させることができる。
図4に戻って、残留応力付与工程P9に次いで、時効処理工程P10では、帯状金属部材12に時効処理が施される。本実施例では、上記時効処理として、帯状金属部材12を所定の温度まで加熱して十分な時間保持した後に冷却を行うことによって、帯状金属部材12を調質させる処理が行われる。
次いで、窒化処理工程P11では、帯状金属部材12に窒化処理が施される。本実施例
では、上記窒化処理として、帯状金属部材12を加熱しつつ所定濃度の窒化性ガス例えばアンモニア分解ガスを含む雰囲気内で所定時間保持することによって、帯状金属部材12の表面の層に窒素を拡散させる処理が行われる。図15は、上記窒化処理によって帯状金属部材12に付与される残留応力σrNの厚み方向の分布を示す図である。図15に示すように、上記窒化処理によって、帯状金属部材12の内周部および外周部には、内周側および外周側ほど大きい圧縮残留応力がそれぞれ残留させられ、また、中央部には、引張残留応力が残留させられる。そして、図15に示される残留応力σrNが前工程までに付与された残留応力σrに加えて付与されることで、帯状金属部材12の残留応力の厚み方向の分布は、図3に示すような分布となる。
次いで、積層工程P12では、周長が異なる複数個の帯状金属部材12が、内周側から外周側に向かうほど順に周長が大きくなるように互いに密着状態で積層されて、積層リング14が形成される。
以上詳述したように本実施例の積層リング14の製造装置(方法)によれば、固定ローラ67及び移動ローラ68に巻き掛けられた帯状金属部材12を移動ローラ68により引張応力を付与しながら周方向に回転させ、その帯状金属部材12の外周側に設けられた加圧ローラ70を用いてその帯状金属部材12の外周面24を内周側に向けて局部的に押圧することによって、加圧ローラ70により帯状金属部材12の内周部に圧縮残留応力σrCを付与する残留応力付与工程P9を含むことから、周長調整工程P8において帯状金属部材12の内周面22が外周側に向けて局部的に押圧されることでその帯状金属部材12の内周部に引張残留応力σrA1が残留しても、残留応力付与工程P9において帯状金属部材12の内周部に圧縮残留応力σrCが付与されるために、帯状金属部材12が伝動ベルト10の積層リング14の構成部品として用いられる場合に最低限圧縮側に要求される残留応力に対して、帯状金属部材12の内周部の強度余裕が多く(大きく)なるので、帯状金属部材12の耐久性を高めることができる。
また、本実施例の積層リング14の製造装置(方法)によれば、図4の残留応力付与工程P9の終盤において、まず、加圧ローラ70を、図8および図10に矢印eで示す帯状金属部材12から離間する方向へ移動させて第2荷重F2を取り除き(S28:退避ステップ)、その後、移動ローラ68を、図8および図9に矢印aで示す固定ローラ67に接近する方向へ移動させて第3荷重F3を取り除く(S30:張力解除ステップ)ようにしたため、周長調整工程P8において帯状金属部材12の外周側に付与された残留応力σrAに悪影響を及ぼす恐れがなく、帯状金属部材12の耐久性が向上する。
また、本実施例の積層リング14の製造装置(方法)によれば、残留応力付与工程P9では、S58において求められた周長が目標周長に達するまで、ΔT分だけ第3荷重F3を増加して帯状金属部材12の周長を増加させ、帯状金属部材12の周長が目標周長に達したところで(S60:No)、残留応力付与ステップS26を修了して、次のステップS68(図16では、退避ステップS28)に移行するため、前工程の周長調整工程P8で付与された帯状金属部材12の中立面Nよりも外周側の圧縮残留応力、および残留応力付与工程P9で付与される帯状金属部材12の中立面Nよりも内周側の圧縮残留応力を許容範囲内に収めつつ、帯状金属部材12の周長の寸法精度を向上させることができ、したがって、帯状金属部材12の耐久性が向上するとともに、帯状金属部材12の寸法精度も向上し、寸法精度不良に起因する加工不良を低減させることができる。
(実施形態2)
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
すなわち、上述の実施例においては、第3荷重F3は、帯状金属部材12の降伏応力σy1(σy0)の理論値に基づいて一様に設定されていたが、本実施例では、個々の帯状金属部材12の特性のバラツキに対応して第3荷重F3を設定した点が大きく異なる。
以下に、図21を参照してその詳細を説明する。なお、その説明中、上述の実施例と同様の作用効果を奏するものには同様の符号を付して説明する。
