しかしながら、特許文献1に示すような従来の巻付用ドラムに巻き付けた状態で管更生部材を加熱すると、巻き付け中心部などに蒸気の行き渡り難い部分が生じてしまう。つまり、従来の巻付用ドラムでは、管更生部材の全体を均一に加熱することが困難であり、加熱ムラが生じ易い。加熱した管更生部材の温度にばらつきがあると、既設管内への挿入時に挿入力が変化し、管更生部材にかかる応力が変動するので、施工後の管厚にばらつきが生じ易くなり、更生管路の品質に悪影響を及ぼす恐れがある。
一方、管更生部材の全体を確実に加熱軟化させるためには、長時間の加熱を行うことが考えられる。しかしながら、加熱時間が長くなると、燃料費が余計に必要になる上、施工時間も長くなり、道路の封鎖等の周辺環境への影響も大きくなってしまう。
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、巻付用ドラムおよび管更生部材の加熱方法を提供することである。
この発明の他の目的は、管更生部材を短時間で均一に加熱軟化させることができる、巻付用ドラムおよび管更生部材の加熱方法を提供することである。
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
第1の発明は、既設管を更生する管更生部材が巻き付けられ、管更生部材を加熱する熱媒を放出するための空間を形成する熱媒放出部を備える巻付用ドラムであって、管更生部材が巻き付けられる胴部、胴部の両端部に設けられるフランジ、胴部外周面との間に空間を形成するように当該胴部外周面を覆うかつ分散配置される複数の孔を有するコア熱媒放出部、および胴部外周面とコア熱媒放出部との間の空間内に熱媒を供給する熱媒ホースが接続されるコア接続部を備える、巻付用ドラムである。
第1の発明では、巻付用ドラム(10)は、老朽化した既設管(100)を内側から補修するための管更生部材(102)が巻き付けられるドラムである。巻付用ドラムは、胴部(20)およびその両端部に設けられるフランジ(22)を含む。胴部には、分散配置される複数の孔(30)を有するコア熱媒放出部(14)が設けられる。コア熱媒放出部は、胴部外周面との間に空間(28)を形成するように、胴部外周面の一部または全体を覆う。つまり、コア熱媒放出部を設けることによって、巻付用ドラムに管更生部材を巻き付けた際には、胴部外周面と管更生部材との間に周方向などに連通する空間(熱媒流路)が確実に形成される。また、たとえば胴部には、コア接続部(60)が設けられる。コア接続部には、胴部外周面とコア熱媒放出部との間の空間内に熱媒を供給する熱媒ホース(62)が接続される。
巻付用ドラムから管更生部材を引き出して既設管内に挿入する際には、熱媒ホースから胴部外周面と管更生部材との間の空間(コア熱媒放出部内の空間)に蒸気や熱風などの熱媒が供給される。供給された熱媒は、その空間内を移動して各孔から外部(管更生部材の巻き付け中心部など)に放出され、管更生部材を加熱する。
第1の発明によれば、胴部外周面にコア熱媒放出部を設け、胴部外周面と管更生部材との間に空間(熱媒流路)を形成するようにしたので、管更生部材の巻き付け中心部に対しても、適切に熱媒を行き渡らせることができる。したがって、管更生部材を全長に亘って均一にかつ短時間で加熱軟化させることができる。
第2の発明は、第1の発明に従属し、コア熱媒放出部は、フランジに向かって拡径するテーパ状の外周面を有する。
第2の発明では、コア熱媒放出部(14)は、フランジ(22)に向かって拡径するテーパ状の外周面を有する。たとえば、コア熱媒放出部の外周面のテーパ角度は、管更生部材(102)を巻き付けた際に胴部(20)下部の周囲に形成される断面略直角三角形状の閉空間を保持できるように、その閉空間の傾斜面に沿うテーパ角度に設定され、コア熱媒放出部は、その閉空間において管更生部材を下側から支持する。