図21は、実施形態2に係る周長調整装置40の移動ローラ44を移動させて帯状金属部材12に付与される張力(第1荷重F1)を調整するためのローラ移動装置(ローラ移動手段)を示す図である。
図において、ローラ移動装置100は、支持壁48に固定された油圧式アクチュエータ101と、その油圧式アクチュエータ101の出力ロッド102の先端部に固定され、移動ローラ44の回転軸45の両端部を回転可能に支持する支持部材103と、油圧式アクチュエータ101の出力ロッド102に作用する軸心方向の力を測定することで移動ローラ44から帯状金属部材12へ作用する第3荷重F3を間接的に測定し、その測定結果を制御装置65に出力するロードセル104と、上記移動ローラ44の回転軸45を回転駆動する電動機105とを備えている。上記油圧式アクチュエータ101は、第1油圧室108に油圧源61から油圧制御部106を介して油圧が供給されることにより、出力ロッド102およびそれに連結された移動ローラ44を、図5および図21に矢印aで示す固定ローラ42に接近する方向へ移動させ、また、油圧源61から油圧制御部106を介して第2油圧室107に油圧が供給されることにより、出力ロッド102およびそれに連結された移動ローラ44を、図5および図21に矢印bで示す固定ローラ42から離間する方向へ移動させ、それにより、前記固定ローラ42及び移動ローラ44に巻き掛けられた状態の前記帯状金属部材12に第1荷重F1(引張応力)を付与することができる。
周長調整工程P8では、周長調整装置40および上記のよう構成されたローラ移動装置100が用いられて帯状金属部材12の周長が調整される。
すなわち、図16に詳細な工程を示すように、まず、帯状金属部材12が固定ローラ42および移動ローラ44に弛みのない状態で巻き掛けられる(ステップ10、以下S10と称す:セット工程)。その後、電動機105により移動ローラ44が回転駆動されることで、図5の矢印fで示すように帯状金属部材12が周方向に回転させられつつ、ローラ移動装置100により、図5の矢印bで示すように、移動ローラ44が固定ローラ42から離間させられることによって、帯状金属部材12が周方向に引き伸ばされて帯状金属部材12に引張応力が付与されるように第1荷重F1が掛けられる(S12:張力付与工程)。本実施例では、予め実験的に求められた関係から、第1荷重F1を徐々に増加させながら、図5に1点鎖線で示す移動ローラ44の原位置からの変位Yに基づいて、帯状金属部材12の周長が予め定められた所定値に調整される。
このとき、移動ローラ44を原位置からの変位Yに移動させるに必要な第1荷重F1は、固定ローラ42および移動ローラ44に巻き掛けられている帯状金属部材12の降伏応力に基づくものであり、帯状金属部材12の降伏応力σy1(σy0)の実測値となる。
この際、ロードセル104は、第1荷重F1の値を制御装置65に出力し、制御装置65は、その値を記憶する。
つぎの残留応力付与工程P9の残留応力付与ステップS26では、図20に示す制御が制御装置65により実行される。
この際、図20(A)および(B)に示すフローチャートで用いられているところの、第3荷重F3:TL、第3荷重F3:TCおよび第3荷重F3:TUが、前の周長調整工程P8で得られた第1荷重F1の値に基づいて設定される。
このように本実施例においては、帯状金属部材12の降伏応力の残留応力付与ステップS26で用いられる第3荷重F3:TL、第3荷重F3:TCおよび第3荷重F3:TUが、前の周長調整工程P8で得られた第1荷重F1の値に基づいて設定されるため、つまり、実際に加工される帯状金属部材12の降伏応力σy1(σy0)相当の実測値に基づいて設定されるため、残留応力付与ステップS26で調整される帯状金属部材12の内周側および外周側の残留応力の精度、および周長の寸法精度が格段に向上する。
なお、図20(B)に示すS64において用いられるΔTの値は、一定ではなく、第3荷重F3と同様に、前の周長調整工程P8で得られた第1荷重F1の値に基づいて補正しても差し支えない。
(実施形態3)
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
すなわち、上述の各実施例においては、残留応力付与工程P9の残留応力付与ステップS26では、図19(C)および(D)に示すように、残留応力付与装置66の加圧ローラ70の移動量S2を一定として、残留応力付与装置66の移動ローラ68に作用する第3荷重F3を保持力調整装置49によって調整することにより、帯状金属部材12の内周側および外周側の残留応力、および周長を調整するようしたが、本実施例においては、移動ローラ68に作用する第3荷重F3を一定とし、加圧ローラ70の移動量S2を変更して帯状金属部材12に作用する引張応力を変化させ、それにより、帯状金属部材12の内周側および外周側の残留応力、および周長を調整しようとするものである。
以下に、図22を参照してその詳細を説明する。なお、その説明中、上述の各実施例と同様の作用効果を奏するものには同様の符号を付して説明する。
図22は、実施形態3に係る残留応力付与装置110を示す図である。
図において、残留応力付与装置110の移動ローラ68には、ワイヤー112を介しておもり111が接続されており、それにより、移動ローラ68には、一定の第3荷重F3が作用している。なお、おもり111が一定荷重付与手段を構成する。
以上のように構成されたものにおいて、図23を用いてその動作を以下に説明する。
図23は、図16に示す残留応力付与工程P9の各ステップにおける各部の動作状況を時間の経過とともに示す説明図である。
本実施例においては、残留応力付与工程P9の残留応力付与ステップS26において、目標となる軸間距離S1なるまで、制御装置65の制御に基づいて加圧ローラ70が応力付与装置71によって移動させられ、移動量S2が徐々に増加される。
この際、図24に示すように、帯状金属部材12に作用する引張応力は、加圧ローラ70の移動量S2の増加に伴って増加する。
すなわち、図22に示すように、移動ローラ68側において、初期状態の帯状金属部材12と、加圧ローラ70の移動にともなって移動した状態の帯状金属部材12とがなす角度をθとすると、帯状金属部材12に作用する引張応力fは、以下のように表される。
f=第3荷重F3÷(1+cosθ)
本実施例では、図24に示すように、第3荷重F3として、図17および図18に示す引張応力の下限値を下回る引張応力が帯状金属部材12に作用するようにおもり111の重量が設定される。
本実施例においては、第3荷重F3を一定としているので、例えば、おもり111など用いることができ、移動ローラ68に作用する第3荷重F3の制御が高精度で且つ非常に簡単となる。しかも、帯状金属部材12に作用する引張応力fは、加圧ローラ70の移動量S2によって決まるが、図24に示すように、引張応力fに対する移動量S2の感度が極めて高いので、高精度で帯状金属部材12に作用する引張応力fを制御装置65によってコントロールすることができる。ここでは、引張応力fが本発明の引張荷重に相当する。
なお、おもり111に代えて前述の保持力調整装置49を用いても差し支えない。また、帯状金属部材12の中立面Nよりも内周側の圧縮残留応力は、加圧ローラ70の径で定まるので、内周側の圧縮残留応力に加圧ローラ70の移動量S2が影響を与えることはない。
(実施形態4)
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
実施形態4は、上述の実施形態3の変形例である。
上述の実施形態3では、加圧ローラ70の移動にともなって移動ローラ68も移動するため、初期状態の帯状金属部材12と、加圧ローラ70の移動にともなって移動した状態の帯状金属部材12とがなす角度θを求める計算が複雑になるが、実施形態4は、その点を改善したものである。
以下に、図25を参照してその詳細を説明する。なお、その説明中、上述の各実施例と同様の作用効果を奏するものには同様の符号を付して説明する。
図25は、実施形態4に係る残留応力付与装置120を示す図である。
図において、移動ローラ68は、第1のリニアガイド121を介して図25において左右方向に移動可能な第1の移動テーブル122に、電動機58を介して回転可能に支持されている。第2のリニアガイド123は、前記第1の移動テーブル122の上面に配置され、第2のテーブル124を前記第1の移動テーブル122とは直交する方向に移動可能に支持している。前記第2のテーブル124上には、加圧ローラ70が回転可能に支持されている。また、前記第2のテーブル124は、前記第1の移動テーブル122上に支持されたサーボモータ125の回転に伴って、前記第2のリニアガイド123に案内されて移動できるように、サーボモータ125から延びる送りネジと螺合している。なお、サーボモータ125は、制御装置65により回転制御される。
以上のように構成されたものにおいて、その動作を以下に説明する。