第2の発明によれば、コア熱媒放出部が管更生部材を下側から支持するので、搬送中や加熱中の管更生部材の巻き崩れを防止でき、熱媒流路となる空間を確実に保持できる。
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、コア熱媒放出部は、胴部の外周面下部を覆い、コア熱媒放出部の上端とその上側のフランジの内側面と間には、管更生部材の幅と略同じ大きさの間隔が設けられる。
第3の発明では、コア熱媒放出部(14)は、胴部(20)の外周面下部を覆うように設けられる。そして、コア熱媒放出部の上端(14a)と上側のフランジ(22)の内側面との間には、管更生部材(102)の幅と略同じ大きさの間隔が設けられる。これにより、コア熱媒放出部と上側のフランジとの間に管更生部材を嵌め込むようにして、胴部に管更生部材を一巻きすることができるので、搬送中や加熱中の管更生部材の巻き崩れがより生じ難くなる。
第4の発明は、第3の発明に従属し、コア熱媒放出部は、上端に水平面部を有する。
第4の発明では、コア熱媒放出部(14)の上端(14a)には、水平面部が形成される。これにより、コア熱媒放出部の上端が管更生部材(102)の一巻き目を下側から水平に支持できるので、搬送中や加熱中の管更生部材の巻き崩れがより生じ難くなる。
第5の発明は、第1ないし第4のいずれかの発明に従属し、コア熱媒放出部の表面の少なくとも一部に設けられる、かつ通気性を有するコア保護シートを備える。
第5の発明では、コア熱媒放出部(14)の表面の少なくとも一部には、不織布などの通気性を有するコア保護シートが設けられる。これによって、コア熱放出部との接触による管更生部材(102)の傷や窪みを防止でき、施工時に管更生部材が割れてしまう等の事故を防止できる。
第6の発明は、既設管を更生する管更生部材が巻き付けられ、管更生部材を加熱する熱媒を放出するための空間を形成する熱媒放出部を備える巻付用ドラムであって、管更生部材が巻き付けられる胴部、胴部の両端部に設けられるフランジ、フランジ内側面との間に空間を形成するように当該フランジ内側面を覆うかつ分散配置される複数の孔を有する側面熱媒放出部、フランジ内側面と側面熱媒放出部との間の空間内に熱媒を供給する熱媒ホースが接続される側面接続部を備える、巻付用ドラムである。
第6の発明では、巻付用ドラム(10)は、老朽化した既設管(100)を内側から補修するための管更生部材(102)が巻き付けられるドラムである。巻付用ドラムは、胴部(20)およびその両端部に設けられるフランジ(22)を含む。フランジの少なくとも一方には、分散配置される複数の孔(46)を有する側面熱媒放出部(16)が設けられる。側面熱媒放出部は、フランジ内側面との間に空間(44)を形成するように、フランジ内側面の一部または全体を覆う。つまり、側面熱媒放出部を設けることによって、巻付用ドラムに管更生部材を巻き付けた際には、フランジ内側面と管更生部材との間に径方向などに連通する空間(熱媒流路)が確実に形成される。また、たとえばフランジには、側面接続部(64)が設けられる。側面接続部には、フランジ内側面と側面熱媒放出部との間の空間内に熱媒を供給する熱媒ホース(66)が接続される。
巻付用ドラムから管更生部材を引き出して既設管内に挿入する際には、熱媒ホースからフランジ内側面と管更生部材との間の空間(側面熱媒放出部内の空間)に蒸気や熱風などの熱媒が供給される。供給された熱媒は、その空間内を移動して各孔から外部(管更生部材の巻き付け中心部や巻き付けの折り返し部分)に放出され、管更生部材を加熱する。
第6の発明によれば、フランジ内側面に側面熱媒放出部を設け、フランジ内側面と管更生部材との間に空間(熱媒流路)を形成するようにしたので、管更生部材の巻き付け中心部や巻き付けの折り返しによる閉空間に対しても、適切に熱媒を行き渡らせることができる。したがって、管更生部材を全長に亘って均一にかつ短時間で加熱軟化させることができる。