サーボモータ125を回転駆動すると、第2のテーブル124は、第2のリニアガイド123に案内されて移動し、それに伴って、加圧ローラ70は、帯状金属部材12を内周側に向けて押し込む。
帯状金属部材12が加圧ローラ70により押し込まれると、移動ローラ68は、軸間距離S1が短くなる方向に移動する。この際、移動ローラ68は、第1の移動テーブル122に支持されているため、第1の移動テーブル122が第1のリニアガイド121に案内されて移動する。
第1の移動テーブル122が移動すると、加圧ローラ70も第1の移動テーブル122上に支持されているため、移動する。つまり、加圧ローラ70の移動に伴って、移動ローラ68と加圧ローラ70との水平間距離が変化することがない。したがって、初期状態の帯状金属部材12と、加圧ローラ70の移動にともなって移動した状態の帯状金属部材12とがなす角度θを求める計算において、変数が加圧ローラ70の移動量S2のみとなって簡単となり、処理しやすい。
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
たとえば、帯状金属部材12は、マルエージング鋼およびステンレス鋼以外の鋼材から形成されてもよい。
また、保持力調整装置49及び応力付与装置71の機械的構成は、一例が開示されたものであり、その他の公知の機械的構成であっても実現される。例えば、移動ローラ68及び加圧ローラ70を移動させるために用いられる油圧式アクチュエータは、それに代えて、例えば電気式または空気圧式等の他の方式のアクチュエータが用いられ得る。
また、残留応力付与装置66は、固定ローラ67及び移動ローラ68から構成し、移動ローラ68に保持力調整装置49を設けたが、1対の移動ローラから構成し、両方の移動ローラに保持力調整装置49を設けても良い。
また、周長調整工程P8と残留応力付与工程P9は別々の工程である必要はなく、周長調整工程P8と残留応力付与工程P9とを一つの工程で行うようにしても良い。
すなわち、周長調整工程P8において用いられる周長調整装置40の固定ローラ42及び移動ローラ44の径と、周長調整工程P8において用いられる残留応力付与装置66の移動ローラ68及び固定ローラ67の径を同じとすることで、周長調整装置40と残留応力付与装置66とを共用して用いることができる。この場合、周長調整工程P8の張力解除工程S16において、残留応力付与工程P9の張力付与ステップS22において設定された張力まで解除するようにすれば、周長調整工程P8の取外し工程S18、残留応力付与工程P9のセットステップS20及び張力付与ステップS22を省略することが可能となる。
したがって、周長調整工程P8を終了後に帯状金属部材12を架け替えることなく残留応力付与工程P9に移ることが可能であり、この場合、手間が省略できて作業性が向上する。
更に、図16に示すように、周長調整工程P8において用いられる周長調整装置40の固定ローラ42の半径rB及び移動ローラ44の半径rAに比べて残留応力付与工程P9において用いられる残留応力付与装置66の固定ローラ67の半径rB1及び移動ローラ68の半径rA1を大きく設定すれば、帯状金属部材12の内周面側の残留応力を、残留応力付与装置66の固定ローラ67の半径rB1及び移動ローラ68の半径rA1が周長調整装置40の固定ローラ42の半径rB及び移動ローラ44の半径rAと同じ場合に比べて改善することできる。
すなわち、上述の実施例においては、残留応力付与工程P9の張力解除ステップS30において、帯状金属部材12に付与されていた張力が解除されると、帯状金属部材12の内周面側に生じている応力が、張力分だけ圧縮側にスライドして降伏点−σy(−σy0)を超える部分が発生して圧縮塑性変形する部分が生ずる。それにより、残留応力付与工程P9において帯状金属部材12の内周面側に付与された圧縮方向の残留応力が抜ける恐れがある。
しかし、残留応力付与装置66の固定ローラ67の半径及び移動ローラ68の半径を周長調整工程P8において用いられる周長調整装置40の固定ローラ42の半径rB及び移動ローラ44の半径rAに比べて大きくすることで、残留応力付与工程P9における固定ローラ67及び移動ローラ68部分での帯状金属部材12の内周面側に作用する曲げ応力を小さくすることができる。その結果、帯状金属部材12に付与されていた張力が解除されて帯状金属部材12の内周面側に生じている応力が、引張応力分だけ圧縮側にスライドしたとしても、降伏点−σy(−σy0)を超える部分が発生する恐れがない。したがって、帯状金属部材12の内周面側においても残留応力付与工程P9において付与された残留応力がそのまま残り、帯状金属部材12の耐久性が更に向上する。
また、この場合、周長調整工程P8において用いられる周長調整装置40の固定ローラ42及び移動ローラ44は、残留応力付与装置66の固定ローラ67及び移動ローラ68に比べて小径のものを用いることができるため、周長調整工程P8において帯状金属部材12の外周部側に効率的に圧縮残留応力を付与することができる。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明
は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で
実施することができる。
10・・・伝動ベルト
12・・・帯状金属部材
49・・・保持力調整装置
66・・・残留応力付与装置
67・・・固定ローラ
68・・・移動ローラ
70・・・加圧ローラ
71・・・応力付与装置
65・・・制御装置

Claims (7)

  1. 無端金属リングの製造装置であって、
    前記無端金属リングの内周側に配置される保持用ローラと、
    前記保持用ローラにより前記無端金属リングに張力が付与される位置と、張力が付与されない位置との間で前記保持用ローラを移動可能な保持用ローラ移動手段と、
    前記無端金属リングの外周側に配置される外周側ローラと、
    前記外周側ローラが前記無端金属リングを外周側から押圧する位置と押圧しない位置との間で前記外周側ローラを移動可能な外周側ローラ移動手段と、
    前記外周側ローラ移動手段によって前記無端金属リングを押圧する位置に前記外周側ローラを移動させる際、前記保持用ローラ移動手段または外周側ローラ移動手段によって前記保持用ローラ間の間隔を目標とする無端金属リングの周長に応じて調整する制御手段と、
    から構成したことを特徴とする無端金属リングの製造装置。
  2. 請求項1に記載の無端金属リングの製造装置において、
    前記制御手段は、前記外周側ローラ移動手段によって前記外周側ローラの移動量を一定に保つと共に、前記保持用ローラ移動手段によって前記保持用ローラ間の間隔を目標とする無端金属リングの周長に応じて調整するように制御することを特徴とする無端金属リングの製造装置。
  3. 請求項1に記載の無端金属リングの製造装置において、
    前記保持用ローラに一定の荷重を付与すると共に、前記外周側ローラ移動手段によって前記外周側ローラの移動量を変更することにより前記保持用ローラ間の間隔を目標とする無端金属リングの周長に応じて調整するように制御することを特徴とする無端金属リングの製造装置。
  4. 請求項3に記載の無端金属リングの製造装置において、
    前記保持用ローラと前記外周側ローラとの水平距離を一定としたことを特徴とする無端金属リングの製造装置。
  5. 請求項1乃至請求項4に記載の無端金属リングの製造装置において、
    前記制御手段は、前記無端金属リングの周長及び前記無端金属リングに付与される引張荷重に基づいて制御することを特徴とする無端金属リングの製造装置。
  6. 無端金属リングの製造方法であって、
    前記無端金属リングの内周側に配置される保持用ローラにより前記無端金属リングを保持する保持工程と、
    前記保持工程で保持された前記無端金属リングの外周側から外周側ローラによって押圧する残留応力付与工程と、を備え、
    前記残留応力付与工程において前記無端金属リングの周長を調整することを特徴とする無端金属リングの製造方法。
  7. 無端金属リングの製造方法であって、
    前記無端金属リングの内周側に配置される第1の保持用ローラによって前記無端金属リングの周長が調整される周長調整工程と、
    前記第1の保持用ローラよりも径が大きい第2の保持用ローラによって前記無端金属リングを保持する保持工程と、
    前記保持工程で保持された前記無端金属リングの外周側から外周側ローラによって押圧する残留応力付与工程と、
    前記外周側ローラを前記無端金属リングから退避させる退避工程と、
    前記第2の保持用ローラを移動させて前記無端金属リングの張力を解除する解除工程と、を備え、
    前記残留応力付与工程において前記無端金属リングの周長を調整することを特徴とする無端金属リングの製造方法。
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