第7の発明は、第6の発明に従属し、側面熱媒放出部の表面の少なくとも一部に設けられる、かつ通気性を有する側面保護シートを備える。
第7の発明では、側面熱媒放出部(16)の表面の少なくとも一部には、不織布などの通気性を有する側面保護シートが設けられる。これによって、側面熱放出部との接触による管更生部材(102)の傷や窪みを防止でき、施工時に管更生部材が割れてしまう等の事故を防止できる。
第8の発明は、既設管を更生する管更生部材を巻付用ドラムに巻き付けた状態で加熱する管更生部材の加熱方法であって、巻付用ドラムの胴部外周面およびフランジ内側面の少なくとも一方と管更生部材との間に空間を形成する、かつ分散配置される複数の孔を有する熱媒放出部を巻付用ドラムに設け、空間内に熱媒を供給して、複数の孔から放出される熱媒によって管更生部材を加熱する、管更生部材の加熱方法である。
第8の発明では、老朽化した既設管(100)を内側から補修するための管更生部材(102)を巻付用ドラム(10)から引き出す際に、管更生部材を巻付用ドラムに巻き付けた状態で加熱軟化させる。この方法では、熱媒放出部(14,16)を巻付用ドラムの胴部(20)外周面およびフランジ(22)内周面の少なくとも一方に設けておく。熱媒放出部は、分散配置される複数の孔(30,46)を有し、胴部外周面およびフランジ内側面の少なくとも一方と管更生部材との間に周方向および径方向などに連通する空間(28,44)を形成するものである。そして、管更生部材の加熱時には、熱媒放出部によって形成される空間内に蒸気や熱風などの熱媒を供給し、その空間内を移動して各孔から外部(管更生部材の巻き付け中心部や巻き付けの折り返し部分など)に放出される熱媒によって管更生部材を加熱する。
第8の発明によれば、熱媒の行き渡り難い管更生部材の巻き付け中心部の閉空間や巻き付けの折り返しによる閉空間などに対しても、適切に熱媒を行き渡らせることができる。したがって、管更生部材を全長に亘って均一にかつ短時間で加熱軟化させることができる。
第1の発明によれば、胴部外周面にコア熱媒放出部を設け、胴部外周面と管更生部材との間に空間(熱媒流路)を形成するようにしたので、熱媒の行き渡り難い管更生部材の巻き付け中心部の閉空間に対しても、適切に熱媒を行き渡らせることができる。したがって、管更生部材を全長に亘って均一にかつ短時間で加熱軟化させることができる。
第6の発明によれば、フランジ内側面に側面熱媒放出部を設け、フランジ内側面と管更生部材との間に空間(熱媒流路)を形成するようにしたので、熱媒の行き渡り難い管更生部材の巻き付け中心部の閉空間や巻き付けの折り返しによる閉空間に対しても、適切に熱媒を行き渡らせることができる。したがって、管更生部材を全長に亘って均一にかつ短時間で加熱軟化させることができる。
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
図1を参照して、この発明の一実施例である巻付用ドラム10は、老朽化した既設管100を内側から補修するための管更生部材102が巻き付けられるドラムである。詳細は後述するように、巻付用ドラム10は、胴部20およびフランジ22を備えるドラム本体12に対して、コア熱媒放出部14および側面熱媒放出部16を設けた基本構成を有しており、管更生部材102を巻き付けた状態で、効率的に管更生部材102を加熱軟化させることを可能としたドラムである。
先ず、巻付用ドラム10の具体的な説明に先立って、この巻付用ドラム10に巻き付けられる管更生部材102について説明する。管更生部材102は、硬質塩化ビニルおよびポリエチレン等の合成樹脂によって形成される長尺管であり、図2に示すように、ドラムに対して縮径状態で渦巻き状(ロール状)に巻き取られて搬送等される。具体的には、管更生部材102は、平板状部104とその両端に形成される楕円筒状部106とを有する、断面略瓢箪形の縮径形状とされてドラムに巻き付けられる。管更生部材102をドラムに巻き付けるときには、たとえばドラム上部から巻き始め、外側に巻き重ねる際に楕円筒状部106の長さ分だけ下にずらすようにして、螺旋状に巻き付けていく。そして、管更生部材102がドラム下部まで達すると、折り返して、螺旋状に上にずらすようにして巻き付けていき、以下同様にして、所定長さの管更生部材102をドラムに巻き付ける。
管更生部材102は、公知の製造方法によって製造することができる。管更生部材102を製造する際には、先ず、所定の径で直管を押出成形する。そして、軟化点以上融点以下の範囲における所定の温度(たとえば硬質塩化ビニル製の管更生部材102では、100℃程度)にその直管を加熱した状態で、押し板やローラ等を用いて偏平させる等の縮径加工を施し、断面略瓢箪形の縮径形状にする。これにより、縮径形状とされた管更生部材102は、再び軟化点以上融点以下の温度に加熱し加圧することによって、円筒形等の元の形状に復元するようになる。なお、管更生部材102は、復元したときの外径が既設管100の内径と略等しいサイズとなるように設定される。更生する既設管100の内径は、たとえば100−700mmである。
なお、管更生部材102は、種々の用途および構成材料の既設管100の更生に適用し得る。たとえば、ガス管、上下水道管およびケーブル保護管等の更生に適用することができ、更生する管路の材質も、鉄筋コンクリート製、鋳鉄製、鋼製および合成樹脂製などのいずれであってもよい。
続いて、この発明の一実施例である巻付用ドラム10について具体的に説明する。上述のように、巻付用ドラム10は、ドラム本体12、コア熱媒放出部14および側面熱媒放出部16を備える。
図3に示すように、ドラム本体12は、胴部20およびフランジ22を含み、ステンレス鋼などの金属によって形成される。胴部20は、内筒24および外筒26を備える2重筒構造を有しており、その外周面に管更生部材102が渦巻き状に巻き付けられる(図12参照)。フランジ22は、胴部20の両端部に設けられ、胴部20の外周面から径方向外側に鍔状に突出する。胴部20の外径は、たとえば900mmであり、フランジ22の外径は、たとえば2400mmである。また、フランジ22の内側面間の距離(胴部20の軸方向長さ)は、たとえば1300mmである。
図1に戻って、胴部20の外周面には、ステンレス鋼などの金属によって形成されるコア熱媒放出部14が設けられる。コア熱媒放出部14は、胴部20の外周面を覆うように設けられ、コア熱媒放出部14(具体的には後述する外筒部34)と胴部20外周面との間には、主として周方向に連通する空間(熱媒流路)28が形成される(図12参照)。また、コア熱媒放出部14には、複数の孔30が分散して形成されており、詳細は後述するように、コア熱媒放出部14内の空間28に供給された蒸気や熱風(乾燥気体)などの熱媒は、空間28内を移動して各孔30から外部に放出される。各孔30の内径は、たとえば50mmであり、隣り合う孔30同士の距離は、たとえば50mmである。
なお、図1等では、各孔30を六角孔としているが、各孔30の形状は、丸孔、長丸孔、角孔、およびスリット孔など任意に設定できる。また、各孔30の配置態様も適宜変更できる。これらは、後述する側面熱媒放出部16の各孔46についても同様である。
図1および図4に示すように、この実施例では、コア熱媒放出部14は、胴部20の下半部を覆い、コア熱媒放出部14の上端14aと上側のフランジ22の内側面と間には、管更生部材102の幅と略同じ大きさの間隔が設けられる。また、コア熱媒放出部14は、下側のフランジ22に向かって拡径するテーパ状に形成され、その上端14aには水平面部を有する。コア熱媒放出部14の外周面のテーパ角度は、管更生部材102の巻き姿に応じて設定される。すなわち、管更生部材102を巻き付けた際に胴部20下部の周囲に形成される断面略直角三角形状の閉空間を保持できる(つまり管更生部材102の巻き姿を保持できる)ように、閉空間の傾斜面に沿うテーパ角度に設定され、コア熱媒放出部14は、その閉空間において管更生部材102を下側から支持する(図13参照)。
また、この実施例では、コア熱媒放出部14は、4つのコア分割体32からなる。図5−図7を参照して、コア分割体32のそれぞれは、複数の孔30を有する湾曲板状の外筒部34と外筒部34を裏面側から保持する骨格部36とを備える。外筒部34は、パンチングメタル等を用いて形成され、骨格部36は、等辺山形鋼を溶接する等して形成される。具体的には、骨格部36は、直角三角形の枠状に形成されて、胴部20の周方向に並べて配置される3つの支持部36aを含み、各支持部36aは、その頂点を結ぶように周方向に湾曲して延びる3つの連結部36bによって一体化されている。外筒部34は、各支持部36aの傾斜辺を結ぶように設けられる。
また、コア分割体32の周方向一方端に位置する支持部36aには、ナット38が固定的に設けられる。一方、コア分割体32の周方向他端に位置する支持部36aには、ボルト孔40が形成され、外筒部34には、ボルト孔40に対応する位置に開口42が形成される。これにより、ボルトを外筒部34の表面側から取り付けることが可能となり、また、ナット38やボルトを外筒部34の表面側(更生管部材102側)に突出させることなく、コア分割体32同士を連結することができる。
コア熱媒放出部14をドラム本体12の胴部20に取り付ける際には、4つのコア分割体32を胴部20に抱き付かせるように配置する。そして、隣り合うコア分割体32同士をナット38およびボルトを用いて連結することによって、コア熱媒放出部14を胴部20に固定するとよい。このように、コア熱媒放出部14を分割形状とすることによって、既存のドラムに対するコア熱媒放出部14の後付けが可能となる。つまり、コア熱媒放出部14をドラム取付部材(コア熱媒放出部材)として単独で製造し、既存のドラムに取り付けることよって巻付用ドラム10を製造することができるようになる。分割形状とする効果は、後述する側面熱媒放出部16についても同様である。なお、コア熱媒放出部14や側面熱媒放出部16の分割数は、特に限定されず、たとえば2つの分割体によってコア熱媒放出部14や側面熱媒放出部16を形成してもよい。
図1に戻って、フランジ22の内側面のそれぞれには、ステンレス鋼などの金属によって形成される側面熱媒放出部16が設けられる。側面熱媒放出部16は、フランジ22の内側面を覆うように設けられ、側面熱媒放出部16(具体的には後述する側板部50)とフランジ22の内側面との間には、主として径方向に連通する空間(熱媒流路)44が形成される(図12参照)。また、側面熱媒放出部16には、複数の孔46が分散して形成されており、詳細は後述するように、側面熱媒放出部16内の空間44に供給された蒸気などの熱媒は、空間44内を移動して各孔46から外部に放出される。各孔46の内径は、たとえば50mmであり、隣り合う孔46同士の距離は、たとえば50mmである。
図8に示すように、この実施例では、側面熱媒放出部16は、4つの側面分割体48からなる。図9−図11を参照して、側面分割体48のそれぞれは、複数の孔46を有する扇板状の側板部50と、扇形の枠状に形成される骨格部52とを備える。側板部50は、パンチングメタル等を用いて形成される。骨格部52は、等辺山形鋼を溶接する等して形成され、側板部50を裏面側(フランジ22側)から支持して、側板部50とフランジ22内側面との間の空間44を保持する。
また、側板部50の裏面側には、フランジ22内側面への側面分割体48の固定に用いられる固定部54が設けられる。固定部54は、等辺山形鋼などを用いて形成され、側板部50と対向する位置にその1辺がくるように設けられる(図11(B)参照)。側板部50と対向する固定部54の1辺には、ボルト孔56が形成され、側板部50には、ボルト孔56に対応する位置に開口58が形成される。また、フランジ22にもボルト孔56に対応する位置に孔(図示せず)が形成される。側面熱媒放出部16をフランジ22内側面に取り付ける際には、4つの側面分割体48が周方向に並べられて固定される。各側面分割体48は、側板部50の開口58から挿入したボルトとフランジ22外側面に配置したナットとを締結することによって固定される。これにより、ボルトやナットを側板部50の表面側(更生管部材102側)に突出させることなく、側面熱媒放出部16をフランジ22内側面に固定できる。
なお、側面分割体48の骨格部52および固定部54には、周方向に連通する開口(図示せず)を適宜形成しておくとよい。これは、側面熱媒放出部16内における熱媒の周方向への移動を行い易くするためである。ただし、熱媒は、側板部50の複数の孔46を介して自由に出入りでき、側面熱媒放出部16の外部に迂回すること等によって周方向全体に移動することが可能であるので、周方向に連通する開口は、必ずしも側面分割体48の骨格部52および固定部54に形成される必要はない。
また、図示は省略するが、コア熱媒放出部14および側面熱媒放出部16の表面の全体または一部には、不織布および織布などの通気性を有する保護シートが貼り付けられる。コア熱媒放出部14および側面熱媒放出部16の孔30,46と加熱された管更生部材102とが接触すると、管更生部材102の表面に傷や窪みが付く恐れがある。しかし、保護シートを取り付けることによって、管更生部材102の傷や窪みを防止でき、施工時に管更生部材102が割れてしまう等の事故を防止できる。
また、図3および図12に示すように、胴部20の外筒26には、コア熱媒放出部14内の空間28と連通するコア接続部60が設けられる。このコア接続部60には、コア熱媒放出部14内の空間28に蒸気や熱風(乾燥気体)などの熱媒を供給するための熱媒ホース62が接続される。また、上側のフランジ22には、上側の側面熱媒放出部16内の空間44と連通する側面接続部64が設けられる。この側面接続部64には、上側の側面熱媒放出部16内の空間44に熱媒を供給するための熱媒ホース66が接続される。なお、下側の側面熱媒放出部16内の空間44は、コア熱媒放出部14内の空間28と連通しているので、コア接続部60を介して供給された熱媒が、下側の側面熱媒放出部16内の空間44にも供給される。つまり、コア接続部60が、下側の側面熱媒放出部16内の空間44に熱媒を供給するための熱媒ホースが接続される側面接続部としても機能する。
コア接続部60および側面接続部64としては、カプラやネジ継手などを用いるとよい。ただし、各接続部60,64は、単なる開口にしておき、適宜の取付具を用いて熱媒ホース62,66をその開口に接続するようにしてもよい。なお、上述のように、コア熱媒放出部14内と側面熱媒放出部16内とが連通している場合には、コア接続部60および側面接続部64を共用とすることもできる。また、1つのコア熱媒放出部14または側面熱媒放出部16に対して、複数の接続部60,64を設けて、複数箇所から熱媒を供給することもできる。さらに、フランジ22にコア接続部60を設けることもできるし、胴部20に側面接続部64を設けることもできる。もちろん、コア熱媒放出部14および側面熱媒放出部16自体に各接続部60,64を設けることもできる。
このような巻付用ドラム10には、図13に示すように、縮径状態の管更生部材102が渦巻き状に巻き付けられる。この際、コア熱媒放出部14がテーパ状の外周面を有し、管更生部材102を下側から支持するので、搬送中や加熱中の管更生部材102の巻き崩れが防止され、熱媒流路となる空間28を確実に保持できる。また、コア熱媒放出部14の上端14aと上側のフランジ22の内側面と間には、管更生部材102の幅と略同じ大きさの間隔が設けられるので、コア熱媒放出部14と上側のフランジ22との間に管更生部材102を嵌め込むようにして、胴部20の外周面に管更生部材102を一巻きすることができる上、コア熱媒放出部14の上端14aの水平面部が管更生部材102の一巻き目を下側から水平に支持することができる。これにより、搬送中や加熱中の管更生部材102の巻き崩れがより生じ難くなる。
管更生部材102は、巻付用ドラム10に巻き付けられた状態で施工現場に搬送され、既設管100の更生に用いられる。以下、図14を参照して、巻付用ドラム10に巻き付けられた管更生部材102を使用して、老朽化した既設管100を更生する工法について説明する。
既設管100を更生する際には、先ず、既設管100の更生区間内の滞留物等を除去洗浄する。また、始点の立坑108側には、熱媒発生装置110および保温ケーシング(ウォーマ)112を設置し、保温ケーシング112の内部には、管更生部材102が巻き付けられた巻付用ドラム10を収容する。この際、巻付用ドラム10は、回転台座114上に戴置した状態とされ、回転台座114に立設される回転軸部は、胴部20の内筒24に挿通される。また、終点の立坑116側には、牽引ワイヤ118を巻き取るためのウインチ120を配置する。なお、熱媒発生装置110、保温ケーシング112および回転台座114などに関しては、公知技術を適用できるので、説明は省略する。
次に、保温ケーシング112内で管更生部材102を加熱軟化させる。管更生部材102を加熱軟化させる際には、先ず、回転台座114を作動させて、巻付用ドラム10を回転させる。続いて、熱媒発生装置110を作動させて、蒸気や熱風などの熱媒を保温ケーシング112内に放出して保温ケーシング112内全体を温め、管更生部材102を外部から加熱すると共に、管更生部材102の管端に接続した熱媒ホースから管更生部材102内に熱媒を放出し、管更生部材102を内部から加熱する。
さらに、この実施例では、コア接続部60に接続した熱媒ホース62からコア熱媒放出部14内の空間28に熱媒を供給すると共に、側面接続部64に接続した熱媒ホース66から側面熱媒放出部16内の空間44に熱媒を供給する。空間28,44内に供給された熱媒は、この空間28,44内を自由に移動してコア熱媒放出部14および側面熱媒放出部16の各孔30,46から放出され、管更生部材102を外部から加熱する。つまり、巻付用ドラム10を用いると、管更生部材102の巻き付け中心部の略直角三角形状の閉空間や、巻き付けの折り返しにより形成される略二等辺三角形状の閉空間などの熱媒の行き渡り難い部分に対して、熱媒を行き渡らせることができ、管更生部材102を均一にかつ短時間で加熱することができる。
なお、熱媒ホース62,66をコア接続部60や側面接続部64に接続しつつ、巻付用ドラム10を回転させるには、公知のスイベル等の部材を利用するとよい。たとえば、コア熱媒放出部14内および側面熱媒放出部16内の空間28,44に熱媒を供給する熱媒ホース62,66は、管更生部材102内に熱媒を供給する熱媒ホースから分岐されて、コア接続部60および側面接続部64に接続される。
管更生部材102が十分に加熱軟化されると、続いて、管更生部材102を巻付用ドラム10から引き出して既設管100内に挿入する。この際には、終点の立坑116側から既設管100内に牽引ワイヤ118を挿通し、その牽引ワイヤ118を管更生部材102の先端に接続する。その後、牽引ワイヤ118をウインチ120で巻き取ることにより、管更生部材102を既設管100内に引き込む。
管更生部材102の先端が立坑116に到達すると、管更生部材102の両端を切断して、そこに拡径用金具等を取り付け、管更生部材102の管端を封止する。そして、蒸気発生装置を用いて管更生部材102内に蒸気を供給し、管更生部材102を加熱すると共に内圧をかける。すると、管更生部材102は、断面形状が真円形状または略真円形状に拡径復元されて、管更生部材102の外周面全体が既設管100の内周面全体に略密着される。その後、内圧を保持した状態で、冷却ノズル等から管更生部材102内に冷却空気を供給して、管更生部材102を冷却する。冷却後、管更生部材102内から圧力空気を排出し、適宜、後処理を実行することによって、管更生部材102を用いた既設管100の補修が完了する。
この実施例によれば、ドラム本体12にコア熱媒放出部14および側面熱媒放出部16を設け、胴部20外周面およびフランジ22内側面と管更生部材102との間に空間(熱媒流路)28,44を形成するようにしたので、管更生部材102の巻き付け中心部の略直角三角形状の閉空間や、巻き付けの折り返しにより形成される略二等辺三角形状の閉空間などの熱媒の行き渡り難い部分に対して、熱媒を適切に行き渡らせることができる。したがって、管更生部材102を全長に亘って均一にかつ短時間で加熱することができ、施工時間の短縮化、省エネルギ化、施工費の低減化、および施工品質の安定化など、様々な効果を発揮できる。
また、コア熱媒放出部14がテーパ状の外周面を有し、管更生部材102を下側から支持するので、搬送中や加熱中の管更生部材102の巻き崩れを防止でき、熱媒流路となる空間28を確実に保持できる。
なお、上述の実施例では、ドラム本体12、コア熱媒放出部14および側面熱媒放出部16などの巻付用ドラム10を構成する部材をステンレス鋼などの金属によって形成したが、管更生部材102を保持できる強度および熱耐性などの一定性能を有していれば、巻付用ドラム10を構成する部材の材質は特に問わない。
また、上述の実施例では、コア熱媒放出部14および側面熱媒放出部16から熱媒を放出すると共に、保温ケーシング112内の全体を加熱し、かつ管更生部材102内に熱媒を放出して管更生部材102を内部からも加熱するようにした。しかし、巻付用ドラム10を用いることによって管更生部材102の全体を効率よく均一に加熱できるので、保温ケーシング112内全体の加熱および管更生部材102内部の加熱の一方または双方を省略することもできる。
また、上述の実施例では、コア熱媒放出部14および側面熱媒放出部16の双方を備えるようにしたが、コア熱媒放出部14および側面熱媒放出部16のいずれか一方のみを備えるようにしてもよい。また、必ずしもフランジ22のそれぞれに側面熱媒放出部16を設ける必要はなく、上側または下側のフランジ22の一方にのみ、側面熱媒放出部16を設けることもできる。
さらに、ドラム本体12と管更生部材102との間に空間(熱媒流路)を形成できれば、コア熱媒放出部14および側面熱媒放出部16の形状は、適宜変更可能である。たとえば、コア熱媒放出部14をテーパ状に形成するのではなく、図15に示す巻付用ドラム10のように、コア熱媒放出部14を直管状に形成することもできる。また、胴部20外周面の下半部のみを覆うようにコア熱媒放出部14を形成するのではなく、図16に示す巻付用ドラム10のように、胴部20外周面の全体を覆うようにコア熱媒放出部14を形成することもできる。この場合、コア熱媒放出部14の上半部を直管状とし、下半部をテーパ状としてもよい。
また、たとえば、コア熱媒放出部14をテーパ状に形成する代わりに、図17に示す巻付用ドラム10のように、コア熱媒放出部14を階段状に形成することもできる。これによって、より確実に管更生部材10の崩れを防止できる。
また、上述の実施例では、巻付用ドラム10から管更生部材102を引き出す際に、巻付用ドラム10を横方向に回転させるように設置しているが、縦方向に回転させるように設置してもよい。
また、巻付用ドラム10に巻き付けられる管更生部材102の縮径形状および巻き姿は、特に限定されない。たとえば、折り畳み加工により折り畳まれた縮径形状であってもよいし、周方向の一部が押し込まれた断面略ハート形状を有する縮径形状であってもよい。
さらに、上で挙げた寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。